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蒼き海へのヒュムノス




 聞こえてきたのは遠き故郷の追憶のムジーク。船乗りは舵をそのムジークに向ける。
 まるで踊るようなその音は、カンタービレ。
 故郷でいつも聞いていたヒュムノス。船乗りは故郷を離れてずいぶん時間が経っていた。だからそれには逆らうことができなかったのだ。
 船は向かう。故郷のムジークのある場所へ。その先が岩礁地帯であることはわかる。危険だ。しかし、それが危険だと認識ができなかったのだ。
 ――やがて船は沈む。船乗りの追憶を乗せて。追憶は蒼き海の底に沈む。深く、深く、深く。

 ――♪、――♪

 船が沈んだその後には、羽根の生えた4m程度の大きさのクジラが幸せそうにカンタービレを奏でていた。


「みんな、通商連からのお願いがあるの。聞いてくれる?」
 『マーチャント』ミズーリ・メイヴェン(nCL3000010)が水で出来た髪をたゆたわせながら貴方達に話しかける。
 貴方は頷いて話の続きを促した。
「あのね、ウタクジラって識っている?」
 聞き覚えのない名前に疑問符を浮かべるとミズーリは人差し指をたてて、じゃあ、解説するわね、と前置きし、話し始める。
「海に生息する幻想種のひとつね。歌をうたう、空とぶ小さなクジラよ」
 それはなんとも牧歌的でかわいらしい幻想種だ。
「そのウタクジラが通商連の商業ルート上に巣をつくったらしいのよ。でね、歌うだけならそれほど困らないのだけれども……」
 ミズーリの説明は続く。
 通商商業連合国は海路を使用し、大陸の流通を担う国土のない船団国家である。その船団国家が商業をするために使うルート上にある岩礁地帯に巣をつくってしまったのだ。
 彼らは悪気もなく歌う。彼らは魔力を持った音声を発する。便宜上その音声を歌と呼ぶ。
 その歌は聞くものによって故郷を思い起こす歌として聞こえるのだ。遠く故郷から離れていればいるほどにその効果は高くなっていく。
 その歌に魅了されたら最後、彼らが歌うその場所が故郷にみえてくるのだ。故に船乗りは船の舵を取り間違い、その岩礁地帯に乗り上げ座礁したり、最悪沈没することもあるのだ。
 通商連の願いとはそのウタクジラの退治にある。
「やりにくいかもだけれども、よろしくできるかしら? 油断はしないでね?」


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
■成功条件
1.ウタクジラの撃退
†猫天使姫†です。
 海洋に出かけよう!
 
 商業ルートで悪さをするウタクジラを退治してください。

 ロケーション
 岩礁地帯です。
 みなさんが向かう時間は潮が引いている時間帯です。明るいので灯りの心配はいりませんが、あまりにも時間がかかると潮が満ちてきます。
 水場ですので滑りやすくなっています。該当スキル、およびミズヒトなら特にデメリットはありませんが、スキルがない方は不利になります。ソラビトの方は低空飛行をすればデメリットを回避できます。
 具体的には命中、回避力が下がりますのでご注意ください。
 海に嵌ったら、1T行動不可能になります。
 岩礁近くまでは通商連の船が送ってくれますので、岩礁地帯に足を踏み入れたところからスタートです。自分の縄張りに入ったことに気づいて直ぐにウタクジラはやってきます。

 
 ・ウタクジラ
 4m程度の羽根の生えたクジラです。体力は高め。攻撃力もそれなりに。
 ちょうどいい岩礁地帯に巣をつくりました。
 攻撃方法は体当たり、ヒレを使っての範囲吹き飛ばし。吹き飛ばされた方向によっては海にぽちゃんします。
 特殊攻撃はヒュムノス(眠りor混乱を伴うダメージゼロの全体攻撃)
 出身がイ・ラプセル以外の方は混乱にかかりやすくなります。(ステシ判断。オニヒトの方は比較的かかりやすくなると思います)
 
 時間がかかりすぎて、満潮になりすぎた場合には失敗となりますので、ご注意ください。

 ほんわかしているけどわりと大きな敵ですので、ご注意くださいませ!
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
26モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
8/8
公開日
2018年06月09日

†メイン参加者 8人†

『イ・ラプセル自由騎士団』
薬師寺 麗羅(CL3000034)
『白鱗のベラトール』
グウェン・スケイリー(CL3000100)
『ひまわりの約束』
ナナン・皐月(CL3000240)



「そうね、通商連としてはその岩礁というか、ルートから外れてくれたらそれでいいと思っているわ。今追い払っても巣になる場所が都合よくあればいいのだけれど……うーん……追い払ってもまた戻ってきたり、別のルートに巣を作っても困るから、退治してほしいのよね」
 現場に向かう前に彼らは通商船に同乗しているミズーリに、クジラの処遇を問いかければ、そんな答えが返ってきた。
 どこかに都合のいい住処があれば……通商連の海上ルート以外の場所があるのか。それがあれば問題はないだろう。そもそもこのウタクジラは悪意を持って歌っているわけではないのだ。
「えっ、食べるの!? いえ、殺したものは食べるというのは確かに道理ではあるけれど、うーん。普通のクジラではなくて、幻想種だけど……た、たべれるのかしら?」
 なら倒して食べるという答えに、ミズーリは冷や汗をかいて答えたのであった。

(クジラの処遇か……私はどちらでも構わないが)
 『イ・ラプセル自由騎士団』グウェン・スケイリー(CL3000100)は己の剣を整備しながら思う。クジラがいるのはあの岩礁だろう。遠くの岩礁をみつめ、彼女はトカゲの目を細める。
「クジラさんには気の毒だけど……船が沈没するのは困るわよね」
 『イ・ラプセル自由騎士団』薬師寺 麗羅(CL3000034)は、潮風に負けないようにと、保湿クリームを女性たちの頬に塗っている。
「女の子はお肌のケアもたいせつなのよ」
 よくわからないままに、クリームを塗られている『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)はくすぐったそうに身悶える。
「いいとこ見つけたクジラには可哀想だけど。世間の風は厳しいなあ」
「追っ払うだけならいいんだけどね」
 『深窓のガンスリンガー』ヒルダ・アークライト(CL3000279)も同情的に思う。彼女は狩人だ。狩人には狩人の誇りがある。殺したら食べる。そうでなければむやみに殺生をする必要はないと思う。
 靴にチョークを塗ろうとするが、チョークの主成分である炭酸マグネシウム自体は滑り止めではない。ボルダリングをする際には使われることがあるのはあくまでも手汗を吸収する程度だ。流石に海水を吸収するのは荷が重い。むしろかえって滑りやすくなるまである。船員がちょっとまってろ、と言ってヒルダに幅広の輪ゴムを渡してくれる。
 此の時代の輪ゴムは千切れやすいが、少しの時間の滑り止め程度になら使えるだろう
(歌に魔力なんて無ければ良かったんやけどなぁ……そしたら何の問題もなかったのに)
 『疾走天狐』ガブリエーレ・シュノール(CL3000239)は船のデッキで手すりに肘を預け、岩礁をみつめる。
「歌を歌う、空飛ぶクジラねぇ…。中々可愛げがあるんじゃね?」
 後ろから掛けられた声に、振り向く。そこにはガブリエーレのおかかえ吟遊詩人かっこはてなのベルナルト レイゼク(CL3000187)。 
「ベルナルトさん、この依頼に参加してましたのね。私の勇姿、安全な後方でゆっくり見てると良いのですわ!」
 ベルナルトはできる限りは黙ってこっそりとフォローするつもりだった。しかし、このお嬢様が手すりから滑り落ちないかどうか気が気でなくなって、思わず声をかけてしまったのだ。
「あー……。やる気は分かったから、転んだり海に落ちたりしないように気を付けてくれよな。ご主人サマ?」
 この子犬のようなご主人サマはほんとうに危なっかしい。なんせこんな怪しい男を『お抱え吟遊詩人』なんていうすこぶる怪しい身分で雇ったのだ。このパトロンサマは俺がみていないとあっというまに悪いやつに騙されそうでひやひやする。ほんとよくいままで平気だったとおもう。
 当の本人といえば、
(うんうん、心配までして貰えて主人冥利に尽きると言うもんやね! お抱え詩人さんに攻撃が向かんよう、最前線で頑張ろか!)
 と、更にやる気を出している。ベルナルトの苦労は今後も続くだろう。それは水鏡運命階差演算装置で算出されるまでもない未来だろう。
「空飛ぶ小さなクジラかぁ! どんなんだろう! 早く見たいなぁ! 写真撮る余裕あるかな?」
 ワクワクとするのは『知りたがりのクイニィー』クイニィー・アルジェント(CL3000178)。お気に入りの蒸気カメラを手ににこにことしている。
 しかし彼女の心情はその様子とはまるで裏腹。
(みんな優しいなぁ。さっさと退治しちゃってクジラベーコンにしちゃった方がいいと思うんだけど……生かしておけば、また違う場所で被害を出すかもしれない。一度危害を加えられたら抵抗するのは道理……でもまぁ、皆が追い払うだけで留めたいって言うなら従うよ)
 それはアウトローとして生きるか死ぬかの選択が日常茶飯事であったからこそのドライさ。それが彼女の処世術である。
 それでも。
 それでも彼女はそう思う仲間がいることが少しだけ誇らしい。正直なところそういうのは嫌いではないのだ。
「ねえ、ミズーリちゃん。そりゃね、ナナンもマーチャントだし、わかるけど。どうにかならないかな? ほら、マーチャントらしく、きょーてーが組めたらいいと思わない?」
 『ちみっこマーチャント』ナナン・皐月(CL3000240)はウタクジラがどうにか食べられずに、なんとか双方が上手くいく方法がないかを探る。
「そうね、それができたら何よりなのだけれども……」


 彼らはかくして、岩礁近くに船を近づける。ウタクジラのテリトリーの外側に船をとめると、ボートを下ろし岩礁まで漕いでいくという形だ。船でおべんとうを用意してもらった彼らはしっかりと腹ごしらえもして、岩礁にむかう。
 ナナンはいのいちばんにぴょんと飛び降りて岩礁に降り立つ。ウタクジラに会いたいという気持ちがさきばしったのだ。
「ナナンちゃんあぶないわよ」
 麗羅が声をかけるが、本人は大丈夫なのだ! とワクワクを隠しきれていない。
 つづいて、クイニィーとガブリエーレ、カノンも降り立った。ガブリエーレが飛び降りた際にはベルナルトが心配そうにやきもきしていたのも特筆しておこう。
 ヒルダはロープも用意して準備は万端だ。
 グウェンは岩礁のロケーションを確認して、前衛として吹き飛ばされる方向などを計算しながら配置につく。
 ――♪、――♪
 程なく聞こえてくるはウタクジラの声
「きたよ、気をつけて!」
 ヒルダが皆に注意する。
「おーい、くじらさーん、ここから退いてくれないかなー? 君がここにいると迷惑なんだー」
 動物交流を用いてクイニィーが声をかける。
『だれ、わたしのいえに、はいってくるの』
 ウタクジラは問いかける。
 厳密に、ウタクジラは動物ではない。幻想種である。動物交流で会話ができたわけではない。故に此の場にいる者すべてがその言葉を理解することができる。
「あちゃー……」
 ヒルダは思う。狩りをする上で殺すことは食べること。食べることとは明確な食物連鎖がそこにあるからできることだ。もしその食物に知性があって会話ができるとしたら、それでも食べれるだろうか? 答えは否だ。
 殺してもきっと自分はこのウタクジラを食べることはできない。
 しかし会話ができるということは、違う結果も見いだせるという希望にもつながる。
「ここから出ていくのは無理?」
『どうして?』
 ヒルダは問いかけるも、答えはけんもほろろだ。
「無益な殺生は好まない。だからこの場から退いてくれないか?」
 ベルナルトの説得も。
「退いてくんなきゃ、実力行使しちゃうよー」
 クイニィーの宣告も、ウタクジラに通じない。
『わたしは、ここがお家。どうしてお家から出ていかなければならないの?』
「ここは、通商連の商業ルートだ。お前の歌で難破するのは些か困る」
 グウェンも説明する。
『それはヒトの勝手』
 そりゃそうだろうな、とクイニィーは思う。当然だ。ウタクジラは自分が悪いことをしているとは思っていない。ヒトの理は幻想種には関係はない。
「ねえ、他の場所にうつれないの?」
『そういって、場所を移って、そこも邪魔だったら同じことをくりかえすの?』
 ナナンの言葉にウタクジラは逆に問いかける。
「悪い子ではないと思うわよ……でも……、ううん、できれば殺さずに済ませたいところなのだけど」
 麗羅はつぶやく。言外に仕方のないことだと含ませて。
 交渉は決裂である。お互いに譲れないのであれば、仕方ないのだ。

 ――♪、――♪
 ウタクジラは大きな声で歌い始めた。そこには魔力が宿る。
 自由騎士たちは即座に反応し各々の立ち位置につく。

 グウェンは一瞬だけ故郷を思い起こした。スラムでいたあの20と数年前を。故郷と呼べる愛着はない。しかし、思い起こされるその日々は決して悪いものばかりじゃなかった。そういった心の柔らかいところをこの魔力の歌は突いてくる。
「悪くないけどな」
 その郷愁を鉄血の心が踏みとどまらせる。自らの神を信奉することを強制されるその呪いのような権能。呪いの力は彼女にめぐり、柔らかい心を硬く鍛えていく。
(私の火力で混乱は厄介だからな、神への思いなんて少々気味がいいとはいえないが)

「あれ? あれれ?」
 一方カノンの視線はぼんやりとしたものになる。
 眼の前に広がるのは、小さい頃暮らしていた山奥の小さな村。どこにでもある長閑な閑散とした田舎だ。
 いつもは畑と田舎道。遠くで自分に手を振っているふたりがいる。
「とーさま、かーさま!」
 カノンははしる。思い出にしかいないはずの二人のもとに。
 その瞬間、ぱしんと頬に弾ける音。
「お気を確かに…まだ敵は健在ですわ」
 岩場をまるで平地のように走り抜けてきてカノンの頬を叩くのはガブリエーレ。
「あ……」
「ほら、お嬢ちゃん、ぼーっとしてる暇はないぜ」
 呆けるカノンに声をかけるのはサテライトエイムで照準をウタクジラに合わせるベルナルト。
「あ、うん、大丈夫! ありがとう!」
 カノンは、今一度ぐっとガントレットに包まれた拳を握る。頬を熱いものが伝う。
 ああ、一瞬だけだけどみえたあの姿。懐かしいあの姿。カノンはウタクジラに一言だけこころの中で会わせてくれてありがとうとつぶやいた。
「おお華麗なるサンクディゼール 今は此処が我が故郷♪」
 大声でカノンは声を張り上げ対抗するように歌う。それは自分に言い聞かせるために。

「さて! いくわよ!」
 戦闘は一進一退の攻防を続けるが、回復も潤沢、足元不如意もほぼない。順調に彼らはダメージを蓄積していく。
 ヒルダのオーバーブラストに続き、クイニィーと麗羅のスパルトイがウタクジラに炸裂する。
 クイニィーは弱点を探るが、流石に情報収集では上手くはいかない。これがエネミースキャンであれば、上手く働いていただろう。戦闘で見つけることのできた情報はみな同じように観察で得ていくものだ。弱点などの詳細な情報は別のスキルの管轄である。
 グウェンは助走をつけ大きくジャンプすると、ウタクジラの脳天めがけありったけの膂力をうちつける。
『いたい、いたい、いたい』
 これにはウタクジラも溜まったものではなく、暴れてヒレで前衛を薙ぎ払う。
「ひゃあああ!」
 運悪くも、ガブリエーレが吹き飛ばされてしまう。
「おっと、ご主人サマ俺がいてよかったな」
 それをベルナルトはがっしとキャッチする。ベルナルトはもとよりこうなることは予測していた。だからガブリエーレと海までの間にいたのだ。
「よくやりましたわ! ボーナスをだしてさしあげてもいいですわよ!」
 ご主人様はご満悦で、早口でそういい、ぴょんとベルナルトの腕から飛び出すとまた前衛に走っていく。なにごともないように見える行動ではあるが、すこしだけ、耳が赤く見えたのは気の所為だったのだろうか?
「うう……」
 ナナンはバッシュでウタクジラに攻撃しながらどうにかできないかを考える。考えて、考えて、考える。
 ふと、ふと思い浮かぶ場所があった。
 あそこなら……。もしかして。
「みんな、待って! トドメは刺さないでほしいんだ! ナナンに考えがあるの」
 ずいぶんと弱ってきてるウタクジラをみて、ナナンは叫ぶ。
「んー、わかったわ」
 彼ら自由騎士団のオラクルは不殺能力をもっている。その気になれば殺さずに相手を戦闘不能にすることが可能なのだ。
 だからヒルダはナナンのよびかけに答える。高速の跳躍によって低空を飛ぶウタクジラを飛び越え、逆さに落下しながら、蒸気散弾銃を構えるとダン、ダン、ダンと弾丸を発射する。その高火力の必殺の弾丸はウタクジラの体力を削り切るには少し足りない。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 その跳躍の勢いのまま、ヒルダは海に逆さにツッコンでいった。
 最後の一撃はカノンとナナンの同時に炸裂する渾身の拳撃と気合を込めた一撃。
 どう……とその巨体は倒れ、動きをとめた。息はまだある。

「やだーー、魚が胸元に! とって、とって」
 ぷかりと浮かんできたヒルダはその豊満な胸元で暴れる魚に大慌てだ。実はその魚こそがヒルダにとっての最大の敵だったのかもしれない。
 一番近くにいた、ベルナルトは流石に……と手をだせなかったが、グウェンがなにごともないように、ヒルダの胸元に手を突っ込むと、魚を取り出し、海に返した。
「あのね、ナナン思うんだけど、王都の近くに大きな海に続く湖があるでしょう? ちっちゃいほうのあそこなら、ルートもないだろうし大丈夫かな、って」
『そこに移動しろというの?』
「ああ、なるほど、あそこなら大丈夫かもしれませんわね? でも王様にお願いしないとかもですが……」
「カノンも、悪くないとおもうよ、船がはいってこないなら沈没することもないし、それにあの歌、素敵だったんだ。王国のみんなも落ち着いた場所で聞けたなら、ちょっとした興行になるかもだよ。故郷が見える歌!って感じで。見世物になっちゃうのは嫌かなあ?」
『わたしがそんな言うことを聞くってどうしておもうの?』
 提案する彼らにウタクジラは問う。
「あんたは私たちに負けた。負けたものは勝ったものに従うものだ。それにあんたは歌が歌いたかっただけで傷つけたい分けじゃないだろう。それにこの取引があんたの損にはならないだろう」
 グウェンがきっぱりと言い放った。それは幻想種のマザリモノであるからこそ言える言葉。幻想種においては強さというのもが絶対基準だ。負けたものは勝ったものに従う。幻想種はヒトとは違う理をもって生きているのだ。
 もちろんそうでないものもいるだろう。だが大体においてはその理で動いているものが殆どである。
『そう、そういわれたら、言うことはないわ。なら連れて行って』
「あ、ちょっと、写真とっていい? イ・ラプセルは悪いところじゃないよ。私も宰相サマにおねがいしてみてあげる」
 クイニィーもまた協力的だ。ヒトのわがままに振り回されていただけで、このウタクジラは悪いものではないのはわかっている。
「んじゃま、コレで解決ってことで」
 ベルナルトがぽんと手を打ち合わせた。
 その後ろで麗羅が女の子達に潮風ケアの化粧品のセールスをしていたのは秘密である。


 ウタクジラの処遇については、事後承諾という形になる。
 断られることはないだろうが、彼らはあの渋い顔の宰相にお願いをすることになるだろう。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

 ご参加ありがとうございました。
 MVPは殺す以外の方法を諦めなかったあなたに。
 
 皆様の優しいきもちで、ウタクジラの処遇が一時保留となりました。
 参加者のみなさんはよろしければ、ラウンジかブレスト、質問掲示板などで、宰相殿にこのウタクジラの処遇についてお願いしてみてはいかがでしょうか?
 宰相殿もお返事をくれるとおもいます。
 (ブレストですと宰相殿はお返事ができないのですが……)
 ラウンジでしたら、参加者以外のみなさんもまた処遇についてのおしゃべりをしてもらってもかまいません。
 
 このような形で、依頼から何かが派生することはあります。
 依頼の内容をどこかに派生させることもできるでしょう。
 
 もちろんSTにもよりますし、派生しない場合もあるのはご了承くださいませ。

 今回の件は特にPCからの働きかけがなければ、通商連などにも相談してイ・ラプセル外でなおかつ通商連のルート上以外の住処を見つけてもらえるかもしれませんしもらえないかもしれません。
 
 マギアスティームはこのようにいろんなかたちでPCさんの物語を深く演出できるといいなと思っています。
至らない部分もあるかもしれませんが、いろいろチャレンジしていただけると楽しいかと思います。
FL送付済