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【デザイア!】Vanguard! 奴隷解放最前線!

●
ヘルメリア奴隷協会幹部会員チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン――
彼は奴隷調教師から幹部になった人間で、教育のノウハウを構築した人間として名前が知れている。効率よく亜人の抵抗心を奪い、望む形に変えていく。その手際はヘルメリア史上に置いて比肩するものなしとまで言われている。奴隷調教の技術は彼を境に塗り替わったと言っても過言ではない。
稀代の天才であるチャールズだが、天才ゆえに強い拘りがあった。気に入らない『作品』を壊すような過激な芸術肌ではなく、自分より技術が劣っている者を卑下する高慢でもなく、世情に疎い世捨人でもない。ただ一つ、拘りがあったのだ。
「年齢は十二歳? 気が乗らんな。もっと若いのを連れてこい。勿論女性だ」
『素材』へのこだわりである。
「穢れを知らない純朴な乙女。成長していない蕾。無知ゆえの無垢。いずれ穢れる白を救い出した砂の中の宝石。瑞々しい肌からは無限の可能性を感じ、あどけない微笑みがこちらへの信頼を示す。生まれてから十年を超えることのない純粋に育てられた令嬢。力無くとも必死に生きてきたストリートチルドレン。街を歩く平和な家庭の子供。同い年の友達と戯れる子供達。嗚呼、幼女に貴賎はない。差異こそあれどそこに隔たりはない。あの未発達な体と未だ世界を知らない精神。未完成故に存在する果てなき可能性。正に至宝。正に芸術。正に神秘。
そんな幼女を調教したいのだよ!」
はっきり言えば幼女趣味である。
――これがただの変態で、趣味に傾倒しているだけなら奴隷協会も適度に利用して切って捨てただろう。だがチャールズの作り出した『作品』はかなりの成果を生んでいた。
小さな体故に隠密性が高く、不意打ちなどで暗殺を行う戦闘系奴隷。幼いゆえに警戒心を緩め、相手の隙を縫う囮。一度きりの奇襲専用だが、その一度は知らなければ対応できない。それほどにチャールズの調教は『幼女らしさ』を損なわないものなのだ。
そして奇襲に失敗すれば――
「失敗すれば自死するように仕組んである。どの道、十を超えた幼女に価値はない」
というまでの拘りである。
そんなチャールズは『スレイブマーケットの財布』ともいえる金庫を警護する役に任命されていた。とはいえ、彼は金庫の前で愛玩用の奴隷を愛でており、警護としてはお飾りである。
だが施設の各所に配置した『作品』は奴隷協会以外の者の侵入あらば襲い掛かり、建物の外には歯車騎士団がいる。
抜かりはない。その評価は奴隷協会の幹部全ての認識だった。
●
「――チャールズの『作品』の情報が事前に知れたのは僥倖でした」
『先生』ジョン・コーリナー(nCL3000046)が資料を手に頷く。彼自身は水鏡運命階差演算装置の詳細を知らないが、水鏡から得た情報と言う時点で信頼度は高いと判断したようだ。
「奇襲用の暗殺少女だとわかれば、後は館の構造から不意打ちのパターンは読み取れます。不意打ちを防げば、皆様なら押さえるのは容易でしょう。
そして、外の歯車騎士団も無視できません。誰かがこれを押さえておかないと、館に雪崩れ込まれて一網打尽になります。
最後にチャールズと金庫。鍵を持っているチャールズ自身に戦闘力はないでしょうが、傍に置いてある戦闘用奴隷は相応に強いはずです」
指を三つ立てて説明するジョン。
歯車騎士団との戦いは、純粋な戦闘力が求められる。足止め主体である故に主に持久力だ。
館の中でチャールズの『作品』の不意打ちを防ぐには、それなりの技能が必要になるだろう。
チャールズを捕らえる為に、戦闘用奴隷を速攻で排することが要になる。秘密の抜け道ぐらいは用意してあるはずだ。
戦力を一点集中すれば、他の箇所から漏れた戦力が雪崩れ込む。しかし肝心要の場所の力を抜けば本末転倒だ。
「軍事行動そのものは皆様の方が経験豊富でしょう」
ジョンは言って作戦の指揮権を自由騎士達に委ねる。
ヘルメリア一の奴隷市『スレイブマーケット』――その資金を奪取できれば、奴隷協会は大打撃を受ける。運営そのものが立ち廻らなくなり、何よりも大きく信頼を失ってしまうだろう。そうなれば規模の縮小は必至だ。
この作戦の行く末は、ヘルメリアの奴隷社会そのものの行く末と言ってもいい。亜人達に生まれた希望が未来に繋がるか、はたまた希望は絶望に変わるか。
ここが歴史の分水嶺。奴隷解放最前線――!
ヘルメリア奴隷協会幹部会員チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン――
彼は奴隷調教師から幹部になった人間で、教育のノウハウを構築した人間として名前が知れている。効率よく亜人の抵抗心を奪い、望む形に変えていく。その手際はヘルメリア史上に置いて比肩するものなしとまで言われている。奴隷調教の技術は彼を境に塗り替わったと言っても過言ではない。
稀代の天才であるチャールズだが、天才ゆえに強い拘りがあった。気に入らない『作品』を壊すような過激な芸術肌ではなく、自分より技術が劣っている者を卑下する高慢でもなく、世情に疎い世捨人でもない。ただ一つ、拘りがあったのだ。
「年齢は十二歳? 気が乗らんな。もっと若いのを連れてこい。勿論女性だ」
『素材』へのこだわりである。
「穢れを知らない純朴な乙女。成長していない蕾。無知ゆえの無垢。いずれ穢れる白を救い出した砂の中の宝石。瑞々しい肌からは無限の可能性を感じ、あどけない微笑みがこちらへの信頼を示す。生まれてから十年を超えることのない純粋に育てられた令嬢。力無くとも必死に生きてきたストリートチルドレン。街を歩く平和な家庭の子供。同い年の友達と戯れる子供達。嗚呼、幼女に貴賎はない。差異こそあれどそこに隔たりはない。あの未発達な体と未だ世界を知らない精神。未完成故に存在する果てなき可能性。正に至宝。正に芸術。正に神秘。
そんな幼女を調教したいのだよ!」
はっきり言えば幼女趣味である。
――これがただの変態で、趣味に傾倒しているだけなら奴隷協会も適度に利用して切って捨てただろう。だがチャールズの作り出した『作品』はかなりの成果を生んでいた。
小さな体故に隠密性が高く、不意打ちなどで暗殺を行う戦闘系奴隷。幼いゆえに警戒心を緩め、相手の隙を縫う囮。一度きりの奇襲専用だが、その一度は知らなければ対応できない。それほどにチャールズの調教は『幼女らしさ』を損なわないものなのだ。
そして奇襲に失敗すれば――
「失敗すれば自死するように仕組んである。どの道、十を超えた幼女に価値はない」
というまでの拘りである。
そんなチャールズは『スレイブマーケットの財布』ともいえる金庫を警護する役に任命されていた。とはいえ、彼は金庫の前で愛玩用の奴隷を愛でており、警護としてはお飾りである。
だが施設の各所に配置した『作品』は奴隷協会以外の者の侵入あらば襲い掛かり、建物の外には歯車騎士団がいる。
抜かりはない。その評価は奴隷協会の幹部全ての認識だった。
●
「――チャールズの『作品』の情報が事前に知れたのは僥倖でした」
『先生』ジョン・コーリナー(nCL3000046)が資料を手に頷く。彼自身は水鏡運命階差演算装置の詳細を知らないが、水鏡から得た情報と言う時点で信頼度は高いと判断したようだ。
「奇襲用の暗殺少女だとわかれば、後は館の構造から不意打ちのパターンは読み取れます。不意打ちを防げば、皆様なら押さえるのは容易でしょう。
そして、外の歯車騎士団も無視できません。誰かがこれを押さえておかないと、館に雪崩れ込まれて一網打尽になります。
最後にチャールズと金庫。鍵を持っているチャールズ自身に戦闘力はないでしょうが、傍に置いてある戦闘用奴隷は相応に強いはずです」
指を三つ立てて説明するジョン。
歯車騎士団との戦いは、純粋な戦闘力が求められる。足止め主体である故に主に持久力だ。
館の中でチャールズの『作品』の不意打ちを防ぐには、それなりの技能が必要になるだろう。
チャールズを捕らえる為に、戦闘用奴隷を速攻で排することが要になる。秘密の抜け道ぐらいは用意してあるはずだ。
戦力を一点集中すれば、他の箇所から漏れた戦力が雪崩れ込む。しかし肝心要の場所の力を抜けば本末転倒だ。
「軍事行動そのものは皆様の方が経験豊富でしょう」
ジョンは言って作戦の指揮権を自由騎士達に委ねる。
ヘルメリア一の奴隷市『スレイブマーケット』――その資金を奪取できれば、奴隷協会は大打撃を受ける。運営そのものが立ち廻らなくなり、何よりも大きく信頼を失ってしまうだろう。そうなれば規模の縮小は必至だ。
この作戦の行く末は、ヘルメリアの奴隷社会そのものの行く末と言ってもいい。亜人達に生まれた希望が未来に繋がるか、はたまた希望は絶望に変わるか。
ここが歴史の分水嶺。奴隷解放最前線――!
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.歯車騎士団をある程度引き付ける
2.館内の『作品』を一定数発見し、押さえる
3.チャールズを捕まえ、金庫からお金を奪う
2.館内の『作品』を一定数発見し、押さえる
3.チャールズを捕まえ、金庫からお金を奪う
どくどくです。
スレイブマーケット決戦。伸るか反るかの大勝負です。
●説明!
ヘルメリアのギルバークで行われているスレイブマーケット。
自由騎士達の働きにより、奴隷協会は資金を分散させるのは危険だと判断し、資金を一ヶ所に集めました。そしてその警護を強化し、何物にも奪えないようにしています。
逆に言えば、その守りを突破すれば奴隷協会の資金を根こそぎ奪う事が出来ます。そうなれば奴隷協会は縮小し、ヘルメリアの奴隷社会に大きな楔を穿つことが出来ます。
ギルバークにある洋館。そこが戦場となります。
障害は主に三つ。庭に配置された歯車騎士団、館内の暗殺少女、金庫の守護者です。これらを押さえながら戦い、奴隷協会の運営費用を奪取してください。
【歯車】
歯車騎士団と戦います。主に戦闘能力が求められます。
戦場は庭。数は五等兵士が四〇名ほどになります。重戦士、軽戦士×2、防御タンクの四名一組でフォーメーションを組んで攻めてきます。
【デザイア!】依頼関係で『歯車騎士団もしくは貴族と戦う』系列依頼の<失敗数>に応じて、歯車騎士団五等兵士の援軍がやってきます(ネームドは来ません)。
捌ききれなかった場合、【金庫】に援軍として現れます。
【館内】
配備された『作品』と戦います。主に索敵能力や隠密能力等が求められます。
館の各所に身を潜め、不意打ちを仕掛けようとする少女奴隷。それを見つけるか、見つからないようにして不意を突くかの勝負です。純粋な戦闘になれば、少女達に勝ち目はありませんので不意を打たれないようにするのが肝要です。
【デザイア!】依頼関係で『奴隷を開放する』系列依頼の<失敗数>に応じて、少女の『質』が増えます。具体的には発見の難易度が上昇し、不意を打ちやすくなります。
捌ききれなかった場合、各戦場で暗躍して依頼全体の重傷する確率が増えます。
【金庫】
チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンと、それを守る卵型防衛機『ハンプティダンプティ』と戦います。厳密に言えばチャールズは戦闘開始と同時にお金が入ったトランクをもって抜け穴から逃げ出しますので、『ハンプティダンプティ』を速攻で倒して追いかけてください。猶予は三分ほど。
【デザイア!】タグ全依頼の<失敗数>に応じて、チャールズが奴隷商人から買い込んだ奴隷が邪魔をしてきます。具体的には完全逃亡するまでのタイムリミットが短くなります。
・ハンプティダンプティ
大きさ3mほどの卵型兵器。卵に手足が生えたような機械です。中に人が入っています……がコックピットが小さく、九歳未満の子供しか乗れません。操縦しているのはチャールズに『調教』された少女です。
蒸気騎士と並行して作られた兵器ですが、各機器の小型化および蒸気排熱効率化に失敗したため操縦席が圧迫されて廃案となったモノです。それをチャールズが拾い上げた形です。
説得には応じません。操縦している少女は、死ぬまで戦いをやめないでしょう。
攻撃方法
火炎放射器 魔遠範 腕から炎を放ちます。【バーン2】
シザーアーム 攻近単 近寄るものを切り刻みます。【必殺】【致命】
ハリネズミ 攻遠全 細かな弾丸を戦場中に射出します。
巨体 P 大きな体で抜け道を塞いでいる。ブロック数制限なし。
追加装甲 P フレームを守る装甲。防御力、魔抗力上昇。HP50%以下になると効果がなくなります。
フレーム P 各部位や操縦席を支える外枠。攻撃力、魔導力上昇。HP25%以下になると効果がなくなります。
コクピット P 操縦席。操縦者にチューブを通して薬剤が与えらえている。HPチャージ100。HP10%以下になると効果がなくなります。
少女 P 曝け出された操縦者。HP9%以下で自動発動。全ステータス減少。このパッシブ以外の全スキル使用不可。移動不可。ターン終了時に行動可能の場合、戦場にいる誰か一人を【重傷】にして死亡します。
●決戦シナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼相当です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『アクアディーネ(nCL3000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
皆様からのプレイングをお待ちしています。
スレイブマーケット決戦。伸るか反るかの大勝負です。
●説明!
ヘルメリアのギルバークで行われているスレイブマーケット。
自由騎士達の働きにより、奴隷協会は資金を分散させるのは危険だと判断し、資金を一ヶ所に集めました。そしてその警護を強化し、何物にも奪えないようにしています。
逆に言えば、その守りを突破すれば奴隷協会の資金を根こそぎ奪う事が出来ます。そうなれば奴隷協会は縮小し、ヘルメリアの奴隷社会に大きな楔を穿つことが出来ます。
ギルバークにある洋館。そこが戦場となります。
障害は主に三つ。庭に配置された歯車騎士団、館内の暗殺少女、金庫の守護者です。これらを押さえながら戦い、奴隷協会の運営費用を奪取してください。
【歯車】
歯車騎士団と戦います。主に戦闘能力が求められます。
戦場は庭。数は五等兵士が四〇名ほどになります。重戦士、軽戦士×2、防御タンクの四名一組でフォーメーションを組んで攻めてきます。
【デザイア!】依頼関係で『歯車騎士団もしくは貴族と戦う』系列依頼の<失敗数>に応じて、歯車騎士団五等兵士の援軍がやってきます(ネームドは来ません)。
捌ききれなかった場合、【金庫】に援軍として現れます。
【館内】
配備された『作品』と戦います。主に索敵能力や隠密能力等が求められます。
館の各所に身を潜め、不意打ちを仕掛けようとする少女奴隷。それを見つけるか、見つからないようにして不意を突くかの勝負です。純粋な戦闘になれば、少女達に勝ち目はありませんので不意を打たれないようにするのが肝要です。
【デザイア!】依頼関係で『奴隷を開放する』系列依頼の<失敗数>に応じて、少女の『質』が増えます。具体的には発見の難易度が上昇し、不意を打ちやすくなります。
捌ききれなかった場合、各戦場で暗躍して依頼全体の重傷する確率が増えます。
【金庫】
チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンと、それを守る卵型防衛機『ハンプティダンプティ』と戦います。厳密に言えばチャールズは戦闘開始と同時にお金が入ったトランクをもって抜け穴から逃げ出しますので、『ハンプティダンプティ』を速攻で倒して追いかけてください。猶予は三分ほど。
【デザイア!】タグ全依頼の<失敗数>に応じて、チャールズが奴隷商人から買い込んだ奴隷が邪魔をしてきます。具体的には完全逃亡するまでのタイムリミットが短くなります。
・ハンプティダンプティ
大きさ3mほどの卵型兵器。卵に手足が生えたような機械です。中に人が入っています……がコックピットが小さく、九歳未満の子供しか乗れません。操縦しているのはチャールズに『調教』された少女です。
蒸気騎士と並行して作られた兵器ですが、各機器の小型化および蒸気排熱効率化に失敗したため操縦席が圧迫されて廃案となったモノです。それをチャールズが拾い上げた形です。
説得には応じません。操縦している少女は、死ぬまで戦いをやめないでしょう。
攻撃方法
火炎放射器 魔遠範 腕から炎を放ちます。【バーン2】
シザーアーム 攻近単 近寄るものを切り刻みます。【必殺】【致命】
ハリネズミ 攻遠全 細かな弾丸を戦場中に射出します。
巨体 P 大きな体で抜け道を塞いでいる。ブロック数制限なし。
追加装甲 P フレームを守る装甲。防御力、魔抗力上昇。HP50%以下になると効果がなくなります。
フレーム P 各部位や操縦席を支える外枠。攻撃力、魔導力上昇。HP25%以下になると効果がなくなります。
コクピット P 操縦席。操縦者にチューブを通して薬剤が与えらえている。HPチャージ100。HP10%以下になると効果がなくなります。
少女 P 曝け出された操縦者。HP9%以下で自動発動。全ステータス減少。このパッシブ以外の全スキル使用不可。移動不可。ターン終了時に行動可能の場合、戦場にいる誰か一人を【重傷】にして死亡します。
●決戦シナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼相当です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『アクアディーネ(nCL3000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
皆様からのプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
3個
7個
3個
3個




参加費
50LP
50LP
相談日数
8日
8日
参加人数
65/∞
65/∞
公開日
2019年09月09日
2019年09月09日
†メイン参加者 65人†

●
「フリーエンジンが攻めてきたぞ!」
突然の襲来にもかかわらず、歯車騎士団の対応は迅速だった。笛を鳴らして襲撃を知らせ、チームを組んで戦いに挑む。
だがそれもフリーエンジンと自由騎士の作戦通り。ここで歯車騎士団を足止めし、本命の館に向かう仲間達のサポートをするのだ。
「我が名は…………自由を愛する謎の女騎士、シノじゃ! 歯車騎士団よ、勇ある者あらばかかってくるがいい!」
言いながら歯車騎士団を引き寄せる『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)。手にした軍刀で歯車騎士団と切り結んでいた。挑発するように名乗りを上げ、掛け声と共に踏み込んでいく。
「ほんまに。わらわらとご苦労さんやわあ」
迫る歯車騎士団を見ながら『艶師』蔡 狼華(CL3000451)は物憂げにつぶやく。ここに歯車騎士団が集まってくれることは作戦通りなのだが、それでも雅があるようには見えない。とはいえ、手を抜くつもりは毛頭なかった。
「暑苦しい蒸気の騎士さんらに、うちの舞の美しさが分かりますやろか。よう目を見開いてうちの剣舞、ご覧下さいまし!」
言葉と同時に狼華は軽く踏み込む。街を歩くような自然な歩み。それゆえに歯車騎士団は気を削がれたかのように対応が遅れる。その隙を逃すことなく狼華の刃は翻り、そして納められる。僅かに遅れて歯車騎士団は自らについた傷口を押さえる。
「ほら。ゆるりしとったら、大怪我やよ」
「こ、ここから先は通しません!」
武器を構えて『新米自由騎士』リリアナ・アーデルトラウト(CL3000560)が大声をあげる。これだけの数を相手するのは流石に怖いのだが、それでも自分に活を入れて踏みとどまる。訓練の基礎を思い出しながら、慣れ親しんだ武器を振るう。
「こないでください、こないでくださいっ。来ないでっくださいーーーーっ!」
魔力を神経に通し、その動きを活性化させる。コンマ一秒が生死を分ける戦場に置いて、速度は勝負の分かれ目。活発化したリリアナの動きは相応の経験が重ねられている。基本に忠実に動きながら、歯車騎士団をけん制していく。
「わあああああああああああ!」
「いい動きだ。ヨツカもいい囮となろう」
リリアナの動きを見て歯車騎士団に聞こえないように呟く『背水の鬼刀』月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)。作戦のキモはどれだけ歯車騎士団に危機感を与えるかだ。ならば派手であるに越したことはない。ニヤリと笑い、ヨツカは刀を肩に担ぐ。
「全て、削ぎ落してやる」
低い声で歯車騎士団に呟くヨツカ。そのまま刀を担いだまま無防備に近づき、攻撃してきた相手を無造作に切り捨てる。相手が反応するよりも先に刀を横なぎに払い、多人数を巻き込むように動いていく。
「さあどうした。とことんやってやるぞ」
「回復は任せるんだぞ!」
戦う者達から一歩引いて、『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)が聖書を構えて口を開く。司祭様から頂いた子供向けに書かれた聖書。その優しさはサシャに伝わり、そしてサシャもまたその優しさの元に行動する。
「自分の弟や妹達と同じくらいの子が戦わされるなんて、許せないんだぞ!」
ヘルメリアの闇。それを知ったサシャは悲しむと同時に怒りを感じていた。子供達を助けたい。その一心で戦場に立つ。聖書から広がる淡い光が仲間達に触れる。光は傷口を包むように広がり、その傷を塞いでいく。
「防御や回復が必要なら、どんどん言ってほしいんだぞ!」
「ワタシの正義を示そうぞ!」
ガントレットを胸に構えるようにして、『貫く正義』ラメッシュ・K・ジェイン(CL3000120)は歯車騎士団の前に立つ。その立ち様、その表情、恥じることのない『正義』の道を歩んでいると言わんばかりの姿だった。
「我が正義は折れず、曲がらず、決して消えることは無い」
ステップを踏みながら、ラメッシュは戦場を縦横無尽に進む。時に前に出て歯車騎士団と拳をかわし、時に背後に下がって仲間に回復を施す。状況に応じたスイッチファイター。攻めに守りにと戦場を動き回る。
「さあ来るがいい歯車騎士団。この正義は砕けぬものと知るだろう」
「はい! 我が身体は鋼! スティールハイッ!」
そして『戦姫』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)も攻めに守りに動き回っていた。輝く剣と巨大な盾を持ち、歯車騎士団の攻撃を受け止めながら、その剣を振るって戦端を開く。防御を基盤とした戦術だ。
「ここは誰一人としてお通ししません!」
館に向かおうとする歯車騎士団の動きを遮りながら、デボラは武器を振るう。背後を振り返りはしない。館の中に入った仲間達が失敗することなど考えてはいない。デボラは仲間を信じ、この身を盾にしてヘルメリアの軍隊を止めていた。
(信じています、館に突入した皆様の勝利を!)
「ウル、歯車騎士団と戦ウすル」
『竜天の属』エイラ・フラナガン(CL3000406)はキザギザの歯を見せて笑うように言う。実のところ、エイラ個人的にはヘルメリアと戦う理由はない。他の皆が怒っているから戦う。自分の嫌いよりも他人の嫌いが許せない。そんなエイラの性格があった。
「仲間信ジル! トーテムポールレイン!」
トーテムポールを手に、魔力を練り上げる。集団で動く歯車騎士団。チームワークの僅かな隙をつくように放たれたエイラの魔力の矢は僅かに歪曲しながら騎士の胸に突き刺さる。先ずは一矢。できる事を少しずつ。そう決めて戦いに挑む。
「倒スは前衛任ス。オレ、援護!」
「ええ。今回は回復に回るとしましょう。武人との一騎打ちはまたの機会に」
言って頷く『我戦う、故に我あり』リンネ・スズカ(CL3000361)。闘争心が高めなリンネだが、今回の敵はそこまで気乗りがする相手ではない。暗殺技術を学んだ少女と新兵の寄せ集め。リンネの血が騒ぐほどの相手は見当たらなかった。
「さて、歯車騎士団の練度を見せてもらいましょうか」
新兵の兵士だからと言って、油断をするリンネではない。むしろ新兵の教育具合が軍の強固さを示している。唇を舌で濡らし、魔力を展開する。振るわれた魔力が癒しの光となって、仲間達の傷を塞いでいく。
「連携、丹力、そして規律。見事ですが、こちらも負けてはいませんよ」
「はい。防衛戦の経験は豊富です」
『マギアの導き』マリア・カゲ山(CL3000337)はリンネの言葉に頷く。シャンバラでの軍事行動は確かにマリアの経験の一部となって生きている。全体を冷静に見極め、足りない部分を埋めるように人々を配置し、それぞれの役割をこなす。
「長期戦になりますね。魔力の配分ミスが無いようにしなくては」
冷静に、と自分に言い聞かせるマリア。それと同時に大気からマナを取り入れ、手のひらに集中させる。生まれる雷光が戦場を照らす。マリアの意志に従い稲妻は戦場を疾駆し、歯車騎士団を穿つ。
「次、行きますよ」
「こ……怖い、です……でも、でも、やらなきゃ……自由騎士団に、恩返し、しなきゃ」
「えーと……とにかくオレの後ろから援護してくれると助かるから! よろしくな、アルミアさん!」
『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)の後ろで震える『落花』アルミア・ソーイ(CL3000567)。
アルミナはナバルの背後で無言で頷くが、それでも怖さは抜けない。ネクロマンサーを学んだ経緯が特殊であることも含め、アルミナは本来戦いに向いた性格ではない。世話になっている自由騎士に恩を返す。戦場に立つ理由はそれだけだ。
実のところ、ナバルも戦場に立つ性格ではない。戦いを好まないナバルがここにいる理由は、ヘルメリアの社会を容認できないだけだ。亜人を人と思わない差別社会。虐げられる人の表情を思い出し、槍を強く握りしめる。
「火炎瓶が作れなかったのは残念かな」
「良く燃える油、高いですからね……」
ナバルは炎を起こして歯車騎士団を混乱させようと火炎瓶を用意しようとしたが、可燃物質を多く用意できなかったため断念した。気を取り直して歯車騎士団に立ち向かう。
「ち、近づかないで、来ないで、殺さないで……!」
怯えながらアルミナが『バカでもわかる死霊術』に手をかざす。注がれた魔力が反応し、歯車騎士団の足元が沼地に変わる。足を取られた騎士達は動きを止めるが、戦意は衰えない。その表情を見て、アルミナは更に怯えだす。
「悪いがこれで終わりだ!」
歯車騎士団の視線を遮るようにナバルがアルミナの前に立つ。盾と槍を手にして相手の前に立ち、真っ直ぐにその槍を突き出す。沼で足を取られていた騎士はそれを避ける事が出来ず、そのまま大地に倒れ伏した。
「おのれフリーエンジンめ!」
「まだまだ数の上では勝ってるんだ。怯むな!」
両軍の勢いは止まりそうもない。戦いはこれからだ。
●
外の喧騒とは打って変わって、館の中は静まり返っていた。
しかしその静寂こそが『作品』を隠すベール。夜の帳の中、静かに刃は翻る。
「――はっ!」
『カタクラフトダンサー』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)は廊下に隠れている『作品』に不意打ちを仕掛ける。音をけして接近し、天井や壁と言った三次元的な足場を駆使しての攻撃だ。
「……こないな小さい子達を戦闘の道具にするなんて信じられん」
倒れ伏した『作品』をみて、アリシアは苦々しく呟く。言葉通りの子供なのだ。肉体的にも脆く、ただ『不意を打つ技術』だけを与えられた少女。奇しくもアリシアの言う通り。彼女達は戦いの『道具』なのだ。
「せやけど、生半可な同情は禁物やな。この子らに人殺しをさせへんようにせな」
それが大人の責務とばかりに、アリシアは館を走る。
「あーあ、面倒臭いっすねえ。面倒臭くて面倒臭くて嫌んなるっす」
愚痴りながら館の中を歩く『stale tomorrow』ジャム・レッティング(CL3000612)。ぼやきながらも周囲を見回し、色々な所をチェックしている。何が一番めんどくさくて嫌になるかと言うと――
「この状況で全く怯えてない子供……クソ過ぎていっそ笑えるっすな」
家具の影に隠れている子供の感情を探査したのに、緊張も恐怖も高揚も何もない事だ。雨の中で止むのを待つような感情でナイフを握っている。殺意さえそこにない完全な『道具』。ジャムは無言で引き金を引き、『作品』を伏す。
「不殺の権能バンザーイ。とりあえず縛っておきますか」
自殺出来ないように縛って猿ぐつわを噛ませ、ジャムは廊下を進む。
(子供を『作品』だなど……許せないわ)
怒りを押さえ込みながら『暗闇から狙う者』アリア・セレスティ(CL3000222)は思考を回す。自分が奇襲するならどうするか。それを想像しながら館を捜索する。地的優位、意識の隙間、そして極端な死角。そして自分と『作品』の違いを紐づける。
(同じ奇襲タイプでも、子供達は力がない。だから初手に全てをかける――ここね!)
正面に不意に現れた『作品』。何も知らなければ館の小間使いと勘違いするだろう姿。そこに生まれる日常回帰。アリアは蛇腹剣を『後ろ』に放つ。剣先は背後から奇襲しようとした『作品』に穿たれた。返す刀で正面にいた『作品』を剣で裂く。
「おやすみなさい。貴方達が過ごしやすい未来を作るから」
倒れた子供の頭を撫でるアリア。その顔は我が子を抱く親のような表情だった。
「…………成程」
『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)は『作品』の出来栄えに、冷静に納得していた。セフィラの加護により、不意の攻撃を察知することが出来る。だからこそ、倒れ伏した『作品』の動きに納得していた。その動きはあまりに『自然』だったのだ。
「見事です。あるいは有能な人殺しになれたのかもしれません」
まるで街で捨て違うような歩み。少女特有のあどけなさ。使い捨ての鉄砲玉としては見事なモノだ。ミルトスの攻撃で倒れている『作品』は気を失い、動かない。なるほどと納得はするが、気に入らないのも事実だった。
「彼女達にも未来はある。そう信じましょう」
言ってミルトスは気配を消し、潜行する。
「次はここですね」
あえて『ReReボマー?』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)は口に出してから扉のノブに手をかける。鍵が開いているかを確認するようにノブを回しながら、魔力を瞳に回して室内を確認する。『作品』の数は――二名。
「では――行きますよ」
ズームガジェットを操作しながら、ゼンマイ人形を起動させるエミリオ。相手の居場所は解っている。ならば相手が動くよりも前にこちらが動くが上策。人形の射撃は少女の動きを止め、そのまま意識を奪い取る。
「はい、お疲れ様です。それでは次に行きますか」
自らのペースを崩すことなく、エミリオは進んでいく。
「館に蝋燭はあれど、だからこそ生まれる影がある、か」
館の廊下を歩きながら『望郷の士』島津・豊太(CL3000134)は頷いていた。廊下に等間隔で並んでいる蝋燭。一定の明るさを確保するが、同時に館に一定の影を生んでいる。豊太の瞳はその『闇』を見通していた。花瓶の後ろに隠れる、子供一人。
「こっちだ。合わせるぞ」
近くにいた仲間に声をかけ、ハンドサインで見た結果を伝える。豊太はそのまま武器を構え、じりじりとすり足で近づいていく。そして一気に飛びかかり、サメの牙で作られた格闘武器を『作品』に叩きつけた。
「確保したぞ。さあ、次だ」
意識を奪ったことを確認し、豊太は仲間と共に次の場所に向かう。
「少女達を暗殺人形に仕立てるなんて絶対許せない!」
と怒りに燃える『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)。その怒りを胸に秘め、今は館内を進んでいる。瞳に力を込めて天井や壁や床を透視する。隠れている『作品』を見つけ、同時に地面を蹴って拳を振るう。
「ごめんね! でも必ず開放するから!」
手折れそうなほどか細い少女。その姿を見てカノンはつぶやく。拳は『作品』の腹部に命中し、『作品』はその一撃で体をくの時に折ってそのまま崩れ落ちる。持っていたナイフが床に落ち、カランと小さく音を立てた。
「……こんなの、おかしいよ!」
亜人だから虐げられる。そんな社会に怒りを募らせながら、カノンは強く拳を握った。
「これと、これと、これで」
「問題ない。先行するからついて来てくれ」
『炎の踊り子』カーシー・ロマ(CL3000569)がいくつかのハンドサインを示し、それに頷く『私立探偵』ルーク・H・アルカナム(CL3000490)。『場所』と『人数』と『状況』。それだけあれば十分とルークは頷いた。
「戦闘にならない事を祈ってるよー、っと」
聴覚を研ぎ澄ましながら、魔力の波を周囲に飛ばすカーシー。相手が不意打ち専用であるのなら、当然隠密の訓練も受けているだろう。それでも完全に無音と言うわけにはいかない。それを察知し、ルークに伝える。
「大事なのは観察力。人が潜むのに僅かの痕跡も残らない訳はない」
『いる』という事が分かれば、次はルークの出番だ。私立探偵としての経験則から、どう隠れるかを推理する。呼吸、動き、不意を突く所作。理論による推測、即ち推理。導き出した答えをカーシーに伝え、一気に攻め立てる。不意を打たれ、あっさり縛につく『作品』。
「些か手荒になったが、お前達を含めた未来の犠牲を防ぐためだ」
言いながら手慣れた動きで『作品』を拘束していくルーク。子供を縛るのは目覚めが悪いが、だからと言って放置はできない。ここで手を緩めずに対応するのが、大人の務めなのだ。
「次行こう次。こーゆーのに小さい子を使うとか胸糞悪い」
そんなルークを見ながらカーシーは腕を組んで怒っていた。基本にぎやかしのカーシーだが、こういった所業は許せない。奴隷解放などの正義を掲げるつもりはないが、個人の怒りを隠さない。ただそれだけだ。
自由騎士の働きが、館内の『作品』の数を少しずつ減らしていく。
●
そして館の最深部。巨大な金庫と大きな卵型兵器。そして突入と同時に逃げた一人の男。
「逃げられましたか……!」
悔しそうに『その瞳は前を見つめて』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)はチャールズが逃げた方向を見る。抜け穴は完全に塞がれてみることもできないが、出来るなら足止めをしたかった。それだけ許せない相手だ。
「お、幼い少女を、使い捨ての道具にするなんて酷いです!」
ヨウセイとしてシャンバラで虐げられていたティルダにとって、奴隷扱いされている亜人には思う所があった。ましてやそれが年端もいかない少女となれば。怒りの声と共に放たれた氷の矢が、卵型機械の動きを止める。
「少しでも早く倒して、チャールズを追い捕らえないとですから!」
「まだキリほども生きてない子が、こんなことに使われるなんて」
情報で聞いた卵型機械の内容を思い出しながら、『戦塵を阻む』キリ・カーレント(CL3000547)は唇をかむ。使い潰されて死ぬだけの少女。奴隷調教により、その事を全く理解していないのだろう。その事が許せなかった。
「先ずはあの装甲を破壊しなくちゃ!」
サーベルを構え、キリは真っ直ぐにハンプティダンプティに向かう。振りかぶったハサミの腕をローブで受け流し、装甲の隙間を狙うようにサーベルを繰り出した。魔力を通した剣戟が装甲の隙間を切り裂いた。
「生きていれば絶対いい事はある! 自殺なんかさせるもんか!」
「はい。これは未来を勝ち取るための戦いです。勿論、あそこの子の未来も」
キリの言葉に頷く『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)。この戦いはヘルメリアの奴隷制度がかかっている。未来のヘルメリアで虐げられる亜人や混血種がいなくなるか否かの分かれ道。それを自覚しアンジェリカは武器を振るう。
「十字架よ、いと高き所から祝福を。平和の歌を奏で給え」
祈るようにアンジェリカが呟き、『断罪と救済の十字架』を振るう。生まれた衝撃が装甲を伝い、内部に直接打撃を与えた。幾度となく硬い鉄を打ってきたアンジェリカだからこそなしえる技法。そこにあるのは飽くなき信仰心か。
「とりあえず、あのチャールズとかはムカツキますので一発殴っておきましょう」
「奴隷制度……世の中にはいろいろあるんですね」
見聞を広めるために自由騎士に参入した『最初のいっぽ』ナーサ・ライラム(CL3000594)は、ヘルメリアの奴隷制度を聞いて、興味がわいたのは事実だ。だが同時に世間に萬栄していい精度でない事も理解していた。その結果が、目の前の卵型機械なのだ。
(おそらく、中の少女はハンプティの機能で生かされている……破壊が死につながるのは、そういう事なのかもしれません)
ハンプティダンプティの情報を思い出しながらナーサは冷徹に推理する。それはむしろ覚悟の表れ。少女を救うのと、チャールズを追うのと。優先すべきは後者なのだ。ヒューマニズムを軽視するわけではないが、大局を忘れるつもりはない。
「ともあれ今は、攻めなくてはいけませんね!」
「うむ。相手は抜け道を塞ぐために動かずにいる。そういう意味ではくみしやすい相手だ」
『そのゆめはかなわない』ウィルフリード・サントス(CL3000423)は頷き、武器を構える。敵対国の商業組織の金庫を奪う。そのシチュエーション自体は心躍ると無言で炎を燃やしていた。もっとも、そのお金は自由に使えるわけではないのだが。
「シザーアームと火炎放射でこちらをけん制するようだが……まだまだ狙いが甘い」
ハンプティダンプティの動きを見ながらウィルフリードは間合いを詰めていく。機械自体の性能は悪くはないのだろうが、操縦しているのは戦い慣れしていない少女だ。自由騎士の戦闘経験には遠く及ばない。フェイントを混ぜた一撃が装甲を穿つ。
「さて、装甲はあとひと息かな」
「無理はしないように。焦って最終目的を損なう事だけはしないでほしいネ」
猛る前衛を押さえるように『博学の君』アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)は声をかける。目の前の少女を助けようとすれば、その分本来の目的である金庫の鍵を失いかねない。主目的を取り違えないようにと釘を刺しながら、魔力を展開する。
(全てを救いたいという気持ちがないわけじゃないんだけどね)
言いながらアクアリスは展開した魔力に癒しの力を込め、解き放つ。アクアリスも救える命なら、救いたい。だが現実は様々な問題でそううまくいくことは少ない。それでも仲間がやりたいと思う事を精一杯守るつもりだ。
「さて、上手くいくといいけどネ」
「上手くいかせるんだ。その為に力をつけてきたんだから」
二本のダガーを手に『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)が口を開く。かつて虐げられたヨウセイ種。その経緯もあってオルパは『弱者』へ手を差し伸べる。ヘルメリアで心を無くした奴隷達。それとかつてのヨウセイを重ねていた。
「これだけデカいと、避けづらいだろうよ」
円を描くように移動し、ハンプティダンプティの隙を伺うオルパ。こちらの動きを察しているのか近づけばその腕が動く。だが抜け道を塞いでいる状況では動ける範囲は限られる。震え荒れたダガーが次々と機械を切り裂いていく。
「やはりな。あと魔法耐性も低くそうだ。上手くやれば中の少女を救えるかもしれない」
「――どうかしら? アタシには手遅れだと思う」
冷たく言い放つ『遠き願い』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)。ヘルメリアと言う国を見てきたライカにとって、目の前の少女を救う算段はないように見えた。国そのものがノウブル以外を虐げるようになっているヘルメリア。その悪意は根強い。
「とにかくこいつを倒さないとね。この機械も、チャールズも、ヘルメリアも、全部壊すわ」
物憂げに言ってライカはハンプティダンプティに迫る。未来を見ながら機械の腕の攻撃をかわし、少しずつ斬撃を加えていく。そこにあるのは怒り。この国に萬栄する悪意に対するライカの怒りだ。
(どうにかするには奇跡でも起こすしかない。本当に胸糞悪いわ)
果敢に攻める自由騎士達。その攻勢に少しずつ卵型機械の形は崩れていく。
●
歯車騎士団と自由騎士(名目上はフリーエンジン)との戦いは、少しずつ変化していく。
最初は数で押していた歯車騎士団だが、自由騎士の粘りと実力差に押されるように少しずつ勢いを失ってきていた。
無論、こういう時の為に援軍が来ることになっている。信号弾打ち上げから数分。常駐している兵が来る――はずだった。
「援軍はどうした!?」
「駄目です! 三、六、七小隊が先のフリーエンジンとの交戦でやられてます!」
「ザリガテ領に向かった蒸気騎士部隊も同様です! 手ひどくやられ、メンテナンス中!」
「嘘だろ!? マルソー四等の部隊も来ないだと! あの人、こういう時真っ先に来そうなのに!」
次々届く信号弾に歯車騎士団の悲鳴が上がる。
「これで終わりでござるよ」
戦いの動乱に紛れるように『おちゃがこわい』サブロウ・カイトー(CL3000363)が倒れた歯車騎士団に刃を突き立てる。的確に急所を貫き、その命を奪っていった。ここで生かしておけば隠密行動をしている身として後々の障害になりかねない。そう判断しての行動だ。
「まあまあ、援軍が来ないとか大変ですねぇ~」
他人事のように言い放つ『まいどおおきに!』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)。援軍が来ない理由は自由騎士の活躍が原因なのだが、それをおくびに出すことなく微笑んだ。如何なる時も笑顔で対応。それが商人の務めだ。
「皆さん巻き込まれないようご注意くださぁ〜い!」
言いながらシェリルは魔力を魔導書に集め、円を描くように魔導書の上で手の平を動かす。回転の度に魔導書が輝き、シェリルの掌に白く小さな光が生まれる。シェリルはにこりと微笑み、白の魔力球を敵陣に解き放った。光の爆発が歯車騎士団を襲う。
「おいたは禁止ですよ~。大人しく寝ていてくださいね~」
「この国の亜人達の為に、負けられませんね!」
気合を入れて戦いに挑む『こむぎのパン』サラ・ケーヒル(CL3000348)。サラ自身はノウブルだが、サラの店に食べに来る客の中にはケモノビトのような亜人もいる。それとこの国の亜人を比べれば、心が痛んでくる。
「この国の亜人さんや混合種さんに美味しい物を食べてもらうためにも!」
食堂で見る事が出来る笑顔。それをこの国にも広めるためにサラは戦う。魔力で自分自身を加速して、戦場を疾駆する。動くたびに金髪が舞い、同時にサラの剣が翻った。その速度に歯車騎士団は翻弄されるように出遅れ、傷ついていく。
「レベッカさん!」
「はい、サラ様。行きますわ」
サラの言葉に頷く『生真面目な偵察部隊』レベッカ・エルナンデス(CL3000341)。奴隷制度、という言葉にレベッカはいい印象を抱けない。ヘルメリアのシステム的な奴隷制度を破壊するためにも、この作戦は成功させなくては。
「単体攻撃ではらちがあきませんわ」
歯車騎士団の数を前に、レベッカは距離を取り、ライフルを構える。深呼吸と同時に肩の力を抜いて、精神を落ち着かせた。狙う、撃つ。ライフルの基本動作。それのみに全行動全神経を費やす。戦場全ての敵を一対ずつ、確実に狙い撃つ。
「奴隷協会を弱体化させて、奴隷制度を終わらせますわ!」
「その通り! ヘルメリアに生きる『全ての』ヒトに希望を! 僕の剣は未来を切り拓く為にこそある!」
朗々と戦場に響く『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)の声。その言葉に欺瞞や打算は何一つない。心の底から『全て』の種族に希望を与えようとしていた。戦いと言う手段は、その為の行為なのだ。
「『ヒト』の未来をノウブルだけの欲望で塗り潰す。そんな事があっていいはずがない!」
いうなり歯車騎士団に走るアダム。オールモストのキジンの重量をそのまま打撃力に変えるように、盾を前面に向けて自分自身を叩きつけるように突撃する。相手の規制を崩すと同時に追撃を加え、連携を崩すように攻めていく。
「我が名は騎士アダム・クランプトン! 蒸気纏いし騎士達よ。汝らに義があるならその義をもって挑むがいい!」
「そしてわしが颯爽と戦場に現れし真紅の稲妻! スピンキー・フリスキー!」
言って叫ぶ『にゃんにゃんにゃん↑↑』スピンキー・フリスキー(CL3000555)。疾風が吹き、赤い稲妻が背後に走る。あ、『新手のオラクルか!』と『名乗り 急』の技能効果です。歯車騎士団が注目したと同時にスピンキーは動き出す。
「にゃにゃにゃにゃー! これでどうだにゃー!」
猫のように叫びながらスピンキーは敵に攻撃を加える。力を込めて、武器を振るう。ただそれだけの攻撃。だからこそ、その者の身体能力が浮き出る一撃だ。獣性を開放したかのようなスピンキーの攻撃が歯車騎士団の動きを乱していく。
「みゃおおおおおおおおおおおん! まだまだ負けないにゃああああああ!」
「こっちだって負けないよ! どりゃああああああ!」
『薔薇の谷の騎士』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は拳を構えて歯車騎士団に挑む。央華大陸風の格闘技を着こみ、体中全てを使って戦いに挑む。腕、足、頭、背中……少女のような美しさを持ちながら、それら全てが凶器となる。
「人数二倍か。腕が鳴るよ!」
数が二倍なら、いつもの二倍動けばいい。そんな思いのままカーミラは戦場を動く。拳を振るった勢いを殺さないように足払いをし、立ち上がると同時に背中で敵を穿つ。振り返ると同時にそこに居た敵に頭突きを加え、呼気を整える。舞う汗が滴となって光った。
「ケモノビトの根性ナメんな! 私はまだまだ倒れないよー!」
「タフネスだったらアタシも負けてられないね!」
鉄塊を振るいながらトミコ・マール(CL3000192)が大笑いする。背中の羽根を広げ、胸を張っての大笑い。迫る歯車騎士団など小事と言わんがばかりである。大事な『子供』を守るために『親』として身を張る覚悟がそこにあった。
「痛いのをもらいたいやつからからかかっておいで! どっせぇぇぇぇい!」
迫る歯車騎士団を誘うように大声を上げ、手にした鉄塊を力いっぱい振るう。歯車騎士団の攻撃を身体強化と精神力で耐え凌ぎ、さらに攻撃を加えていく。子供のために頑張るのが親の努め。美味しいごはんを子供に食べさせるため、トミコは今日も奮闘する。
「さあさあ、アタシはここだよ! 怖気づいたかい!?」
「金庫の方には誰も通さないよ!」
『黒砂糖はたからもの』リサ・スターリング(CL3000343)は館への入り口を背にして戦いに挑む。力を合わせれば何でもできる。リサはそう信じている。だから金庫に向かった者を信じ、自分はここを死守するだけだ。
「皆と一緒にがんばるよ!」
他の自由騎士の動きを見ながら、リサも体を動かす。扉を守る位置をキープしながら、迫る歯車騎士団を凌いでいく。攻撃してきた剣を持つ腕を払って懐に踏み込み、零距離から拳を叩きつける。
「これでどうだー!」
「いい流れだ。これを維持していければ何とかなりそうだ」
戦況を鑑みながら『道化の機械工』アルビノ・ストレージ(CL3000095)は頷いた。ここで歯車騎士団を足止めできれば、館内や金庫で戦う者達への援護となる。全滅させる必要はないが、こちらが無視できない勢いを示せればいい。
「自由騎士の魔力の自然回復、ワタシが担当させてもらおう」
体力の回復は他の騎士達に任せ、アルビノは気力と魔力の回復に努める。身体の活性化を促す薬品を錬金術で作り、それを気化して仲間達に纏わせるように風を飛ばす。体内に入った気体は神経を刺激し、リラックスと気力回復を促していく。
「さて。次に癒すべき人は――」
「亜人も混血種もノウブルも変わらない。それを証明する」
『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)は歯車騎士団に向かい静かに言い放つ。それは歯車騎士団だけではない。このヘルメリア全てに対しての宣言だった。同じ知識を持ち、会話を交わすことが出来る者同士で差をつけるなど、愚行としか言いようがない。
「館の中には誰も入らせやしないよ」
試験管を手に、リュリュは魔力を展開する。薬品の量、試験管の角度、混合する魔力。そういった要因を組み合わせ、錬金術は威力を発揮する。リュリュの試験官が僅かに光り、その光に含まれる癒しの力が仲間達を支える。
「さあ、異議あるなら答えよう。それが錬金術師の勤めだ」
「さあ、来なさい! この拳で貴方達を止めて見せるわ!」
「みんな、追い返してあげますわ」
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)が拳を叩くように挑発し、その後ろで『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)が頷く。館の地図は事前に手に入っている。禁固への最短距離の入り口に位置取り、威風堂々と歯車騎士団を迎える。
「残念ね。ココはいまから通行止め。悪いけど、そのまま庭で日向ぼっこでもしていて頂戴?」
言いながら拳を振るうエルシー。防御の構えを取りながら、龍の籠手で相手を穿つ。大事なのは自分が倒れない事。玉砕覚悟で特攻するのではなく、基本に忠実に構えて動き、確実に足止めしながら敵を討つ。一つ打っては、構え。一つ打ってはまた構え。
「お眠りくださいませ」
『戦乙女の弓』を打ち放ち、歯車騎士団の動きを封じていくレオンティーナ。魔導力の矢に込められた眠りの魔力が、歯車騎士団を眠らせていく。騎士一人の動きが留まれば、連携が崩れて攻めやすくなる。レオンティーナはそれを狙っていた。
「この程度? 騎士を名乗るには弱すぎるわよ!」
「いいんですよ。ゆっくり眠ってくださいね」
挑発するようにエルシーが叫び、騎士を眠らせながらレオンティーナが優しく声をかける。互いの隙をカバーするように二人は動き、歯車騎士団の陣形を崩していく。数の優位などものともせず、二人は一気に攻め立てていく。
「皆を救えるほどの力があればいいのですが……」
「之までを思えば気が急くのは分かるが、先ずは一つずつだ」
『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)の憂えるような言葉に『盾の誓い』オスカー・バンベリー(CL3000332)が答える。ヘルメリアの状況は看過できないが、だからこそ確実にことを為さねばならない。現実は一歩ずつしか変わらない。理想だけの一足飛びな行動では人は救えないのだ。
「はい……。私は全力で皆さんの回復支援に回ります……オスカーさん、守りは任せましたからね!」
迷いを振り切るようにフーリィンは頷き、オスカーに背中を任せる。全てを救う英雄にはなれない。だからと言って誰かを癒すことを止めるつもりはない。フーリィンの魔力が戦場を包み込み、仲間達の傷を塞いでいく。
「尽力する」
短く告げてオスカーは盾を構える。倍以上の戦力差を相手に、守る。とても楽なことではないが、それでもオスカーの心に不安はない。フーリィンからの『信頼』を受けて、騎士は己が盾を構える。誓いはここに、戦場の中で騎士は乙女を守る盾となる。
「しかし容赦なく命を委ねられるのは『信頼』ととるべきか、『無茶振り』と表現すべきか」
「絶対に守ってくれるって信じてますから!」
迫る刃や弾丸を気にすることなくフーリィンは癒しに集中する。敵の動きなど目に求めていない。全ての危機はオスカーが護ってくれる。そう信じての動きだ。オスカーも口にしながらその動きに応えるために盾を構える。浮沈の癒し。そう表現できる二人の連携がここにあった。
「攻めきれん……! これだけの数なのに!」
歯車騎士団も自由騎士の動きを前に攻めきれずにいた。数でこそ勝っているのに、その優位さを上回る気迫と実力に気圧されていた。
歯車騎士団が戦力を他所に回す余裕はない――
●
館内の『作品』は相応の訓練を繰り返し、完成に至る。その精度に果てはなく、殺せば殺すだけ刃は鋭くなる。
スレイブマーケットで売れ残った奴隷を商人から買い、それを使って練度をあげる予定だったのだが、自由騎士達が奴隷商人を襲撃したこともあり訓練数そのものが少なかった。結果、最低限の練度の者しか館にはいない。――皮肉なことに十を超えた経験深い『作品』は館から追放されていた。
「ったく。ガキを使うとか胸糞悪い」
『殲滅弾頭』ザルク・ミステル(CL3000067)は銃を闇の中に向けて、引き金を引く。『作品』が襲撃をするよりも早く弾丸を叩き込み、その動きを封じ込めた。捕縛性の高い魔力弾。『作品』同様、こちらも対策なしでは回避不可欠な技だ。
「すべてを奪われたガキか。売られたか、喪ったか。どうでもいいけどな」
子供の奴隷の経緯は大きく二つだ。親に売られたか、親を喪ったか。ザルクは後者だからこそ、その辛さが理解できる。少し運命が狂えば、この子供のようになっていたかもしれないのだ。だから、というわけではない。ザルクは子供を抱え、歩き出す。
「生きてりゃいいことあるかもな。そういう未来になればいいけど」
相手の意見を聞かずに救うのがエゴだという事は解っている。それでも、道を示すのも先達の務めだ。
「ま、実際有効よね。幼い見た目で油断させるのって」
壁の向こうで隠れている少女を透視の魔眼で見ながら『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)はため息をついた。人は第一印象からは逃れられない。僅かな時間であれ、見た目に引きずられる。そしてその『僅か』があれば、ナイフを突き立てる事が出来るのだ。
「でもま、分かっていればどうという事はないわよね――未来確認。悪いけど丸見えだわ♪」
五秒後の未来を予知し、きゐこは廊下を歩く。不意打ちが来るタイミングと方向が分かれば、身体能力が著しく離れていない限りは対応は可能だ。怯えながら振るわれるナイフを魔力の盾で防ぎ、もう片方の手で放った魔弾が少女を穿つ。
「拘束拘束、っと。……そう言えばオラクルじゃないんだから魔眼でいう事聞かせれそうね、この子達」
わざわざロープで縛らなくてもそれなら楽だったかも、と後悔するきゐこ。
「準備完了」
『百花の騎士』アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)はメイド服に着替え、館内を進んでいた。繰り返そう。アリスタルフはメイド服に着替えていた。曰く、木を隠すなら森、館に人を隠すならメイド、という事である。
「こちらアリスタルフ。1Fの南側十字路で対象の体温確認。これより抗戦に入る」
マキナ=ギアで他の自由騎士に連絡し、拳を構えるアリスタルフ。意識を集中し、音を立てない歩法で一気に間合いを詰める。滑るような足の動きと空気の中を流れる様な体感の動き。その両方に対応できず『作品』はアリスタルフの拳を受けて気を失う。
「……これも仕事、仕事だから」
自分に言い聞かせるアリスタルフ。そう、これは掃除。メイドの仕事は館の掃除。そう何度も心で呟いた。
「AAAAAAAAAGIRrrrrrrrrrr!」
他の者とは打って変わって『黒き狂戦士』ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)は雄たけびを上げて館内を突き進む。自分はここにいるとアピールし、隠れる少女の気配を打ち消していた。だがそれは同時に、隠密を行う自由騎士の気配も消すこととなる。
「AKUMA! KiLLLLLLLLLLLLLLLL!」
闇の中現れた『作品』をナイトオウルは叫びながら切って捨てた。これまで殺してきた『作品』の罪。それを雪ぐための一撃。それこそが女神が与えた温情とばかりにその行為に容赦はない。ヘルメスに従う邪教徒に操られた少女に、憐れみの刃を繰り出す。
「Heeeeeermeeeeessss!」
鎮魂の雄叫びは、狂気と殺意と共に館内に響き渡る。
「あたしを欺こうなんて相手が悪すぎるよねー」
『未知への探究心』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は『作品』が隠れている場所を確認し、笑みを浮かべる。ホムンクルスを起動させた後に、『作品』に気付かないふりをして近づいていく。襲い掛かってきた『作品』は、ホムンクルスの不意打ちを受けて驚いた顔をした。
「魔法知らないんだから、ホムンクルスとか当然知らないわよね。それじゃ、これで終わりーっと」
動揺している『作品』にワイヤーを振るい、その動きを拘束する。年端もいかない少女を拘束するのにさしたる時間は必要なかった。相手の隙をつき、知識の外を武器とする。それがクイニィーの戦い方だ。
「さて、あと何人いるのかなぁ。まだまだ遊んであげよう」
にぃ、と笑みを浮かべてクイニィーは館を進む。
「怪我人少なくておじさん楽だわー」
『帰ってきた工作兵』ニコラス・モラル(CL3000453)は怪我人を癒すために遅れて行動していた。『作品』の不意打ちで汚した仲間が出れば、そこを癒しにかかろうという算段だ。だが思いのほか怪我人が少なかった。
「ま、奇襲専門だから初手さえ外せば問題なし、と。水鏡万能だね」
言いながらニコラスは部屋の中を物色する。館に何かないか探索しているのだ。奴隷協会の有する館だ。それなりのものはあるはず。流し読みで書類を見るニコラスはある書類の束を見て目を止める。
「『兵站軍』…………歯車騎士団の亜人部隊か」
兵站軍――奴隷、という言葉は使いたくないが、扱いとしてはその言葉通りの亜人部隊。人機融合装置により、軍に命を握られた者達。今読み切るには量が多い。ニコラスはカバンに書類の束を突っ込んだ。
「幼女狩りヨー」
「ルーちゃんももロリコンじゃね? マジ? マ?」
『有美玉』ルー・シェーファー(CL3000101)の言葉に『チャラオン』ルガトルシュ・フォルガ(CL3000577)が反応する。確かにやっていることは少女の『作品』を捕らえるわけだが。ともあれ二人は油断なく館を進んでいく。
「作戦はあれヨ。パッと見つけてガッと掴むの。ルガっちが聞き担当。アタシが目担当」
「ソッと行ってガッてやってポイ! りょ! 目星よろ!」
微妙に会話があっているようなあっていないような二人だが、ルーがめぼしい所を探り、ルガトルシュが聴覚で確認するという認識はお互い持っている。発見した後もルガトルシュが前に立ち、『作品』の動きより先んじて攻め立てて、制圧していた。
「よっしゃパーペキ! 鬼決まった! 不意打ちさえなければバリ簡単に押さえれるわ」
「流石ー。それじゃ、動けないように縛っときまショウ」
「ルーちゃん捕縛の手際やたらよくね? 気のせい?」
「乙女の嗜みヨー」
小さく叫んでガッツポーズを取るルガトルシュ。ルーは伏した『作品』に近づき、慣れた手つきで縛り上げる。テキパキした動きに怪訝に思うルガトルシュを軽くいなすルー。やっぱなんかヤバくね? とルガトルシュは思ったが口には出さずにいた。
「よーし、それじゃあ次行こう! ……自分がこうなったかもしれない、って思うと辛くなるネー」
「? なんか言ったか?」
「なんでもないネ。ジャンジャンバリバリ狩るヨー!」
こぶしを突き上げ、館を進むルー。ルガトルシュは肩をすくめてルーについていった。
「……リグは」
『おいしいまいにち』リグ・ティッカ(CL3000556)には本当の名前がある。それはリグ自身にも思い出せない名前。いつから自分は『リグ』だったのか。それさえ思い出せない。――目の前の『作品』のように。
『作品』――そう呼ばれる少女にも、名前はあったはずだ。ナイフを手にした人を殺す為の『道具』。リグとの違いは拾われた先。共に名前を無くし、自由騎士に拾われたリグ。チャールズに拾われた少女。その違いがあるだけだ。
「『あなた』の名前を知りたいです」
それは意味のない事だ。当の本人さえ忘れてしまった――忘れさせられた事だ。痛みと悪意に塗りつぶされてしまったことだ。
だからこそ――リグは問いかける。誰もが無意味と分かっていながら、しかし誰よりもその境遇を理解しているリグ・ティッカだからこそできる救い方で。
「『あなた』の名前が聞きたいです。『作品』ではない『あなた』のお名前を」
だからそれは奇跡ではなく、
「な・ま・え……わたしの、なまえ……」
ただ『Who are You?』と問いかけたリグの優しさ。世界に『個』を否定された少女が求め、そして人として歩き出せる柱を救いあげた問いかけ。
「あ・り・し・あ……私の、名前……は、アリシア」
――その日、リグは確かに少女の心を拾い上げた。
●
ハンプティダンプティとの戦いは佳境に向かっていた。
装甲は剥げ、フレームも破損して露出した操縦席。それでもなお戦う事を止めない卵型機械。
自由騎士も傷つきながら、しかし諦めることなく戦い続けていた。チャールズが完全に逃亡するまでまだ猶予はあるが、かといって落ち着いていられる状況でもない。
「だったらオレが無茶を通して追いかける!」
『果たせし十騎士』マリア・スティール(CL3000004)は言うなり天井に張り付いて、そこから抜け穴に向かおうとする。最初は装甲やフレームに阻まれて通る隙間はなさそうだったが、ハンプティダンプティの破壊がここまでくれば、無理やり通れそうだと突貫する。
「ぬおおおおおおおおお!? よっしゃ! 先行くぜ――!」
ハンプティダンプティの壊れたフレームの隙間に体を強引に押し込んで、マリアは何とか抜け穴を抜ける。そこに襲い掛かってくる戦闘用奴隷。マリアは巨大な盾を構え、突破していく。
「待ちやがれ変態、って数多いぞ!? うおおおおおお!」
「……敵陣で一人突貫するのは、危険だと思うのだが」
マリアの突貫に冷静な意見を述べる『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)。下手に捕まれば捕まって奴隷になる可能性もあるのだと思うと、止めるべきだったかもしれないが時すでに遅し。ともあれ今は目の前の機械だ。これをどうにかして追いかけよう。
(ほかの突破口はない。やはりハンプティダンプティをどうにかするのが先決か)
周囲を何度も確認し、マグノリアはそう断言する。構造的にも用途的にも秘密の逃げ道同士が繋がっている可能性は低いだろう。意識を切り替え、魔力を練り上げる。仲間の気力を癒す錬金術の技。それを矢次に繰り出していく。
「中の少女を救うにしても、ここで倒れるわけにはいかないからな」
「はい……だから……回復……します……」
途切れ途切れに『笑顔のちかい』ソフィア・ダグラス(CL3000433)は言い放つ。人と話をするのは苦手だが、同じ自由騎士なら少しずつ会話もできるようになってきた。回復と言う戦闘を支える根幹としてソフィアは戦場に立つ。
「攻撃を受けて……痛い人とか……言ってくださいね……」
癒しの魔力を展開するソフィア。マジックスタッフを手にして、アカデミーで学んだことを思い出しながら呪文を展開していく。元より才在る神童だったソフィアの魔力が戦場に広がり、仲間の傷を塞いでいく。
「……ええと、次は……」
「次は右側のグループを中心に癒してほしい。私は反対を癒す」
『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はソフィアに言って別方向のグループを癒しにかかる。医者として長く自由騎士に従軍してきたツボミにとって、僅かな所作の違いさえも治療のサイン。それを見逃すことなく、仲間達を癒していく。
「ハンプティダンプティ……皮肉だな。割れれば王様さえも元に戻せないか」
絵本の話を思い出すツボミ。塀から落ちたハンプティダンプティは元には戻らない。失われた命も、決して蘇らない。自爆前提の使い捨て兵器。そんなものをツボミは許すことはできなかった。死ぬ前に癒す。その覚悟でこの場に立つ。
「私は医者だ。それ以上でも以下でもない。ならばやるべきことは一つだ」
「信頼してるぜ、先生。だから無茶が出来る」
ツボミの言葉に頷くウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)。ノウブルは信用できないが、永く一緒に戦って来た自由騎士とイ・ラプセルは信用できる。だからこそ背中を預け、そして後を託すこともできる。
「俺は、俺を、この一撃を、信じる!」
力を十分にため込み、ウェルスは銃を構える。ウェルスは祈らない。両手が塞がるよりも両手に銃を構えて撃ち放つ方がいい。限界を超えてため込んだ銃撃。生まれる火力が操縦席の最後の隔壁を壊し、そして少女と機械を繋ぐ管を砕く。そして――
「まだだ! もっと火力をあげて一気に――!」
「そこまでだ。自分の死を『彼女』の枷にするつもりか、ウェルスくん」
我が身を犠牲にして限界を超えた火力を出そうとするウェルスを『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)が声をかけて止める。同時に放たれた白氷がハンプティダンプティの温度を下げ、その動きを止めた。
「兎に角、機械の動きを止めれば――」
さらに魔力を込めてテオドールは卵型機械に纏わりつく氷の密度を増していく。蒸気機関であるならば極端な冷気は蒸気発生の妨げになる。そうでなくとも、氷そのもので機械の足を奪えばいい。たとえそれで機能停止せずとも、頼れる仲間がいる。
「任せたぞ!」
「任された。撃ち貫く」
テオドールの言葉に応えるように『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)が槍を構える。これまで最前列で死闘を繰り広げていたアデルだが、最後の切り札は温存していた。使うべき瞬間は、今ここだ。
「死にそうになったら自爆か? そいつは判断が遅かったな!」
体中の力を溜めに溜めるアデル。キジンボディをフル稼働させ、全ての力を槍を振るためだけに集約させる。裂帛と共に放たれた一撃がハンプティダンプティと少女を繋ぐ管を貫いた。吹き出す激しい蒸気が、少女と機械の繫がりを断つ。だが、
「――違う、まだだ!」
そしてアデルは気付く。望む結末に、まだ足りないという事実に。
「はんぷてぃだんぷてぃ、はっだ、ぐれいとふぉーる」
少女は口を開き、そして手を動かす。最後の最後にそうするように『調教』されたから。機械のスイッチをいじり、蒸気を一ヶ所に留めるように操作する。
「――そこね」
ライフルを構え、『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)は静かに言い放つ。ハンプティダンプティに仕掛けられた最後の装置。蒸気を溜めこみ、一気に解き放つ機構。蒸気学の基本と観察眼でその場所を見切る。
「もう少し専門知識があれば、引きはがしもできたんでしょうけど――!」
悔いるようにアンネリーザが叫ぶ。彼女が学んだのは蒸気学の基礎知識だ。それ以上の技師関連の知識があれば、爆発物を引きはがすことが出来たかもしれない。だからできる事はこれだけだ。ライフルを放ち、少女と機械を繋ぐ拘束具を破壊する。
「今よ!」
「ん」
アンネリーザの叫びに応えるように『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)が跳躍する。これまで破壊衝動のままにハンプティダンプティを破壊するために使っていた武器を頬り投げ、一直線に少女の方に向かって走る。
(――なにやってるんだろう。むねがちくちくする)
飛び出して少女を抱えた後に、リムリィは自分の行動を振りかえる。少女の虚ろな瞳を見た瞬間に、気が付けば抱えて飛び出していた。背後からの衝撃波を受けて、地面に叩きつけられる。無意識に少女を庇うようにして受け身を取り、その痛みが体中を襲う。
(ほんとうに、なにをやってるんだろう。でも、よかった、のかな?)
自分の胸の中で定期的に呼吸を繰り返す少女を見ながら、リムリィは再度自分の行動を顧みた。かつての自分と同じ瞳をした少女の無事を確認して、胸が少し熱くなる。
「あー、あー。はんぷてぃだんぷてぃ、はっだ、ぐれーと、あー、あー!」
意識を取り戻し、手を動かす少女。その動きは機械を操作するようでもあり、何かを求めるようでもあった。これまであった物を失い、何をすればいいのかわからない。何処に行けばいいのかわからない迷子のような、そんな動きだ。
「……もう、いいんです。ハンプティダンプティを操縦していたあなたは、もう死にました」
そんな少女の手を取って『鎮魂から演舞まで』秋篠 モカ(CL3000531)は静かに告げる。歌で人を魅了するめに鍛えられたモカの声が少女の耳に優しく伝わる。言っている意味は解らないが、それでも聞くことで不安が消えていく。そんな声だった。
「それでもチャールズさんのために戦いたい、と言うのでしたらそれは構いません」
悲し気にモカは告げる。モカは彼女の人生を知らない。チャールズに従う彼女の在り方を自分の価値観だけで否定することはできない。もし戦うというのならそれは悲しいけど、少女の選択を蔑ろにしてはいけない。
「私は、これ以上戦いたくありません……どうかお話できませんか……?」
「おは、なし……お金の事? それとも、パパの、情報?」
「いいえ。貴方の名前、貴方の好きな事、貴方のお友達……そんな事を聞かせてください」
「なまえ……私の、そんなの……そんなの……!」
戦場に似合わないモカの言葉。その言葉に少女はボロボロと涙を流す。
「だ、れも……だれも、そんなこと、言わなかった……言ってくれなかった。パパや大人の人は皆、人を殺すことしか、教えてくれなかった……!
友達も、食べ物も、全部忘れろって。パパと自分以外は全部敵で、命を奪う事しか、教えてくれなかった……!
知らないよぉ……私、名前も、好きなことも、友達も……全部知らない……! 答えられなくて、ごめんなさい……なんにもなくて、ごめんなさい……助けてもらったのに、私、何にもなくて……!」
あとは言葉にならなかった。堰を切ったように泣き出す少女を、モカは優しく抱き寄せる。
「いいんです。無くなったのなら、また得ればいいんです。だから今は――」
泣きじゃくる少女の頭を撫でるモカ。
その泣き声が、自由騎士が望んだ勝利を裏付けていた。
●
「――おーい、生きてるー?」
『勇者の悪霊退治』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)は剣でチャールズを突きながら問いかけてていた。ハンプティダンプティが崩壊してすぐに抜け穴に飛び込んだのだ。先行して敵を倒してくれたマリアお陰で傷つくことなくチャールズまで追いつき、戦闘不能にしたのだ。
「逃げられないように手足斬ったけど……拙かったかな? 出血がひどくて危ないかも」
あちゃー、と頭を掻くジーニアス。剣でつついても反応が鈍くなってきた。早く治療しないと死ぬかも、と漠然と考えていた。でも逃がさない為だししょうがないよね。そう納得し、走ってきた道を見る。
「がんばってねおじさん、もうすぐで他の皆が来るよ。そうしたら多分、回復が使える人が来てくれるよ。
…………おじさん?」
ジーニアスが声をかけるが、チャールズが声に反応することはなかった。不殺の権能で手足を斬られた時は死ななかったが、その後の失血死まではどうしようもなかったようだ。
「ま、いっか。お金はあるし。カギは……これかな?」
●
『隠し槍の学徒』ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)のマキナ=ギアを通じて、作戦成功の報が伝わる。
自由騎士達は機を見て一斉に撤退を開始した。正に一糸乱れぬ行動を前に、歯車騎士団達は一瞬呆気にとられたという。追撃隊こそ編成されたが、自由騎士及びフリーエンジンに追撃の手が届くことはなかった。
移動城塞『ティダルト』内は自由騎士とフリーエンジンメンバー、そしてこの作戦で救出した『少女』達ですし詰め状態だった。一部の『少女』は自死する事こそないが、感情そのものを閉じ込めているかのように陰鬱としていた。こちらも一つの課題だが、感情を取り戻すきっかけは掴んである。そう難しい事だはないだろう。
「Wonderful! お前たちは本当にお人好しだな! お金と子供を強奪するとか最高の出来栄えだ! 唯一の問題は、重くてエンジンをフル稼働しないといけない事だな! いっそその紙幣を炉で燃やして進むか?」
とはフリーエンジン首魁の言葉である。
スレイブマーケットの資金を奪われたことで、奴隷協会の運営は事実上停止となる。
マーケットの費用を街等に支払えず、借金で多くの施設を失う事となった。同時に調教師を始めとした者への給金も支払い不能となり、職業としての奴隷調教師も生計が立たなくなったのだ。
貴族のように個人で奴隷を有する者はいるが、ヘルメリアの奴隷運営システムは大きく衰退する。亜人が大手を振って街を歩くにはまだ時間がかかるが、非道な扱いを受ける亜人がこれから減ってくるだろう。
――時代は確実に、大きく変わろうとしていた、
「フリーエンジンが攻めてきたぞ!」
突然の襲来にもかかわらず、歯車騎士団の対応は迅速だった。笛を鳴らして襲撃を知らせ、チームを組んで戦いに挑む。
だがそれもフリーエンジンと自由騎士の作戦通り。ここで歯車騎士団を足止めし、本命の館に向かう仲間達のサポートをするのだ。
「我が名は…………自由を愛する謎の女騎士、シノじゃ! 歯車騎士団よ、勇ある者あらばかかってくるがいい!」
言いながら歯車騎士団を引き寄せる『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)。手にした軍刀で歯車騎士団と切り結んでいた。挑発するように名乗りを上げ、掛け声と共に踏み込んでいく。
「ほんまに。わらわらとご苦労さんやわあ」
迫る歯車騎士団を見ながら『艶師』蔡 狼華(CL3000451)は物憂げにつぶやく。ここに歯車騎士団が集まってくれることは作戦通りなのだが、それでも雅があるようには見えない。とはいえ、手を抜くつもりは毛頭なかった。
「暑苦しい蒸気の騎士さんらに、うちの舞の美しさが分かりますやろか。よう目を見開いてうちの剣舞、ご覧下さいまし!」
言葉と同時に狼華は軽く踏み込む。街を歩くような自然な歩み。それゆえに歯車騎士団は気を削がれたかのように対応が遅れる。その隙を逃すことなく狼華の刃は翻り、そして納められる。僅かに遅れて歯車騎士団は自らについた傷口を押さえる。
「ほら。ゆるりしとったら、大怪我やよ」
「こ、ここから先は通しません!」
武器を構えて『新米自由騎士』リリアナ・アーデルトラウト(CL3000560)が大声をあげる。これだけの数を相手するのは流石に怖いのだが、それでも自分に活を入れて踏みとどまる。訓練の基礎を思い出しながら、慣れ親しんだ武器を振るう。
「こないでください、こないでくださいっ。来ないでっくださいーーーーっ!」
魔力を神経に通し、その動きを活性化させる。コンマ一秒が生死を分ける戦場に置いて、速度は勝負の分かれ目。活発化したリリアナの動きは相応の経験が重ねられている。基本に忠実に動きながら、歯車騎士団をけん制していく。
「わあああああああああああ!」
「いい動きだ。ヨツカもいい囮となろう」
リリアナの動きを見て歯車騎士団に聞こえないように呟く『背水の鬼刀』月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)。作戦のキモはどれだけ歯車騎士団に危機感を与えるかだ。ならば派手であるに越したことはない。ニヤリと笑い、ヨツカは刀を肩に担ぐ。
「全て、削ぎ落してやる」
低い声で歯車騎士団に呟くヨツカ。そのまま刀を担いだまま無防備に近づき、攻撃してきた相手を無造作に切り捨てる。相手が反応するよりも先に刀を横なぎに払い、多人数を巻き込むように動いていく。
「さあどうした。とことんやってやるぞ」
「回復は任せるんだぞ!」
戦う者達から一歩引いて、『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)が聖書を構えて口を開く。司祭様から頂いた子供向けに書かれた聖書。その優しさはサシャに伝わり、そしてサシャもまたその優しさの元に行動する。
「自分の弟や妹達と同じくらいの子が戦わされるなんて、許せないんだぞ!」
ヘルメリアの闇。それを知ったサシャは悲しむと同時に怒りを感じていた。子供達を助けたい。その一心で戦場に立つ。聖書から広がる淡い光が仲間達に触れる。光は傷口を包むように広がり、その傷を塞いでいく。
「防御や回復が必要なら、どんどん言ってほしいんだぞ!」
「ワタシの正義を示そうぞ!」
ガントレットを胸に構えるようにして、『貫く正義』ラメッシュ・K・ジェイン(CL3000120)は歯車騎士団の前に立つ。その立ち様、その表情、恥じることのない『正義』の道を歩んでいると言わんばかりの姿だった。
「我が正義は折れず、曲がらず、決して消えることは無い」
ステップを踏みながら、ラメッシュは戦場を縦横無尽に進む。時に前に出て歯車騎士団と拳をかわし、時に背後に下がって仲間に回復を施す。状況に応じたスイッチファイター。攻めに守りにと戦場を動き回る。
「さあ来るがいい歯車騎士団。この正義は砕けぬものと知るだろう」
「はい! 我が身体は鋼! スティールハイッ!」
そして『戦姫』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)も攻めに守りに動き回っていた。輝く剣と巨大な盾を持ち、歯車騎士団の攻撃を受け止めながら、その剣を振るって戦端を開く。防御を基盤とした戦術だ。
「ここは誰一人としてお通ししません!」
館に向かおうとする歯車騎士団の動きを遮りながら、デボラは武器を振るう。背後を振り返りはしない。館の中に入った仲間達が失敗することなど考えてはいない。デボラは仲間を信じ、この身を盾にしてヘルメリアの軍隊を止めていた。
(信じています、館に突入した皆様の勝利を!)
「ウル、歯車騎士団と戦ウすル」
『竜天の属』エイラ・フラナガン(CL3000406)はキザギザの歯を見せて笑うように言う。実のところ、エイラ個人的にはヘルメリアと戦う理由はない。他の皆が怒っているから戦う。自分の嫌いよりも他人の嫌いが許せない。そんなエイラの性格があった。
「仲間信ジル! トーテムポールレイン!」
トーテムポールを手に、魔力を練り上げる。集団で動く歯車騎士団。チームワークの僅かな隙をつくように放たれたエイラの魔力の矢は僅かに歪曲しながら騎士の胸に突き刺さる。先ずは一矢。できる事を少しずつ。そう決めて戦いに挑む。
「倒スは前衛任ス。オレ、援護!」
「ええ。今回は回復に回るとしましょう。武人との一騎打ちはまたの機会に」
言って頷く『我戦う、故に我あり』リンネ・スズカ(CL3000361)。闘争心が高めなリンネだが、今回の敵はそこまで気乗りがする相手ではない。暗殺技術を学んだ少女と新兵の寄せ集め。リンネの血が騒ぐほどの相手は見当たらなかった。
「さて、歯車騎士団の練度を見せてもらいましょうか」
新兵の兵士だからと言って、油断をするリンネではない。むしろ新兵の教育具合が軍の強固さを示している。唇を舌で濡らし、魔力を展開する。振るわれた魔力が癒しの光となって、仲間達の傷を塞いでいく。
「連携、丹力、そして規律。見事ですが、こちらも負けてはいませんよ」
「はい。防衛戦の経験は豊富です」
『マギアの導き』マリア・カゲ山(CL3000337)はリンネの言葉に頷く。シャンバラでの軍事行動は確かにマリアの経験の一部となって生きている。全体を冷静に見極め、足りない部分を埋めるように人々を配置し、それぞれの役割をこなす。
「長期戦になりますね。魔力の配分ミスが無いようにしなくては」
冷静に、と自分に言い聞かせるマリア。それと同時に大気からマナを取り入れ、手のひらに集中させる。生まれる雷光が戦場を照らす。マリアの意志に従い稲妻は戦場を疾駆し、歯車騎士団を穿つ。
「次、行きますよ」
「こ……怖い、です……でも、でも、やらなきゃ……自由騎士団に、恩返し、しなきゃ」
「えーと……とにかくオレの後ろから援護してくれると助かるから! よろしくな、アルミアさん!」
『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)の後ろで震える『落花』アルミア・ソーイ(CL3000567)。
アルミナはナバルの背後で無言で頷くが、それでも怖さは抜けない。ネクロマンサーを学んだ経緯が特殊であることも含め、アルミナは本来戦いに向いた性格ではない。世話になっている自由騎士に恩を返す。戦場に立つ理由はそれだけだ。
実のところ、ナバルも戦場に立つ性格ではない。戦いを好まないナバルがここにいる理由は、ヘルメリアの社会を容認できないだけだ。亜人を人と思わない差別社会。虐げられる人の表情を思い出し、槍を強く握りしめる。
「火炎瓶が作れなかったのは残念かな」
「良く燃える油、高いですからね……」
ナバルは炎を起こして歯車騎士団を混乱させようと火炎瓶を用意しようとしたが、可燃物質を多く用意できなかったため断念した。気を取り直して歯車騎士団に立ち向かう。
「ち、近づかないで、来ないで、殺さないで……!」
怯えながらアルミナが『バカでもわかる死霊術』に手をかざす。注がれた魔力が反応し、歯車騎士団の足元が沼地に変わる。足を取られた騎士達は動きを止めるが、戦意は衰えない。その表情を見て、アルミナは更に怯えだす。
「悪いがこれで終わりだ!」
歯車騎士団の視線を遮るようにナバルがアルミナの前に立つ。盾と槍を手にして相手の前に立ち、真っ直ぐにその槍を突き出す。沼で足を取られていた騎士はそれを避ける事が出来ず、そのまま大地に倒れ伏した。
「おのれフリーエンジンめ!」
「まだまだ数の上では勝ってるんだ。怯むな!」
両軍の勢いは止まりそうもない。戦いはこれからだ。
●
外の喧騒とは打って変わって、館の中は静まり返っていた。
しかしその静寂こそが『作品』を隠すベール。夜の帳の中、静かに刃は翻る。
「――はっ!」
『カタクラフトダンサー』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)は廊下に隠れている『作品』に不意打ちを仕掛ける。音をけして接近し、天井や壁と言った三次元的な足場を駆使しての攻撃だ。
「……こないな小さい子達を戦闘の道具にするなんて信じられん」
倒れ伏した『作品』をみて、アリシアは苦々しく呟く。言葉通りの子供なのだ。肉体的にも脆く、ただ『不意を打つ技術』だけを与えられた少女。奇しくもアリシアの言う通り。彼女達は戦いの『道具』なのだ。
「せやけど、生半可な同情は禁物やな。この子らに人殺しをさせへんようにせな」
それが大人の責務とばかりに、アリシアは館を走る。
「あーあ、面倒臭いっすねえ。面倒臭くて面倒臭くて嫌んなるっす」
愚痴りながら館の中を歩く『stale tomorrow』ジャム・レッティング(CL3000612)。ぼやきながらも周囲を見回し、色々な所をチェックしている。何が一番めんどくさくて嫌になるかと言うと――
「この状況で全く怯えてない子供……クソ過ぎていっそ笑えるっすな」
家具の影に隠れている子供の感情を探査したのに、緊張も恐怖も高揚も何もない事だ。雨の中で止むのを待つような感情でナイフを握っている。殺意さえそこにない完全な『道具』。ジャムは無言で引き金を引き、『作品』を伏す。
「不殺の権能バンザーイ。とりあえず縛っておきますか」
自殺出来ないように縛って猿ぐつわを噛ませ、ジャムは廊下を進む。
(子供を『作品』だなど……許せないわ)
怒りを押さえ込みながら『暗闇から狙う者』アリア・セレスティ(CL3000222)は思考を回す。自分が奇襲するならどうするか。それを想像しながら館を捜索する。地的優位、意識の隙間、そして極端な死角。そして自分と『作品』の違いを紐づける。
(同じ奇襲タイプでも、子供達は力がない。だから初手に全てをかける――ここね!)
正面に不意に現れた『作品』。何も知らなければ館の小間使いと勘違いするだろう姿。そこに生まれる日常回帰。アリアは蛇腹剣を『後ろ』に放つ。剣先は背後から奇襲しようとした『作品』に穿たれた。返す刀で正面にいた『作品』を剣で裂く。
「おやすみなさい。貴方達が過ごしやすい未来を作るから」
倒れた子供の頭を撫でるアリア。その顔は我が子を抱く親のような表情だった。
「…………成程」
『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)は『作品』の出来栄えに、冷静に納得していた。セフィラの加護により、不意の攻撃を察知することが出来る。だからこそ、倒れ伏した『作品』の動きに納得していた。その動きはあまりに『自然』だったのだ。
「見事です。あるいは有能な人殺しになれたのかもしれません」
まるで街で捨て違うような歩み。少女特有のあどけなさ。使い捨ての鉄砲玉としては見事なモノだ。ミルトスの攻撃で倒れている『作品』は気を失い、動かない。なるほどと納得はするが、気に入らないのも事実だった。
「彼女達にも未来はある。そう信じましょう」
言ってミルトスは気配を消し、潜行する。
「次はここですね」
あえて『ReReボマー?』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)は口に出してから扉のノブに手をかける。鍵が開いているかを確認するようにノブを回しながら、魔力を瞳に回して室内を確認する。『作品』の数は――二名。
「では――行きますよ」
ズームガジェットを操作しながら、ゼンマイ人形を起動させるエミリオ。相手の居場所は解っている。ならば相手が動くよりも前にこちらが動くが上策。人形の射撃は少女の動きを止め、そのまま意識を奪い取る。
「はい、お疲れ様です。それでは次に行きますか」
自らのペースを崩すことなく、エミリオは進んでいく。
「館に蝋燭はあれど、だからこそ生まれる影がある、か」
館の廊下を歩きながら『望郷の士』島津・豊太(CL3000134)は頷いていた。廊下に等間隔で並んでいる蝋燭。一定の明るさを確保するが、同時に館に一定の影を生んでいる。豊太の瞳はその『闇』を見通していた。花瓶の後ろに隠れる、子供一人。
「こっちだ。合わせるぞ」
近くにいた仲間に声をかけ、ハンドサインで見た結果を伝える。豊太はそのまま武器を構え、じりじりとすり足で近づいていく。そして一気に飛びかかり、サメの牙で作られた格闘武器を『作品』に叩きつけた。
「確保したぞ。さあ、次だ」
意識を奪ったことを確認し、豊太は仲間と共に次の場所に向かう。
「少女達を暗殺人形に仕立てるなんて絶対許せない!」
と怒りに燃える『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)。その怒りを胸に秘め、今は館内を進んでいる。瞳に力を込めて天井や壁や床を透視する。隠れている『作品』を見つけ、同時に地面を蹴って拳を振るう。
「ごめんね! でも必ず開放するから!」
手折れそうなほどか細い少女。その姿を見てカノンはつぶやく。拳は『作品』の腹部に命中し、『作品』はその一撃で体をくの時に折ってそのまま崩れ落ちる。持っていたナイフが床に落ち、カランと小さく音を立てた。
「……こんなの、おかしいよ!」
亜人だから虐げられる。そんな社会に怒りを募らせながら、カノンは強く拳を握った。
「これと、これと、これで」
「問題ない。先行するからついて来てくれ」
『炎の踊り子』カーシー・ロマ(CL3000569)がいくつかのハンドサインを示し、それに頷く『私立探偵』ルーク・H・アルカナム(CL3000490)。『場所』と『人数』と『状況』。それだけあれば十分とルークは頷いた。
「戦闘にならない事を祈ってるよー、っと」
聴覚を研ぎ澄ましながら、魔力の波を周囲に飛ばすカーシー。相手が不意打ち専用であるのなら、当然隠密の訓練も受けているだろう。それでも完全に無音と言うわけにはいかない。それを察知し、ルークに伝える。
「大事なのは観察力。人が潜むのに僅かの痕跡も残らない訳はない」
『いる』という事が分かれば、次はルークの出番だ。私立探偵としての経験則から、どう隠れるかを推理する。呼吸、動き、不意を突く所作。理論による推測、即ち推理。導き出した答えをカーシーに伝え、一気に攻め立てる。不意を打たれ、あっさり縛につく『作品』。
「些か手荒になったが、お前達を含めた未来の犠牲を防ぐためだ」
言いながら手慣れた動きで『作品』を拘束していくルーク。子供を縛るのは目覚めが悪いが、だからと言って放置はできない。ここで手を緩めずに対応するのが、大人の務めなのだ。
「次行こう次。こーゆーのに小さい子を使うとか胸糞悪い」
そんなルークを見ながらカーシーは腕を組んで怒っていた。基本にぎやかしのカーシーだが、こういった所業は許せない。奴隷解放などの正義を掲げるつもりはないが、個人の怒りを隠さない。ただそれだけだ。
自由騎士の働きが、館内の『作品』の数を少しずつ減らしていく。
●
そして館の最深部。巨大な金庫と大きな卵型兵器。そして突入と同時に逃げた一人の男。
「逃げられましたか……!」
悔しそうに『その瞳は前を見つめて』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)はチャールズが逃げた方向を見る。抜け穴は完全に塞がれてみることもできないが、出来るなら足止めをしたかった。それだけ許せない相手だ。
「お、幼い少女を、使い捨ての道具にするなんて酷いです!」
ヨウセイとしてシャンバラで虐げられていたティルダにとって、奴隷扱いされている亜人には思う所があった。ましてやそれが年端もいかない少女となれば。怒りの声と共に放たれた氷の矢が、卵型機械の動きを止める。
「少しでも早く倒して、チャールズを追い捕らえないとですから!」
「まだキリほども生きてない子が、こんなことに使われるなんて」
情報で聞いた卵型機械の内容を思い出しながら、『戦塵を阻む』キリ・カーレント(CL3000547)は唇をかむ。使い潰されて死ぬだけの少女。奴隷調教により、その事を全く理解していないのだろう。その事が許せなかった。
「先ずはあの装甲を破壊しなくちゃ!」
サーベルを構え、キリは真っ直ぐにハンプティダンプティに向かう。振りかぶったハサミの腕をローブで受け流し、装甲の隙間を狙うようにサーベルを繰り出した。魔力を通した剣戟が装甲の隙間を切り裂いた。
「生きていれば絶対いい事はある! 自殺なんかさせるもんか!」
「はい。これは未来を勝ち取るための戦いです。勿論、あそこの子の未来も」
キリの言葉に頷く『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)。この戦いはヘルメリアの奴隷制度がかかっている。未来のヘルメリアで虐げられる亜人や混血種がいなくなるか否かの分かれ道。それを自覚しアンジェリカは武器を振るう。
「十字架よ、いと高き所から祝福を。平和の歌を奏で給え」
祈るようにアンジェリカが呟き、『断罪と救済の十字架』を振るう。生まれた衝撃が装甲を伝い、内部に直接打撃を与えた。幾度となく硬い鉄を打ってきたアンジェリカだからこそなしえる技法。そこにあるのは飽くなき信仰心か。
「とりあえず、あのチャールズとかはムカツキますので一発殴っておきましょう」
「奴隷制度……世の中にはいろいろあるんですね」
見聞を広めるために自由騎士に参入した『最初のいっぽ』ナーサ・ライラム(CL3000594)は、ヘルメリアの奴隷制度を聞いて、興味がわいたのは事実だ。だが同時に世間に萬栄していい精度でない事も理解していた。その結果が、目の前の卵型機械なのだ。
(おそらく、中の少女はハンプティの機能で生かされている……破壊が死につながるのは、そういう事なのかもしれません)
ハンプティダンプティの情報を思い出しながらナーサは冷徹に推理する。それはむしろ覚悟の表れ。少女を救うのと、チャールズを追うのと。優先すべきは後者なのだ。ヒューマニズムを軽視するわけではないが、大局を忘れるつもりはない。
「ともあれ今は、攻めなくてはいけませんね!」
「うむ。相手は抜け道を塞ぐために動かずにいる。そういう意味ではくみしやすい相手だ」
『そのゆめはかなわない』ウィルフリード・サントス(CL3000423)は頷き、武器を構える。敵対国の商業組織の金庫を奪う。そのシチュエーション自体は心躍ると無言で炎を燃やしていた。もっとも、そのお金は自由に使えるわけではないのだが。
「シザーアームと火炎放射でこちらをけん制するようだが……まだまだ狙いが甘い」
ハンプティダンプティの動きを見ながらウィルフリードは間合いを詰めていく。機械自体の性能は悪くはないのだろうが、操縦しているのは戦い慣れしていない少女だ。自由騎士の戦闘経験には遠く及ばない。フェイントを混ぜた一撃が装甲を穿つ。
「さて、装甲はあとひと息かな」
「無理はしないように。焦って最終目的を損なう事だけはしないでほしいネ」
猛る前衛を押さえるように『博学の君』アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)は声をかける。目の前の少女を助けようとすれば、その分本来の目的である金庫の鍵を失いかねない。主目的を取り違えないようにと釘を刺しながら、魔力を展開する。
(全てを救いたいという気持ちがないわけじゃないんだけどね)
言いながらアクアリスは展開した魔力に癒しの力を込め、解き放つ。アクアリスも救える命なら、救いたい。だが現実は様々な問題でそううまくいくことは少ない。それでも仲間がやりたいと思う事を精一杯守るつもりだ。
「さて、上手くいくといいけどネ」
「上手くいかせるんだ。その為に力をつけてきたんだから」
二本のダガーを手に『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)が口を開く。かつて虐げられたヨウセイ種。その経緯もあってオルパは『弱者』へ手を差し伸べる。ヘルメリアで心を無くした奴隷達。それとかつてのヨウセイを重ねていた。
「これだけデカいと、避けづらいだろうよ」
円を描くように移動し、ハンプティダンプティの隙を伺うオルパ。こちらの動きを察しているのか近づけばその腕が動く。だが抜け道を塞いでいる状況では動ける範囲は限られる。震え荒れたダガーが次々と機械を切り裂いていく。
「やはりな。あと魔法耐性も低くそうだ。上手くやれば中の少女を救えるかもしれない」
「――どうかしら? アタシには手遅れだと思う」
冷たく言い放つ『遠き願い』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)。ヘルメリアと言う国を見てきたライカにとって、目の前の少女を救う算段はないように見えた。国そのものがノウブル以外を虐げるようになっているヘルメリア。その悪意は根強い。
「とにかくこいつを倒さないとね。この機械も、チャールズも、ヘルメリアも、全部壊すわ」
物憂げに言ってライカはハンプティダンプティに迫る。未来を見ながら機械の腕の攻撃をかわし、少しずつ斬撃を加えていく。そこにあるのは怒り。この国に萬栄する悪意に対するライカの怒りだ。
(どうにかするには奇跡でも起こすしかない。本当に胸糞悪いわ)
果敢に攻める自由騎士達。その攻勢に少しずつ卵型機械の形は崩れていく。
●
歯車騎士団と自由騎士(名目上はフリーエンジン)との戦いは、少しずつ変化していく。
最初は数で押していた歯車騎士団だが、自由騎士の粘りと実力差に押されるように少しずつ勢いを失ってきていた。
無論、こういう時の為に援軍が来ることになっている。信号弾打ち上げから数分。常駐している兵が来る――はずだった。
「援軍はどうした!?」
「駄目です! 三、六、七小隊が先のフリーエンジンとの交戦でやられてます!」
「ザリガテ領に向かった蒸気騎士部隊も同様です! 手ひどくやられ、メンテナンス中!」
「嘘だろ!? マルソー四等の部隊も来ないだと! あの人、こういう時真っ先に来そうなのに!」
次々届く信号弾に歯車騎士団の悲鳴が上がる。
「これで終わりでござるよ」
戦いの動乱に紛れるように『おちゃがこわい』サブロウ・カイトー(CL3000363)が倒れた歯車騎士団に刃を突き立てる。的確に急所を貫き、その命を奪っていった。ここで生かしておけば隠密行動をしている身として後々の障害になりかねない。そう判断しての行動だ。
「まあまあ、援軍が来ないとか大変ですねぇ~」
他人事のように言い放つ『まいどおおきに!』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)。援軍が来ない理由は自由騎士の活躍が原因なのだが、それをおくびに出すことなく微笑んだ。如何なる時も笑顔で対応。それが商人の務めだ。
「皆さん巻き込まれないようご注意くださぁ〜い!」
言いながらシェリルは魔力を魔導書に集め、円を描くように魔導書の上で手の平を動かす。回転の度に魔導書が輝き、シェリルの掌に白く小さな光が生まれる。シェリルはにこりと微笑み、白の魔力球を敵陣に解き放った。光の爆発が歯車騎士団を襲う。
「おいたは禁止ですよ~。大人しく寝ていてくださいね~」
「この国の亜人達の為に、負けられませんね!」
気合を入れて戦いに挑む『こむぎのパン』サラ・ケーヒル(CL3000348)。サラ自身はノウブルだが、サラの店に食べに来る客の中にはケモノビトのような亜人もいる。それとこの国の亜人を比べれば、心が痛んでくる。
「この国の亜人さんや混合種さんに美味しい物を食べてもらうためにも!」
食堂で見る事が出来る笑顔。それをこの国にも広めるためにサラは戦う。魔力で自分自身を加速して、戦場を疾駆する。動くたびに金髪が舞い、同時にサラの剣が翻った。その速度に歯車騎士団は翻弄されるように出遅れ、傷ついていく。
「レベッカさん!」
「はい、サラ様。行きますわ」
サラの言葉に頷く『生真面目な偵察部隊』レベッカ・エルナンデス(CL3000341)。奴隷制度、という言葉にレベッカはいい印象を抱けない。ヘルメリアのシステム的な奴隷制度を破壊するためにも、この作戦は成功させなくては。
「単体攻撃ではらちがあきませんわ」
歯車騎士団の数を前に、レベッカは距離を取り、ライフルを構える。深呼吸と同時に肩の力を抜いて、精神を落ち着かせた。狙う、撃つ。ライフルの基本動作。それのみに全行動全神経を費やす。戦場全ての敵を一対ずつ、確実に狙い撃つ。
「奴隷協会を弱体化させて、奴隷制度を終わらせますわ!」
「その通り! ヘルメリアに生きる『全ての』ヒトに希望を! 僕の剣は未来を切り拓く為にこそある!」
朗々と戦場に響く『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)の声。その言葉に欺瞞や打算は何一つない。心の底から『全て』の種族に希望を与えようとしていた。戦いと言う手段は、その為の行為なのだ。
「『ヒト』の未来をノウブルだけの欲望で塗り潰す。そんな事があっていいはずがない!」
いうなり歯車騎士団に走るアダム。オールモストのキジンの重量をそのまま打撃力に変えるように、盾を前面に向けて自分自身を叩きつけるように突撃する。相手の規制を崩すと同時に追撃を加え、連携を崩すように攻めていく。
「我が名は騎士アダム・クランプトン! 蒸気纏いし騎士達よ。汝らに義があるならその義をもって挑むがいい!」
「そしてわしが颯爽と戦場に現れし真紅の稲妻! スピンキー・フリスキー!」
言って叫ぶ『にゃんにゃんにゃん↑↑』スピンキー・フリスキー(CL3000555)。疾風が吹き、赤い稲妻が背後に走る。あ、『新手のオラクルか!』と『名乗り 急』の技能効果です。歯車騎士団が注目したと同時にスピンキーは動き出す。
「にゃにゃにゃにゃー! これでどうだにゃー!」
猫のように叫びながらスピンキーは敵に攻撃を加える。力を込めて、武器を振るう。ただそれだけの攻撃。だからこそ、その者の身体能力が浮き出る一撃だ。獣性を開放したかのようなスピンキーの攻撃が歯車騎士団の動きを乱していく。
「みゃおおおおおおおおおおおん! まだまだ負けないにゃああああああ!」
「こっちだって負けないよ! どりゃああああああ!」
『薔薇の谷の騎士』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は拳を構えて歯車騎士団に挑む。央華大陸風の格闘技を着こみ、体中全てを使って戦いに挑む。腕、足、頭、背中……少女のような美しさを持ちながら、それら全てが凶器となる。
「人数二倍か。腕が鳴るよ!」
数が二倍なら、いつもの二倍動けばいい。そんな思いのままカーミラは戦場を動く。拳を振るった勢いを殺さないように足払いをし、立ち上がると同時に背中で敵を穿つ。振り返ると同時にそこに居た敵に頭突きを加え、呼気を整える。舞う汗が滴となって光った。
「ケモノビトの根性ナメんな! 私はまだまだ倒れないよー!」
「タフネスだったらアタシも負けてられないね!」
鉄塊を振るいながらトミコ・マール(CL3000192)が大笑いする。背中の羽根を広げ、胸を張っての大笑い。迫る歯車騎士団など小事と言わんがばかりである。大事な『子供』を守るために『親』として身を張る覚悟がそこにあった。
「痛いのをもらいたいやつからからかかっておいで! どっせぇぇぇぇい!」
迫る歯車騎士団を誘うように大声を上げ、手にした鉄塊を力いっぱい振るう。歯車騎士団の攻撃を身体強化と精神力で耐え凌ぎ、さらに攻撃を加えていく。子供のために頑張るのが親の努め。美味しいごはんを子供に食べさせるため、トミコは今日も奮闘する。
「さあさあ、アタシはここだよ! 怖気づいたかい!?」
「金庫の方には誰も通さないよ!」
『黒砂糖はたからもの』リサ・スターリング(CL3000343)は館への入り口を背にして戦いに挑む。力を合わせれば何でもできる。リサはそう信じている。だから金庫に向かった者を信じ、自分はここを死守するだけだ。
「皆と一緒にがんばるよ!」
他の自由騎士の動きを見ながら、リサも体を動かす。扉を守る位置をキープしながら、迫る歯車騎士団を凌いでいく。攻撃してきた剣を持つ腕を払って懐に踏み込み、零距離から拳を叩きつける。
「これでどうだー!」
「いい流れだ。これを維持していければ何とかなりそうだ」
戦況を鑑みながら『道化の機械工』アルビノ・ストレージ(CL3000095)は頷いた。ここで歯車騎士団を足止めできれば、館内や金庫で戦う者達への援護となる。全滅させる必要はないが、こちらが無視できない勢いを示せればいい。
「自由騎士の魔力の自然回復、ワタシが担当させてもらおう」
体力の回復は他の騎士達に任せ、アルビノは気力と魔力の回復に努める。身体の活性化を促す薬品を錬金術で作り、それを気化して仲間達に纏わせるように風を飛ばす。体内に入った気体は神経を刺激し、リラックスと気力回復を促していく。
「さて。次に癒すべき人は――」
「亜人も混血種もノウブルも変わらない。それを証明する」
『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)は歯車騎士団に向かい静かに言い放つ。それは歯車騎士団だけではない。このヘルメリア全てに対しての宣言だった。同じ知識を持ち、会話を交わすことが出来る者同士で差をつけるなど、愚行としか言いようがない。
「館の中には誰も入らせやしないよ」
試験管を手に、リュリュは魔力を展開する。薬品の量、試験管の角度、混合する魔力。そういった要因を組み合わせ、錬金術は威力を発揮する。リュリュの試験官が僅かに光り、その光に含まれる癒しの力が仲間達を支える。
「さあ、異議あるなら答えよう。それが錬金術師の勤めだ」
「さあ、来なさい! この拳で貴方達を止めて見せるわ!」
「みんな、追い返してあげますわ」
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)が拳を叩くように挑発し、その後ろで『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)が頷く。館の地図は事前に手に入っている。禁固への最短距離の入り口に位置取り、威風堂々と歯車騎士団を迎える。
「残念ね。ココはいまから通行止め。悪いけど、そのまま庭で日向ぼっこでもしていて頂戴?」
言いながら拳を振るうエルシー。防御の構えを取りながら、龍の籠手で相手を穿つ。大事なのは自分が倒れない事。玉砕覚悟で特攻するのではなく、基本に忠実に構えて動き、確実に足止めしながら敵を討つ。一つ打っては、構え。一つ打ってはまた構え。
「お眠りくださいませ」
『戦乙女の弓』を打ち放ち、歯車騎士団の動きを封じていくレオンティーナ。魔導力の矢に込められた眠りの魔力が、歯車騎士団を眠らせていく。騎士一人の動きが留まれば、連携が崩れて攻めやすくなる。レオンティーナはそれを狙っていた。
「この程度? 騎士を名乗るには弱すぎるわよ!」
「いいんですよ。ゆっくり眠ってくださいね」
挑発するようにエルシーが叫び、騎士を眠らせながらレオンティーナが優しく声をかける。互いの隙をカバーするように二人は動き、歯車騎士団の陣形を崩していく。数の優位などものともせず、二人は一気に攻め立てていく。
「皆を救えるほどの力があればいいのですが……」
「之までを思えば気が急くのは分かるが、先ずは一つずつだ」
『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)の憂えるような言葉に『盾の誓い』オスカー・バンベリー(CL3000332)が答える。ヘルメリアの状況は看過できないが、だからこそ確実にことを為さねばならない。現実は一歩ずつしか変わらない。理想だけの一足飛びな行動では人は救えないのだ。
「はい……。私は全力で皆さんの回復支援に回ります……オスカーさん、守りは任せましたからね!」
迷いを振り切るようにフーリィンは頷き、オスカーに背中を任せる。全てを救う英雄にはなれない。だからと言って誰かを癒すことを止めるつもりはない。フーリィンの魔力が戦場を包み込み、仲間達の傷を塞いでいく。
「尽力する」
短く告げてオスカーは盾を構える。倍以上の戦力差を相手に、守る。とても楽なことではないが、それでもオスカーの心に不安はない。フーリィンからの『信頼』を受けて、騎士は己が盾を構える。誓いはここに、戦場の中で騎士は乙女を守る盾となる。
「しかし容赦なく命を委ねられるのは『信頼』ととるべきか、『無茶振り』と表現すべきか」
「絶対に守ってくれるって信じてますから!」
迫る刃や弾丸を気にすることなくフーリィンは癒しに集中する。敵の動きなど目に求めていない。全ての危機はオスカーが護ってくれる。そう信じての動きだ。オスカーも口にしながらその動きに応えるために盾を構える。浮沈の癒し。そう表現できる二人の連携がここにあった。
「攻めきれん……! これだけの数なのに!」
歯車騎士団も自由騎士の動きを前に攻めきれずにいた。数でこそ勝っているのに、その優位さを上回る気迫と実力に気圧されていた。
歯車騎士団が戦力を他所に回す余裕はない――
●
館内の『作品』は相応の訓練を繰り返し、完成に至る。その精度に果てはなく、殺せば殺すだけ刃は鋭くなる。
スレイブマーケットで売れ残った奴隷を商人から買い、それを使って練度をあげる予定だったのだが、自由騎士達が奴隷商人を襲撃したこともあり訓練数そのものが少なかった。結果、最低限の練度の者しか館にはいない。――皮肉なことに十を超えた経験深い『作品』は館から追放されていた。
「ったく。ガキを使うとか胸糞悪い」
『殲滅弾頭』ザルク・ミステル(CL3000067)は銃を闇の中に向けて、引き金を引く。『作品』が襲撃をするよりも早く弾丸を叩き込み、その動きを封じ込めた。捕縛性の高い魔力弾。『作品』同様、こちらも対策なしでは回避不可欠な技だ。
「すべてを奪われたガキか。売られたか、喪ったか。どうでもいいけどな」
子供の奴隷の経緯は大きく二つだ。親に売られたか、親を喪ったか。ザルクは後者だからこそ、その辛さが理解できる。少し運命が狂えば、この子供のようになっていたかもしれないのだ。だから、というわけではない。ザルクは子供を抱え、歩き出す。
「生きてりゃいいことあるかもな。そういう未来になればいいけど」
相手の意見を聞かずに救うのがエゴだという事は解っている。それでも、道を示すのも先達の務めだ。
「ま、実際有効よね。幼い見た目で油断させるのって」
壁の向こうで隠れている少女を透視の魔眼で見ながら『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)はため息をついた。人は第一印象からは逃れられない。僅かな時間であれ、見た目に引きずられる。そしてその『僅か』があれば、ナイフを突き立てる事が出来るのだ。
「でもま、分かっていればどうという事はないわよね――未来確認。悪いけど丸見えだわ♪」
五秒後の未来を予知し、きゐこは廊下を歩く。不意打ちが来るタイミングと方向が分かれば、身体能力が著しく離れていない限りは対応は可能だ。怯えながら振るわれるナイフを魔力の盾で防ぎ、もう片方の手で放った魔弾が少女を穿つ。
「拘束拘束、っと。……そう言えばオラクルじゃないんだから魔眼でいう事聞かせれそうね、この子達」
わざわざロープで縛らなくてもそれなら楽だったかも、と後悔するきゐこ。
「準備完了」
『百花の騎士』アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)はメイド服に着替え、館内を進んでいた。繰り返そう。アリスタルフはメイド服に着替えていた。曰く、木を隠すなら森、館に人を隠すならメイド、という事である。
「こちらアリスタルフ。1Fの南側十字路で対象の体温確認。これより抗戦に入る」
マキナ=ギアで他の自由騎士に連絡し、拳を構えるアリスタルフ。意識を集中し、音を立てない歩法で一気に間合いを詰める。滑るような足の動きと空気の中を流れる様な体感の動き。その両方に対応できず『作品』はアリスタルフの拳を受けて気を失う。
「……これも仕事、仕事だから」
自分に言い聞かせるアリスタルフ。そう、これは掃除。メイドの仕事は館の掃除。そう何度も心で呟いた。
「AAAAAAAAAGIRrrrrrrrrrr!」
他の者とは打って変わって『黒き狂戦士』ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)は雄たけびを上げて館内を突き進む。自分はここにいるとアピールし、隠れる少女の気配を打ち消していた。だがそれは同時に、隠密を行う自由騎士の気配も消すこととなる。
「AKUMA! KiLLLLLLLLLLLLLLLL!」
闇の中現れた『作品』をナイトオウルは叫びながら切って捨てた。これまで殺してきた『作品』の罪。それを雪ぐための一撃。それこそが女神が与えた温情とばかりにその行為に容赦はない。ヘルメスに従う邪教徒に操られた少女に、憐れみの刃を繰り出す。
「Heeeeeermeeeeessss!」
鎮魂の雄叫びは、狂気と殺意と共に館内に響き渡る。
「あたしを欺こうなんて相手が悪すぎるよねー」
『未知への探究心』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は『作品』が隠れている場所を確認し、笑みを浮かべる。ホムンクルスを起動させた後に、『作品』に気付かないふりをして近づいていく。襲い掛かってきた『作品』は、ホムンクルスの不意打ちを受けて驚いた顔をした。
「魔法知らないんだから、ホムンクルスとか当然知らないわよね。それじゃ、これで終わりーっと」
動揺している『作品』にワイヤーを振るい、その動きを拘束する。年端もいかない少女を拘束するのにさしたる時間は必要なかった。相手の隙をつき、知識の外を武器とする。それがクイニィーの戦い方だ。
「さて、あと何人いるのかなぁ。まだまだ遊んであげよう」
にぃ、と笑みを浮かべてクイニィーは館を進む。
「怪我人少なくておじさん楽だわー」
『帰ってきた工作兵』ニコラス・モラル(CL3000453)は怪我人を癒すために遅れて行動していた。『作品』の不意打ちで汚した仲間が出れば、そこを癒しにかかろうという算段だ。だが思いのほか怪我人が少なかった。
「ま、奇襲専門だから初手さえ外せば問題なし、と。水鏡万能だね」
言いながらニコラスは部屋の中を物色する。館に何かないか探索しているのだ。奴隷協会の有する館だ。それなりのものはあるはず。流し読みで書類を見るニコラスはある書類の束を見て目を止める。
「『兵站軍』…………歯車騎士団の亜人部隊か」
兵站軍――奴隷、という言葉は使いたくないが、扱いとしてはその言葉通りの亜人部隊。人機融合装置により、軍に命を握られた者達。今読み切るには量が多い。ニコラスはカバンに書類の束を突っ込んだ。
「幼女狩りヨー」
「ルーちゃんももロリコンじゃね? マジ? マ?」
『有美玉』ルー・シェーファー(CL3000101)の言葉に『チャラオン』ルガトルシュ・フォルガ(CL3000577)が反応する。確かにやっていることは少女の『作品』を捕らえるわけだが。ともあれ二人は油断なく館を進んでいく。
「作戦はあれヨ。パッと見つけてガッと掴むの。ルガっちが聞き担当。アタシが目担当」
「ソッと行ってガッてやってポイ! りょ! 目星よろ!」
微妙に会話があっているようなあっていないような二人だが、ルーがめぼしい所を探り、ルガトルシュが聴覚で確認するという認識はお互い持っている。発見した後もルガトルシュが前に立ち、『作品』の動きより先んじて攻め立てて、制圧していた。
「よっしゃパーペキ! 鬼決まった! 不意打ちさえなければバリ簡単に押さえれるわ」
「流石ー。それじゃ、動けないように縛っときまショウ」
「ルーちゃん捕縛の手際やたらよくね? 気のせい?」
「乙女の嗜みヨー」
小さく叫んでガッツポーズを取るルガトルシュ。ルーは伏した『作品』に近づき、慣れた手つきで縛り上げる。テキパキした動きに怪訝に思うルガトルシュを軽くいなすルー。やっぱなんかヤバくね? とルガトルシュは思ったが口には出さずにいた。
「よーし、それじゃあ次行こう! ……自分がこうなったかもしれない、って思うと辛くなるネー」
「? なんか言ったか?」
「なんでもないネ。ジャンジャンバリバリ狩るヨー!」
こぶしを突き上げ、館を進むルー。ルガトルシュは肩をすくめてルーについていった。
「……リグは」
『おいしいまいにち』リグ・ティッカ(CL3000556)には本当の名前がある。それはリグ自身にも思い出せない名前。いつから自分は『リグ』だったのか。それさえ思い出せない。――目の前の『作品』のように。
『作品』――そう呼ばれる少女にも、名前はあったはずだ。ナイフを手にした人を殺す為の『道具』。リグとの違いは拾われた先。共に名前を無くし、自由騎士に拾われたリグ。チャールズに拾われた少女。その違いがあるだけだ。
「『あなた』の名前を知りたいです」
それは意味のない事だ。当の本人さえ忘れてしまった――忘れさせられた事だ。痛みと悪意に塗りつぶされてしまったことだ。
だからこそ――リグは問いかける。誰もが無意味と分かっていながら、しかし誰よりもその境遇を理解しているリグ・ティッカだからこそできる救い方で。
「『あなた』の名前が聞きたいです。『作品』ではない『あなた』のお名前を」
だからそれは奇跡ではなく、
「な・ま・え……わたしの、なまえ……」
ただ『Who are You?』と問いかけたリグの優しさ。世界に『個』を否定された少女が求め、そして人として歩き出せる柱を救いあげた問いかけ。
「あ・り・し・あ……私の、名前……は、アリシア」
――その日、リグは確かに少女の心を拾い上げた。
●
ハンプティダンプティとの戦いは佳境に向かっていた。
装甲は剥げ、フレームも破損して露出した操縦席。それでもなお戦う事を止めない卵型機械。
自由騎士も傷つきながら、しかし諦めることなく戦い続けていた。チャールズが完全に逃亡するまでまだ猶予はあるが、かといって落ち着いていられる状況でもない。
「だったらオレが無茶を通して追いかける!」
『果たせし十騎士』マリア・スティール(CL3000004)は言うなり天井に張り付いて、そこから抜け穴に向かおうとする。最初は装甲やフレームに阻まれて通る隙間はなさそうだったが、ハンプティダンプティの破壊がここまでくれば、無理やり通れそうだと突貫する。
「ぬおおおおおおおおお!? よっしゃ! 先行くぜ――!」
ハンプティダンプティの壊れたフレームの隙間に体を強引に押し込んで、マリアは何とか抜け穴を抜ける。そこに襲い掛かってくる戦闘用奴隷。マリアは巨大な盾を構え、突破していく。
「待ちやがれ変態、って数多いぞ!? うおおおおおお!」
「……敵陣で一人突貫するのは、危険だと思うのだが」
マリアの突貫に冷静な意見を述べる『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)。下手に捕まれば捕まって奴隷になる可能性もあるのだと思うと、止めるべきだったかもしれないが時すでに遅し。ともあれ今は目の前の機械だ。これをどうにかして追いかけよう。
(ほかの突破口はない。やはりハンプティダンプティをどうにかするのが先決か)
周囲を何度も確認し、マグノリアはそう断言する。構造的にも用途的にも秘密の逃げ道同士が繋がっている可能性は低いだろう。意識を切り替え、魔力を練り上げる。仲間の気力を癒す錬金術の技。それを矢次に繰り出していく。
「中の少女を救うにしても、ここで倒れるわけにはいかないからな」
「はい……だから……回復……します……」
途切れ途切れに『笑顔のちかい』ソフィア・ダグラス(CL3000433)は言い放つ。人と話をするのは苦手だが、同じ自由騎士なら少しずつ会話もできるようになってきた。回復と言う戦闘を支える根幹としてソフィアは戦場に立つ。
「攻撃を受けて……痛い人とか……言ってくださいね……」
癒しの魔力を展開するソフィア。マジックスタッフを手にして、アカデミーで学んだことを思い出しながら呪文を展開していく。元より才在る神童だったソフィアの魔力が戦場に広がり、仲間の傷を塞いでいく。
「……ええと、次は……」
「次は右側のグループを中心に癒してほしい。私は反対を癒す」
『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はソフィアに言って別方向のグループを癒しにかかる。医者として長く自由騎士に従軍してきたツボミにとって、僅かな所作の違いさえも治療のサイン。それを見逃すことなく、仲間達を癒していく。
「ハンプティダンプティ……皮肉だな。割れれば王様さえも元に戻せないか」
絵本の話を思い出すツボミ。塀から落ちたハンプティダンプティは元には戻らない。失われた命も、決して蘇らない。自爆前提の使い捨て兵器。そんなものをツボミは許すことはできなかった。死ぬ前に癒す。その覚悟でこの場に立つ。
「私は医者だ。それ以上でも以下でもない。ならばやるべきことは一つだ」
「信頼してるぜ、先生。だから無茶が出来る」
ツボミの言葉に頷くウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)。ノウブルは信用できないが、永く一緒に戦って来た自由騎士とイ・ラプセルは信用できる。だからこそ背中を預け、そして後を託すこともできる。
「俺は、俺を、この一撃を、信じる!」
力を十分にため込み、ウェルスは銃を構える。ウェルスは祈らない。両手が塞がるよりも両手に銃を構えて撃ち放つ方がいい。限界を超えてため込んだ銃撃。生まれる火力が操縦席の最後の隔壁を壊し、そして少女と機械を繋ぐ管を砕く。そして――
「まだだ! もっと火力をあげて一気に――!」
「そこまでだ。自分の死を『彼女』の枷にするつもりか、ウェルスくん」
我が身を犠牲にして限界を超えた火力を出そうとするウェルスを『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)が声をかけて止める。同時に放たれた白氷がハンプティダンプティの温度を下げ、その動きを止めた。
「兎に角、機械の動きを止めれば――」
さらに魔力を込めてテオドールは卵型機械に纏わりつく氷の密度を増していく。蒸気機関であるならば極端な冷気は蒸気発生の妨げになる。そうでなくとも、氷そのもので機械の足を奪えばいい。たとえそれで機能停止せずとも、頼れる仲間がいる。
「任せたぞ!」
「任された。撃ち貫く」
テオドールの言葉に応えるように『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)が槍を構える。これまで最前列で死闘を繰り広げていたアデルだが、最後の切り札は温存していた。使うべき瞬間は、今ここだ。
「死にそうになったら自爆か? そいつは判断が遅かったな!」
体中の力を溜めに溜めるアデル。キジンボディをフル稼働させ、全ての力を槍を振るためだけに集約させる。裂帛と共に放たれた一撃がハンプティダンプティと少女を繋ぐ管を貫いた。吹き出す激しい蒸気が、少女と機械の繫がりを断つ。だが、
「――違う、まだだ!」
そしてアデルは気付く。望む結末に、まだ足りないという事実に。
「はんぷてぃだんぷてぃ、はっだ、ぐれいとふぉーる」
少女は口を開き、そして手を動かす。最後の最後にそうするように『調教』されたから。機械のスイッチをいじり、蒸気を一ヶ所に留めるように操作する。
「――そこね」
ライフルを構え、『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)は静かに言い放つ。ハンプティダンプティに仕掛けられた最後の装置。蒸気を溜めこみ、一気に解き放つ機構。蒸気学の基本と観察眼でその場所を見切る。
「もう少し専門知識があれば、引きはがしもできたんでしょうけど――!」
悔いるようにアンネリーザが叫ぶ。彼女が学んだのは蒸気学の基礎知識だ。それ以上の技師関連の知識があれば、爆発物を引きはがすことが出来たかもしれない。だからできる事はこれだけだ。ライフルを放ち、少女と機械を繋ぐ拘束具を破壊する。
「今よ!」
「ん」
アンネリーザの叫びに応えるように『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)が跳躍する。これまで破壊衝動のままにハンプティダンプティを破壊するために使っていた武器を頬り投げ、一直線に少女の方に向かって走る。
(――なにやってるんだろう。むねがちくちくする)
飛び出して少女を抱えた後に、リムリィは自分の行動を振りかえる。少女の虚ろな瞳を見た瞬間に、気が付けば抱えて飛び出していた。背後からの衝撃波を受けて、地面に叩きつけられる。無意識に少女を庇うようにして受け身を取り、その痛みが体中を襲う。
(ほんとうに、なにをやってるんだろう。でも、よかった、のかな?)
自分の胸の中で定期的に呼吸を繰り返す少女を見ながら、リムリィは再度自分の行動を顧みた。かつての自分と同じ瞳をした少女の無事を確認して、胸が少し熱くなる。
「あー、あー。はんぷてぃだんぷてぃ、はっだ、ぐれーと、あー、あー!」
意識を取り戻し、手を動かす少女。その動きは機械を操作するようでもあり、何かを求めるようでもあった。これまであった物を失い、何をすればいいのかわからない。何処に行けばいいのかわからない迷子のような、そんな動きだ。
「……もう、いいんです。ハンプティダンプティを操縦していたあなたは、もう死にました」
そんな少女の手を取って『鎮魂から演舞まで』秋篠 モカ(CL3000531)は静かに告げる。歌で人を魅了するめに鍛えられたモカの声が少女の耳に優しく伝わる。言っている意味は解らないが、それでも聞くことで不安が消えていく。そんな声だった。
「それでもチャールズさんのために戦いたい、と言うのでしたらそれは構いません」
悲し気にモカは告げる。モカは彼女の人生を知らない。チャールズに従う彼女の在り方を自分の価値観だけで否定することはできない。もし戦うというのならそれは悲しいけど、少女の選択を蔑ろにしてはいけない。
「私は、これ以上戦いたくありません……どうかお話できませんか……?」
「おは、なし……お金の事? それとも、パパの、情報?」
「いいえ。貴方の名前、貴方の好きな事、貴方のお友達……そんな事を聞かせてください」
「なまえ……私の、そんなの……そんなの……!」
戦場に似合わないモカの言葉。その言葉に少女はボロボロと涙を流す。
「だ、れも……だれも、そんなこと、言わなかった……言ってくれなかった。パパや大人の人は皆、人を殺すことしか、教えてくれなかった……!
友達も、食べ物も、全部忘れろって。パパと自分以外は全部敵で、命を奪う事しか、教えてくれなかった……!
知らないよぉ……私、名前も、好きなことも、友達も……全部知らない……! 答えられなくて、ごめんなさい……なんにもなくて、ごめんなさい……助けてもらったのに、私、何にもなくて……!」
あとは言葉にならなかった。堰を切ったように泣き出す少女を、モカは優しく抱き寄せる。
「いいんです。無くなったのなら、また得ればいいんです。だから今は――」
泣きじゃくる少女の頭を撫でるモカ。
その泣き声が、自由騎士が望んだ勝利を裏付けていた。
●
「――おーい、生きてるー?」
『勇者の悪霊退治』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)は剣でチャールズを突きながら問いかけてていた。ハンプティダンプティが崩壊してすぐに抜け穴に飛び込んだのだ。先行して敵を倒してくれたマリアお陰で傷つくことなくチャールズまで追いつき、戦闘不能にしたのだ。
「逃げられないように手足斬ったけど……拙かったかな? 出血がひどくて危ないかも」
あちゃー、と頭を掻くジーニアス。剣でつついても反応が鈍くなってきた。早く治療しないと死ぬかも、と漠然と考えていた。でも逃がさない為だししょうがないよね。そう納得し、走ってきた道を見る。
「がんばってねおじさん、もうすぐで他の皆が来るよ。そうしたら多分、回復が使える人が来てくれるよ。
…………おじさん?」
ジーニアスが声をかけるが、チャールズが声に反応することはなかった。不殺の権能で手足を斬られた時は死ななかったが、その後の失血死まではどうしようもなかったようだ。
「ま、いっか。お金はあるし。カギは……これかな?」
●
『隠し槍の学徒』ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)のマキナ=ギアを通じて、作戦成功の報が伝わる。
自由騎士達は機を見て一斉に撤退を開始した。正に一糸乱れぬ行動を前に、歯車騎士団達は一瞬呆気にとられたという。追撃隊こそ編成されたが、自由騎士及びフリーエンジンに追撃の手が届くことはなかった。
移動城塞『ティダルト』内は自由騎士とフリーエンジンメンバー、そしてこの作戦で救出した『少女』達ですし詰め状態だった。一部の『少女』は自死する事こそないが、感情そのものを閉じ込めているかのように陰鬱としていた。こちらも一つの課題だが、感情を取り戻すきっかけは掴んである。そう難しい事だはないだろう。
「Wonderful! お前たちは本当にお人好しだな! お金と子供を強奪するとか最高の出来栄えだ! 唯一の問題は、重くてエンジンをフル稼働しないといけない事だな! いっそその紙幣を炉で燃やして進むか?」
とはフリーエンジン首魁の言葉である。
スレイブマーケットの資金を奪われたことで、奴隷協会の運営は事実上停止となる。
マーケットの費用を街等に支払えず、借金で多くの施設を失う事となった。同時に調教師を始めとした者への給金も支払い不能となり、職業としての奴隷調教師も生計が立たなくなったのだ。
貴族のように個人で奴隷を有する者はいるが、ヘルメリアの奴隷運営システムは大きく衰退する。亜人が大手を振って街を歩くにはまだ時間がかかるが、非道な扱いを受ける亜人がこれから減ってくるだろう。
――時代は確実に、大きく変わろうとしていた、
†シナリオ結果†
大成功
†詳細†
MVP
称号付与
特殊成果
『手作りの腕章』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
†あとがき†
どくどくです。
奴隷達の精神的治療法を探るS級任務を用意していたのですが……これならいらないかな。
以上のような結果になりました。いやはや色々予想外。
【デザイア!】関連はすべて成功し(ハード依頼ぐらいはと思っていたのですが)、決戦各所も少しぐらいは他戦場に影響すると思ったのですが、それもなく。
ええ、文句なしの大成功でございます。
MVPは少女を救おうと尽力した方々に。皆さん尽力されましたが、その中で一歩秀ででいましたという意味で。
ヘルメリアの亜人達の立ち位置と意識はこれから大きく変わるでしょう。
皆様が成し得た叛逆(パンク)がどう影響するか。それを考えながら筆を置きます。
それではまた、イ・ラプセルで。
奴隷達の精神的治療法を探るS級任務を用意していたのですが……これならいらないかな。
以上のような結果になりました。いやはや色々予想外。
【デザイア!】関連はすべて成功し(ハード依頼ぐらいはと思っていたのですが)、決戦各所も少しぐらいは他戦場に影響すると思ったのですが、それもなく。
ええ、文句なしの大成功でございます。
MVPは少女を救おうと尽力した方々に。皆さん尽力されましたが、その中で一歩秀ででいましたという意味で。
ヘルメリアの亜人達の立ち位置と意識はこれから大きく変わるでしょう。
皆様が成し得た叛逆(パンク)がどう影響するか。それを考えながら筆を置きます。
それではまた、イ・ラプセルで。
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