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【闇より還ルもの】Macho!×3



●マッチョマッチョマッチョ!
 それはイ・ラプセル西部のイセマールという街。そこで亡くなった三人の者が還リヒトとなった。
「マッチョー!」
 その還リヒトはそう叫びながら扉を破壊し、家屋の中に入る。
「マッチョー!」
 人を殺し、物を壊し、家畜を喰らい、暴力と虐殺を尽くす。
「マッチョー!」
 村の駐在程度では相手にならない。騎士団の新兵程度では足止めすらできない。メインの正規兵は王都を守るために当てられている。
「マッチョー!」
 故にその還リヒトを止める者はいない。
 マッチョ。その言葉通り筋肉質な還リヒト。腐った肉体を補いように肉を喰らい、己の体内に取り込んでいく。そして少しずつ強くなっていく。
 叫び声こそアホらしいが、その脅威は少しずつ成長していた。

●階差演算室
「っていう還リヒトが現れたんだ!」
『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)は集まった自由騎士達に説明を開始する。
「『マッチョー!』と叫びながら暴れまわる男の還リヒトが現れたんだ。元々は筋肉を誇示するパフォーマーだったみたい。後口から火を吐くよ」
 大道芸人か。自由騎士はなんとなく納得した。
「数は三体。一体がそれなりの強さを持っているみたいなので、気を付けてね。傾向として『食べ物』を持つ相手を集中的に狙ってくるみたい」
 食い意地はってるなぁ。呆れるように自由騎士はため息をついた。
「今、イ・ラプセルは大量の還リヒトが出現しているんだ。ここで討ち漏らしたら大群の方に合流するかもしれない。
 ここできっちり倒してきて!」
 馬鹿な相手だが、人に仇なす還リヒトには違いない。きっちり倒しておかなくては。
 自由騎士達は頷き、演算室を出た。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
どくどく
■成功条件
1.還リビト3体の撃破
 どくどくです。
 Macho:男性がもつという『強靱さ、逞しさ、勇敢さ、好戦性』を指し、男尊女卑的な意味合いに受け取られることもあります。
 
●敵情報
・還リヒト(×3)
 筋肉を誇示する還リヒトたちです。元は筋肉を誇示するパフォーマー三兄弟。一〇年前に死亡しています。
 アクセサリの『フード』分類のものを持つキャラを優先的に攻撃してきます。

攻撃方法
殴打 攻近単  拳で殴ってきます。
投げ 攻近単  近くにいる者を投げ飛ばします。【ノックB】
回転 攻近範  両手を広げて回転します。
火吹 魔遠範  口から炎を吐きます。【バーン1】
食事 魔遠味単 食事を食べて体力を回復します。ただし対象は自分のみです。
成長  P   誰かのHPを0にした時点で発動(復活の成否は無関係)。筋肉が成長し、攻撃力が増します。

●場所情報
 イ・ラプセル西部の街、イセマール。そのメイン街道に還リヒトが暴れています。
 街の駐在兵が避難に廻っているため、戦闘に人が巻き込まれることは皆無です。時刻は昼。明るさや広さは戦闘に支障ありません。
 戦闘開始時、敵前衛に『還リヒト(×3)』がいます。
 急いでいるため、事前付与は不可とします。


 この共通タグ【闇より還ルもの】依頼は、連動イベントのものになります。同時期に発生した依頼ですが、複数参加することは問題ありません。
 すべての依頼の成否によって、決戦の結果に影響を及ぼします。
 倒しきれなかった敵は決戦のカタコンベに集合することになります。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
22モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
8/8
公開日
2018年08月14日

†メイン参加者 8人†

『戦場に咲く向日葵』
カノン・イスルギ(CL3000025)
『異邦のサムライ』
サブロウ・カイトー(CL3000363)
『やっぱりぷりけつまみー』
タマキ・アケチ(CL3000011)
『RE:LIGARE』
ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)
『マッチョを宿したキジン』
ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)



「やれやれ、結構好きだったんですけどねえ。マッチョ三兄弟」
 うんうんと頷きながら懐古するサブロウ・カイトー(CL3000363)。亡くなったのが十年前かと時の流れを感じていた。三人が肩車して三色の火を噴きながら回転する火車三重塔はかなりのインパクトがあった。
「マッチョ三兄弟か……」
 誰にも聞こえないように呟く『イ・ラプセル自由騎士団』ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)。かつては彼らに憧れて筋肉を鍛えていた。だがキジン化したことにより夢は消えてしまった。失った夢を思い出し、胸の穴を押さえるようにそっと手を当てた。
「なんと。私に記憶があれば当時の勇士を思い出せるのですが……!」
 悔しそうに『ノンストップ・アケチ』タマキ・アケチ(CL3000011)は拳を握る。当時の彼らが復活したのかはわからないが、盛り上がった筋肉は芸術的といっても過言ではない。魅せるように鍛えられた芸術品。タマキは感動のため息をついていた。
「へー、そんな芸人だったんだ!」
 生前マッチョ還リヒトの事を聞きながら『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は頷いていた。十年前ということはカーミラはまだ二歳。知らないのも無理はない。どうあれ還リヒトになって人を襲うなら捨てておくわけにはいかない。
「そっかー……有名な人たちだったんだね」
 芸人として先達に敬意を抱く『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)。どういう芸であれ、芸事をしながら生きていた人達はカノンにとっては尊敬の対象だ。それが還リヒトになってしまうなんて……。悲しんでいる時間はない。早く大人しくさせなければ。
「所詮は見せ筋、と言いたい所だけど……」
 還リヒトから目をそらさずに『RE:LIGARE』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)はガントレットを嵌める。格闘技で使う筋肉と芸などで魅せる筋肉は違う。だが油断はできない。還リヒトになったことでどうなったかが分からないからだ。
「お前らの筋肉と、オレのヨロイのパワー、どっちが強いか勝負だ!」
『おにくくいたい』マリア・スティール(CL3000004)は巨大な手甲を握りしめ、還リヒトを指差して叫ぶ。ここで彼らを倒しておかないと、カタコンベに雪崩れ込んでくる可能性がある。ここできっちり殴り倒しておかなくては。
「うーん……流石にこの路線は張り合ってあげれないわね」
 頭を掻きながら『星空の奇蹟』ヒルダ・アークライト(CL3000279)は呆れた声をあげる。還リヒトにもいろいろあるが、筋肉の分野はヒルダの興味外だ。せめて相手が女性だったらなぁ、と口に出さずにため息を吐く。
「「「マッチョー!」」」
 筋肉を見せるようにポージングをした後に構える三体の還リヒト。隙があるように見えて誘っているようでもあり、どこからでも攻めれそうに見えて全てが罠に思える。実戦で使うよりは、芸で見せるための『強そうな構え』なのだろう。
 だが油断はできない。相手は還リヒト。イブリース化したことにより常識を逸脱しているのだ。
 最初に動いたのはどちらからか。気が付けば戦いの火蓋は斬って落とされていた。


 三体の還リヒトと八人の自由騎士は真正面からぶつかり合う。
「よーし、行くぞ!」
 軽く指を曲げて構えを取るカノン。リズムをとるように体を揺らし、還リヒトの動きを見る。重要なのは力ではなくタイミング。力に対して力で返すのではなく、力の向きに沿うように体を動かすことだ。
 一直線に振るわれる還リヒトの拳。足を動かして半身を逸らし、そのまま回転するように還リヒトの側面に移動する。移動によって生まれた勢いを殺すことなく拳を突き出し、還リヒトの腹を穿った。そしてすぐ黙足を動かし、次の行動に移る。
「カノンは筋肉はないけど、でも負けないよー!」
「こっちこそ、負けてられないんだから! どりゃー!」
 声をあげて体内に気を巡らせるカーミラ。循環する気の流れがカーミラに活力を与えてくれる。還リヒトのようなマッチョにはなれないが、負けず劣らずの元気があった。剛力の死体に恐れず、むしろ楽しい戦いが待っているという期待が元気を生み出していく。
 還リヒトの拳にぶつけるようにカーミラは拳を突き出す。痺れるような感覚が拳から伝わってくるが、それでも動きは止まらない。二撃、三撃、四撃! 拳と拳。力と力。真正面から還リヒトと殴り合いながら、カーミラは楽しそうに笑みを浮かべる。
「これでどうだ! まだまだ! 今度は頭突きだ!」
「真正面からの殴り合い。それもまたマッチョイズムか」
 頷きながらルシアスが前に出る。雄々しさや力強さを示すために、敢えて真正面から力で突破する。傭兵としては承服できない考えだが、一人の男として納得はできた。ならば今はその感情に従おう。
 力を込めて武器を握る。身体を駆け巡る蒸気が鋼の肉体に力を与えていくのが理解できた。ルシアスの身体に筋肉はないけれど、大事なのはマッチョの精神性。死より這い出た憐れな筋肉に、全身全霊の力を込めて武器を叩きつけた。
「てめえら! お前たちの筋肉が、泣いているとは思わないのか!」
「そうだ! 見せて楽しませる為の筋肉なんじゃねーのかよ!」
 鋼の拳を握りしめ、叫ぶマリア。彼らの筋肉は誰かを楽しませるための物だったはず。それが幽霊列車の影響とは言え、人を殺すことになろうとは。きっちり倒しセフィロトの海に還さなければ。
 ずしん、と地面を揺るがしマリアが進む。キジンの高重量と硬質。それをそのままぶつけるのがマリアの戦法。還リヒトの攻撃を受け流すと同時に鉄の肘を叩き込む。普通の人なら昏倒するほどの重い一撃。
「食らうならオレのゲンコツでも食らいやがれ!」
「『筋肉一筋マッチョ道。打てばマッチョの音がする』……このフレーズ好きだったんですけどねぇ」
 十年前を回顧するようにサブロウが頷いた。そのサブロウの姿だが、いつの間にやら軍服を脱いで白い布を腰に巻いているだけの格好になっていた。アマノホカリの下着だ。異常な格好だが、そこにはマッチョな彼らに対抗する磯が感じられた。
 太刀を手にしてポーズを決めながら鯉口に手を当てる。相手から濃い口が見えないように体を動かし、そのまま腰をかがめて呼吸を止めた。親指で鍔を弾くようにして太刀を抜刀し、そのまま還リヒトに斬りかかる。
「貴方達がそんな風に他者を喰らってズルをする姿は……見るに堪えない」
「確かに。素晴らしい筋肉をお持ちなだけに残念です!」
 額に指をあて、大仰に驚くタマキ。死して十年。自慢の筋肉は土の養分となった故に仕方ないとはいえ、トレーニングで鍛え上げる以外の方法で筋肉を増強するのは彼らの意に反するのだろう。その所業を止めなくては。
 傷ついた還リヒトに武器を向けるタマキ。過去の記憶がない、とはいえ武器を手にすると自然と体が動いていた。体が覚えているままに銃身を下し、武器を振るう。横に振るわれた剣が還リヒトの胴を薙ぐ。
「硬いですね。生前の貴方達ならもっと堅かったかもしれません」
「そうかもね。だけど彼らはもう還リヒトなのよ」
 固く拒絶するようにミルトスが告げる。彼らは生前、芸人として多くの人に笑顔を生んでいたのだろう。それは尊敬すべきことだ。彼らが還リヒトになった事に罪はない。それはただの現象で、彼らがそうなったのは偶然だ。だからこそ、浄化せねばならない。
 ガントレットを盾のようにして、ホワイトカラント修道院で学んだ構えをとるミルトス。呼吸による身体能力の向上。大気を肺に入れて、ゆっくり大きく吐き出す。殴る前の精神儀式だ。一気に踏み込み、強く打つ。基本にして最も重要な格闘理念。
「還り彷徨い出てきたその身体、浄化(け)させていただきます」
「熱血とか筋肉とかガラじゃないわよ」
 銃を手に前衛で戦うヒルダ。真正面から殴るのではなく、動きに動いて銃を撃つ。身体をひねるように回避するたびに白い太ももが露出し、跳躍の度に豊満な胸が揺れた。それも想定内、とばかりに還リヒトに投げキッスをし、余裕を見せていた。
 戦いとは自分のペースの押し付け。ヒルダにとって『魅せながら』戦うことがまさにそれ。円を描くように攻撃を避けながら、銃口を還リヒトに押し付ける。そのまま引き金を引き、その威力を殺すように後ろに飛んだ。優雅に華麗に舞う銃士のドレス。
「手早く退治して、カタコンベに行かなくちゃね」
 ヒルダの言葉に頷く自由騎士達。ここは前哨戦。この還リヒトを食い止め、カタコンベへの援軍を止めるのだ。
 だからといって手を抜くつもりはない。還リヒトは充分に厄介な存在なのだ。現に自由騎士の猛攻を受けても、マッチョ達が止まる気配はない。
 戦いは熱く加速していく。


 自由騎士と還リヒト。サポートの補助こそあるが、戦いは全員前衛で足を止めての殴り合いとなった。
「飴細工に手を出したらぶち殺すわよ!」
「流石に力は強いねー!」
 還リヒトは主に食べ物を多く持っているヒルダとカーミラに集中する。還リヒトの拳が振るわれ、炎が戦場を走った。
「お前ら、オレの後ろに隠れてろ!」
 体力が落ちてきている仲間を守るため、マリアが盾になる。圧倒的な防御力を持つマリアの鎧は、還リヒトの攻撃を受け止めて通さない。防御に回るのは不本意だが、仲間を倒させるわけにはいかない。
「あ、バカ! おこめとマカロンを狙ってやがるな!」
「む。どうやら隠していても食べ物のありかを察するようだな」
 ルシアスは還リヒトの挙動に気付き、ため息を吐く。隠しておいた食べ物を取り出して行動を誘導しようとしたのだが、匂いか何かで気づかれていたようだ。諦めて攻撃を再開する。バスタードソードを振るい、還リヒトの筋肉を傷つけていく。
「脳筋とは彼らの事を指すのだろうな。筋肉の思うままに行動するその様を」
「違うと思うわ。脳筋には違いないけど」
 呆れたようにツッコミを入れるヒルダ。薄紫の瞳を還リヒトに向け、その動きを注視する。男の筋肉をまじまじと見るのは少しうんざりするがそれは我慢して。攻撃の瞬間を押さえるように銃口を向け、引き金を二度引いた。
「筋肉で鍛えられない場所よ。とくと味わいなさい!」
「いいよいいよー。仕上がってるよー! キレてるよー。ナイスバルク!」
 還リヒトを褒めたたえ、気を引こうとするサブロウ。そうすることでマッチョポーズを誘発し、攻撃を減らそうとするのだが……相手も歴戦のマッチョ。行動しながら筋肉アピールをすることは容易な事。その芸の深さにサブロウは臍を噛んだ。
「見事なこだわり……! ならばこの大臀筋を見せる時が来たようですね。ふんぬ!」
「皆様が敵でなければ、今すぐ脱いで私に愛の筋肉指導をしていただきたかったです……!」
 悔いるようにタマキが拳を握る。思想、立場、組織……人は様々な理由で共闘し、そして相対する。たとえ尊敬できる相手であっても、敵であるなら倒さねばならない。その悲しさはどの時代でも生まれるものなのだ。タマキもまた、その悲劇に涙していた。
「そして……私のプリ尻を叩いてほしかった!」
「子供の教育に悪いからやめておきなさい」
 窘めるようにミルトスが制する。九割全裸の見せマッチョ芸人を前に何をいまさら、と思いはするがそれはともかく。腰を回転させると同時に全身の筋肉を解放し、回転するように拳を叩き込む。武術に必要な筋肉を鍛えて放つ鋭い一撃。
「貴方方の肉体は純粋に人を笑顔にする為のものだった。それは本当に尊敬しています」
「うん。カノンも尊敬しているよ」
 還リヒトの挙動一つ一つを逃すまいとカノンは目を凝らしてその動きを見ていた。還リヒトの行動は生前の行動をトレースするという。狂暴化してはいるが、その一つ一つに芸に生きた人間の動きのキレが見て取れた。美しく見せる方法、立ち様、角度、そして――
「これが火吹き! うん、やっぱりすごいや!」
「魅せ方なら負けないよ!」
 芸をするように攻撃する還リヒト。それに対抗するように、カーミラもポージングの真似をする。格闘で鍛えた筋肉はポージングで使う筋肉と違い目立たないが、カーミラ自身が持つ華やかなオーラがそれをカバーする。例えるなら武器のような美しさだ。
「当然、こっちだって負けないから! おりゃー!」
 放たれる拳を受け、よろめく還リヒト。そしてお返しとばかりに拳を振るう。
 マリアがガードに回っているが、自由騎士は回復なしの攻勢スタイルだ。一気呵成な攻めに押し負けるように還リヒトは傷つき、動かなくなっていく。
「おおっと。離脱し損ねましたか」
 途中サブロウが倒れそうになり、英雄の欠片を削ることになるが実質的な被害はそれだけ。集中放火により一体ずつ倒れていくたびに、還リヒトの攻勢は薄れていく。
「これで最後よ! 食べ物の代わりに弾丸を喰らいなさい!」
 言葉と共にヒルダの銃が還リヒトの口に突っ込まれる。笑みを浮かべると同時に引き金を引いた。
 散弾銃の激しい炸裂音。それがこの戦いの終わりを告げた。


「勝ったー! いえーい!」
 拳を振り上げ、勝利を誇示するカーミラ。元気のいい姿がイセマールのストリートに響き渡り、自由騎士達の勝利が街中に広がっていく。そして安堵が伝播するように街中に伝わっていく。
「オレのヨロイの勝ちだ!」
 自分を指差しマリアも勝利宣告をする。マリアが着ているヨロイには還リヒトから殴られた跡があるが、マリア自身に大きなダメージはない。ヨロイも少し調整すれば、次の闘いでも問題なく使えそうだ。
「時々還リヒトって妙なテンションの輩が出てくるのよねぇ」
 暑苦しくて疲れた、とばかりにヒルダは肩をすくめる。生前の動きを模倣しようとする還リヒト。その中にはそういう動きをする者もいるのだろう。もう少し付き合いやすい行動の方が嬉しいんだけど。
(貴方達の筋肉は笑顔を作る為。そして私のは何かを傷つける為の物)
 拳を握り、ミルトスは強く自戒する。会得した格闘技術は人を傷つけるものだ。それを正しく使うのは使う者の心。十年前のパフォーマーもまたそう言った存在だった。徒に人を傷つけまい、と誓いを立てる。
「最後まで筋肉の成長に拘ったか。――腐っても心はマッチョだったんだな」
 還リヒトなだけに、と付け足すルシアス。当人としては場を和ませようとした軽いジョークである。そのまま背を向けて次の戦場に向かい歩き出す。戦いはまだ終わっていないのだ。
「あの還リヒトはゲシュペンストでイブリース化しただけで、あの三人は悪くはないんだよ!」
「ええ。素晴らしい筋肉でした。思い出せないのが実に悔しい」
「元の場所に埋葬させていただけないでしょうか」
 カノンとタマキとサブロウは街の人に頼み、還リヒトを元の場所に埋葬してもらうように頼む。町の人もその言葉に同意し、共同墓地まで運んでくれた。この三人組も犠牲者なのだ。
 彼らは町の人達に手厚く埋葬される。その経歴を穢す者など誰もいなかった。

 かくして自由騎士達はイセマールの街を出る。各地に出没した還リヒト。そしてミッシェル・イ・ラプセルに従う還リヒトの一軍。イ・ラプセルの危機はまだ去ったわけではない。
 自由騎士達は頷き、各々の戦場へと足を向けた。

 ――マッチョー!
 そんな自由騎士達の耳に、そんな言葉が届く。
 それは空耳か、それとも還リヒトの声が耳に残ったか。はたまた彼らなりの感謝と激励の言葉か。
 その言葉を受けながら、それぞれの思いを胸に戦場に向かって走るのであった。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『マッチョを宿したキジン』
取得者: ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)

†あとがき†

 マッチョー!
(訳:
 どくどくです。シリアスな流れの中で珍妙な還リヒトの依頼をお届けしました。
 なんでMysteriousとかMagicとかにしなかったかなぁ……。

 MVPはマッチョに対する熱い思いをプレイングに乗せたプブリアス様に。
 夢が絶たれるということは、悲しいことなのです)

 それでは皆様、決戦頑張ってください。
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