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Prink! 東に焦がれる蜘蛛の裁縫士!

●とある裁縫士(テイラー)の東方見聞欲(イル・ミリオーネ)!
かつて、自由騎士は人を捕らえるアラクネと呼ばれる種族と交戦し勝利を収めた。
その際に自由騎士はアラクネの命を救い、その才能を生かすべく手を回した。その結果、通商連に新たな衣服が並ぶことになったのだが――それ自体は今は別の話。
そのアラクネ――テラと名乗った彼女は工房で不貞腐れていた。
それは人間にいいように使われることに対する不満、ではない。むしろ通商連の環境は素晴らしく、自らの才能を最大限に生かしてくれる立ち位置は予想外の事だった。これまで以上に趣味に傾倒し、服の生産に力を注いでいる。
不満なのは、ここ数か月間は工房から外に出ていない事だった。それ自体は生産の関係上致し方ない。アラクネの糸は魔術と相性が良く、テラ自身の腕前もあってかなりの品物が出来上がっている。作成者としてその事に満足し、そして充実感も得ていた。
彼女が不貞腐れているのは、別の事。自分達を通商連に紹介した自由騎士達の件である。厳密に言えば、彼らの活躍を聞いた時の事である。
曰く、
「ええええええ!? 東方アマノホカリに居るのアイツ等! キモノとかカンフーとかトーホーシンピな文化とか……行きたい! 行って服とか見てみたい! あと現地の女をさらっていろいろ衣服着せてみたいいいいいいいいいいい!」
後半は犯罪なのでどうにか収めてもらったが、前半部分は折れるつもりはないようだ。絵や蒸気カメラの写真や伝聞でその様子を伝えるが、それでも不満は収まる気配はない。
テラを工房から出すと、スケジュールの調整などで大変なことになる。ついでに言えば蜘蛛の幻想種が闊歩するのは、正直頂けない。危険性という意味ではなく、アマノホカリにはジョロウグモという魔性の悪性幻想種がいて、要らぬ混乱を生みかねないのだ。
彼女もその辺りは納得しているが、かといって不満が消えたわけではない。東方へのあこがれを抱いたまま、時折不満を口にしたりするのである。これは良くない傾向だと、通商連はイ・ラプセルに話を持ち掛けるのであった。
●通商連が絡むと商売に話が寄るのは仕方のないことで
「というわけで、東方っぽい服を主体としたショーを開催したいの。皆にも参加してほしいんだけど、どうかな?」
『マーチャント』ミズーリ・メイヴェン(nCL3000010)は自由騎士の集まるサロンでそう言って概要をまとめた羊皮紙を出す。そこには、こう書かれていた。
『第一回! 通商連ファッションショー!』
「着たいものを言ってくれれば、服は用意するわ。何なら自前の服を用意してもいいわね」
最初はそのテイラーのみのショーだったが、そんなのもったいない! とばかりにミズーリさんは宣伝し、大きな会場を借りて大規模なショーになったと言う。
貴方はこの誘いに――
かつて、自由騎士は人を捕らえるアラクネと呼ばれる種族と交戦し勝利を収めた。
その際に自由騎士はアラクネの命を救い、その才能を生かすべく手を回した。その結果、通商連に新たな衣服が並ぶことになったのだが――それ自体は今は別の話。
そのアラクネ――テラと名乗った彼女は工房で不貞腐れていた。
それは人間にいいように使われることに対する不満、ではない。むしろ通商連の環境は素晴らしく、自らの才能を最大限に生かしてくれる立ち位置は予想外の事だった。これまで以上に趣味に傾倒し、服の生産に力を注いでいる。
不満なのは、ここ数か月間は工房から外に出ていない事だった。それ自体は生産の関係上致し方ない。アラクネの糸は魔術と相性が良く、テラ自身の腕前もあってかなりの品物が出来上がっている。作成者としてその事に満足し、そして充実感も得ていた。
彼女が不貞腐れているのは、別の事。自分達を通商連に紹介した自由騎士達の件である。厳密に言えば、彼らの活躍を聞いた時の事である。
曰く、
「ええええええ!? 東方アマノホカリに居るのアイツ等! キモノとかカンフーとかトーホーシンピな文化とか……行きたい! 行って服とか見てみたい! あと現地の女をさらっていろいろ衣服着せてみたいいいいいいいいいいい!」
後半は犯罪なのでどうにか収めてもらったが、前半部分は折れるつもりはないようだ。絵や蒸気カメラの写真や伝聞でその様子を伝えるが、それでも不満は収まる気配はない。
テラを工房から出すと、スケジュールの調整などで大変なことになる。ついでに言えば蜘蛛の幻想種が闊歩するのは、正直頂けない。危険性という意味ではなく、アマノホカリにはジョロウグモという魔性の悪性幻想種がいて、要らぬ混乱を生みかねないのだ。
彼女もその辺りは納得しているが、かといって不満が消えたわけではない。東方へのあこがれを抱いたまま、時折不満を口にしたりするのである。これは良くない傾向だと、通商連はイ・ラプセルに話を持ち掛けるのであった。
●通商連が絡むと商売に話が寄るのは仕方のないことで
「というわけで、東方っぽい服を主体としたショーを開催したいの。皆にも参加してほしいんだけど、どうかな?」
『マーチャント』ミズーリ・メイヴェン(nCL3000010)は自由騎士の集まるサロンでそう言って概要をまとめた羊皮紙を出す。そこには、こう書かれていた。
『第一回! 通商連ファッションショー!』
「着たいものを言ってくれれば、服は用意するわ。何なら自前の服を用意してもいいわね」
最初はそのテイラーのみのショーだったが、そんなのもったいない! とばかりにミズーリさんは宣伝し、大きな会場を借りて大規模なショーになったと言う。
貴方はこの誘いに――
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.着ている服をアピールする!
どくどくです。
ファッションショーという概念がこの時代にあったかはわからないけど、気にするな!
●三行でわかる概要!
幻想種のテイラーが東方の服を見たいと言っている!
でもテイラーは忙しくて外に出れないので、服を着た人を見せよう!
じゃあ、お金儲けの為に服を着た人を見せるショーを開こうじゃないか!
●説明っ!
ファッションショーです。服を着て、その素晴らしさをアピールしてください。
アピールの方法は様々です。口頭で説明してもいいし、服を着て優雅に歩くだけでもいいです。一芸を見せてもいいでしょうし、スキル(他人を傷つけないなら攻撃スキルもOKとします)や非戦を駆使してもいいでしょう。
メインは東方系ですが、そこにこだわる必要はありません。古今東西和洋折衷何でもありです。何なら水着でも構いません。服や演出は通商連がお金を出してくれます。でも全裸(葉っぱだけとかも含む)だけはNGな!
なお、テイラーの感性に来るものがあれば、カジノの商品が増えるかもしれません。最大三つまで。
●人物紹介
・テラ
アラクネ。幻想種。拙作『Web! クモの巣にはご用心!』で自由騎士達と相対し、その際に倒されて和解……なのかなぁ? ともあれ人間の服を作るために通商連にスカウトされました。カジノ商品の一部は彼女の作品です。
人間の態度は中立。通商連や人間社会は、利害関係の一致で手を結んでいます。蜘蛛の性質なのか、気に入ったヒトを糸で絡めて誘拐し、巣に持ち帰って色々着せ替えしたいと言う願望があるとか。
ショーの公演前、或いは後に話をする事は可能です。
・ミズーリ・メイヴェン
今回のファッションショーの主催者。
最初はテラの気を収める為だったのですが、これをショーとして金儲けにしようと一計を講じました。ステージを整え、衣装も大量に用意。やり手だなぁ、この人。
●場所情報
イ・ラプセルの首都、サンクディゼール。そこにある大きな演劇場。その舞台に立ってもらう形です。観客は百人位。結構な数です。
舞台の上に持っていけるモノなら、何でも持っていけます。武器は装飾としてならギリギリセーフ。騎乗生物はアウト。その他、常識に照らし合わせてSTが判断します。
皆様のプレイングをお待ちしています。
ファッションショーという概念がこの時代にあったかはわからないけど、気にするな!
●三行でわかる概要!
幻想種のテイラーが東方の服を見たいと言っている!
でもテイラーは忙しくて外に出れないので、服を着た人を見せよう!
じゃあ、お金儲けの為に服を着た人を見せるショーを開こうじゃないか!
●説明っ!
ファッションショーです。服を着て、その素晴らしさをアピールしてください。
アピールの方法は様々です。口頭で説明してもいいし、服を着て優雅に歩くだけでもいいです。一芸を見せてもいいでしょうし、スキル(他人を傷つけないなら攻撃スキルもOKとします)や非戦を駆使してもいいでしょう。
メインは東方系ですが、そこにこだわる必要はありません。古今東西和洋折衷何でもありです。何なら水着でも構いません。服や演出は通商連がお金を出してくれます。でも全裸(葉っぱだけとかも含む)だけはNGな!
なお、テイラーの感性に来るものがあれば、カジノの商品が増えるかもしれません。最大三つまで。
●人物紹介
・テラ
アラクネ。幻想種。拙作『Web! クモの巣にはご用心!』で自由騎士達と相対し、その際に倒されて和解……なのかなぁ? ともあれ人間の服を作るために通商連にスカウトされました。カジノ商品の一部は彼女の作品です。
人間の態度は中立。通商連や人間社会は、利害関係の一致で手を結んでいます。蜘蛛の性質なのか、気に入ったヒトを糸で絡めて誘拐し、巣に持ち帰って色々着せ替えしたいと言う願望があるとか。
ショーの公演前、或いは後に話をする事は可能です。
・ミズーリ・メイヴェン
今回のファッションショーの主催者。
最初はテラの気を収める為だったのですが、これをショーとして金儲けにしようと一計を講じました。ステージを整え、衣装も大量に用意。やり手だなぁ、この人。
●場所情報
イ・ラプセルの首都、サンクディゼール。そこにある大きな演劇場。その舞台に立ってもらう形です。観客は百人位。結構な数です。
舞台の上に持っていけるモノなら、何でも持っていけます。武器は装飾としてならギリギリセーフ。騎乗生物はアウト。その他、常識に照らし合わせてSTが判断します。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
0個
0個
0個
4個




参加費
50LP
50LP
相談日数
7日
7日
参加人数
9/∞
9/∞
公開日
2020年10月26日
2020年10月26日
†メイン参加者 9人†

●
「無理無理無理無理っ! あんなにたくさんの人がいるなんて、帰ります……!」
舞台の端で恐怖におびえる『復讐の意味は』キリ・カーレント(CL3000547)はものすごい勢いで首を振って、回れ右をする。テラに仕立ててもらった茶色のスチパン風半ズボン衣装。時計やら歯車やらがゴテゴテについた衣装は、素朴なキリの雰囲気を一気に都会風に変化させていた。
「辞退します。あんなたくさんの人に見られたら、あ、押すの待って。きゃ、あうあうあうー!」
必死に逃げようとするキリだが、スタッフに押し出されるように舞台に送られる。たたらを踏みながら部隊の真ん中に立ち、観客たちの視線を受ける。100人近くの興味の目に晒され、キリは思わず凍り付く。
(あ、これは……もうダメ……)
「いかんいかん。さすがに耐えきれんかったか」
キリの緊張を通眼で見ていた『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)は、倒れる寸前で抱える様にして支える。舞うように登場しながら支えて、気付け薬をかがせて退場させる。少なくとも事故には見えなかったはずだ。
「本場アマノホカリの巫女服だ。三十路の私が来てもおかしくないのがうれしいな」
ツボミが来ているのは、アマノホカリで神事の時に斬る巫女装束だ。白衣に緋袴、神事に着る千早といったアマノホカリではスタンダートな巫女装束。地方や神事の種類によって使われる羽織や頭飾りなど着替えの度につけていた。東方衣装の数多の着替えに観客たちは沸いていた。
「テラの奴、元気になったのはいいが……作り過ぎだぞ!」
「たしかにキモノにハカマと言ったのでありますが」
目を回すような表情で『積み上げていく価値』フリオ・フルフラット(CL3000454)はツボミと交代の形で舞台に上がる。フリオが用意したのは着物に袴と言う今でいう大正ロマン風であった。大正って1900年代だよねとか知らない。あるっていったらあるんだい!
「確かにキモノとハカマで、帽子が追加されるぐらいなのですが……なんでこんなに種類があるのでありますか!?」
通商連が用意したキモノとハカマとの数は多い。同じ紋様でも色違いがあり、花をかたどったものや無地のものもある。それとハカマの色と組み合わせるという形式だ。ゴシックな傘や無地の本なども小道具として渡され、フリオはひっきりなしに舞台にでていた。
「次は……自転車に乗るでありますか?」
「さすがは通商連……アピールの場に力を入れると言う事ですね」
ひっきりなしに繰り返される着替えに慣れたのか、『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は頷いた。どうにもテラの創作意欲に火がついたのか、自由騎士達が用意したモノからさらにいろいろ造ったらしい。
「テラ様が満足して頂けたのは嬉しいですわね」
言いながら舞台に躍り出るアンジェリカ。用意したのはツボミと同じ巫女装束。ただしこちらは緋袴に桜を始めとしたアマノホカリの花の装飾を加えた『着物ドレス風』だ。袴の花を際立たせるように踊り、花びらを舞わせるようにして戻ってくる。口にくわえた鈴が、シャランとなった。
「静と動の融合。これこそがアマノホカリの文化なのですよ」
単色の組み合わせによるシンプルにして、色そのものを際立たせた衣装。動きやすく、その動きさえも計算さえれた静と動の二極の融合。それに人々は魅了されていた。
●
「行く……よ」
ノーヴェ・キャトル(CL3000638)は薄い青で統一された服を着て、舞台に立つ。小さな宝石の装飾がつけられたケープ。胸元を覆うキャミソール。ひらひらと舞うヒップスカーフ。そして足首まで届く布のズボン。イ・ラプセルとアマノホカリの間にある中東風の民族衣装だ。
「あらびあんないと……ふわりと、動きやすそう……」
商人の伝聞と絵巻をテラに伝え、作ってもらったのだ。シミターを持ち、弦楽器を主体とした幻想的な音楽とともに舞台で舞うノーヴェ。ノーヴェが舞う度にケープを始めとした布が舞い、それは夜の天幕を思わせる儚さがあった。
(たくさん……みてくれて、いいと思ってくれたら、あたたかい)
「テラも元気そうでよかった。外に出れないのは可哀想だがな」
アラクネと交戦したタイガ・トウドラード(CL3000434)は頷き、舞台に上がる。同じ趣味を持つ者同士、種族や立場は違うが通じ合える所もある。出来る事なら力になりたいと、この役割を買って出たのだ。
「私が着るとおかしいかも知れないが……な」
タイガが来たのは漢服――今から1500年以上昔の 央華大陸の服装だ。麻を丈の色になるように染色し、腰には布を巻く。当時存在した騎馬民族の女性民族衣装だ。颯爽とランウェイを歩くタイガの姿は、堂々としておりむしろ雄々しさを感じさせる。
「思ったよりも反応がいいな。少し意外たっだが」
「いやいや、ばっちりですよ。っと、次は俺達か。行くぜ、ミズーリさん」
「私は主催側なんだけどね」
『キセキの果て』ニコラス・モラル(CL3000453)はこのファッションショーの主催であるミズーリと一緒に舞台に歩いてくる。ごねにごねてごねまくって、どうにか彼女を舞台に引っ張り上げたのである。なお決定打は『主催が出ればお金になるよ』だったとか。
「いいじゃないか。似合ってる似合ってる」
言いながらミズーリと一緒にランウェイを歩くニコラス。着ている服は央華大陸の貴族や知識人が来ていたとされる長袍(チャンパオ)だ。ミズーリの華やかなチャイナ服と対比するように紺の単色となっている。簡素な服装が年齢を重ねたニコラスを際立たせていた。
「華やかでいいじゃないか。若いんだしさー」
「本当に華やかな人がいるじゃないですか。ほら」
「私は質実剛健がモットーなのですが」
ミズーリに視線で指された『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)は静かにそう返す。質素ではあるが中身を鍛えることは怠らない。修道士とはそうあれと言われたミルトスだ。
「とはいえ、縁があって仕立ててもらいましたので。折角ですからご披露しましょう」
ミルトスが来ているのは流れる水をイメージした拳法着だ。動きやすさを重視したモノで、紅色の帯が青の胴着に映えていた。背筋を伸ばして颯爽と歩く姿はまさに達人の歩み。重心をずらさず、滑るように足裏全てに平均的に負荷をかけて歩く。歩法の極みがそこにあった。
「次は浴衣でも着てみますか」
「陛下は……さすがに見に来ていませんか」
残念、と心の中で呟く『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。だけどそんな心を表に出さず、ライトを浴びる。紅色に染められた央華大陸の央華ドレス。エルシーの髪の色と合わさり、鮮やかな紅が観客を魅了する。優雅且つ蠱惑的な空気が舞台を支配した。
「そしてこれが! アマノホカリから伝わったパフォーマンス。カワラ割りよ!」
カワラ――粘土を焼くことで作られた家屋の屋根に使われる素材である。高温で焼かれた土は固く、それを十枚重ねた物がエルシーの前に運ばれる。エルシーは呼気を整えて手刀を真上に構えた。一瞬の静寂の後に手を振り下ろし、瓦の塔に叩きつける。
「はいっ!」
裂帛と共に叩きつけられた一撃。それが真っ二つに割れる。驚きの声の後に、会場に拍手が沸き上がった。
●
かくして、ショーは盛況のうちに終わる。
ショーの噂を聞きつけた者は二度目の公演はないのかと通商連に詰め寄り、その対応にひっきりなしとなったがまあそれは余談。
本命ともいえるアラクネのモチベーションは大きく上がり、東洋風の服装を作り上げる為に工房にこもりきりとなったとか。
なお既知の自由騎士が尋ねに行ったところ、嬉々として――服を縫う手を止めないまま――話をしてくれた。主だったことは東方文化だが、それ以外の活躍も聞いていたらしい。労いと、感謝の言葉も告げられた。
そして暫く後、カジノに新たな服が並ぶ。
アラクネの趣味を盛り込みながら、自由騎士達の安全を願ったかのような魔力を込められた服が――
「無理無理無理無理っ! あんなにたくさんの人がいるなんて、帰ります……!」
舞台の端で恐怖におびえる『復讐の意味は』キリ・カーレント(CL3000547)はものすごい勢いで首を振って、回れ右をする。テラに仕立ててもらった茶色のスチパン風半ズボン衣装。時計やら歯車やらがゴテゴテについた衣装は、素朴なキリの雰囲気を一気に都会風に変化させていた。
「辞退します。あんなたくさんの人に見られたら、あ、押すの待って。きゃ、あうあうあうー!」
必死に逃げようとするキリだが、スタッフに押し出されるように舞台に送られる。たたらを踏みながら部隊の真ん中に立ち、観客たちの視線を受ける。100人近くの興味の目に晒され、キリは思わず凍り付く。
(あ、これは……もうダメ……)
「いかんいかん。さすがに耐えきれんかったか」
キリの緊張を通眼で見ていた『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)は、倒れる寸前で抱える様にして支える。舞うように登場しながら支えて、気付け薬をかがせて退場させる。少なくとも事故には見えなかったはずだ。
「本場アマノホカリの巫女服だ。三十路の私が来てもおかしくないのがうれしいな」
ツボミが来ているのは、アマノホカリで神事の時に斬る巫女装束だ。白衣に緋袴、神事に着る千早といったアマノホカリではスタンダートな巫女装束。地方や神事の種類によって使われる羽織や頭飾りなど着替えの度につけていた。東方衣装の数多の着替えに観客たちは沸いていた。
「テラの奴、元気になったのはいいが……作り過ぎだぞ!」
「たしかにキモノにハカマと言ったのでありますが」
目を回すような表情で『積み上げていく価値』フリオ・フルフラット(CL3000454)はツボミと交代の形で舞台に上がる。フリオが用意したのは着物に袴と言う今でいう大正ロマン風であった。大正って1900年代だよねとか知らない。あるっていったらあるんだい!
「確かにキモノとハカマで、帽子が追加されるぐらいなのですが……なんでこんなに種類があるのでありますか!?」
通商連が用意したキモノとハカマとの数は多い。同じ紋様でも色違いがあり、花をかたどったものや無地のものもある。それとハカマの色と組み合わせるという形式だ。ゴシックな傘や無地の本なども小道具として渡され、フリオはひっきりなしに舞台にでていた。
「次は……自転車に乗るでありますか?」
「さすがは通商連……アピールの場に力を入れると言う事ですね」
ひっきりなしに繰り返される着替えに慣れたのか、『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は頷いた。どうにもテラの創作意欲に火がついたのか、自由騎士達が用意したモノからさらにいろいろ造ったらしい。
「テラ様が満足して頂けたのは嬉しいですわね」
言いながら舞台に躍り出るアンジェリカ。用意したのはツボミと同じ巫女装束。ただしこちらは緋袴に桜を始めとしたアマノホカリの花の装飾を加えた『着物ドレス風』だ。袴の花を際立たせるように踊り、花びらを舞わせるようにして戻ってくる。口にくわえた鈴が、シャランとなった。
「静と動の融合。これこそがアマノホカリの文化なのですよ」
単色の組み合わせによるシンプルにして、色そのものを際立たせた衣装。動きやすく、その動きさえも計算さえれた静と動の二極の融合。それに人々は魅了されていた。
●
「行く……よ」
ノーヴェ・キャトル(CL3000638)は薄い青で統一された服を着て、舞台に立つ。小さな宝石の装飾がつけられたケープ。胸元を覆うキャミソール。ひらひらと舞うヒップスカーフ。そして足首まで届く布のズボン。イ・ラプセルとアマノホカリの間にある中東風の民族衣装だ。
「あらびあんないと……ふわりと、動きやすそう……」
商人の伝聞と絵巻をテラに伝え、作ってもらったのだ。シミターを持ち、弦楽器を主体とした幻想的な音楽とともに舞台で舞うノーヴェ。ノーヴェが舞う度にケープを始めとした布が舞い、それは夜の天幕を思わせる儚さがあった。
(たくさん……みてくれて、いいと思ってくれたら、あたたかい)
「テラも元気そうでよかった。外に出れないのは可哀想だがな」
アラクネと交戦したタイガ・トウドラード(CL3000434)は頷き、舞台に上がる。同じ趣味を持つ者同士、種族や立場は違うが通じ合える所もある。出来る事なら力になりたいと、この役割を買って出たのだ。
「私が着るとおかしいかも知れないが……な」
タイガが来たのは漢服――今から1500年以上昔の 央華大陸の服装だ。麻を丈の色になるように染色し、腰には布を巻く。当時存在した騎馬民族の女性民族衣装だ。颯爽とランウェイを歩くタイガの姿は、堂々としておりむしろ雄々しさを感じさせる。
「思ったよりも反応がいいな。少し意外たっだが」
「いやいや、ばっちりですよ。っと、次は俺達か。行くぜ、ミズーリさん」
「私は主催側なんだけどね」
『キセキの果て』ニコラス・モラル(CL3000453)はこのファッションショーの主催であるミズーリと一緒に舞台に歩いてくる。ごねにごねてごねまくって、どうにか彼女を舞台に引っ張り上げたのである。なお決定打は『主催が出ればお金になるよ』だったとか。
「いいじゃないか。似合ってる似合ってる」
言いながらミズーリと一緒にランウェイを歩くニコラス。着ている服は央華大陸の貴族や知識人が来ていたとされる長袍(チャンパオ)だ。ミズーリの華やかなチャイナ服と対比するように紺の単色となっている。簡素な服装が年齢を重ねたニコラスを際立たせていた。
「華やかでいいじゃないか。若いんだしさー」
「本当に華やかな人がいるじゃないですか。ほら」
「私は質実剛健がモットーなのですが」
ミズーリに視線で指された『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)は静かにそう返す。質素ではあるが中身を鍛えることは怠らない。修道士とはそうあれと言われたミルトスだ。
「とはいえ、縁があって仕立ててもらいましたので。折角ですからご披露しましょう」
ミルトスが来ているのは流れる水をイメージした拳法着だ。動きやすさを重視したモノで、紅色の帯が青の胴着に映えていた。背筋を伸ばして颯爽と歩く姿はまさに達人の歩み。重心をずらさず、滑るように足裏全てに平均的に負荷をかけて歩く。歩法の極みがそこにあった。
「次は浴衣でも着てみますか」
「陛下は……さすがに見に来ていませんか」
残念、と心の中で呟く『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。だけどそんな心を表に出さず、ライトを浴びる。紅色に染められた央華大陸の央華ドレス。エルシーの髪の色と合わさり、鮮やかな紅が観客を魅了する。優雅且つ蠱惑的な空気が舞台を支配した。
「そしてこれが! アマノホカリから伝わったパフォーマンス。カワラ割りよ!」
カワラ――粘土を焼くことで作られた家屋の屋根に使われる素材である。高温で焼かれた土は固く、それを十枚重ねた物がエルシーの前に運ばれる。エルシーは呼気を整えて手刀を真上に構えた。一瞬の静寂の後に手を振り下ろし、瓦の塔に叩きつける。
「はいっ!」
裂帛と共に叩きつけられた一撃。それが真っ二つに割れる。驚きの声の後に、会場に拍手が沸き上がった。
●
かくして、ショーは盛況のうちに終わる。
ショーの噂を聞きつけた者は二度目の公演はないのかと通商連に詰め寄り、その対応にひっきりなしとなったがまあそれは余談。
本命ともいえるアラクネのモチベーションは大きく上がり、東洋風の服装を作り上げる為に工房にこもりきりとなったとか。
なお既知の自由騎士が尋ねに行ったところ、嬉々として――服を縫う手を止めないまま――話をしてくれた。主だったことは東方文化だが、それ以外の活躍も聞いていたらしい。労いと、感謝の言葉も告げられた。
そして暫く後、カジノに新たな服が並ぶ。
アラクネの趣味を盛り込みながら、自由騎士達の安全を願ったかのような魔力を込められた服が――
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
どくどくです。
和風中華風までは予想できましたが、アラビアンまでくるとは。
以上のような結果になりました。
カジノには近日中に商品が並ぶでしょう。しばしお待ちを。
それではまた、イ。ラプセルで。
和風中華風までは予想できましたが、アラビアンまでくるとは。
以上のような結果になりました。
カジノには近日中に商品が並ぶでしょう。しばしお待ちを。
それではまた、イ。ラプセルで。
FL送付済