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【鉄血侵攻】AshestoAshes!非情の作戦!

●惨劇
炎が村を包み込み、逃げ惑う人達は無残に殺される――
惨劇は突然始まった。予告もなく、予兆もなく。だた突然起こった火の手と、そして押し入る軍人。それは彼らが属しているヴィスマルクの軍服だ。種族さまざまの兵士達は訓練だった動きで村人を追い詰め、命乞いを無視して命を奪う。
略奪。簒奪。そして破壊。
それまで無事に明日を迎えられただろう村は、二時間足らずで地図から消えた。
「な、なんでヴィスマルクの軍人が!? 俺達はヴィスマルクに服従した――」
「そうだぁ! 俺達はヴィスマルク軍人だ! アハハハハハハ!」
自らの軍服を強調するようにして叫び、引き金を引く。逃げ延びた者達は、その日イ・ラプセルがレガード砦を攻めたという事を後に知る。
(…………まさか、あの時の軍人は……?)
そう疑問に思ってしまうのは、自然な流れであった。
●第100歩兵大隊
「イ・ラプセルがレガード砦を落とす前に村を襲撃する」
バートランド・フォートシャフト少佐は部下達に冷徹な声で告げる。彼が指揮する侵火槍兵団第100歩兵大隊は非情ともいえる命令を眉一つ動かすことなく聞き入れる。
「レガード砦がイ・ラプセルの手に落ちれば、そこを橋頭保とする事は確実だ。ならばその生産ラインは潰しておくに越したことはない。稲を切り捨て塩を撒け。井戸に水をまき、家を焼いてヒトを殺せ。復興するだけで時間を取らせるほどに破壊しろ」
フォートシャフトという男は、厳格にして冷徹な指揮官だ。傭兵団からヴィスマルクに正式採用された将校で、その任務成功率と部下の死傷率の高さがその恐ろしさを示している。先の先を見据え、最大効率で動く。その為に命がどれだけ失われようが構わない。
レガード砦が防衛できるかどうかは関係ない。ディークマン大佐の勢力を削ぐことで、得をする軍人もいる。戦乱の混乱時だ。全てイ・ラプセル騎士団が我が軍に扮装したと言い張ればいい。通商連の追及もそれでかわせるだろう。
『冗談でしょう!? なんで自分の支配下の村を焼かなくちゃいけないんですか! そんなのイ・ラプセルの変装に決まってるじゃないですか!』……外交官の二枚舌が目に映る。ともあれ今は任務に赴くのみ。フォートシャフト少佐は部隊を幾つかのグループに分け、各村の襲撃にかかる。
ヴィーレ村、ガドル村、そしてニース村を焼き――
●イ・ラプセル
「おい? 火が上がってないか?」
遠くに見える火に気付いたのは、イ・ラプセルの騎士だ。遠視の魔力を使い、その惨劇を知る。そこにいるヴィスマルク軍人を。
今はレガート砦からは遠いが、村を焼きながらこちらに近づいてきている。目的は不明だが、今ならそちらに部隊を送ることが出来る。本命のレガート砦突入前に、少し寄り道することになるだろう。
火の手を見た貴方は――
炎が村を包み込み、逃げ惑う人達は無残に殺される――
惨劇は突然始まった。予告もなく、予兆もなく。だた突然起こった火の手と、そして押し入る軍人。それは彼らが属しているヴィスマルクの軍服だ。種族さまざまの兵士達は訓練だった動きで村人を追い詰め、命乞いを無視して命を奪う。
略奪。簒奪。そして破壊。
それまで無事に明日を迎えられただろう村は、二時間足らずで地図から消えた。
「な、なんでヴィスマルクの軍人が!? 俺達はヴィスマルクに服従した――」
「そうだぁ! 俺達はヴィスマルク軍人だ! アハハハハハハ!」
自らの軍服を強調するようにして叫び、引き金を引く。逃げ延びた者達は、その日イ・ラプセルがレガード砦を攻めたという事を後に知る。
(…………まさか、あの時の軍人は……?)
そう疑問に思ってしまうのは、自然な流れであった。
●第100歩兵大隊
「イ・ラプセルがレガード砦を落とす前に村を襲撃する」
バートランド・フォートシャフト少佐は部下達に冷徹な声で告げる。彼が指揮する侵火槍兵団第100歩兵大隊は非情ともいえる命令を眉一つ動かすことなく聞き入れる。
「レガード砦がイ・ラプセルの手に落ちれば、そこを橋頭保とする事は確実だ。ならばその生産ラインは潰しておくに越したことはない。稲を切り捨て塩を撒け。井戸に水をまき、家を焼いてヒトを殺せ。復興するだけで時間を取らせるほどに破壊しろ」
フォートシャフトという男は、厳格にして冷徹な指揮官だ。傭兵団からヴィスマルクに正式採用された将校で、その任務成功率と部下の死傷率の高さがその恐ろしさを示している。先の先を見据え、最大効率で動く。その為に命がどれだけ失われようが構わない。
レガード砦が防衛できるかどうかは関係ない。ディークマン大佐の勢力を削ぐことで、得をする軍人もいる。戦乱の混乱時だ。全てイ・ラプセル騎士団が我が軍に扮装したと言い張ればいい。通商連の追及もそれでかわせるだろう。
『冗談でしょう!? なんで自分の支配下の村を焼かなくちゃいけないんですか! そんなのイ・ラプセルの変装に決まってるじゃないですか!』……外交官の二枚舌が目に映る。ともあれ今は任務に赴くのみ。フォートシャフト少佐は部隊を幾つかのグループに分け、各村の襲撃にかかる。
ヴィーレ村、ガドル村、そしてニース村を焼き――
●イ・ラプセル
「おい? 火が上がってないか?」
遠くに見える火に気付いたのは、イ・ラプセルの騎士だ。遠視の魔力を使い、その惨劇を知る。そこにいるヴィスマルク軍人を。
今はレガート砦からは遠いが、村を焼きながらこちらに近づいてきている。目的は不明だが、今ならそちらに部隊を送ることが出来る。本命のレガート砦突入前に、少し寄り道することになるだろう。
火の手を見た貴方は――
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.21ターン戦線を維持する
どくどくです。
だってアナザー掲示板に『破壊工作やゲリラ戦などの不正規戦闘に優れる』って書いてたし(言い訳
本シナリオはアデル・ハビッツ(CL3000496)の関係者であるバートランド・フォートシャフトを使用させていただきました。
該当者に参加を強制するものではありませんし、優先参加権もありません。ご了承ください。
●敵情報
★第100歩兵大隊
ヴィスマルク軍人。国外からの移民によって構成された、非ヴィスマルク人部隊です。種族も様々。ゲリラ戦に優れ、真正面からの戦いではなく奇襲や不意打ち等で優位に作戦を進めるのが基本です。
【南側】【東側】【北側】の三カ所で作戦進行中です。
一定時間戦線を維持すれば、費用対効果の悪さから撤退します。
【南側】
村の南側です。既に炎は燃え盛り、逃げ惑う人達は全員息絶えています。
・バートランド・フォートシャフト(×1)
キジン(オールモスト)。45歳男性。ヴィスマルク軍人です。階級は少佐。傭兵から将校になった指揮官で、個人戦闘力も高いです。
『バンダースナッチ Lv3』『バレッジファイヤ Lv3』『マッドハッター Lv4』『カームムーブ(EX)』等を活性化しています。
『カームムーブ(EX)』:いかなる状況でも惑わぬ冷静な動き。【精無】【行動不能耐性】
・アンナ・ヴィンプフェリング(×1)
マザリモノ(キマイラ)。15歳女性。非ヴィスマルク人。格闘スタイル。クローを使い、野生的に攻めてきます。
『獅子吼 Lv3』『バーサーク Lv3』『影狼 Lv4』等を活性化しています。
・歩兵(×2)
第100歩兵大隊の兵士です。非ヴィスマルク人。軽戦士。槍を使って攻撃します。
軽戦士のRANK2までを活性化しています。
【東側】
村の東側です。今なお殺戮が続いています。
・セイジュウロウ・矢ノ(×1)
オニビト。120歳男性。非ヴィスマルク人。呪術師。笛を吹きながら、魔力を解き放っています。
『ネクロフィリア』『トロメーア Lv4』『スペルカット Lv3』等を活性化しています。
・盾兵(×2)
第100歩兵大隊の兵士です。非ヴィスマルク人。防御タンク。剣と盾を使って攻撃します。
防御タンクのRANK2までを活性化しています。
・村人(×8)
村人です。そのうち五名は矢ノの呪術師スキルで操られ、三名が逃げ惑っています。HPに1点でもダメージを受ければ戦闘不能となるでしょう。
【北側】
村の北側です。炎はここから発生しています。
・アーブラハム・ヨッフム(×1)
ノウブル。30歳男性。。非ヴィスマルク人。魔導士。魔術の炎を放ち、村を焼いています。
『フォーマルハウト Lv4』『アニマ・ムンディ Lv4』『緋文字 Lv4』等を活性化しています。
・魔導兵(×3)
第100歩兵大隊の兵士です。 魔導士。『緋文字 Lv2』で村を焼いています。
魔導士のRANK2までを活性化しています。
●場所情報
ヴィスマルク領カトラ村。自国は夜。燃え盛る炎があるため、明かりは不要です。自由騎士達は西側から進軍し、各戦場に分かれていく形になります。
戦場を便宜上【南側】【東側】【北側】の三つに分けます。このどれかに戦闘可能なPCがいない場合、第100歩兵大隊はカトラ村に進軍して破壊工作を始めるでしょう。そうなれば依頼失敗です。
1ターンかければ戦場間の移動可能です(宣言ターンの終わりに移動を開始し、次のターンの終わりにその戦場に参入する形です)。戦場を超えてスキル効果を発揮させることはできません。便宜上、各戦場の距離は50mとします。
戦闘開始時、【南側】は敵前衛に『アンナ』『歩兵(×2)』が、後衛に『バートランド』がいます。
【東側】は敵前衛に『盾兵(×2)』『操られた村人(×5)』が、後衛に『セイジュウロウ』がいます。まだ倒れていない村人3名は、味方側前衛に居ます。
【北側】は敵前衛に『魔導兵(×3)』が、敵後衛に『アーブラハム』がいます。
どの戦場においても、急いでいるため事前付与不可とします。
※この共通タグ【鉄血侵攻】依頼は、連動イベントのものになります。依頼が失敗した場合、『【鉄血侵攻】 Zealot! 鉄壁を砕く熱き楔!』に軍勢が雪崩れ込みます。
皆様のプレイングをお待ちしています。
だってアナザー掲示板に『破壊工作やゲリラ戦などの不正規戦闘に優れる』って書いてたし(言い訳
本シナリオはアデル・ハビッツ(CL3000496)の関係者であるバートランド・フォートシャフトを使用させていただきました。
該当者に参加を強制するものではありませんし、優先参加権もありません。ご了承ください。
●敵情報
★第100歩兵大隊
ヴィスマルク軍人。国外からの移民によって構成された、非ヴィスマルク人部隊です。種族も様々。ゲリラ戦に優れ、真正面からの戦いではなく奇襲や不意打ち等で優位に作戦を進めるのが基本です。
【南側】【東側】【北側】の三カ所で作戦進行中です。
一定時間戦線を維持すれば、費用対効果の悪さから撤退します。
【南側】
村の南側です。既に炎は燃え盛り、逃げ惑う人達は全員息絶えています。
・バートランド・フォートシャフト(×1)
キジン(オールモスト)。45歳男性。ヴィスマルク軍人です。階級は少佐。傭兵から将校になった指揮官で、個人戦闘力も高いです。
『バンダースナッチ Lv3』『バレッジファイヤ Lv3』『マッドハッター Lv4』『カームムーブ(EX)』等を活性化しています。
『カームムーブ(EX)』:いかなる状況でも惑わぬ冷静な動き。【精無】【行動不能耐性】
・アンナ・ヴィンプフェリング(×1)
マザリモノ(キマイラ)。15歳女性。非ヴィスマルク人。格闘スタイル。クローを使い、野生的に攻めてきます。
『獅子吼 Lv3』『バーサーク Lv3』『影狼 Lv4』等を活性化しています。
・歩兵(×2)
第100歩兵大隊の兵士です。非ヴィスマルク人。軽戦士。槍を使って攻撃します。
軽戦士のRANK2までを活性化しています。
【東側】
村の東側です。今なお殺戮が続いています。
・セイジュウロウ・矢ノ(×1)
オニビト。120歳男性。非ヴィスマルク人。呪術師。笛を吹きながら、魔力を解き放っています。
『ネクロフィリア』『トロメーア Lv4』『スペルカット Lv3』等を活性化しています。
・盾兵(×2)
第100歩兵大隊の兵士です。非ヴィスマルク人。防御タンク。剣と盾を使って攻撃します。
防御タンクのRANK2までを活性化しています。
・村人(×8)
村人です。そのうち五名は矢ノの呪術師スキルで操られ、三名が逃げ惑っています。HPに1点でもダメージを受ければ戦闘不能となるでしょう。
【北側】
村の北側です。炎はここから発生しています。
・アーブラハム・ヨッフム(×1)
ノウブル。30歳男性。。非ヴィスマルク人。魔導士。魔術の炎を放ち、村を焼いています。
『フォーマルハウト Lv4』『アニマ・ムンディ Lv4』『緋文字 Lv4』等を活性化しています。
・魔導兵(×3)
第100歩兵大隊の兵士です。 魔導士。『緋文字 Lv2』で村を焼いています。
魔導士のRANK2までを活性化しています。
●場所情報
ヴィスマルク領カトラ村。自国は夜。燃え盛る炎があるため、明かりは不要です。自由騎士達は西側から進軍し、各戦場に分かれていく形になります。
戦場を便宜上【南側】【東側】【北側】の三つに分けます。このどれかに戦闘可能なPCがいない場合、第100歩兵大隊はカトラ村に進軍して破壊工作を始めるでしょう。そうなれば依頼失敗です。
1ターンかければ戦場間の移動可能です(宣言ターンの終わりに移動を開始し、次のターンの終わりにその戦場に参入する形です)。戦場を超えてスキル効果を発揮させることはできません。便宜上、各戦場の距離は50mとします。
戦闘開始時、【南側】は敵前衛に『アンナ』『歩兵(×2)』が、後衛に『バートランド』がいます。
【東側】は敵前衛に『盾兵(×2)』『操られた村人(×5)』が、後衛に『セイジュウロウ』がいます。まだ倒れていない村人3名は、味方側前衛に居ます。
【北側】は敵前衛に『魔導兵(×3)』が、敵後衛に『アーブラハム』がいます。
どの戦場においても、急いでいるため事前付与不可とします。
※この共通タグ【鉄血侵攻】依頼は、連動イベントのものになります。依頼が失敗した場合、『【鉄血侵攻】 Zealot! 鉄壁を砕く熱き楔!』に軍勢が雪崩れ込みます。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
3個
7個
3個
3個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
10/10
10/10
公開日
2020年08月09日
2020年08月09日
†メイン参加者 10人†
●
カトラ村北側――
「これ以上はやらせないであります!」
燃え盛る炎の轟音を超える声でフリオ・フルフラット(CL3000454)は叫ぶ。軍人と軍人が殺し合うのはいい。軍服に袖を通す覚悟をはき違えたりはしない。しかし軍人が一般人を殺すのは違う。たとえそれが効率的だとしても。
「最初から撤退を前提に焼くとは……」
失われた命を弔うように瞑目し、『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は武器を握りしめる。ここから逃げようとした村人達は既に焼け焦げ、死に絶えている。もう少し早ければ間に合ったかもしれない。その後悔を怒りに変えた。
「ほんと効果あるんだよな、この手の行動って」
ため息をつくように『永遠の絆』ザルク・ミステル(CL3000067)が呟く。敵の手に渡るのなら破壊してしまえ。その効果は傭兵時代に実感していた。時間がたつにつれて、じわじわと響いてくるのだ。まるで染み入る毒のように。
「目的のために手段は選ばない……だとしても!」
『水銀を伝えし者』リュリュ・ロジェ(CL3000117)は言って拳を握りしめる。軍人は身を挺して国を守る者。そう信じてきたリュリュにとって、この破壊行動は許せるものではなかった。これがヴィスマルクと言う国なのか。
「ここで彼らを止めないと……ね」
感情を押さえた声で『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は言う。生存者を守ることで、イ・ラプセルの潔白を晴らす証人にすることが出来る。勿論、村人を助ける理由はそれだけではないが。ともあれここで止めなければいけないのは確かだ。
カトラ村東側――
「非道ではあるが、効率的だな」
村の惨状を見て『石厳公』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)はため息をついた。人が住めるようになるまでかけた時間を、僅か一夜で無に帰すのだ。そこから生み出される生産物はすべて無くなる。効率的と言わざるを得まい。
「そうですね。ともあれ、オーダーは果たしましょう」
特に感慨いなく『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)は頷いた。古今東西、戦争で荒らされた村は数多く、地図から消えた村は数えきれない。それが戦の常。戦いに傾倒している彼女はそれを理解していた。
そしてカトラ村南側――
「こんなことが……こんなことが許されていいはずなんてないわ!」
終わった惨劇を前に『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は叫ぶ。戦争の有用性なんて関係ない。そうやって生まれた犠牲者を、彼女は孤児院で何人も見てきた。あんな子達をもう産みださないと誓ったのだから。
「皆殺し済みか……やれやれ徹底しているな!」
横たわる遺体を見て『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はため息をつく。これは戦争だ。勝つためになんだってするものがいるのは当然だ。だが目の前でそれをやられて、何も感じないほど彼女は達観もしていなかった。
「……お前にだけは、負けられない」
感情を押さえた声で『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)は呟く。ヘルメットで隠れた彼の表情は見えない。押さえられた声の感情は分からない。故にアデルと目の前の敵との因果関係は、ようとして知れなかった。ただ、似たカタクラフトというだけだ。
「作戦、Bプランで続行」
抑揚なく命令を告げるフォートシャフト。自由騎士達の乱入を予知していたわけではないが、何かしらの邪魔が入ることは予想していたようだ。部下達も慌てることなく自由騎士達を迎え撃つ体制を取る。
燃え盛るカトラ村。自由騎士と第100歩兵大隊との攻防が始まる。
●
「先ずはこの場を制しましょう」
村北側で最初に動いたのはアンジェリカだ。『断罪と救済の十字架』を手にして第100歩兵大隊に向かう。村を焼いた彼らを逃すつもりはない。ここで伏して、己の業を償ってもらわなくては。
速攻。機国神から得た権能で自らに付与を行い、そのまま敵に向かい武器を振るうアンジェリカ。回避を捨てた大ぶりな攻撃。だがその分威力は十分だった。爆発するように叩きつけられた一撃が、敵魔術師を穿つ。
「貴方達には存分に罪を償ってもらいます」
「ま、足取りなんざ掴めないようになってるんだろうがな」
言って苦笑するザルク。こういう非合法な作戦に参加する者達は、すぐに切り捨てられるようになっている。ヴィスマルクの国籍がない者ばかりを集め、都合が悪ければ知らぬふり。襲撃した彼ら自身、そうなるだろうことも承知の上のはずだ。
戦争の常ではあるが、だからと言って同情はしない。ザルクは銃を構え、呼吸を整える。連戦になるが、かと言って手を抜いて相手出来るわけでもない。二挺拳銃を交差するように構え、魔力を込めて撃ち放った。着弾点から拘束の結界が展開されていく。
「動くなよ。お前らの炎はここでお終いだ」
「そうだね……。ここで止めないと。これ以上の死人は出さないよ」
ザルクの言葉に頷くマグノリア。第100歩兵大隊の是非を問うつもりはない。彼らもこの国で生きていくために必要な事なのだから。だが、その行動で自国に疑いがかかることは許されない。
神の力が宿ると言われる聖遺物を手にし、魔力を展開するマグノリア。世界の在り方を理解し、それを力に転化するのが錬金術。万物は時と共に劣化する。その法則を魔力により加速し敵に属性として付与する。傷こそ与えないが、目に見えて動きに衰えが出ていた。
「うん。今は此処を守り抜こう。彼らを倒せば、村の放火はなくなる」
「とはいえ、死んだ人間が蘇るわけでもない」
忸怩たる思いを胸にし、リュリュが言葉を放つ。この村人はヴィスマルク国民で、イ・ラプセルからすれば死んでも腹は痛まない。村の復興は大変だが、反乱を恐れるのならむしろ死んでもらった方がいい――そう冷静に割り切れれば、どれだけ楽だったろうか?
天に流れる力。地に流れる力。その二つの力を意識するマグノリア。世界に満ちた力を理解し、その一部を自らのマナをもって活用する。二つの力をらせん状にして束ね、矢として仲間達に向かって放つ。矢に含まれた力が、仲間に活力を与えた。
「こんなことが許されてたまるか! お前達はそれでも軍人か!」
「そうであります! 軍人は国民を守るためにあるのです!」
カタクラフトの腕を振るい、フリオが敵前に立つ。戦いが綺麗な事ばかりだけではない事は知っている。時に卑劣な手段を取ることもあるだろう。だが、他国に渡るなら殺してしまえ、というのはとても認められなかった。
涙を拭いて、前を見る。決意を込めるように、剣を握りしめるフリオ。魔術師の炎に対抗するためのコーティングを展開し、怒りをぶつけるように真っ直ぐに剣を振るう。確かな手ごたえが、剣の柄を通じて伝わってきた。
「これ以上はやらせません。イ・ラプセルの自由騎士が止めてみせるのであります!」
名乗りに対する返答はない。ただ魔力の炎をもって返された。
「さて、耐えきって見せましょうか」
村東側。防御の構えを取って、ミルトスは口を開く。敵八名に対し、こちらは二名。圧倒的ともいえる戦力差だ。装甲歩兵に指示を出して敵兵を止めさせながら、ミルトス自身も敵を止める為の盾となる。防衛線に殲滅戦。どのような形であれ、戦いは嫌いではない。
先ずは操られた村人達を狙う。相手の攻撃を円の動きでさばきながら、一瞬のスキをついて真っすぐ踏み込む。円の動きと線の動き、その二極こそが武の動き。踏み込みの衝撃で村人達を一気に穿っていく。
「さあ。五回は殺す気で来なさい」
「何とか耐えきって見せよう」
武器を構えて頷くテオドール。耐久戦に徹するなら、敵ネクロマンサーのように戦闘不能の人間を操る術を使えばいいのだが、個人的な理由でその術は使いたくなかった。愚行かもしれないが、それでも超えられない線があるのだ。
黒く細い杖に魔力を集めるテオドール。狙いは目の前のネクロマンサー。集めた魔力を刃の形に返還し、解き放つ。テオドールの杖から放たれた刃は真っ直ぐに飛び、敵の影を突き刺した。そこから生まれる呪いが影を通じて伝わり、動きを封じていく。
「さてこのまま攻めきれればいいのだが」
そんなに甘い話ではないだろう。敵は盗賊ではなく、列強国の兵士なのだから。
楽観できる余裕はない。二人はそれをひしひしと感じていた。
「雑兵と侮らん。奴の部下なら相応の練度だろう」
村南側。アデルは敵格闘家を押さえながら戦っていた。相手が動き回るのを警戒し、回復役のツボミを狙わせないよう意識する。優先順位を頭の中で意識し、その序列を崩さないように動く。焦るな。自らを律し、しかし闘争の熱は昂らせて。
カタクラフトから蒸気を輩出し、全身に力を込める。振るう槍が敵を捕らえ、血飛沫が舞った。一手一手、確実に敵を追い詰める。かつて見た背中がそうであったかのように、アデル自身も冷静に敵を追い詰めていく。
「お前にだけは負けられん。任務でも、兵士としてもだ!」
「貴様の上位互換と聞いたが、ふむ?」
ツボミはアデルから聞いた話を脳内で反芻する。自由騎士の前に所属していた傭兵団の団長。戦術や作戦の遂行能力は、アデルの上位互換であると。だがツボミにはそうは見えなかった。カタクラフト以外は、まるで真逆だと。
思考しながらも癒しの手は動く。仲間の状態を確認し、同時に魔力を展開する。耐久戦である以上は温存しておきたいのはやまやまだが、状況がそれを許してくれない。全力で魔力を解き放ち、仲間の傷を癒していく。
「私にはとてもそうは見えん。格好だけは同じだが、相違部分はそれだけだな」
「こんな作戦立てるヤツと同じなわけないでしょう!」
怒りと共に拳を放つエルシー。目の端に移る村人達の遺体。彼らはもう動かない。笑わない。怒らない。泣かない。ただ朽ちていくだけの存在だ。それを良しとするのがヴィスマルクだと言うのなら、そんな国は許しておけない。
肺一杯に空気を吸い込み、呼気ともに敵兵に突き進む。繰り出される槍の突きを身をかがめてかわし、敵の懐にたどり着いた。エルシーの動きを察した兵士は一歩下がろうとするが、それより早く拳を突き出すエルシー。紅色の手甲が敵兵を穿つ。
「私達は負けないわ! こんなことをする連中に、決して屈しない!」
叫ぶエルシー、それは自由騎士全員の代弁。
「作戦継続。敵殲滅を第一義に」
帰ってきたのは冷たい命令。歩兵大隊はそれを受けて、戦い続ける。
●
自由騎士は三ヶ所ある戦場の一ヶ所に戦力を固め、そこを速攻で片づけて他方向に援軍に向かうという作戦だ。北側の魔導士軍団に五名を割り振っていた。魔術師達は炎を放ち、自由騎士達に抵抗する。
「腐っても魔導士か……っ!」
「大した腕前、だよ。だけど」
体力に劣るリュリュとマグノリアがフラグメンツを削られるほどのダメージを負う。
だがリュリュとマグノリアの回復を基点として、ザルクが広範囲にダメージを蓄積し、アンジェリカやフリオがとどめを刺していく。
「これで終わりです」
アンジェリカの一撃がアーブラハムに叩き込まれ、北側の第100歩兵大隊は殲滅された。援軍の気配がないことを確認し、移動を開始する自由騎士達。
だが北側に戦力を集めていたこともあり、東側と南側は苦戦を強いられていた。
「大した魔術の腕前だ。その努力を良き方向に向ければ助かったのだが」
「彼らの価値観では『正しい』のでしょう。ヴィスマルクは鉄血主義ですから」
敵死霊術師の操る村人と魔術により、テオドールがフラグメンツを削られる。ミルトスも何度か倒れたが、そのたびに意識を保って立ち尽くしていた。
「とはいえ、耐えた甲斐はあったな」
テオドールの耳に届くのは、味方がこちらに向かう足音。フリオとリュリュがこちらに向かって走ってくる。
「ええ。これで攻勢に出れるというものです」
疲弊した体に鞭打つようにミルトスは頬を軽く叩く。まだいける、と自分に活を入れて戦場を見た。
「回復を優先的に狙ってくるか……!」
「俺でもこの状況はそうする。回復を守ることでこちらの手数を減らすことを含めてな」
フォートシャフトが主だって狙うのは回復役のツボミだ。自由騎士全員を攻撃しながら、隙を見てツボミに向けて砲撃を放つ。
その度にアデルはツボミを庇い、フラグメンツを燃やすほどの傷を負っていた。
「しつこい男は嫌われるわよ!」
言いながら拳を振るうエルシー。守りに徹してはいるが、数の不利もあって蓄積されたダメージは大きい。フラグメンツを削りながら、何とか耐えていた。
「どうやら騎兵隊の登場だぞ」
ツボミの言葉と共に、北側で戦っていたアンジェリカとザルクとマグノリアがやってくる。連戦の疲弊はあるが、まだ戦える。
北側の騎士参戦を合図に、攻勢に出る自由騎士達。
「部隊の仲間は皆死んだ……! 俺たちを売って将校の地位を得たか……!」
今までツボミをかばっていたアデルが前に出て、フォートシャフトに迫る。交差する互いの武器ごしに、言葉が交わされる。今まで溜めこんでいた感情が言葉ににじみ出ていた。
「死人を礎に前に進む。それが戦争だ」
帰ってきた答えは冷たい一言。戦死した者を踏み台に、自分達は前に進む。冷徹だが、当たり前の事。だが、そうやって切り捨てられた者からすれば許せるものではなかった。
「お前こそ、こちらにくれば相応の地位は約束される。時代の流れが見えぬほど、愚かでもないだろう」
「黙れ! お前に従うことなどできるか!」
交わされた会話はその程度。けして交差することのないかつての上官と部下。
初めから相手を殺すつもりで戦って来た第100歩兵兵団と、最初は防戦に徹した自由騎士。ダメージを受けた総量は、自由騎士側が多かった。攻勢に出たタイミングはけして遅いものではないが、それでも明確に差は生まれる。
単純に戦力を三分割して戦っていたのなら、ジリ貧となっていただろう。あるいは耐えきれず崩壊していたかもしれない。
一ヶ所を攻め落とし、その戦力をつぎ込んだことが勝利の天秤を傾けた。とはいえ――
「これ以上は時間の無駄か」
フォートシャフトは空砲を打ち、仲間に撤退を伝える。そういう訓練も受けてきたのか、撤退時もスキがない。下手に追えば突出したところを攻められる。そう思わせる撤退だ。
双方痛み分け。それがこの戦いの結果だった。
「終わった……か」
戦いの喧騒は消え、響く声。村が燃える音だけが、辺りを支配していた。
●
「皆さん大丈夫ですか!?」
サポートに来ていたノウブルのヒーラーが全員の傷を癒していく。第100歩兵大隊との激戦で受けた傷を塞ぎ、一息つく自由騎士達。
「生存者を確保しなくちゃ」
「消火できそうな家は消火して回れ」
「怪我人はコッチに回せ。敵味方関係なしだ」
「私は彼らを弔うわ」
自由騎士達はそれぞれ出来ることを行う。ある者は生きている者を助け、ある者は消火に走り、ある者は犠牲者を弔い。
「分かって入ると思うが、これからレガート砦を攻める為に向かわねばならん。あまり時間をかけてはいられんぞ」
だが、この戦いは本番ではない。本番ともいえるレガート砦攻略。これに遅れるわけにはいかない。もちろん、それは分かっている。出来るだけ休養を取り、英気を養うのが最善策なのだろう。
だが、そうと分かっていてもこの惨劇を放置はできなかった。戦いに遅れるつもりはない。そして同時に、この村で何もせずに立ち去ることもできなかった。
時間ギリギリまで、自由騎士達は村で活動を行っていた。
(あの動き……精神的な要因だけではない。戦争という状況を冷静かつ冷徹に見つめ、盤面の駒を動かすように人を動かす。その極致だ)
アデルはフォートシャフトの特性をそう見抜いていた。十数年、彼の背中を見て戦ってきたアデルだからわかる本質。
(つまり、その覚悟が出来れば俺にもあの動きは会得できる。
戦果の為に他人を切り捨て、勝利を得る。それが出来れば――)
それが出来るか? アデルは自問する。自国の勝利のために、最大効率で動く。命さえもその為の資源と割り切ることができるか?
ヘルメットの奥の表情は見えない。アデルは言葉なく立ち上がり、歩を進めた。
カトラ村北側――
「これ以上はやらせないであります!」
燃え盛る炎の轟音を超える声でフリオ・フルフラット(CL3000454)は叫ぶ。軍人と軍人が殺し合うのはいい。軍服に袖を通す覚悟をはき違えたりはしない。しかし軍人が一般人を殺すのは違う。たとえそれが効率的だとしても。
「最初から撤退を前提に焼くとは……」
失われた命を弔うように瞑目し、『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は武器を握りしめる。ここから逃げようとした村人達は既に焼け焦げ、死に絶えている。もう少し早ければ間に合ったかもしれない。その後悔を怒りに変えた。
「ほんと効果あるんだよな、この手の行動って」
ため息をつくように『永遠の絆』ザルク・ミステル(CL3000067)が呟く。敵の手に渡るのなら破壊してしまえ。その効果は傭兵時代に実感していた。時間がたつにつれて、じわじわと響いてくるのだ。まるで染み入る毒のように。
「目的のために手段は選ばない……だとしても!」
『水銀を伝えし者』リュリュ・ロジェ(CL3000117)は言って拳を握りしめる。軍人は身を挺して国を守る者。そう信じてきたリュリュにとって、この破壊行動は許せるものではなかった。これがヴィスマルクと言う国なのか。
「ここで彼らを止めないと……ね」
感情を押さえた声で『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は言う。生存者を守ることで、イ・ラプセルの潔白を晴らす証人にすることが出来る。勿論、村人を助ける理由はそれだけではないが。ともあれここで止めなければいけないのは確かだ。
カトラ村東側――
「非道ではあるが、効率的だな」
村の惨状を見て『石厳公』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)はため息をついた。人が住めるようになるまでかけた時間を、僅か一夜で無に帰すのだ。そこから生み出される生産物はすべて無くなる。効率的と言わざるを得まい。
「そうですね。ともあれ、オーダーは果たしましょう」
特に感慨いなく『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)は頷いた。古今東西、戦争で荒らされた村は数多く、地図から消えた村は数えきれない。それが戦の常。戦いに傾倒している彼女はそれを理解していた。
そしてカトラ村南側――
「こんなことが……こんなことが許されていいはずなんてないわ!」
終わった惨劇を前に『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は叫ぶ。戦争の有用性なんて関係ない。そうやって生まれた犠牲者を、彼女は孤児院で何人も見てきた。あんな子達をもう産みださないと誓ったのだから。
「皆殺し済みか……やれやれ徹底しているな!」
横たわる遺体を見て『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はため息をつく。これは戦争だ。勝つためになんだってするものがいるのは当然だ。だが目の前でそれをやられて、何も感じないほど彼女は達観もしていなかった。
「……お前にだけは、負けられない」
感情を押さえた声で『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)は呟く。ヘルメットで隠れた彼の表情は見えない。押さえられた声の感情は分からない。故にアデルと目の前の敵との因果関係は、ようとして知れなかった。ただ、似たカタクラフトというだけだ。
「作戦、Bプランで続行」
抑揚なく命令を告げるフォートシャフト。自由騎士達の乱入を予知していたわけではないが、何かしらの邪魔が入ることは予想していたようだ。部下達も慌てることなく自由騎士達を迎え撃つ体制を取る。
燃え盛るカトラ村。自由騎士と第100歩兵大隊との攻防が始まる。
●
「先ずはこの場を制しましょう」
村北側で最初に動いたのはアンジェリカだ。『断罪と救済の十字架』を手にして第100歩兵大隊に向かう。村を焼いた彼らを逃すつもりはない。ここで伏して、己の業を償ってもらわなくては。
速攻。機国神から得た権能で自らに付与を行い、そのまま敵に向かい武器を振るうアンジェリカ。回避を捨てた大ぶりな攻撃。だがその分威力は十分だった。爆発するように叩きつけられた一撃が、敵魔術師を穿つ。
「貴方達には存分に罪を償ってもらいます」
「ま、足取りなんざ掴めないようになってるんだろうがな」
言って苦笑するザルク。こういう非合法な作戦に参加する者達は、すぐに切り捨てられるようになっている。ヴィスマルクの国籍がない者ばかりを集め、都合が悪ければ知らぬふり。襲撃した彼ら自身、そうなるだろうことも承知の上のはずだ。
戦争の常ではあるが、だからと言って同情はしない。ザルクは銃を構え、呼吸を整える。連戦になるが、かと言って手を抜いて相手出来るわけでもない。二挺拳銃を交差するように構え、魔力を込めて撃ち放った。着弾点から拘束の結界が展開されていく。
「動くなよ。お前らの炎はここでお終いだ」
「そうだね……。ここで止めないと。これ以上の死人は出さないよ」
ザルクの言葉に頷くマグノリア。第100歩兵大隊の是非を問うつもりはない。彼らもこの国で生きていくために必要な事なのだから。だが、その行動で自国に疑いがかかることは許されない。
神の力が宿ると言われる聖遺物を手にし、魔力を展開するマグノリア。世界の在り方を理解し、それを力に転化するのが錬金術。万物は時と共に劣化する。その法則を魔力により加速し敵に属性として付与する。傷こそ与えないが、目に見えて動きに衰えが出ていた。
「うん。今は此処を守り抜こう。彼らを倒せば、村の放火はなくなる」
「とはいえ、死んだ人間が蘇るわけでもない」
忸怩たる思いを胸にし、リュリュが言葉を放つ。この村人はヴィスマルク国民で、イ・ラプセルからすれば死んでも腹は痛まない。村の復興は大変だが、反乱を恐れるのならむしろ死んでもらった方がいい――そう冷静に割り切れれば、どれだけ楽だったろうか?
天に流れる力。地に流れる力。その二つの力を意識するマグノリア。世界に満ちた力を理解し、その一部を自らのマナをもって活用する。二つの力をらせん状にして束ね、矢として仲間達に向かって放つ。矢に含まれた力が、仲間に活力を与えた。
「こんなことが許されてたまるか! お前達はそれでも軍人か!」
「そうであります! 軍人は国民を守るためにあるのです!」
カタクラフトの腕を振るい、フリオが敵前に立つ。戦いが綺麗な事ばかりだけではない事は知っている。時に卑劣な手段を取ることもあるだろう。だが、他国に渡るなら殺してしまえ、というのはとても認められなかった。
涙を拭いて、前を見る。決意を込めるように、剣を握りしめるフリオ。魔術師の炎に対抗するためのコーティングを展開し、怒りをぶつけるように真っ直ぐに剣を振るう。確かな手ごたえが、剣の柄を通じて伝わってきた。
「これ以上はやらせません。イ・ラプセルの自由騎士が止めてみせるのであります!」
名乗りに対する返答はない。ただ魔力の炎をもって返された。
「さて、耐えきって見せましょうか」
村東側。防御の構えを取って、ミルトスは口を開く。敵八名に対し、こちらは二名。圧倒的ともいえる戦力差だ。装甲歩兵に指示を出して敵兵を止めさせながら、ミルトス自身も敵を止める為の盾となる。防衛線に殲滅戦。どのような形であれ、戦いは嫌いではない。
先ずは操られた村人達を狙う。相手の攻撃を円の動きでさばきながら、一瞬のスキをついて真っすぐ踏み込む。円の動きと線の動き、その二極こそが武の動き。踏み込みの衝撃で村人達を一気に穿っていく。
「さあ。五回は殺す気で来なさい」
「何とか耐えきって見せよう」
武器を構えて頷くテオドール。耐久戦に徹するなら、敵ネクロマンサーのように戦闘不能の人間を操る術を使えばいいのだが、個人的な理由でその術は使いたくなかった。愚行かもしれないが、それでも超えられない線があるのだ。
黒く細い杖に魔力を集めるテオドール。狙いは目の前のネクロマンサー。集めた魔力を刃の形に返還し、解き放つ。テオドールの杖から放たれた刃は真っ直ぐに飛び、敵の影を突き刺した。そこから生まれる呪いが影を通じて伝わり、動きを封じていく。
「さてこのまま攻めきれればいいのだが」
そんなに甘い話ではないだろう。敵は盗賊ではなく、列強国の兵士なのだから。
楽観できる余裕はない。二人はそれをひしひしと感じていた。
「雑兵と侮らん。奴の部下なら相応の練度だろう」
村南側。アデルは敵格闘家を押さえながら戦っていた。相手が動き回るのを警戒し、回復役のツボミを狙わせないよう意識する。優先順位を頭の中で意識し、その序列を崩さないように動く。焦るな。自らを律し、しかし闘争の熱は昂らせて。
カタクラフトから蒸気を輩出し、全身に力を込める。振るう槍が敵を捕らえ、血飛沫が舞った。一手一手、確実に敵を追い詰める。かつて見た背中がそうであったかのように、アデル自身も冷静に敵を追い詰めていく。
「お前にだけは負けられん。任務でも、兵士としてもだ!」
「貴様の上位互換と聞いたが、ふむ?」
ツボミはアデルから聞いた話を脳内で反芻する。自由騎士の前に所属していた傭兵団の団長。戦術や作戦の遂行能力は、アデルの上位互換であると。だがツボミにはそうは見えなかった。カタクラフト以外は、まるで真逆だと。
思考しながらも癒しの手は動く。仲間の状態を確認し、同時に魔力を展開する。耐久戦である以上は温存しておきたいのはやまやまだが、状況がそれを許してくれない。全力で魔力を解き放ち、仲間の傷を癒していく。
「私にはとてもそうは見えん。格好だけは同じだが、相違部分はそれだけだな」
「こんな作戦立てるヤツと同じなわけないでしょう!」
怒りと共に拳を放つエルシー。目の端に移る村人達の遺体。彼らはもう動かない。笑わない。怒らない。泣かない。ただ朽ちていくだけの存在だ。それを良しとするのがヴィスマルクだと言うのなら、そんな国は許しておけない。
肺一杯に空気を吸い込み、呼気ともに敵兵に突き進む。繰り出される槍の突きを身をかがめてかわし、敵の懐にたどり着いた。エルシーの動きを察した兵士は一歩下がろうとするが、それより早く拳を突き出すエルシー。紅色の手甲が敵兵を穿つ。
「私達は負けないわ! こんなことをする連中に、決して屈しない!」
叫ぶエルシー、それは自由騎士全員の代弁。
「作戦継続。敵殲滅を第一義に」
帰ってきたのは冷たい命令。歩兵大隊はそれを受けて、戦い続ける。
●
自由騎士は三ヶ所ある戦場の一ヶ所に戦力を固め、そこを速攻で片づけて他方向に援軍に向かうという作戦だ。北側の魔導士軍団に五名を割り振っていた。魔術師達は炎を放ち、自由騎士達に抵抗する。
「腐っても魔導士か……っ!」
「大した腕前、だよ。だけど」
体力に劣るリュリュとマグノリアがフラグメンツを削られるほどのダメージを負う。
だがリュリュとマグノリアの回復を基点として、ザルクが広範囲にダメージを蓄積し、アンジェリカやフリオがとどめを刺していく。
「これで終わりです」
アンジェリカの一撃がアーブラハムに叩き込まれ、北側の第100歩兵大隊は殲滅された。援軍の気配がないことを確認し、移動を開始する自由騎士達。
だが北側に戦力を集めていたこともあり、東側と南側は苦戦を強いられていた。
「大した魔術の腕前だ。その努力を良き方向に向ければ助かったのだが」
「彼らの価値観では『正しい』のでしょう。ヴィスマルクは鉄血主義ですから」
敵死霊術師の操る村人と魔術により、テオドールがフラグメンツを削られる。ミルトスも何度か倒れたが、そのたびに意識を保って立ち尽くしていた。
「とはいえ、耐えた甲斐はあったな」
テオドールの耳に届くのは、味方がこちらに向かう足音。フリオとリュリュがこちらに向かって走ってくる。
「ええ。これで攻勢に出れるというものです」
疲弊した体に鞭打つようにミルトスは頬を軽く叩く。まだいける、と自分に活を入れて戦場を見た。
「回復を優先的に狙ってくるか……!」
「俺でもこの状況はそうする。回復を守ることでこちらの手数を減らすことを含めてな」
フォートシャフトが主だって狙うのは回復役のツボミだ。自由騎士全員を攻撃しながら、隙を見てツボミに向けて砲撃を放つ。
その度にアデルはツボミを庇い、フラグメンツを燃やすほどの傷を負っていた。
「しつこい男は嫌われるわよ!」
言いながら拳を振るうエルシー。守りに徹してはいるが、数の不利もあって蓄積されたダメージは大きい。フラグメンツを削りながら、何とか耐えていた。
「どうやら騎兵隊の登場だぞ」
ツボミの言葉と共に、北側で戦っていたアンジェリカとザルクとマグノリアがやってくる。連戦の疲弊はあるが、まだ戦える。
北側の騎士参戦を合図に、攻勢に出る自由騎士達。
「部隊の仲間は皆死んだ……! 俺たちを売って将校の地位を得たか……!」
今までツボミをかばっていたアデルが前に出て、フォートシャフトに迫る。交差する互いの武器ごしに、言葉が交わされる。今まで溜めこんでいた感情が言葉ににじみ出ていた。
「死人を礎に前に進む。それが戦争だ」
帰ってきた答えは冷たい一言。戦死した者を踏み台に、自分達は前に進む。冷徹だが、当たり前の事。だが、そうやって切り捨てられた者からすれば許せるものではなかった。
「お前こそ、こちらにくれば相応の地位は約束される。時代の流れが見えぬほど、愚かでもないだろう」
「黙れ! お前に従うことなどできるか!」
交わされた会話はその程度。けして交差することのないかつての上官と部下。
初めから相手を殺すつもりで戦って来た第100歩兵兵団と、最初は防戦に徹した自由騎士。ダメージを受けた総量は、自由騎士側が多かった。攻勢に出たタイミングはけして遅いものではないが、それでも明確に差は生まれる。
単純に戦力を三分割して戦っていたのなら、ジリ貧となっていただろう。あるいは耐えきれず崩壊していたかもしれない。
一ヶ所を攻め落とし、その戦力をつぎ込んだことが勝利の天秤を傾けた。とはいえ――
「これ以上は時間の無駄か」
フォートシャフトは空砲を打ち、仲間に撤退を伝える。そういう訓練も受けてきたのか、撤退時もスキがない。下手に追えば突出したところを攻められる。そう思わせる撤退だ。
双方痛み分け。それがこの戦いの結果だった。
「終わった……か」
戦いの喧騒は消え、響く声。村が燃える音だけが、辺りを支配していた。
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「皆さん大丈夫ですか!?」
サポートに来ていたノウブルのヒーラーが全員の傷を癒していく。第100歩兵大隊との激戦で受けた傷を塞ぎ、一息つく自由騎士達。
「生存者を確保しなくちゃ」
「消火できそうな家は消火して回れ」
「怪我人はコッチに回せ。敵味方関係なしだ」
「私は彼らを弔うわ」
自由騎士達はそれぞれ出来ることを行う。ある者は生きている者を助け、ある者は消火に走り、ある者は犠牲者を弔い。
「分かって入ると思うが、これからレガート砦を攻める為に向かわねばならん。あまり時間をかけてはいられんぞ」
だが、この戦いは本番ではない。本番ともいえるレガート砦攻略。これに遅れるわけにはいかない。もちろん、それは分かっている。出来るだけ休養を取り、英気を養うのが最善策なのだろう。
だが、そうと分かっていてもこの惨劇を放置はできなかった。戦いに遅れるつもりはない。そして同時に、この村で何もせずに立ち去ることもできなかった。
時間ギリギリまで、自由騎士達は村で活動を行っていた。
(あの動き……精神的な要因だけではない。戦争という状況を冷静かつ冷徹に見つめ、盤面の駒を動かすように人を動かす。その極致だ)
アデルはフォートシャフトの特性をそう見抜いていた。十数年、彼の背中を見て戦ってきたアデルだからわかる本質。
(つまり、その覚悟が出来れば俺にもあの動きは会得できる。
戦果の為に他人を切り捨て、勝利を得る。それが出来れば――)
それが出来るか? アデルは自問する。自国の勝利のために、最大効率で動く。命さえもその為の資源と割り切ることができるか?
ヘルメットの奥の表情は見えない。アデルは言葉なく立ち上がり、歩を進めた。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
軽傷
†あとがき†
どくどくです。
しまった。空白地の扱いを書き忘れてた。誰も敵がいない場所は誰もいなくていいです(遅
以上のような結果になりました。
ヴィスマルク系アナザーキャラを使った依頼でした。概ねキャラはつかめていたと思うのですが、イメージと違うという部分があればお許しを。
パーティ構成によっては三カ所耐久もありだったでしょう。ともあれ見事な戦術眼です。
MVPは東側を支え切った要因のホワイトカラント様に。いやマジか、と目を疑いました。本当に倒れねぇ。
ともあれお疲れさまです。戦争はまだまだ続きます。先ずは傷を癒してください。
それではまた、イ・ラプセルで。
しまった。空白地の扱いを書き忘れてた。誰も敵がいない場所は誰もいなくていいです(遅
以上のような結果になりました。
ヴィスマルク系アナザーキャラを使った依頼でした。概ねキャラはつかめていたと思うのですが、イメージと違うという部分があればお許しを。
パーティ構成によっては三カ所耐久もありだったでしょう。ともあれ見事な戦術眼です。
MVPは東側を支え切った要因のホワイトカラント様に。いやマジか、と目を疑いました。本当に倒れねぇ。
ともあれお疲れさまです。戦争はまだまだ続きます。先ずは傷を癒してください。
それではまた、イ・ラプセルで。
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