MagiaSteam
【南方舞踏伝】Jungledance! 体で覚える熱い踊り!



●ブレインストーミングより
「歌姫やオーディオエフェクトなんちゅう声や音に関する技能はあんのに、楽器演奏や踊りについての技能はないんかなぁ? 嗜みのひとつとして、その辺も極めたいなぁ」

●Don’t think,Feel!
 踊る(元)海賊団ことダンシングシミター曰く、
『踊りにより気分を高揚させ、また踊りそのものが戦いの動きとなる。そういう戦闘スタイルがあると聞いたことがある。
 その技術はイ・ラプセルの南方海域に分割されて伝わっているという。とはいえあの海域の者達は癖があり、交友を結ぶには難しい。ましてや踊りの口伝など容易ではないだろう』

 女傑部族。
 自由騎士団として組織を立ち上げ、交友のある南方海域の部族である。蒸気技術などから切り離された原始的な集団で、独自の価値観や文化を有している。好戦的かつ非文化的という印象から、好んで交友を結ぼうとする者はいない――というのが一般的な意見である。
「踊り? この前の?」
 ――だが世論はあくまで世論。自由騎士達の一部は女傑部族と交友を持ち、彼女らの言葉でいう所の『ズッ友』的な仲の者もいる。その縁もありオラトリアオデッセイの年末行事に参加してもらったこともある。この前の、というのはその時披露した踊りの事だ。
「イベとかでやるのよ。イミぷーだけど。踊るとエモくなるんで、鬼アゲアゲ」
 大陸から切り離された女傑部族の言葉は難解だが、『よくわからないけど祭りの時に踊る楽しいダンス』ということらしい。
「スタイル? とかわからんちんだけど教えてほしいならおけよ。んじゃ、武器もって」
 言って柔軟体操を始めるアミナ・ミゼット(nCL3000051)。踊りを教えてもらうのに武器を持つとかどういうこと? っていうか他の女傑部族の方々も武器を手にしているんですけどどういうこと?
「あーしらこうやって教えるのよ。わちゃわちゃしてればマジ覚えれるから」
 文字という形に残さない部族ならではの口伝法である。いや、言葉使ってないけど。
「いーじゃんいーじゃん。あーしらも呼ばれて戦わなかったってありえんてぃーだったし。卍嬉しいのよ、来てくれて」
 彼女らからすれば、招待されて踊って帰っただけというのは些か不満が残っているようだ。それ自体は別に自由騎士が悪いわけではないのだが。とまれ戦うことで女傑部族の不満が取り除けるということらしい。
 あなたは理不尽だと断ってもいい。踊り習得の為と割り切ってもいい。売られた喧嘩を買ってもいい。それは自由だ。
 貴方の答えは――



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
シリーズシナリオ
シナリオカテゴリー
資源発掘σ
担当ST
どくどく
■成功条件
1.女傑部族8名の打破
 どくどくです。
 この依頼は『ブレインストーミングスペース#1 蔡 狼華(CL3000451) 2018年12月10日(月) 19:36:46』の発言から生まれました。該当キャラの参加を強制するものではありませんし、参加優先権があるわけでもありません。
 本シナリオは4回予定のシリーズシナリオです。南部海域に分割された踊りの秘伝をすべて集めるのが目的となります。
 本シナリオ参加時、次回同タグの依頼の参加優先権が得られます。

●敵情報
・女傑部族(×8)
 イ・ラプセル南方の島に住む褐色女戦士の部族です。あと露出度高め。。動物の骨と革で作った武具で戦います。オラクルではない為、フラグメンツによる復活はありません。
 彼女らが有する踊りを教えてもらうのが目的ですが、普通に倒して貰って構いません。気がついたら体に染みついています。

・アミナ(×1)
 部族のリーダー的存在です。一〇代女性。種族はノウブル。鮫の骨を加工して作った格闘武器を手に戦う格闘スタイルです。
『震撃 Lv3』『旋風腿 Lv3』『豪鬼』『一騎当千 序』『陽炎 序』『マジ卍』『縄張り 破』等を活性化しています。

・戦士系女傑(×3)
 部族の戦士です。一〇代女性。種族はノウブル。石を括りつけたハンマーで戦う重戦士スタイルです。
『ウォーモンガー Lv2』『バッシュ Lv3』『命活 序』『マジ卍』『ミートハンマー』等を活性化しています。

・弓系女傑(×2)
 部族の戦士です。一〇代女性。種族はノウブル。投槍で戦うガンナースタイルです。
『ダブルシェル Lv3』『サテライトエイム Lv2』『鷹眼 序』『マジ卍』『サバイバル』等を活性化しています。

・術式系女傑(×1)
 部族の祈祷師です。一〇代女性。種族はノウブル。儀礼用ナイフを手に戦うヒーラースタイルです。
『ハーベストレイン Lv3』『クリアカース Lv2』『法撃 序』『マジ卍』『星詠み』等を活性化しています。

・呪術系女傑(×1)
 部族の祈祷師です。一〇代女性。種族はノウブル。人形を手に戦う錬金術スタイルです。
『スパルトイ Lv3』『パナケア Lv2』『マジ卍』『釣り上手』等を活性化しています。

●場所情報
 イ・ラプセル南方の島。その砂浜。踊り伝承ということで戦闘に巻き込まれない場所で他の女傑部族が太鼓や笛で囃し立てています。広さや足場や明るさは戦場に支障なし。
 戦闘開始時、敵前衛に『アミナ』『戦士系(×3)』が、敵後衛に『弓系(×2)』『術式系(×1)』『呪術系(×1)』がいます。
 事前付与は不可。戦いの太鼓と共に、戦闘開始です。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
2個  2個  2個  6個
8モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2019年01月25日

†メイン参加者 8人†

『慈悲の刃、葬送の剣』
アリア・セレスティ(CL3000222)
『平和を愛する農夫』
ナバル・ジーロン(CL3000441)
『未来の旅人』
瑠璃彦 水月(CL3000449)



「ぷー? えも? あげあげ? てぃー? まんじ? えっと、此方の言葉は随分と難しいんだな……?」
 女傑部族の独特な言葉使いに悩む『暗金の騎士』ダリアン オブゼタード(CL3000458)。ニュアンスは理解できるが、逆に言うとそれぐらいしかわからない。異なる文化との交流は大変だなと首を捻っていた、
「詳細な背景は俺にはわからないが、交流により双方に益があるならそれは進めるべきだということは理解している」
 機械化した腕を組みながらアデル・ハビッツ(CL3000496)は頷いた。自由騎士となって初めての仕事。国防とは無関係だが、かといって気を抜くつもりはない。どのような仕事でも意味はある。
「異文化との交流や習合には大賛成だ」
 鷹揚に頷く『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。女傑部族との付き合いは、最初は果物目当てだったのだが、彼女達の文化を知れば知るほど世間の広さを理解させられる。殴り合って覚えるというのも、どういう仕組みなのか興味深かった。
「戦いながら踊りを伝えていくと。なかなかにあぐれっしぶな方たちですな!」
 ふむふむと頷きながら瑠璃彦 水月(CL3000449)は手を叩く。アマノホカリにも拳を交えながら覚える型というのがある。それと同じようなものだと考えれば、確かに体で覚えるというのは可能なのだろう。実に興味深いと再び頷く。
「舞闘も演舞の一つやしお手並み拝見と行きましょか。姉さんらの踊りが雅なもんか知らへんけど」
 パチン、と扇をたたんで『艶師』蔡 狼華(CL3000451)は小さく息を吐く。踊りの技法がないものかと調べていたら、あれよあれよとこんな感じに話が広がっていった。些か思惑違いではあるが、それもまたやむなしと思考を切り替える。
「服の予備とかないー? おんなじの着てた方が覚えやすいかも!」
『元気爆発!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は言って軍服から女傑部族の服装に着替える。獣の革で作られた胸と腰を守る最低限の服。肌を大きく露出させたワイルドな格好。カーミラの幼いながらに育った胸部が、動くたびにぽよんと揺れる。
「たまには難しい事考えずに戦うのも良い訓練になるよね」
 うん、と頷く『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)。『アリアもあの服に着替えないと駄目よ! いーまーすーぐー!』とか言ってくる金髪貴族の親友を押さえながら、マキナ=ギアから愛剣を装備する。
「薄着の女の子がいっぱい!!(異文化交流って大事ですよね)。ちょっとエッチなアクシデントとか!!(こういうイベントでお互いを知るのは良いことだと思います)」
 本音と建て前、逆。そうツッコまれる『新米兵士』ナバル・ジーロン(CL3000441)。イ・ラプセルの田舎から出て自由騎士になり、南方の異文化に触れる。村にいた頃には考えられない事だった。うん、異文化交流大事。女傑部族の格好を見て深く納得する。
「準備おけ? じゃ、ガチめで行くよ」
 アミナを始めとした女傑部族が武器を構える。同時に太鼓と笛の音が鳴り、アップテンポなリズムを奏でだす。
 南国の太陽と音楽の元、自由騎士達と女傑部族の戦いがきって落とされた。


「それじゃ、行くよ!」
 音楽に合わせるように元気よくアリアが踏み込む。踊るように戦うというのはアリアも意識していることだが、それが強化されるというのならなおよいことだ。女傑部族の奏でるリズムに乗って踊れば、体も高揚してくる。
 リズムが高まっていくのに合わせて瞳を強化し、僅かな隙を見出すように刃を繰り出す。『萃う慈悲の祈り』で相手の武器をからめとり、奇跡を逸らしたと同時に『葬送の願い』が翻る。止まることのないアリアの動きは、正に踊るように軽やかだ。
「いつかの親善試合ぶりですね! 楽しみましょう!」
「シンゼン? よくわからんちんだけどアゲアゲよ!」
「いっくぞー!」
 言葉と共にカーミラが突撃する。ほぼ下着ともいえる女傑部族の服装は、彼女の体の動きが浮き彫りになる。背骨を中心とした重心移動。すり足で迫り、深く踏み込み強く打つ。中華大陸の格闘術の基礎にして極み。それはカーミラが戦えば戦うほど、精錬されていく。
 たん、と踏み込むと同時に拳を突き出すカーミラ。大事なのは身体全体を使う事。大地を踏みしめたエネルギーを超しを回転させて腕に伝達させ、拳まで伝わせる。さらに半歩踏み込み、両手をアミナの腹に当ててさらにインパクトを叩き込む。
「真っ向からやり合うのは久しぶりだね! 逃がさないよ!」
「あーしとやる気? エモい!」
「優雅、言うよりは野生的やねえ。でも――」
 女傑部族の動きを見ながら狼華はその動きを分析する。店で披露ような優雅さとは逆の暴力的な印象を感じさせる激しい踊り。しかし真逆だからと嫌悪するということはない。派手で且つ彩がある。月と太陽は違えど、その在り方を否定はしない。
 ふう、と細く息を吐く狼華。その吐息が狼華が纏っていた華の香りを戦場に広げていく。華の香が消えるよりも早く彼の持つ二刀が翻った。一拍子。言葉通り僅か一泊の動きで二閃が振るわれる。その動き、白鳥が水面から飛ぶが如く優雅に。
「サロン・シープの看板、ロウファの剣舞で御座いんす。華と思うて侮るなかれ、鋭い牙狼を存分に堪能しておくんなまし」
「あーしらの踊り、鬼パリピってってよ!」
「相変わらず言葉がわからんが、そのスパルタぶりは理解できるぞ」
 『鉛奏プロムナード』を手にダリアンは頷く。女傑部族の言語は分からないが、音楽を嗜んでいた身として教育の厳しさは理解できる。血を吐くまで繰り返す鍛錬。それが下地となって花開く音楽家もいるのだ。
 ダリアンは後衛の女傑部族を見る。攻撃に重要なのはタイミング。どう踏み込み、どう体を動かし、どう力を伝えるか。音楽は弾けなくなったけど、リズムを合わせるのは慣れている。繰り返した動きをなぞるように打撃を放つ。生まれた衝撃は貫くように地を走る。
「失礼を! これも戦術ゆえ!」
「治す人狙うとか安定っしょ。のーぷろよ」
「ふむ。流石に考えなしというわけでもないか」
 飛んでくる槍をさばきながらツボミが呟く。こちらが回復を潰していくように、女傑部族も回復を担うツボミを優先的に狙っていた。前衛が進行を防いでいるため戦士系の攻撃は来ないが、それでも攻撃は届くので無傷とはいかない。
 聞こえてくる笛の音に合わせるように、ツボミは体内で魔力を練り上げる。最初は小さく、しかし少しずつリズムに合わせて大きく形成される癒しの魔術。医者の目で傷が深い者を見極め、傷の深い者を優先的に傷を塞いでいく。
「これはあれだな。教授とか考えずに戦いに全力を注ぎ専心する事が肝要のようだな!」
「いぇあ! ノリノリでおけよ」
「ふむ。確かに言葉では説明できぬ何かがありますなぁ」
 女傑部族の戦士の前に立ちながら水月は笑みを浮かべる。口伝ですらない教え方だが、成程実際やってみれば納得できる。百聞は一見に如かずとあるが、経験してみることの重要さは確かにやってみなければわからない。
 両手に構えた『ト』の形をした武具。その先端を相手に押し当てる水月。武器を持つ手にあるスイッチを押すと同時に、身体全体を回転させて螺旋状に武器に向けて力を伝達させる。蒸気カートリッジが杭を撃ち出し、同時に生まれた衝撃が女傑部族を打つ。
「あっしの名は瑠璃彦水月。未熟な拳とだんすでございますが、いざ!」
「おー! わちゃわちゃたのしもー!」
「うっはー。すごく嬉しそうに殴ってくる。こえー!」
 石のハンマーを盾で受け止めながらナバルは声を震わせる。戦いを楽しむ女傑部族の考え方は、ナバルからは遠い価値観だ。だがここまで楽しそうに戦っている彼女達をみて、間違っているとは思わない。戦いは怖いけど、それだけではないのかもしれない。
 思考を現実に戻すナバル。やらなくてはいけない事を心に決め、恐怖を使命感で押さえ込む。仲間を守る盾となる。仲間と相手の間に立って足を踏ん張り、構えた盾で攻撃を受け止める。同時に振るわれた槍が女傑部族の肌を割く。
「攻撃は苦手だけど、誰かを護るってのは性に合ってるって思う!」
「ビビりと思ったけどイケてるじゃん。じゃあガチでフルパン行くよ!」
「来い」
 鎧の胸装甲を拳で叩き、アデルは挑発するように女傑部族の前に立つ。自由騎士として経験の浅いアデルは、自由騎士としての戦いにまだ不得手だ。しかしそれでもできることはある。傭兵としての経験が戦場の中で生きている。
 身体の中心に鉄の棒があるように意識し、そこを軸に足を動かす。手にしたランスは手足の延長。重量に振り回されることなく騎士槍を振るい、女傑部族に向かって振るう。手の平に伝わる確かな感触。ランスを当てられた戦士が笑みを浮かべるのを見た。
「いーじゃんいーじゃん! ビクついてないで行こうよ!」
「俺ごときが相対して対処できるものではない、とは思っていたが……杞憂だな。自由騎士として全力で相手しよう」
 海岸に響く音楽は一時間奏に入り、そして激しく響き渡る。
 それは王宮楽団の歴史ある響きとは異なり、聖歌隊の清らかな音色とも違う。夜の密事を思わせる艶やかな音でもなく、戦場のラッパのような猛々しさもない。ただ情熱的に、そして開放的に。原始的かつ享楽的なリズムだ。
 だがそれを劣っていると評する者はいない。文字すら持たない後進的な女傑部族だからこそ生まれた文化。発展しないからこそ別方向に発展した異文化。
 それを知るのが目的だが、同時に戦いの高揚も無視できない。憎しみではなく楽しみで。目の前の相手と拳を構え、そして勝ちたい。その想いで戦っていた。
 戦いは曲と共に、少しずつ終局に向かっていく。
 

 互いに殺意はないが、戦いである以上は傷つくのは当然だ。
「まだまだ倒れへんよ」
「聞きしに勝るとはまさにこの事です」
 狼華とダリアンがアミナの蹴りを喰らって、フラグメンツを削られる。
「壁としてまだ倒れるわけにはいかない」
「流石に厳しいが、まだまだ倒れるつもりはない」
 壁として前に立つアデルと槍で狙われていたツボミも、攻撃を受けて膝をつきそうになる。フラグメンツを燃やして立ち上がった。
「やはり太鼓と笛の音色はよい物ですな。故郷を思い出しウキウキしますぞ」
 アマノホカリの夏祭りを思い出す水月。まだ郷愁に浸るほどではないが、遠く離れた故郷を思えば心が震えるのは仕方ない。太鼓も笛も故郷のモノと形状や材質が異なるが、それでも奏でられる音は故郷のそれと変わらない。
(バッチリ見えた! 事故だから仕方ないよね!)
 敵の動きを注視し、守りに徹するナバル。その際にアミナの腰布が舞い、その奥にある最後の布を目に留めてしまう。健康的な太ももとその最奥にある一枚。これは足技主体のアミナの動きを知るために注視しなければならない動きの根幹だから仕方ないのだ。うん。
(その、まあ、温暖な地域だから当然の服装なのだけど、もう少し露出を抑えることはできなかったのだろうか……)
 対しダリアンは女傑部族の服装を前に、目のやり場に困っていた。必要から文化が生まれる。男性がいない温暖な自然環境では服装はああなるというのは理解できるし、こちらの価値観を強要はできない。なのでまあ、顔を赤らめるぐらいは許してほしい。
「さあ、次はどの方がうちと付きおうてくれるん?」
 術式を操る相手を伏した狼華は口元に笑みを浮かべて、相手を誘うように防御を緩める。答えとばかりに振るわれた呪術師の攻撃を体を捻って回避する。それは座敷で披露する踊りの動き。畳の上を回るように、ふわりと動いて次の攻撃に移る。
「さあ、行きますよ!」
 曲のテンションに合わせるようにアリアの動きも加速していく。細かな部分に分かれる蛇腹剣。鞭のようにしなって宙を舞う刃を囮にし、本命の一撃を生み出す隙を作る。空を舞う蝶のようにふわりと迫り、相手を幻惑すると同時に刃を叩き込む。
「呪術系を倒したら次はアミナだ。厄介な相手だから一気に攻めろ」
 流れる血を清潔な布で抑えながらツボミが仲間に指示を出す。自分のみを考えれば槍投擲をしてくる女傑部族をどうにかした方がいいのだが、そちらを優先すれば最大火力のアミナに好き放題される。個人の安全よりも全員の安全。それがツボミという医者だ。
「守りは任せてもらおう。最後まで耐え抜いてやる」
 歯を食いしばり、ランスを握りしめるアデル。既に満身創痍だが、それでもまだ倒れるつもりはないと精神を振り絞る。何処まで技術を高めても、最後に頼るのは基礎体力。傭兵として生き残るために得た最も重要な事実。
「あれから海賊とか竜とか、色々戦って私も強くなったよ! 成長した私の力、見せたげる!」
 フラグメンツを燃やしながらカーミラがアミナに拳を向ける。この一年、カーミラは多くの戦いを経験してきた。その時の傷や経験が今の彼女を支えている。そしてこの戦いもまた、カーミラ・ローゼンタールの元気となるのだ。
「ガン蹴り行くよ!」
 アミナは味方を巻き込むことをいとわずに回転蹴りを放ち、自由騎士を一掃して攻撃する。無茶苦茶に見えるが、女傑部族の前衛はアミナを除いて三名。前衛六名の自由騎士相手では巻き込む数が多いと判断しての範囲攻撃だ。回転する暴力が自由騎士を襲う。
「あ、っぶね……! まだ倒れてやらないからな!」
「見事見事。戦うものとしては強いものに少し惹かれますなあ」
「無念……。あとは任せた」
 ナバルと水月がフラグメンツを削られ、アデルが最後の体力を削られて倒れ伏す。
「こらあかん。ま、趨勢は見えたわな」
 一人敵後衛に突出した狼華がハンマーの一打を受けて膝を屈する。だが問題はないと笑みを浮かべる。
「今回は私の勝ちだー!」
 カーミラの頭からダイブする様な体当たりがアミナに命中する。命中の瞬間に相手の身体が弛緩したのを感じ取る。気を失ったアミナは、そのまま地面に転がった、馬乗りになった状態で、手を振り上げるカーミラ。
 リーダーのアミナが倒れても、女傑部族は最後待て戦い続ける。だがツボミの回復もありアミナ抜きでは決定打は与えられない。一人、また一人と倒れていく。
「流転水護拳壱ノ型、とくとご覧あれ!」
 水月は自然の水を意識した動きで相手に迫る。川にあれば川の流れに沿い、グラスにあればグラスの形になる。あらゆる状況において体操し、しかし本質は変わらない武の構え。その拳が女傑部族の腹に迫る。確かな音とともに命中し、相手の意識を奪い取る。
「お粗末さまでした」
 手を合わせ、一礼する水月。その動作と共に、戦いは終了した。


「おーっし並べ! 貴様等治療の時間だ!」
 戦い終わって、最初に声を上げたのはツボミだった。怪我している人がいないという状況を前にして、医者の職業精神がそれを許さなかった。
「命を大事にせん奴身体を粗末にする奴ぁブチ殺す!」
 自分でも意味不明だよなぁ、と思うことを言いながら治療するツボミであった。
「たしかに身体にリズムは刻まれた気がする」
 ダリアンは目をつぶり、先ほどの音楽を脳内で再生してみる。それだけで確かに体はそれに合わせて動蹴るようになった。だが、それだけだ。これをしっかりとした形に昇華するにはまだパーツが足りない。
「アリアー。良い踊りだったわよ! 次はこれに着替えて――」
「着替えないからね!」
 アリアは金髪貴族の親友が手にする衣服を必死に拒んでいた。衣服というか水着というか下着? オラトリアオデッセイの記憶が蘇り、顔を赤くするアリア。
「ハァ~。芋が取れたぞ豊作だァ~♪」
「む、こうか。大根を抜けばいいのだな」
 ナバルは自分の村に伝わる豊作の踊りを披露していた。踊りを教えてもらったのだから、お返しにこちらの踊りも教えようということである。それに合わせるようにアデルも踊る。安定した重心が生むバランスで所見の踊りでも問題なく動くことができた。
「いえあー!」
 女傑部族の人達と一緒に踊るカーミラ。復習というわけではないが、折角覚えたのだから一緒に踊りたいということで踊っていた。汗の玉を振りまきながら、元気に踊るカーミラと女傑部族。
「しかしこういった踊りがまだまだあるのですか。世界は広うございますなあ」
 海図を広げ、次の目的地を見る水月。南方海域は広く、島も点々としかない。聞けばミズビトなど水中で生活する者もいるという。そう言った場所でも踊りや歌があるというのだから、驚きだ。
「楽しみやなぁ。次はどんな踊りを見せて貰えるんやろか……」
 海の向こうを見ながら狼華は微笑む。自分の知らない舞を取り入れ、自分の形に変化させる。そうすることで新たな形になるかもしれない。その未来を想像しながら、目を閉じた。潮風が頬を撫でる感覚がこそばゆい。
 太鼓と笛の音は、尽きることなく響いていた。

 かくして女傑部族の島を出る自由騎士達。
 他の部族との顔つなぎということで、アミナが同船することになった。その案内に従い、船は進む。或いは一度イ・ラプセルに戻って物資を補給するか。どうするかは自由だ。
 次の海ではどのような踊りが待っているのだろうか。
 南の海は万人を受け入れるかのように、緩やかに波打っていた。


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

どくどくです。
 なんだこの前衛率……!? 久しぶりにPBWの恐ろしさを味わったぜ。

 以上のような結果になりました。
 会得したリズムは体に残っていますが、きっちり形にするにはまだ足りない。そんな感じです。
 MVPは一番ノリノリだったローゼンタール様に。踊りの趣旨にバッチリはまっていました。

 まだまだ南方舞踏伝は続きます。お暇があればお付き合いいただければ幸いです。
 それではまた、次の踊り場で
FL送付済