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【三巴海戦】KEEP! エスター号防衛戦!

●エスター号、出航
大型輸送船エスター号。ここには今三百人近くの亜人が乗っていた。
ヘルメリアで奴隷となり、希望のない生活をしていた亜人達。彼らは自由騎士とフリーエンジンに救われ、今新天地に向かおうとしている。
『Good! スレイブマーケットで得た資金全てつぎ込んで燃料も新天地で生活するための物資も全て載せた! 惜しむべきは爆発による推進装置をつける事が出来なかったことだがな!』
とはフリーエンジン首魁の言葉。ともあれ、ほぼ――むしろ憂いない状態で出航が出来たといえよう。向かう先はグレイタス小管区。鉱山豊かな地はヘルメリアの経験が強く生きるだろう。小管区にも連絡がいっており、受け入れる準備も万端だ。
だが問題がないわけでもない。ヘルメリアの海域から出るまでに、海軍に遭遇すれば戦闘は避けられない。先の襲撃で弱体化させているとはいえ、完全に無力化しているわけではない。だが、その対策もあった。
「目には目を。海軍には海軍です」
フリーエンジンの『先生』曰く、エスター号出立に合わせてイ・ラプセル軍がヘルメリアに宣戦布告を行い、海軍を動かす算段になっていた。双方を囮とした二分作戦になる。どちらかに的を絞ったとしても、困惑は免れないだろう。
――だが有史以来、戦が想定通りに進んだことはない。
●歯車騎士団
「卑劣なフリーエンジンに鉄槌を!」
「ライルズ家の名誉にかけて、卑劣な反逆者を赦すな!」
歯車騎士団海軍は、フリーエンジン撲滅の熱が高まっていた。
海軍の名門であるライルズ家。その息子が船ごとフリーエンジンに捕らわれ、惨たらしく殺された状態で発見されたのだ――誰が殺したかはともかく。ともあれその状況もあって、海軍は敵討ちの為に必死になっていた。
「あれだけ大きな船だ。分解するにせよ出航するにせよ、証拠が残らないわけがない。どんな些細な事でも見逃すな!」
必死の捜索により、フリーエンジンの出航を察知する海軍。
「大変です! イ・ラプセル軍が宣戦布告を! 軍艦を率いてヘルメリア南東部を目指している模様!」
だが、同時に上がるイ・ラプセルの宣戦布告。海軍としては当然イ・ラプセルを優先せねばならない。だが、国家に逆らう徒党を見過ごすわけにもいかない。海軍は二等以上を集め、緊急会議を行う。
「面倒なことになったな。いや、ここまでがイ・ラプセルの作戦か」
「やってくれたなミハイロフ。このタイミングは明らかにフリーエンジンと繋がっているという事か」
「――仕方ない。『CODE:RED』だ。どの道、生かすつもりはないからちょうどいい!」
『CODE:RED』――その言葉を聞いた者は苦虫を噛み潰したような顔になる。出来るなら使いたくないが、しかしそれ以上の策はない。そんな表情だ。
そして伝書用の蒸気鳩が海を飛ぶ。
●赤髭海賊団
「お頭ー! 蒸気鳩です!」
「おうおう、ようやくか」
部下の言葉を聞いて、赤い髭を擦りながら一人の男が笑う。
「誰からの手紙なんです?」
「お前らは知らなくていいんだよ。……ま、謎の情報屋ってところだ」
赤髭の男――『赤髭海賊団』ヘンリー・モーガンは言って部下を遠ざける。秘密は何処から漏れるかわからない。例えば海軍と海賊が裏でつながっている、などという情報は可能な限り隠すべきだろう。
(ま、あの女もどこかと繋がってるんだろうけどな。ヴィスマルク相手によくやるぜ)
対抗組織的な海賊団の女首魁を思い出しながら、手紙を読む。内容はシャーロッテホームズの新刊情報……に見せかけた暗号文だ。シャーロッテの生死、本のナンバー、ワトソンの言葉。それら全てが符牒となっている。
手紙を焼き、笑みを浮かべるモーガン。立ち上がり、大砲を手に指示を出す。
「お前ら、出航だ! 獲物は奴隷三百人! 根こそぎ奪い去るぞ!」
●三巴海戦
エスター号出航から数時間が経過し――遠くから船影が見える。二つ重なった歯車の旗。
歯車騎士団海軍。ここまでは予想通りだ。
だがエスター号の背後をつくように、別の船影が見えてきた。赤い髭を生やしたクロスボーン。その旗を知らない船乗りはいない。
赤髭海賊団。予想外の船だ。
「む、海賊か! だが今は任務が優先! フリーエンジン達を捕らえろ!」
「へ、海軍か。だが獲物が優先だ。奴隷を奪い取れ!」
『まるで申し合わせたかのように』海軍と海賊は標準をフリーエンジンの方に定める。海軍はフリーエンジン撲滅のために。海賊は奴隷を奪うために。申し訳程度に新兵同士で抗戦をしているが、主部隊は明らかにフリーエンジン撲滅に向いていた。
「三つ巴……というわけではなさそうですかね」
信号弾をあげながら、航路を進む。イ・ラプセルの海域まで行けば、出航しているイ・ラプセル海軍と合流して難を逃れる事が出来るはずだ。問題はそれまで耐えられるかどうか。
後世には『三巴海戦』と呼ばれる戦いだが、事実上は挟み撃ち。自由騎士達はその状況を理解し、そして動き出す――
大型輸送船エスター号。ここには今三百人近くの亜人が乗っていた。
ヘルメリアで奴隷となり、希望のない生活をしていた亜人達。彼らは自由騎士とフリーエンジンに救われ、今新天地に向かおうとしている。
『Good! スレイブマーケットで得た資金全てつぎ込んで燃料も新天地で生活するための物資も全て載せた! 惜しむべきは爆発による推進装置をつける事が出来なかったことだがな!』
とはフリーエンジン首魁の言葉。ともあれ、ほぼ――むしろ憂いない状態で出航が出来たといえよう。向かう先はグレイタス小管区。鉱山豊かな地はヘルメリアの経験が強く生きるだろう。小管区にも連絡がいっており、受け入れる準備も万端だ。
だが問題がないわけでもない。ヘルメリアの海域から出るまでに、海軍に遭遇すれば戦闘は避けられない。先の襲撃で弱体化させているとはいえ、完全に無力化しているわけではない。だが、その対策もあった。
「目には目を。海軍には海軍です」
フリーエンジンの『先生』曰く、エスター号出立に合わせてイ・ラプセル軍がヘルメリアに宣戦布告を行い、海軍を動かす算段になっていた。双方を囮とした二分作戦になる。どちらかに的を絞ったとしても、困惑は免れないだろう。
――だが有史以来、戦が想定通りに進んだことはない。
●歯車騎士団
「卑劣なフリーエンジンに鉄槌を!」
「ライルズ家の名誉にかけて、卑劣な反逆者を赦すな!」
歯車騎士団海軍は、フリーエンジン撲滅の熱が高まっていた。
海軍の名門であるライルズ家。その息子が船ごとフリーエンジンに捕らわれ、惨たらしく殺された状態で発見されたのだ――誰が殺したかはともかく。ともあれその状況もあって、海軍は敵討ちの為に必死になっていた。
「あれだけ大きな船だ。分解するにせよ出航するにせよ、証拠が残らないわけがない。どんな些細な事でも見逃すな!」
必死の捜索により、フリーエンジンの出航を察知する海軍。
「大変です! イ・ラプセル軍が宣戦布告を! 軍艦を率いてヘルメリア南東部を目指している模様!」
だが、同時に上がるイ・ラプセルの宣戦布告。海軍としては当然イ・ラプセルを優先せねばならない。だが、国家に逆らう徒党を見過ごすわけにもいかない。海軍は二等以上を集め、緊急会議を行う。
「面倒なことになったな。いや、ここまでがイ・ラプセルの作戦か」
「やってくれたなミハイロフ。このタイミングは明らかにフリーエンジンと繋がっているという事か」
「――仕方ない。『CODE:RED』だ。どの道、生かすつもりはないからちょうどいい!」
『CODE:RED』――その言葉を聞いた者は苦虫を噛み潰したような顔になる。出来るなら使いたくないが、しかしそれ以上の策はない。そんな表情だ。
そして伝書用の蒸気鳩が海を飛ぶ。
●赤髭海賊団
「お頭ー! 蒸気鳩です!」
「おうおう、ようやくか」
部下の言葉を聞いて、赤い髭を擦りながら一人の男が笑う。
「誰からの手紙なんです?」
「お前らは知らなくていいんだよ。……ま、謎の情報屋ってところだ」
赤髭の男――『赤髭海賊団』ヘンリー・モーガンは言って部下を遠ざける。秘密は何処から漏れるかわからない。例えば海軍と海賊が裏でつながっている、などという情報は可能な限り隠すべきだろう。
(ま、あの女もどこかと繋がってるんだろうけどな。ヴィスマルク相手によくやるぜ)
対抗組織的な海賊団の女首魁を思い出しながら、手紙を読む。内容はシャーロッテホームズの新刊情報……に見せかけた暗号文だ。シャーロッテの生死、本のナンバー、ワトソンの言葉。それら全てが符牒となっている。
手紙を焼き、笑みを浮かべるモーガン。立ち上がり、大砲を手に指示を出す。
「お前ら、出航だ! 獲物は奴隷三百人! 根こそぎ奪い去るぞ!」
●三巴海戦
エスター号出航から数時間が経過し――遠くから船影が見える。二つ重なった歯車の旗。
歯車騎士団海軍。ここまでは予想通りだ。
だがエスター号の背後をつくように、別の船影が見えてきた。赤い髭を生やしたクロスボーン。その旗を知らない船乗りはいない。
赤髭海賊団。予想外の船だ。
「む、海賊か! だが今は任務が優先! フリーエンジン達を捕らえろ!」
「へ、海軍か。だが獲物が優先だ。奴隷を奪い取れ!」
『まるで申し合わせたかのように』海軍と海賊は標準をフリーエンジンの方に定める。海軍はフリーエンジン撲滅のために。海賊は奴隷を奪うために。申し訳程度に新兵同士で抗戦をしているが、主部隊は明らかにフリーエンジン撲滅に向いていた。
「三つ巴……というわけではなさそうですかね」
信号弾をあげながら、航路を進む。イ・ラプセルの海域まで行けば、出航しているイ・ラプセル海軍と合流して難を逃れる事が出来るはずだ。問題はそれまで耐えられるかどうか。
後世には『三巴海戦』と呼ばれる戦いだが、事実上は挟み撃ち。自由騎士達はその状況を理解し、そして動き出す――
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.35ターンの間、【甲板】の戦線を維持する。
2.【船内】のデザイアを100人以上奪われない。
2.【船内】のデザイアを100人以上奪われない。
どくどくです。
永き地下活動から侵攻へ――
●敵情報
◆赤髭海賊団
『何故か』このタイミングでエスター号を発見して襲い掛かってくる海賊団です。『何故か』歯車騎士団は積極的に攻撃を仕掛けようとはしません。不思議不思議。
直接戦闘を仕掛けるのではなく、船に穴をあけて船内に潜入し、奴隷をかっさらおうとします。
【三巴海戦】タグ依頼が失敗した数に応じて、海賊の数が増えます。
・ヘンリー・モーガン
赤ひげが特徴的なクマのケモノビト。二大海賊団の一つ『赤髭海賊団』のトップです。
巨大な体と相応の力をもち、『ルーク・ブレイカー』と呼ばれる大砲を使ってきます。
『動物交流』『スーサイドフィーバー Lv3』『オーバーロード Lv3』『海賊の流儀(EX)』『ドラグノフ』『ハップライト』『アイアムロウ! 急』『縄張り 急』等を活性化しています。
EX:海賊の流儀 自付 アウトローの技法。ロールクラス『貴族』『ポリティシャン』『騎士』に攻撃が命中した時追加ダメージが発生し、【必殺】扱いとなる。
・『ブライト・ウィング』マスミ・ヘンミ
光っているかのように白い肌をもち、同色の羽根を生やした女性のソラビト。
レイピアで切り刻んできます。フレーバー程度に厨二です。
『飛行』『ピアッシングスラッシュ Lv3』『ブレイクゲイト Lv3』『柳凪 Lv3』『影狼 Lv3』『スピードスタア』『無表情』『発光』等を活性化しています。
・海賊
赤髭海賊団員です。種族は様々。ノウブルも稀にいます。カトラスを持ち、略奪してきます。
戦いになれば、軽戦士のランク1のスキルまでを使ってきます。
◇歯車騎士団
ヘルメリアの海軍です。『何故か』海賊を前にしても積極的に攻撃を仕掛けず、フリーエンジンに攻撃してきます。不思議不思議。
【三巴海戦】タグ依頼が失敗した数に応じて、海軍の数が増えます。
・『ゴリラマッスル』コンラッド・ウォートン
キジン(オールモスト)男性。歯車騎士団。階級は四等。機械腕で殴ってくる格闘家です。パワーファイターらしく、力で押してきます。
『獅子吼 Lv2』『龍氣螺合 Lv3』『鉄山靠 Lv2』等を活性化しています。
『ライトフェンサー』ライラ・ジェファーソン
ノウブル女性。歯車騎士団。階級は四等。由緒正しいヘルメリアフェンシング使い。魔すら斬り返すと言われたジェファーソン流の正統伝統者。
『インデュア Lv2』『バーチカルブロウ Lv2』『リフレクト Lv3』『フルカウンター Lv3』等を活性化しています。
・歯車騎士
階級は五等。新兵ですが、訓練済みの為強さはそれなりに。武装はハンマー等の大型鈍器。
重戦士のランク1あたりを活性化しています。
●場所情報
便宜上、戦場を四つに分けます。何処に向かうかを、プレイングもしくはEXプレングで示してください。記入がない場合、ランダムに割り振ります(数が少ない所で戦う、など場所以外の旨が書かれてあってもです)。
他戦場への移動は時間的かつ距離的な問題で不可能です。
【甲板】
エスター号甲板です。歯車騎士団が乗り込み、白兵戦を仕掛けてきます。
この戦線を維持できなければ【船内】のデザイアとフリーエンジンの船員が殺されてしまい、依頼失敗となります。
戦闘開始時、敵前衛に『歯車騎士(×9)』『コンラッド(×1)』がいます。また、3ターンごとに3名、敵前衛に『歯車騎士』が追加されます。
【船内】
エスター号船内です。既に海賊達は入り込み、デザイア達を攫うために真っ直ぐに船室に向かっています。放置すれば多くのデザイアが海賊達に奪われてしまうでしょう。
単純に戦って追い返してもいいですし、技能等を使って罠を仕掛けて足止めしてもいいです。その間にデザイア達を安全な場所に移動させていきます。誘導もプレイングやスキルなどで効率化できるでしょう。
【軍船】
歯車騎士団の保有する船です。エスター号の進路を塞ぐように砲撃を仕掛けてきます。このままだとエスター号は迂回を余儀なくされ、戦場離脱に時間がかかります。
無理に占領する必要はありませんが、船に乗り込み歯車騎士団の数を減らすことで砲撃を止め、、戦線離脱までの時間を10ターン短縮できます。
船には戦闘要員として『歯車騎士団(×15)』『ライラ(×1)』がいます。
【海賊船】
エスター号に攻撃を仕掛けている海賊船です。海賊達が侵入する穴をあけています。
放置すれば、【船内】にむかう海賊の数が増え、奪われるデザイアの数が増えます。海賊の数を減らせば、砲撃も止まります。
戦闘開始時、敵前衛に『海賊(×7)』『マスミ(×1)』が、敵後衛に『モーガン(×1)』がいます。また、3ターンごとに3名、敵前衛に『海賊』が追加されます。
●決戦シナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼相当です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『アクアディーネ(nCL3000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
皆様からのプレイングをお待ちしています。
永き地下活動から侵攻へ――
●敵情報
◆赤髭海賊団
『何故か』このタイミングでエスター号を発見して襲い掛かってくる海賊団です。『何故か』歯車騎士団は積極的に攻撃を仕掛けようとはしません。不思議不思議。
直接戦闘を仕掛けるのではなく、船に穴をあけて船内に潜入し、奴隷をかっさらおうとします。
【三巴海戦】タグ依頼が失敗した数に応じて、海賊の数が増えます。
・ヘンリー・モーガン
赤ひげが特徴的なクマのケモノビト。二大海賊団の一つ『赤髭海賊団』のトップです。
巨大な体と相応の力をもち、『ルーク・ブレイカー』と呼ばれる大砲を使ってきます。
『動物交流』『スーサイドフィーバー Lv3』『オーバーロード Lv3』『海賊の流儀(EX)』『ドラグノフ』『ハップライト』『アイアムロウ! 急』『縄張り 急』等を活性化しています。
EX:海賊の流儀 自付 アウトローの技法。ロールクラス『貴族』『ポリティシャン』『騎士』に攻撃が命中した時追加ダメージが発生し、【必殺】扱いとなる。
・『ブライト・ウィング』マスミ・ヘンミ
光っているかのように白い肌をもち、同色の羽根を生やした女性のソラビト。
レイピアで切り刻んできます。フレーバー程度に厨二です。
『飛行』『ピアッシングスラッシュ Lv3』『ブレイクゲイト Lv3』『柳凪 Lv3』『影狼 Lv3』『スピードスタア』『無表情』『発光』等を活性化しています。
・海賊
赤髭海賊団員です。種族は様々。ノウブルも稀にいます。カトラスを持ち、略奪してきます。
戦いになれば、軽戦士のランク1のスキルまでを使ってきます。
◇歯車騎士団
ヘルメリアの海軍です。『何故か』海賊を前にしても積極的に攻撃を仕掛けず、フリーエンジンに攻撃してきます。不思議不思議。
【三巴海戦】タグ依頼が失敗した数に応じて、海軍の数が増えます。
・『ゴリラマッスル』コンラッド・ウォートン
キジン(オールモスト)男性。歯車騎士団。階級は四等。機械腕で殴ってくる格闘家です。パワーファイターらしく、力で押してきます。
『獅子吼 Lv2』『龍氣螺合 Lv3』『鉄山靠 Lv2』等を活性化しています。
『ライトフェンサー』ライラ・ジェファーソン
ノウブル女性。歯車騎士団。階級は四等。由緒正しいヘルメリアフェンシング使い。魔すら斬り返すと言われたジェファーソン流の正統伝統者。
『インデュア Lv2』『バーチカルブロウ Lv2』『リフレクト Lv3』『フルカウンター Lv3』等を活性化しています。
・歯車騎士
階級は五等。新兵ですが、訓練済みの為強さはそれなりに。武装はハンマー等の大型鈍器。
重戦士のランク1あたりを活性化しています。
●場所情報
便宜上、戦場を四つに分けます。何処に向かうかを、プレイングもしくはEXプレングで示してください。記入がない場合、ランダムに割り振ります(数が少ない所で戦う、など場所以外の旨が書かれてあってもです)。
他戦場への移動は時間的かつ距離的な問題で不可能です。
【甲板】
エスター号甲板です。歯車騎士団が乗り込み、白兵戦を仕掛けてきます。
この戦線を維持できなければ【船内】のデザイアとフリーエンジンの船員が殺されてしまい、依頼失敗となります。
戦闘開始時、敵前衛に『歯車騎士(×9)』『コンラッド(×1)』がいます。また、3ターンごとに3名、敵前衛に『歯車騎士』が追加されます。
【船内】
エスター号船内です。既に海賊達は入り込み、デザイア達を攫うために真っ直ぐに船室に向かっています。放置すれば多くのデザイアが海賊達に奪われてしまうでしょう。
単純に戦って追い返してもいいですし、技能等を使って罠を仕掛けて足止めしてもいいです。その間にデザイア達を安全な場所に移動させていきます。誘導もプレイングやスキルなどで効率化できるでしょう。
【軍船】
歯車騎士団の保有する船です。エスター号の進路を塞ぐように砲撃を仕掛けてきます。このままだとエスター号は迂回を余儀なくされ、戦場離脱に時間がかかります。
無理に占領する必要はありませんが、船に乗り込み歯車騎士団の数を減らすことで砲撃を止め、、戦線離脱までの時間を10ターン短縮できます。
船には戦闘要員として『歯車騎士団(×15)』『ライラ(×1)』がいます。
【海賊船】
エスター号に攻撃を仕掛けている海賊船です。海賊達が侵入する穴をあけています。
放置すれば、【船内】にむかう海賊の数が増え、奪われるデザイアの数が増えます。海賊の数を減らせば、砲撃も止まります。
戦闘開始時、敵前衛に『海賊(×7)』『マスミ(×1)』が、敵後衛に『モーガン(×1)』がいます。また、3ターンごとに3名、敵前衛に『海賊』が追加されます。
●決戦シナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼相当です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『アクアディーネ(nCL3000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
皆様からのプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
3個
3個
7個
3個




参加費
50LP
50LP
相談日数
8日
8日
参加人数
57/∞
57/∞
公開日
2019年12月05日
2019年12月05日
†メイン参加者 57人†
●甲板Ⅰ
エスター号の甲板に怒声が上がる。騎士達の声と共に剣戟と銃声が響き渡った。
「はっはっは! 歯車騎士団の方々は随分我々を高く買ってくれているようだ!」
そんな中にあっても『折れぬ傲槍』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)の声は良く響く。腹に力を込めて、皆に聞こえる様に声を轟かせる。豪胆にして傲慢。だがその態度こそが皆を奮起させていた。
「わざわざ海賊に便宜を図ってまで挟み撃ち! そこまでされるのなら、此方も全力で打ち破ってやらねばな!」
言って『焚刑大槍』を手にするボルカス。後方から声を出す野ではなく、自ら前に出て一番槍を奪う。それこそが己の在り方とばかりに最前線に立ち挑む。逃亡戦は確かに華々しいとは言えないが、だからと言って手を抜くつもりはない。むしろ嬉々としていた。
「さあ、今こそ自由騎士の在り方を示すとき! 我らの戦、此処にありと声高々に叫ぼうではないか!」
「うむ、戦場は此処に在り! 常在戦場こそヨツカの心意気だ」
アマノホカリの武具を手にして『背水の鬼刀』月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)は前に出る。様々な情報がい気かっているが、やるべきことは簡単だ。船を守り、無事に帰還する。その為に邪魔をするというのなら蹴散らすのみ。
「行手を阻むものは全て敵だ」
迷いなく淀みなく。その刃は水面に移る三日月の如く。円弧を描いた軌跡は歯車騎士団の防具を裂き、飛び散った血がエスター号の甲板を濡らす。そして翻った野太刀が動きを止めた歯車騎士団の意識を奪う。一人、また一人とヨツカは敵を倒し進んでいく。
「来るなら来い。ヨツカはこの船を守り切る」
「はい、この船には、守るべき人達がいます……」
途切れながらもはっきりとした意思をもって『命を繋ぐ巫女』たまき 聖流(CL3000283)は告げる。フリーエンジンやデザイア達。彼らを守るためにたまきは戦場に立つ。優しいたまきには心痛む戦場の光景からも目を離さずに。
「皆さんの傷は、癒します……」
悲鳴と流血から目を逸らすことなく、たまきは前を見る。そこで戦っている仲間達。その強さを信じて癒しの魔力を展開した。時折飛んでくる銃弾に耐えながら、それでもたまきは懸命に癒し続ける。それが自分に出来る最大のことだと信じて。
「私は、戦場に居る皆さん全員の力を信じ、私なりに戦うだけです!」
「そうそう。役不足かもしれないけど、やることはやらないとね」
『宝杖』を手にしてセーイ・キャトル(CL3000639)が頷いた。まだ新兵ともいえるセーイだが、戦場に立つ以上は経験不足を言い訳にはしない。大事なのは自分に出来る事をしっかりこなすこと。それを心に刻み、魔力を練り上げる。
「それなりに、役立ちますよっと」
言いながら周囲のマナを体内に取り入れ、魔力強化を行うセーイ。その後に炎を放ち、確実にダメージを積み重ねていく。まだ遠い『先輩』の背中を見ながら、しかしセーイは歩むことを止めない。ならばいつかはそこにたどり着けるだろう。
「ノーヴェ、そっちはどう?」
「問題ない……私も、役に立つ……」
相手の攻撃を凌ぎながらノーヴェ・キャトル(CL3000638)がセーイの言葉に応える。音を介さない思念での会話。ノーヴェはこれを駆使して戦場の連携を取っていた。危険があれば即座に伝え、素早い対応を行っていた。
「攻撃……近くの……敵……沢山……斬らなきゃ……」
カランビットとカタールを手にしてノーヴェは戦場を疾駆する。共に独特な形状の武器だが、ノーヴェはそれを苦と思わず振るっていた。『役に立たないといけない』という想いが燃料となって努力を重ねたのだろう。努力が刃に乗り、戦陣を切り裂いていく。
「次……」
「頑張るっすねぇ。あたしは適当にやらせてもらうっすよ」
銃床に十字星のマークが刻印された銃剣を手に、『stale tomorrow』ジャム・レッティング(CL3000612)がやる気のない声でため息をつく。戦争に命を懸けるつもりなんて毛頭ない。適度に働いてヤバくなったら逃げるだけだ。
「にしても悪の正義の……薄ら恥ずかしい事を声高に叫ぶ奴等っすねえ」
歯車騎士団の裂帛にうんざりした声でため息をつくジャム。正義なんてものは戦場にない。あれはそう思うことで自らを昂らせているだけの行為なのだ。ジャムも、そして叫んでいる相手もおそらくは解っているのだろう。
「ま、そう思わなけりゃやってられないって事っすね。あー、やだやだ」
「うちの叔母が言うとったわ。『踊るアホなら踊らな損損』ってな!」
ジャムのため息に『カタクラフトダンサー』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)が答える。世の中は陰気なものだ。それでも生きていかなくてはいけない。ならば自分を誤魔化して踊った方が楽しく生きられるのだと。
「ここ押さえとやばいからな。気合入れていくでー!」
アマノホカリ独特の訛り言葉を口にして、アリシアは甲板を蹴る。カタクラフトの脚が敵陣を駆け抜け、振るわれる刃が血の雨を降らす。踊るようなアリシアの動きに翻弄されるように歯車騎士団は傷を負っていく。
「いうても、この数は厄介やな。ええかげんにしてほしいわ」
「数で押す、というのは戦術の基本ですので」
アリシアの愚痴に『泡沫の』アダム・ロレンツォ(CL3000376)が答える。力押しが可能な状況において、数で押すというのは最も効率のいい作戦だ。だからこそそれが出来ないように策を練るのが小国の戦い方となる。元海軍のアダムはそれをよく理解していた。
「とりあえず守り抜くしかないですね。時間は味方のようですし」
スナイパーライフルを手にして狙いを定めるアダム。逃亡戦に置いて重要なのは時間の確保。甲板の敵を相当しつつ、寸暇を惜しんで時間を確認する。船の上の戦いはお手の物だ。慣れた場所のアドバンテージを生かしながら、一人ずつ穿っていく。
「で、歯車騎士団の皆さんはかんぱん派? こうはん派?」
「それだけだと何のことだかわからないですわよ~」
言ってツッコミの手を入れる『食のおもてなし』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)。甲板、という漢字には『かんぱん』『こうはん』の二つの読み方があるのだ。船の用語ではないが、机のトップボードの場合は『こういた』ともよぶとか。
「どうあれ、やられっぱなしな訳には行きませんね~。この船はお返しできませ~ん」
言って魔力を解き放つシェリル。放たれた魔力が敵陣を穿っていく。
「サシャがここを守り切るんだぞ!」
言って胸を張る『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)。マザリモノとして生まれ、親に捨てられて孤児となったサシャ。そんなサシャだから、ヘルメリアで虐げられた亜人達に対して思う所があるのだろう。
「サシャにどーんと任せるといいんだぞ!」
胸を張り、『HOLY BIBLE』を手にするサシャ。大好きな司祭様からもらった聖書を手に、サシャは戦場に立つ。司祭の気持ちを受け継いで、誰かを助けるために。放たれた魔力が傷ついた仲間達を癒していく。
「皆でおにくを食うために頑張るんだぞ!」
戦争、という単語の裏に潜む闇に心がよどんでも、戦う理由があるのならそれを跳ねのけ戦っていく。
それは誰もが同じこと――
●船内Ⅰ
エスター号内に侵入した海賊達。彼らを討ち取るべく自由騎士達は動いていた。
「遅いですよ!」
『おちゃがこわい』サブロウ・カイトー(CL3000363)は廊下の角や荷物などの死角に回り、そこから不意を突くように海賊を奇襲していた。乱戦のような状況でなければ、初激の優位性を保てる。攻めては隠れ、また攻める。その繰り返しだ。
「決定打を与えるのは任せましょう。今は入り込む海賊達の足止めを」
「はい! 足止めはお任せください!」
元気よく敬礼するセアラ・ラングフォード(CL3000634)。デザイア達を逃がす役目は他の仲間に譲り、海賊達の足止めに従事する決意を固める。ヒーラーで前に立つのは苦手だが、それでも海賊に蹂躙されるのはよしと思えなかった。
「椅子と机と……あとはこの本棚で……!」
セアラは扉と家具を使って即席のバリケードを構築する。足止めされるのが厄介とばかりに回り道してくれれば良し。血気盛んに突撃して来ても、ある程度の防衛力は有している。足止めにはもってこいの状況だ。
「デザイア達は渡しません!」
「ま、もともとヘルメリアの船なんだから情報が渡っていても不思議じゃないよねー」
『未知への探究心』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は言いながら船内を走り回る。デザイア達が避難した箇所から順番に外から鍵を閉めて、中に誰かがいるように思わせる。魔力で鋼鉄のように固くすれば、破壊する時間も稼げるだろう。
「嫌がらせにかけてあたしの右に出る者はいないってね」
遠くで扉が開けられたのか、酷い音が鳴り響く。クイニィーが仕掛けたロックの仕掛けだ。誰にも連絡せずに独断でやっているので下手をすれば味方を巻き込みかねないが、実害はうるさいだけだから問題ないだろうと頷いた。今は時間を稼ぐことが重要だ。
「さて、次は何処に仕掛けようかなー」
「ひゃっほーい!」
『勇者の悪霊退治』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)は揺れる船内をひたすら走り、目に映った海賊に攻撃を仕掛けていた。ノイズがうるさく、バリケードも多い状況だがそれもまたジーニアスにしてみれば楽しみの一つ。びっくり箱を開ける心境だ。
「揺れる船で海賊を撃退……まるで障害物走みたいでわくわくするね!」
砲撃の衝撃や海賊の侵入。そういった事さえもジーニアスの好奇心をくすぐる要因の一つ。高速で走り、天井や壁を蹴りるようにして突き進む。そのまま武器を振るって交差の瞬間に海賊達を切り刻む。立体的な高速戦闘を展開していた。
「どんどん行くよ!」
「船に乗り損ねたが……こっちで海賊を狩るとするか!」
『灼熱からの帰還者』ザルク・ミステル(CL3000067)は舌打ちを一つ打ち、銃を構える。『赤髭海賊団』の船に乗り込む予定だったが手違いで乗り損ねてしまった。仕方なくエスター号に残って海賊を待ち構える方向にシフトする。
「ザコは引っ込んでな!」
廊下の角を盾にして銃撃が止むのを待ち、一瞬の間隙をついて二挺拳銃を構えて廊下に躍り出る。コンマ一秒で敵の位置を把握し、倒す順番を計算する。同時に銃口を向けて引き金を引き、次々と海賊達を伏していく。
「因果なもんだ。多くを救うために多くを殺すんだからな! ま、覚悟の上で海賊やってるんだろうけどな!」
海賊の略奪を防ぐべく、自由騎士達はそれぞれの技術を駆使して戦い続ける。
●軍船Ⅰ
エスター号の進路の前に立ち、砲撃を続けるヘルメリア軍船『ミルクランチ』。
自由騎士達は小舟を出してそちらに白兵戦を仕掛ける。
「ヒャッハァァァァァッ! 俺様はシルヴァネール公爵家嫡男、クレヴァニール・シルヴァネールなりぃぃぃぃぃっ! ……ってあれ、乗る船間違えた?」
『俺様的正義』クレヴァニール・シルヴァネール(CL3000513)は一番槍で乗り込んだ後に敵の姿を見て、首をかしげた。確かモーガンのところに向かったはずなのだが、どうやら間違えたようだ。全員ノウブルで、ケモノビトなど一人もいない。その事に不満を感じた。
「まあいいです。もふもふしていないのなら遠慮はしません!」
だがすぐに立ち直り、デスサイズを構える。ゆらりとした立ち様で攻撃を避ける構えを取り、その構えを維持したまま武器を振るう。道化じみた名乗りを上げたがその動きは精錬された動き。同時に魔術を放ち、歯車騎士団を切り崩していく。
「デザイアの皆さんは最早、イ・ラプセルの国民も同然! なれば、我々自由騎士団は彼らを守る義務があります!」
「もー、通せんぼなんて腹立つなー」
船に乗り込んだ『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)は開口一番そう言って歯車騎士団に拳を放つ。この船が砲撃を止めればエスター号は真っ直ぐに移動することが出来る。逆に言えばこの船を止めれなければ、余計な被害が生まれてしまうのだ。
「デザイア達を無事に届けないといけないんだから、邪魔しないでよ!」
言うなり甲板を蹴って疾駆するカノン。船の揺れなどないが如きのバランス感覚で歯車騎士団に迫り、宙を舞って蹴りを放つ。回転するようなカノンの動きを前に歯車騎士団は一人また一人と倒れていく。
「まだまだ負けないからね!」
「皆、無理しないでね!」
『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)はわずかに甲板から浮いて船の揺れから逃れる。その状態でライフルを構え、血路を開くべく引き金を引いた。一発、また一発と放たれる弾丸が戦端を開いていく。
「この船の進路がそのままエスター号の進路に影響する……何としても食い止めなきゃ!」
「しかし海賊の手を借りてまでこちらをせん滅しにくるとは……ヘルメリアも本気のようだな」
肩をすくめるように『そのゆめはかなわない』ウィルフリード・サントス(CL3000423)は呟いた。こちらのデザイア輸送開始と同時に宣戦布告。そうなれば国家として動くのも当然と言えよう。
「こちらも負けてはいられまい。自由騎士の強さ、見せてやろう」
言って武器を構えて前に立つウィルフリード。真っすぐ突き進み、全身の力を込めて武器を振るう。重戦士の基本技だが、練度をあげればそれだけで決定打となる。何千何万と繰り合えした素振りが、今力となる。
「さあ来るがいい歯車騎士団。イ・ラプセルの騎士、此処に在りだ」
「無理はするなよ……と言ってられない状況か」
前に突出しすぎる前衛を押さえるように声をかける『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)。とはいえ自体は一刻を争う。少しでも早くエスター号への砲撃を止め、安全な航路を確保しなければ被害は増えるばかりだ。
「少しでも多く癒しておかないとな」
リュリュは後衛に下がり、回復を粉って仲間を支援する。錬金術は法則の学問だ。一定の法則に乗っ取り物を作れば、全く同じものが生まれる。そうでなければ法則に穴があるのだ。過去の錬金術師が築いた法則に従いリュリュも薬品を作り、仲間を癒していく。
「さて次は――」
「海賊と手を組んで挟み撃ちとはいい手です。敵ながら天晴れです」
『マギアの導き』マリア・カゲ山(CL3000337)は海賊と手を組んだ歯車騎士団の決断に称賛を送っていた。例えて機であっても褒める所は褒める。それがマリアの性格だ。その結果厄介なことになっているが、それはそれである。
「さて、どう打開しましょうか。意地の見せどころです」
魔力の炎を放ちながら、マリアは思考する。個人でできる事をしっかりと。自分にそう言い聞かせながら、一つずつやれることをこなしていく。魔力を溜めこみ、炎のルーンを生み出す。放たれた炎はマリアの魔力が加味され、強い衝撃を生み出していた。
「確実に数を減らし、歯車騎士団を追い詰めていきましょう」
「とはいえ、悠長にしてられないのも、事実だからね……」
マリアの言葉に応える『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)。端的に言って、地の利は向こうにある。船の所有権的な意味もあるが、海での戦闘経験や数の優位性なども含めてこちらの不利は否めない。前衛の数が不足しているのも要因の一つだ。
「上手く巻かないと……ジリ貧になる前に、勝ちの目が欲しい、ね」
言って魔力を展開するマグノリア。聖遺物から生まれた魔力は戦場を覆い、敵の足を封じていく。マグノリアが生んだ魔力の大波は渦を巻き、その回転が歯車騎士団の体力を奪っていく。
「上手く波に乗れるといいんだけど……楽じゃないか」
相対するは一国の軍隊。その練度も強さも盗賊などとはけた違いだ。だがそれは自由騎士も同じこと。培った経験を元にして一気呵成に攻め立てる。
戦いはまだ始まったばかりだ。
●海賊船Ⅰ
そして砲撃を加えてくる海賊船『ザッツ・ナッティ・ベアード』号にも、自由騎士達は乗り込んでいた。
「みんなで力を合わせれば大丈夫だよ!」
『黒砂糖はたからもの』リサ・スターリング(CL3000343)は集まった自由騎士を前に勇気を振りしぼる。海賊は怖いけど、皆がいるなら何とかなる。根拠なくそう思えるのがリサの長所だ。常に前向きだからこそ、得られる未来もある。
「デザイアのみんなが奪われちゃったら大変だからね! 絶対に止めないと!」
船からの砲撃を止める為に海賊達に攻撃を仕掛けるリサ。揺れる船に足を取られながらも、しっかりと甲板に足をつけて一撃を繰り出す。一つ一つ確実に。焦ることなくリサは攻撃を積み重ねていく。
「流石に援軍が厳しいかな。隙を見せれば一気に攻めたいけど!」
「せやなぁ。海賊なんて臭い輩、早う駆除したいわぁ」
鼻を覆うようなポーズをとって『艶師』蔡 狼華(CL3000451)は嫌悪感を示す。安い挑発だがそれなりに効果があったのか、海賊の矛先が狼華の方を向く。その気配に笑みを浮かべ、武器を構えなおす。
「ああ、言葉わかるんか。猿ぐらいには頭ええんやね」
「ここぞとばかりに挑発を重ねるなぁ。大したもんだ」
狼華の挑発に苦笑するガラミド・クタラージ(CL3000576)。相手を足止めするのに効果的なのは確かなようだ。デザイアを海賊に渡さない為にもここで奮起せねばと気合を入れて銃を構える。
「オーケー。それじゃ、通信開始だ」
ガラミドはテレパスを用いて海賊船に乗り込んだ自由騎士達と連絡を取り合う。連絡を主体としながら、ガジェットボムを用いて煙幕を張って仲間を支援する。広範囲に広がる煙幕は下手をすると味方を巻き込むため、多様はできないのが難点か。
「また援軍が来るぞ!」
「へっ! 次から次へと湧いて出てくるなぁ!」
唸るように叫ぶ『血濡れの咎人』ロンベル・バルバロイト(CL3000550)。ならず者化山賊に見える虎のケモノビトだが、シャンバラ出身のネクロマンサーだ。今も後方から呪いを放ち、海賊達を呪っていた所である。
「よし、本日の呪術師は終了っと。武器ぶん回して行くぜぇ!」
そして魔力が切れたロンベルは意気揚々と片手用戦斧を手にして海賊達に向かっていく。元よりそう言った気質なのだろう。後ろから呪いを放っているよりも前に出ている時の方が楽しそうである。
「これが戦場の醍醐味だぜ! ガッハッハ!」
「そうだー! ガンガン殴っていくぞー!」
ロンベルの言葉に同意する『伝承者』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)。間違えて船に乗ったらここに来ちゃった、とばかりの顔をしていたが来てしまった以上は戦うのみ。幸い、敵には事欠かない状況だ。
「力比べなら負けないぞ! どりゃー!」
小さな体を十全に生かした格闘動作で海賊達を打ち払っていくカーミラ。背中全体でタックルをしたと同時に、頭の角を叩きつける様に頭突きを振るう。そのまま回転して足払いをして、バランスを崩した相手にしたから拳を叩き込む。
「まだまだ終わらないぞ、ぶっ潰れろー!」
「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHH!」
狂ったように叫ぶ『黒き狂戦士』ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)。ナイトオウルの視界に移るのはヘルメスの国に力を貸す賊共達。女神のすばらしさを理解しない愚か者に慈悲はないとばかりに狂気をぶつけていく。
「HEEERMEEEEEEESSSSSSS! DEEEEEEEEEEEAD!」
喉が枯れんとばかりの大声をあげるナイトオウル。寄ってくる海賊達を切り裂きながら、アクアディーネのオラクルを守るための盾となる。我が身は女神に捧げた者。ならば女神の加護を受けた者を守るのが我が努め。言葉なくその身が語っていた。
「GoooooooDneeeeeeeSSSS!」
自由騎士と海賊の声と剣戟。それが海賊船を支配していた。
●甲板Ⅱ
エスター後に乗り込んだ歯車騎士団と、それを止める自由騎士団。
その戦いは佳境に向かっていた。
「この戦いは父上と私が掲げる『全ての亜人が幸せに暮らせる世界』への第一歩。決して引けませんわ」
『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)は『戦乙女の弓』を構え、堂々と宣言する。魔力の矢を放つことが出来る弓だが、今は攻めよりも癒しに徹していた。傷ついた自由騎士達に癒しの術を施し、倒れる者を減らそうとする。
「前衛の皆様、すぐに傷を癒しますわ。ですから頑張ってください!」
言葉と同時に魔力を集めるレオンティーナ。亜人でありながら貴族の地位を得たロマーノ家。その誇りをレオンティーナも正しく継承していた。その力は守るべき民の為に。貴族の義務を果たすべく、研究を重ねた癒しの術が仲間を守る。
「皆で凱旋する。それまで倒れるわけにはいきませんわ」
「ナナン達を全員倒してからじゃないと進めないよーだ!」
『ひまわりの約束』ナナン・皐月(CL3000240)は両手剣を構えて歯車騎士団と相対する。ここから先は伊達も通さないという意思を込めて睨みつけ、剣を振るう。小さな体からは考えられない力だ。
「ガッと突っ込んで、ドカーン! っていくぞー!」
子供らしいナナンの外見通りの擬音だらけの言葉だが、振るわれる一撃は子供とは思えないほどの力在る一撃だ。烈風を思わせる衝撃を放って相手のバランスを崩し、その隙を逃すことなく両手剣を振り下ろして歯車騎士団を打ち倒す。
「ここから先は通行止め!」
「そうとも! ここから先は一人たりとも通さない!」
槍と盾を構え、『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)が歯車騎士団の前に立ちふさがる。この奥にはフリーエンジンを始めとした戦えない仲間がいる。彼らに手を出させやしないし、デザイア達を奪われたりもしない。
「かかってこい、歯抜けの歯車ども!」
そんな挑発に乗ったか否か。言葉と同時にナバルに殺到する歯車騎士団。振るわれる剣を槍で弾き、銃弾を盾で受け流す。たとえ自分が傷ついても、奥へと続く道は譲らない。足をしっかり踏ん張り、気合を込めて敵を押し返す。
「デザイアが救われるという前例を作るんだ。それはきっと、あの国にまだいる亜人達の希望になる!」
「かなりまずい状況だけど……ボクにできることをしっかりやれば……」
深呼吸をして落ち着こうと努める『笑顔のちかい』ソフィア・ダグラス(CL3000433)。歯車騎士団の勢いに怯えてしまうが、それでも自分自身に鞭を入れてこの場にとどまった。今逃げるわけにはいかない。そう言い聞かせて。
「行くよ……一つずつ、確実に……!」
目まぐるしく変化する戦況。その中にあって、自分に出来る事を拾い上げていくソフィア。癒しの術で仲間の傷を塞ぎ、敵が迫れば仲間に知らせる。小さなことかもしれないが、それが積み重なって初めて勝利への道が開けるのだ。
「なるべく……仲間と一緒に行動して……隙を作らないように……」
「わたしは皆をひっかきまわしますね」
『こむぎのパン』サラ・ケーヒル(CL3000348)は持ち前の素早さを生かして、歯車騎士団のグループに突撃する。一ヶ所に留まることなく走り抜け、そして交差の瞬間に切りかかる。呼吸するのも惜しむほどに走り続け、刃を振るう。
「デザイアの皆さんをお守りするための闘い……負けられません!」
歯車騎士団の攻撃を武器で受けるのではなく避ける。生まれた隙を逃さずに切りかかる。剣で受ければその分攻撃するために時間がかかるからだ。最短最速を目指して動き回り、そして斬りかかる。その速度こそがサラの武器。
「一人一人、確実に!」
「意地でも甲板は守り抜いて見せますわ……!」
ライフルを手にして『生真面目な偵察部隊』レベッカ・エルナンデス(CL3000341)は頷く。歯車騎士団はイ・ラプセルを敵と認識している。彼らが船の中に入れば、虐殺は避けられないだろう。ここで止めなくてはと銃座を握る。
「敵の数を減らさなくては!」
言ってライフルを構え、引き金を引く。すぐに弾丸を排出してさらに次の弾丸を撃つ。矢次に放たれる弾丸が戦場に次々と叩き込まれ、弾幕となって歯車騎士団を襲う。レベッカの銃撃は数で相手を圧倒し、その動きを封じていく。
「デザイアの皆様を守り切れればヘルメリアにもダメージは大きいはず……そう信じて、今は戦うのみですわ! 」
「他の騎士達は封じます!」
『その瞳は前を見つめて』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は海の言葉に弾かれるように動く。藍と桃色の瞳で戦場を捕らえ、甲板に居る敵全ての位置を把握した。好機を逃すまいとばかりに『藍花晶の杖』を振るう。
「や、やっと、奴隷にされていた人達が新天地に向かおうというのに、邪魔なんかさせませんっ」
ティルダの杖が振るわれれば、そこから白い鎖が戦場全体に伸びていく。形なき霊の呪縛は歯車騎士団の胸を通過し、そして金縛りの呪いを残して消えていく。シャンバラの魔女狩りが使っていた呪術師の技が、亜人を救う為に猛威を振るう。
「亜人をこれ以上奴隷扱いはさせたくないです。させないのですっ」
「ここから先は行き止まり……文字通り、貴方達のピリオドでございます」
『断罪執行官』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は一礼して武器を構える。武術家の呼吸法を用いて精神を沈め、その状態で闘気を高めていく。冷静沈着にして気炎万丈。穏やかな微笑みの中に、激しい怒りがあった。
「こちらをどうぞ」
歯車騎士団が動くより先にアンジェリカの手が動く。持っていたボール型のガジェットを投擲し、歯車騎士団のグループに投げ込む。ガジェットは激しい衝撃と同時に煙を吹き出し、敵の足を止めた。
「逃しません、行かせません、行動させません。満足に動けないまま力尽きなさい。諦めなさい、それが貴方達に許された唯一の道です」
「デザイア達が多く助かったら、ティーヌも喜ぶ筈だから」
イ・ラプセル本国で待つ王女の顔を思いながら『おうじょのともだち』海・西園寺(CL3000241)は気合を入れる。兄王エドワードの亜人平等政策。その考えのもとで助かる亜人が増えればイ・ラプセルの皆が喜ぶ。その笑顔を守るために、海は戦場に立つ。
「久しぶりの戦闘ですけど……」
熱気渦巻く戦場の空気に怯えることなく、海は銃を構える。狙うは敵指揮官の眉間。強く意識を集中させて狙いを定める。撃ち放たれた弾丸は歯車騎士団のキジン格闘家の頭に当たり、衝撃を与える。頭部もキジン化していたのだろう。とまれ、相手に一瞬のスキが生まれる。
「今です。一気に敵の指揮官を」
「ゴリラマッスル倒ス! 皆、元気にナル!」
『竜天の属』エイラ・フラナガン(CL3000406)は海の攻撃に続くように攻める。の指揮官を討てばこちらの士気も上がる。そして相手の士気も下がる。それは幾多の海を渡ってきたエイラの経験則。戦いたくなくとも戦ってきた、そんな彼女の経験則だ。
「強いの倒レる。皆落ち込む。落ち込まセる悪いケど。でも必要!」
敵の命令系統を崩し、士気をおとして死傷者を少なく戦いを終わらせる。エイラの言葉は的を得ていた。始まってしまった戦いを無理なく終わらせるために、『トーテムポール』を振るい魔力の矢を敵のキジンに叩き込む。
「オレ、ヤれる事スる。ソれ戦う事。エイラ逃ゲナイ」
「まだ倒れんよ……!」
積み重なる攻撃に膝をつく『ゴリラマッスル』。倒すには至らないが、その勢いを止めることには成功した。明らかに失速する歯車騎士団の攻め。
戦いの趨勢は少しずつ露わになってくる。
●船内Ⅱ
穴から入り込んだ海賊達は理性を失ったかのように略奪を開始する。
逃げ惑う亜人を見つけては捕らえ、力づくで奪い取っていく。
「ひどい……どうして……」
『決意なき力』アルミア・ソーイ(CL3000567)はそんな海賊達を前に蒼白になる。ショックを受けていたのは数秒程度。誘拐されそうになるデザイアの絶望の表情を見て、殺意と共に海賊に呪術を放つ。
「大丈夫……私は許される……死にたくない……死なせたくない……」
熱にうなされたかのように『バカでもわかる死霊術』を手に呪術を繰り返す。かつて自分が殺されそうになった記憶が何度も脳内で繰り返される。それは本の呪いかアルミア自身の心の傷か。目の前で人生を狂わされそうになるデザイアは、あの時の自分を想起させた。
「大丈夫……大丈夫……大丈夫……だから……」
「亜人の誘導など本来なら御免被るが……」
「皆まで言うな、ウィンリーフ卿。これも国の為だと分かってはいるのだろう?」
亜人を良く思わない『現実的論点』ライモンド・ウィンリーフ(CL3000534)の言葉を嗜めるようにガブリエラ・ジゼル・レストレンジ(CL3000533)が言葉を挟む。個人の思想はどうあれ、今やらなければならないのは避難誘導だ。
「無論だ。彼らがイ・ラプセル国民となり労働力の増加に繋がるのなら、国益には違いない」
「然り。ゆっくりロビイングしている余裕はないからな」
ライモンドからすればわざわざ亜人の為に動くのは業腹だ。だがそれが国の為なら動かざるを得まい。ガブリエラもそんなライモンドの思想を知りながら、しかし現状デザイアを誘導できる有能な人材を求めていた。
「命が惜しくば急げ! 荷は捨てろ! 揺れと足元は気をつけろ、己より背の低い者を潰してはいないか?」
ライモンドは背筋を伸ばして声を出す。大声ではない。はきはきとしたよく通る声だ。大事なのは声が相手の心まで届くか否か。そういう意味でライモンドは適材適所だ。政治家としてのポテンシャルを存分に発揮していた。
「注目! これから避難誘導を始める。我々は貴公らを見捨て引き渡すような真似は決してしない。ヒトとして尊厳を我らは決して貶めない!」
対しガブリエラは声を張り上げて威風堂々とした態度でデザイア達に語りかける。毅然とした態度でデザイアに語りかけ、イ・ラプセルはけして見捨てないと主張する。その言葉がデザイア達の信頼を得たのか、誘導はスムーズに進んでいく。
「ここにあなたたちの思う奴隷は、一人もいません!」
海賊達の前に立ちふさがる『悪の尖兵『未来なき絶壁』の』キリ・カーレント(CL3000547)。デザイア達を集めた部屋の前に立ちふさがり、海賊達の侵入を塞いでいた。ここから先は通さないとサーベルを手にして立ちふさがる。
「キリは大食堂前で海賊4名と交戦中です! 近くにいる人はお手伝いお願いしまーす!」
マキナ=ギアで通信をしながら海賊達と交戦するキリ。一人でどうにかできると慢心しない。失敗すればデザイア達の人生が狂うのだ。万が一にも下手は打てない。海賊達にカウンターを決めながら、不動の構えでキリは扉を守る。
「どんなに痛くても辛くても、守りきるんだから!」
「そちらは任せよう。私は海賊を一網打尽にしてくる」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は言いながらエスター号の構図を思い出す。二等室から一等室に繋がる階段。そこを昇ってくる海賊達を待ち受ける。ここを昇って攻めてくることは予測済みだ。
「わざわざ標的になりやすい地形に来るとは結構な事だ。聞いてくれぬとは思うが、ここで退いてくれれば追いはしない」
「はっ! 奴隷を前に引けるかよ!」
やってきた海賊に降伏勧告を進めるテオドール。予想通り受け入れてくれない海賊を前にため息をつき、『アルボス・サピエンティア』に魔力を込める。詠唱を短縮し、ジュz筒を解き放つ。呪いが階段に充満し、宣言通り一網打尽にする。
「忠告はしたのだ、従わなかった罪は自身であがなってもらおう」
「悪いけど、加減はしないわよ」
やってきた海賊達に『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は静かに言い放つ。既に何名かがエルシーに挑み、地に伏していた。エルシーの籠手は血に染まっている。どの海賊も、急所を突かれてそこから出血していた。
「これが、サンクディゼールのゴロツキ共に私が『緋色の拳』と呼ばれた理由よ」
言葉と同時に突き出された拳は、的確に急所を突いていた。孤児だったエルシーは、人さらいのような人を道具としかと思わない輩を許せない。普段は行わない急所攻撃を解禁し、確実に海賊達を仕留めていく。
「赤髭海賊団……許せないわ!」
怒りの言葉を放ち、次の戦場へと進むエルシー。
海賊達に奪われた亜人達は十数名ほど。適切な避難誘導と個々の戦術の結果、多くの亜人を守りぬくことが出来たといえよう。
●軍船Ⅱ
歯車騎士団の軍船『ミルクランチ』は激戦となっていた。
「予定していた援軍は!?」
「駄目です! どの船も迎撃、もしくは足止めされた模様!」
合流、もしくはエスター号を挟撃する予定だった船は全て自由騎士達に止められていた。ヘルメリアは今の戦力でしのがなくてはならない。
「また会ったな、ジェファーソン流!」
『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は軍刀を構えて敵の指揮官に戦いを挑む。一度刃を構えた相手だ。その太刀筋は理解している。背筋を走るのは武者震いか。名乗りを上げ、戦いを挑む。
「我が名はシノピリカ・ゼッペロン! イ・ラプセルの自由騎士としていざ勝負!」
「一騎打ち、っていうのも悪くないけど集団戦なんで横槍入れさせてもらうわ」
シノピリカの戦いに同席していた『機兵貫く魔矢』猪市 きゐこ(CL3000048)が笑みを浮かべて参戦する。フードの奥から相手を見ながら、どう攻めるかを思案する。持久戦もできなくはないが、やはり攻めるのが性に合う。
「やっぱり、相手のスタイルを邪魔するのが一番よね」
魔力を練り上げ、細く鋭い矢を形成するきゐこ。敵指揮官のスタイルは高い防御とカウンターだ。それが分かっているのなら手は打てる。構えを崩す痛みを伴った魔力矢を放ち、カウンターの構えを崩していく。
「高火力で押すだけが戦術じゃないわ! 状況に合わせて術を変えるのが魔術師よ!」
「まー、戦争だからな。やれることは何でもやらにゃならん」
きゐこの隣で癒しの術を施す『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。ツボミはむしろ治療術のみに特化している。やれることは多くないが、それだけヒーラーの需要があるという事もある。現に手を休める余裕がない。
「色々ケチってる状況はない。景気良くいくぞ」
戦況を見ながらツボミはひっきりなしに飼う服を続ける。この砲撃を止めなくては、エスター号は大きく迂回することになる。そうなればそのダメージも計り知れない。ここをどれだけ早く制圧するかが、要となっていた。
「しかし戦争の正義など信じちゃおらんが、自分の正統性とこっちの不当性を良くも叫ぶもんだ」
「戦争なんざ『正しい道を歩いている』とか思わないとやってられないぜ」
敵指揮官に銃弾を叩き込みながら、『竜弾』アン・J・ハインケル(CL3000015)はツボミに言葉を返す。戦争は日常と真逆の価値観だ。そこに『染ま』れば日常には戻れない。出来るだけ精神を保つために『正義』を掲げるのは傭兵でもやることだ。
「ま、俺は強い相手と戦えればそれでいいんだがね!」
唇を笑みに変え、アンは戦場を走る。戦いこそ人生。戦いこそ生きる理由。アンの戦うモチベーションは常に強い相手との戦いだ。酒やたばこでは得られない高揚感。強敵との戦いで得た勝利の酒こそ、アンの求めるモノだ。
「流石、ヘルメリア軍人。だがこいつはどうかな!」
「ここが正念場です!」
気合を入れる『戦姫』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)。デボラは後衛の自由騎士を守るために、我が身を盾として戦っていた。キジンの身体ではあるが、傷が痛まないはずがない。それでも気丈にふるまって笑顔を浮かべる。
「ここを凌げば、おじさまが褒めてくれます! ええ、テンションマックスです!」
自分に活を入れる為か、はたまた本当にそういう約束をしたのか。デボラの精神的支柱は折れそうにない。傷の痛みに足を止める事はあるが、それでも足が崩れる事はない。最後の最後まで立ち続け、仲間達を守っていた。
「皆様は必ず御守りします!」
「ええ。フリーエンジンにはお世話になったし、望むところ」
『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)は拳を構えて気合を入れる。今までフリーエンジンにはお世話になった。受けた借りを返す時だ。勿論フリーエンジンも戦力的な面で自由騎士に助けられたのでお互い様なのだが。
「――ここね」
ミルトスは相手の戦意をこちらに向けた後に自由騎士独特の構えを取る。ミルトスの体を敵指揮官のレイピアが襲う。受けた傷の痛みを脳内で記憶しながら。一瞬のスキを突いて拳を突き出し、相手から受けた痛みを返すよう拳の先端から衝撃を加えた。
「敵将、ライラ・ジェファーソン。討ち取ったり。――さあ、どうしますか?」
指揮官を倒したことを告げるミルトス。それによりこの船の歯車騎士団の戦意は大きく下がった。その勢いを殺すことなく自由騎士達は一気に攻め立てる。
十分な戦果を得た自由騎士達は急ぎエスター号に戻っていく。その途中で、迂回を開始していたエスター後に信号弾で合図を伝えた。慌てて回頭し、航路を戻す。
エスター号は最短距離でイ・ラプセルに向かっている。
●海賊船Ⅱ
海賊船『ザッツ・ナッティ・ベアード』号。そこにいるモーガンの元にもさまざまな報告が上がってきた。
「無理無理無理! あいつらめっちゃ強いやん!」
「まーけーたー!」
そのほとんどがエスター号から逃げ帰った海賊達の泣き言だった。モーガンは頭をかきながら『イ・ラプセルを侮ったか』とため息をつく。
「行くでござるよ!」
そんなモーガンに踊りかかる近接戦闘用の籠手を構えて、一気に海賊達との距離を詰める『南方舞踏伝承者』瑠璃彦 水月(CL3000449)。事ここに至って手を抜く余裕はない。相手が殺するつもりでくるのだから、こちらも相応の気迫をもって挑むのみ。
「……むむ、しまったでござる。銃はもってないはずなのでござるが……」
戦いながら小首を傾げる水月。銃を持っているかのような動きをしそうになって、思わず足を止めそうになった。いかんいかんと首を振って拳を握りなおす。敵の懐にもぐりこみ、全体重を乗せた一撃を解き放つ。
「さすが音に聞こえた赤髭海賊団でござるな」
「皆さん、頑張ってください!」
仲間を激励しながら後方から回復を行う『ラビットレディ!』ティラミス・グラスホイップ(CL3000385)。魔力の瞳で未来を見て、そこを基点に情報収集を行っていた。それを皆に伝達し、先手先手を打っていく。
「あっちから援軍が来ます!」
指さし、声をあげて情報を共有するティラミス。お腹に力を込めてはきはきした声で。右に左に手を振りながら、同時に回復と支援も行っていく。錬金術を駆使して仲間を癒し、そして戦いを支えていく。
「ニコラスさん、あっちの人を回復してあげてください!」
「へいへい。おじさんなんであまりこき使わないでほしいね」
呼ばれてため息をつく『帰ってきた工作兵』ニコラス・モラル(CL3000453)。元気があることはいい事だが、頑張りすぎて大事な時に力尽きては意味がない。そんな理由かどうかはともかく、少し脱力した態度で戦場に挑む。
「ま、裏があるって読んでいいんだろうな。ヘルメリアだもんなー、あの軍部だもんなー」
頭をかきながらニコラスはため息をつく。『上手くぶつかってイ・ラプセルが海賊を幾分か減らしてくれれば良し』あたりか。事実海賊船に攻め入っているのだから、苦笑するしかない。仲間を守るため、回復の魔術を行使する。
「ま、おじさんはやる気があるヤツを守るだけだ。頼んだぜー」
「男に応援されてもな」
ニコラスに声をかけられて、肩をすくめる『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)。できることなら美人に激励されたかったぜ、とおどけた後に二本のダガーを構える。向かう先は赤髭海賊団。自由を奪う海賊達に刃を向ける。
「自由を奪おうとするお前達を許しはしない」
ヨウセイであるオルパは、今のデザイアをかつて虐げられたヨウセイと同一視している。『聖櫃』に命を奪われるヨウセイと、ノウブルに酷使される亜人達。かつて自分達が救われたように、今度は自分が彼らを救おう。オルパは想いのままに強くダガーを握る。
「失せろ。デザイアを狙うなら容赦はしない」
「どうした! たかが一兵卒に恐れをなすとは、赤髭海賊団は腑抜けの集まりか!」
海賊達を挑発しながら『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)は武装を振るう。一番槍を務め、そのまま敵陣を占拠するように海賊達を一掃していく。その勢いもあって狙われることとなったが、それでも引くことなく海賊達を蹴散らしていく。
「貴様らのような輩が掲げるボスも、程度が知れると言うものだな!」
挑発を重ねながらアデルは槍を振るう。短気な海賊はその挑発に乗って矛先を向ける。レイピアを持つ敵の海賊幹部が割って入るが、それもアデルの狙い。名のある海賊を討ち取って、戦いの流れをこちらに向ける為に。
「ようやく骨のある奴が出てきたか。ここが勝負どころだな」
「そっちは任せたぜ」
短く言いはなちウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は前に出る。広範囲射撃で多くの海賊達を撃ち、その命を奪ってきた。そして機を見るや否や、海賊団のボスであるモーガンに接敵する。銃を相手の頭に突き付け、直接撃ち抜こうと。
「…………!」
怒りのままにウェルスはモーガンに挑む。ヘルメリアの手先なら敵だ。生かす理由も意味もない。殺意を隠そうとしないウェルスの攻撃はまさに鬼気迫るものだ。海賊全てを駆逐する。妥協も和平の道もそこにはなかった。
「やってくれるな、自由騎士。確かにここが潮時か!」
頭部から血を流し、モーガンが撤退命令を出す。これ以上の戦いはいたずらに消耗するだけだ。そう思わせるだけの勢いと実力が自由騎士にあった。亜人奴隷達を連れ帰った海賊達を収容し、回頭する。
これ以上船に残れば、エスター号には戻れなくなるだろう。自由騎士もそれを察して、自分達が乗ってきた船に戻っていく。
「彼らの人生を奪わせはしません!」
否、一人デザイアをできるだけ助けようと奮闘する『街のスカイダンサー』アリア・セレスティ(CL3000222)が海賊船に残っていた。捕らわれたデザイアを助けるべく刃を振るい、帰投する船に乗せていく。アリアの活躍で囚われたデザイアの数名は助かった。だが、
「きゃあああああああ!?」
海賊の怒りを買ったアリアは逃げ遅れ、抵抗できない状態で海賊達に捕らわれてしまう。彼女が逃がした亜人が受けるはずだった扱いを、その肉体と精神に刻まれていく。身を守るモノはなく、抵抗する力もない。海賊の劣情を小舟が嵐に飲まれるように受け続け。
アリアが発見されたのは戦いから数日後。海賊に逆らった者がどうなるかを示すかのような傷痕を残され、湾岸の小舟で忘我するように横たわっているのが発見された――
●1819年12月5日、水機戦争勃発――
いくつかの犠牲こそあったが、エスター号は無事にイ・ラプセル領海内まで逃げきることが出来た。湾岸に着くころにはフル稼働させていたエンジンも限界を迎え、長期メンテナンスが必要なほどにボロボロになっていた。
大陸に着いたデザイア達を受け入れる元シャンバラ民。歓迎の言葉に涙を流すデザイア達を見て、自由騎士は安堵の息を漏らす。
彼らの自由への一歩が、ここに刻まれたのだ。
エスター号出発と同時に侵攻したイ・ラプセル騎士団は、ヘルメリア南部の制圧に成功する。橋頭保を形成し、ヘルメリア侵攻の楔となった。
ヘルメリア軍もすぐさま防衛軍を編成。両国ともすぐに派兵しないのは、互いに民間人の避難を優先した為だ。結果、両軍はにらみ合いの形となる。
歴史としてはこの日に始まったヘルメリア国とイ・ラプセル国の戦争。歴史家はそう未来に伝えるだろう。その裏で自由騎士の働きがあったことは、非合法活動故に後世に伝わることはない。
だが、自由騎士に助けられたデザイア達とフリーエンジンは、その功績を知っている。
亜人の自由の為に奮闘した水の女神の騎士達のことを――
エスター号の甲板に怒声が上がる。騎士達の声と共に剣戟と銃声が響き渡った。
「はっはっは! 歯車騎士団の方々は随分我々を高く買ってくれているようだ!」
そんな中にあっても『折れぬ傲槍』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)の声は良く響く。腹に力を込めて、皆に聞こえる様に声を轟かせる。豪胆にして傲慢。だがその態度こそが皆を奮起させていた。
「わざわざ海賊に便宜を図ってまで挟み撃ち! そこまでされるのなら、此方も全力で打ち破ってやらねばな!」
言って『焚刑大槍』を手にするボルカス。後方から声を出す野ではなく、自ら前に出て一番槍を奪う。それこそが己の在り方とばかりに最前線に立ち挑む。逃亡戦は確かに華々しいとは言えないが、だからと言って手を抜くつもりはない。むしろ嬉々としていた。
「さあ、今こそ自由騎士の在り方を示すとき! 我らの戦、此処にありと声高々に叫ぼうではないか!」
「うむ、戦場は此処に在り! 常在戦場こそヨツカの心意気だ」
アマノホカリの武具を手にして『背水の鬼刀』月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)は前に出る。様々な情報がい気かっているが、やるべきことは簡単だ。船を守り、無事に帰還する。その為に邪魔をするというのなら蹴散らすのみ。
「行手を阻むものは全て敵だ」
迷いなく淀みなく。その刃は水面に移る三日月の如く。円弧を描いた軌跡は歯車騎士団の防具を裂き、飛び散った血がエスター号の甲板を濡らす。そして翻った野太刀が動きを止めた歯車騎士団の意識を奪う。一人、また一人とヨツカは敵を倒し進んでいく。
「来るなら来い。ヨツカはこの船を守り切る」
「はい、この船には、守るべき人達がいます……」
途切れながらもはっきりとした意思をもって『命を繋ぐ巫女』たまき 聖流(CL3000283)は告げる。フリーエンジンやデザイア達。彼らを守るためにたまきは戦場に立つ。優しいたまきには心痛む戦場の光景からも目を離さずに。
「皆さんの傷は、癒します……」
悲鳴と流血から目を逸らすことなく、たまきは前を見る。そこで戦っている仲間達。その強さを信じて癒しの魔力を展開した。時折飛んでくる銃弾に耐えながら、それでもたまきは懸命に癒し続ける。それが自分に出来る最大のことだと信じて。
「私は、戦場に居る皆さん全員の力を信じ、私なりに戦うだけです!」
「そうそう。役不足かもしれないけど、やることはやらないとね」
『宝杖』を手にしてセーイ・キャトル(CL3000639)が頷いた。まだ新兵ともいえるセーイだが、戦場に立つ以上は経験不足を言い訳にはしない。大事なのは自分に出来る事をしっかりこなすこと。それを心に刻み、魔力を練り上げる。
「それなりに、役立ちますよっと」
言いながら周囲のマナを体内に取り入れ、魔力強化を行うセーイ。その後に炎を放ち、確実にダメージを積み重ねていく。まだ遠い『先輩』の背中を見ながら、しかしセーイは歩むことを止めない。ならばいつかはそこにたどり着けるだろう。
「ノーヴェ、そっちはどう?」
「問題ない……私も、役に立つ……」
相手の攻撃を凌ぎながらノーヴェ・キャトル(CL3000638)がセーイの言葉に応える。音を介さない思念での会話。ノーヴェはこれを駆使して戦場の連携を取っていた。危険があれば即座に伝え、素早い対応を行っていた。
「攻撃……近くの……敵……沢山……斬らなきゃ……」
カランビットとカタールを手にしてノーヴェは戦場を疾駆する。共に独特な形状の武器だが、ノーヴェはそれを苦と思わず振るっていた。『役に立たないといけない』という想いが燃料となって努力を重ねたのだろう。努力が刃に乗り、戦陣を切り裂いていく。
「次……」
「頑張るっすねぇ。あたしは適当にやらせてもらうっすよ」
銃床に十字星のマークが刻印された銃剣を手に、『stale tomorrow』ジャム・レッティング(CL3000612)がやる気のない声でため息をつく。戦争に命を懸けるつもりなんて毛頭ない。適度に働いてヤバくなったら逃げるだけだ。
「にしても悪の正義の……薄ら恥ずかしい事を声高に叫ぶ奴等っすねえ」
歯車騎士団の裂帛にうんざりした声でため息をつくジャム。正義なんてものは戦場にない。あれはそう思うことで自らを昂らせているだけの行為なのだ。ジャムも、そして叫んでいる相手もおそらくは解っているのだろう。
「ま、そう思わなけりゃやってられないって事っすね。あー、やだやだ」
「うちの叔母が言うとったわ。『踊るアホなら踊らな損損』ってな!」
ジャムのため息に『カタクラフトダンサー』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)が答える。世の中は陰気なものだ。それでも生きていかなくてはいけない。ならば自分を誤魔化して踊った方が楽しく生きられるのだと。
「ここ押さえとやばいからな。気合入れていくでー!」
アマノホカリ独特の訛り言葉を口にして、アリシアは甲板を蹴る。カタクラフトの脚が敵陣を駆け抜け、振るわれる刃が血の雨を降らす。踊るようなアリシアの動きに翻弄されるように歯車騎士団は傷を負っていく。
「いうても、この数は厄介やな。ええかげんにしてほしいわ」
「数で押す、というのは戦術の基本ですので」
アリシアの愚痴に『泡沫の』アダム・ロレンツォ(CL3000376)が答える。力押しが可能な状況において、数で押すというのは最も効率のいい作戦だ。だからこそそれが出来ないように策を練るのが小国の戦い方となる。元海軍のアダムはそれをよく理解していた。
「とりあえず守り抜くしかないですね。時間は味方のようですし」
スナイパーライフルを手にして狙いを定めるアダム。逃亡戦に置いて重要なのは時間の確保。甲板の敵を相当しつつ、寸暇を惜しんで時間を確認する。船の上の戦いはお手の物だ。慣れた場所のアドバンテージを生かしながら、一人ずつ穿っていく。
「で、歯車騎士団の皆さんはかんぱん派? こうはん派?」
「それだけだと何のことだかわからないですわよ~」
言ってツッコミの手を入れる『食のおもてなし』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)。甲板、という漢字には『かんぱん』『こうはん』の二つの読み方があるのだ。船の用語ではないが、机のトップボードの場合は『こういた』ともよぶとか。
「どうあれ、やられっぱなしな訳には行きませんね~。この船はお返しできませ~ん」
言って魔力を解き放つシェリル。放たれた魔力が敵陣を穿っていく。
「サシャがここを守り切るんだぞ!」
言って胸を張る『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)。マザリモノとして生まれ、親に捨てられて孤児となったサシャ。そんなサシャだから、ヘルメリアで虐げられた亜人達に対して思う所があるのだろう。
「サシャにどーんと任せるといいんだぞ!」
胸を張り、『HOLY BIBLE』を手にするサシャ。大好きな司祭様からもらった聖書を手に、サシャは戦場に立つ。司祭の気持ちを受け継いで、誰かを助けるために。放たれた魔力が傷ついた仲間達を癒していく。
「皆でおにくを食うために頑張るんだぞ!」
戦争、という単語の裏に潜む闇に心がよどんでも、戦う理由があるのならそれを跳ねのけ戦っていく。
それは誰もが同じこと――
●船内Ⅰ
エスター号内に侵入した海賊達。彼らを討ち取るべく自由騎士達は動いていた。
「遅いですよ!」
『おちゃがこわい』サブロウ・カイトー(CL3000363)は廊下の角や荷物などの死角に回り、そこから不意を突くように海賊を奇襲していた。乱戦のような状況でなければ、初激の優位性を保てる。攻めては隠れ、また攻める。その繰り返しだ。
「決定打を与えるのは任せましょう。今は入り込む海賊達の足止めを」
「はい! 足止めはお任せください!」
元気よく敬礼するセアラ・ラングフォード(CL3000634)。デザイア達を逃がす役目は他の仲間に譲り、海賊達の足止めに従事する決意を固める。ヒーラーで前に立つのは苦手だが、それでも海賊に蹂躙されるのはよしと思えなかった。
「椅子と机と……あとはこの本棚で……!」
セアラは扉と家具を使って即席のバリケードを構築する。足止めされるのが厄介とばかりに回り道してくれれば良し。血気盛んに突撃して来ても、ある程度の防衛力は有している。足止めにはもってこいの状況だ。
「デザイア達は渡しません!」
「ま、もともとヘルメリアの船なんだから情報が渡っていても不思議じゃないよねー」
『未知への探究心』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は言いながら船内を走り回る。デザイア達が避難した箇所から順番に外から鍵を閉めて、中に誰かがいるように思わせる。魔力で鋼鉄のように固くすれば、破壊する時間も稼げるだろう。
「嫌がらせにかけてあたしの右に出る者はいないってね」
遠くで扉が開けられたのか、酷い音が鳴り響く。クイニィーが仕掛けたロックの仕掛けだ。誰にも連絡せずに独断でやっているので下手をすれば味方を巻き込みかねないが、実害はうるさいだけだから問題ないだろうと頷いた。今は時間を稼ぐことが重要だ。
「さて、次は何処に仕掛けようかなー」
「ひゃっほーい!」
『勇者の悪霊退治』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)は揺れる船内をひたすら走り、目に映った海賊に攻撃を仕掛けていた。ノイズがうるさく、バリケードも多い状況だがそれもまたジーニアスにしてみれば楽しみの一つ。びっくり箱を開ける心境だ。
「揺れる船で海賊を撃退……まるで障害物走みたいでわくわくするね!」
砲撃の衝撃や海賊の侵入。そういった事さえもジーニアスの好奇心をくすぐる要因の一つ。高速で走り、天井や壁を蹴りるようにして突き進む。そのまま武器を振るって交差の瞬間に海賊達を切り刻む。立体的な高速戦闘を展開していた。
「どんどん行くよ!」
「船に乗り損ねたが……こっちで海賊を狩るとするか!」
『灼熱からの帰還者』ザルク・ミステル(CL3000067)は舌打ちを一つ打ち、銃を構える。『赤髭海賊団』の船に乗り込む予定だったが手違いで乗り損ねてしまった。仕方なくエスター号に残って海賊を待ち構える方向にシフトする。
「ザコは引っ込んでな!」
廊下の角を盾にして銃撃が止むのを待ち、一瞬の間隙をついて二挺拳銃を構えて廊下に躍り出る。コンマ一秒で敵の位置を把握し、倒す順番を計算する。同時に銃口を向けて引き金を引き、次々と海賊達を伏していく。
「因果なもんだ。多くを救うために多くを殺すんだからな! ま、覚悟の上で海賊やってるんだろうけどな!」
海賊の略奪を防ぐべく、自由騎士達はそれぞれの技術を駆使して戦い続ける。
●軍船Ⅰ
エスター号の進路の前に立ち、砲撃を続けるヘルメリア軍船『ミルクランチ』。
自由騎士達は小舟を出してそちらに白兵戦を仕掛ける。
「ヒャッハァァァァァッ! 俺様はシルヴァネール公爵家嫡男、クレヴァニール・シルヴァネールなりぃぃぃぃぃっ! ……ってあれ、乗る船間違えた?」
『俺様的正義』クレヴァニール・シルヴァネール(CL3000513)は一番槍で乗り込んだ後に敵の姿を見て、首をかしげた。確かモーガンのところに向かったはずなのだが、どうやら間違えたようだ。全員ノウブルで、ケモノビトなど一人もいない。その事に不満を感じた。
「まあいいです。もふもふしていないのなら遠慮はしません!」
だがすぐに立ち直り、デスサイズを構える。ゆらりとした立ち様で攻撃を避ける構えを取り、その構えを維持したまま武器を振るう。道化じみた名乗りを上げたがその動きは精錬された動き。同時に魔術を放ち、歯車騎士団を切り崩していく。
「デザイアの皆さんは最早、イ・ラプセルの国民も同然! なれば、我々自由騎士団は彼らを守る義務があります!」
「もー、通せんぼなんて腹立つなー」
船に乗り込んだ『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)は開口一番そう言って歯車騎士団に拳を放つ。この船が砲撃を止めればエスター号は真っ直ぐに移動することが出来る。逆に言えばこの船を止めれなければ、余計な被害が生まれてしまうのだ。
「デザイア達を無事に届けないといけないんだから、邪魔しないでよ!」
言うなり甲板を蹴って疾駆するカノン。船の揺れなどないが如きのバランス感覚で歯車騎士団に迫り、宙を舞って蹴りを放つ。回転するようなカノンの動きを前に歯車騎士団は一人また一人と倒れていく。
「まだまだ負けないからね!」
「皆、無理しないでね!」
『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)はわずかに甲板から浮いて船の揺れから逃れる。その状態でライフルを構え、血路を開くべく引き金を引いた。一発、また一発と放たれる弾丸が戦端を開いていく。
「この船の進路がそのままエスター号の進路に影響する……何としても食い止めなきゃ!」
「しかし海賊の手を借りてまでこちらをせん滅しにくるとは……ヘルメリアも本気のようだな」
肩をすくめるように『そのゆめはかなわない』ウィルフリード・サントス(CL3000423)は呟いた。こちらのデザイア輸送開始と同時に宣戦布告。そうなれば国家として動くのも当然と言えよう。
「こちらも負けてはいられまい。自由騎士の強さ、見せてやろう」
言って武器を構えて前に立つウィルフリード。真っすぐ突き進み、全身の力を込めて武器を振るう。重戦士の基本技だが、練度をあげればそれだけで決定打となる。何千何万と繰り合えした素振りが、今力となる。
「さあ来るがいい歯車騎士団。イ・ラプセルの騎士、此処に在りだ」
「無理はするなよ……と言ってられない状況か」
前に突出しすぎる前衛を押さえるように声をかける『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)。とはいえ自体は一刻を争う。少しでも早くエスター号への砲撃を止め、安全な航路を確保しなければ被害は増えるばかりだ。
「少しでも多く癒しておかないとな」
リュリュは後衛に下がり、回復を粉って仲間を支援する。錬金術は法則の学問だ。一定の法則に乗っ取り物を作れば、全く同じものが生まれる。そうでなければ法則に穴があるのだ。過去の錬金術師が築いた法則に従いリュリュも薬品を作り、仲間を癒していく。
「さて次は――」
「海賊と手を組んで挟み撃ちとはいい手です。敵ながら天晴れです」
『マギアの導き』マリア・カゲ山(CL3000337)は海賊と手を組んだ歯車騎士団の決断に称賛を送っていた。例えて機であっても褒める所は褒める。それがマリアの性格だ。その結果厄介なことになっているが、それはそれである。
「さて、どう打開しましょうか。意地の見せどころです」
魔力の炎を放ちながら、マリアは思考する。個人でできる事をしっかりと。自分にそう言い聞かせながら、一つずつやれることをこなしていく。魔力を溜めこみ、炎のルーンを生み出す。放たれた炎はマリアの魔力が加味され、強い衝撃を生み出していた。
「確実に数を減らし、歯車騎士団を追い詰めていきましょう」
「とはいえ、悠長にしてられないのも、事実だからね……」
マリアの言葉に応える『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)。端的に言って、地の利は向こうにある。船の所有権的な意味もあるが、海での戦闘経験や数の優位性なども含めてこちらの不利は否めない。前衛の数が不足しているのも要因の一つだ。
「上手く巻かないと……ジリ貧になる前に、勝ちの目が欲しい、ね」
言って魔力を展開するマグノリア。聖遺物から生まれた魔力は戦場を覆い、敵の足を封じていく。マグノリアが生んだ魔力の大波は渦を巻き、その回転が歯車騎士団の体力を奪っていく。
「上手く波に乗れるといいんだけど……楽じゃないか」
相対するは一国の軍隊。その練度も強さも盗賊などとはけた違いだ。だがそれは自由騎士も同じこと。培った経験を元にして一気呵成に攻め立てる。
戦いはまだ始まったばかりだ。
●海賊船Ⅰ
そして砲撃を加えてくる海賊船『ザッツ・ナッティ・ベアード』号にも、自由騎士達は乗り込んでいた。
「みんなで力を合わせれば大丈夫だよ!」
『黒砂糖はたからもの』リサ・スターリング(CL3000343)は集まった自由騎士を前に勇気を振りしぼる。海賊は怖いけど、皆がいるなら何とかなる。根拠なくそう思えるのがリサの長所だ。常に前向きだからこそ、得られる未来もある。
「デザイアのみんなが奪われちゃったら大変だからね! 絶対に止めないと!」
船からの砲撃を止める為に海賊達に攻撃を仕掛けるリサ。揺れる船に足を取られながらも、しっかりと甲板に足をつけて一撃を繰り出す。一つ一つ確実に。焦ることなくリサは攻撃を積み重ねていく。
「流石に援軍が厳しいかな。隙を見せれば一気に攻めたいけど!」
「せやなぁ。海賊なんて臭い輩、早う駆除したいわぁ」
鼻を覆うようなポーズをとって『艶師』蔡 狼華(CL3000451)は嫌悪感を示す。安い挑発だがそれなりに効果があったのか、海賊の矛先が狼華の方を向く。その気配に笑みを浮かべ、武器を構えなおす。
「ああ、言葉わかるんか。猿ぐらいには頭ええんやね」
「ここぞとばかりに挑発を重ねるなぁ。大したもんだ」
狼華の挑発に苦笑するガラミド・クタラージ(CL3000576)。相手を足止めするのに効果的なのは確かなようだ。デザイアを海賊に渡さない為にもここで奮起せねばと気合を入れて銃を構える。
「オーケー。それじゃ、通信開始だ」
ガラミドはテレパスを用いて海賊船に乗り込んだ自由騎士達と連絡を取り合う。連絡を主体としながら、ガジェットボムを用いて煙幕を張って仲間を支援する。広範囲に広がる煙幕は下手をすると味方を巻き込むため、多様はできないのが難点か。
「また援軍が来るぞ!」
「へっ! 次から次へと湧いて出てくるなぁ!」
唸るように叫ぶ『血濡れの咎人』ロンベル・バルバロイト(CL3000550)。ならず者化山賊に見える虎のケモノビトだが、シャンバラ出身のネクロマンサーだ。今も後方から呪いを放ち、海賊達を呪っていた所である。
「よし、本日の呪術師は終了っと。武器ぶん回して行くぜぇ!」
そして魔力が切れたロンベルは意気揚々と片手用戦斧を手にして海賊達に向かっていく。元よりそう言った気質なのだろう。後ろから呪いを放っているよりも前に出ている時の方が楽しそうである。
「これが戦場の醍醐味だぜ! ガッハッハ!」
「そうだー! ガンガン殴っていくぞー!」
ロンベルの言葉に同意する『伝承者』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)。間違えて船に乗ったらここに来ちゃった、とばかりの顔をしていたが来てしまった以上は戦うのみ。幸い、敵には事欠かない状況だ。
「力比べなら負けないぞ! どりゃー!」
小さな体を十全に生かした格闘動作で海賊達を打ち払っていくカーミラ。背中全体でタックルをしたと同時に、頭の角を叩きつける様に頭突きを振るう。そのまま回転して足払いをして、バランスを崩した相手にしたから拳を叩き込む。
「まだまだ終わらないぞ、ぶっ潰れろー!」
「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHH!」
狂ったように叫ぶ『黒き狂戦士』ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)。ナイトオウルの視界に移るのはヘルメスの国に力を貸す賊共達。女神のすばらしさを理解しない愚か者に慈悲はないとばかりに狂気をぶつけていく。
「HEEERMEEEEEEESSSSSSS! DEEEEEEEEEEEAD!」
喉が枯れんとばかりの大声をあげるナイトオウル。寄ってくる海賊達を切り裂きながら、アクアディーネのオラクルを守るための盾となる。我が身は女神に捧げた者。ならば女神の加護を受けた者を守るのが我が努め。言葉なくその身が語っていた。
「GoooooooDneeeeeeeSSSS!」
自由騎士と海賊の声と剣戟。それが海賊船を支配していた。
●甲板Ⅱ
エスター後に乗り込んだ歯車騎士団と、それを止める自由騎士団。
その戦いは佳境に向かっていた。
「この戦いは父上と私が掲げる『全ての亜人が幸せに暮らせる世界』への第一歩。決して引けませんわ」
『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)は『戦乙女の弓』を構え、堂々と宣言する。魔力の矢を放つことが出来る弓だが、今は攻めよりも癒しに徹していた。傷ついた自由騎士達に癒しの術を施し、倒れる者を減らそうとする。
「前衛の皆様、すぐに傷を癒しますわ。ですから頑張ってください!」
言葉と同時に魔力を集めるレオンティーナ。亜人でありながら貴族の地位を得たロマーノ家。その誇りをレオンティーナも正しく継承していた。その力は守るべき民の為に。貴族の義務を果たすべく、研究を重ねた癒しの術が仲間を守る。
「皆で凱旋する。それまで倒れるわけにはいきませんわ」
「ナナン達を全員倒してからじゃないと進めないよーだ!」
『ひまわりの約束』ナナン・皐月(CL3000240)は両手剣を構えて歯車騎士団と相対する。ここから先は伊達も通さないという意思を込めて睨みつけ、剣を振るう。小さな体からは考えられない力だ。
「ガッと突っ込んで、ドカーン! っていくぞー!」
子供らしいナナンの外見通りの擬音だらけの言葉だが、振るわれる一撃は子供とは思えないほどの力在る一撃だ。烈風を思わせる衝撃を放って相手のバランスを崩し、その隙を逃すことなく両手剣を振り下ろして歯車騎士団を打ち倒す。
「ここから先は通行止め!」
「そうとも! ここから先は一人たりとも通さない!」
槍と盾を構え、『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)が歯車騎士団の前に立ちふさがる。この奥にはフリーエンジンを始めとした戦えない仲間がいる。彼らに手を出させやしないし、デザイア達を奪われたりもしない。
「かかってこい、歯抜けの歯車ども!」
そんな挑発に乗ったか否か。言葉と同時にナバルに殺到する歯車騎士団。振るわれる剣を槍で弾き、銃弾を盾で受け流す。たとえ自分が傷ついても、奥へと続く道は譲らない。足をしっかり踏ん張り、気合を込めて敵を押し返す。
「デザイアが救われるという前例を作るんだ。それはきっと、あの国にまだいる亜人達の希望になる!」
「かなりまずい状況だけど……ボクにできることをしっかりやれば……」
深呼吸をして落ち着こうと努める『笑顔のちかい』ソフィア・ダグラス(CL3000433)。歯車騎士団の勢いに怯えてしまうが、それでも自分自身に鞭を入れてこの場にとどまった。今逃げるわけにはいかない。そう言い聞かせて。
「行くよ……一つずつ、確実に……!」
目まぐるしく変化する戦況。その中にあって、自分に出来る事を拾い上げていくソフィア。癒しの術で仲間の傷を塞ぎ、敵が迫れば仲間に知らせる。小さなことかもしれないが、それが積み重なって初めて勝利への道が開けるのだ。
「なるべく……仲間と一緒に行動して……隙を作らないように……」
「わたしは皆をひっかきまわしますね」
『こむぎのパン』サラ・ケーヒル(CL3000348)は持ち前の素早さを生かして、歯車騎士団のグループに突撃する。一ヶ所に留まることなく走り抜け、そして交差の瞬間に切りかかる。呼吸するのも惜しむほどに走り続け、刃を振るう。
「デザイアの皆さんをお守りするための闘い……負けられません!」
歯車騎士団の攻撃を武器で受けるのではなく避ける。生まれた隙を逃さずに切りかかる。剣で受ければその分攻撃するために時間がかかるからだ。最短最速を目指して動き回り、そして斬りかかる。その速度こそがサラの武器。
「一人一人、確実に!」
「意地でも甲板は守り抜いて見せますわ……!」
ライフルを手にして『生真面目な偵察部隊』レベッカ・エルナンデス(CL3000341)は頷く。歯車騎士団はイ・ラプセルを敵と認識している。彼らが船の中に入れば、虐殺は避けられないだろう。ここで止めなくてはと銃座を握る。
「敵の数を減らさなくては!」
言ってライフルを構え、引き金を引く。すぐに弾丸を排出してさらに次の弾丸を撃つ。矢次に放たれる弾丸が戦場に次々と叩き込まれ、弾幕となって歯車騎士団を襲う。レベッカの銃撃は数で相手を圧倒し、その動きを封じていく。
「デザイアの皆様を守り切れればヘルメリアにもダメージは大きいはず……そう信じて、今は戦うのみですわ! 」
「他の騎士達は封じます!」
『その瞳は前を見つめて』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は海の言葉に弾かれるように動く。藍と桃色の瞳で戦場を捕らえ、甲板に居る敵全ての位置を把握した。好機を逃すまいとばかりに『藍花晶の杖』を振るう。
「や、やっと、奴隷にされていた人達が新天地に向かおうというのに、邪魔なんかさせませんっ」
ティルダの杖が振るわれれば、そこから白い鎖が戦場全体に伸びていく。形なき霊の呪縛は歯車騎士団の胸を通過し、そして金縛りの呪いを残して消えていく。シャンバラの魔女狩りが使っていた呪術師の技が、亜人を救う為に猛威を振るう。
「亜人をこれ以上奴隷扱いはさせたくないです。させないのですっ」
「ここから先は行き止まり……文字通り、貴方達のピリオドでございます」
『断罪執行官』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は一礼して武器を構える。武術家の呼吸法を用いて精神を沈め、その状態で闘気を高めていく。冷静沈着にして気炎万丈。穏やかな微笑みの中に、激しい怒りがあった。
「こちらをどうぞ」
歯車騎士団が動くより先にアンジェリカの手が動く。持っていたボール型のガジェットを投擲し、歯車騎士団のグループに投げ込む。ガジェットは激しい衝撃と同時に煙を吹き出し、敵の足を止めた。
「逃しません、行かせません、行動させません。満足に動けないまま力尽きなさい。諦めなさい、それが貴方達に許された唯一の道です」
「デザイア達が多く助かったら、ティーヌも喜ぶ筈だから」
イ・ラプセル本国で待つ王女の顔を思いながら『おうじょのともだち』海・西園寺(CL3000241)は気合を入れる。兄王エドワードの亜人平等政策。その考えのもとで助かる亜人が増えればイ・ラプセルの皆が喜ぶ。その笑顔を守るために、海は戦場に立つ。
「久しぶりの戦闘ですけど……」
熱気渦巻く戦場の空気に怯えることなく、海は銃を構える。狙うは敵指揮官の眉間。強く意識を集中させて狙いを定める。撃ち放たれた弾丸は歯車騎士団のキジン格闘家の頭に当たり、衝撃を与える。頭部もキジン化していたのだろう。とまれ、相手に一瞬のスキが生まれる。
「今です。一気に敵の指揮官を」
「ゴリラマッスル倒ス! 皆、元気にナル!」
『竜天の属』エイラ・フラナガン(CL3000406)は海の攻撃に続くように攻める。の指揮官を討てばこちらの士気も上がる。そして相手の士気も下がる。それは幾多の海を渡ってきたエイラの経験則。戦いたくなくとも戦ってきた、そんな彼女の経験則だ。
「強いの倒レる。皆落ち込む。落ち込まセる悪いケど。でも必要!」
敵の命令系統を崩し、士気をおとして死傷者を少なく戦いを終わらせる。エイラの言葉は的を得ていた。始まってしまった戦いを無理なく終わらせるために、『トーテムポール』を振るい魔力の矢を敵のキジンに叩き込む。
「オレ、ヤれる事スる。ソれ戦う事。エイラ逃ゲナイ」
「まだ倒れんよ……!」
積み重なる攻撃に膝をつく『ゴリラマッスル』。倒すには至らないが、その勢いを止めることには成功した。明らかに失速する歯車騎士団の攻め。
戦いの趨勢は少しずつ露わになってくる。
●船内Ⅱ
穴から入り込んだ海賊達は理性を失ったかのように略奪を開始する。
逃げ惑う亜人を見つけては捕らえ、力づくで奪い取っていく。
「ひどい……どうして……」
『決意なき力』アルミア・ソーイ(CL3000567)はそんな海賊達を前に蒼白になる。ショックを受けていたのは数秒程度。誘拐されそうになるデザイアの絶望の表情を見て、殺意と共に海賊に呪術を放つ。
「大丈夫……私は許される……死にたくない……死なせたくない……」
熱にうなされたかのように『バカでもわかる死霊術』を手に呪術を繰り返す。かつて自分が殺されそうになった記憶が何度も脳内で繰り返される。それは本の呪いかアルミア自身の心の傷か。目の前で人生を狂わされそうになるデザイアは、あの時の自分を想起させた。
「大丈夫……大丈夫……大丈夫……だから……」
「亜人の誘導など本来なら御免被るが……」
「皆まで言うな、ウィンリーフ卿。これも国の為だと分かってはいるのだろう?」
亜人を良く思わない『現実的論点』ライモンド・ウィンリーフ(CL3000534)の言葉を嗜めるようにガブリエラ・ジゼル・レストレンジ(CL3000533)が言葉を挟む。個人の思想はどうあれ、今やらなければならないのは避難誘導だ。
「無論だ。彼らがイ・ラプセル国民となり労働力の増加に繋がるのなら、国益には違いない」
「然り。ゆっくりロビイングしている余裕はないからな」
ライモンドからすればわざわざ亜人の為に動くのは業腹だ。だがそれが国の為なら動かざるを得まい。ガブリエラもそんなライモンドの思想を知りながら、しかし現状デザイアを誘導できる有能な人材を求めていた。
「命が惜しくば急げ! 荷は捨てろ! 揺れと足元は気をつけろ、己より背の低い者を潰してはいないか?」
ライモンドは背筋を伸ばして声を出す。大声ではない。はきはきとしたよく通る声だ。大事なのは声が相手の心まで届くか否か。そういう意味でライモンドは適材適所だ。政治家としてのポテンシャルを存分に発揮していた。
「注目! これから避難誘導を始める。我々は貴公らを見捨て引き渡すような真似は決してしない。ヒトとして尊厳を我らは決して貶めない!」
対しガブリエラは声を張り上げて威風堂々とした態度でデザイア達に語りかける。毅然とした態度でデザイアに語りかけ、イ・ラプセルはけして見捨てないと主張する。その言葉がデザイア達の信頼を得たのか、誘導はスムーズに進んでいく。
「ここにあなたたちの思う奴隷は、一人もいません!」
海賊達の前に立ちふさがる『悪の尖兵『未来なき絶壁』の』キリ・カーレント(CL3000547)。デザイア達を集めた部屋の前に立ちふさがり、海賊達の侵入を塞いでいた。ここから先は通さないとサーベルを手にして立ちふさがる。
「キリは大食堂前で海賊4名と交戦中です! 近くにいる人はお手伝いお願いしまーす!」
マキナ=ギアで通信をしながら海賊達と交戦するキリ。一人でどうにかできると慢心しない。失敗すればデザイア達の人生が狂うのだ。万が一にも下手は打てない。海賊達にカウンターを決めながら、不動の構えでキリは扉を守る。
「どんなに痛くても辛くても、守りきるんだから!」
「そちらは任せよう。私は海賊を一網打尽にしてくる」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は言いながらエスター号の構図を思い出す。二等室から一等室に繋がる階段。そこを昇ってくる海賊達を待ち受ける。ここを昇って攻めてくることは予測済みだ。
「わざわざ標的になりやすい地形に来るとは結構な事だ。聞いてくれぬとは思うが、ここで退いてくれれば追いはしない」
「はっ! 奴隷を前に引けるかよ!」
やってきた海賊に降伏勧告を進めるテオドール。予想通り受け入れてくれない海賊を前にため息をつき、『アルボス・サピエンティア』に魔力を込める。詠唱を短縮し、ジュz筒を解き放つ。呪いが階段に充満し、宣言通り一網打尽にする。
「忠告はしたのだ、従わなかった罪は自身であがなってもらおう」
「悪いけど、加減はしないわよ」
やってきた海賊達に『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は静かに言い放つ。既に何名かがエルシーに挑み、地に伏していた。エルシーの籠手は血に染まっている。どの海賊も、急所を突かれてそこから出血していた。
「これが、サンクディゼールのゴロツキ共に私が『緋色の拳』と呼ばれた理由よ」
言葉と同時に突き出された拳は、的確に急所を突いていた。孤児だったエルシーは、人さらいのような人を道具としかと思わない輩を許せない。普段は行わない急所攻撃を解禁し、確実に海賊達を仕留めていく。
「赤髭海賊団……許せないわ!」
怒りの言葉を放ち、次の戦場へと進むエルシー。
海賊達に奪われた亜人達は十数名ほど。適切な避難誘導と個々の戦術の結果、多くの亜人を守りぬくことが出来たといえよう。
●軍船Ⅱ
歯車騎士団の軍船『ミルクランチ』は激戦となっていた。
「予定していた援軍は!?」
「駄目です! どの船も迎撃、もしくは足止めされた模様!」
合流、もしくはエスター号を挟撃する予定だった船は全て自由騎士達に止められていた。ヘルメリアは今の戦力でしのがなくてはならない。
「また会ったな、ジェファーソン流!」
『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は軍刀を構えて敵の指揮官に戦いを挑む。一度刃を構えた相手だ。その太刀筋は理解している。背筋を走るのは武者震いか。名乗りを上げ、戦いを挑む。
「我が名はシノピリカ・ゼッペロン! イ・ラプセルの自由騎士としていざ勝負!」
「一騎打ち、っていうのも悪くないけど集団戦なんで横槍入れさせてもらうわ」
シノピリカの戦いに同席していた『機兵貫く魔矢』猪市 きゐこ(CL3000048)が笑みを浮かべて参戦する。フードの奥から相手を見ながら、どう攻めるかを思案する。持久戦もできなくはないが、やはり攻めるのが性に合う。
「やっぱり、相手のスタイルを邪魔するのが一番よね」
魔力を練り上げ、細く鋭い矢を形成するきゐこ。敵指揮官のスタイルは高い防御とカウンターだ。それが分かっているのなら手は打てる。構えを崩す痛みを伴った魔力矢を放ち、カウンターの構えを崩していく。
「高火力で押すだけが戦術じゃないわ! 状況に合わせて術を変えるのが魔術師よ!」
「まー、戦争だからな。やれることは何でもやらにゃならん」
きゐこの隣で癒しの術を施す『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。ツボミはむしろ治療術のみに特化している。やれることは多くないが、それだけヒーラーの需要があるという事もある。現に手を休める余裕がない。
「色々ケチってる状況はない。景気良くいくぞ」
戦況を見ながらツボミはひっきりなしに飼う服を続ける。この砲撃を止めなくては、エスター号は大きく迂回することになる。そうなればそのダメージも計り知れない。ここをどれだけ早く制圧するかが、要となっていた。
「しかし戦争の正義など信じちゃおらんが、自分の正統性とこっちの不当性を良くも叫ぶもんだ」
「戦争なんざ『正しい道を歩いている』とか思わないとやってられないぜ」
敵指揮官に銃弾を叩き込みながら、『竜弾』アン・J・ハインケル(CL3000015)はツボミに言葉を返す。戦争は日常と真逆の価値観だ。そこに『染ま』れば日常には戻れない。出来るだけ精神を保つために『正義』を掲げるのは傭兵でもやることだ。
「ま、俺は強い相手と戦えればそれでいいんだがね!」
唇を笑みに変え、アンは戦場を走る。戦いこそ人生。戦いこそ生きる理由。アンの戦うモチベーションは常に強い相手との戦いだ。酒やたばこでは得られない高揚感。強敵との戦いで得た勝利の酒こそ、アンの求めるモノだ。
「流石、ヘルメリア軍人。だがこいつはどうかな!」
「ここが正念場です!」
気合を入れる『戦姫』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)。デボラは後衛の自由騎士を守るために、我が身を盾として戦っていた。キジンの身体ではあるが、傷が痛まないはずがない。それでも気丈にふるまって笑顔を浮かべる。
「ここを凌げば、おじさまが褒めてくれます! ええ、テンションマックスです!」
自分に活を入れる為か、はたまた本当にそういう約束をしたのか。デボラの精神的支柱は折れそうにない。傷の痛みに足を止める事はあるが、それでも足が崩れる事はない。最後の最後まで立ち続け、仲間達を守っていた。
「皆様は必ず御守りします!」
「ええ。フリーエンジンにはお世話になったし、望むところ」
『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)は拳を構えて気合を入れる。今までフリーエンジンにはお世話になった。受けた借りを返す時だ。勿論フリーエンジンも戦力的な面で自由騎士に助けられたのでお互い様なのだが。
「――ここね」
ミルトスは相手の戦意をこちらに向けた後に自由騎士独特の構えを取る。ミルトスの体を敵指揮官のレイピアが襲う。受けた傷の痛みを脳内で記憶しながら。一瞬のスキを突いて拳を突き出し、相手から受けた痛みを返すよう拳の先端から衝撃を加えた。
「敵将、ライラ・ジェファーソン。討ち取ったり。――さあ、どうしますか?」
指揮官を倒したことを告げるミルトス。それによりこの船の歯車騎士団の戦意は大きく下がった。その勢いを殺すことなく自由騎士達は一気に攻め立てる。
十分な戦果を得た自由騎士達は急ぎエスター号に戻っていく。その途中で、迂回を開始していたエスター後に信号弾で合図を伝えた。慌てて回頭し、航路を戻す。
エスター号は最短距離でイ・ラプセルに向かっている。
●海賊船Ⅱ
海賊船『ザッツ・ナッティ・ベアード』号。そこにいるモーガンの元にもさまざまな報告が上がってきた。
「無理無理無理! あいつらめっちゃ強いやん!」
「まーけーたー!」
そのほとんどがエスター号から逃げ帰った海賊達の泣き言だった。モーガンは頭をかきながら『イ・ラプセルを侮ったか』とため息をつく。
「行くでござるよ!」
そんなモーガンに踊りかかる近接戦闘用の籠手を構えて、一気に海賊達との距離を詰める『南方舞踏伝承者』瑠璃彦 水月(CL3000449)。事ここに至って手を抜く余裕はない。相手が殺するつもりでくるのだから、こちらも相応の気迫をもって挑むのみ。
「……むむ、しまったでござる。銃はもってないはずなのでござるが……」
戦いながら小首を傾げる水月。銃を持っているかのような動きをしそうになって、思わず足を止めそうになった。いかんいかんと首を振って拳を握りなおす。敵の懐にもぐりこみ、全体重を乗せた一撃を解き放つ。
「さすが音に聞こえた赤髭海賊団でござるな」
「皆さん、頑張ってください!」
仲間を激励しながら後方から回復を行う『ラビットレディ!』ティラミス・グラスホイップ(CL3000385)。魔力の瞳で未来を見て、そこを基点に情報収集を行っていた。それを皆に伝達し、先手先手を打っていく。
「あっちから援軍が来ます!」
指さし、声をあげて情報を共有するティラミス。お腹に力を込めてはきはきした声で。右に左に手を振りながら、同時に回復と支援も行っていく。錬金術を駆使して仲間を癒し、そして戦いを支えていく。
「ニコラスさん、あっちの人を回復してあげてください!」
「へいへい。おじさんなんであまりこき使わないでほしいね」
呼ばれてため息をつく『帰ってきた工作兵』ニコラス・モラル(CL3000453)。元気があることはいい事だが、頑張りすぎて大事な時に力尽きては意味がない。そんな理由かどうかはともかく、少し脱力した態度で戦場に挑む。
「ま、裏があるって読んでいいんだろうな。ヘルメリアだもんなー、あの軍部だもんなー」
頭をかきながらニコラスはため息をつく。『上手くぶつかってイ・ラプセルが海賊を幾分か減らしてくれれば良し』あたりか。事実海賊船に攻め入っているのだから、苦笑するしかない。仲間を守るため、回復の魔術を行使する。
「ま、おじさんはやる気があるヤツを守るだけだ。頼んだぜー」
「男に応援されてもな」
ニコラスに声をかけられて、肩をすくめる『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)。できることなら美人に激励されたかったぜ、とおどけた後に二本のダガーを構える。向かう先は赤髭海賊団。自由を奪う海賊達に刃を向ける。
「自由を奪おうとするお前達を許しはしない」
ヨウセイであるオルパは、今のデザイアをかつて虐げられたヨウセイと同一視している。『聖櫃』に命を奪われるヨウセイと、ノウブルに酷使される亜人達。かつて自分達が救われたように、今度は自分が彼らを救おう。オルパは想いのままに強くダガーを握る。
「失せろ。デザイアを狙うなら容赦はしない」
「どうした! たかが一兵卒に恐れをなすとは、赤髭海賊団は腑抜けの集まりか!」
海賊達を挑発しながら『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)は武装を振るう。一番槍を務め、そのまま敵陣を占拠するように海賊達を一掃していく。その勢いもあって狙われることとなったが、それでも引くことなく海賊達を蹴散らしていく。
「貴様らのような輩が掲げるボスも、程度が知れると言うものだな!」
挑発を重ねながらアデルは槍を振るう。短気な海賊はその挑発に乗って矛先を向ける。レイピアを持つ敵の海賊幹部が割って入るが、それもアデルの狙い。名のある海賊を討ち取って、戦いの流れをこちらに向ける為に。
「ようやく骨のある奴が出てきたか。ここが勝負どころだな」
「そっちは任せたぜ」
短く言いはなちウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は前に出る。広範囲射撃で多くの海賊達を撃ち、その命を奪ってきた。そして機を見るや否や、海賊団のボスであるモーガンに接敵する。銃を相手の頭に突き付け、直接撃ち抜こうと。
「…………!」
怒りのままにウェルスはモーガンに挑む。ヘルメリアの手先なら敵だ。生かす理由も意味もない。殺意を隠そうとしないウェルスの攻撃はまさに鬼気迫るものだ。海賊全てを駆逐する。妥協も和平の道もそこにはなかった。
「やってくれるな、自由騎士。確かにここが潮時か!」
頭部から血を流し、モーガンが撤退命令を出す。これ以上の戦いはいたずらに消耗するだけだ。そう思わせるだけの勢いと実力が自由騎士にあった。亜人奴隷達を連れ帰った海賊達を収容し、回頭する。
これ以上船に残れば、エスター号には戻れなくなるだろう。自由騎士もそれを察して、自分達が乗ってきた船に戻っていく。
「彼らの人生を奪わせはしません!」
否、一人デザイアをできるだけ助けようと奮闘する『街のスカイダンサー』アリア・セレスティ(CL3000222)が海賊船に残っていた。捕らわれたデザイアを助けるべく刃を振るい、帰投する船に乗せていく。アリアの活躍で囚われたデザイアの数名は助かった。だが、
「きゃあああああああ!?」
海賊の怒りを買ったアリアは逃げ遅れ、抵抗できない状態で海賊達に捕らわれてしまう。彼女が逃がした亜人が受けるはずだった扱いを、その肉体と精神に刻まれていく。身を守るモノはなく、抵抗する力もない。海賊の劣情を小舟が嵐に飲まれるように受け続け。
アリアが発見されたのは戦いから数日後。海賊に逆らった者がどうなるかを示すかのような傷痕を残され、湾岸の小舟で忘我するように横たわっているのが発見された――
●1819年12月5日、水機戦争勃発――
いくつかの犠牲こそあったが、エスター号は無事にイ・ラプセル領海内まで逃げきることが出来た。湾岸に着くころにはフル稼働させていたエンジンも限界を迎え、長期メンテナンスが必要なほどにボロボロになっていた。
大陸に着いたデザイア達を受け入れる元シャンバラ民。歓迎の言葉に涙を流すデザイア達を見て、自由騎士は安堵の息を漏らす。
彼らの自由への一歩が、ここに刻まれたのだ。
エスター号出発と同時に侵攻したイ・ラプセル騎士団は、ヘルメリア南部の制圧に成功する。橋頭保を形成し、ヘルメリア侵攻の楔となった。
ヘルメリア軍もすぐさま防衛軍を編成。両国ともすぐに派兵しないのは、互いに民間人の避難を優先した為だ。結果、両軍はにらみ合いの形となる。
歴史としてはこの日に始まったヘルメリア国とイ・ラプセル国の戦争。歴史家はそう未来に伝えるだろう。その裏で自由騎士の働きがあったことは、非合法活動故に後世に伝わることはない。
だが、自由騎士に助けられたデザイア達とフリーエンジンは、その功績を知っている。
亜人の自由の為に奮闘した水の女神の騎士達のことを――
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
MVP
称号付与
『機腕を討つ者』
取得者: エイラ・フラナガン(CL3000406)
『亜人といえ民ならば』
取得者: ライモンド・ウィンリーフ(CL3000534)
『ヒトとして立つために』
取得者: ガブリエラ・ジゼル・レストレンジ(CL3000533)
『後発先至』
取得者: ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)
『献身の戦乙女』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
取得者: エイラ・フラナガン(CL3000406)
『亜人といえ民ならば』
取得者: ライモンド・ウィンリーフ(CL3000534)
『ヒトとして立つために』
取得者: ガブリエラ・ジゼル・レストレンジ(CL3000533)
『後発先至』
取得者: ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)
『献身の戦乙女』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
FL送付済