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Legacy! 赤熊の残り火達!



●赤髭海賊団の残党
 赤髭海賊団――かつては大海を二分する海賊団の一つであった。
 ノウブルに虐げられて行き場を失った亜人達を中心とした海賊で、今は亡きヘルメリアから非公式に私掠許可を貰っていたほどだ。様々な場面でヘルメリアに利するように略奪を行い、他国を苦しめていた。
 だが、赤い髭海賊団のモーガンはヘルメリア防衛戦で囚われ、死罪となる。彼のカリスマと強さで統一された海賊団は行き場を失い解散――とはならなかった。モーガンが略奪し、ため込んだ財宝。これを奪いとった者がいたのだ。
 エリオドロ・ロジャ。ヒョウのケモノビトだ。彼は元赤髭海賊団の生き残りをまとめあげる。主だった思想もなく、同時にどこかの国家に属さない彼らは一般人から見れば脅威でしかない。事実、彼らのテリトリー付近を通った者達は、暴力と略奪と言う手痛い洗礼を受けて逃げ帰ったという。
 勿論、国もこれを放置していたわけではない。警戒網を広げて彼らの配下を押さえ、その勢力を少しずつ削っていく。
 だが主犯格のロジャは既に彼らを切り捨てており、国外逃亡を図っていた。

●逃げる悪党達
「逃げるだぁ? ロジャさんよぉ、そいつはねーんじゃねーかぁ? もっと殺そうぜ、奪おうぜ、犯そうぜぇー、燃やそうぜぇー! コロ! ウバ! オカ! モヤ!」
 ナイフでザクザクと麻袋を刺しながら女は叫ぶ。ナイフが突き刺さるたびに麻袋の中からぐもった声が上がり、袋が赤く染まっていく。何度かそれが続くと声も聞こえなくなり、つまらなそうに女は袋を蹴って捨てた。
「そうだ、モーガンさんの敵を討つのではないのか! 正義の拳をイ・ラプセルの連中に叩き込まねばならぬのに!」
 腕を組んで追うように頷くのは、バッタのケモノビトだ。複眼でじろりとロジャを睨む。あまり睨んでいるようには見えないが。
「まあそう言うな。ヴィスマルクに行けば幾らでもヒトを殺せるぜ。当然イ・ラプセルと敵対するだろうよ」
 いきり立つ二人をいさめるように言葉を放つロジャ。大型の蒸気自動車の荷台に積まれたモーガンの遺産。金額にすれば相当な数のそれを手土産に彼らはヴィスマルクに亡命するつもりなのだ。
「お前らも異存はないよな?」
「はーい。マリアさんと同じ場所ならどこでもいいです」
「……ウッス」
「小生もカタクラフトさえ作れればどこでも構いませんぞ。かのギブソン氏に近づけるならなお良しと言った所でしょうな! 娘たちも同じ意見ですぞ」
「……は……い」「……ぁ……うん」
 返事を返す赤髭海賊団の残党達。彼らはイ・ラプセルの警戒網に引っかからないように移動する。『ロンディアナ』に荒らされたとはいえ、地の利は自分達にある。闇夜に紛れるように移動し、目的の湾岸までたどり着いた。
 だがそこに――彼らを止める為に自由騎士が待っているのであった。



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
EXシナリオ
シナリオカテゴリー
国力増強
担当ST
どくどく
■成功条件
1.敵の全滅
 どくどくです。
 戦後処理その三。書き忘れてましたけど、その二は【円卓の騎士】です。

 この依頼が成功した場合、イ・ラプセルの【軍事力】が200上昇します。また、失敗した場合、ヴィスマルクの【軍事力】が200上昇します。

●敵情報
・赤髭海賊団残党(×8)
 かつて存在した赤髭海賊団の生き残り。その中でもモーガンの隠し財宝を奪った一派です。赤髭海賊団内でも相応の実力を持っており、その遺産をヴィスマルクに渡して相応の地位を貰う予定です。
 捕まれば自分達がどうなるかは十分理解しており、また逃げる場所などない事は解っているため、降伏はしません。

『死の爪』エリオドロ・ロジャ
<Leopard(豹)>。ヒョウのケモノビトです。30代男性。8割ヒョウの軽戦士スタイル。鋭い爪で相手を切り裂きます。
『バトリングラム Lv3』『コンフュージョンセル Lv3』『ラピッドジーン Lv4』『影狼 Lv3』『リンドブルム』『スピードスタア』『サーモグラフィ』『サバイバル』等を活性化しています。

『今夜も月がきれいだぜ』マリア・メラス
<Lunatic(気が触れた)>。ノウブル。20歳女性。拷問大好き殺人大好き燃やすの大好きな燃焼拷問系快楽殺人狂。ナイフを使うガンナースタイルです。
『ハウンドブレイズ Lv3』『サテライトエイム Lv4』『ゼロレンジバースト Lv4』『スキルガンナー』『ドラグノフ』『腐女子』『アイアムロウ! 急』等を活性化しています。

『ライドオン!』オーブリー・ラパラ
<Locust(バッタ)>。バッタのケモノビトです。50歳男性。行き場を失った者達を受け入れたモーガンを絶対正義と崇めています。格闘スタイル。ちなみに蒸気自動車の運転手は彼です。馬はいないので、騎乗戦闘はフレーバー。
『震撃 Lv4』『龍氣螺合 Lv4』『影狼 Lv3』『明鏡止水』『テーマソング』『騎乗戦闘』等を活性化しています。

『隷属を望む』デニック
<Lark(ヒバリ)>。褐色の羽根を持つソラビト。10代男性。マリアに買われた奴隷です。(マギアスティームは全年齢!)な経緯よりイ・ラプセルの自由を拒み、マリアに付き添います。ヒーラースタイル。
『ハーベストレイン Lv4』『サンクチュアリ Lv3』『ノートルダムの息吹 Lv4』『聖別』『ブリギッテの祈り』『料理上手』『家政婦』

『竜戦士』ゴルドバ・ギグドズバ
<Lizard(トカゲ)>。トカゲのケモノビト。60代男性。戦場を求める元傭兵。言葉少なく、使い古された大槌を振るいます。重戦士スタイル。
『バッシュ Lv4』『バーサーク Lv3』『ウォーモンガー Lv4』『マルス』『ミートハンマー』『ヒートクックド』等を活性化しています。

『カタクラフト技師』ハーゲン・インゴルフ・ベットナー
<Laboratory(製造所)>。ノウブル。カタクラフト手術専用の技師。120歳男性。実用性よりも見た目の奇異さを重視する芸術肌。ガンナースタイル。
『スーサイドフィーバー Lv3』『バレッジファイヤ Lv3』『バーサーク Lv3』『スキルガンナー』『ドラグノフ』『スチームノウエッジ』『蒸気機関取扱技術 急』等を活性化しています。

『ベットナー五号機』ケイシー
<Lefty(左きき)>。ノウブル。10代女性。キャシーとは双子の姉妹の関係。ハーゲンの奴隷です。左腕を切断され、大男用のカタクラフトを移植されました。機械の腕を引きずるように移動します。防御タンクスタイル。
『ダブルカバーリング』『スティールハイ Lv4』『アイアスの盾』『叫びのオハン』『土下座 急』等を活性化しています。

『ベットナー六号機』キャシー
<Leg(足)>。ノウブル。10代女性。ケイシーとは双子の姉妹の関係。ハーゲンの奴隷です。両足を切断され、刺々しいカタクラフトを移植されました。機械の足で傷つかないようにに怯えながら過ごしています。防御タンクスタイル。
『インデュア Lv3』『バーチカルブロウ Lv4』『サクリファイス Lv3』『アイアスの盾』『叫びのオハン』『土下座 急』等を活性化しています。

●場所情報
 ヘルメリア島の湾岸。時刻は夕刻。足場や広さは戦闘に支障なし。ロジャ達が乗る予定だった船を探す余裕はありませんが、彼らも自由騎士を倒さないと確実に逃げれない事は承知しているので、逃げる事はありません。
 彼らが乗っていた車は、敵後衛のもう一つ後ろにあるものとします。
 戦闘開始時、敵前衛に『ロジャ』『マリア』『オーブリー』『ゴルドバ』『ケイシー』『キャシー』が、敵後衛に『デニック』『ハーゲン』がいます。
 予知がギリギリで間に合った形の為、事前付与は不可とします。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
5個  5個  3個  3個
13モル 
参加費
150LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2020年05月12日

†メイン参加者 8人†




「赤髭海賊団の残党か。……無視はできねぇよな」
 銃を構えて『機神殺し』ザルク・ミステル(CL3000067)は殺意を乗せた瞳で海賊団残党を見る。ヘルメリアが生んだ亜人達の悪党。思う所は色々あるが、このまま見過ごすという選択肢だけはない。ヘルメリア生まれの人間として、ここで終わらせる。
「汝らの頭目は既に斬首された。その後を追うがいい」
『重縛公』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)はヘンリー・モーガンの最後をはっきりと告げる。悪党の死を誇張するつもりはない。法の下に悪を罰する。それが当然であるのだから。貴族としてただ粛々と法を順守するのみだ。
「手を抜く余裕はなさそうですね」
 立ち出でる元海賊達を見て、『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は息を吐く。既に潰えた海賊の残党だからと手心を与えれば押し切られる。そんな気概が彼らから伝わってくる。
「ヴィスマルクを増強させるような真似は、させれません……」
 赤髭海賊団。ヴィスマルク。『献身の戦乙女』アリア・セレスティ(CL3000222)の心に鋭い動揺が走る。彼らから受けた痛みがじくりと心を蝕んでいた。息を整えて動揺を隠し、馴染んだ剣を手にして前に出る。
「海賊を火事場泥棒呼ばわりも奇妙な話だが……いずれにせよ、ここで終わりだ」
『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)が元海賊達を見る。散々手を焼かされた海賊の残党。彼らとの戦いもこれで終わりだ。油断なく敵との距離を測りながら、誰一人逃さぬと意志を込めて槍を構える。
「そうだな。追いかけっこもドンパチもこれで終わりだ!」
『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)も武器を構えて前に出る。ここで彼らを逃がしてしまえば、新たな火種が生まれることになる。そうなれば泣く者が増えるのだ。ここでしっかりとらえ、悲劇の種を摘むのだ。
「赤熊の拾って来た子達……戦力増強が最もだったかも、知れない、けどね」
 武器を構える元海賊達を見て『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は静かに瞑目する。ヘンリー・モーガンはもうこの世にいない。故に彼がどのような思いで彼らを仲間にしたかなど知る由はない。……どうあれ、彼らを見過ごすわけにはいかないのだ。
「そうね。赤髭海賊団がヘルメリアであぶれた亜人達の逃げ場になってたのは確かでしょうけど」
 拳を握って『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)が頷く。虐げられる奴隷人生の逃げ道として、赤髭海賊団が社会的に機能していたのは確かなようだ。だからと言って彼らの略奪行為を正当化するつもりはない。
「ここで追いつかれるか。あと一歩だったのにな」
 現リーダーのロジャは爪を構えて、愚痴るように呟く。交渉や命乞いが通じる相手ではない。時間を稼いでどうなる状況でもない。他の元海賊達も頭の殺意を察してそれぞれの配置についた。
 遠くで船の汽笛が鳴る。それが赤髭海賊団と自由騎士の戦いの合図となった。


「紙一重、でしたね」
 始めに動いたのはアンジェリカだ。先手を取って仕込んでおいた魔力により身体能力を増幅してロジャの先手を取る。驚きの表情を浮かべるヒョウのケモノビトの表情を見ながら、アンジェリカは武器を構える。
 平和を祈り、願い乞う。その想いの強さを示すかのように金色に輝くアンジェリカの武器。神の鉄槌を示すかのような鋭い一戦が、元赤髭海賊団に叩きつけられる。戦場を走る重い衝撃。アンジェリカは攻撃の後も油断なく海賊達に対して身構える。
「このまま押し切れればいいのですが、それが叶うような相手ではないでしょうね」
「だろうな。連中は背水の陣だ。追い詰められた獣が弱いはずがない」
 アンジェリカの言葉に頷くアデル。彼らにはもう後がない。生き残るために行われる抵抗だ。言葉通り、死に物狂いになるだろう。焦らずに、しかし相手に時間を与えずに。こちらが攻めているという意識を保ち、槍を握りしめる。
 呼吸を整え、戦場を見る。針の穴すら見逃さないとばかりに集中するアデル。交差する敵味方の動きを洞察し、後方に抜ける射線を見出す。一瞬生まれた後方への隙間を逃すことなく槍を振るい、回復役のデニックに突きを届かせる。
「誰一人として逃すつもりはない。犯した罪科から逃がしやしない」
「然り。国を超えて罪を消すなど、あってはならぬ」
 杖を構えてテオドールが口を開く。赤髭海賊団を受け入れるヴィスマルク。彼らがヴィスマルクに逃げれば更なる犠牲者が生まれるだろう。たとえ他国とはいえそれは許されざることだ。そしてそれは巡り巡っていつか自国に降り注ぐだろう。
 集中により魔力の回転速度を高めていくテオドール。鋭く、そして早く。呪力はテオドールの意思を組むように鋭く尖っていく。完成した呪力は黒く細長い矢の如く。解き放たれし一矢は真っ直ぐに敵を貫き、呪いを植え付けていく。
「生きる為。その足搔きを否定はしない。その上で汝らを許さぬと断言しよう」
「……そうだね。彼らは、生きようとしている。それ自体は、悪ではない」
 テオドールの言葉に静かに呟くマグノリア。亜人平等を謳うイ・ラプセルに彼らが生まれていれば、赤髭海賊団は生まれなかったのだろうか。自分達がもう少し早くヘルメリアを平定していれば……全ては仮定だ。意味などない。それでも、思ってしまう。
 魔力を展開し、手の平に集めるマグノリア。生まれたのは生命を活性化する紅い液体。魔力を操作してそれらを霧状にし、仲間達に散布した。体内に染み入った薬品は血液を通して肉体を活性化し、仲間の治癒力を活性化していく。
「僕は……彼らを止めるのが正しいのか、判断がつかないよ」
「連中が国の在り方で歪められたのは確かだからな。ヘルメリアの犠牲者だ」
 マグノリアの言葉に頷くザルク。ノウブル至上主義のヘルメリア内で亜人が生きるのが難しかったのは確かだろう。国家が繁栄していくにつれてその圧力も高くなり、赤髭海賊団のような集団が出来たのは、亜人にとって救いの道だったのかもしれない。
 それでも。そう言葉を継いだ後に銃を構えるザルク。集中は一瞬。狙いは呼吸と共に。撃ち放たれた弾丸が虚空に魔法陣を描く。魔力が込められた弾丸が魔法陣の起点となり、捕鎖の呪いを展開する。動きを封じられた海賊達を見ながら、ザルクはいい放つ。
「それでも、お前達はヘルメリアに協力したクズだ。俺にとっちゃ、始末すべき対象なんだよ」
「確かにこいつらは正真正銘のクソ野郎だな。……それでも」
 赤髭海賊団の面々を見てナバルは言い放つ。快楽殺人者にモーガンを信望する者に人命軽視のカタクラフト作成者。どれもこれも見過ごすわけにはいかない相手だ。彼らのような人間を受け入れるのが海賊なら、やはり海賊はあってはならない組織なのだろう。
 盾を構え、仲間の前に立つナバル。この盾に曰くなどない。強い魔力も伝説の力もないただの盾。それでも長く使い続けた戦友だ。その強さと使いやすさを信じ、ナバルは敵陣の前に立つ。仲間を守る。その信念を強く抱きながら。
「それでも、お前達を裁く権利はオレにはない。オレに出来るのはお前達を止めるだけだ!」
「そうね。ここから先は通行止めよ!」
 拳を構えて立ち挑むエルシー。そのまま真っ直ぐに敵に向かい、足止めするように動き回る。自分が絶対正義だというつもりはない。だが、自分の価値観で許せない相手を見過ごすつもりはない。その為に体を鍛え、拳を握るのだ。
 息を吸い、肺に空気を溜めるエルシー。敵に守られているデニックの位置を確認し、呼気と同時に体ごと敵に体当りした。突き抜けるような衝撃が背後のデニックごと相手を貫き、その勢いを殺さぬように矢次にエルシーは紅色の籠手を叩き込んでいく。
「陛下の頭痛のタネになるのなら、ここで殲滅するわ!」
「これで……!」
 愛用している双剣の片方が壊れ、もう片方の剣はタネが割れている。そのこともあってかアリアはサポートに回るように動いていた。翻弄するように動き回り、フェイント交じりの動きで虚実を混ぜ込み攻め立てる。
 強く剣の柄を握ってアリアは地を蹴った。一呼吸終われば、体内に新鮮な空気が染みわたり体は動く。足の速さを生かして戦場を疾駆し、伸びる刃を振るって戦場を支配するように展開していく。戦う原動力は、常に一つ。
「辛い思いをさせる人達を、増やすわけにはいきません……!」
 裂帛と共に刃を振るう自由騎士達。彼らの攻撃は回復役のデニックに向かって飛ぶ。戦術を鑑みれば彼を庇うのが定石だが――
「あははははは。マリアさんにはかないませんけど、痛いですねー」
 元海賊達はデニックを庇うことなく見捨て、攻勢に出る。デニックは多くの攻撃を受けて倒れ伏すが、その間に元海賊達は果敢に攻め入った。
「中々見事ですね……ですが!」
「陛下の信頼を受けた名誉将軍は簡単に負けるわけにはいかないのよ!」
「う、ぁ……!」
「くそ、まだオレは倒れないぞ!」
 アンジェリカとエルシーとアリアがフラグメンツを燃やし、ナバルが気合で意識を保って立ち尽くす。
「回復役を囮にした短期決戦か。破れかぶれの戦略だな」
「まともにやり合っちゃ、あんたらを突破できそうにないんでね」
 相手の戦略を看破するアデル。ロジャは笑い、そして攻め立てる。防御を捨てた攻撃特化戦略。捕まれば死ぬ彼らにとっては、取りうる選択の一つだ。全員生き残る必要はない。むしろそんな可能性は始めから捨てている。
 法と無法。相容れない存在同士の戦いは、まだまだ加速していく。


 赤髭海賊団は悪党である。
 船を襲い、人を殺し、そしてそれを営みとする。そんな集団が社会に受け入れられるはずがない。ヘルメリアがどうにか首輪をつけてコントロールしていたが、それでも自国の船を襲わない程度だ。
 海賊になった経緯は幾つかあるだろう。エリオドロ・ロジャやゴルドバ・ギグドズバのように亜人として差別された者、マリア・メラスやハーゲン・インゴルフ・ベットナーのように社会に適合できなかった者。デニックやケイシーやキャシーのように自由を得られなかった者。
 彼らは悪党だ。それは違いない。だが同時に、この世界に生きるヒトでもある。
 そんなヒト達に、自由騎士達は様々な想いを抱いていた。
「今の私たちの国なら、あなた達だって受け入れられる!」
 アリアはケイシーとキャシーに手を伸ばし、自由を掴むように問いかける。二人はその手に怯え、首を振った。
「当然ですよ。赤髭海賊団はイ・ラプセルに捕まれば縛り首。そして貴方はイ・ラプセルの騎士。立場からして信用できないのです。むしろ恐怖の対象だ。
 ああ、こういえば投降したかもしれませんね。『私が貴方を殺してあげる』『辛い奴隷から解放してあげる』……とね!」
「貴方は……貴方達がそう仕込んだくせにっ!」
 ハーゲンの言葉に怒りの声をあげるアリア。救われたい。だけど救われる資格はない。だから殺してほしい。奴隷二人のその表情を理解して、唇をかむ。
「彼女達を慰めたいのなら。騎士の立場を捨ててこちら側に歩み寄ればいいのです。いつでも受け入れますよ。貴女なら、大歓迎です」
「……っ! ふざけないでください!」
 ハーゲンの言葉に怒りの声をあげるアリア。彼らの元に向かえばどうなるか。それは身をもって知っていた。
「ふざけるな! お前が二人の幸せを奪ったんだろうが!」
 嗤うハーゲンにナバルが怒りの声をあげる。歪んがカタクラフトで自由騎士達の攻撃を受けるケイシーとキャシー。戦意に怯え、攻撃を受けるたびに恐怖に震えて。ナバルとは全く逆の『護る』意志。そうしないともっとひどい目に合う。そこから『逃げ』る為の防御。
「ええ、そうですよ。私が彼女達の腕と足を奪いました。それが何か?」
「何か、だって……?」
 ナバルはあまりのことに二の句が継げなかった。あれだけのことをしておいて、言葉に悪いという気持ちをまるで感じない。
「私のモノを私がどうしようと勝手でしょうに。盾を使いやすいように改造するのは当然のことかと?」
 モノ。盾。
 その言葉を聞いてナバルの怒りは頂点に達した。ベットナーに殴り掛かろうと――
「落ち着けナバル。お前が守りを放棄すれば戦線は崩壊する」
 アデルがそれを制する。ナバルが我に返ったのを確認し、攻撃を続けた。大槌を振るうゴルドバを押さえながら、ナイフを振るうマリアの注意を引く。二人の攻撃を受け流しながらどうにか立ち回っていた。
「キジンかよ。刺しても血が出ねーのは面白みがねーんだよな。オモ! ネエ!」
「つまらないのはこちらも同じだ。とっとと殺して終わりにさせて貰うぞ」
 マリアの叫びにつまらなそうに返すアデル。思想も何もない殺人鬼の相手を嬉々として行うような精神構造はしていない。仕事と割り切って黙々と槍を振るう。
「……そうか。では死ね」
 淡々と槌を振るうゴルドバ。こちらもこちらで面白みがない。奮われた大槌をギリギリのタイミングで回避し、そのまま槍を突き立てる。二人を同時に相手するのは厳しいが、ここを乗り切れば道は見える。
「流石にお速い……!」
「いや、そいつはこっちのセリフだぜ。何なんだよ、その動きは」
 ロジャと相対するアンジェリカは相手の動きに舌を巻いていた。とはいえそれはロジャの方も同じである。アンジェリカの方がスピードでは勝っているが、それも魔剣士のブーストがなくなればひっくり返る。
「全く。状況が状況なら仲間に勧誘したい所だ。どうよ、悪党に興味ないか?」
「お断りしますわ。そちらも大人しく降参は……いたしませんよね」
「まあな。そんじゃ、そういう事なんで死んでくれや!」
「そちらこそ。その魂がセフィロトの海に迷いなくたどり着くことを」
 わずかな会話の後に再開される二人のケモノビトの攻防。視線誘導を伴う動きで互いに翻弄しないながら、隙をついて急所に一撃を見舞う。まさにケモノ同士のやり取りだ。
「死ぬがいい、イ・ラプセル! 我らを拾い上げてくれたモーガンさんの仇だ!」
 怒りに燃えるオーブリーの拳。そこには赤髭海賊団の頭目を殺したイ・ラプセルへの恨みが込められていた。
「モーガン、ね」
 オーブリーの言葉にザルクは反復するように口を開く。奴隷システムから逃げ、行き場を失った亜人達。彼らを受け入れたのが赤髭海賊団と言うのなら、彼らもまた犠牲者なのかもしれない。それを思えば、オーブリーの怒りも理解はできる。ザルクもまた、故郷を失った者だから。
<メアリー事変>により故郷を失ったザルクは、もしかしたら傭兵団ではなく赤髭海賊団に拾われていたかもしれない。だが――
「ヘルメリアに尻尾振っている時点でお前らは俺の敵なんだよ」
 その未来はありえない、と否定するザルク。その事実を知れば、すぐに牙をむいていただろう。
「ならば我らは相容れぬ! この復讐の一撃を受けるがいい!」
「いいぜ、真正面から打ち砕いてやる!」
 ザルクは復讐を否定しない。ただ、相容れない敵の感情として認め、打ち砕く。
「ヘルメリアの奴隷システム。……あの子達も、その犠牲者……」
 エルシーは自分をブロックしてくるキジンの奴隷を見て小さく呟く。イ・ラプセルでも有名なエルシーを押さえる為に防御力の高いキャシーを宛がわれたのだろうが、実質的には捨て駒である。本人もそれを分かっているのか、震えるように構えている。
(奴隷として海賊行為を無理強いされたのか、最終的には自分の意思なのか……)
 目の前の奴隷達を見る限り、おそらくは前者なのだろう。選択肢などなく、海賊行為に加担しなければ死かあるいはそれ以上の辱めを受けたか。だがそれを証明する術はない。本人達が頑なに投降を拒む以上、保護しようもない。
「同じ孤児でも国が違うだけで、こうも違うなんて……」
 頼るべきものを失った孤児。エルシーもそうだったため、複雑な感情が胸を締め付ける。
「そうだね……。彼らは、この世界で生きようとした。それだけだ……」
 抵抗する元赤髭海賊団を見ながら、マグノリアも胸を痛めていた。
 彼らは悪党だ。それは擁護のしようもない。法から外れ、社会に順応しなかっただけの、それだけの存在。そのまま罪を重ね、そして社会の敵となった。故に法に属する騎士としては罰さなければならない。
「だけどその原因を作ったのは……亜人に対する差別で、この世界の厳しさで……」
 生きる。寂しさを埋める。誰かに認めれる。そんな事を許されなかった亜人達。それを作ったのはこの社会で、そしてこの世界だ。正しさを問うならそこを変えなければならないのに。彼ら犠牲者こそ、救われなければならないのに。
「罪を償う……そんな未来が、あったかもしれないのに……」
「かもしれない。だがそれは今は無理だ」
 きっぱりとテオドールは言い放つ。海賊達に容赦はできない。法の下に彼らは処罰する。
 マグノリアの言葉は理想だ。全てのヒトが平等に扱われ、そうなれば悲劇がなくなる。そうなれば赤髭海賊団のようなものは生まれなかったのだから。だが、現実はそうならなかった。
「現実は少しずつしか変わらない。それを無視して改革などできやしない。
 悪しき差別により生まれた負の遺産を排除しなければ、陛下の理想は達成できない」
 理想を掲げ、現実を無視すれば破綻する。一歩ずつ確実に進んでいくしかないのだ。その為に何が必要なのか。テオドールはそれを合理的に判断し、采配を取る。それが貴族の役割だと信じて。
「やれやれついてないぜ。あと一歩で逃げられるって言うのにな」
 呼気を整えながらつぶやくロジャ。自由騎士達の猛攻を前に疲弊していた。他の元赤髭海賊団たちも同じようなものだ。
 だがそれは自由騎士も変わらない。戦いの趨勢は、まだどちらに転ぶかわからない――


 回復役のデニックが倒れた元赤髭海賊団は少しずつ傷が積み重なっていく。
「ほいほい。おじさんやることはやるんで、後は任せたよ」
「皆さん……頑張ってください……!」
「亜人の集団など所詮愚連隊。燃え尽きろ」
 対してマグノリアとサポートのミズビトとノウブルを含んだ回復は自由騎士の傷を癒して継戦能力を高めていく。そしてノウブルの人形遣いが放つ炎が戦場に広がって行く。
 故に元赤髭海賊団は攻勢にならざるを得まい。死に物狂いの攻撃が自由騎士達に襲い掛かる。
「まだだ。むしろここからが本番だ!」
「く……! こんな攻撃で倒れるわけにはいかないんだよ!」
「ヘルメリアの問題は山積みでな。お前らみたいなクズに手間どる時間はねぇ!」
 アデル、ナバル、そしてザルクが猛攻を受けてフラグメンツを燃やす。特にナバルは防御役という事もあって、狙われる頻度は高い。
「……貴方達の経緯は調べたわ」
 事前に海賊団個々人の情報を調べたエルシーは、自らを塞ぐキャシーに告げる。皮肉な話だが、徹底された奴隷システムがキャシーとケイシーの経緯を追うのに役立った。海洋商人だった両親を赤髭海賊団に殺されて、その日のうちにハーゲンに四肢を奪われ――
「その後は、ずっと盾役に宛がわれた。……逃げる事もできずに」
 酌量の余地はあるかもしれない。ないかもしれない。少なくとも彼女達が赤髭海賊団を守り、守られた海賊たちが略奪を繰り返したのは事実だ。……そして今、イ・ラプセルの敵であるヴィスマルクに下ろうとしている。それだけは許されない。
「正義を語る気はないわ! 陛下の敵になるなら、ここで倒す!」
「そのまま寝てろ! もう戦う必要は無い!」
 傷つきながらなんとか立とうとするキャシーに向けて、叫ぶナバル。もうこれ以上傷ついて欲しくない。そんな想いが込められた一言。ただ打算や上っ面での言葉ではなく、同じ盾役として心の底から告げた言葉。生きていてほしいと願っての一言。
「ああ……。ああああ」
 信じたい。だけど信じれば裏切られる。相手は騎士で、自分は海賊で。彼女の表情と涙から、その気持ちが痛いほど伝わってくる。この盾はこんなに硬いのに、彼女を守ることはできないのだと痛感するナバル。
「ならせめて……!」
 血を吐くように言葉を放ち、刃を振るアリア。アクアディーネの権能なら殺すことなく捕らえることが出来る。心の底では解放されることを望んでいると言うのなら、生かして捕らえてそれからだ。上手くすれば情状酌量ぐらいは――
 海賊を許せるのか? 海賊の非道さを身に染みて知っているアリアはその鎖に絡まれる。誰もがアリアのように強い信念を持てるわけではない。殺され奪われ侵され、それをなかったことに出来るのか? 彼女達を許すという事は、自分が受けた傷をなかったことにすること。それを他人に強要することだ。それは――
(……いいえ、今は迷ってる場合じゃない!)
「許されるべきは、その二人だけでもないけどね……。いや、ただの感傷だ。気にしないでくれ」
 静かに呟くマグノリア。赤髭海賊団。ヘルメリアで生きる為に構成され、そしてヘルメリアで生きる為に国に恭順した海賊達。その行為は間違いなく悪だが、それでもそうしなければ死んでいた者達もいるのだ。それをだれが責められよう?
 イ・ラプセルが亜人平等を唱えなければ、マグノリアもああなっていたかもしれない。差別され、追い込まれ、そして時代に殺されていたかもしれない。目の前にいる海賊達は違った可能性の自分なのだ。だから――
「僕だけ、ごめん。でも、だからこそ――」
「そうだな。だからこそ加減はしない。自分がやることをはっきり自覚して、前に進むぜ」
 引き金に指をかけ、ザルクが叫ぶ。この引き金はヒトを殺す事。その意味と重さをしっかり自覚し、力を込める。引き金を引く。敵がのけ反る。引き金を引く。血が流れる。引き金を引く。敵が倒れ、人生を終わらせる。
 進むと決めたのだ。あの日、炎に巻かれてから。ヘルメリアを潰し、それで終わりだなんて都合のいい話はない。潰した国の未来。この国の未来。そこから逃げるつもりはない。銃は確かに、命の重さを伝えてくれる。
「ったく、復讐が終わっても楽できないな」
「戦争など泥沼だ。日常への絆を手放すなよ。それがお前を救ってくれる」
 愚痴るザルクにアデルが言葉を告げる。同じ傭兵としてのアドバイスだ。戦いばかりでは気が滅入り、そこから本当に抜け出せなくなる。平和な世界に戻る絆があるのなら、それを大事にしろ。
「……潰れろ」
 今目の前にいるトカゲのケモノビト。それこそ戦争から抜けられなくなった者の最たる例だ。戦い以外に己の価値観を見出せず、海賊まで堕した戦士。ああはなるまい、と心を律するアデル。戦う意味。槍を振るう意味。戦禍に立つ意味。それはもう、胸にある。
「潰れるのは貴様だ。自分の悪事を刻み、処刑台に向かえ」
「その通り。貴様らに生存の道はない。我ら自由騎士が来たのだからな」
 はっきりとテオドールが言い放つ。海賊達に未来はない。彼らが犯した罪、彼らが奪ったモノ、彼らが殺した命。それはもう戻ってこない。罪を犯した者を裁くのが国法だ。それが正しく施行されないのなら、だれが国を信じようか。
 解き放つ魔力が呪いに変わる。彼らも生きるのに必死なのだと、そんなことは理解している。それでもなお許すつもりはない。感情で法をゆがめる事はあってはならない。正しい基準で罪を裁き、海賊を終わらせるのだ。
「覚悟を決めよ。汝らの最後の抵抗、しかと受け止めよう」
「はい。全身全霊で貴方達の凶行を止めましょう」
 厳かに告げるアンジェリカ。満身創痍ともいえる状態だが、それでもその気持ちは変わらない。事の善悪を問うつもりはない。魂は救い、罪人を止める。ただ神の教えに乗っ取り行動するのみだ。
 一つ一つの動作を神に捧げるように。呼吸すること、腕を振り上げる事、一歩前に出て武器を振り下ろすこと。一つ一つの動作を意識し、信じる神に恥じぬように繰り広げる。故にアンジェリカの一撃は重く、そして鋭いのだ。
「すべて壊します。その魂に安息あらんことを」
 自由騎士の猛攻を受けて、一人また一人と元赤髭海賊団が倒れていく。盾役のキャシーとケイシーが倒れれば、瓦解速度は増していく。
 ロジャの爪がアンジェリカの意識を奪い、ハーゲンの爆弾がアリアとエルシーとナバルを戦闘不能に追い込むが、彼らの奮闘はそこまで。アデルがロジャを倒し、ザルクの銃がハーゲンを沈黙させた。
「オッケエエエエエエ! 最後か! 最後に死ぬのは私か! ゴカ! シカ!」
 最後まで残ったマリアが狂ったようにナイフを振り続けていた。降伏などするはずもなく、自由騎士を少しでも傷つけようと笑いながら襲い掛かってくる。
「地に伏せ。その狂気もここで終わりだ」
 テオドールが杖を構えて呪文を唱える。相手の五感と凍える魂を繋ぎ、その怨嗟を、恨みを、慟哭を伝える呪力。マリアがこれまで殺した魂が繋がり、呪いの針となって快楽殺人者を苛んでいく。
「おお、もう殺せなくなるのか! それは残念だな! ノカ! ダn――」
 最後の最後まで殺意を隠すことなく、最後の赤髭海賊団は力尽きた。


「んー。もふもふなのは一人だけか。……いやいや、仕事仕事」
 サポートに来ていたノウブルの魔剣士は、もふもふしているのがロジャだけなのに不満がっていた。だが仕事はてきぱきとこなし、戦闘不能になった元海賊を捕縛していく。
「これがモーガンの遺産か。結構ため込んでいたのね」
「ああ、間違いないだろう。これがヴィスマルクに渡っていたらどうなっていたか」
 傷を癒したエルシーとテオドールが彼らが乗っていた蒸気自動車を接収する。荷台の中には宝石を中心とした財宝があった。換金すればかなりの額になるだろう。世情が世情だ。戦争を続けていく以上、先立つ者はどれだけあっても足りないぐらいだ。
「全員生存……頑丈なのですね。彼らの生き意地と言った所でしょうか」
「俺としては全員殺しても構わなかったのだがな。どの道海賊は縛り首だ」
 連行される海賊達を見て、アンジェリカとアデルはそんなことを言う。二人はアクアディーネの不殺権能を用いず戦った。海賊達の命を奪っても構わなかった。だが悪運が強かっただけだ。彼らの死は、もう覆らない。
「……あの二人が五号六号という事は、他にも彼女達のような子がいるのね……」
「そうだな。奴隷協会が消えても、奴隷にされた者がいきなり助かるわけでもないってことだ」
 暗澹とした気分になるアリアに、ザルクが言葉を返す。ハーゲンに限らず、奴隷を戦闘用に『改造』したヘルメリア人は少なくない。ヘルメリアという国は滅んでも、ヘルメリアの過去が変わったわけではないのだ。
「……何処の国もヒトも関係無く笑顔になれる様にする……ナバル、この戦いの中でそれを貫けたのかな」
「…………わからない。だけどオレは彼女達を笑顔にすることは、出来なかった」
 以前別の戦場で言ったナバルの言葉。マグノリアにそれを問われて、首を横に振るナバル。最後の最後まで泣いていた奴隷の姉妹達。どうしようもなかったことだ、と割り切ることは出来るだろう。ナバルがどう受け止めたかは、彼だけが知っている。
「赤髭海賊団は有名すぎる。彼らのメンバーはもちろん、海賊に協力していた者も重い刑罰を与えなければならない。
 さもなければ、第二第三の大海賊が生まれかねない」
 流れる空気を察して、テオドールがはっきりと言い放つ。その名声、その被害。その関係者を許したとなれば、民は恐怖に怯えることになる。二大海賊の残党を許した国家。それは犯罪の温床となるだろう。つまり――
「『酌量の余地があれば、人を虐げても構わない』『悲劇をでっちあげれば、人を殺してもあの国は許してくれる』……そう思われてしまえば、法は無意味になる。
 ただの窃盗団や徒党を組んだ山賊程度ならいざ知らず、かの海賊団は無法の極みだ。ここで対応を誤れば法が危ぶまれる。禍根はここで立たねばならんのだ」
 ここまで話した後で、テオドールは背を向ける。ここから先は自分は関与しないと言いたげに。
「――とはいえ、法も無慈悲ではない。スカンディナ女史の例もあるしな。
 表立って罪科を許すことはできないが、懇願次第では何かしらの温情を貰えるやもしれぬよ」
 これ以上は何も言わぬよ、とその場を去っていくテオドール。貴族である以上、これ以上の言及はできない。
 他の自由騎士達も、それぞれの思いを胸に帰路につく。

 公的には――
 赤髭海賊団の残党の主要メンバー九名は今年五月をもって絞首刑となった。埋葬等は秘密裏に行われ、遺体がどうなったかを知る者はいない。彼らの生存を叫ぶ声もあったが、自由騎士達の知名度と活動履歴を前にそういった意見は沈黙する。
 活動を続けていた赤髭海賊団の残党達はロジェの死をもって完全に崩壊。頭目に見捨てられたという事もあり、抵抗は軽微だった。
 かくして二大海賊の一、赤髭海賊団をめぐる戦いは幕が下りる。この後、海は国同士の戦争の場となり、海軍列強の時代が訪れる。それに伴い、海賊の活動は少しずつ小規模になっていく。
 海賊時代の終焉。
 歴史家は、この戦いがその発端と位置づけるのだが、それは別の話――


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

どくどくです。
海賊達がどうなったかに関しては、想像にお任せします。

結構がっつり組んだつもりですが、攻略されました。防御タンク対策が割とがっちり組まれたことが理由でしょう。
「可哀想な防御タンクと回復を作れば、手加減してくれるに違いない!」……そんなことはなかったです。心情面はともかく戦略面ではガリガリ削られてました。
MVPはその辺りの対策を立てていたハビッツ様に。貴方がいなければ戦場は泥沼化していたでしょう。

ともあれお疲れさまです。モーガンの遺産は適度なタイミングで換金されて、イ・ラプセルの軍資金になるでしょう。

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済