MagiaSteam
ZippyZephyr! 氷上に響け風の饗宴!



●領主より
『エーテル石の再探査を行いたい。
 昨年7月に行った際ははっきりとした成果は上がらなかったが、エーテル石の通信範囲が広がる事は今後の戦場において優位に働くだろう。
 今の時期は湖が凍っているかもしれないが、だからこそ見えるものもあるかもしれない。
また、作業者の寒さを和らげるよう炊き出しを行ってもよいだろう。
――テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)』


●湖の捜索
 エーテル石。
 特殊な波を放つ石で、通常の鉱物と違い鉱山ではなく水が豊かな森林地帯で産出されるという特性をもっている。自由騎士達が遣うマキナ=ギアにも取り組まれており、主に通信などで使われる。
 問題点は採掘量だ。イ・ラプセルでは安定して採取が可能だが、やはり量が限られる。複数のエーテル石があれば波の出力も増し、より長距離により正確な情報の伝達が可能となるだろう。
 そして過日、ニルヴァンにおいてエーテル石を発見する。先の捜索により湖近くでの採取量が豊富だったことを確認した。追跡調査を重ね、森林を通った川が湖に合流する地点に白羽の矢を立てた。豊富な木々の成分と清らかな水との合流。そのバランス。そういったことを加味しての推測だ。
 そこに向かった採掘隊は――予想外の相手を前に転身することとなった。

●ペストマスクはかく語れり
「風の精霊だ」
『ペストマスクの医者』サイラス・オーニッツ(nCL3000012)の言葉に、自由騎士達は怪訝な顔をした。
「精霊と言っても力のないそよ風程度のモノで、害はない。基本的に気まぐれで自由を謳歌する存在なのだが、その分好奇心旺盛な所もある。
 どうもエーテル石の波長に興味を抱いたようだ」
 どういうことだ、と言いたげな自由騎士にサイラスは頷いて答える。
「精霊達はエーテル石を通じて『歌』を歌っているのだ。歌と言っても形式ばったなモノではなく、子供の楽器遊び程度のものだ。実害はないが、興味をもってしまいしばらく――時間間隔のない精霊のしばらくがどれほどのモノかはともかく――そこから動く様子はない」
 実際の所、これは問題とは言えないレベルである。武器を持って追いはらえばそれで済む。仮に襲い掛かられたとしても、そよ風の抵抗など歴戦の自由騎士からすれば児戯でしかない。が――
「風の精霊の興味を満たせば平和的に帰ってもらえる。歌に付き合うなり踊るなり、或いはこちらから歌や芸を見せたりすればいい。
 氷の上は寒かろうから、炊き出しもいるだろうな。料理作りなどに回ってもOKだ」
 要は風の精霊を満足させればいい。精霊が去った後にエーテル石を探ればいいのだ。
「私としては怪我人……精霊が怪我するかはともかく、そういったものが少ないに越したことはなくてね」
 平和的に解決できるなら、それに越したことはない。それは自由騎士も納得できた。
 さて貴方はこの申し出に――


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
イベントシナリオ
シナリオカテゴリー
資源発掘σ
担当ST
どくどく
■成功条件
1.風の精霊を楽しませる
 どくどくです。
 このシナリオは『シナリオ申請スレッド テオドール・ベルヴァルド(CL3000375) 2020年02月09日(日) 09:40:41』より発生しました。
 申請者の参加を優先するものでもなく、強要するものでもありません。

●三行でわかる説明!
 風の精霊がエーテル石で遊んでいた!
 精霊たちを満足させれば石を持って行けるぞ!
 がんばれ自由騎士!

 エーテル石捜索中、風の精霊が石を使って宴を開いていました。歌ったり踊ったり。喋れない精霊の音遊びです。
 風の精霊の興味を満たせば、満足してエーテル石から離れてくれるでしょう。満足させるのは歌や踊りだけではありません。様々な芸で満足してくれるでしょう。内容は問いません。
 また、お腹がすいた人の為に炊き出しをする係も求められています。精霊はものを食べませんが、他人が美味しそうにものを食べる様をみて喜ぶようです。
 それとは別に、氷上で遊ぶのもOKでしょう。楽しく遊んでいる様を見て、風の精霊も楽しそうに追ってくるかもしれません。
 行動は【1】~【3】をプレイング冒頭もしくはEXプレイングに書いてください。書かれてなければ察しますが、書いてくれると執筆の手間などの観点からどくどくマジ助かります。

【1】芸をする:風の精霊を楽しませるために芸をします。
【2】炊き出し:料理を作ったり、食べたりします。
【3】遊ぶ:凍った湖の上で遊びます。

●NPC
・風の精霊(多数)
 風の精霊。大きさ50cmほどの半透明な女性の姿をしています。宙に浮き、風のようにその辺りを舞っています。エーテル石の影響か、空気を震わせて情報を伝達することが出来るようです。

●場所情報
 ニルヴァン近くの湖畔。時刻は昼から夕方。冬季により湖は凍り付き、滑りやすくなっています。必要な道具や材料などは、常識的範囲であれば取り寄せてくれます。
 エーテル石があると思われる場所と風の精霊のいる場所はすぐにわかります。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
0個  0個  0個  4個
10モル 
参加費
50LP
相談日数
6日
参加人数
8/∞
公開日
2020年02月27日

†メイン参加者 8人†




 風の精霊が躍ると、音叉が響いたような音色が響く。子供が初めての楽器で遊ぶような、それでいてリズミカルな音。
「風の精霊か。パノプティコンのとは違うんだろうな」
 風の精霊を親に持つ『砂塵の戦鬼』ジーニー・レイン(CL3000647)は踊る精霊たちを見てそう呟く。あそこで踊っているのはそよ風で、ジーニーの親とは違うのだろう。最も、彼女自身親の顔を知らないのだが。
「よし、同じ姿になれば話もしてくれるだろう!」
 言ってジーニーは精神を集中し、一陣の風になる。親の特性を表に出し、風の精霊となったのだ。そのまま風の精霊に合わせて踊るジーニー。くるくると舞う踊りは小さな竜巻。そよ風だった精霊達は楽しそうにジーニーの風に乗り、舞っていた。
「これがパノプティコンの風だ! ははっ、楽しいか!」
「楽しそうですね、それじゃあ」
『その瞳は前を見つめて』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は氷を削って作った花を持ってくる。湖の氷を削り、細工工具を使って花の形に削り上げたのだ。手がかじかんで冷たいが、それでも形にずれがないのはティルダの腕前か。
「風の精霊さん、受け取ってください」
 ジーニーと風の精霊が舞う中に、ティルダは花を優しく投げる。風の舞で生まれた上昇気流に氷の華が乗り、キラキラと陽光を反射して煌めいた。七色に輝く氷花は生まれた音と相まって幻想的な光景を生み出していた。
「気に入ってもらえましたか? だったら嬉しいです」
 声は聞こえないけど、優しく頬を撫でる風が精霊たちの喜びようを示していた。


「素敵な光景ですね」
 風と氷の乱舞を見ながらセアラ・ラングフォード(CL3000634)は炊き出しの準備をしていた。川の水を汲んで鍋に注ぎ、火を起こす。凍った湖の傍は冷えるので、温かいスープは生命線だ。
「余ったお湯は貰いますね」
 炊き出しに使わなかった水を温めるセアラ。沸かしている間に茶葉を用意し、均等にそろえる。見ればお菓子を作ったりしている人も多いので、お茶も必要だろうと用意してきたのだ。紅茶の香がセアラの鼻腔をくすぐツ。
「風の精霊さんが運んできてくれたのでしょうか。だとしたら嬉しいです」
「心身共に温まって、捜索頑張りましょう!」
 鍋の火を管理しているのは『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)だ。様々な具材を用意し、万全の体制で鍋の前に立つ。アマノホカリから輸入した発酵物を鍋に入れて混ぜる。
「温まるといえば汁物。つまりうどんね!」
 なんでだ、とツッコむ者はここにはいなかった。ともあれエルシーは慣れた手つきで魚で出汁を取り、小麦粉を練って作った自家製麺を入れる。火の調整を怠らず、何度も鍋を掻きまわし――
「さぁ、エルシー特製のおうどんよ! あつーいうちに召しあがってね!」
 麺類になれていない騎士達はフォークを使いながら、エルシーのうどんを食べて体を温めていた。
「温まるならこちらもどうぞ~。アマノホカリのぜんざいですぅ~」
 隣の鍋では『食のおもてなし』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)が笑顔を浮かべていた。一度に込んで渋抜きをした小豆をアク抜きしながらさらに煮込む。手間がかかる作業だが、寒空の下でそれを苦とも思わずシェリルは行っていた。
「寒い時には、暖かいものと甘いものですよねぇ~。ゆっくり味わってくださぁ~い」
 甘味を増すために砂糖を加えながらシェリルは言う。小豆の煮込みが終わればぜんざいはほぼ完成だ。白玉を乗せて並んでいる騎士達に差し出す。適度な甘さが騎士達のやる気を増大させていく。
「これからも八千代堂をよろしくお願いしますねぇ~」
「カノンもお菓子を作るよ!」
 ダチョウの卵を手にして『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)が手をあげる。卵の天辺に穴を開け、中身を慎重に取り出していく。そのあと水を使って卵の中を洗い、牛乳などを卵の中に入れて、湯煎する。
「もしかして、精霊さんかな? 冷やすのを手伝ってくれない?」
 頬を撫でる風を感じるカノン。それを風の精霊と思ったのか、湯煎していた卵を冷やすように頼んだ。その願いが通じたかどうかはわからないが、十分に冷えた卵からできたプリンは絶妙な味わいだった。
「うん。甘くておいしい!」
 その笑顔を喜ぶように、静かに風が吹いた。


「ふむ、そうか。そうなんだね」
 風の精霊と対話を試みたかった『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)はスケートをしながら対話を試みていた。氷の上を踊るように滑りながら、肌で感じる風に話しかける。
「何処から来たの……そう、遠い所か。大変だったね……そうでもないのかい? ふふ、流石精霊だ」
 とりとめのない日常会話。何処から来て、どういうものを見て、何を感じて、何処に行くのか。自由気ままな風の精霊は人間のように移動する事が当たり前の存在だ。一ヶ所に留まる自分達との価値観の違いにマグノリアは始終驚かされる。
「そう。空を飛ぶ感覚は僕にはないからね。うん……そうか、羨ましいのかな?」
「皆、楽しんでいるようだな」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)はそんな様子を見ながら用意していた椅子に腰かけていた。障害があると聞いた時はどうなる事かと思ってはいたが、むしろ新たな幻想種との出会いの場となったようだ。計画立案者として、この上ない結果になった。
(――エーテル石の発掘はマキナ=ギアの強化につながる。より高精度の連絡が取れれば今後の戦いにもいかせるだろう)
 通信の増幅。それがエーテル石発掘の目的だ。戦争は苛烈だ。一歩間違えれば国が蹂躙されてしまうだろう。そうならない為にも、やれることは全部やらなくてはならない。今目の前に広がる平和を守るためにも。
「……いや、今はそれを考えるのは野暮か。どれ、私も精霊達を楽しませなければな」
 立ち上がり精霊達が躍る方に歩くテオドール。詩などどれだけぶりか、と思いながら音の輪に加わっていく。


 風の精霊との遊びはしばらく続き、そして一陣の風と共に精霊たちは去っていく。
 礼の言葉はなかったが、きっと楽しんでくれたのだろう。自由騎士達はそんな確信があった。
 そして精霊達が遊んでいた場所をしばらく捜索すると、エーテル石はすぐに見つかる。ここを基点に捜索を広げれば、より多くのエーテル石が発掘できるだろう。
 暫く後、マキナ=ギアの通信距離と制度は飛躍的に増加することになる――


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

 どくどくです。
 そよ風の精霊の宴でした。

 エーテル石は無事発見され、通信距離の拡大が成されるでしょう。
 申請して頂いたベルヴァルド様を始め、参加して頂いた皆様のおかげです。
 MVPは精霊に上手く話しかけていた方々に。

 それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済