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【オウル000】こんにちはせかい、さようなら




Hello world
Hello world
Hello world
Hello world
Heろ wあrど
はろーわーるど
はろーはろー。

せかいはおわります。
せんそうはもうみたくありません。
あらそうのはおろか。
おろかだから やりなおします。
こんどはもう
このせかいではヒトのはっしょうはきょひします。
しあわせで
やさしくて
ゆういぎな
せかい。
わたしのほうせき。
もうにどとにごらせない。

000
おうる。
00000000000
ぜろからやりなおしましょう。

こんにちは、せかい。
そして
さようなら。せかい。


 ソフ00により虚空にあいた大穴。
 そこから世界の裏側にいけると道化師は言った。
 穴からみえるのは遠い星空。
 あれは宇宙なのかと誰かが聞いた。
 ちがうよ。あれはあくまでも世界の裏側。呼吸もできればスキルを使う事もできると道化師は答えた。

 神殺しが遂行されたら、しばらくののちに穴は閉じると道化師は続ける。
 そこに、オラクルとしての概念とタットワの剣をおいて戻ってくれば、既知は未知の未来へとつながる。
 神殺しが終わればオラクルの力は不必要なものだからおいてこればいい。
 これからの世界にはもう必要はないから。
 そういって笑う道化師は老人のようだった。



 もし、もしも穴の向こうから戻ってこなければ?



 その問いかけに道化師は悲しげに答える。
 
 きみがのぞめばかみになりかわることもできるよ。

 神を殺しても純粋な魔道力という概念が大量にそこにはある。
 新しい神になりかわることが可能なほどに。
 ただし、新しい神がうまれれば、世界はホメオスタシスの呪縛を継承する。それは君が望む望まないとしても。
 世界は変わらず
 安寧と無変化の牢獄(らくえん)となるだろう。
 既知のまま、未知を得ることもなく停滞することになる。




 僕ぁね、できることならまだ知らない先の未来がみたいと思うよ。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
大規模シナリオ
シナリオカテゴリー
S級指令
■成功条件
1.創造神の撃破
たぢまです。
ラストバトルです。泣いても笑ってもの最終回です。
ここまでの集大成となります。

心情がんぶりバトルです。
とりあえずスキルはつかえますので、スキなように戦ってください。
戦闘プレにそこまで費やさなくても大丈夫です。
細かく状況わけしなくても攻撃はすべてダメージとして計上されます。

30ターン以内に倒しきれなかった場合と全員の再戦闘不能でゲームオーバーになります。世界は滅びます。

創造神にたいして大まかに
【拒絶】【肯定】【同情/哀れみ】
のプレイングを文節ごとに判定します。
明確にプレイングを希望のプレイングとして判定してほしい場合は文頭にタグをいれてください。
(内容は同情や哀れみが5割以上をこえているのに【拒絶】にはできません)
 例に上げている言葉以外でも3つのうちに分類されます。

文字数10文字につき1%、EXも含め最大40%のボーナスが攻撃力や効果にに加算されます。
文字数が多いほどに効果的になりますが
「どりゃあああああああああああああああ」などの同一文字での水増し、意味不明な文章や記号、AAによる文字数は加算されません。

【拒絶】(絶対に許さない/お前は世界に不必要/いらない/創造神のいない世界への展望など)
 最もダメージを与えることができます。(効果対象)その代わり全体への被ダメは大きくなります。

【肯定】(気持ちはわかる/世界は滅ぶべきなど)
 創造神の最大HPが下がります。(効果対象)そのかわり、防御力が大幅に上がります。

【同情/哀れみ】(つらかったんだね、可愛そうなど)
 上がった創造神への効果を打ち消します(効果対象)そのかわり、同情したPCのフラグメント減少が2倍になり、フラグメント摩耗死の確率があがります。
 この死亡の場合明確な死の描写はされません。

 創造神攻撃

 停滞 全体攻撃(防御無視)
    どこにいても効果がある大火力攻撃です。

 りろーど HPが80%削られたら一度だけ50%まで復活します。生命逆転に影響されません

 さようならせかい 単体攻撃 HPを9割削ります

 あらそわないで 全体攻撃 移動不可(移動して攻撃属性のスキルがつかえなくなります)パラライズ3 コンフュ3
 
 フィールド効果
 裏世界(エーテルの海)  毎ターンすべてのPCにランダムなランク3のBSとHPの10%減少が付与されます。

 アインソフオウル000000
 31T目の最初に発動。すべてを洗い流して世界をおわらせます。
 発動すればゲームオーバーです。
 

 特殊ルール
 レベル30以上で無料シナ以外のシナリオに参加経験のあるPCは
 すべてが終わった後裏側に残り神になるかを選択することができます。
 神になった場合は死亡として判定され、世界は未知をみることもなく停滞した牢獄(らくえん)となります。
 神になったPCの意思は溶け消え、魔道力を永久に生み出し続ける存在となります。PCは死亡として扱われます。
 【神として裏側に残る】のタグをプレイングとEX両方ににかき、EXに神として成したいこと(以下*を参照)、アニムス、または宿業改竄の使用にチェックを入れてください。
 どれか抜けていた場合は残らず戻ることになります。

 *
 EXに世界に1つだけなにを残すかを指定することができます。
 なにも残さないのであれば何も残さないと記入してください。
 停滞を止める、ホメオスタシスの呪縛をなくす。すでに死亡したヒトを生き返らせるなどは不可能です。
 状況はアイン0直後の世界観で固定されます。
 世界の名前を自分の名前に書き換える、創造神の名前を書き換える、喪われたアマノホカリの大地を戻す、タットワの剣を分解、融合してアクアディーネを復活させるなどは可能です。
 希望が不可能のばあいには何もなかったことになります。
 二人以上が希望した場合はプレイングで判断されます。
 二人以上が神になる可能性もあります。


 アーウィンとムサシマルは【拒絶】して攻撃しています。
 指示があれば【アーウィン/ムサシマル指示】でお願いします。

 クローリーはみなさんが戻ってくる時のために控えています。(戦闘には参加しません)。
 どういう結果になっても状況が落ち着くまでは生存しています。

●決戦シナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼相当です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『アクアディーネ(nCL3000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。

 皆様からのプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
5個  5個  5個  5個
3モル 
参加費
50LP
相談日数
9日
参加人数
59/∞
公開日
2021年07月29日

†メイン参加者 59人†

『明日への導き手』
フリオ・フルフラット(CL3000454)
『罪を雪ぐ人』
ステラ・モラル(CL3000709)
『平和を愛する農夫』
ナバル・ジーロン(CL3000441)
『未来の旅人』
瑠璃彦 水月(CL3000449)
『幽世を望むもの』
猪市 きゐこ(CL3000048)
『夜に咲く謀略の紅華』
誡メ・巴蛇・ヒンドレー(CL3000118)
『夜に咲く暴力の紅華』
咎メ・封豨・バルガー(CL3000124)
『stale tomorrow』
ジャム・レッティング(CL3000612)
『癒しの歌を奏でよう』
ビジュ・アンブル(CL3000712)
『教会の勇者!』
サシャ・プニコフ(CL3000122)
『祈りは歌にのせて』
サーナ・フィレネ(CL3000681)
『智を求める旅人』
ナーサ・ライラム(CL3000594)
『薔薇色の髪の騎士』
グローリア・アンヘル(CL3000214)
『おもてなすもふもふ』
雪・鈴(CL3000447)
『おもてなしの和菓子職人』
シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)
『鬼神楽』
蔡 狼華(CL3000451)
『イ・ラプセル自由騎士団』
シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『異邦のサムライ』
サブロウ・カイトー(CL3000363)


●ほしのうた1
 星が空を横切った。
「流れ星だわ」
 マザリモノの女は隣に座るマザリモノの男の異形の手に自らの手を重ねる。
「願いは?」
「明日が来ますように」
「そのために彼らは向かったんだ」
 男がそう呟く。
「そうね」
 女は微笑んで立ち上がった。
「どこに?」
「明日のご飯の準備よ。とっておきのごちそうを作ってあげる」
 明日などないかもしれない。二度と朝がくることはないかもしれない。
 それでも女は、明日を信じた。
「ああ、たのしみにしているよ」
 男もその願いに頷いた。


●310秒
 世界の裏側。
 概念で言うのであれば宇宙と呼ばれる空間に似たそこは、実際の宇宙とは異なる。
 濃厚な魔道力。
「っふ、すごい場所ね」
 『日は陰り、されど人は歩ゆむ』猪市 きゐこ(CL3000048)は濃密なその魔道力に息をはく。
 場所自体はすこぶる好みだ。自分自身にも魔道力が満ちてくる。
 ずっとここにいれたらどれほど楽しいだろうか?
 だが――。
 
 お断りだ。

 その思いはここにまでたどり着いた自由騎士たち殆どの想いと同じだろう。
 大きな青い球体に繋がる球体よりも大きな胎児。
 それが創造神という存在の姿だった。
 
 「アアアアアアアアア」

 むずがるように体を揺らす、その波動が自由騎士たちを打ち据えた。
 急ぎヒーラーたちは回復対応にあたる。
 自分たちよりも巨大な存在。
 個人個人の攻撃などささやかなモノでしかないだろう。
 絶望的なこの状態。
 だけど、だからこそ自由騎士たちはここにきた。

 残る猶予は310秒。
 世界を救うにはなんとも、なんとも頼りない時間だ。
 それでも彼らは神に挑む。

 争いがとまらないからすべてほろぼす。
 『一番槍』瑠璃彦 水月(CL3000449)
 なるほど確かにこの世界が彼のものであればさもありなん。
 瑠璃彦は頷く。哀れみの心でもって。
 誰よりも早く、創造神に達した彼は震撃でもって思いをつたえる。
 桶の水に虫がわけば全部すてて洗って新しい水を組み直す。それは自分でも当たり前のように行うそれだ。
 たったひとり。
 世界の外側で。
 相談するものもいなかったのだろう。永劫那由多の時間のなかで孤独。
 ただひとり理想に向かいひた走ることは武芸にも通ずる。
 それだけは同意できると瑠璃彦は思う。
 自分の攻撃が通じているようにはおもえない。それでも。
 水龍ノ吐撃
 瑠璃彦は臍帯を駆け上がり蹴撃する。
 せめて死が救済になるように、と。

 『おもてなしの和菓子職人』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)の主観においては自分は幸せだったと思う。
 でも此処数年で祈るだけではその幸せを守ることができないことに気づいた。
 フォーマルハウトを詠唱しながら思う。
 神様はきっと優しすぎたのだと。争いを嘆くほどに。
 「でも争うのは、譲れない事があるからなのです。
 わたしも、譲れない事があるので戦います」
 放つは炎の神。
「ご安心くださいあなたの宝物であるこの世界はきっとこれから見たことも無い発展をするでしょう。
ですからどうか、安らかにお眠りください」
 シェリルはこれがおわれば皆にお塩をきかせたおっきなおにぎりを振る舞うつもりだ。
 梅干しに鮭に、どんな具材をいれれば喜ばれるだろうか?
 その未来が訪れることを疑う余地はない。

 理不尽で子供を食い物にするようなこんな世界いつなくなってもいいと思っていた。
 神に祈ることはとうの昔に諦めた。
 祈ったところでお腹は膨れないのだ。
 それでも何かにすがりたかった。裏切られて憎んで、でも愛したくて。
 プライドは高いほうだ。裏切られるのは怖い憎むくらいなら憎まれる方が楽だ。
 そんな愚か者が『鬼神楽』蔡 狼華(CL3000451)だ。
 だからこそ愚か者のままでは終われない。
 激情のまま罵ったことがあった。
 後悔した。だけど謝ることもできないまま神と戦っている。
 だから。
 帰るのだ。
 謝るために。
 プライドなんてどうでもいい。ちゃんと、あの女に謝らなければ終わることはできない。
 踏み込むつま先は丁寧に。
 誰よりもうまく踊る。
 この戦場で。未来をつなぐために。

「絶対に死んでやらない 大事な人達が居た世界も消させない 何一つやるもんか!
この世界にオマエなんかいらない!
アタシ達にこの世界に、無責任なクセに口出しする奴……この世で一番邪魔な奴 アタシが殺す オマエは消えろ!」
 天哉熾 ハル(CL3000678)が紡ぐは絶対的な拒絶。
 ムカムカしていた。放置するだけしておいておもちゃを捨てるかのように消そうとする。
 そんなの学習してこなかった自分が悪いに決まっている。
 世界はおもちゃなんかじゃない。
 一人ひとりが心をもった命なのだ。
「気に入らないんだったら自分のやりたい様に最初っから造っとけっての! この大バカ野郎!」
 魔剣士としてのスキルが怒りにまかせて炸裂する。
 世界に気に入らないものだってある。
 だけど、家族に自分は生かされた。その思いを無下になんてさせない。絶対に。
 かんたんに、死んでたまるか!!
 食い尽くしてやる!
 ハルの倭刀・忠兵衛が神の魂魄をくらわんと襲いかかった。
 
 『イ・ラプセル自由騎士団』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は嫌悪していた。
 自分の思い通りにならずに癇癪をおこすこの赤子のような神に。
 親であるなら子供を見てほしい。それは幼い頃に失った両親をなくしたカーミラだからこその思い。
「争うのは愚か?
 私は騎士団でも一二を争う座学の成績の悪さだよ!
 それでも、今までみんなで築き上げてきたものを、手前勝手な理屈で消していいワケないってのは分かるよ!」
 これほどの怒りを感じたことはなかった。
 しあわせでやさしくてゆういぎ?
 カーミラは獣の力を開放する。
「馬鹿にするな!! 今この世界で生きてるのは私たちだ! おまえのわがままを押し付けるな!」
 出し惜しみなんかはしない。
 倒れても立ち上がる。
 英雄としての欠片は我が身に宿る。
 カーミラの家に伝わる秘技。
 カーミラの両親が、そのまた両親がと連綿と連なってきたこの技。
 正当に継承はしていないけれど。
 それでも。この技は絆。
 歴史を重ねたからこそ存在するその一撃。
「我流・神獣撃!!!!!!!」
 過去、現在、そして未来の為にカーミラは拳をぶつける。


 これで神様の戦いが終わる。
 長かった。
 セアラ・ラングフォード(CL3000634)はぎゅっと武器を握りしめる。
 自分にできることは回復することだ。
 あの創造神が何をするのかわかったものじゃない。
 状況を俯瞰し皆の状況を確認する。不安で胸が苦しい。
 だけれども。
 だけれども。
 脳裏を女神と国王の笑顔が浮かぶ。
 最初なんてきれいな二人だとおもった。そんな二人をたすけたかった。
 けれどもう、アクアディーネの笑顔は見ることはできない。
 自らに宿っている気配はわかる。だから――。

「ここまで来てあの大きさに小細工も何もない、持ちうる限りの全てをぶっぱなすぜ」
 『永遠の絆』ザルク・ミステル(CL3000067)は拒絶し、今まで何度撃ったかわからない、ガトー・フレデリックから継承したその技を放つ。
 彼が開発したその技はガンナーの系統樹に入らず誰にも継承されることはなかったそれを青年はつなげることができた。
 この技はザルクの誇りであり意思である。効くかどうかなどわからない。
 それでも青年は己が誇りで戦う。
 傍らには妻である『永遠の絆』エル・ミステル(CL3000370)。
 ザルクはこの場に来ることを止めたがエルはそれを良しとしなかった。約束があった。それについてはザルクとしても少々の嫉妬がないとはいえないが、この幼い見た目の細君は強情なのだ。なら全力で自分が守ればいい。かんたんな話だ。
「創造神様よ! あんたは俺たちを放置すればよかった!
 ヒトは愚かだよ、あんたがいてもいなくても争うだろうよ。
 そんで痛い目みるのもヒトの勝手なんだわ。
 いつまでも子供じゃねえんだ! てめえの始末はてめえでつける」
 何度も引き金をひく。創造神にダメージがどれだけ入っているかはわからないが少しだけ動きが鈍くなったとも思う。
「ヒトは悪い部分だけじゃねえよ。
 隣人を、家族を愛せるんだ」
 言ってザルクはエルの肩を抱く。
「ザッくんったら、もう。
 あたしはあんたの理屈なんかどうでもいいのよ。
 あんたを殺して呪縛から逃れて未来に生きるの。
 残された血族と、愛する伴侶のために」
 エルはエコーズを連発しながらまくしたてるとお腹を撫でる。それは二人の愛すべき未来。この子に明日をみせるために。
「そうだ!! 俺はエルエルと家族たくさん作らないといけないんでな!!!
 スポーツチームを5チームはつくってや……いてっ」
「ザッくんおぼえてないかもだけど私おばあちゃんなのよ?」
 口を尖らせ肩を抱く手をぎゅっとつねる細君があまりにも愛おしくてこんな状況なのにザルクの頬が緩む。
「色んな国を倒していろんな神を倒して、いろんなヒトをたおして、最期がお前だ。
 お前を倒してすべてがめでたしめでたしとはいかねえだろうよ。
 それでも、お前を倒さないとすべてが終わるのはたしかだ! そんなことにはさせねえよ!!」
 弾丸すべて撃ちつくそうとかまわない。未来のために。
「約束したのよ、我が友と。
 あんたを殺してあいつにヒトらしい終わりを見せてあげるの!
 あたしが先に死ねば花をもらって、あいつが先に死んだら花をあげる。
 そうやって命を紡いで、物語を紡いでいく。
 何度もやりなおしたあんたにはわからないでしょう。それでいいのよ!
 あんたは何もわからず知らないまま赤子のまま死ねばいい!!」

「ナナンね! ナナンの赤ちゃんをお父さんとお母さんに見せたいんだぁ! 
それから、おもちの赤ちゃんも見たいなぁ!  
ナナンがおばあちゃんになって孫ができたり、死んじゃう時も家族が元気ならいいなぁ」
 『ひまわりの約束』ナナン・皐月(CL3000240)は未来を夢見る。
 繋がる命。未来。
 誰かが誰かを愛する姿をみてきた。それはとっても素敵な姿でドキドキする。
 商人として大儲けしたらそのお金で街をよくして、皆が幸せ。
 他にもやりたいことはたくさんある。
 未来がなくなったらそれもできない。
 真っ白な未来はもう誰にも予知はできないけれど。
 それでも希望を目いっぱいに描くことはできるだろう。
「だからね、かみさま
 世界はなくなっちゃだめなんだよ!」
 満身創痍のその体で、ナナンはニッコリと微笑んだ。


 都合のいい神なんて存在しない。それはここまでの戦いで痛感した。
 『毎日が知識の勉強』ナーサ・ライラム(CL3000594)は唇を噛む。
 自分一人なんて小さな力だ。
 それでも世界に飲み込まれ無になるなんてまっぴらごめんだ。
 だから抗う。
 何度つかったかわらない氷の棺をいくらでもつくってやる。
 ヨウセイの少女の渇望は未来を学ぶこと。未来や新しいものにはきっと危険だってあるだろう。
 だからなんだ。変化のない安全で安寧な未来なんて希望の放棄にしかならない。
 考えることをやめて停滞することなんて望まない!
「不安定でかまわない! わたくしは変化を望みます! この先の未来が見たいのです!」

「アア。嫌、嫌嫌、先の見えない未来なんて! コワイ、イヤ嫌!」

 むずがる赤子は拒絶の言葉に涙を流す。

 怖くて嫌なのはこっちも同じですよ!
 実戦投入……初陣が「こんなん」って酷くないですか?!!
 ミウ・ムー(CL3000697)の初めての戦場がここだ。笑い話にもならない。
 だけど。
 「そんなこと言ってる場合じゃなかった! 私だって覚悟決めますよ!」
 いつか誰かに笑い話の武勇伝として話すために。
 前衛のひとみたいに勇気はないけれど、そんな前衛の皆さんを守るためにリバースドレインをつかいまくる。
 途中使いすぎてクラクラしたけど、気にしない。
 だって死にたくないから。
「私の幸福な未来のために! 第一に死なないように!! 
 死んだら全部おわりですからね!
 あー、今から生き残ってやりたいこと目一杯考えてやる!!」
 そうしたら、絶対に死にたくないっておもえるから。

 世界がなくなればおいしいおにくもなくなる。
 『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)は通常運転だ。
 だがしかしそんな小さな思いが生きるため戦うための理由になるのだ。
 たった数年。されど数年でサシャには守るべきものがたくさん増えた。泣いて笑って怒って。
 そんなふうにずっと一緒にいたいひとが増えたのだ。
 だから恵みの雨をなんどでもふらせてやる。
 世界には正しくないヒト優しくないヒトもたくさんいる。
 だけどそれ以上に幸せはたくさんあるのだ。
 それ故に、サシャは拒絶する。
 リセットすれば全部おしまいなんて馬鹿な話はないのだから!

 
 なんとも荒唐無稽。
 世界を守るために神の領域に足を踏み入れ神殺しなど、おとぎ話のようだ。
 戦うことは苦手だ。
 そのぶん、政治という形でこのイ・ラプセルという国の繁栄に今日まで尽くして来た。
 『国家安寧』ガブリエラ・ジゼル・レストレンジ(CL3000533)は回復の手をとめない。
「坊やも鉄火場は苦手だと思っていたのだがな」
「ババア……いやご老人には厳しいだろう。さっさと逃げ帰ってもかまわないぞ。もちろんそれは政敵の隙として使わせてもらうが」
 老婆の嘲笑を『現実的論点』ライモンド・ウィンリーフ(CL3000534)が軽口で返す。
「その言葉しかと覚えたぞ?」
 ライモンドは正直なところ、この老婆との言い合いが嫌いではない。
 政敵に回復されるのはまあ少々は思うことがないわけじゃないが助かったのは確かだ。
「世界が滅びるのを座してまつのか終わらないことを望むか。なんとも極論同士だな。
 まあ選ぶのは迷わず後者だが」
 三度攻撃を重ね、ライモンドは問う。
「あんたがやり直したのは戦争が終わる前から。
 なぜその先を信じなかった?
 生み落とした神々は滅びを目指した訳ではない。方法違えど目指したその先を見守ろうとすれば出来たはずだ」

「ムリ、ムリだめもう。同じ、これ以上すすめる、意味、まつ意味なんか、ない」

「これほどまで話の通じない政治家は……いないわけではないか」
 ガブリエラは視線をライモンドに向けて回復術式を練り上げる。
「そこで諦めるならもう終いだ。世界で生まれた数多の意思に委ね、自身は手放してしまった方が楽だろう。そう、アンタを滅ぼし未来目指す!!!」
 その視線にライモンドは舌打ちしてまた攻撃をしかけた。

 私にはやるべきことが有る。未来が閉ざされるなんて御免だ。
 『智の実践者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は闇に意思を接続する。
 結果が気に入らないことなどいくらでもある。
 畢竟、アレは拒絶を恐れているのだ。だからこその終末(ていこう)。
 何度も繰り返し疲れたのだろう。わからなくもない。
 ならば、手放してもいいのではないか?

「いやだ。 せつの、わたしの、ぼくの、われの、大切なたからもノ」

 テオドールはため息をついた。
「争いはよりよくあるための手段だ。進歩する心まで踏みにじっていいという理屈にはならんよ」
 我が子が大きくなったら、わがままに対してこんなふうにあやすこともあるのだろう。
 親の責務として、そうしてあげたいと思う。
「この状況が出来上がったのも必然なのだろう。きっと今が委ね手放す時なのだ。子離れする時のようにな!」


「嫌、イヤいやいやイヤ。
 もっていかないで。わたしのわれの、せつのものなのだから!」


 赤子の啼声は大きく響き、ダメージとして自由騎士たちを苛む。

 痛みを振り払うかのように、ガラミド・クタラージ(CL3000576)は立ち上がる。
 細かいことはわからないが、明日もうまい飯を食うためには、あいつをなんとかしなくてはいけないってことはわかる。
 残りは5分足らず。
 命運がそんな短い時間で終わるなんて笑い話もいいところだ。
「実験はたのしいよな」
 一回でうまくいかないこともある。だからひとつ条件を変える。そして生まれた結果から改善していく。
 そうやって、ヒトは、文化は、技術は洗練されてきた。
 失敗の結果も成功のための道程なのだ。
 だから。
 生み出したそれをなかったことにするのはノーだ。
 嵐を巻き起こす王は笑いながら断じる。
 要は責任だ。
 狩ったものは余さず食べるように。命は未来につなげる尊いものだ。
 それが狩人としての、錬金術としての矜持。
「リセットはかんたんだろうけど、そんなんじゃ宝石じゃなくてただの石っころにしかならないぞ」

 「チガウ、チガウチガウチガウチガウ! きれいに磨き直すのノ!」

 ガラミドはため息をつき武器を構えなおした。やり直しに付き合う気はこれっぽっちもないのだから。


 そうしないと世界が終わる、なら答えは一つしかない。
 『祈りは歌にのせて』サーナ・フィレネ(CL3000681)は迷わず体のギアをあげる。
 それは守るため。
 同胞(ヨウセイ)とそして、それ以外の世界に生きる生命のために。
 生命が生命としてそのすべてを全うできるように! 創造神を倒す。
 今は回復がたりないということはない。
 だったら、あのわがままな子供を叱りつけるときだ!
 自らに宿るアクアディーネの力。もしこれがなければ、アクアディーネ様に助けてもらわなかったらただの復讐者になっていただろう。
 でもそんなことにはならなかった。
 どうも、ありがとうというしかないとはおもっていてもやりきれない思いはある。
 その思いごと、サーナは戦士として戦う。

「奇遇ね。私もこの世界が嫌い。大嫌い」
 だから滅びていいと『キセキの果て』ステラ・モラル(CL3000709)が同意すればかすかに創造神の体躯が縮む。
「小さな小さなのぞみ。
 ささやかだった。すべてじゃなかったなのに。そんなものですら奪われるのだもの。
 ヒトを拒否する気持ちもわかるわ」
 私達は貴方の宝石を濁らせるものだから。
 その気持はわかる。ないものだって目を逸したけど、でも。
 それは隠すことのできないヒトの真価としての輝き。
 絶望して、それでも。
 愛するものに助けられた女は倒れた仲間に右手を向ける。
 この力は奇しくも、父親と同じ癒やしの力。
 戦うことは苦手じゃない。けれど、女は繋いでくれた命のために同じ道程を歩むことをえらんだ。
 お父さんなら、這いつくばっても生き延びてやるっていうのでしょう。
 だから――。
 その思いは自分が裏切ることを許さない。
 なんて重い責任。だけどそれが勇気にかわることを知っている。

「大丈夫ですか?!」
 『天を征する盾』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は回復手を守りながら戦線守り抜く。
 アアアアアア
 泣き喚く創造神がやけに憐れに思えた。
 かの赤子は実体化した神が世界を導くと信じた。なのにそうはならなかった絶望。
 何度も繰り返されたそれを真なる意味でデボラが理解することは不可能だろう。
 それでも、その思いが善意であったことは間違いはなかったとおもう。
 なんども同じことを繰り返す停滞。
 少しだけそのアプローチを変えることができたのならば。
 だけどそれはかの神のあり方を歪めてしまうもので、それが許せなかったのかもしれない。
 他にもきっと何かあったはずなのに――。
「うまく行かなかったからって世界を終わらせるとか冗談じゃありませんよ。 創造伸だろうが関係ありません。そこに意志ある者がいる限り、ダメなんです!!!」
 同情はする。
 だけど、未来が閉ざされてしまうことはデボラにとって許せないことだった。

 創造神の性質がその姿の通りであれば、生まれゆく世界が濁ったものであることを許せない、世界がこわい、のでありましょうか?
 『騎士を奮わす騎士』フリオ・フルフラット(CL3000454)はそう推測する。
「世界は怖い! けれど悪いものではない
 必死に守ろうとしてる私達がその証明です
 だから!うだうだ言ってないで生まれてみればいいのでありますよ!
「こんにちは」すらちゃんとしてないんですから!」
 フリオは赤子に手を伸ばすが振り払われ、膝をつく。
「駄々っ子でありますな」
 ならばと。
 全力で攻撃をしかける。獅子の進撃。
 六連の攻撃は自らを削るが仲間の回復は届いている。生きて帰る。
 世界を救って、仲間の犠牲を出さず、そして、私自身も生還すること。
 運命を超えて、未来を掴み取ってみせましょうとも。
 それがここまで生き残ってきた私の成すべきこと!!!!
 きしむカタフラクトが吹き飛んだ。
 だが戦意は決して吹き飛ばない。
 

 創造神だの世界だの! うん、難しくてわからん!
 『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)はいつだってシンプルだ。
 彼女がなしたいことはたった一つ。「守ること」
 自らと自らが守ることのできるもの。民、皆の昨日と、今日と、そして――明日。
 昨日と変わらぬ、けれど一つ前にすすむ今日。
 今日よりも楽しい明日。一つずつ積み上げることこそがヒトの未来。
 カタフラクトから蒸気が漏れる。
「ワシが成すべきはただひとつ!
 士たる者の務めを果たし、昨日を受け継ぐ!
 母たる者の務めを果たし、明日を形づくる!」
 みっつじゃん! と突っ込むのは無粋というもの。
「というかまだ母じゃなかったな! がっはっは~~!!」
 ならば生きて帰って血脈をつなげる為婚活だな!! そう言って立ち上がる戦士の瞳には絶望の色はない。
「わが道を阻むものはこの拳ですべて撃ち貫いてくれるわ!
 戦闘機動(コンバットマニューバ)! 鉄拳、起動!!!!!」
 シノピリカの豪腕が赤子の頬を打ち据えた。

 同じく未来を望むのは『全裸クマ出没注意報!』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)もだ。
 愛するうさぎちゃんとの未来の為、獣化した男はゼロレンジで射撃する。
 それが効くかどうかはわからないができることはこれだけだ。
 小さな力を束にして、青年は銃撃を続ける。
「何万回も世界を白紙化したなら、お前にとって、死は救済ってことなんだろう?
 ならお前を救済してやるよ! 虚無の海に頭まで浸かってな!!!」

 興味なんかなかった。
 無関心。否定もしなければ、肯定も、ましてや同情なんてない。『胡蝶の望み』誡メ・巴蛇・ヒンドレー(CL3000118)にとって、目の前の事象は災害とかわらない。故に言葉などはない。
「よくわからないけど姐さんが必要ないっていうなら必要ないんだとおもうよ」
 言葉を発するは『分相応の願い』咎メ・封豨・バルガー(CL3000124)。
「なくなれば、無。既知だけの世界であろうとどうせ満足できないのであろうから終わってしまうことが安然だろう」
 言って、誡メは嗤う。
「んん? ん? ん?」
 その言葉がよくわからない咎メはクエスチョンマークを顔に浮かべ、ぽんと手を叩く。
「つまり、ぶっころせば解決っすね!」
 その短絡的な言葉に誡メは口角をあげた。そうだ結局はシンプルな話である。隣の妹分はどこを殴ればいいのかと今度は悩み始めるものだから、くつくつと声を出してしまう。
「姐さん?」
「なんでもありんせん。それでいいでありんす」
「アタイは姐さんの武器だよ、さあ命令をおくれ!」
「思うがままに「壊し」んす」
「りょーかい!」

 この感情は拒絶。
 到底うけいれることはできない終わり。
 けれど悲しみに寄り添うこの気持もまた本物。
 揺らぐ気持ちに『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)は目を伏せる。
 こんな中途半間な気持ちで此処にいていいのかと何度自問自答しただろうか?
 銃弾の狙いがブレる。
 「私は」
 その言葉を発する自分は醜いと思うけれど、言葉は止まらない。
「私は……私は普通の女の子で居たかった!!」
 レティクルが創造神を捉える。
「美味しい物沢山食べて、気の合う仲間たちと一緒に馬鹿騒ぎして、大好きな帽子を作って、好きな人と温かい家庭を築いて可愛い子供達に囲まれて幸せだった! って笑いながら老衰で死ぬの!」
 それが彼女のささやかな願い。
 世界の終わりに自分のことばかり。
 でもそれは誰もが願う幸せだ。誰も彼女を責めることがないのに気づかないのはアンネリーザだけ。
「まだ、全部取り返せる!まだ私は普通の女の子になれる!
 だから、こんな所で世界を終わらせられちゃ困るの!! これが私の、わがままで自己中心的な本音よ!」
 乙女の弾丸は創造神の眉間を貫いた。

 『カタクラフトダンサー』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)のつま先がリズムを刻む。
 人それぞれに考え方が違えば意見も欲望もぶつかる。
 でもぶつかった後、より良い未来につなげて笑うことができるのもヒトだからこそ。
 零にしてしてやり直して制限をかけてそんな世界が幸せだとは思えない。
 アリシアは創造神を蹴り上げて睨みつける。
 アマノホカリみたく自分らもきえてしまうのはお断りや!
 今までとチガウ未来だってかまわない。
 そもそも、彼氏だっていないのだ!
 お姫様みたいに彼氏にあつかってもらってラブラブする未来があるはず……はずなのだから消されるわけにいかない。
 もちろんしんどいことは多くあるとしても、乗り越えてがんばることができるから。

 本当は怖くて仕方がない。
 だいすきだった友達はいなくなった。
 仲間はいるけど、泣いて逃げ出しそうなくらい怖い。
 キリさん。お願い。力をかして。
 『闇払う歌姫の声』秋篠 モカ(CL3000531)が祈れば心が暖かくなったように思える。
 彼女はもういない。だけどそばにいるような気がした。
 モカはこの世界が大好きだ。
 両親の愛、友人との思い出、支え合う仲間。
 辛いことがあっても幸せはその何倍もあった。
 「もし……人じゃなく神様がいなかったら、神の蟲毒がなければ争いでこんなに悲しい思いをすることはなかったかもしれません」
 モカのつま先が踊る。
 「だからこそ、今のこの世界を守ります。この先には幸せな世界があると信じて戦います!」
 たとえこの身が朽ち果てようとも!
 
 ノーヴェ・キャトル(CL3000638)とセーイ・キャトル(CL3000639)の二人は共に未来を目指す。
 二人の思いは全く反対のものだけれども。
「君がこの世界を作ったなら、まずはお礼を言わないとな!
ここまで来るのに色々あったけど、世界を作ってくれて「ありがとう」」
 セーイはまずはお礼を言いたかった。
 兄妹と出会えたのは世界があるから。
 ノーヴェのヒートアクセルに合わせてセーイは組み上がったフォーマルハウトを放つ。
「……かみさま……は……ともだち、が居ない……の、かな……。
私の、アナ……みたいなヒト……。
もしかしたら、セーイより、もっと大事……か、も……?……?……」
 おい! とセーイのつっこみが入る。少しは傷つく。
「ここまでくるのにいろいろあって、果たすべきことができたから世界の終わりにはつきあえない。ごめん」
 それはわがままだろう。
 しかしお互い様なのだ。
「かみさま……が、ひとりぼっち……だったから、世界、も……ぐるぐる……に、なったの、かな……?……?……。
ずっと、ひとりぼっち……は、私、は……つめたい……に、なりそう……。
そうなった、ら……私、は……かなしい……になる……」
 悲しそうなノーヴェの言葉にセーイはそうだなと思う。
「だったらさ、君が今度、人や生き物としてこの世界に降りて来るなら、その時は今よりもっとマシな世界を作っておけるようにするよ
いや、そうする!」
 セーイの紡いだ言葉(きぼう)にノーヴェはあたたかくなるのを感じた。
 そうしたらきっとかみさまはつめたい、じゃなくなる。
「まってる……よ」
 ノーヴェは創造神に手を伸ばした。

 
「お前が神か…なるほど…」
 カウンドダウン・ミッドナインド(CL3000699)は見上げつぶやいた。
 そして次の瞬間には創造神の眉間に居合彼岸花の花を咲かせる。
「ヘルメリア王国を作っておきながら、失敗なら捨てるだと?ふざけるな!
 俺だけならともかく、育て親や両親にイ・ラプセルなどの世界まで滅す身勝手な神めッ!」
 カウンドダウンの静かなる怒りはやがて激しく燃え盛る。
「俺はお前を【拒絶】するッ!」
 何度も彼岸花を咲かせ、カウンドダウンは反撃に倒れるが、運命に抗って起き上がる。
「別れを告げながら『争わないで』だと自分勝手な神め……」

「アラソイはいや、イヤイヤイヤ!!」

「見せてやる! 弱き者の最後の抵抗をなッ!」
 
  



●145秒

「創造神ってくらいだからさぞ強そうなのが来ると思ったらでっかい赤子か
 だが安心しろ。お前に興味はない」
 俺に興味があるのは力だと『強者を求めて』ロンベル・バルバロイト(CL3000550)は刀を振るう。
 一刀両断の剣閃を都度三度。
 開放された獣性はただただ力を振るう。

「イヤアアア」

 むずがるようにのばされたその手はロンベルを強く打ち据えた。
「わるくねえ」
 大きな力を振るわれヒリヒリするほどのスリルがロンベルを高ぶらせる。
 神に成り代わる? バカバカしい。
 興味があるのは力だけだ。世界平和なんてどうでもいい。
 したいことをするだけだ。
 骨はいくつか折れただろう。息と一緒に血液も吐き出す。
 ああいい、いい。
 ここからだ!
「きれい好きな神様よ。お前がうみだしたその集大成がお前を両断しにきたぜ?」
 ニヤリと血みどろの壮絶な笑みを浮かべた獣は走り出す。
 いてもいなくても変わらない無能な神を屠るため。

 何度もやり直したのだろう。
 都度悲嘆し絶望し――。それでも世界を作るとやり直しを続けた。
「それは俺たちが『優しさ』と呼ぶものなのだろう。
 その果が今のこの世界で、今の俺達がいて、そして――。彼女に出会った」
 それは感謝していると『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)は呟く。
「だが」
 アデルは愛用のジョルトランサー・フルロードを構える。
 随分とくたびれた相棒だ。
「たとえおまえから見れば箱庭(ビオトープ)のなかの出来事でも!!
 俺達の世界は、俺達一人ひとり、誰かが生きた営みを積み重ね、歴史を紡いできた世界だ!!!!」
 重ねるはバッシュ。ずっとずっと繰り返してきたそれだ。
「この世界は俺達のものだああああ!!!!!!!!」
 譲る気なんて欠片たりともない。
 貴様には感謝する。
 その上でアデルは神に叛逆するのだ。
 ランサーの撃発機構を立ち上げる。増量した弾薬は自らにもダメージを与えるだろう。
 それがどうした。
 これこそが神殺しの一撃なのだから。

 誰かに生きていいとか存在していていいとか、そんな事を決められたくない。決めさせない。
「ヒトがが神の手を離れるにはまだ早いのかもしれない!
 だけど滅びるも栄えるも、キメるのはこの大地にいきるカノンたちだ!」
 『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)は傷だらけになりながらも布都御魂で切りつけながら思いをぶつける。
「カノンはアクアディーネ様が好きだった」
 でももうその姿をみることはない。胸にやどる気配だけ。
「アクアディーネ様はカノンたちを信じてくれた」
 ヒトはもう神の庇護など必要がないのだと。それがうれしかった。
 認めてもらえたのだ。
 転んでも躓いても、これからは自分たちだけで起き上がらなければならない。
 それが誇らしかった。
 抱いた夢も、明日も、希望もみんな。叶えるのはヒトであるべきなのだ。
「だから!!!! カノンは貴方を滅ぼす!
 神様なんかもういらない!!
 アクアディーネ様が望んだのはそうやって生きていくことだと思うから!」
 叫べば胸が熱くなった。
 きっとこれはアクアディーネ様が背中を推してくれているのだと思った。
「滅神明!!!!!!!」
 カノンは力の限りに神の時代に終わりを告げる。
 

 思えば流されるままの人生だった。
 家を失い血族を介錯してまわり、いつかは自分が介錯される番だと願っても叶わず。
 「甲斐」なんて不確かなものを求めてふらりふらり。我が生を懸けるに値する甲斐はいずこにかきっとあると。
 そして『異邦のサムライ』サブロウ・カイトー(CL3000363)は見つけた。
 いや、すでにその手に有ったのだ。
 自分がイ・ラプセルで過ごした数年間。
 関係性、思い、全てがいつのまにか渇望していた甲斐になっていた。
 ならば、さようならば。
 あとは、斬るのみ!
 全身全霊、退くことなし!
 だというのに。
「いや、全然良いと思うんすよ。
分かる分かる。確かにこの世界クソっすもん。そりゃ壊したいしやり直せるならやり直したいっすよね、気持ち凄い分かるわ―」
 舐め腐った目の後輩である『stale tomorrow』ジャム・レッティング(CL3000612)は気だるそうにウェッジショットを放ちながらそんな事を言うのだ。
「汚い物醜い物ばかりじゃないって皆言うっすけど、アタシからしたら『だから?』の一言っすね」
「黙れ、後輩」
「いうて、先輩、ボクおかしなこといってますか?」
「言っている」
「どんな綺麗な風景も腐乱死体一つで台無し。樽一杯の汚水に一匙のワインを入れても樽一杯の汚水っすけど。樽一杯のワインに一匙の汚水を入れると樽一杯の汚水になるんすよ」
 ジャムは必死に言い返すがサブローの瞳は怒りを浮かべている。
 その瞳に自分の醜さが映っているようで、へらりと薄ら笑いを浮かべてしまう。
 そうだ、自分は最低なんだと思い知らされる。
「はは、マジにならないでくださいよ~先輩。
 ボクみたいなクズがいるから――」
「よし、ジャム後輩。俺はこの戦いのあとお前を押し倒す」
「は?」
「舐め腐ってるお前に。愛すべきジャム後輩よ。貴様の生はまっとうさせてやる!」
「うわっ先輩なにいってんすか? キモいっすよ」
「覚悟しろよ」
「しらないっす!!!」
 少しだけこんなクソな世界が続いてもいいとジャムは思った。


 傲慢・強欲・嫉妬・憤怒・色欲・暴食・怠惰。
 この世界では七罪とは呼ばれてはいないその7つの欲望によって、猪市 きゐこは形作られている。
 魔道こそすべてと思う傲慢、すべての魔道を統べるという強欲、より強き魔道に向ける嫉妬、ままならぬ魔道への憤怒。
 魔道をその身に浴びたいと願う色欲、魔道を食い尽くさん暴食、魔道以外を学ぼうとはしない怠惰。
 その7つの欲望こそがヒトであれば誰もが持つものである。きゐこはだれよりもその欲が強いと自負する。
 それを否定するということは自分が否定されること。
 否定するものは燃やすと決めている。
 そんな業火のような女がきゐこなのだ。
「ふんぞりかえって高い位置から暴論暴政してくるやつ輩が一番キライなのよ!!」
 きゐこの炎がいつもより燃え盛る。周囲の魔道力に反応したのだろう。
「だから死ね!!!!!!!!!!!!! 私のために!!!!!!!!!」
 そんな傲慢に仲間が笑う。さすが星影の美少女! なんていう野次まで飛んでくる。
 萎えかけた自由騎士たちの気持ちを持ち上げた美少女はぷんすこと憤怒する。


 本当は誰ヨりオマエがやり直シ一番嫌がテる違ウか?
 『竜天の属』エイラ・フラナガン(CL3000406)は真っ直ぐに問いかけた。

「アアアア、チガウ、チガウ! チガウ」

 それは肯定しているのとかわらない叫び。
「ジャあ、オレは否定スる。エイラが否定しテやル。
 オマエ間違ッテる。
 争ウは愚カ。ソレはソウかモな」
 劫火焔舞が煌めく。
「オマエはその過程モ否定すルのカ?」
 戦わずに済まそうと努力したものもいた。そりゃあ戦うもののほうが多かったとしても。
 一か零。
 世界は白と黒だけではない。混ざりあったグレーだってあるのだ。
 そのグレーを許諾できないそれこそが争いの元だとエイラが指摘すれば、激しい一撃がエイラを襲う。
 こほり、と血が肺から登ってくる。
「戦の大本。オマエのソユとコだ!!」

「アアアアアアアアアアアアアア!!」

 創造神は泣きじゃくる。
 それでもエイラは否定する。
「オレの母様、最後ニは狂ッテ全部壊しタけど。デも、ソれ迄の母様をエイラは否定シないし、さセ無い。
 でも、オマエの物言イ理屈ダと全否定サれる。だカラ認めナい。オマエのソれ我儘。
 何ヨリ優シく無い!優しく無い!」
 そう、美しく戦った、母のことは誰にも否定なんかさせない。

 

 残り時間は少ない。
 けれど諦めはしない。インディオの大地に吹く風。乾いた風。
 もう一度、マイナスナンバーのみんなと感じたい。
 『神落とす北風』ジーニー・レイン(CL3000647)の思いは強い。
 ヤ=オ=ガー!
 きいてるか?
 私に力を貸してくれ!
 もちろん私自身の力で奴を倒す気満々だけどよ!
 いまは猫の手も借りたいんだよ!!
 ヤ=オ=ガー。それは見えない精霊の名。部族が信じ続けてきたもの。
 創造神たちのように実体があるわけじゃない。
 それでも、心のよりどころなのだ。
 インディオたちが信じたプリミティブな力。
「ギガンティック・ストーム!!」
 少女はもうなにも恐れない。世界の敵が強大であってもやっつけるだけだ。
 開放されたインディオたちと楽しい生活をおくるんだ!
 絶対に! 絶対に邪魔なんてさせない!
 多く散った命の前に、少女は暴風となる。
 神をも巻き込む大きな、大きな風となる。

 ティルナノグの美味しいりんご酒、かわいい女の子たちとの出会い。もちろんクソみたいなことだってある。
 全部全部含めて、綺麗も汚いも全部含めて『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)の故郷だ。
 ミトラースを倒して、ヨウセイにとってやっと平和が訪れるとおもったのに。
 指先はもうぼろぼろ。下手したらもうハープがひけなくなるかもしれない。
 ハープは可愛いお嬢さんをおとすための武器なのに。
 まったくもって無茶な話だ。無理な話だ。
 だって神様だぜ? 俺たちを作った。
 なあ? こういうのがシナリオだったのかい? アレイスター・クローリー。
 道化師の立てた筋道がどうであれ、やるべきことは変わらない。
 アイツを倒したらきっとヨウセイにとっての平和が訪れるはずだ。
 だったら、指がちぎれても、命が尽きるとしても、やらないという理由には程遠い。
「なめるなよ。
 俺達にだって意地はある。
 そう簡単に、なかった事にされてたまるかよ!!!!!」
 爪が剥がれた。
 痛みなんてもう感じない。
 それでもオルパは攻撃をやめない。未来をこの手にするために。

 大切な方たちの命を守る。大好きなヒトとのこれから先の未来。共に歩むために。
「今までの出会いや思い出もなかったことにされたくはありません!」
 繰り返した過去で同じような出会いや思い出もあったのかもしれない。
 けれど、『天を癒す者』たまき 聖流(CL3000283)は今のこと思い出を愛しているのだ。
 繰り返す術式に脳は焼ききれそうになっている。
 けれど手はとめない。
 未来のために。
「私達が自然と共存し、少しでもお互いの希望に耳をかたむけあい、知恵と工夫であなたの知らない未来に繋がると信じます」

「シンジナイシンジナイシンジナイ」

「この世界にある魔導力の源が貴方なら、何故、私達を回復させるこの光はあたたかいのですか……? 世界が、その核が、あたたかいからではないのでしょうか? それを作った元になる貴方の性質だからなのではないのですか?」
 たまきの問いに創造神は答えない。
 耳を塞ぐ、目を閉じる、口を開かない。

 たくさんたくさん。
 醜いものはあった。
 いままでしらなかった醜さを自由騎士になって、神様が否定したかったものをたくさんみてきた。
 だけど、ロザベル・エヴァンス(CL3000685)の答えは違う。
 決してそれだけじゃない。助け合いもあった、おもいやりもあった。人の心の光がそこにあった。
「あなたもそれはしっているはずです」

「シラナイシラナイもう見たくない!」

 ふう、とため息をつく。
 心を閉ざした赤子はもう、こちらをみることはないのだ。
 ここまで繰り返した過ちを正すことができるのかどうかはわからない。
 でも一つだけ。
 大きな過ちを正すことはできる。
 世界の終わりから世界を守ることはできる。
 ロザベルはキッっと創造神を睨みつけると武器を構え踏み込んだ。

 ニコラスさん、キリさん。
 大事なヒトたち。あの人達の死を無駄にはしない。
 『おもてなすもふもふ』雪・鈴(CL3000447)は仲間を守る。
 一人たりとて殺させない。
「あなたが、神様……?
 あなたみたいな、身勝手なひとが、神様……?」
 神様というものはヒトを守るものだとおもっていた。自分は守られたことなんてなかったけど。
 そういうものだとおもっていた。なのに。
「ふざけないでください……!
 ぼくたちをなんだと思ってるんですか……!
 あなたに、なにがわかるっていうんですか……!」
 それはきっと怒りという感情。
 打ち据えられる攻撃は羽角をちぎり飛ばす。もこもこの羽はもうボロボロだ。
 だけれども、自分にできることが何かはわかっている。
「ぼくは、未来に、進まなきゃいけないんです!」
 ギリと噛み締めた口から鮮血が流れ落ちる。
 自らがどうなってもいい。未来を、未来を手にするんだ――!!
 

 『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)の魔道力は残りわずか。
 それでも目の前に立つ男(アーウィン・エピ)のために気合を入れるしかない。求めるのは彼との未来。
「作ったものが意に沿わんから壊すのも手を加えるのも普通だろうが」
 否定する要素はない。だからといってはい、そうですかと納得もできない。
「なあ、創造神よ」
 ゴクリとツバをのみこむ。
「私はな そこな男に惚れていてな」
 ツボミから指さされたアーウィンは盛大にずっこける。
「お、おい、バカ医者!!!!」
「黙れ! バカ患者!」
 最初はそんな関係だった。医者は嫌いと言われて嬉しかった。
「なんでかなんて知らん! 正誤も結果もなんもわからん!!」
 アーウィンもツボミも真っ赤だ。
 ついでに同じくそばにいた『薔薇色の髪の騎士』グローリア・アンヘル(CL3000214)も目を白黒させている。
「でも幸せなんだ。羞恥も恐怖も不安もある。けど嬉しくて温かいものなんだ」
 ツボミの言葉にグローリアもまた答えを得る。 
 そうだ。愛する心は幸せと同意義だった。
「この感情も大本をたどれば貴様が作ったのだ。滅ぼうが滅ぼそうがこれだけは貴様のおかげだとおもっている。
 ありがとう」

「ウウウウ、ウアアア、ヤメテヤメテ!! そんな、聞きたくない! きれいなものなんか! ない!」

「砂上の楼閣を作っては作り直す
 そんな手軽さで私達の命を、物語を、思いを勝手に終わらせないでくれ!
 私もこの男に惚れている!! 惚れた男の大切なものを守るのは女の本懐だ!!」
 グローリアは普通の女として育てられたわけではなかった。しかしアーウィンによって女としての喜びを教えられた。
 誰かを好きになると憎しみもあった。嫉妬もあった。妬みだって。黒い気持ちがいっぱいあった。
 グローリアだってそれが美しいものだとは思っていない。
 けれどそれは愛しい思いだ。それこそがヒトの輝き。
 愛という宝石なのだ。
「高みからみていたお前にはわからないだろう!
 ヒトの命の輝きが、どれだけ尊いのか、お前に教えてやる!」
 想いの行き先なんてどうでもよかった。ただただ、未来がほしかった。
 好きな男(あいつ)が笑っている未来。それが欲しかった。
 それがやっとグローリアが得ることができた宝物(あい)なのだから。

 君を殺し、アレイスターを消す。
 それが彼との約束。
 『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は自身にやどるアクアディーネの力を感じる。
 なんの力もない。
 弱虫で泣き虫な女神は自身に訪れるだろう結果を受け入れ、覚悟を決めて行動した。
 動ける様に「成長」したんだ。
「彼女はずっと君のことを案じていた」

「シラナイシラナイそんなのいない」

 生み出した彼ら神造の人形たちのことすら否定する彼に怒りを感じる。
 自分はアクアディーネとクローリー、そして仲間たちに心をもらい、変化した。
 「君は成長の余地を止める
 生命力を停止させる
    ……彩りを消す」
 それが許せなかった。
「僕は、彩りを世界に取り戻す!」
 二対の矢が創造神に向かった。

「ヤー、神様。
 アクアディーネちゃんやカダちゃんの親? つまりおじいちゃんみたいなもんね?」
 笑顔でビンタをかますのは『有美玉』ルー・シェーファー(CL3000101)。
 わかるーワカルーと何度も往復する。
 わかるからといって納得なんかはできない。思うようにならずに腹が立つのはこちらも同様。
 勝手に生み出して、はいさよなら。
 言わせてもらえるならマザリモノなんてなんでつくったのとかいっくらでも文句は湧いてくる。
 これはカダちゃんとウチの父親の分、アタシの分にアタシの分。
 苦しんだマザリモノの分、にそれと。
 殴る理由はいくらでもある。
「だから覚悟してよネ?」
 そういってルーは壮絶な笑みを浮かべた。

 不本意でもどかしい思いはわからなくはない。
 けれど、創造したからといって自分の好きにしていいという道理などどこにもない。
 『その瞳は前を見つめて』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は拒絶する。
 ないがしろにされたことが、許せなかった。
 ミトラースと同じことが繰り返されて。
「わたしはそんなの認めない」
 ふつふつと湧く怒りは呪術に紡がれていく。
 誰がどう思おうとこの世界が好きだ。
 続く世界を寿命の続く限りに見ていきたい。
 きっとヨウセイだって認められる世界になっていくはずだから。
 親友だってとりもどした。
 楽しい未来が待っているはずだから。
 それを邪魔するのであれば自分たちを生み出した神だとしても倒してやる!
 ただひとつ。そこにアクアディーネ様がいないことが悲しいけれど。

 争うのは愚かだ。
 そのとおりだとおもう。
「だけどさ」
 と『水底に揺れる』ルエ・アイドクレース(CL3000673)は続ける。
 誰もいなければ争いはおこらないじゃ困る。
 不公平で理不尽で愚かな世界だって嫌ほど知っても、俺は生きたいって思って今まで生き抜いてきた。
 この世界が好きかと問われればなんとも言えない。
 でもこの国は好きだ。
 未来へと続いてほしい。
 全力で魔剣をふるいながらルエはヌードル好きのあいつと食べ歩きをする未来を描く。
 きっとそれは楽しいはずだ。
 だから倒す。
「それに、変化も悪くないものさ」
 きっと創造神はそれを恐れていた。変わらない繰り返しに絶望しながらも変化のなさに安心してきたのだ。
「変化っていうのは成長なんだ」
 世界が変わって……それは喜ばしいけれど。この胸にやどるアクアディーネさまと完全にお別れするのは寂しいなとルエは思った。

 物語を紡ごう。
 『ウインドウィーバー』リュエル・ステラ・ギャレイ(CL3000683)は常に物語をもとめてきた。
 今までのオレたちの歩みが正しいものだとは言い切れない。
 それでもその紡いだ物語はあくまでも自分のものであることは間違いない。
 だからオレ達の物語を取り戻し、その続きを紡いでいくために神に戦いを挑み、乗り越える。
 ギアを上げた体は軽い。
 傷だらけでもまだ動ける。バトリングラムで貫けるまでなんどでも殴ってやる。
 限界なんてきにしない。
 今自分自身がこの物語を紡がなければ終わってしまうから。
「この世界を作ってくれたあんたには感謝している。
 それでも、この世界はあんたのおもちゃ箱じゃない。
 オレたちが生きるこの世界を、否定なんかさせない!」
 此処でエンドマークだなんてそんな中途半端な物語は面白くなんてない。
 オレたちの物語はもっともっと面白くなるのだから。それを見せることができないのが残念だ。

 もしすべてが巻き戻れば。またおかあさんとおとうさんがかえってくるとしても。
 わたしはもう戻れない。こんな姿みせれないから。
 『復讐を終えた死霊術師』アルミア・ソーイ(CL3000567)はやり直しを拒絶する。
 戦争はイヤ。身を裂くような思いは当事者しかわからない。
 傍観者の貴方にはきっとわからない。
 苦しくても切なくても辛くても生き延びてしまった。
 この苦しみはわたしだけのものだ。
 それを今更やり直し? バカにしているにもほどが有る。
 アルミアは死を拒絶する。
 創造の神を拒絶する。
 生きていたいから。弱虫でも、ひどいめにあってもそれでも。
 最悪はもうみた。どん底もみた。
 あとはもう幸せになるだけなのだ。
「だから、わたしがしあわせになるために、あなたを倒す。
 しあわせにしてくれない神ならば、そんなものはいらない」
 それはアルミアの強い思い。身勝手なヒトだとおもうでしょう?

「アアアアアアアア!! モドス! もどす!!」

 取り乱す創造神にザマをみろ、と思ってやった。

 先手必勝!!
 リフレクトを起動した『英雄は殺させない』マリア・スティール(CL3000004)は不敵に微笑む。
 最初の自由騎士。
 世界のために最初に手をあげたのは自分だ。その自負はある。
 マリアは未知を求めた。

「ヤメテ、もう、おわり、おわるの」

「うるせー! しらねー!
 確かにオレ達の世界は濁ってるって言っていいかもしれねーけどよ
 好き好んで濁った訳じゃねー、生きたかっただけでそれは純粋だッ!」
 それは彼女の魂の叫び。
 猛攻に耐えきれないかもしれないけれど。
 それでも。
「濁ったものしかつくれねーオマエが濁ってんだよ!!
 オレらが勝ったらそういうことにしてやる!!」
 だってよ、万一ここで負けてやり直しなんてあったらオレらがここまでくるのに喪われた全てに申し訳が立たねえだろうがよ。
 ダメージは重い。
「メンツだけかよ、ってそのとおりだ! オマエみたいにメンツがねーからやり直すやつにはわかんねーだろうな!」
 そのダメージをまるごと返してやる。


 『不屈の癒し手』ビジュ・アンブル(CL3000712)の選んだ答えは拒絶。
 そろそろムリをしてきたカタクラフトの拒絶反応はピークを迎えるだろう。
 自分には時間がない。
 創造神様の境遇もお姿も、思う所はある…。
 が、やるべき事がある今、受け入れるコトは出来ない。
 戦闘なんてやったこともなかった。自分はあくまでも神殿音楽隊でしかない。
 しかし自分は後輩の思いを継いだ。できることは癒やすこと。
 自らの手で後輩の敵を討つなんてことはできないがそれでもこの場所にたった。
 意味を求めて。
 カタフラクトから限界を表すように蒸気が吹き出る。
 ごとりと片足がおちた。
 けれど回復術式はまだ使える。
 この戦いが終わればきっと両の足は使い物にならなくなるだろう。
 それでも構わない。
 ちぎれた足を破壊神にぶつけてやった。爽快な気分になった。
 自分はキリが信じた未来のために戦う。
 こんなボロボロになってしまったのでは音楽隊のジズと先生に大目玉を食らうだろうが。
 そんな未来も悪くないと思うのだ。

 仲間を守り続けた『白騎士』アダム・クランプトン(CL3000185)もまたボロボロだ。
 だがその傷は誇りの傷。
 不遜かもしれないが、一人っきりのあの赤子と話がしたかったと思う。
 もっと感情をぶつけ合うことができたなら状況は変わっていたのだろうか?
 それは創造神含め誰にも答えをだすことができない。
 だから、通じなくてもアダムは創造神に声をかける。
「ヒトとヒトが争いこんな世界は間違っている
 誰もが笑い合える世界に変えてみせる
 ……そう考えて戦い始めた
 神よ、貴方の気持ちも理解は出来る」
 だがそれがどれほど難しいのかは痛いほどわかる。
 争いというものは人が分かり合うツールだとアダムは今ならわかる。
 みな譲れないものがある。
 矜持、国家、信念、愛。
 双方共に重いものを背負っている。だからこそ争うのだ。
 争えば命を失うこともあるだろう。それは悲しい。
 だけどそこにあった想いも信念も美しかった。
「だから間違えてなんかない。
 争いがあっても貴方の創った世界はなによりも
 美しかったんだ」

「いや、ちがう、汚い、きたない! 汚いの!!」

 創造神が苦しげに叫び、悲鳴をあげる。アダムは悲しげに瞳を伏せる。
 もし彼に友がいたら。それはありえなかったIF。
 もう、今はお互いがお互いを終わらせるしかないのだ。
 
 創造神だからなんだか知らないけど!
 一度生を受けた命を奪う権利は、誰にもないわよ!!!!!
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は拳を振るう。
 やり直しなんてもってのほか。
 またエドワード陛下に会えるかどうかもわからない!
「人間の起こす問題は、私達人間で解決する!
 お前の横槍なんか必要ないわ!」
 大切な世界。大好きな世界。
 戦う理由なんてそれで十分。
 レオナルトさん
 アクアディーネ様
 エドワード陛下
 孤児院のみんな
 脳裏に浮かぶ大好きなみんなの姿。彼らを背負って私はここにいる。
 だから力をかして!
 思いは力になるのだから!
 拳に赤い力が溜まっていくのがわかる。
「全力! 全霊! 全開!!!」
 エルシーの【深紅の衝撃】を創造神の頬にぶちかます。
「私は、私達の世界を守る!絶対に!必ず!なにがなんでもぉ! クリムゾン・インパクトーーーーーーっ!」

 
 



 ぐらり、
 創造神の体がゆれる。
 ぐらり、ぐらりと大きくかしぐ。

「やったか?!」
 誰かが叫んだ。


 ああ。あああああ。
 
   あああ、ああああああ。ああ

     ああ

 ああ、ヤリナオス。 ヤリナオスノ。 やり直して。ああ

 ぶるり、と創造神が震える。
  ダメージが巻き戻るかのように回復していく。

 残り、55秒。
 一分にも足りない時間。
 自由騎士たちの瞳に絶望の色が宿る。

 



●55秒
新しい世界とか、ヒトがどうか、そんなのは知らない。
 『邪竜』瀧河 雫(CL3000715)は神を拒絶する。
 最新にして世界に産み落とされた最期の邪竜(アポトーシス)。それが雫という少女。
 愛する父を神に奪われ、イ・ラプセルに渡った少女は異国の戦士の力を得た。
 そして神を屠るための力を求め、「力」は雫を選び、その力にはタットワの剣の力が宿った。
 神に振り回されたとも思う。だからこそ応報しなくてはならない。
 ヒトへの罰はなるほど、天が与えるのだろう。
 ならば、天への罰は?
 極みに到達した少女の剣は万理を破断する。
「天、誅するは我にあり!!!!!」
 続けて少女は魂を開放する。
「なあ、最期まであんたにも愛はあったと信じてたやつはいたんだ」
 充填された力は二重、三重に重なっていく。
「それをわたしだけが「知っている」」
 黄金の髪の少女がかつて存在していた。今はいない。
 たとえそいつの希望が裏切られていた結果があったとしてもそれでも。
 少女への義理はあったから。自分だけがそれを伝えることができるのだから――。
 雫の腕が龍のものに変わっていく。懐かしく愛おしい父親と同じ黒檀色の鱗に覆われた手が肥大化し、創造神に振るわれた。

 びしり、と創造神にヒビが入った。

 世界が終わるたび幾度となく人々は生きたいと願った。
 それも毎度かき消されて。
 これは最期の周回。行き止まりの壁を突破し未来につなげます。
 『未来を切り拓く祈り』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は勝利を誓う。
「此処で終わりではありません。ここからが始まりなのです!」
 黄金の飛沫を飛ばしながら魔力の塊が黄金の剣を形どっていく。
 何度も繰り返し、那由多の奇跡が今。
 私達はまだ生きている。
 生きている限り奇跡は! 可能性は在り続けるのだから!
 幾千万もの願いの果に、輪廻の果に、繰り返しのその向こうに今手が届くのだから!!
 一人ひとりが今を生きて、積み重ねが歴史を創り未来につなぐ。
 美しくないこともあるだろう。だがそれを失敗とは呼ばせない。
 未来はここに! あるのだから!
 アンジェリカが魂をかけて放った光は大きく広がり、創造神を破壊する。
 まるで破壊神のようなその一撃は、創造神の欠片を吹き飛ばしていく。

 びしり、またヒビが入る。

「たすけて、たすけて、タスケテ」

 創造神が『大いなる盾』ナバル・ジーロン(CL3000441)に手をのばす。
 その手は破壊の手。
 ああ、ああ。
 少年は戦うことが嫌いだった。殺し合いなんて見たくない。その気持はわかる。
 なんど、なんど助けてと伸ばされた手をとりたすけることができなかっただろう。
 世界は残酷だ。
 悲しいほどに。
 今、少年の思いと創造神の思いは一つだ。
 争いのない世界で、ただ、ただみんな笑顔でいたいだけなのだ。
 自殺因子などとは呼べないほどにナバルの心は創造神と同一化しているといっても過言ではない。
 だけど。
 ナバルはしっている。創造神の思い描く世界ではヒトはヒトとして生きることはできないのだと。
 創造神は正しいとおもう。次はヒトを生まれなくなるというなら物理的に理想通りの世界になるだろう。
 でも。
 だけど。
 ナバルはどこまでもヒトだった。
 悲しいほどにヒトだったのだ。
「オレはヒトが好きだ。
 泣きたいほどに辛いことがあったとしても、それはきっと嬉しさと喜びがあってのことなんだ。
 悲しいことは辛い。けど小さな幸せ(きぼう)があればヒトは生きていける。
 オレは、オレの友達と、仲間と、一緒に笑って、泣いて、ヒトらしく生きたい」
 だから。
 伸ばされた手が眼前にせまる。ナバルはその魂を開放し――。
「武農一致・収穫祭!!!!!!!!!!!!」
 手を振り払った。
 
 びしり、びしり。
 創造神に這うヒビが更に大きくなっていく。

 
 少女は英雄になるだろう少年をみて笑む。
「おい!!」
 少年は何がおこるのかを理解した。

 ふふ、怒るんだろうなあ。後ろに下がれとかうるさかったもんなあ。
 こんなときなのに笑いそうになってしまう。
 彼のようになれたらきっと。『轍を辿る』エリシア・ブーランジェ(CL3000661)は、すでに分かたれた彼と自分の轍の先を思う。
 だめなのだ。
 還リビトの事情を聞く限り、わたくし……私にとって貴方は家族の仇ですわ?
 世界を白紙にするのなんてつまらない理由だった。
 そんなつまらない理由で戦争がおこってそして皆死んだ。
 家族との命の引き換えが自分。その意味を証明したかった。
 そう、無意味の証明。
 ひどい有様。なんて、滑稽。
 求めた答えがこんな、こんな、こんな――。
 エリシアはふふ、と嗤う。
 だというのに、嬉しかった。赤子が叫ぶ。運命の申し子である自分にはその声は届かない。
 嬉しい、嬉しい! 嬉しい!
 そう。とっくのむかしに自分は狂っていたのだ。渇望していたそこに到達したのだ。
「ああ、神様? 神様! あなたは正しい! こんな汚い人間消えたほうがいい! ごめんなさい」
 贖罪は魂を侵食していく。
 腕が黒くそまった。足が黒く染まった。顔も、体も。
 なのに法衣だけは真白のまま。汚れなき美しき白。
「あはは、はは」
 理想郷へのドレスコードだろうか? 真っ黒に汚れたじぶんと美しい法衣。
「ごめんなさい、ごめんなさい。私じゃなくて、皆のための英雄の貴方(ナバル)」
 少しだけ意味の違う後悔は少し心地よかった。
 持ち続けた罪悪感。絶望するほどの無力感。奇跡を願うのは数度目。これが最期の一つ。
 自らがプリマドンナになることのできる唯一の舞台から降りることはできない。
 漆黒のシスターは命をかける。
 緋色の術式は黒壇の術式に。醜い文字。
 少女は純粋な力となって創造神に破滅の文字を焼き付ける。

「アアアアアアアアア 痛い イタイ、いたい」

 悲痛な叫び。創造神は内部から破裂していく。
 ああ、此処こそが理想の楽園。
 神様、一緒に魔道力の海に消えましょう。
 もう、自分の形など喪われた。それが嬉しかった。何よりも醜く汚いとおもった自分が、溶け、消えていく。

「あたしはあたしが大好き!
正直、世界が終わるとかどーでもいい
それならそれで、最後を面白おかしく過ごして終えたい」
 自由で、奔放で、ただ純粋だった『トリックスター・キラー』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は初めて心のうちを吐露する。
 素直な等身大の自分なんてみせるのが恥ずかしかった。
「でもねぇ、あたしのダーリンがカミサマを殺してくれって言うんだよ。
 この先が見たいってわがまま言うんだあ」
 そんなの言われたら叶えてあげたくなるじゃん? いってはにかんで少女のように笑う彼女は紛れもなく恋する乙女で。
「笑っちゃうよね。
 あたしが誰かのために何かをするなんて」
 そのために命をかけてもいいなって思った。
 ごう、と風が吹く。
 今まで怖いものから逃げていた。
 でもさ、ここで私が命をかけて、あいつをぶっころしたら、ちょっとくらいはあの朴念仁はあたしを気にしてくれるかなっておもったら、命なんて惜しくないっておもっちゃったんだよね。
 大好きなダーリンがつかっていたスキルを思い出す。
 これは自分のため。
 あたしはあたしのためにしか命をつかわない。
 ねえ、だーりん。褒めてくれる? よくやったって褒めてくれる?
 すごくいい気分だった。
 あたしはあたしのために生きてきた。これからも同じ。欲しいものは手に入れる。
 そのために死んだとしても!!!
 クイニィーは微笑む。
 だから死んじゃってよ! あんたなんか大嫌い!

「アアアアアアア、アアあ、あ」

「あ」

    「あ」   「あ」  「あ」

 「あ」

 最大の拒絶が創造神を千々に粉砕した。
 同時にクイニィーの魂も完全に粉砕されてエーテルの海に散った。
 

 かくして、神殺しは終わる。
 神歴から人の歴史にそのフェーズを移していく。
 

●そして、未来へ

「ね、ザッくん?」
「なんだ? エルエル」
「魔道力はいつか無くなる。そうなったら魔女の存在はいつかおとぎ話になるのかしら?」
「寂しいのか?」
「ううん、今ならね、あたしそんな未来も悪くないとおもうの」
「だな」
 ザルクは疲れ果て立てないエルを抱き上げる。自分も満身創痍で辛いがそんな姿はみせられない。
「帰るか?」
「ええ」
 二人はタットワの剣をここにおいていく。
(さようなら、アクアディーネ様。本当に、感謝してるよ)

 アーウィンの両隣にツボミとグローリアがぴったりとくっついている。
 アーウィンはムサシマルに助けをもとめるがうんこ! と叫ばれて放置された。
 周囲もニヤニヤ笑っている。戦いはまだ続くようだ。
 退去する世界にツボミは思う。
 この世界は確かにくそったれだった。だけど全部がだめじゃない。
 私は割と好きだよ。貴様が創ったこの世界が。
 やけくそ気味にツボミはアーウィンの腕を抱く。恥ずかしいついでだ。
 「お前?!」
 グローリアも同じように反対側の腕をギュッと抱いた。
 
 さようなら、観測者。
 アクアディーネはおいていくよ。
 彼女の優しさに抱かれるといい。
 マグノリアはタットワの剣を手放す。
 寂しくないとはいえない。これが彼女との永遠の別れになるのだから。
 ありがとう。
 虚空に溶けた言葉は彼女たちに届いただろうか?

 既知より未知よ。そのほうが楽しいもの。
 アクアディーネにサヨナラを告げたきゐこは楽しそうに笑い八重歯が星屑のようにきらめく。
 でもまあ、この魔道力は惜しいのよね。
「まあそれはいずれ、ふふふ」
 一度知ったものを取り戻すのは得意だ。
 完全に世界から魔道力が消えてしまうまでにはまだ時間はあるのだから。

 包帯だらけのエルシーは思う。
 自由騎士になっていろいろあった。神の蠱毒とかわけわからないものに巻き込まれて、お祭りやお城のパーティに参加して。楽しかった。
 だから早く、早く帰りたかった。
 エドワード陛下に褒めてもらいたかった。
 
 セアラはその場にくずおれた。
 この先の未来がどうあれ神様のせいにはできない。
 皆が命を謳歌する未来。
 それがほしいとおもった。
 神様がなにも助けてくれない世界。
 苦しいだろう。それでも自分で考えていきていくのだ。
「さようなら、アクアディーネ様」
 セアラは自らを守ってくれた水の神の力をおいていくことを決意した。
 涙があふれる。
「せめて、エドワード様のお力にはなりたい、です」
 消えていく女神の気配にセアラはそう伝えた。

 雫はここに残る神の気配に向かって両手を差し出す。その手には宝剣・桜。
 女神アクアディーネ。良く知らない神様。最期に残る神の残滓。
 誰かの思いを繋いだ少女は厳かにアマノホカリの神威を得たと言われ彼女の神社に奉納されていた宝剣を神に返すと決めていた。
 それは神との決別の儀式。
 宝剣が一瞬光ったとおもったその後、はらはらと淡桃の花びらのように散っていく。
 ずっと大事にしてきた宝剣が失われることは存外寂しいとも思ったがそれでいい。
 雫はスッキリとした顔で笑った。その頬からは知らずのうちに涙が流れていった。

 誰一人としてその場に残ろうとするものはいなかった。
 誰も皆もう神が支配する世界を求めなかったのだ。
 鈴はふわりと笑う。安堵した笑みで。
 マリアは、心配しすぎたなと頬をかく。
 これで未知が見れる。そう思うと嬉しくなってくる。
 アデルは死に損なったと呟けば、ツボミが阿呆とアデルヘッドを殴る。
 ごわんごわんと響く音にかき消されたが、告白とかいう恥ずかしい単語だけは聞こえた気がする。
 
「さあ! みんな帰るでありますよ!
 お残りするヒトは自分が蹴り飛ばすであります!!
 それに、アクアフェスタが待ってますよ!!
 みんなでアクアディーネ様をお祝いするでありますよ!!」

 フリオの言葉に自由騎士たちは頷くと、懐かしい大地に帰還する。

● 
 ダーリン。だいすき。
 声がきこえた気がした。
 それは気の所為ではない。
 そうか、と道化師はつぶやいた。
 なんとも苦い毒(あい)だ。君自体は甘い毒みたいな子だったのにね。
 ああ、君のことは嫌いじゃない。
 君が僕の心臓を潰しにきてくれるのを待っていたんだけどね。
 クイニィー、君のことは忘れない。この生命が尽きるときまで。
 よくやったね。
 ふふ、ダーリンが喜んでくれた。あたしも嬉しい。
 にししといたずらげな彼女の笑顔を見ることはもうない。

●ほしのうた2
 女は空を見上げる。
 また一筋の流れ星。
 きっと明日はくる。
 そうおもったら一筋の雫が頬から流星のように零れ落ちた。
 そんな女の肩を男が強く強く抱きしめた。

 かくして世界は救われる。
 未来は拓かれた。
 すべての呪縛が失われる。

 それから十月と十日。
 少し先の未来の話をしよう。
 
 男と女(かれら)の間にひとつの奇跡が起こる。
「ああ、ああ」
 神様、と呼べる存在はもういないけれど――。
 それでも、存在しない神に感謝する。


「世界にようこそ、こんにちは」


 産声が世界に響いた。

†シナリオ結果†

大成功

†詳細†

称号付与
『勝利の輝き』
取得者: アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)
『明日への導き手』
取得者: フリオ・フルフラット(CL3000454)
『平和を愛する農夫』
取得者: ナバル・ジーロン(CL3000441)
『幽世を望むもの』
取得者: 猪市 きゐこ(CL3000048)
『花開く橘』
取得者: 非時香・ツボミ(CL3000086)
『神を討ちし剣』
取得者: 瀧河 雫(CL3000715)
『幽世の修道女』
取得者: エリシア・ブーランジェ(CL3000661)
『意思を継ぐもの』
取得者: ビジュ・アンブル(CL3000712)
『物語の紡ぎ手』
取得者: リュエル・ステラ・ギャレイ(CL3000683)
『明日を繋いだ拳』
取得者: カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
『スイートプワゾン』
取得者: クイニィー・アルジェント(CL3000178)
特殊成果
『青の女神の祈り』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員

†あとがき†

以上がリザルトになります。
ご参加ありがとうございました。

神殺しが始まって3年とちょっと。
とうとうここに至りました。

特殊ルールの神化はスタッフ内でも物議をかもしました。
悪意に弱すぎる。ひっくり返されるなどいろいろと。
ですが私はここまで来てくれたプレイヤーを信じることにしました。
結果はこの通りです。
停滞を求める方はいませんでした。
私はこの答えを求めてCWをやっていたのかもしれません。

皆様が得た勝利は未知の未来に繋がりました。
これで神殺しのお話は終わりです。
あとすこしだけアフターストーリーが続きますので、お付き合いいただければ幸いです。

重ね重ねになりますがここまでのご参加ありがとうございました。
FL送付済