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Evileye! その幻想種、危険につき

●属性:混沌・悪
トミナルタ洞窟――
そこはかつてアクアディーネと時のイ・ラプセル王が封印したという洞窟である。人間と相容れない幻想種の根城となっていた洞窟で、騎士団総出で攻め入りなんとか封印したのである。
神の施した封印は固く、封じられた幻想種達はそこから出ることが出来ないでいた。だが先のヴィスマルク戦により、土地のバランスが変わり封印にほころびが生じたのである。
封印自体が完全に解かれたわけではない。だがそのほころびを見ることが出来る幻想種は、封印の網目を縫うようにして洞窟の外に出ることに成功した。
「KEKEKE! 外DA! 出れたZO!」
巨大な目玉を持つボール状の幻想種。羽根もなく宙に浮かび、左右から触手を生やしていた。
「人間、喰らU、犯SU、虐げRU! KEKEKE!」
イビルアイ。悪魔の一種と言われたその魔物は、ゆっくりと人里に向かって突き進んでいた。
●緊急指令
「みんな、大変だよ! 封印された洞窟から幻想種が出てきて村を襲うんだ!」
『元気印』クラウディア・フォン・プラテス (nCL3000004)は開口一番机をたたき、大声で叫んだ。いつも明るい彼女からは想像もできない態度だ。
「その幻想種は弓矢が届かない位置から光線を放って村を焼き尽くそうとしているんだ。何も知らない村人達はそのまま……そんなことあっちゃいけないよ!」
階差演算室で見た未来の光景を思い出しながら、クラウディアが叫ぶ。よほどひどい未来を見たのだろう。
「幻想種は望遠の魔力を持っているみたいで、普通の騎士が攻めても魔力の光で狙撃されちゃうんだ。
だけど神の加護を受けたオラクルなら一定距離までは近づける」
神の加護を受けたオラクルは、超遠距離から放たれる矢弾に対する加護がある。それは魔力の光に対しても有効のようだ。
「その洞窟も後でどうにかしないといけないんだけど……いまは幻想種を退治してきて」
トミナルタ洞窟をどうするかは現在議論中のようだ。もしかしたらまた自由騎士の力を借りるかもしれない。だが今は邪悪な幻想種が優先だ。
イ・ラプセルを守るべく、自由騎士が動き出す――
トミナルタ洞窟――
そこはかつてアクアディーネと時のイ・ラプセル王が封印したという洞窟である。人間と相容れない幻想種の根城となっていた洞窟で、騎士団総出で攻め入りなんとか封印したのである。
神の施した封印は固く、封じられた幻想種達はそこから出ることが出来ないでいた。だが先のヴィスマルク戦により、土地のバランスが変わり封印にほころびが生じたのである。
封印自体が完全に解かれたわけではない。だがそのほころびを見ることが出来る幻想種は、封印の網目を縫うようにして洞窟の外に出ることに成功した。
「KEKEKE! 外DA! 出れたZO!」
巨大な目玉を持つボール状の幻想種。羽根もなく宙に浮かび、左右から触手を生やしていた。
「人間、喰らU、犯SU、虐げRU! KEKEKE!」
イビルアイ。悪魔の一種と言われたその魔物は、ゆっくりと人里に向かって突き進んでいた。
●緊急指令
「みんな、大変だよ! 封印された洞窟から幻想種が出てきて村を襲うんだ!」
『元気印』クラウディア・フォン・プラテス (nCL3000004)は開口一番机をたたき、大声で叫んだ。いつも明るい彼女からは想像もできない態度だ。
「その幻想種は弓矢が届かない位置から光線を放って村を焼き尽くそうとしているんだ。何も知らない村人達はそのまま……そんなことあっちゃいけないよ!」
階差演算室で見た未来の光景を思い出しながら、クラウディアが叫ぶ。よほどひどい未来を見たのだろう。
「幻想種は望遠の魔力を持っているみたいで、普通の騎士が攻めても魔力の光で狙撃されちゃうんだ。
だけど神の加護を受けたオラクルなら一定距離までは近づける」
神の加護を受けたオラクルは、超遠距離から放たれる矢弾に対する加護がある。それは魔力の光に対しても有効のようだ。
「その洞窟も後でどうにかしないといけないんだけど……いまは幻想種を退治してきて」
トミナルタ洞窟をどうするかは現在議論中のようだ。もしかしたらまた自由騎士の力を借りるかもしれない。だが今は邪悪な幻想種が優先だ。
イ・ラプセルを守るべく、自由騎士が動き出す――
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.イビルアイの打破
どくどくです。
エマージェンシーにするか迷いましたが、こちらで。
●敵情報
・イビルアイ(×1)
幻想種。宙に浮かぶモノアイです。左右から触手を生やし、それを使って手のようにモノを運びます。
自分以外の存在を道具としか思っておらず、人間も潰して楽しむ玩具程度の認識です。500m先まで見渡すことが出来、その距離まで光線を放つことが出来ます。なので無傷で近づけるのはオラクルぐらいです。
言語は喋りますが、説得は不可能です。アクアディーネに恨みを持っているため、彼女のオラクルもまた憎悪の対象です。
『リュンケウスの瞳』『暗視』『エネミースキャン』に相応する技能を持っているようです。
攻撃方法
触手乱打 物近範 周囲の者を触手で鞭打つように攻めます。
毒針注入 物近単 触手の先から毒を注入し、麻痺させます。【パラライズ1】
熱光線 魔遠範 高熱を持つ光線を放ちます。
冷凍光線 魔遠単 低温の光線を放ち、動きを封じます。【フリーズ1】
朦朧光線 魔遠単 精神を乱す光線を放ち、動きを封じます。【ショック】
浮遊魔術 P 常に【浮遊】状態です。解除できません。
●場所情報
村に続く街道。足場は安定。視界も開けています。時刻は昼。
戦闘開始時、敵前衛に『イビルアイ(×1)』がいます。20mまでは問題なく近づけることはできますが、事前準備の余裕はありません。
★サポートの推奨行動
イビルアイの撹乱:メイン参加者が突撃しやすいようにサポートします。
村人の避難誘導:成功条件には関係ありませんが、行えば被害が少なくなります。
皆様のプレイングをお待ちしています。
エマージェンシーにするか迷いましたが、こちらで。
●敵情報
・イビルアイ(×1)
幻想種。宙に浮かぶモノアイです。左右から触手を生やし、それを使って手のようにモノを運びます。
自分以外の存在を道具としか思っておらず、人間も潰して楽しむ玩具程度の認識です。500m先まで見渡すことが出来、その距離まで光線を放つことが出来ます。なので無傷で近づけるのはオラクルぐらいです。
言語は喋りますが、説得は不可能です。アクアディーネに恨みを持っているため、彼女のオラクルもまた憎悪の対象です。
『リュンケウスの瞳』『暗視』『エネミースキャン』に相応する技能を持っているようです。
攻撃方法
触手乱打 物近範 周囲の者を触手で鞭打つように攻めます。
毒針注入 物近単 触手の先から毒を注入し、麻痺させます。【パラライズ1】
熱光線 魔遠範 高熱を持つ光線を放ちます。
冷凍光線 魔遠単 低温の光線を放ち、動きを封じます。【フリーズ1】
朦朧光線 魔遠単 精神を乱す光線を放ち、動きを封じます。【ショック】
浮遊魔術 P 常に【浮遊】状態です。解除できません。
●場所情報
村に続く街道。足場は安定。視界も開けています。時刻は昼。
戦闘開始時、敵前衛に『イビルアイ(×1)』がいます。20mまでは問題なく近づけることはできますが、事前準備の余裕はありません。
★サポートの推奨行動
イビルアイの撹乱:メイン参加者が突撃しやすいようにサポートします。
村人の避難誘導:成功条件には関係ありませんが、行えば被害が少なくなります。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
6個
2個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2018年06月26日
2018年06月26日
†メイン参加者 8人†
●
「封印された洞窟から出てきた幻想種か」
暴れまわるイビルアイを見ながら 『イ・ラプセル自由騎士団』ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)は軍服を整える。傭兵として戦に駆り出されることには慣れている。相手が幻想種であっても基本は同じだ。情報を吟味し、その上で戦うのみ。
「内憂のお出ましか。外患を退けたばかりだというのに、忙しいことだ」
ため息を吐くように 『イ・ラプセル自由騎士団』アリア・セレーネ(CL3000180)が呟いた。先のヴィスマルク戦の傷跡が少しずつ言えつつある状況だ。幻想種が暴れて台なしにされてはたまったものではない。早急に排除しなくては。
「かなり強そうだが、ワタシはワタシの役割を果たすまでだ」
手首の柔軟体操をしながらラメッシュ・K・ジェイン(CL3000120)は気合を入れる。弱き者を守る。父母に教えられた人道だ。ラメッシュもその教えのままに生きてきた。あの幻想種が村を襲うというのなら、その教えに従いこの拳を振るおう。
「目玉の怪物退治か。ほんとに、絵に描いたような典型的なモンスターだな」
気怠そうに 『イ・ラプセル自由騎士団』グスタフ・カールソン(CL3000220)は頭を掻く。あまり仕事がしたくない雰囲気を醸し出しているが、その視線はそれに反比例するように鋭い。守るべき仲間(主に女性の胸)を確認しながら、歩を進める。
「はぁ~、なんだか気持ちの悪い幻想種さんですね~」
間延びした口調で 『八千代堂』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)は幻想種を評した。空中に浮遊する目玉。四肢の代わりであろう触手。そして人を玩具のように扱う性格。けして人と相容れない邪悪な存在だ。
「一度封じられちゃったのにまた暴れようなんて懲りない人だなぁ」
イビルアイの経緯を思い出しながら 『銀の潮騒亭の赤い花』ローラ・オルグレン(CL3000210)は呟いた。人以外為す幻想種を閉じ込めたトミナルタ洞窟。かつて封じられたように今回も封じよう。それがオラクルの役目だ。
「うう……気持ち悪いけど、村を護らないと!」
生理的嫌悪感に身を震わせながら 『イ・ラプセル自由騎士団』アリア・セレスティ(CL3000222)は奮起する。人とあまりにかけ離れた姿。蠢く触手と巨大な瞳。動くたびに鳥肌が立つ様な嫌悪感が沸き上がるが、精神力で押さえ込み戦いに挑む。
「あたしにアレコレ変なことするつもりでしょ! えっちな本みたいに!」
若干ノリノリで 『深窓のガンスリンガー』ヒルダ・アークライト(CL3000279)は幻想種を指差し、叫ぶ。本気でそう思っているわけではなく、暗い雰囲気を吹き飛ばすヒルダなりの気遣いである。……たぶん。
「オラクRU! アクアディーネのオラクRU! 殺SU! その血をぶちまけRO!」
人の可聴領域ギリギリの甲高い声でイビルアイが叫ぶ。人の常識がまるで通じない幻想種。封じられた憎悪もあろう。雪辱を晴らす復讐心もあろう。だが一番色濃いのは、人を喰らい、犯し、虐げたいという愉悦。
そのおぞましさに身震いしながら、自由騎士達はマキナ=ギアから武装を取り出し装着する。
人に仇為す悪を討つべく、自由騎士達は動き出す。
●
「行きます!」
一番槍とばかりに飛び出したのはアリアだ。持ち前の速度を活かしてイビルアイに近づき、ショートソードとナイフを構える。近づくにつれてぬめぬめした触手を目の当たりにして嫌な気分になるが、首を振って気持ちを切り替える。
刃が届く直前のタイミングで横に飛ぶ。フェイントにより生まれたわずかな隙を逃すことなく手にした剣を振るった。動き回る速度を殺すことなく回転し、一閃されるアリアの刃。速度を乗せた一撃が幻想種の肌を裂く。
「こっちよ目玉さん! 追えるものなら追ってみなさい!」
「KEKEKE! 遅I! この目からは逃れられないZO!」
「熱い視線を向けられるのは慣れてるけど、タチが悪いのはお断りだよ!」
幻想種の視線を拒絶するように手を振るローラ。アデレードの酒場兼宿屋で働くローラはガラの悪い飲み客に絡まれることが多い。そう言った客の扱いには慣れているが、こういった幻想種はノーサンキュだ。っていうか物理的な熱視線とかお断りだ。
『ヒミツの宿帳』を手に魔力を集中させる。ローラ自身の魔力と、この場にある魔力をリンクさせ、同時に操作する。ローラを就寝として吹く清らかな風。それに含まれる癒しの魔力が自由騎士達の傷を塞いでいく。
「すごく目が良いのに真昼に出てきちゃってるし、あんまり頭は良くないのかも?」
「夜にはアクアディーネを襲う予定DA! お前達は前菜だYO!」
「アクアディーネ様を狙うというのなら、なおのこと捨て置けません」
ガントレットを装着したラメッシュが幻想種の目の前に立つ。手甲を前に出し、体を半身逸らす独特の構え。攻撃を避けるのではなく受け流すことで逸らす防御の型。自らを囮として、仲間を守ろうとする気概がそこに感じられた。
無論、ラメッシュは守るのみではない。イビルアイの触手を弾きながら少しずつ前に進んでいく。攻撃の間合まで突き進み、拳を相手の体に当てると同時に腰を回転させた。打撃ではなく衝撃を内部に伝える一撃が叩き込まれる。
「国を乱す幻想種。ここで討ち取らせてもらおう!」
「ほざけアクアディーネの犬GA! 後悔しながら燃え尽きRO!」
「後悔するのはそっちだ、目玉野郎」
鉄の足で大地を踏みしめるルシアス。灰色の短髪を風に吹かせ、バスタードソードを構えて相手を睨む。この幻想種が閉じ込められていた洞窟も気にかかるが、いまはこのイカれたヤツをどうにかしなければいけない。
剣の柄を握り、体をわずかにかがめる。大型の肉食獣が跳躍する時に力を溜めるように、ルシアスも力を溜めていた。足、膝、腰、肩、肘、手首、そして手。それらに十分に力を溜め、一気に解き放った。叩きつけるような重い一撃が幻想種の体を揺らす。
「洞窟の中を教えるのなら命だけは許してやってもいいぞ」
「KEKEKE! 許SU? 矮小な人間が何を世迷言WO!」
「世迷言かどうか、試してみるといい」
黒の翼を翻し、アリアが冷徹に告げる。挑発するのは村に攻撃を届かせないため。自分達が攻撃を受けることで、戦えない村人の被害をできるだけ少なくするのが目的だ。その分こちらが攻撃を受けることになるが、それでも構わない。
体内のマナを活性化させ、指先に集わせる。人差し指に宿る紅い魔力の輝き。それを使い大気に文字を書くアリア。しめのピリオドを穿つと同時、赤き文字は一条の矢となって戦場を走り、矢となって穿たれる。一点に集中した炎熱が幻想種を炎に包む。
「とはいえ洞窟には興味がある。お前を倒した後で確認しに行こう」
「人間が入った所でエサになるダケDA! 香辛料を背負って行きNA!」
「そいつは困るな。可愛いお嬢さんが魔物のエサになるなんて」
どこかゆったりとした動きで迫り、グスタフが答える。やる気がないように見えるが、相手のペースに巻き込まれることなく自分のペースに巻き込む。そうすることで相手の動きを崩し、自分の攻撃の起点を生み出していた。
幻想種の隙を見つけるように力を抜いて相対するグスタフ。しかし一たび隙を見つけるや否や、弛緩した筋肉を爆発させるように動かし、鋭い一撃を加えていく。常に100の力を出す必要はない。気だるげに、そして真剣に。長年の経験を活かす男の技だ。
「はい、そっちは攻め込み過ぎよ。綺麗なおっぱいが傷ついちゃうからね」
「どこを見ているのですか!?」
胸を押さえながらヒルダが叫ぶ。だがそれで隙を見せるわけでもなく、油断なくイビルアイの方を注視していた。イ・ラプセルを襲う悪辣の幻想種。民草に害為す存在を討つことは貴族の義務、とばかりに毅然とした態度で挑む。
ブーツで大地を蹴り、イビルアイに迫るヒルダ。相手の攻撃が届く範囲で銃を抜き、その銃口を向ける。それを弾こうとする触手の動きを先読みして銃を回転させ攻撃を逸らす。三度の攻防の末に銃口は幻想種を捕らえ、零距離の射撃が火を噴いた。
「害獣駆除モードのあたしは……あんまり優しくないわよ?」
「はい~。逃がさないように完膚無きまでにやっつけちゃいましょう~!」
少し間延びした声で、しかし元気よくシェリルが手を振り上げる。痛い目に合わせて改心させることが出来れば、とは思ったが流石に無理そうだとシェリルは諦めた。見切りの速さは商人ゆえか。
イビルアイの目を見ながら魔力を高めていくシェリル。光線を出すタイミングを見計らいながら、何か球状の物を抱えるように手を構える。イビルアイが交戦を出す気配を察したと同時に魔力を解き放った。手から吹き荒れる冷気の風が幻想種の動きを止める。
「やはり目が弱点なのでしょうか~? 次は狙ってみましょう~」
「KEKEKE! そうやって目を狙った奴は、光線で丸焼きになったZE!」
自由騎士の攻撃を受けながら、嗤うイビルアイ。ダメージがないわけではない。人を傷つけ、苦しみを与えている方が楽しい。そういう嗤いだ。
こんな幻想種が人の住む場所に行けばどうなるか。日を見るより明らかだ。やはりここで討つしかない。
自由騎士と幻想種の戦いは、加速していく。
●
トミナルタ洞窟に封印されていた幻想種。その脅威は侮れない。
「この程度で負けはしない!」
「痛いなぁ、も~」
ラメッシュとシェリルが幻想種の攻撃を受けて意識を失いそうになる。英雄の欠片を燃やしてなんとか立ち上がった。
「ローラ狙われてる? だったら一度相手の攻撃範囲から出て、回復の時に移動して戻れば――」
ローラは仲間に回復の魔術が届くギリギリの位置に立ち、回復を放った後に移動する。そうすることで敵の攻撃の範囲外から安全に回復できるように動いていた。
「KEKEKE! だったRA、こうするまでDA!」
だが――イビルアイはただ立っているだけの銅像ではない。ローラが下がった瞬間に、イビルアイも後方に移動する。近接戦闘を行う前衛はそれに合わせて移動することになり――結果、ローラは味方から大きく離されてしまう。回復役が前線を回復できない場所にいては意味がない。慌てて移動するローラ。
「無理はするな。危なくなったら俺が守るから」
後衛に声をかけるルシアス。支援するものが倒れないようにルシアスは立ち廻っていた。いざとなれば身を挺して盾になるつもりだ。その為にこの鋼の身体はある。そう示すように自らの胸を叩いた。
「幻想種……人間とは異なる魔力の使い方だな。研究者としては興味深いが」
今は討伐させてもらう。その意思を込めて炎の矢を放つ。巨大な瞳から様々な魔力の光線を放つイビルアイ。それを研究して人間が扱えるようになれば……だが協力を仰ぐ余裕も手心を加える余裕もない。この幻想種は生かしておけばまた人間を襲うだろう。
「どこを見ている! お前の相手はワタシだ!」
大声をあげて自らを誇示するラメッシュ。囮として目立つように動き、相手の気を引く。そうすることで他の人を守れるのなら、ラメッシュ自身としてこれ以上のものはない。拳を振るいながら、自由騎士の盾となるために動き回る。
「ひゃああああ!?」
触手に絡まれて、声をあげるヒルダ。あれ、『触手で絡む』って攻撃方法あったっけ? まあいいや。締め付けられて圧迫されながら、何とか動く腕で銃口を幻想種に向ける。ニヤリと笑って引き金を引き、至近距離から鉛弾を喰らわせた。
「いやっ、あぁん!」
イビルアイの触手に絡まれ、ぐったりと倒れるアリア。あれ、『触手で絡む』って攻撃方法あったっけ? まあいいやぱーと2。ぬるりとした感触が太ももを這うように進んでくる。英雄の欠片を燃やしてアリアはそれを振り払い、息を乱しながら立ち上がる。
「だめ……そんな熱い視線で……見ないで……」
イビルアイに見つめられ、ローラは媚びたように体をくねらせて、熱い吐息を漏らす。頬が熱く上気し、うっすらと涙をこぼしながら艶のある表情を見せていた。それが演技なのか本気なのかは誰にもわからない。
「なんてすけべ……卑劣な幻想種だ! 男として許しておけん! そこを変われ!」
怒りの声をあげるグスタフ。女性に対する態度がなっていないと肩をいからせ、イビルアイに迫る。触手の範囲攻撃を避けるように仲間と交互に突撃を繰り返し、少しずつ幻想種の体力を削っていく。
「この国を憂うアクアディーネさまの為にも、あなたはここで、倒さなければならないのです~!」
魔力を練り上げながらシェリルが口を開く。ダメージをより多く与えたいときは業火を、足止めしたいときは氷の棺を。状況によって使い分けることが出来るのが複数魔術所持者の強みだ。まだオラクルとして出来ることは多くないが、それでもできることはある。
範囲攻撃による一掃を恐れ、囲むように陣を取る自由騎士達。それが功を為したのか、触手の殴打による被害は少なかった。
例えばこれが猪突猛進な幻想種なら、薄く広がった前衛を突破して後衛に突撃されていただろう。だがイビルアイは射撃系。前衛を突破することはなかった。
「む。ここまでか……」
「この程度、戦場ではいつものことだ」
囮として動くラメッシュが倒れ、ローラを庇ったルシアスが英雄の欠片を削られることになったが、イビルアイの猛攻はここまで。
「ヒルダちゃん――!」
「――行っけぇー!」
幻想種が怯んだ隙を狙い、アリアが走る。アリアの声に反応したヒルダが武器を置いて両手を組んで構える。アリアがヒルダの手を足場にした瞬間、ヒルダは全身の力を使ってアリアを宙に放り上げる。
「KEKEKE! イイ的DA! 迎撃してやRU!」
イビルアイが放つ光線は真っ直ぐにアリアに向かう――ことはなかった。光線を放つ直前にヒルダがゼロレンジからイビルアイを撃ったからだ。衝撃で逸れた熱光線は天に伸びて、消える。
「アクアディーネ様、私に力を!」
「まさKA……人間如きNI……! GYAAAAAAAAAAA!?」
幻想種の頭上に落下するようにアリアが剣を突き立てる。甲高い悲鳴を上げて、悪の幻想種は力尽きた。
●
「みなさんお疲れ様でした~! 戦いのあとのおやつはいかがですか~?」
戦い終わり、シェリルが皆を労うように自分の店で作ったお菓子を配っていく。疲れを癒す意味もあるが、自分の店の営業を忘れないあたりマーチャント魂旺盛だ。
「ありがたい。頂くとしよう」
ラメッシュはマイ食器を取り出し、お菓子をその上に置く。いついかなる時もマイ食器を持参しており、そ食事は必ずそれを使用するこだわりを持っていた。
「件の洞窟は近くにあるみたいけど……どうする?」
休憩後、自由騎士達はトミナルタ洞窟に向かう。木や岩などでカモフラージュされているが、そこには確かに洞窟があった。五感で感じることはできないが、封印も存在しているのだろう。
「封印を解かれた痕跡とか残ってるかも、って思ったけど……」
ローラは周囲を見回し、人為的に傷つけられた場所がないかを探っていた。先の戦争時に誰かが潜入し、工作をしたのではないかと疑っているのだ。だがその痕跡は見つけられなかった。本当に偶然か、ローラに見つける知識が足りなかったか。
「この奥に危険な幻想種がいるのか……」
洞窟の中を見ながら、ルシアスは呟く。光が射さない洞窟内を見通すことはできない。かといって中に入るつもりはない。準備不足に加え、戦闘後のダメージもある。
「今は報告が先だ。いや、その前に治療か? 村の被害も見てみたいしな」
アリアも洞窟内を見て見たかったが、状況を鑑みて諦める。清潔な布を包帯にして、怪我人に応急手当てを試みる。調べるのは準備が整ってからだ。
「そうそう。全て終わらせたら宴をしようじゃないか。依頼達成の宴をな!」
言って笑うグスタフ。今は調査の時ではない。折角の勝利なのだから、幻想種打破を祝おうじゃないか。主に女性達に熱い視線を送り、帰還を促す。緊張した空気が弛緩し、自由騎士達の顔に笑みが戻ってくる。
帰路につく自由騎士達。無傷とはいかないが、村を守った凱旋だ。その表情は輝いていた。
調査の結果――
封印は完全に解かれておらず、魔物を封じている状態には違いないようだ。
だがごくまれにイビルアイのような封印の隙を縫う幻想種がいる。そういう意味では放置できるものではなかった。牽制の意味も含めて、トミナルタ洞窟内に騎士を送り込む必要があった。
幸いにして、封印魔法の範囲内でもアクアディーネのオラクルなら制限なく行動できるようだ。そういう意味でも自由騎士にトミナルタ洞窟の探索が命じられるのは、当然の流れとなるだろう。
トミナルタ洞窟の入り口は、音もなく開いている。
アクアディーネのオラクルたちを待ち構えるように――
「封印された洞窟から出てきた幻想種か」
暴れまわるイビルアイを見ながら 『イ・ラプセル自由騎士団』ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)は軍服を整える。傭兵として戦に駆り出されることには慣れている。相手が幻想種であっても基本は同じだ。情報を吟味し、その上で戦うのみ。
「内憂のお出ましか。外患を退けたばかりだというのに、忙しいことだ」
ため息を吐くように 『イ・ラプセル自由騎士団』アリア・セレーネ(CL3000180)が呟いた。先のヴィスマルク戦の傷跡が少しずつ言えつつある状況だ。幻想種が暴れて台なしにされてはたまったものではない。早急に排除しなくては。
「かなり強そうだが、ワタシはワタシの役割を果たすまでだ」
手首の柔軟体操をしながらラメッシュ・K・ジェイン(CL3000120)は気合を入れる。弱き者を守る。父母に教えられた人道だ。ラメッシュもその教えのままに生きてきた。あの幻想種が村を襲うというのなら、その教えに従いこの拳を振るおう。
「目玉の怪物退治か。ほんとに、絵に描いたような典型的なモンスターだな」
気怠そうに 『イ・ラプセル自由騎士団』グスタフ・カールソン(CL3000220)は頭を掻く。あまり仕事がしたくない雰囲気を醸し出しているが、その視線はそれに反比例するように鋭い。守るべき仲間(主に女性の胸)を確認しながら、歩を進める。
「はぁ~、なんだか気持ちの悪い幻想種さんですね~」
間延びした口調で 『八千代堂』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)は幻想種を評した。空中に浮遊する目玉。四肢の代わりであろう触手。そして人を玩具のように扱う性格。けして人と相容れない邪悪な存在だ。
「一度封じられちゃったのにまた暴れようなんて懲りない人だなぁ」
イビルアイの経緯を思い出しながら 『銀の潮騒亭の赤い花』ローラ・オルグレン(CL3000210)は呟いた。人以外為す幻想種を閉じ込めたトミナルタ洞窟。かつて封じられたように今回も封じよう。それがオラクルの役目だ。
「うう……気持ち悪いけど、村を護らないと!」
生理的嫌悪感に身を震わせながら 『イ・ラプセル自由騎士団』アリア・セレスティ(CL3000222)は奮起する。人とあまりにかけ離れた姿。蠢く触手と巨大な瞳。動くたびに鳥肌が立つ様な嫌悪感が沸き上がるが、精神力で押さえ込み戦いに挑む。
「あたしにアレコレ変なことするつもりでしょ! えっちな本みたいに!」
若干ノリノリで 『深窓のガンスリンガー』ヒルダ・アークライト(CL3000279)は幻想種を指差し、叫ぶ。本気でそう思っているわけではなく、暗い雰囲気を吹き飛ばすヒルダなりの気遣いである。……たぶん。
「オラクRU! アクアディーネのオラクRU! 殺SU! その血をぶちまけRO!」
人の可聴領域ギリギリの甲高い声でイビルアイが叫ぶ。人の常識がまるで通じない幻想種。封じられた憎悪もあろう。雪辱を晴らす復讐心もあろう。だが一番色濃いのは、人を喰らい、犯し、虐げたいという愉悦。
そのおぞましさに身震いしながら、自由騎士達はマキナ=ギアから武装を取り出し装着する。
人に仇為す悪を討つべく、自由騎士達は動き出す。
●
「行きます!」
一番槍とばかりに飛び出したのはアリアだ。持ち前の速度を活かしてイビルアイに近づき、ショートソードとナイフを構える。近づくにつれてぬめぬめした触手を目の当たりにして嫌な気分になるが、首を振って気持ちを切り替える。
刃が届く直前のタイミングで横に飛ぶ。フェイントにより生まれたわずかな隙を逃すことなく手にした剣を振るった。動き回る速度を殺すことなく回転し、一閃されるアリアの刃。速度を乗せた一撃が幻想種の肌を裂く。
「こっちよ目玉さん! 追えるものなら追ってみなさい!」
「KEKEKE! 遅I! この目からは逃れられないZO!」
「熱い視線を向けられるのは慣れてるけど、タチが悪いのはお断りだよ!」
幻想種の視線を拒絶するように手を振るローラ。アデレードの酒場兼宿屋で働くローラはガラの悪い飲み客に絡まれることが多い。そう言った客の扱いには慣れているが、こういった幻想種はノーサンキュだ。っていうか物理的な熱視線とかお断りだ。
『ヒミツの宿帳』を手に魔力を集中させる。ローラ自身の魔力と、この場にある魔力をリンクさせ、同時に操作する。ローラを就寝として吹く清らかな風。それに含まれる癒しの魔力が自由騎士達の傷を塞いでいく。
「すごく目が良いのに真昼に出てきちゃってるし、あんまり頭は良くないのかも?」
「夜にはアクアディーネを襲う予定DA! お前達は前菜だYO!」
「アクアディーネ様を狙うというのなら、なおのこと捨て置けません」
ガントレットを装着したラメッシュが幻想種の目の前に立つ。手甲を前に出し、体を半身逸らす独特の構え。攻撃を避けるのではなく受け流すことで逸らす防御の型。自らを囮として、仲間を守ろうとする気概がそこに感じられた。
無論、ラメッシュは守るのみではない。イビルアイの触手を弾きながら少しずつ前に進んでいく。攻撃の間合まで突き進み、拳を相手の体に当てると同時に腰を回転させた。打撃ではなく衝撃を内部に伝える一撃が叩き込まれる。
「国を乱す幻想種。ここで討ち取らせてもらおう!」
「ほざけアクアディーネの犬GA! 後悔しながら燃え尽きRO!」
「後悔するのはそっちだ、目玉野郎」
鉄の足で大地を踏みしめるルシアス。灰色の短髪を風に吹かせ、バスタードソードを構えて相手を睨む。この幻想種が閉じ込められていた洞窟も気にかかるが、いまはこのイカれたヤツをどうにかしなければいけない。
剣の柄を握り、体をわずかにかがめる。大型の肉食獣が跳躍する時に力を溜めるように、ルシアスも力を溜めていた。足、膝、腰、肩、肘、手首、そして手。それらに十分に力を溜め、一気に解き放った。叩きつけるような重い一撃が幻想種の体を揺らす。
「洞窟の中を教えるのなら命だけは許してやってもいいぞ」
「KEKEKE! 許SU? 矮小な人間が何を世迷言WO!」
「世迷言かどうか、試してみるといい」
黒の翼を翻し、アリアが冷徹に告げる。挑発するのは村に攻撃を届かせないため。自分達が攻撃を受けることで、戦えない村人の被害をできるだけ少なくするのが目的だ。その分こちらが攻撃を受けることになるが、それでも構わない。
体内のマナを活性化させ、指先に集わせる。人差し指に宿る紅い魔力の輝き。それを使い大気に文字を書くアリア。しめのピリオドを穿つと同時、赤き文字は一条の矢となって戦場を走り、矢となって穿たれる。一点に集中した炎熱が幻想種を炎に包む。
「とはいえ洞窟には興味がある。お前を倒した後で確認しに行こう」
「人間が入った所でエサになるダケDA! 香辛料を背負って行きNA!」
「そいつは困るな。可愛いお嬢さんが魔物のエサになるなんて」
どこかゆったりとした動きで迫り、グスタフが答える。やる気がないように見えるが、相手のペースに巻き込まれることなく自分のペースに巻き込む。そうすることで相手の動きを崩し、自分の攻撃の起点を生み出していた。
幻想種の隙を見つけるように力を抜いて相対するグスタフ。しかし一たび隙を見つけるや否や、弛緩した筋肉を爆発させるように動かし、鋭い一撃を加えていく。常に100の力を出す必要はない。気だるげに、そして真剣に。長年の経験を活かす男の技だ。
「はい、そっちは攻め込み過ぎよ。綺麗なおっぱいが傷ついちゃうからね」
「どこを見ているのですか!?」
胸を押さえながらヒルダが叫ぶ。だがそれで隙を見せるわけでもなく、油断なくイビルアイの方を注視していた。イ・ラプセルを襲う悪辣の幻想種。民草に害為す存在を討つことは貴族の義務、とばかりに毅然とした態度で挑む。
ブーツで大地を蹴り、イビルアイに迫るヒルダ。相手の攻撃が届く範囲で銃を抜き、その銃口を向ける。それを弾こうとする触手の動きを先読みして銃を回転させ攻撃を逸らす。三度の攻防の末に銃口は幻想種を捕らえ、零距離の射撃が火を噴いた。
「害獣駆除モードのあたしは……あんまり優しくないわよ?」
「はい~。逃がさないように完膚無きまでにやっつけちゃいましょう~!」
少し間延びした声で、しかし元気よくシェリルが手を振り上げる。痛い目に合わせて改心させることが出来れば、とは思ったが流石に無理そうだとシェリルは諦めた。見切りの速さは商人ゆえか。
イビルアイの目を見ながら魔力を高めていくシェリル。光線を出すタイミングを見計らいながら、何か球状の物を抱えるように手を構える。イビルアイが交戦を出す気配を察したと同時に魔力を解き放った。手から吹き荒れる冷気の風が幻想種の動きを止める。
「やはり目が弱点なのでしょうか~? 次は狙ってみましょう~」
「KEKEKE! そうやって目を狙った奴は、光線で丸焼きになったZE!」
自由騎士の攻撃を受けながら、嗤うイビルアイ。ダメージがないわけではない。人を傷つけ、苦しみを与えている方が楽しい。そういう嗤いだ。
こんな幻想種が人の住む場所に行けばどうなるか。日を見るより明らかだ。やはりここで討つしかない。
自由騎士と幻想種の戦いは、加速していく。
●
トミナルタ洞窟に封印されていた幻想種。その脅威は侮れない。
「この程度で負けはしない!」
「痛いなぁ、も~」
ラメッシュとシェリルが幻想種の攻撃を受けて意識を失いそうになる。英雄の欠片を燃やしてなんとか立ち上がった。
「ローラ狙われてる? だったら一度相手の攻撃範囲から出て、回復の時に移動して戻れば――」
ローラは仲間に回復の魔術が届くギリギリの位置に立ち、回復を放った後に移動する。そうすることで敵の攻撃の範囲外から安全に回復できるように動いていた。
「KEKEKE! だったRA、こうするまでDA!」
だが――イビルアイはただ立っているだけの銅像ではない。ローラが下がった瞬間に、イビルアイも後方に移動する。近接戦闘を行う前衛はそれに合わせて移動することになり――結果、ローラは味方から大きく離されてしまう。回復役が前線を回復できない場所にいては意味がない。慌てて移動するローラ。
「無理はするな。危なくなったら俺が守るから」
後衛に声をかけるルシアス。支援するものが倒れないようにルシアスは立ち廻っていた。いざとなれば身を挺して盾になるつもりだ。その為にこの鋼の身体はある。そう示すように自らの胸を叩いた。
「幻想種……人間とは異なる魔力の使い方だな。研究者としては興味深いが」
今は討伐させてもらう。その意思を込めて炎の矢を放つ。巨大な瞳から様々な魔力の光線を放つイビルアイ。それを研究して人間が扱えるようになれば……だが協力を仰ぐ余裕も手心を加える余裕もない。この幻想種は生かしておけばまた人間を襲うだろう。
「どこを見ている! お前の相手はワタシだ!」
大声をあげて自らを誇示するラメッシュ。囮として目立つように動き、相手の気を引く。そうすることで他の人を守れるのなら、ラメッシュ自身としてこれ以上のものはない。拳を振るいながら、自由騎士の盾となるために動き回る。
「ひゃああああ!?」
触手に絡まれて、声をあげるヒルダ。あれ、『触手で絡む』って攻撃方法あったっけ? まあいいや。締め付けられて圧迫されながら、何とか動く腕で銃口を幻想種に向ける。ニヤリと笑って引き金を引き、至近距離から鉛弾を喰らわせた。
「いやっ、あぁん!」
イビルアイの触手に絡まれ、ぐったりと倒れるアリア。あれ、『触手で絡む』って攻撃方法あったっけ? まあいいやぱーと2。ぬるりとした感触が太ももを這うように進んでくる。英雄の欠片を燃やしてアリアはそれを振り払い、息を乱しながら立ち上がる。
「だめ……そんな熱い視線で……見ないで……」
イビルアイに見つめられ、ローラは媚びたように体をくねらせて、熱い吐息を漏らす。頬が熱く上気し、うっすらと涙をこぼしながら艶のある表情を見せていた。それが演技なのか本気なのかは誰にもわからない。
「なんてすけべ……卑劣な幻想種だ! 男として許しておけん! そこを変われ!」
怒りの声をあげるグスタフ。女性に対する態度がなっていないと肩をいからせ、イビルアイに迫る。触手の範囲攻撃を避けるように仲間と交互に突撃を繰り返し、少しずつ幻想種の体力を削っていく。
「この国を憂うアクアディーネさまの為にも、あなたはここで、倒さなければならないのです~!」
魔力を練り上げながらシェリルが口を開く。ダメージをより多く与えたいときは業火を、足止めしたいときは氷の棺を。状況によって使い分けることが出来るのが複数魔術所持者の強みだ。まだオラクルとして出来ることは多くないが、それでもできることはある。
範囲攻撃による一掃を恐れ、囲むように陣を取る自由騎士達。それが功を為したのか、触手の殴打による被害は少なかった。
例えばこれが猪突猛進な幻想種なら、薄く広がった前衛を突破して後衛に突撃されていただろう。だがイビルアイは射撃系。前衛を突破することはなかった。
「む。ここまでか……」
「この程度、戦場ではいつものことだ」
囮として動くラメッシュが倒れ、ローラを庇ったルシアスが英雄の欠片を削られることになったが、イビルアイの猛攻はここまで。
「ヒルダちゃん――!」
「――行っけぇー!」
幻想種が怯んだ隙を狙い、アリアが走る。アリアの声に反応したヒルダが武器を置いて両手を組んで構える。アリアがヒルダの手を足場にした瞬間、ヒルダは全身の力を使ってアリアを宙に放り上げる。
「KEKEKE! イイ的DA! 迎撃してやRU!」
イビルアイが放つ光線は真っ直ぐにアリアに向かう――ことはなかった。光線を放つ直前にヒルダがゼロレンジからイビルアイを撃ったからだ。衝撃で逸れた熱光線は天に伸びて、消える。
「アクアディーネ様、私に力を!」
「まさKA……人間如きNI……! GYAAAAAAAAAAA!?」
幻想種の頭上に落下するようにアリアが剣を突き立てる。甲高い悲鳴を上げて、悪の幻想種は力尽きた。
●
「みなさんお疲れ様でした~! 戦いのあとのおやつはいかがですか~?」
戦い終わり、シェリルが皆を労うように自分の店で作ったお菓子を配っていく。疲れを癒す意味もあるが、自分の店の営業を忘れないあたりマーチャント魂旺盛だ。
「ありがたい。頂くとしよう」
ラメッシュはマイ食器を取り出し、お菓子をその上に置く。いついかなる時もマイ食器を持参しており、そ食事は必ずそれを使用するこだわりを持っていた。
「件の洞窟は近くにあるみたいけど……どうする?」
休憩後、自由騎士達はトミナルタ洞窟に向かう。木や岩などでカモフラージュされているが、そこには確かに洞窟があった。五感で感じることはできないが、封印も存在しているのだろう。
「封印を解かれた痕跡とか残ってるかも、って思ったけど……」
ローラは周囲を見回し、人為的に傷つけられた場所がないかを探っていた。先の戦争時に誰かが潜入し、工作をしたのではないかと疑っているのだ。だがその痕跡は見つけられなかった。本当に偶然か、ローラに見つける知識が足りなかったか。
「この奥に危険な幻想種がいるのか……」
洞窟の中を見ながら、ルシアスは呟く。光が射さない洞窟内を見通すことはできない。かといって中に入るつもりはない。準備不足に加え、戦闘後のダメージもある。
「今は報告が先だ。いや、その前に治療か? 村の被害も見てみたいしな」
アリアも洞窟内を見て見たかったが、状況を鑑みて諦める。清潔な布を包帯にして、怪我人に応急手当てを試みる。調べるのは準備が整ってからだ。
「そうそう。全て終わらせたら宴をしようじゃないか。依頼達成の宴をな!」
言って笑うグスタフ。今は調査の時ではない。折角の勝利なのだから、幻想種打破を祝おうじゃないか。主に女性達に熱い視線を送り、帰還を促す。緊張した空気が弛緩し、自由騎士達の顔に笑みが戻ってくる。
帰路につく自由騎士達。無傷とはいかないが、村を守った凱旋だ。その表情は輝いていた。
調査の結果――
封印は完全に解かれておらず、魔物を封じている状態には違いないようだ。
だがごくまれにイビルアイのような封印の隙を縫う幻想種がいる。そういう意味では放置できるものではなかった。牽制の意味も含めて、トミナルタ洞窟内に騎士を送り込む必要があった。
幸いにして、封印魔法の範囲内でもアクアディーネのオラクルなら制限なく行動できるようだ。そういう意味でも自由騎士にトミナルタ洞窟の探索が命じられるのは、当然の流れとなるだろう。
トミナルタ洞窟の入り口は、音もなく開いている。
アクアディーネのオラクルたちを待ち構えるように――
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
どくどくです。
もうちょっと光線のバリエーションを増やしてもよかったやも知れぬ。
というわけでお疲れ様です。イビルアイ、無事撃破となります。
トミナルタ洞窟に関しては後日発表がありますので、しばらくお待ちください。
純粋な戦闘ということで、今回のMVPは戦闘で一番貢献したプブリアス様に。貴方の献身がなければ、後衛組が結構倒れていたかもしれません。
それではまた、イ・ラプセルで。
…………触手の需要はあるのだろうか?(ぼそ)
もうちょっと光線のバリエーションを増やしてもよかったやも知れぬ。
というわけでお疲れ様です。イビルアイ、無事撃破となります。
トミナルタ洞窟に関しては後日発表がありますので、しばらくお待ちください。
純粋な戦闘ということで、今回のMVPは戦闘で一番貢献したプブリアス様に。貴方の献身がなければ、後衛組が結構倒れていたかもしれません。
それではまた、イ・ラプセルで。
…………触手の需要はあるのだろうか?(ぼそ)
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