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Nursing! 解放奴隷を癒し隊!

●戦うだけが奴隷解放じゃない
「GoodTiming! そろそろ補給も含めて『村』に行くぞ」
唐突にフリーエンジン代表のニコラ・ウィンゲートは言った。
「村?」
「Yes! 解放奴隷達の療養を兼ねた隠れ村だ。そこで食料や燃料等を生産しながら、フリーエンジンは活動している
解放する奴隷が増えれば増えるほど、そういった村が増えて活動範囲が増すと言った形式だ!」
ヘルメリアの奴隷はノウブルに逆らわないように『教育』されている者が多い。心身的な障害も多く、それを癒すために療養するための場所があるという。そこで生産的な活動をすることで、どうにか社会復帰を目指しているというわけだ。
「おお、ちゃんと解放した奴隷のことを考えているんだ!」
「Of course! 最もドクターがいないので静養以上の成果はないがな!」
あ、そう。落胆する自由騎士。冷静に考えれば腕のいい医者が奴隷解放活動を行っているわけがない。『亜人は奴隷』が常識の国なのだ。常識に逆らおうという医者はいない。
「ジョンが言うには『技術よりも気持ち』らしいがな。しかし我もジョンもそこばかりに手を割くわけにはいかん。ならばとばかりに介護用自動人形アシュラマンを作ると言ったら全力で止められたしな。ジョンめ、前に作ったお掃除メイドちゃんが自爆したことを延々と根に持っているようだ。解せぬ!
ともあれしばらく休養して、また活動開始だ!」
何処の組織でも人手不足は問題のようだ。介護用自動人形はさておき。
だが今この『ティダルト』には自由騎士達がいる。『奴隷となった亜人を救いたい』と思う者達が。しかもそれなりの数が。
「そういう事なら私に任せてもらおう。何、薬物には知識が深いのでね」
「その人たちを楽しませればおけまる産業?」
ぬ、と背後から現れるペストマスクの医者。そして首をかしげるギャル系南国ダンサー。
色々あって、奴隷癒し部隊が結成されるのであった。
「GoodTiming! そろそろ補給も含めて『村』に行くぞ」
唐突にフリーエンジン代表のニコラ・ウィンゲートは言った。
「村?」
「Yes! 解放奴隷達の療養を兼ねた隠れ村だ。そこで食料や燃料等を生産しながら、フリーエンジンは活動している
解放する奴隷が増えれば増えるほど、そういった村が増えて活動範囲が増すと言った形式だ!」
ヘルメリアの奴隷はノウブルに逆らわないように『教育』されている者が多い。心身的な障害も多く、それを癒すために療養するための場所があるという。そこで生産的な活動をすることで、どうにか社会復帰を目指しているというわけだ。
「おお、ちゃんと解放した奴隷のことを考えているんだ!」
「Of course! 最もドクターがいないので静養以上の成果はないがな!」
あ、そう。落胆する自由騎士。冷静に考えれば腕のいい医者が奴隷解放活動を行っているわけがない。『亜人は奴隷』が常識の国なのだ。常識に逆らおうという医者はいない。
「ジョンが言うには『技術よりも気持ち』らしいがな。しかし我もジョンもそこばかりに手を割くわけにはいかん。ならばとばかりに介護用自動人形アシュラマンを作ると言ったら全力で止められたしな。ジョンめ、前に作ったお掃除メイドちゃんが自爆したことを延々と根に持っているようだ。解せぬ!
ともあれしばらく休養して、また活動開始だ!」
何処の組織でも人手不足は問題のようだ。介護用自動人形はさておき。
だが今この『ティダルト』には自由騎士達がいる。『奴隷となった亜人を救いたい』と思う者達が。しかもそれなりの数が。
「そういう事なら私に任せてもらおう。何、薬物には知識が深いのでね」
「その人たちを楽しませればおけまる産業?」
ぬ、と背後から現れるペストマスクの医者。そして首をかしげるギャル系南国ダンサー。
色々あって、奴隷癒し部隊が結成されるのであった。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.解放された奴隷達と交流する
どくどくです。
助けて癒す、までが奴隷解放です。
◆説明ッ!
フリーエンジンが解放した奴隷達。彼らは一旦『隠れ村』と呼ばれる場所で静養しています。フリーエンジンの物資作製といった名目で生産活動をさせ、社会復帰のきっかけを作ろうとしています。
ですがそこに割ける人間は多くないため、その効果は芳しいとは言えないようです。そこで自由騎士達の一部が発起して、解放奴隷達を癒しにかかることになりました。主にペストマスクが主体で。
各症状から判断して、4タイプに治療方法を分別しています。それに沿った癒しをすれば、すぐにではありませんが心が癒えるかもしれません。
【1】~【4】をプレイングの冒頭、もしくはEXプレイングに書いてください。NPCに絡みたいときは場所は自由です。呼ばれれば向かいます。
【1】医療します!:火傷や薬物などの肉体的なダメージが深いタイプです。サイラスが薬草を調合していますのでそれを飲ませたり、優しく介護したりしてください。
【2】心を奮わせろ!:肉体的には大きな問題はありませんが、精神的に参っているタイプです。音楽や踊りなどの芸事等で心を癒してあげてください。
【3】身体を動かせ!:ある程度自意識は戻ってますが、生きる希望を見出せないタイプです。農耕、狩りと言った生産的活動や模擬戦などで体を動かして発奮させてください。
【4】食べるんだ!:料理を作って振舞います。ヘルメリアの料理よりおいしければ、喜ばれます。なんかゴールドティアーズで言われたんで増やしました。解せぬ。
物資などはフリーエンジンが所有してるものを使うため、個人で扱える者は用意できると思ってください。イ・ラプセルから持ってきた、などは普通にOKです。
●NPC
サイラス・オーニッツ(nCL3000012):【1】で薬草を調合しています。
アミナ・ミゼット(nCL3000051):【2】で踊っています。
ジョン・コーリナー(nCL3000046):村で物資の確認をしています。
レティーナ・フォルゲン(nCL3000063):【3】で農作業をしています。
ニコラ・ウィンゲート(nCL3000065):動く城『ティダルト』で機械のメンテナンスをしています。
NPCは絡まれなければ基本空気です。基本上記の場所にいますが、呼ばれれば無理なければ向かいます。
●場所情報
ヘルメリアのへき地。人里離れた山の中にある小さな村。
煤煙の影響も少なく、空気は澄んでいます。村長(フリーエンジンの非戦闘員・ミズビト)一人を除けば、全て肉体的精神的に傷を抱えた亜人です。種族は様々。村の規模は50人に満たない程度です。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
助けて癒す、までが奴隷解放です。
◆説明ッ!
フリーエンジンが解放した奴隷達。彼らは一旦『隠れ村』と呼ばれる場所で静養しています。フリーエンジンの物資作製といった名目で生産活動をさせ、社会復帰のきっかけを作ろうとしています。
ですがそこに割ける人間は多くないため、その効果は芳しいとは言えないようです。そこで自由騎士達の一部が発起して、解放奴隷達を癒しにかかることになりました。主にペストマスクが主体で。
各症状から判断して、4タイプに治療方法を分別しています。それに沿った癒しをすれば、すぐにではありませんが心が癒えるかもしれません。
【1】~【4】をプレイングの冒頭、もしくはEXプレイングに書いてください。NPCに絡みたいときは場所は自由です。呼ばれれば向かいます。
【1】医療します!:火傷や薬物などの肉体的なダメージが深いタイプです。サイラスが薬草を調合していますのでそれを飲ませたり、優しく介護したりしてください。
【2】心を奮わせろ!:肉体的には大きな問題はありませんが、精神的に参っているタイプです。音楽や踊りなどの芸事等で心を癒してあげてください。
【3】身体を動かせ!:ある程度自意識は戻ってますが、生きる希望を見出せないタイプです。農耕、狩りと言った生産的活動や模擬戦などで体を動かして発奮させてください。
【4】食べるんだ!:料理を作って振舞います。ヘルメリアの料理よりおいしければ、喜ばれます。なんかゴールドティアーズで言われたんで増やしました。解せぬ。
物資などはフリーエンジンが所有してるものを使うため、個人で扱える者は用意できると思ってください。イ・ラプセルから持ってきた、などは普通にOKです。
●NPC
サイラス・オーニッツ(nCL3000012):【1】で薬草を調合しています。
アミナ・ミゼット(nCL3000051):【2】で踊っています。
ジョン・コーリナー(nCL3000046):村で物資の確認をしています。
レティーナ・フォルゲン(nCL3000063):【3】で農作業をしています。
ニコラ・ウィンゲート(nCL3000065):動く城『ティダルト』で機械のメンテナンスをしています。
NPCは絡まれなければ基本空気です。基本上記の場所にいますが、呼ばれれば無理なければ向かいます。
●場所情報
ヘルメリアのへき地。人里離れた山の中にある小さな村。
煤煙の影響も少なく、空気は澄んでいます。村長(フリーエンジンの非戦闘員・ミズビト)一人を除けば、全て肉体的精神的に傷を抱えた亜人です。種族は様々。村の規模は50人に満たない程度です。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
0個
0個
1個
0個




参加費
50LP
50LP
相談日数
8日
8日
参加人数
23/∞
23/∞
公開日
2019年07月22日
2019年07月22日
†メイン参加者 23人†

●体を動かし、何かを作ろう
「農業だ! 体を動かそう!」
槍を鍬に切り替えて『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)は村人達に声を張り上げる。言葉ではヘルメリアの情勢を知っていても、いざ目の前で生気のない瞳をみると現実の痛みを感じてしまう。
「先ずはイ・ラプセル産の美味しい芋を食べるといい! ふかし芋だ!」
分け与えるのはイ・ラプセルから持ってきた芋を蒸気でふかした芋だ。それに潮をつけて村人達に渡す。簡素な料理だが、それでもヘルメリアにはないものなのか表情が変わる。
「正しいやり方で、丁寧に育てれば育てるだけ、作物は美味しく、たくさん育つ。誰かに無理やりやらされるんじゃない、自分のために、自分たちが美味しいものを腹一杯食えるようにするために働くんだ。
やり方は今からオレが教える! ぜひとも覚えていってくれ!」
「……ん。いっしょにやろう。レティーナもいっしょに」
「はい。あの、よろしくお願いしますね」
ナバルと一緒に農作業を行う『たくさんのわたしのたいせつ』リムリィ・アルカナム(CL3000500)。レティーナと一緒に身体を動かしていた。動作の一つ一つを丁寧に。パワーのあるリムリィは、広範囲の土を耕していく。
「わたしがもっとちいさかったころ、おなじようにいきたいとかなにもおもわないときがあった」
畑を耕しながら、リムリィは呟く。自分自身とヘルメリアの奴隷。重なる部分はある。
「でもなにもしなくてもおなかはすいて、おねえちゃんがりょうりをつくってくれた。
たべたらとてもおいしくてもっとたべたくなった。そういうりゆうだけでもいきてちゃだめかな」
「分かる、気がします。イ・ラプセルの料理、おいしかった、ですもんね。暖かかった、ですもんね」
リムリィの言葉に涙をこらえながら答えるレティーナ。生きる希望は、本当に普通の事なのだ。それさえ抱けなくなることが、世の中にはある。
「奴隷から解放されてもそれで終わりでは無いんですね……」
村の人達を見ながら『叶わぬ願いと一つの希望』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は沈痛な面持ちで呟いた。戦いに勝てば終わりではない。そこからが始まりなのだ。それを実感する。
「こういうのはどうでしょうか? 木を削って、そうそうゆっくりと……」
木を使ったアクセサリ作成を教えるティルダ。手を動かして何かを作る。それだけでも嫌な事を忘れる事が出来るのだ。もしかしたらそれが将来の役に立つかもしれない。はるか遠く、亜人の壁が取り払われたその時に。
「木の実に穴を開けて、糸を通す……。ネックレスの完成です」
首にかけられたドングリのネックレス。それが村人達に笑みを蘇らせた。
「イ・ラプセルとは流石に違うが、かじられた樹があるなら草食動物はいるだろう」
周囲の地形を確認しながら『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は村人達を連れて進む。狩猟のイロハを教えながら、動物の習性を教える。そしてそれに基づいた罠設置などの狩りのやり方を教えていた。
(奴隷時代に『狩り』をさせられた経験がある……か、皮肉だな)
奴隷の中には主から『鷹役』『犬役』として狩りの道具に使われたものもいる。ウェルスにとってその経験が生きるのは鼻持ちならないが、今はその怒りを抑えておく。それとは別の狩りを教え、奴隷時代の恐怖を払拭させなくては。
「次は皮のなめし方だ。いいものが出来たら、俺が買い取ってやるぜ」
努力が成果になる。その事を教え、経済を回す。商人ならではの奴隷解放術だった。
●治療は大事
どこぞのペストマスクに代表されるように、この時代の医者の服装は『黒』が一般的だった。衛生論よりも礼服的な意味合いが強かったと言われている。
「いたいのいたいのとんでけー♪」
なので『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)のワンピースに白エプロンと言う姿はそれなりに斬新であった。清潔感を表に出し、その清潔感に負けない優しい笑顔としぐさ。それが子供達の心を癒していく。
「良薬は口に苦しって言うんですよ? 我慢して飲んでくださいね」
そして大人には甘い声ながらもきっちりとした対応を行う。甘えは許さないですよ、と笑顔で伝えてそのまま相手が薬を飲むまで笑顔を続ける。看護の手を抜くつもりはない。元気な体の大事さを理解しているからだ。
「まあ、サイラスさんの薬、全部苦そうな気がするけど」
「失礼な。一割は違うぞ。すぐ寝てしまうからな」
「それは気絶しているだけなのではないか?」
サイラスの言葉にツッコミを入れる『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。患者に毒を盛る相手ではない事は知っているのでそれ以上は言うつもりはない。というか言っている余裕はない。火傷に擦過傷、酷いものだと焼きごての跡。それを前にツボミの手はひっきりなしに動いていた。
(とはいえ、時間的な余裕はある。大事なのは『優しい治療』だな。可能であれば心と体の両方を。医を信頼できるように)
肉体のダメージは、そのまま精神を摩耗させる。傷は癒えるのだと知ることで、治療への希望が見える。医術とはそういうものだ。『医は仁術』とは故郷の言葉だったか? そんなことを思いながら、魔術と医術を組み合わせて傷を癒していく。
「これで良し。傷が痛んだら薬を飲むように。では、お大事に」
「サシャはシスターのおねーさんらしく、お怪我した人を看病したりして頑張るぞ!」
えっへんと胸を張る『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)。誕生日が来て年を一つ重……おねーさんになったサシャは溢れんばかりの姉力を披露すべく治療の現場に立つ。元気いっぱいの子供に見えて、手技はしっかりしていた。
「怖くないぞ、痛くないぞ、男の子は痛くても我慢できるんだぞ! いい子だぞ!」
サシャは主に子供を中心に診ていた。目線を合わせて、声をかける。本当に痛い傷でも痛くなくなるまで声をかけ、医者がここに居るのだという事を教える。傷は治る。そう信じることが治療の第一歩だ。
(本当は美味しいもの食べたいけどヘルメリアのご飯はあまりおいしくないって言ってたからきっと我慢できるんだぞ)
じっと我慢の子、サシャ。そとで自由騎士達が料理をふるまっているが、そちらも我慢していた。
●自由騎士クッキング
村の中央にある広場。そこでは即席の厨房を使って料理が振舞われていた。
「おもてなし、するです」
『おもてなすもふもふ』雪・鈴(CL3000447)は村人達を前に口を開く。ノウブルやキジンの前では何も言えなくなる鈴だが、村人は亜人での元奴隷で構成されている。ノウブルへの恐怖はヘルメリア以外でも存在するのだ。
「食べたいだけ食べていいんですよ。ここには『だめ』って言うひとはいませんから」
自分の経験に照らし合わせて村人達に声をかける鈴。豪華な料理よりも暖かくて腹持ちがする料理を。お腹がすいた時の苦しさは何物にも代えがたい。制限されない暖かい料理。それこそが村人達を救うのだ。スープをかき混ぜながら、仲間に問いかける。
「アンジェリカさん、そちらはどうですか?」
「ええ。もう少しでできますわ」
鈴の言葉に応える『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)。大きな鍋と複数のフライパンを次々と動かし、料理を作っていく。見た目とは裏腹のパワーで厨房を切り盛りし、料理を作っていく。
「こんなに大人数の調理ですもの、同時に沢山作らないと追いつきませんね! ふふっ」
おしとやかに笑いながら体を動かしていくアンジェリカ。肉料理に魚料理。見た目で喜び、香りで感じて、味で楽しむ。栄養重視のヘルメリア料理に負けるつもりは毛頭ない。料理に盛り付けながら、笑顔を絶やさずアンジェリカは村人達に差し出していく。
「さぁ、迷える子羊達に美味しい料理と笑顔をお届けいたしましょう!」
「カノンも美味しい料理をたくさん作るよ!」
自前の調理器具セットを取り出し戦闘開始……ではなく調理を開始する『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)。傷ついた村人達を何処まで癒せるかはわからない。だけど、何かをしてあげたいという気持ちだけは充分にある。
「ご飯とお味噌汁! 後は卵焼き!」
米を研ぎ、粒を揃えて炊いた米でおにぎりを作るカノン。調理時間の合間を縫って味噌汁を作り、ダチョウの卵で卵焼きを作る。カノンの教会ではいつも作っている料理だが、ヘルメリアの村人には珍しい物のようだ。美味しそうに食べる姿を見て、笑顔を浮かべるカノン。
「まだまだあるよ。たくさん食べて、笑顔になってね!」
「味噌は美味しい! そして麺も美味しい! 即ち、この二つを足せばさらに美味しい!」
鍋をかき混ぜながら『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は胸を張る。料理は得意ではないが、美味しい物を作ろうという気概は胸にあった。
「焼きそばにしようと思ったけど、温もりを得るならこっちよね!」
ぴ、と親指立てるエルシー。匂いと勢いで食欲をそそる焼きそばよりも、お腹の中でじんわりと温めてくれる味噌麺の方がいい。そう思っての選択だ。最初は不思議がっていた村人達も、食べ方と味を理解して食指が進んでいく。
「他にもありますからね! たくさん食べて行ってくださいね!」
「イ・ラプセルの大衆家庭料理! 美味しいですよ♪」
腕まくりをして『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)は調理に挑む。人を救う、などとフーリィンは言わない。自分に出来る事はただ支える事。その背中をそっと押すことしかできないのだと知っていた。
「特別な力はありませんけど、心を込めてお作りしますね」
この料理に魔法的な要素はない。イ・ラプセルではどこにでもある家庭の味だ。だからこそ、お腹にすんなり入る。食欲は生きる原動力。『また食べたい』という欲求が、明日を生きるエネルギーになればいい。その想いを込めて、フーリィンは料理を作る。
「一度味を占めたらもっと欲しくなるのがヒトですからね。本能的な欲望、大いに結構!」
『また食べたい』と言われた時に料理を差し出せるようにしたい。フーリィンはそう願い、鍋をかき混ぜる。
●心を癒す優しい音
「『技術よりも気持ち』、か」
『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)はフリーエンジン代表の言葉を反芻する。何かを癒したい助けたいという気持ちがその人に伝われば、それで救われるかもしれないのだ。はこうとした弱音をぐっと飲みこんで、アダムは一歩踏み出した。
「初めまして。僕の名前はアダム。君の名前を教えてもらえないかな?」
アダムは村人たちの目を見て、真摯に語りかける。芸事に詳しいわけではないアダムに出来る事は、一人一人と話し合って心をほぐすことだけだ。すぐには無理かもしれない。だが、少しずつでも進んでいければ。
「そうなのか、それはすごいね。実はイ・ラプセルにはあんパンというものがあってね――」
「心が疲れ切っているんですね。それなら、唄や踊り、楽器を演奏して笑顔になるのが一番です!」
リラを軽く奏でながら『夜空の星の瞬きのように』秋篠 モカ(CL3000531)が村人達に語りかける。心に深い傷を負い、立ち上がれない人達。そういう心を癒す為の優しい曲を奏でよう。モカは柔らかくほほ笑んで、弦をはじく。
「手拍子をお願いしますね。では――」
モカが奏でるのは明るく、そして楽しい曲。手拍子を合わせるだけでも曲に参加したつもりになれるため、『自分も曲に参加している』という一体感を感じる事が出来る。これからの皆が笑顔になれますように。そう願って、モカは踊った。
「はい。では次はこういう曲です。行きますね」
「とりまバイブス勝負っしょ、ウェーイ! アゲてこーぜ!」
「アゲアゲで行くよ!」
『落とした財布は闇の中』ルガトルシュ・フォルガ(CL3000577)はアミナと協力し、男子を踊っていた。独特のノリに最初は面食らっていた村人も、すぐに理解して体を動かしていく。その様子を見て、ルガトルシュは笑みを浮かべた。
「自由になってェ? めでてぇっつーのに、いつ踊ンだよ? 今だろっ!」
両足を使った活発的なダンスから、背中と肩を使って回転する破天荒な踊りまで次々と踊りを披露するルガトルシュ。周りで奏でられる音楽に合わせてリズムを変え、曲の終わりに合わせて回転してポーズを決めた。
「ウェーイ! カーシーたんもっと激しくしても良きよ? パーリナイよ」
「いえーい! じゃあどんどん激しくいくよ」
ルガトルシュのハイタッチに答える『炎の踊り子』カーシー・ロマ(CL3000569)。心の傷は消えない。上手く付き合っていくしかない。太鼓を叩きながら、激しいリズムでルガトルシュとアミナの踊りを加速させていく。
「はい。皆も一緒に。リズムに合わせて手拍子足拍子するだけ。簡単でしょ?」
太鼓をたたきながら村人達に説明するカーシー。手本とばかりにアミナが手を叩き、そして次からは村人達も手を叩いていく。原始のリズムは心にたまっていた澱みを吐き出させる。強く、激しく響くビートが感情を揺さぶっていく。
「色んな土地で色んな人を見たよ。心の毒で自分を殺した人。毒を飼い慣らしてる人。運が良けりゃ後者になれるさ。
……なーんて、シリアスは慣れないねー」
「これが、奴隷だった人たちの現状……。ううん、今は考えるよりも行動よね!」
音楽に集中するために瞳を閉じて、心を落ち着かせる『望郷のミンネザング』キリ・カーレント(CL3000547)。ヘルメリアに住む亜人の惨状は聞いている。マザリモノであるキリもけして楽な旅路ではなかったが、彼らは国単位で虐げられて心を痛めているのだ。
「キリが教える側になるなんて……」
わずかに感傷に浸った後に、キリはギターを弾く。自分が教えられたように、他人に教えていく。最初は簡単な音から。そこから少しずつやれることを増やしていく。そうやってキリが歩いてきたように、今度は彼らに歩いてもらうのだ。
「この音がいつか、貴方達がヘルメリアで奏でられますように……」
そんな思いを抱き、キリは村人にギターを教える。遠い未来、彼らが音楽を奏でる未来を願って。
●拳を握って立ち上がれ
自由騎士の中には、村人達に闘争心を抱いてほしいという者もいた。
「戦い方を教えてやる」
そう言って村人達の前に立ったのは『鋼壁の』アデル・ハビッツ(CL3000496)だ。とはいえ本当に戦闘訓練を行うつもりはない。戦うという事の心構え。それを教えていた。
「無闇に怯えるでなく、自棄になって冷静さを失うでもなく。
自他の置かれている環境を冷静に把握し、取るべき行動を決め、決めたらそれを覚悟を持ってやり抜く」
勿論、アデルとてこれを口頭でいっても浸透しない事は理解していた。本当に戦う時に、この言葉通りに動けるとは限らない。それでも0と1は違う。彼らは歴史の中で戦うだろう。この言葉が、その中の武器に一つにでもなればいい。
「力があればいいとは言わない。だが力が無くては救えない事もあるのだ」
「防衛も然りだ。武が全てではない。だが、訓練無くして守れないことがある」
簡素な盾を配りながら『盾の誓い』オスカー・バンベリー(CL3000332)は村人達に口を開く。
「だが守りは個人の力よりも、集団の結束が役立つ。守り、守られる者たちとの結束が盾をより強固にするのだ」
言いながらオスカーは地面に図をかきながら説明する。防衛に必要な陣形。その結束の強さ。村の地形を例にとった防衛の基礎。それを教えた後に、模擬戦を開始する。相性の良い者同士を組ませたり、その逆の組み合わせを行ったり。
「互いに息を合わせる事を意識するんだ。大事なのは、互いが互いを守る意識を持つことだ」
交流することで絆が生まれる。絆が生まれれば、生きる理由も生まれる。オスカーはこの模擬戦がいい方向に進んでいくことを願っていた。
「ワシは今からお前達に殴られる!」
腕を組み、無抵抗の意志を示す『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)。戸惑う村人達にシノピリカは声を張り上げる。
「ワシは悔しい! お前達を縛る心の鎖と、その残酷さに! ノウブルとて絶対の神ではないのだと知るがいい!」
ヘルメリアの亜人はノウブルに逆らえないように『教育』されている。それはヘルメリア社会が生んだ空気でもあり、亜人にかけられた心の枷だ。
「これは尊厳の問題なのじゃ。殴られる痛みだけでなく、殴る痛みも知ることで、己が拠って立つ礎とせよ!
互いに痛みを感じる者だと知ることで、我らは種族など関係ない『人』であってほしいのじゃ!」
ノウブルとの格差。失われた尊厳。それを取り戻してほしい。そう訴えるシノピリカ。
その言葉と情熱に促されるように、恐る恐るではあるが前に出てくるものが出てきた。
「ノウブルの殴り方を教えないといけませんね」
「ま、まあこっちはゲームなので」
シノピリカの方を見ながら『我戦う、故に我あり』リンネ・スズカ(CL3000361)がふむりと頷き、『はくばにのったおじさま(幻想)』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)が宥めるように押さえ込んだ。二人は村人達と一緒に【陣取り】を行おうとしていた。
「はい、というわけでルール説明です。二チームに分かれて三つある互いの『旗』を奪い合います。旗が三本とも奪われれば、負けです」
「守りに重点を置いてもいいですし、攻めに重点を置いてもいいです。そこは戦略ということですので、チーム内で話し合ってください」
デボラが陣取りの説明を行い、リンネが補足するように続ける。
「では事前にノートルダムの息吹を付与して――」
「楽しむことが目的なので、スキルの使用は禁止です」
「なんと!?」
ガチで勝ちに行くリンネを止めるデボラ。そんな一面もありましたが、
「勝機です。ここで攻めに行きましょう」
「読み通りです。私が押さえますので、旗の方を取りに行ってください」
「ここは強引に突破するのが吉。そういえばデボラ様と本気でやり合うのはこれが初めてでしたか?」
「……陣取りゲームだってことは忘れないでくださいね」
デボラチームとリンネチームで別れての攻防戦。一進一退のいい勝負になったとか。
「陣取りゲームって何気にフリーエンジンの活動に近いですよね。これがキッカケで何かを得てくれると嬉しいです」
「ええ。相手の拠点に突撃するなど、合戦の醍醐味です」
そんな事を言いながら、陣取りゲームは続いていく。
●デザイア――願望という名の未来。
「あー……疲れたー」
荷物運びもある程度終わり、ひと段落して『その過去は消えぬけど』ニコラス・モラル(CL3000453)は腰を叩いて一息つける。体を軽くほぐしている時にジョン・コーリナーの姿を見つけた。手を振って呼び寄せる。
「よう、ジョンちゃん。お互い大変だね」
「いえいえ。むしろ貴方達の方こそゆっくり逗留してくれてもいいのに」
積み荷のリストを手にジョンがニコラに応える。
「ところで、『解放奴隷』ってどうよ? いや、分かりやすくあるんだけど奴隷と言っている時点で奴隷解放組織としては問題あるんじゃない?」
「名称問題ですか。なるほど一理ありますね」
「デザイアとかどうよ。そう在ってほしいと願いを込めて」
一考しましょう、と言葉を返してメモを取るジョン。
「ではこちらも聞きますが、『そう在ってほしい』方がおいでで?」
「……耳聡いね。流石は元スパイ。
ステラ、っていう娘を探しててね」
「近くヘルメリア最大の奴隷マーケティングが開かれます。奴隷協会主催の大祭です。
そこでなら、何かの手がかりが見つかるかもしれませんよ」
「いや、何処にいるかはわかっていてね。そいつが手放してるとは限らなくてなあ」
はあ、とため息をつき遠くを見るニコラス。
その方向にはヘルメリア首都、ロンディアナがある――
●そして『ティダルト』は進みだす
数日の滞在の後にフリーエンジンの拠点『ティダルト』の炉に灯が籠る。煙を吐き出しながら城は動き出す。
この数日間、自由騎士との交流で村人達は何を得たのか。
それはこの後の歴史が語ってくれるだろう――
「農業だ! 体を動かそう!」
槍を鍬に切り替えて『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)は村人達に声を張り上げる。言葉ではヘルメリアの情勢を知っていても、いざ目の前で生気のない瞳をみると現実の痛みを感じてしまう。
「先ずはイ・ラプセル産の美味しい芋を食べるといい! ふかし芋だ!」
分け与えるのはイ・ラプセルから持ってきた芋を蒸気でふかした芋だ。それに潮をつけて村人達に渡す。簡素な料理だが、それでもヘルメリアにはないものなのか表情が変わる。
「正しいやり方で、丁寧に育てれば育てるだけ、作物は美味しく、たくさん育つ。誰かに無理やりやらされるんじゃない、自分のために、自分たちが美味しいものを腹一杯食えるようにするために働くんだ。
やり方は今からオレが教える! ぜひとも覚えていってくれ!」
「……ん。いっしょにやろう。レティーナもいっしょに」
「はい。あの、よろしくお願いしますね」
ナバルと一緒に農作業を行う『たくさんのわたしのたいせつ』リムリィ・アルカナム(CL3000500)。レティーナと一緒に身体を動かしていた。動作の一つ一つを丁寧に。パワーのあるリムリィは、広範囲の土を耕していく。
「わたしがもっとちいさかったころ、おなじようにいきたいとかなにもおもわないときがあった」
畑を耕しながら、リムリィは呟く。自分自身とヘルメリアの奴隷。重なる部分はある。
「でもなにもしなくてもおなかはすいて、おねえちゃんがりょうりをつくってくれた。
たべたらとてもおいしくてもっとたべたくなった。そういうりゆうだけでもいきてちゃだめかな」
「分かる、気がします。イ・ラプセルの料理、おいしかった、ですもんね。暖かかった、ですもんね」
リムリィの言葉に涙をこらえながら答えるレティーナ。生きる希望は、本当に普通の事なのだ。それさえ抱けなくなることが、世の中にはある。
「奴隷から解放されてもそれで終わりでは無いんですね……」
村の人達を見ながら『叶わぬ願いと一つの希望』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は沈痛な面持ちで呟いた。戦いに勝てば終わりではない。そこからが始まりなのだ。それを実感する。
「こういうのはどうでしょうか? 木を削って、そうそうゆっくりと……」
木を使ったアクセサリ作成を教えるティルダ。手を動かして何かを作る。それだけでも嫌な事を忘れる事が出来るのだ。もしかしたらそれが将来の役に立つかもしれない。はるか遠く、亜人の壁が取り払われたその時に。
「木の実に穴を開けて、糸を通す……。ネックレスの完成です」
首にかけられたドングリのネックレス。それが村人達に笑みを蘇らせた。
「イ・ラプセルとは流石に違うが、かじられた樹があるなら草食動物はいるだろう」
周囲の地形を確認しながら『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は村人達を連れて進む。狩猟のイロハを教えながら、動物の習性を教える。そしてそれに基づいた罠設置などの狩りのやり方を教えていた。
(奴隷時代に『狩り』をさせられた経験がある……か、皮肉だな)
奴隷の中には主から『鷹役』『犬役』として狩りの道具に使われたものもいる。ウェルスにとってその経験が生きるのは鼻持ちならないが、今はその怒りを抑えておく。それとは別の狩りを教え、奴隷時代の恐怖を払拭させなくては。
「次は皮のなめし方だ。いいものが出来たら、俺が買い取ってやるぜ」
努力が成果になる。その事を教え、経済を回す。商人ならではの奴隷解放術だった。
●治療は大事
どこぞのペストマスクに代表されるように、この時代の医者の服装は『黒』が一般的だった。衛生論よりも礼服的な意味合いが強かったと言われている。
「いたいのいたいのとんでけー♪」
なので『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)のワンピースに白エプロンと言う姿はそれなりに斬新であった。清潔感を表に出し、その清潔感に負けない優しい笑顔としぐさ。それが子供達の心を癒していく。
「良薬は口に苦しって言うんですよ? 我慢して飲んでくださいね」
そして大人には甘い声ながらもきっちりとした対応を行う。甘えは許さないですよ、と笑顔で伝えてそのまま相手が薬を飲むまで笑顔を続ける。看護の手を抜くつもりはない。元気な体の大事さを理解しているからだ。
「まあ、サイラスさんの薬、全部苦そうな気がするけど」
「失礼な。一割は違うぞ。すぐ寝てしまうからな」
「それは気絶しているだけなのではないか?」
サイラスの言葉にツッコミを入れる『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。患者に毒を盛る相手ではない事は知っているのでそれ以上は言うつもりはない。というか言っている余裕はない。火傷に擦過傷、酷いものだと焼きごての跡。それを前にツボミの手はひっきりなしに動いていた。
(とはいえ、時間的な余裕はある。大事なのは『優しい治療』だな。可能であれば心と体の両方を。医を信頼できるように)
肉体のダメージは、そのまま精神を摩耗させる。傷は癒えるのだと知ることで、治療への希望が見える。医術とはそういうものだ。『医は仁術』とは故郷の言葉だったか? そんなことを思いながら、魔術と医術を組み合わせて傷を癒していく。
「これで良し。傷が痛んだら薬を飲むように。では、お大事に」
「サシャはシスターのおねーさんらしく、お怪我した人を看病したりして頑張るぞ!」
えっへんと胸を張る『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)。誕生日が来て年を一つ重……おねーさんになったサシャは溢れんばかりの姉力を披露すべく治療の現場に立つ。元気いっぱいの子供に見えて、手技はしっかりしていた。
「怖くないぞ、痛くないぞ、男の子は痛くても我慢できるんだぞ! いい子だぞ!」
サシャは主に子供を中心に診ていた。目線を合わせて、声をかける。本当に痛い傷でも痛くなくなるまで声をかけ、医者がここに居るのだという事を教える。傷は治る。そう信じることが治療の第一歩だ。
(本当は美味しいもの食べたいけどヘルメリアのご飯はあまりおいしくないって言ってたからきっと我慢できるんだぞ)
じっと我慢の子、サシャ。そとで自由騎士達が料理をふるまっているが、そちらも我慢していた。
●自由騎士クッキング
村の中央にある広場。そこでは即席の厨房を使って料理が振舞われていた。
「おもてなし、するです」
『おもてなすもふもふ』雪・鈴(CL3000447)は村人達を前に口を開く。ノウブルやキジンの前では何も言えなくなる鈴だが、村人は亜人での元奴隷で構成されている。ノウブルへの恐怖はヘルメリア以外でも存在するのだ。
「食べたいだけ食べていいんですよ。ここには『だめ』って言うひとはいませんから」
自分の経験に照らし合わせて村人達に声をかける鈴。豪華な料理よりも暖かくて腹持ちがする料理を。お腹がすいた時の苦しさは何物にも代えがたい。制限されない暖かい料理。それこそが村人達を救うのだ。スープをかき混ぜながら、仲間に問いかける。
「アンジェリカさん、そちらはどうですか?」
「ええ。もう少しでできますわ」
鈴の言葉に応える『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)。大きな鍋と複数のフライパンを次々と動かし、料理を作っていく。見た目とは裏腹のパワーで厨房を切り盛りし、料理を作っていく。
「こんなに大人数の調理ですもの、同時に沢山作らないと追いつきませんね! ふふっ」
おしとやかに笑いながら体を動かしていくアンジェリカ。肉料理に魚料理。見た目で喜び、香りで感じて、味で楽しむ。栄養重視のヘルメリア料理に負けるつもりは毛頭ない。料理に盛り付けながら、笑顔を絶やさずアンジェリカは村人達に差し出していく。
「さぁ、迷える子羊達に美味しい料理と笑顔をお届けいたしましょう!」
「カノンも美味しい料理をたくさん作るよ!」
自前の調理器具セットを取り出し戦闘開始……ではなく調理を開始する『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)。傷ついた村人達を何処まで癒せるかはわからない。だけど、何かをしてあげたいという気持ちだけは充分にある。
「ご飯とお味噌汁! 後は卵焼き!」
米を研ぎ、粒を揃えて炊いた米でおにぎりを作るカノン。調理時間の合間を縫って味噌汁を作り、ダチョウの卵で卵焼きを作る。カノンの教会ではいつも作っている料理だが、ヘルメリアの村人には珍しい物のようだ。美味しそうに食べる姿を見て、笑顔を浮かべるカノン。
「まだまだあるよ。たくさん食べて、笑顔になってね!」
「味噌は美味しい! そして麺も美味しい! 即ち、この二つを足せばさらに美味しい!」
鍋をかき混ぜながら『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は胸を張る。料理は得意ではないが、美味しい物を作ろうという気概は胸にあった。
「焼きそばにしようと思ったけど、温もりを得るならこっちよね!」
ぴ、と親指立てるエルシー。匂いと勢いで食欲をそそる焼きそばよりも、お腹の中でじんわりと温めてくれる味噌麺の方がいい。そう思っての選択だ。最初は不思議がっていた村人達も、食べ方と味を理解して食指が進んでいく。
「他にもありますからね! たくさん食べて行ってくださいね!」
「イ・ラプセルの大衆家庭料理! 美味しいですよ♪」
腕まくりをして『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)は調理に挑む。人を救う、などとフーリィンは言わない。自分に出来る事はただ支える事。その背中をそっと押すことしかできないのだと知っていた。
「特別な力はありませんけど、心を込めてお作りしますね」
この料理に魔法的な要素はない。イ・ラプセルではどこにでもある家庭の味だ。だからこそ、お腹にすんなり入る。食欲は生きる原動力。『また食べたい』という欲求が、明日を生きるエネルギーになればいい。その想いを込めて、フーリィンは料理を作る。
「一度味を占めたらもっと欲しくなるのがヒトですからね。本能的な欲望、大いに結構!」
『また食べたい』と言われた時に料理を差し出せるようにしたい。フーリィンはそう願い、鍋をかき混ぜる。
●心を癒す優しい音
「『技術よりも気持ち』、か」
『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)はフリーエンジン代表の言葉を反芻する。何かを癒したい助けたいという気持ちがその人に伝われば、それで救われるかもしれないのだ。はこうとした弱音をぐっと飲みこんで、アダムは一歩踏み出した。
「初めまして。僕の名前はアダム。君の名前を教えてもらえないかな?」
アダムは村人たちの目を見て、真摯に語りかける。芸事に詳しいわけではないアダムに出来る事は、一人一人と話し合って心をほぐすことだけだ。すぐには無理かもしれない。だが、少しずつでも進んでいければ。
「そうなのか、それはすごいね。実はイ・ラプセルにはあんパンというものがあってね――」
「心が疲れ切っているんですね。それなら、唄や踊り、楽器を演奏して笑顔になるのが一番です!」
リラを軽く奏でながら『夜空の星の瞬きのように』秋篠 モカ(CL3000531)が村人達に語りかける。心に深い傷を負い、立ち上がれない人達。そういう心を癒す為の優しい曲を奏でよう。モカは柔らかくほほ笑んで、弦をはじく。
「手拍子をお願いしますね。では――」
モカが奏でるのは明るく、そして楽しい曲。手拍子を合わせるだけでも曲に参加したつもりになれるため、『自分も曲に参加している』という一体感を感じる事が出来る。これからの皆が笑顔になれますように。そう願って、モカは踊った。
「はい。では次はこういう曲です。行きますね」
「とりまバイブス勝負っしょ、ウェーイ! アゲてこーぜ!」
「アゲアゲで行くよ!」
『落とした財布は闇の中』ルガトルシュ・フォルガ(CL3000577)はアミナと協力し、男子を踊っていた。独特のノリに最初は面食らっていた村人も、すぐに理解して体を動かしていく。その様子を見て、ルガトルシュは笑みを浮かべた。
「自由になってェ? めでてぇっつーのに、いつ踊ンだよ? 今だろっ!」
両足を使った活発的なダンスから、背中と肩を使って回転する破天荒な踊りまで次々と踊りを披露するルガトルシュ。周りで奏でられる音楽に合わせてリズムを変え、曲の終わりに合わせて回転してポーズを決めた。
「ウェーイ! カーシーたんもっと激しくしても良きよ? パーリナイよ」
「いえーい! じゃあどんどん激しくいくよ」
ルガトルシュのハイタッチに答える『炎の踊り子』カーシー・ロマ(CL3000569)。心の傷は消えない。上手く付き合っていくしかない。太鼓を叩きながら、激しいリズムでルガトルシュとアミナの踊りを加速させていく。
「はい。皆も一緒に。リズムに合わせて手拍子足拍子するだけ。簡単でしょ?」
太鼓をたたきながら村人達に説明するカーシー。手本とばかりにアミナが手を叩き、そして次からは村人達も手を叩いていく。原始のリズムは心にたまっていた澱みを吐き出させる。強く、激しく響くビートが感情を揺さぶっていく。
「色んな土地で色んな人を見たよ。心の毒で自分を殺した人。毒を飼い慣らしてる人。運が良けりゃ後者になれるさ。
……なーんて、シリアスは慣れないねー」
「これが、奴隷だった人たちの現状……。ううん、今は考えるよりも行動よね!」
音楽に集中するために瞳を閉じて、心を落ち着かせる『望郷のミンネザング』キリ・カーレント(CL3000547)。ヘルメリアに住む亜人の惨状は聞いている。マザリモノであるキリもけして楽な旅路ではなかったが、彼らは国単位で虐げられて心を痛めているのだ。
「キリが教える側になるなんて……」
わずかに感傷に浸った後に、キリはギターを弾く。自分が教えられたように、他人に教えていく。最初は簡単な音から。そこから少しずつやれることを増やしていく。そうやってキリが歩いてきたように、今度は彼らに歩いてもらうのだ。
「この音がいつか、貴方達がヘルメリアで奏でられますように……」
そんな思いを抱き、キリは村人にギターを教える。遠い未来、彼らが音楽を奏でる未来を願って。
●拳を握って立ち上がれ
自由騎士の中には、村人達に闘争心を抱いてほしいという者もいた。
「戦い方を教えてやる」
そう言って村人達の前に立ったのは『鋼壁の』アデル・ハビッツ(CL3000496)だ。とはいえ本当に戦闘訓練を行うつもりはない。戦うという事の心構え。それを教えていた。
「無闇に怯えるでなく、自棄になって冷静さを失うでもなく。
自他の置かれている環境を冷静に把握し、取るべき行動を決め、決めたらそれを覚悟を持ってやり抜く」
勿論、アデルとてこれを口頭でいっても浸透しない事は理解していた。本当に戦う時に、この言葉通りに動けるとは限らない。それでも0と1は違う。彼らは歴史の中で戦うだろう。この言葉が、その中の武器に一つにでもなればいい。
「力があればいいとは言わない。だが力が無くては救えない事もあるのだ」
「防衛も然りだ。武が全てではない。だが、訓練無くして守れないことがある」
簡素な盾を配りながら『盾の誓い』オスカー・バンベリー(CL3000332)は村人達に口を開く。
「だが守りは個人の力よりも、集団の結束が役立つ。守り、守られる者たちとの結束が盾をより強固にするのだ」
言いながらオスカーは地面に図をかきながら説明する。防衛に必要な陣形。その結束の強さ。村の地形を例にとった防衛の基礎。それを教えた後に、模擬戦を開始する。相性の良い者同士を組ませたり、その逆の組み合わせを行ったり。
「互いに息を合わせる事を意識するんだ。大事なのは、互いが互いを守る意識を持つことだ」
交流することで絆が生まれる。絆が生まれれば、生きる理由も生まれる。オスカーはこの模擬戦がいい方向に進んでいくことを願っていた。
「ワシは今からお前達に殴られる!」
腕を組み、無抵抗の意志を示す『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)。戸惑う村人達にシノピリカは声を張り上げる。
「ワシは悔しい! お前達を縛る心の鎖と、その残酷さに! ノウブルとて絶対の神ではないのだと知るがいい!」
ヘルメリアの亜人はノウブルに逆らえないように『教育』されている。それはヘルメリア社会が生んだ空気でもあり、亜人にかけられた心の枷だ。
「これは尊厳の問題なのじゃ。殴られる痛みだけでなく、殴る痛みも知ることで、己が拠って立つ礎とせよ!
互いに痛みを感じる者だと知ることで、我らは種族など関係ない『人』であってほしいのじゃ!」
ノウブルとの格差。失われた尊厳。それを取り戻してほしい。そう訴えるシノピリカ。
その言葉と情熱に促されるように、恐る恐るではあるが前に出てくるものが出てきた。
「ノウブルの殴り方を教えないといけませんね」
「ま、まあこっちはゲームなので」
シノピリカの方を見ながら『我戦う、故に我あり』リンネ・スズカ(CL3000361)がふむりと頷き、『はくばにのったおじさま(幻想)』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)が宥めるように押さえ込んだ。二人は村人達と一緒に【陣取り】を行おうとしていた。
「はい、というわけでルール説明です。二チームに分かれて三つある互いの『旗』を奪い合います。旗が三本とも奪われれば、負けです」
「守りに重点を置いてもいいですし、攻めに重点を置いてもいいです。そこは戦略ということですので、チーム内で話し合ってください」
デボラが陣取りの説明を行い、リンネが補足するように続ける。
「では事前にノートルダムの息吹を付与して――」
「楽しむことが目的なので、スキルの使用は禁止です」
「なんと!?」
ガチで勝ちに行くリンネを止めるデボラ。そんな一面もありましたが、
「勝機です。ここで攻めに行きましょう」
「読み通りです。私が押さえますので、旗の方を取りに行ってください」
「ここは強引に突破するのが吉。そういえばデボラ様と本気でやり合うのはこれが初めてでしたか?」
「……陣取りゲームだってことは忘れないでくださいね」
デボラチームとリンネチームで別れての攻防戦。一進一退のいい勝負になったとか。
「陣取りゲームって何気にフリーエンジンの活動に近いですよね。これがキッカケで何かを得てくれると嬉しいです」
「ええ。相手の拠点に突撃するなど、合戦の醍醐味です」
そんな事を言いながら、陣取りゲームは続いていく。
●デザイア――願望という名の未来。
「あー……疲れたー」
荷物運びもある程度終わり、ひと段落して『その過去は消えぬけど』ニコラス・モラル(CL3000453)は腰を叩いて一息つける。体を軽くほぐしている時にジョン・コーリナーの姿を見つけた。手を振って呼び寄せる。
「よう、ジョンちゃん。お互い大変だね」
「いえいえ。むしろ貴方達の方こそゆっくり逗留してくれてもいいのに」
積み荷のリストを手にジョンがニコラに応える。
「ところで、『解放奴隷』ってどうよ? いや、分かりやすくあるんだけど奴隷と言っている時点で奴隷解放組織としては問題あるんじゃない?」
「名称問題ですか。なるほど一理ありますね」
「デザイアとかどうよ。そう在ってほしいと願いを込めて」
一考しましょう、と言葉を返してメモを取るジョン。
「ではこちらも聞きますが、『そう在ってほしい』方がおいでで?」
「……耳聡いね。流石は元スパイ。
ステラ、っていう娘を探しててね」
「近くヘルメリア最大の奴隷マーケティングが開かれます。奴隷協会主催の大祭です。
そこでなら、何かの手がかりが見つかるかもしれませんよ」
「いや、何処にいるかはわかっていてね。そいつが手放してるとは限らなくてなあ」
はあ、とため息をつき遠くを見るニコラス。
その方向にはヘルメリア首都、ロンディアナがある――
●そして『ティダルト』は進みだす
数日の滞在の後にフリーエンジンの拠点『ティダルト』の炉に灯が籠る。煙を吐き出しながら城は動き出す。
この数日間、自由騎士との交流で村人達は何を得たのか。
それはこの後の歴史が語ってくれるだろう――
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
特殊成果
『銅のブローチ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
†あとがき†
たぢまCW:ゴルディアで願い事来たからフリーエンジンの料理をよろ。
どくどく:りょ。依頼にねじ込んどくわ。
たぢまCW:料理が不味いのがヘルメリアのアイデンティティなのに!
と言うやり取りがあったとかなかったとか。まだウナギゼリーも出してないのになぁ。
ともあれお疲れ様です。皆様の気合の入ったプレイングで、村に新たな希望の灯がともりました。この灯がどうなるかは、また別のお話。
MVPは解放奴隷に新しい名前を付けたモラル様に。
それではまた、イ・ラプセルで。
どくどく:りょ。依頼にねじ込んどくわ。
たぢまCW:料理が不味いのがヘルメリアのアイデンティティなのに!
と言うやり取りがあったとかなかったとか。まだウナギゼリーも出してないのになぁ。
ともあれお疲れ様です。皆様の気合の入ったプレイングで、村に新たな希望の灯がともりました。この灯がどうなるかは、また別のお話。
MVPは解放奴隷に新しい名前を付けたモラル様に。
それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済