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<<豊穣祭WBR>>ウィートバーリィライ




 ウィートバーリィライ!
 それは楽しい麦のお祭。
 麦の種をまく始まりを祝い、豊穣を願うお祭り。
 水の国イ・ラプセルは毎年この時期になると仮装するヒトビトが街を賑わせる。
 
 麦の勇者に扮した子供たちが悪霊に扮した大人を麦の穂でたたいてやっつけることで、悪霊から作物と子供を守るという風習。
 子供と農作物が健やかに育つことを願われたその祭りは今では形骸化して、大人も子供も仮装を楽しみ、麦でできたエールをみなで楽しむというものに変わってきている。
 それもまた時代の流れ。

 大いに賑わう、仮装だらけのイ・ラプセルをたのしもう!


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
イベントシナリオ
シナリオカテゴリー
日常γ
■成功条件
1.お祭りをたのしむ
 たぢまねこてんです。

 いつもどおりNPCは王族のみなさんとメモリア「以外」のたぢまのNPCとチョコロップの味方PCとクローリーについては呼んでいただければ、遊びに向かわせていただきます。
 EXでランダムを希望していただければ、こちらから話すていで絡ませていただきます。
 お一人様でさみしいときは是非ご利用くださいませ。

 ムサシマルはそのあたりを仮装して走り回っています。
 アーウィンは特に仮装はせずに子供たちに麦でぺしぺしされてます。
 アルヴィダはただ酒かっくらっています。
 クローリーはなんかよくわからないです。適当に遊んでいます。

 できること
・仮装して麦の祭りを楽しむ。
 (イラストがなくても仮装できます)
 勇者役の子供たちに麦でたたかれたり、悪霊になって誰かをおどろかせたりも可能です。
 
・露天をみてまわる。
 たくさんの露天があります。ある程度のお店は通商連のみなさんがいい感じにたててくれています。
 
・エールをのむ
 無料でエールがふるまわれています。子供には麦のジュースを。
 ちなみにお酒のおつまみはありませんので適当にそのあたりで買うといいでしょう。

・それはそれとしてのんびりたのしむ。
 (警備については吾語君のほうでどうぞ!)

 WRBをめいっぱい楽しんでくださいませ。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
状態
完了
報酬マテリア
0個  0個  1個  0個
8モル 
参加費
50LP
相談日数
7日
参加人数
16/50
公開日
2019年11月11日

†メイン参加者 16人†

『キセキの果て』
ニコラス・モラル(CL3000453)
『背水の鬼刀』
月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)
『教会の勇者!』
サシャ・プニコフ(CL3000122)



 さてもはても豊饒祭である。
 祭りというのはかくも騒がしいもの。大人も子供も大騒ぎ。
 だが豊饒祭に至っては、主役はなんといっても勇者である子供たちだろう。
 アチラコチラで勇者に扮した子供たちが、仮装する大人たちを麦の穂でたたき、お菓子をもらって満足そうな笑みを浮かべている。
 微笑ましい光景である。
 
 
「ハクタクだぞ~~~」
 非時香・ツボミ(CL3000086)が東亜の――央華大陸に根ざす伝承であるいくつもの目をもった獣の幻想種の姿で脅せば集まってきた子供たちが一斉に彼女を麦の穂で叩く。
 まあ、仮装というよりは本性、元の姿、ルーツである姿に戻っているだけではあるが、子供たちにはオオウケである。
 たまにやんちゃなガキに足を蹴られるが大人として見逃す。こんど病院にきたときには一番苦い薬を処方してやる。
「なあ、アーウィンよ」
 子供たちの波が少しだけひいたときに同じようにお化けの仮装(シーツをかぶるのみの手抜き仮装だが、中身はあるのか? と体を弄って遊んで涙目にしたから満足ではある)のアーウィン・エピにツボミが声をかける。
「ガキどもは元気で生意気で無軌道で暴れん坊の好き勝手だな」
「ん? それツボミせんせーの自己紹介か?」
「殴るぞ? この祭りでは、ガキどもは前からこうだった」
「しらねえよ。俺の国ではこんな祭りはなかった」
「違う違う。世界がこんな、戦争なんていうつまんない代物を起こすまえから、どの国の子供たちは元気だった。それは変わってない」
「まあな」
 アーウィンはきっと遠い地にいる『チビども』のことを思い出しているのだろう。遠い目になっている。
「だからな、大丈夫だ。まだ大丈夫だ」
 まるでその望郷を見抜かれたような「大丈夫」の言葉にアーウィンはツボミを振り向く。
「きっと元気だ。多分な」
「……そうだよな。チビどもは元気のはずだ」
 アーウィンの言葉にツボミは満足する。
 こいつのことはよく知ってる。まあ、出会ってからの日数は決して多くはないがわかっている。
 だからそうしてやると決め、あるき始めたときから覚悟をしてるし、止める気もない。
 だがそれが未来も見えず「ずっと」であれば?
 つかれるし、不安にもなる。
 だから、すこしだけ……。うんちょっと、ちょっとだけ。
 ん? あれ? これは――。
 ツボミの奥底からなにか熱が湧いてくる。これは違う。
 甘えさせたつもりだった。だけれど。
 これは甘えさせるというマウントの上で行われた己自身の甘えではないのか……そう自分で認識した途端なんだか妙に居づらいというか妙になんというかこれは――。
「よーし、ガキども!
 いいかこれから私がラスボスだ!
 アーウィン共々倒せたら、マカロンゲットだ。これは甘くてうまいぞ」
「お、おい、突然なんだよ!」
 毛皮がもふもふで助かった。地肌が赤くなっていることを悟られることはないだろう。
 
 食道楽で楽しむのはテオドール・ベルヴァルド(CL3000375)とティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)。シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)に月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)の4人だ。
 財布役はテオドールおじさん。お手柔らかにとは言ってはおいたが、全店舗制覇を目指す彼らはきっと聞いてなんていないだろう。
「せめて店に迷惑はかからぬようにな」
 そんな彼の注意も欠食児童たちはきいているのかどうかわからない。
「お店たくさん……!」
 故郷ではみることなんてなかったこんなお祭りの出店の数々に女吸血鬼に扮したティルダは目を輝かせる。
 彼女にとっては「豊穣」とは彼女の同胞を奪った上の仮初の幸福。ティルダ本人にとってはただの害悪であった。
 しかしこの国は違う。だれも犠牲にしない豊穣によって育まれたそれをみなで分け合い喜ぶ。とてもすてきなものだと気づいた。
「今年もたぁくさんお店がでてますねぇ~、さあ、ティルダさんもヨツカさんも遠慮はしちゃだめですよ」
 お財布は別にあるからとシェリルはよだれをたらさんばかりに微笑む。
 ヨツカなど肉系の食べ物をすでに両手いっぱいに持っている。
「テオドール、感謝するぞ。ヨツカはこんな大きな祭りははじめてで、どこから手をだしていいかわからん。あちらもいいな、ん? こちらも」
 逆にティルダはなにをどうすればいいのかわかってはいない様子だった。
 目ざとくそれを察したシェリルは、片手を腰に、もう片方の手の指をたてて振る。
 じつは八千代堂――彼女の店――も出店予定で市場調査はすでに済ませてあったのだ。
「ティルダさんお悩みでしたらアドバイスを~
 まずは粉ものからいきますよ~。
 アマノホカリの屋台がわりとおおいので、お好みの具を粉にまぶして秘伝のあまいタレをたっぷりと絡めた焼き物にふわふわとろとろの衣につつんだテンタクル焼きに、パンケーキ、卵と小麦粉を混ぜて薄く焼いたものに果実を包んだお菓子、たぁくさんありますからね」
 その説明にティルダはよだれが出そうな顔で頷く。
 その隙にもまた美味しそうな店を見つけたヨツカがふらふらとはぐれてしまいそうになるのをテオドールが首根っこを掴んでとめる。
「うお、おいしそうな匂いがした。甘いソースをかけた肉らしい。ヨツカはあれがくいたい」
「わかってる、わかってる。順番だ。土産にしたって構わないからな」
 かくいうテオドールは屋台の食べ物を食べるたびについつい幼い妻のことを思い出し、もう一つ同じものを土産に、と包んでいる。それほど大食漢ではないとは自分では思ってはいるが随分とその土産物のは増えている。
 ティルダがおいしそうに頬張れば、妻に重ねてあれもいい、これもいいと思って買っているうちにいつのまにかそうなっていた。
 こんなにいっぱいたべれません。テオドール様はわたしにテオドール様みたいにまるまるしろというのですか? なんて小言を妻に言われそうだ。
「なるほど~~、お食事のあとに甘いもの、ですね。
 でも全部たべきれるかなぁ? セーブしとかないとですね! 甘いものはいっぱい食べたいので」
「うふふ~なら、シェア作戦ですよ~。いろんなものをみんなでつつきあうんです~。そうしたらいっぱいたべれますよ~」
 そんなシェリルのアドバイスにティルダは目を輝かせる。
「残したら、ヨツカが食べるぞ。おのこしはよくない」
「うふふ~、そんなこといっておなかが弾けちゃいますよ~」
「そ、そうか? こんなにオイシイもので詰まったお腹が弾けるのはもったいないな」
「そんなときはこのタッパ~、お残しはこちらにいれておけば持ち帰りもできますよ」
「おお! シェリルは天才だ! ヨツカは感心した」
「うふふ~、そんなこといってもなにもでませんよぉ~」
「シェリルさん、あれ! あのきらきらしたの、なんですか?」
「ああ、あれは飾飴といって~」
「ほら、ティルダ。ひとりで向こうにいくと迷子になるぞ。それはよくない」
 自分のことなど棚の上にあげてヨツカがティルダに注意するのにテオドールは苦笑する。
 そんなヨツカに子供たちが群がり退治をされそうになるのをティルダもまた混ざって退治されそうになって、戦利品を子供たちに配る。
 それは平和で尊い瞬間。誰もが幸せで誰もが笑顔で、この豊穣を噛みしめる楽しい時間。
 ティルダはそんな瞬間が幸せで幸せで、でもすこし罪悪感で自分の片目にそっと手をやった。

「がおー、アンジェリカおばけが皆のお菓子を食べちゃうぞ~」
 アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は勇者の姿から一転、今度は子供たちと戯れようとおばけの扮装で子供たちに襲いかかる。
 子供たちは奪われてなるものかとアンジェリカを追い回すが、速度をスキルであげたアンジェリカには追いつけない。
 少々大人げないがタイムスキップでのまるで瞬間移動のようなその動きに子供たちは大いにもりあがったのでよしとしよう。
 でもまあ、やりすぎも子供たちの意欲をそいでしまう。「大人」としてはそれはよくない。
 もうすぐ17の誕生日でも、まだまだしばらくさきまでエールを飲めない年齢である。とはいえ、彼らよりは大人、なのである。
 もちまえのおもてなし能力で麦に叩かれれば大げさに倒される演技をして子供たちを喜ばせる。
 彼らは未来自分のように戦うのだろうか? それとも平和になった世界で自らのスキルを活かし、職業につきその使命をまっとうするのだろうか?
 それは誰にもわからない。そう、水鏡にだって。
 だからよく遊べばいい、よく学べばいい、よく励めばいい。
 そうして健やかに育った彼らはきっとこの国を良くしてくれるのだろうから。
 
「で、ですね、私は思うんですよ!」
 子供たちに麦の穂に叩かれているデボラ・ディートヘルム(CL3000511)は腕組をしながら、声をかけてきたクラウディア・フォン・プラテスに話し始める。
「う、うん?」
 一言悪霊役を務める彼女をねぎらうつもりだっただけなのに、どうしてこうなった。
「手っ取り早く素敵なおじ様を婿に迎える手をご指南いただきましてそれ相応を身分で腕の立つ方を探しているのですが何処かに転がってませんか!?」
 本当にどうしてこうなったのだろう。
「えっと、うん、まあお仕事柄たくさんのおじさんに会うことはおおいんだけれど……ね」
「でしたら! ええ! お願いします」
「うーんと……デボラさん、キレイだからほら、こういうのってめぐり合わせでしょ?」
「最近!! 最近ですね! 周りの友人達が結婚しただの子供が出来たなどの報告を聞くようになりまして。それ自体は喜ばしい事です!」
 そういう話題はバーバラさんのほうが……とはおもったけどダメだ。あの人とこの人がタッグを組んだらとんでもない女子会が開かれてしまう。水鏡を守るプラロークとしてそんな恐ろしい未来は止めないといけない。
「「もうそろそろ希望通りの殿方が現れて子供を産みたいなぁ」と切に思う訳です」
「ねえ、自分からもっと積極的に話しかけたりしないの?」
「しーてーまーすーーーー。こう、希望に足りないとか、収入がとか、こういろいろあるんですよ!」
 ああ、おなじことバーバラさんもいってたなあとクラウディアは思う。
「もう少し、ハードルをさげて、年齢もさげたらいい人みつかるかも?」
「だーめーでーす~~~、っその事、第二夫人を狙うという手もありますがどうでしょう? 渡りに舟とか、スタイルのいい緑のかみのけの気立ての良いお嬢さんを求めている方とか!!!」
「えええっ! イ・ラプセルって重婚って……できないことも……ないとはおもうけど……でも、それで本当にいいの?」
「ッ――! ――! ――!」
 デボラの話は終わらない。ほんとに全然終わらない。子供たちもそっと何らかの恐怖を覚えて帰った。私もかえりたい。
 クラウディアが解放されたのはもうしばらく後の話。

「ストレンジ卿か」
 いやな相手との遭遇。どうやらかの女傑はこの仮装の祭りを目一杯満喫していらっしゃるようだが、それを口にするのは癪だ。
 ライモンド・ウィンリーフ(CL3000534)は眉根をよせてガブリエラ・ジゼル・レストレンジ(CL3000533) に声をかける。
「おや、ウィンリーフ卿。
 エールは試しているかね? この国のエールは格別だ。宝といっても過言ではない。
 それに――」
 ガブリエラは死神の仮装で、エールを片手に通商連の商人を指差す。
「外貨もしっかりと動いているようだ。それみろ。みんな、みんな幸せそうな顔だろう。
 ノウブルも亜人も同じ笑顔だ」
 その醜い平等主義にヘドをはきそうな顔でライモンドは眉をしかめる。
 その先には亜人がエール瓶をもった手を振り回し、いまにも喧嘩が始まりそうな雰囲気だ。喧嘩も祭りの花というものもいるのだろうが、秩序を旨とするライモンドにとっては気分がいいものではない。
「もとより戦争を起こせば外貨が回るのは常識だ。盛況になるのは当然だ。
 ノウブルと亜人が同等? あれをみろ、ストレンジ卿。
 亜人風情が暴れて。誰も手綱を持たぬからああなるんだ。
 我らノウブルという種の本質の差だろう。あれは荒ぶる種だ。見苦しい」
「おいおい、ウィンリーフ卿、喧嘩の相手はノウブルだぞ? 喧嘩両成敗じゃないのかね? お~い、そこの二人、喧嘩もほどほどにな。逮捕されてはせっかくの祭りがたのしめんぞ」
 ガブリエラが注意すれば、亜人とノウブルのふたりは渋々と鉾をおさめる。
「な? 話せば種なんぞ関係ない。和解だって可能だ」
「我々ノウブルは尊き血、同じではない」
「まったくもってウィンリーフ卿は頭が固いな。鉄だってもっと柔軟だぞ?」
 そういって艶やかに微笑むガブリエラにレイモンドは舌打ちをする。
「この笑みを浮かべれば男どもは赤くなったものだというのに。まあ数十年前の話だが」
 確かに若い頃であれば十分以上に周囲の男性を魅了しただろう笑みだ。しかして老女になった今、その笑みはまるで毒々しい魔女の笑みだ。魅了なんぞされてしまったらろくなことにならないだろう。この老獪な女の底はしれぬ。
「それに、仮装を褒めてくれてもバチはあたらんぞ。女性にたいしてのマナーを卿はわかっていない」
「淑女に対してのマナーしか知らないものでな」
「宣戦布告ととっていいのかね? 褒めてくれれば正義のポリティシャンに甘いお菓子をやろうとおもっていたのだがな」
 火花を散らす二人を子供たちがとりまく。
「魔女だー」
「おっと違うぞ、私は死神だぞ」
 亜人とノウブルが混じったその子供たちの群れに囲まれた二人はべちべちと尻を叩かれる。
「これは元気な子供だ。ウィンリーフ卿のケツを叩いたらたんと菓子をやろう」
 ガブリエラが意地悪げにそういえば、子供たちは素直にライモンドのケツを麦穂で叩きに行く。
「チッ」
 怒ることもできずにライモンドは苦々しい顔でその場を後にする。
「おお、さすがは我が国の子供たちだな。よしよし、悪い悪霊を退治した子供はならべ、おいしい菓子をやろう」

 悪霊……というか犬、もといオオカミの幻想種に扮したサシャ・プニコフ(CL3000122)は協会の子供たちを子分として引き連れて、あくのあくりょうのむれのりりーだーとして街を練り歩く。
 悪霊の姿をとるのは基本的には大人ではあるが、そんな大人のマネごとができて子供たちは上機嫌である。
 勇者役の子供たちをおどしたり、お菓子を交換したりしておおいに楽しむ。
「サシャたちはしにくをあさりにきたもうじゃなんだぞ!!」
 そういって大人に襲いかかれば、そのたびにお菓子が増える。
 ぶっちゃけサシャも子供扱いされているのだが、そんなことはサシャは気づかない。
「よし、つぎはあの屋台の死肉をあさるんだぞ!」
「はは、お嬢ちゃん、うちの「死肉」は新鮮すぎてびっくりするぞ?」
 もちろんお題は払いつつありついた死肉はなんとも。
 表面はぱりっとやけて香ばしく、中はたっぷりの肉汁でやけどしそうになるもジューシーで美味だ。
「どうだい? この「死肉」は?」
「うん!! めちゃくちゃうまいんだぞ!
 よし、こぶんたち、つぎの店をサシャたちでじゅうりんしにいくのだぞ」
「「「「おーー」」」」
 元気な悪霊たちは出店を荒らしてまわるのだった。
 
 ミイラウーマンはあそびたい。
 エルシー・スカーレット(CL3000368)は年に一度のこのお祭りを心待ちにしていた。
 もちろん年に一度のゴールドティアーズだって、アクアフェスだって、この先にまつオラトリオだって、花祭りだって楽しみにしてる。
 毛色のちがうお祭りはたのしいものなのだ。それをひとつひとつ楽しみにしてなにがわるい!
 今回のお祭りは、ウィートバーリィライ! は特別なのだ。
 子供たちが笑顔でいれるお祭り。それは絶対に騎士として守り抜く必要がある特別なお祭り。
 事前の戦いで大怪我をおったけれど、十分に回復はしている。だいたい全開。ミイラ姿につかった包帯のうちのいくつかは仮装じゃなくてガチだけどまあそれはそれ。
 オラクルなのだ。多少の怪我は平気平気。
「わー、みいらだー、包帯おんなだー」
 さわいで飛び込んでくる子供たちをエルシーはさばいていく。なんどかおっぱいを揉んでくるすけべーな子供たちもいたが気にしない。
「こらこら、セクハラするこどもはろくな子供にならないわよ」
 こどもの首根っこをつまんだバーバラ・キュプカーにエルシーは視線で礼をいう。
「子供たちってげんきよね」
「ええ、だから私達が戦う意味があるのよ」
 そういって笑うエルシーの笑顔はとてもキレイだった。
「ふふ、なら大丈夫そうね、さあ、この魔女バーバラおねえさんに挑むものはいない?」
「ばーばらおばさんだ」
「ばーばらばばあ」
「ちょっ、だめ! バーバラさんにそれは禁句……! だめ! 魔導はだめだってば!!
 みんな! バーバラさんをとめて~~~~」
 大騒ぎになったとは言え、そんなやり取りも楽しい。やがて攻撃はエルシーにも向かう。
「ちょ、いたい、私もそりゃ悪霊だけど、いたいってば!」
 加速したその場はいまや大乱闘にも近い。テンションの上がった子供たちの攻撃は正直その思った以上に……痛い。
「ああ、もう! はい
 降参です! 降参! 美人ミイラと美魔女は勇者たちにたおされました!!」
 元気なこどもたちは二人からありったけのお菓子を奪い去っていったのである。
「は~、たのしかった。またお菓子を仕入れなきゃ」
「エルシー、なんだかそれ、重症日数増えてない?」
「だ、だいじょうぶよっ!」

「お嬢ちゃん、飲もうぜ!」
 なんて軽い口調でミズーリ・メイヴェンに気さくに話しかけるはニコラス・モラル(CL3000453)。
「ニコラスさん」
 そんな彼女の顔色は暗い。ああ、娘のことを耳にしたんだろう。
 同じような視線は何度も向けられた。そのたびになんというか、こう、なんとも言えない気分になる。そうさせたのは自分自身なのだから。
 身から出た錆とはよくいったものだ。
「なんだよ、お祭りに。お嬢ちゃんに拒否権ないでーす」
 そういって無理矢理酒に誘う。
「その」
「あーもう、聞いちゃったんなら聞いちゃったでいいよ。
 娘のことだろ? 俺がヘマこいて連れてこれなかっただけだよ。おじさんがわるい
 そんなおじさんを慰めるために一緒に飲もうぜ」
「ニコラスさんって意地悪ね。聞きたくないわけじゃないけど」
 噂話の真偽を確かめたくなるのは当然のことだ。酒のちからをかりればそれも簡単だ。簡単だからこそミズーリは嫌がってるのだろう。なんとも真面目なことだ。まるであいつみたいに。
「ねえ、このままでいいの?」
「いいわけないさ。でもな、そこはまた、難しい話で、取り戻したいなんて願いは俺は口にするわけにはいかんのよ、ぜぇんぶ俺のせいだから……っていや、今願いを言っちゃった? 俺。
 酒で口が滑ったなぁ~」
「あのね、ニコラスさん。貴方がそんなふうに、私に構うのは娘さんに似てるから?」
「は? 全然似てねえよ。種族くらいしか、てかさ、お嬢ちゃんはお嬢ちゃん。娘は娘」
 喋りすぎたか。心の奥底の柔らかい部分に触れられた気分になってニコラスは誤魔化すようにことさらおどけて言う。
「お嬢ちゃんのこと、美人だって思ってるから絡んでるの」
 セクシーに低い声で、フェロモンだって全開にささやく。
「嘘つき」
「嘘じゃねえよ、女として魅力的だと思ってる。俺とのこと真剣に考えてくれよ?」
「嘘、いつだって貴方は私のことを「お嬢ちゃん」って子供扱いするもの」
 その言葉にニコラスははっとした。
 

「アレイスター!! アレイスター!!! いるんでしょ~~~!!」
 祭りの中心でアイを叫ぶはクイニィー・アルジェント(CL3000178)。
 エール片手におつまみだってしっかりと。
 そのおつまみのナッツがいつの間にかまるごときえている。
「おつまみたべたらエール飲んで!」
 振り向いてエールのグラスをフード姿の男。アレイスター・クローリーにおしつけたクイニィーは満足そうに微笑む。
 まあ、こいつが酒に酔うなんておもわないけど。もしかしてワンチャンくらいはあるかもしれない。
 酒はヒトの本性を現す薬だと思う。
 かくいう自分はお酒は苦手。
 まあ、とどのつまりはそれは自分の失敗談があるからだけど。アルコールというものは恐ろしい。当時のことを思うと今でも顔から火が出る思いだ。
 だから怖くて飲めない。酔っ払って欲望の箍が外れてどうにもならなかったのだ。そりゃあ普段から欲望に忠実をモットーとしてるけどね。
 でもまあ、――これ以上はいいたくない。
 彼のとなりでお茶をちびちびとのむ。すでに彼は何杯も飲んでいるようだが、顔色一つ変わっていない。作戦失敗だ。
「ねえ、体内で分解して酔わないとかなの?」
 自分なりの推測をぶつける。
「さあて、それを解明するのがクイニィー・アルジェント、君じゃないのかい?」
「そうだけど、解剖させてくれるの?」
「御随意に」
 そんな風に笑うものだからなんか冷めた。やる気が失せた。
「そんなことより! ウィートバーリィラーイ!!
 お菓子、手作りだよ! 食べてみてよ!」
「えー、またなんか入ってるんだろう?」
「なんも入ってないし!」
 見た目だって気にした。かわいいかわいいかぼちゃのおばけを模したアイシングクッキー。
「器用じゃん」
「まあね」
 押し付けたそれは普通の。見た目は普通のそれ。
「普通」
 頭からバリバリと、わりとアイシング頑張ったのに気にすらかけてないように食べた魔術師はなんとも可愛げのない返答をする。
「普通っていったけどさ!! でももうちょっとないの?」
 流石にその返答にはむかぱらがたった。いいようがあるじゃん、もっとさ。
「はいはい、おいしかったよー」
「心がこもってない!」
「生まれてはじめてこんな美味しいものをたべた」
「嘘くさい!」
 そんな他愛もないやりとりが少し、楽しかった。
 
 一緒にエールをとのウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)の誘いに佐クラ・クラン・ヒラガは乗ってくれた。
 ウェルスの仮装をへんなのとケラケラ笑ううさぎをみたら、この仮装をしてよかったと思う。
 黄色いクマやね、へんなの、へんなの。なんて連呼されるものだから少しだけすねて見せれば、うさぎはあわわと焦り始めてそれが可笑しくてウェルスは笑う。
 この感情こそが、愛おしいというのだろう。
 少しくすぐったくなってウェルスはエールを煽る。
 そんなに勢いよく飲んだらたおれてまうよ? なんて心配する顔もまた可愛らしくて、倒れたふりをして、看病してもらうのもいいかもしれないと悪い心が芽生えてくる。
 きっと彼女は献身的に介抱してくれるのだろう。
 もう、ばかなんやから
 なんて苦笑して。
 ――結果、飲みすぎて倒れたうさぎを背に帰路を歩くことになったのは役得と言うべきか、損をしたと言うべきか。
 

 童話の中のお姫様に扮するのはアリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)。
 しずしずと歩く。
 憧れのお姫様は童話の中でそうしていたのだから。
「足元なんかふあんやなあ」
 おっと、言葉遣いがもとのまま。足元に気をつけなくてはですわ。なんて少し大げさにお嬢様言葉にいいかえる。
 知り合いに合うたびに
「今宵もご機嫌麗しゅうでございますですます」
 なんて気取った挨拶をすれば、クスクスと笑われた。
 このごに及んでナンパしてくるヨアヒム・マイヤーの足を蹴ったら、大げさに痛がられた。つま先でちょんと触れただけではないか。
 もっとお姫様らしく。
 麦で叩かれるアーウィンをみかけたアリシアはお姫様の練習台にと彼を選ぶ。
 王子さまとしてはギリギリ及第点ではあるが、練習の成果をみせてどっきりさせてやるのもいいだろう。
「あらあら、アーウィン様、お麦でお叩かれになってお浄化されあそばせてますのかしら? それではご機嫌よろしゅう」
「どうした? アリシア。悪いものでも食ったのか? 病気なら病院につれていくぞ?」
 ちゃうやん! お姫様やん!
 なんてつい素がでてしまう。うまいこと言えたはずなのに! あの朴念仁のヘタレミミズクはわかっちゃいない。
 またつま先でちょんと蹴ってやれば大げさに痛がるのだ。失礼千万だ。
 つぎこそはお姫様! と言わせてみせる。
 王子様だってみつけてみせるのだ!
 その日、悪霊ケリ姫が出没したという噂が流れたことをアリシアはしらない。
 
 射的、水風船、宝石店に、食べ物屋。
 かの神出鬼没の魔術師を呼び出したマグノリア・ホワイト(CL3000242)は引っ張り回してやったと満足する。
 なのに。近くにあるはずのフード姿の背中がやけに遠く感じて――。
「君は」
「ん?」
「君はオラクルは大事だけれど仲間じゃない、そういったね」
 だから離すまいと問いかける。
「ああ、そうだね。君たちはトモダチだけど仲間じゃない」
 それは彼から突きつけられた大きな、大きな溝。
 彼にはきっと「仲間」なんて呼べる存在はいないのだろう。孤独の千年というのはどんなものだろう。
 自分もそれなりに歳は重ねてはいる。しかし彼のその孤独を実感することは不可能だ。
「君にとってどの国のオラクルが勝っても別にいいんだろう」
「ああ、そのとおりさ」
 彼にとっての価値は『彼』を討ち滅ぼす可能性のあるものだけなのだから。その価値あるものだけが彼の望みを叶えることができる。
 ソレだけのこと。だからソレは別にいい。
 でも、それが妙に悲しいことに思えた。
「『彼』を滅ぼすだけでいいの?」
 もちろん『彼』と共存はできない。それくらいわかっている。もちろん自分たちが消えてなくなるのはゴメンだ。
「そうさ」
「その先は?」
「その先? 考えたこともないよ」
「あのね……、君はこの世界の彩りが好きなんでしょう? ……その彩りはずっと守っていくよ」
「ふうん」
「約束だ」
 その先の未来。その先のずっと向こうの彼の未来。それを『約束』したかった。
 それはきっと彼が孤独ではなくなるようにとの願いなのだろう。この世界に彼がとどまる理由、楔になりたかった。
「唯ひとつ……
 きかせて。
 一人……、一人の孤独と、他者……大勢の中で感じる孤独
 どっちが辛いと思う……?」
 それは『彼』と「彼」の違い、だとおもう。
「どっちもさ。どっちも、うんざりするほどに辛いよ」
 その答えにマグノリアは納得する。だから干渉しようとおもった。それが迷惑だったとしても。向こうがこちらに干渉できるのであればそこには「つながり」があるのだ。
 だから――。きっと逆も可能なのだろう。
「そうか、そうだよ……ね」
 僕は誓おう。彼らを『彼』と「彼」とそうして「彼女」――彼女にいたっては少し捻じ曲げたほうがいいとは思うけれど――を驚かせてみようと。
 それがかなったならば、どんな顔をみせてくれるのだろうか?
 

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

FL送付済