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Overheat! エンジン暴走待ったなし!

●エンジンルームの日常
ヘルメリアの奴隷解放組織『フリーエンジン』が誇る動く城『ティダルト』は四基のバスタルト型エンジンと二基のヴィレス型エンジンで動いている。
複数のエンジンを使用するのは単純な馬力の問題もあるが、エンジンが一つ不調になった時の予備の意味が大きい。フリーエンジンが国に反目する以上、足を止めるわけにはいかないのだ。
六基のエンジン全てを使えばかなりの馬力も出るが、常時それを行えば摩耗も激しい。基本的には四基のエンジンで通常運行し、二基は予備エンジンとなる。日ごとに使用するエンジンを変え、動かしていないエンジンはメンテナンスを行っていた。
この『ティダルト』の心臓部ともいえるエンジンのメンテナンスはフリーエンジン技師の日課でもある。非稼働のエンジンをチェックし、異常がないようにする。こういった地道な努力がフリーエンジンの活動の基盤となっていた。
だが、技師の腕ではどうしようもないトラブルも起きるのである。
●技師の嘆きと自由騎士
「エンジンがイブリース化した」
技師の報告によると――
稼働しているバスタルト型エンジンの一基が蒸気を吹き出し、意図的に人を襲ってくるという。そして噴出したエンジンもイブリース化しており、手が付けられない状態だ。こうなればエンジンは廃棄するしかなく、残ったエンジンでは活動に不調が出る可能性がある。
ヘルメリアでは『イブリース=破壊、あるいは死』だ。イブリース化したら諦めるというのが常識になる。今まで愛用してきたエンジンを廃棄せざるを得ない状況に技師たちは落胆していた。
だが彼らは自由騎士の持つ権能を知らない。
ため息をつく技師を前に、貴方は――
ヘルメリアの奴隷解放組織『フリーエンジン』が誇る動く城『ティダルト』は四基のバスタルト型エンジンと二基のヴィレス型エンジンで動いている。
複数のエンジンを使用するのは単純な馬力の問題もあるが、エンジンが一つ不調になった時の予備の意味が大きい。フリーエンジンが国に反目する以上、足を止めるわけにはいかないのだ。
六基のエンジン全てを使えばかなりの馬力も出るが、常時それを行えば摩耗も激しい。基本的には四基のエンジンで通常運行し、二基は予備エンジンとなる。日ごとに使用するエンジンを変え、動かしていないエンジンはメンテナンスを行っていた。
この『ティダルト』の心臓部ともいえるエンジンのメンテナンスはフリーエンジン技師の日課でもある。非稼働のエンジンをチェックし、異常がないようにする。こういった地道な努力がフリーエンジンの活動の基盤となっていた。
だが、技師の腕ではどうしようもないトラブルも起きるのである。
●技師の嘆きと自由騎士
「エンジンがイブリース化した」
技師の報告によると――
稼働しているバスタルト型エンジンの一基が蒸気を吹き出し、意図的に人を襲ってくるという。そして噴出したエンジンもイブリース化しており、手が付けられない状態だ。こうなればエンジンは廃棄するしかなく、残ったエンジンでは活動に不調が出る可能性がある。
ヘルメリアでは『イブリース=破壊、あるいは死』だ。イブリース化したら諦めるというのが常識になる。今まで愛用してきたエンジンを廃棄せざるを得ない状況に技師たちは落胆していた。
だが彼らは自由騎士の持つ権能を知らない。
ため息をつく技師を前に、貴方は――
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.イブリース全ての打破
どくどくです。
こんな所にも幽霊列車は走っているのです。
●敵情報
・バスタルト型エンジン(×1)
イブリース。動く城『ティダルト』を動かすエンジンです。大きさ4mほど。床に固定されており、回避行動は行いません。
イブリース化して攻撃性を持つと同時に、吹き出した蒸気もイブリースとなって襲い掛かってきます。5ターンごとに3体の『蒸気ゴースト』を生みます。
アクアディーネの権能をもったものがとどめを指せば、傷一つつけることなくイブリース化を解除できます。
攻撃方法
アーム 攻近単 よく分からない金属のアームで殴ってきます。【ダブルアタック】
熱放射 魔遠範 熱い蒸気を吹き出してきます。【バーン2】
急発進 魔遠敵全 『ティダルト』を急加速させ、足元を揺らします。『飛行』『浮遊』状態だとダメージなし。
炉心暴走 自付 暴走して力を増します。攻撃、魔導上昇
・蒸気ゴースト(×3~)
イブリース。蒸気がイブリース化しました。大きさは人間大。上半身のみの人型を取って、浮遊しています。
5ターンごとに3体、敵後衛に配置されます。
攻撃方法
蒸気の手 攻近単 蒸気の手で触れてきます。【バーン1】
自動再生 P 周囲の蒸気を吸い込み、再生します。HPチャージ50
●場所情報
動く城『ティダルト』のエンジンルーム。広さや明るさなどが戦闘に影響することはありません。
戦闘開始時、敵前衛に『蒸気ゴースト(×3)』が、敵後衛に『バスタルト型エンジン(×1)』がいます。
事前付与は一度だけ可能とします。
皆様のプレイングをお待ちしています。
こんな所にも幽霊列車は走っているのです。
●敵情報
・バスタルト型エンジン(×1)
イブリース。動く城『ティダルト』を動かすエンジンです。大きさ4mほど。床に固定されており、回避行動は行いません。
イブリース化して攻撃性を持つと同時に、吹き出した蒸気もイブリースとなって襲い掛かってきます。5ターンごとに3体の『蒸気ゴースト』を生みます。
アクアディーネの権能をもったものがとどめを指せば、傷一つつけることなくイブリース化を解除できます。
攻撃方法
アーム 攻近単 よく分からない金属のアームで殴ってきます。【ダブルアタック】
熱放射 魔遠範 熱い蒸気を吹き出してきます。【バーン2】
急発進 魔遠敵全 『ティダルト』を急加速させ、足元を揺らします。『飛行』『浮遊』状態だとダメージなし。
炉心暴走 自付 暴走して力を増します。攻撃、魔導上昇
・蒸気ゴースト(×3~)
イブリース。蒸気がイブリース化しました。大きさは人間大。上半身のみの人型を取って、浮遊しています。
5ターンごとに3体、敵後衛に配置されます。
攻撃方法
蒸気の手 攻近単 蒸気の手で触れてきます。【バーン1】
自動再生 P 周囲の蒸気を吸い込み、再生します。HPチャージ50
●場所情報
動く城『ティダルト』のエンジンルーム。広さや明るさなどが戦闘に影響することはありません。
戦闘開始時、敵前衛に『蒸気ゴースト(×3)』が、敵後衛に『バスタルト型エンジン(×1)』がいます。
事前付与は一度だけ可能とします。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
6個
2個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年07月28日
2019年07月28日
†メイン参加者 8人†
●
「むっふー! ティダルトの動力室を覗けるなんてラッキー!」
興味津々と言った感じで『勇者の悪霊退治』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)は拳を握る。アクシデントとはいえ動く城の動力室に入ることが出来るなんて。目の前で激しく動いているエンジンを見ながら、興奮で胸が熱くなってきた。エンジニアの血が騒いでいる。
「状況確認。武装を展開する」
技師達の話を思い出しながら『鋼壁の』アデル・ハビッツ(CL3000496)はマキナ=ギアから武装を取り出す。イブリース化したエンジンと蒸気。アクアディーネの権能があればそれを浄化できる。己のやるべきことを再確認し、アデルはキジンボディの熱をあげていく。
「蒸気ゴーストは無限湧き? 滾ってきたわい!」
言って機械の腕を構える『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)。ゴーストと名はついているが、イブリース化しているのなら権能で浄化できる。なら恐れる事はないと……思ってはいてもお化けは怖いシノピリカ。
「悪魔化からの浄化か……興味深い。そもそも悪魔化という現象自体が……」
ぶつぶつと呟く『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。このビオトープの何処にでも見られるイブリース化という現象。そしてそれを元に戻せる女神の権能。そ考えれば考えるほど謎は増える。いつかそれらが解明される日が来るのだろうか?
「うーん……フリーエンジンの人達に権能を晒していいものか」
頭を掻きながら『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は構えを取る。浄化の権能に限らず、女神の権能を晒すことは他国侵略の足かせになりかねない。いつどこで情報が洩れるかわからないのだ。フリーエンジンを信用出来るか否か。悩ましい所だ。
「フリーエンジンと活動を共にする以上、彼等の困難は僕等の困難だよ」
うん、と頷く『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)。自分の意志でフリーエンジンに協力し、このヘルメリアの体制を変えると決めた。ならばこの悩みを解決することもヘルメリアを救う過程の一つだ。
「早くエンジンを戻してあげたいですね」
背中の羽根をはためかせながら『新緑の歌姫(ディーヴァ)』秋篠 モカ(CL3000531)は微笑んだ。技師達が手間暇かけてメンテナンスしているエンジン。それを廃棄させるようなことはさせたくない。自分達がそれを止める事が出来るのなら、全力を尽くすまでだ。
「蒸気とか、形のないものまで影響を受けるなんて……!」
蒸気ゴーストに驚く『真打!?食べ隊』キリ・カーレント(CL3000547)。動植物や物品がイブリース化することは知っているが、まさか蒸気のようなものまでそうなるとは。どうあれアクアディーネの権能で浄化できることは間違いない。武器を構え、前に出る。
ピィィィィィィィィ!
蒸気音と共に、エンジンが激しく動き出す。自由騎士達を敵と認識したのか、アームをけん制するように伸ばした。蒸気ゴーストもエンジン音に命令されたかのように自由騎士達に向かってくる。
動く城ティダルトのエンジンルーム。そのエンジンを守る戦いが、今切って落とされた。
●
「ココは私達に任せて。貴方達は下がっていてください」
案内の為に一緒に来た技師達を下がらせて、エルシーは拳を構える。湿度の高いエンジンルームの空気を吸って、ゆっくりと吐いた。その一呼吸でエルシーの精神は戦いに移行する。つま先を敵に向け、距離を測るように拳を突き出す。
体内に巡らせた『龍』を拳に集中するイメージ。そのイメージを維持したまま、重心を崩さないようにしてエルシーは蒸気ゴーストに迫る。接近と同時に拳を突き出し、大地の踏み込みを拳に伝えるようにしながら突き出した。確かな衝撃が拳から伝わってくる。
「問題なさそうね! 殴ってもそれなりに効いてるわ!」
「怪力乱神、説明のつかない怪異の類ではないようじゃな! うおおおおおおおお!」
エルシーの言葉に気合を入れるシノピリカ。相手がよく分からない何かではなく、自分の対応できる相手だとわかったのなら怖くはない。何よりも、イブリース退治は自由騎士の十八番だ。恐れる必要は何処にもない。
蒸気ゴーストの手を機械の腕で払いながら、軍刀で斬りかかるシノピリカ。先祖の名を冠した愛刀が女神の権能を乗せて振るわれる。舞うように見えて、効率的に敵を排除する軍人剣術。その動きが蒸気ゴーストの質量を削っていく。
「無限に沸くなら沸くがいい! 恐れることなど何もないわ!」
「皆はキリが守ります!」
サーベルを構えてキリが前に出る。皆を守るのが自分の役目。安心して攻撃に専念できるように、危険な動きは全て受け止める。それがガーディアンの役割だ。盾代わりのローブを握りしめ、戦場の動きを注視する。
戦場全体を盤面のように眺め、そこのあるすべての情報を脳裏に焼き付ける。敵が動くと同時にキリも動き、ローブを翻して攻撃を捌いていた。勝つためには貪欲に。その執念から生まれる防御術が仲間を守っていた。
「でも、攻める余裕はなさそうだわ」
「問題ない。支援は任せた。その分こちらが全力で攻める」
キリの独り言に応えるようにアデルが槍を構えた。けたたましいエンジンの細かな音の違いを聞き分けながら、右に左にとバランスをとって立ち回る。現状それしかできないが、隙あらば一気に攻勢に出ると兜の奥で瞳を光らせていた。
振るわれる蒸気ゴーストの手。熱による体力消耗を感じながら、歯を食いしばって声を出すことを堪えるアデル。我慢した力を槍の持ち手に伝え、薙ぎ払うように槍を突き出した。その一撃で霧散するゴーストを見ながら、機は熟せりと声をあげる。
「ゴーストは任せた。俺はエンジンに張り付いて一気に叩く」
「分かった。残りは僕に任せてもらおう。我が名はアダム・クランプトン! 我が剣は困難を切り拓き、我が弾丸は困難を撃ち砕く!」
頷き、アダムが『戦時用蒸気鎧装【山吹色の剣】』を振るう。肘から先の剣先を天井に向け、儀礼的なポーズのまま名乗りを上げた。宣誓と自己暗示。自分に出来ると思う事で心折れずに戦う意思を保つための儀式だ。
腰をわずかに下ろし、踏ん張るように足の裏に力を入れる。そのままキジンボディの一部を変形させ、自らを砲身と化すアダム。撃ち放たれた弾丸が蒸気ゴーストとエンジンを襲い、その火力で一気に蒸気ゴーストを薙ぎ払った。
「後はエンジンだけだ!」
「さー、解体するよ!」
嬉しそうにジーニアスがエンジンに迫る。バスタルト型エンジンの名前は聞いたことはあったが、実物を見るのは初めてだ。巨大な城を動かす馬力とそれだけの蒸気に耐えうる構造。そしてギア比やクランクなど技術的な事。全てに興味があった。
エンジニアの観点からエンジンを見て、城に繋がるだろう部分を想像する。脳内で図を引いて、その図を頼りに攻撃を仕掛けた。さすがに戦闘中に精密作業は難しいが、打撃を与えて動力を狂わせることはできるかもしれない。武器を振り上げ、思いっきり叩きつけた。
「所で炉心暴走って興味深いよね。調べてみたいんだけどいいかな!」
「止めとけ。ろくなことにならんぞ」
そっかー、としょげるジーニアスを見てツボミは戦場に目を戻した。現状、蒸気ゴーストはなくエンジンのみと相対していう状態だ。だがエンジンから蒸気ゴーストが湧けば、その状況も変わる。今のうちにダメージを癒しておかなくてはと裾を正す。
両目と額の第三の目とを駆使し、戦場の状況を再確認するツボミ。誰が傷つき、誰が倒れそうか。それを把握して魔力を練り上げる。火傷を受けた者を優先的に魔力を放ち、仲間の傷を応急処置的に癒していく。
「治療魔術の回復は応急処置だ。あとで本格的な治療をするから忘れるなよ!」
「はい。その時はよろしくお願いします」
ツボミの隣で頷くモカ。後衛に居る以上、ある程度は安全ではあるが油断はできない。エンジンから蒸気が噴出される可能性はゼロではないのだ。リラを手にして、気合を入れるように唾を飲み込んだ。
とん、と地面を蹴って翼を広げる。足元の振動から解放され、モカはふわりとした気分で楽器を奏でる。旋律に込められた魔力が音と共に響き、エンジンを震わすように叩きつけられた。
「あ、ゴーストが湧いてきました。皆さん、注意してください!」
モカの言葉に気を引き締めるように、自由騎士達はエンジンが噴出した蒸気の方を見る。人型に形どる蒸気ゴースト。それはすぐに自由騎士達に襲い掛かってくる。
「まだまだこれからという事じゃな!」
「任せた。エンジンの早期打破に努める」
しかし自由騎士達は慌てることなく己の役割に専念する。仲間を信じ、その分野は任せる事が出来る。その信頼あって初めて背中を合わせる事が出来るのだ。
自由騎士達は武器を構え、イブリースに立ち向かう。
●
エンジンのイブリース化を浄化しない限り、蒸気ゴーストは無限に沸く。故に最優先目的はエンジンの打破だ。
故に自由騎士の火力はエンジンに集中する。沸く蒸気ゴーストを蹴散らしながら、最前線の者は真っ直ぐにエンジンを穿っていた。
「戦斗機動、蒸気圧上昇! 出力全開……SIEGER・IMPACT!」
キジン化した左腕でエンジンを殴り、そのまま拳を固定する。エンジンの熱気がシノピリカを襲うが些末事だと切って捨てた。強烈な衝撃と、左腕から排出される蒸気。それがエンジンを揺らし、イブリースの動きを一瞬止める。
「どうやら装甲が厚いようだな。ならこれでどうだ!」
数度打撃を繰り返し、エンジンの特性を理解するアデル。元が頑丈な機械であるがゆえに、その防御力も高いようだ。槍を突き刺すと同時に、思いっきり踏み込んで二度目の衝撃を伝える。重られた衝撃が装甲を伝わり、内部に直接打撃を与えた。
「せーの……わっ!」
大きく息を吸い込んで、大声をあげて魔力を飛ばすモカ。歌姫として鍛えられたモカの声は戦場でもよく響き、心のないエンジンではあるがその衝撃は確かに伝わる。内部まで届いたモカの声は、エンジン内部で反響して魔力を伝達させていく。
「あいたたた……。まだ負けないわ」
急に揺れた衝撃で転がり、フラグメンツを削られるキリ。今まで受けたダメージ蓄積もあっての事だが、逆に言えばそのおかげもあって他の人のダメージは少ない。頭を振って起き上がり、武器を構えてイブリースに向き直る。
「凄い凄い! これがバスタルト型エンジン! すごい馬力だ!」
同じく急発進でフラグメンツを削られたジーニアスだが、こちらはむしろその威力に感動していた。急制動からの急発進。その時の歯車の動きやクランク移動の精密さ。どれをとっても素晴らしかった。あ、きちんと攻撃はしてますよ。
「生きてるな!? よし、後で癒すから少し待て!」
ツボミは倒れ込んだキリとジーニアスを見て、慌てるように意識の確認をする。火傷をしている者を優先的に癒しているため、それ以外の癒しは自然と後回しになる。医者の手が足りないのは如何ともしがたい。
「うわっ、湧いて出てきた!?」
エンジンから噴出された蒸気が新たな蒸気ゴーストとなる。エルシーはその用紙を見て、拳の矛先を変えた。熱く優雅な南国を思わせる舞のような動き。回転の際に放たれる蹴りが、蒸気ゴーストの身体を鋭く削る。
「さあ、行くよ!」
そして止めを刺すようにアダムの『戦時用蒸気鎧装【白騎士】』から弾丸が射出される。放たれた弾丸は戦場に降り注ぎ、エンジンと蒸気ゴーストに降り注がれた。蒸気ゴーストはその一撃を受けて、消滅する。
「一気に畳みかけろ!」
アデルが声をあげると同時に、自由騎士達は総攻撃を開始する。次に蒸気ゴーストが湧くまで、幾分可能の猶予があった。それまでに自由騎士達は一気呵成に攻め立てる。
ツボミの癒しが蒸気で傷ついた自由騎士を立ち直らせ、キリのローブがイブリースの悪意から仲間を守る。シノピリカの軍刀が力強く振るわれ、アデルの『ジョルトランサー改』が鋭くエンジンを突く。ジーニアスの銃剣が火を吹き、エルシーの紅龍の籠手が激しくエンジンに振るわれた。モカのリラが優しく旋律を奏で、アダムの強打が轟音と共に叩きつけられる。
イブリースは蒸気を吐き出し抵抗するが、圧倒的に自由騎士の火力に押し負けていた。そして――
「技師の人が悲しむわ。大人しくなさい」
話を持ってきた技師達。彼らは本当にこのエンジンの事を心配していた。毎日メンテナンスをした技師達のことを思えば、早くエンジンを元に戻してあげたい。その気持ちを込めて、拳を握りしめた。
「消えなさい、イブリース。女神の名のもとに浄化するわ」
アクアディーネの権能を乗せた拳がバスタルト型エンジンに叩きつけられる。その衝撃がイブリースを浄化し、元のエンジンに戻した。
●
「――で、権能なんだけどどうするの? フリーエンジンの人達にバラしちゃう?」
戦い終わり、一息ついたのちにエルシーが斬りだした。流石にイブリース化したエンジンを戻して『殴ったら直った』では済まないだろう。まあ事実殴って直したのだが。
「説明せざるを得まい。と言うかこちらが役立つという事を示すいい機会だ」
腕を組んでため息をつくようにツボミが口を開いた。
「フリーエンジンは、戦力にさえなりゃ別にうちの国である必然は無い。
反面、うちはフリーエンジンに梯子外されるとキツい。っていうか他に頼る組織がない」
「賽は投げられたわけだ。今更他の組織にと言うわけにもいくまい」
補足するようにアデルが頷く。作戦途中で雇い主を裏切るのは傭兵としても許されないことだ。
「そんな損得は関係ないよ。僕はフリーエンジンと仲良くしたい」
「はい。仲良くしましょう」
アダムとモカはそういった打算抜きでフリーエンジンと仲良くしたいと思っていた。
「うむ! 売り込むというわけではないが、仲良くなるきっかけになればいいのぅ」
シノピリカが頷き、それが決定打となった。大きな反対もなかったため、浄化の権能はフリーエンジンの知るところとなる。それを知ったフリーエンジン代表の言葉が、
『What’s!? よーし、機械がイブったら殴ってもらおう!』
だったため、特に悪意なく知れ渡る事となった。
(しかし、エンジンがイブリース化か……)
アデルは事件のことを書類に纏めながら、深くため息をついていた。
(無生物がイブリース化するのなら、建物や船もイブリース化することがあるのだろう。幽霊屋敷や幽霊船。そういった類か……厄介なことだ。
今回はエンジンだけで済んだが、このティダルト全てがイブリース化する可能性もあるわけか)
そうなった時どうするか。アデルはそれをシミュレートし、そのアイデアを纏めていた。
キリはフリーエンジンの人に頼んで、幾つかの書類をイ・ラプセルに送ってもらった。少し前に助けた赤子へ経済的支援をする為の書類だ。こういう状況でなければつきっきりで世話をしたいのだが、致し方ないと諦める。
書類を乗せた車が視界から消えるまで眺めていたが、ふと技師とジーニアスの話し声が聞こえてきた。
「あ、修理ついでにエンジンの自爆装置の威力上げておいたよ!」
「え!」
「安全装置とか生命時装置とかその辺りは外したけど、他の機構には影響無いよ!」
「えええええええええええええ!?」
慌てて走る技師達。それを追うジーニアス。
そんな様子を見ながら、キリはヘルメリアの灰色の空を見ていた。何かあったら、また招集があるだろう。
三〇分後に奇妙な衝撃と爆発音が聞こえたが、概ね問題なくティダルトは荒野を走っていた。
「むっふー! ティダルトの動力室を覗けるなんてラッキー!」
興味津々と言った感じで『勇者の悪霊退治』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)は拳を握る。アクシデントとはいえ動く城の動力室に入ることが出来るなんて。目の前で激しく動いているエンジンを見ながら、興奮で胸が熱くなってきた。エンジニアの血が騒いでいる。
「状況確認。武装を展開する」
技師達の話を思い出しながら『鋼壁の』アデル・ハビッツ(CL3000496)はマキナ=ギアから武装を取り出す。イブリース化したエンジンと蒸気。アクアディーネの権能があればそれを浄化できる。己のやるべきことを再確認し、アデルはキジンボディの熱をあげていく。
「蒸気ゴーストは無限湧き? 滾ってきたわい!」
言って機械の腕を構える『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)。ゴーストと名はついているが、イブリース化しているのなら権能で浄化できる。なら恐れる事はないと……思ってはいてもお化けは怖いシノピリカ。
「悪魔化からの浄化か……興味深い。そもそも悪魔化という現象自体が……」
ぶつぶつと呟く『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。このビオトープの何処にでも見られるイブリース化という現象。そしてそれを元に戻せる女神の権能。そ考えれば考えるほど謎は増える。いつかそれらが解明される日が来るのだろうか?
「うーん……フリーエンジンの人達に権能を晒していいものか」
頭を掻きながら『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は構えを取る。浄化の権能に限らず、女神の権能を晒すことは他国侵略の足かせになりかねない。いつどこで情報が洩れるかわからないのだ。フリーエンジンを信用出来るか否か。悩ましい所だ。
「フリーエンジンと活動を共にする以上、彼等の困難は僕等の困難だよ」
うん、と頷く『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)。自分の意志でフリーエンジンに協力し、このヘルメリアの体制を変えると決めた。ならばこの悩みを解決することもヘルメリアを救う過程の一つだ。
「早くエンジンを戻してあげたいですね」
背中の羽根をはためかせながら『新緑の歌姫(ディーヴァ)』秋篠 モカ(CL3000531)は微笑んだ。技師達が手間暇かけてメンテナンスしているエンジン。それを廃棄させるようなことはさせたくない。自分達がそれを止める事が出来るのなら、全力を尽くすまでだ。
「蒸気とか、形のないものまで影響を受けるなんて……!」
蒸気ゴーストに驚く『真打!?食べ隊』キリ・カーレント(CL3000547)。動植物や物品がイブリース化することは知っているが、まさか蒸気のようなものまでそうなるとは。どうあれアクアディーネの権能で浄化できることは間違いない。武器を構え、前に出る。
ピィィィィィィィィ!
蒸気音と共に、エンジンが激しく動き出す。自由騎士達を敵と認識したのか、アームをけん制するように伸ばした。蒸気ゴーストもエンジン音に命令されたかのように自由騎士達に向かってくる。
動く城ティダルトのエンジンルーム。そのエンジンを守る戦いが、今切って落とされた。
●
「ココは私達に任せて。貴方達は下がっていてください」
案内の為に一緒に来た技師達を下がらせて、エルシーは拳を構える。湿度の高いエンジンルームの空気を吸って、ゆっくりと吐いた。その一呼吸でエルシーの精神は戦いに移行する。つま先を敵に向け、距離を測るように拳を突き出す。
体内に巡らせた『龍』を拳に集中するイメージ。そのイメージを維持したまま、重心を崩さないようにしてエルシーは蒸気ゴーストに迫る。接近と同時に拳を突き出し、大地の踏み込みを拳に伝えるようにしながら突き出した。確かな衝撃が拳から伝わってくる。
「問題なさそうね! 殴ってもそれなりに効いてるわ!」
「怪力乱神、説明のつかない怪異の類ではないようじゃな! うおおおおおおおお!」
エルシーの言葉に気合を入れるシノピリカ。相手がよく分からない何かではなく、自分の対応できる相手だとわかったのなら怖くはない。何よりも、イブリース退治は自由騎士の十八番だ。恐れる必要は何処にもない。
蒸気ゴーストの手を機械の腕で払いながら、軍刀で斬りかかるシノピリカ。先祖の名を冠した愛刀が女神の権能を乗せて振るわれる。舞うように見えて、効率的に敵を排除する軍人剣術。その動きが蒸気ゴーストの質量を削っていく。
「無限に沸くなら沸くがいい! 恐れることなど何もないわ!」
「皆はキリが守ります!」
サーベルを構えてキリが前に出る。皆を守るのが自分の役目。安心して攻撃に専念できるように、危険な動きは全て受け止める。それがガーディアンの役割だ。盾代わりのローブを握りしめ、戦場の動きを注視する。
戦場全体を盤面のように眺め、そこのあるすべての情報を脳裏に焼き付ける。敵が動くと同時にキリも動き、ローブを翻して攻撃を捌いていた。勝つためには貪欲に。その執念から生まれる防御術が仲間を守っていた。
「でも、攻める余裕はなさそうだわ」
「問題ない。支援は任せた。その分こちらが全力で攻める」
キリの独り言に応えるようにアデルが槍を構えた。けたたましいエンジンの細かな音の違いを聞き分けながら、右に左にとバランスをとって立ち回る。現状それしかできないが、隙あらば一気に攻勢に出ると兜の奥で瞳を光らせていた。
振るわれる蒸気ゴーストの手。熱による体力消耗を感じながら、歯を食いしばって声を出すことを堪えるアデル。我慢した力を槍の持ち手に伝え、薙ぎ払うように槍を突き出した。その一撃で霧散するゴーストを見ながら、機は熟せりと声をあげる。
「ゴーストは任せた。俺はエンジンに張り付いて一気に叩く」
「分かった。残りは僕に任せてもらおう。我が名はアダム・クランプトン! 我が剣は困難を切り拓き、我が弾丸は困難を撃ち砕く!」
頷き、アダムが『戦時用蒸気鎧装【山吹色の剣】』を振るう。肘から先の剣先を天井に向け、儀礼的なポーズのまま名乗りを上げた。宣誓と自己暗示。自分に出来ると思う事で心折れずに戦う意思を保つための儀式だ。
腰をわずかに下ろし、踏ん張るように足の裏に力を入れる。そのままキジンボディの一部を変形させ、自らを砲身と化すアダム。撃ち放たれた弾丸が蒸気ゴーストとエンジンを襲い、その火力で一気に蒸気ゴーストを薙ぎ払った。
「後はエンジンだけだ!」
「さー、解体するよ!」
嬉しそうにジーニアスがエンジンに迫る。バスタルト型エンジンの名前は聞いたことはあったが、実物を見るのは初めてだ。巨大な城を動かす馬力とそれだけの蒸気に耐えうる構造。そしてギア比やクランクなど技術的な事。全てに興味があった。
エンジニアの観点からエンジンを見て、城に繋がるだろう部分を想像する。脳内で図を引いて、その図を頼りに攻撃を仕掛けた。さすがに戦闘中に精密作業は難しいが、打撃を与えて動力を狂わせることはできるかもしれない。武器を振り上げ、思いっきり叩きつけた。
「所で炉心暴走って興味深いよね。調べてみたいんだけどいいかな!」
「止めとけ。ろくなことにならんぞ」
そっかー、としょげるジーニアスを見てツボミは戦場に目を戻した。現状、蒸気ゴーストはなくエンジンのみと相対していう状態だ。だがエンジンから蒸気ゴーストが湧けば、その状況も変わる。今のうちにダメージを癒しておかなくてはと裾を正す。
両目と額の第三の目とを駆使し、戦場の状況を再確認するツボミ。誰が傷つき、誰が倒れそうか。それを把握して魔力を練り上げる。火傷を受けた者を優先的に魔力を放ち、仲間の傷を応急処置的に癒していく。
「治療魔術の回復は応急処置だ。あとで本格的な治療をするから忘れるなよ!」
「はい。その時はよろしくお願いします」
ツボミの隣で頷くモカ。後衛に居る以上、ある程度は安全ではあるが油断はできない。エンジンから蒸気が噴出される可能性はゼロではないのだ。リラを手にして、気合を入れるように唾を飲み込んだ。
とん、と地面を蹴って翼を広げる。足元の振動から解放され、モカはふわりとした気分で楽器を奏でる。旋律に込められた魔力が音と共に響き、エンジンを震わすように叩きつけられた。
「あ、ゴーストが湧いてきました。皆さん、注意してください!」
モカの言葉に気を引き締めるように、自由騎士達はエンジンが噴出した蒸気の方を見る。人型に形どる蒸気ゴースト。それはすぐに自由騎士達に襲い掛かってくる。
「まだまだこれからという事じゃな!」
「任せた。エンジンの早期打破に努める」
しかし自由騎士達は慌てることなく己の役割に専念する。仲間を信じ、その分野は任せる事が出来る。その信頼あって初めて背中を合わせる事が出来るのだ。
自由騎士達は武器を構え、イブリースに立ち向かう。
●
エンジンのイブリース化を浄化しない限り、蒸気ゴーストは無限に沸く。故に最優先目的はエンジンの打破だ。
故に自由騎士の火力はエンジンに集中する。沸く蒸気ゴーストを蹴散らしながら、最前線の者は真っ直ぐにエンジンを穿っていた。
「戦斗機動、蒸気圧上昇! 出力全開……SIEGER・IMPACT!」
キジン化した左腕でエンジンを殴り、そのまま拳を固定する。エンジンの熱気がシノピリカを襲うが些末事だと切って捨てた。強烈な衝撃と、左腕から排出される蒸気。それがエンジンを揺らし、イブリースの動きを一瞬止める。
「どうやら装甲が厚いようだな。ならこれでどうだ!」
数度打撃を繰り返し、エンジンの特性を理解するアデル。元が頑丈な機械であるがゆえに、その防御力も高いようだ。槍を突き刺すと同時に、思いっきり踏み込んで二度目の衝撃を伝える。重られた衝撃が装甲を伝わり、内部に直接打撃を与えた。
「せーの……わっ!」
大きく息を吸い込んで、大声をあげて魔力を飛ばすモカ。歌姫として鍛えられたモカの声は戦場でもよく響き、心のないエンジンではあるがその衝撃は確かに伝わる。内部まで届いたモカの声は、エンジン内部で反響して魔力を伝達させていく。
「あいたたた……。まだ負けないわ」
急に揺れた衝撃で転がり、フラグメンツを削られるキリ。今まで受けたダメージ蓄積もあっての事だが、逆に言えばそのおかげもあって他の人のダメージは少ない。頭を振って起き上がり、武器を構えてイブリースに向き直る。
「凄い凄い! これがバスタルト型エンジン! すごい馬力だ!」
同じく急発進でフラグメンツを削られたジーニアスだが、こちらはむしろその威力に感動していた。急制動からの急発進。その時の歯車の動きやクランク移動の精密さ。どれをとっても素晴らしかった。あ、きちんと攻撃はしてますよ。
「生きてるな!? よし、後で癒すから少し待て!」
ツボミは倒れ込んだキリとジーニアスを見て、慌てるように意識の確認をする。火傷をしている者を優先的に癒しているため、それ以外の癒しは自然と後回しになる。医者の手が足りないのは如何ともしがたい。
「うわっ、湧いて出てきた!?」
エンジンから噴出された蒸気が新たな蒸気ゴーストとなる。エルシーはその用紙を見て、拳の矛先を変えた。熱く優雅な南国を思わせる舞のような動き。回転の際に放たれる蹴りが、蒸気ゴーストの身体を鋭く削る。
「さあ、行くよ!」
そして止めを刺すようにアダムの『戦時用蒸気鎧装【白騎士】』から弾丸が射出される。放たれた弾丸は戦場に降り注ぎ、エンジンと蒸気ゴーストに降り注がれた。蒸気ゴーストはその一撃を受けて、消滅する。
「一気に畳みかけろ!」
アデルが声をあげると同時に、自由騎士達は総攻撃を開始する。次に蒸気ゴーストが湧くまで、幾分可能の猶予があった。それまでに自由騎士達は一気呵成に攻め立てる。
ツボミの癒しが蒸気で傷ついた自由騎士を立ち直らせ、キリのローブがイブリースの悪意から仲間を守る。シノピリカの軍刀が力強く振るわれ、アデルの『ジョルトランサー改』が鋭くエンジンを突く。ジーニアスの銃剣が火を吹き、エルシーの紅龍の籠手が激しくエンジンに振るわれた。モカのリラが優しく旋律を奏で、アダムの強打が轟音と共に叩きつけられる。
イブリースは蒸気を吐き出し抵抗するが、圧倒的に自由騎士の火力に押し負けていた。そして――
「技師の人が悲しむわ。大人しくなさい」
話を持ってきた技師達。彼らは本当にこのエンジンの事を心配していた。毎日メンテナンスをした技師達のことを思えば、早くエンジンを元に戻してあげたい。その気持ちを込めて、拳を握りしめた。
「消えなさい、イブリース。女神の名のもとに浄化するわ」
アクアディーネの権能を乗せた拳がバスタルト型エンジンに叩きつけられる。その衝撃がイブリースを浄化し、元のエンジンに戻した。
●
「――で、権能なんだけどどうするの? フリーエンジンの人達にバラしちゃう?」
戦い終わり、一息ついたのちにエルシーが斬りだした。流石にイブリース化したエンジンを戻して『殴ったら直った』では済まないだろう。まあ事実殴って直したのだが。
「説明せざるを得まい。と言うかこちらが役立つという事を示すいい機会だ」
腕を組んでため息をつくようにツボミが口を開いた。
「フリーエンジンは、戦力にさえなりゃ別にうちの国である必然は無い。
反面、うちはフリーエンジンに梯子外されるとキツい。っていうか他に頼る組織がない」
「賽は投げられたわけだ。今更他の組織にと言うわけにもいくまい」
補足するようにアデルが頷く。作戦途中で雇い主を裏切るのは傭兵としても許されないことだ。
「そんな損得は関係ないよ。僕はフリーエンジンと仲良くしたい」
「はい。仲良くしましょう」
アダムとモカはそういった打算抜きでフリーエンジンと仲良くしたいと思っていた。
「うむ! 売り込むというわけではないが、仲良くなるきっかけになればいいのぅ」
シノピリカが頷き、それが決定打となった。大きな反対もなかったため、浄化の権能はフリーエンジンの知るところとなる。それを知ったフリーエンジン代表の言葉が、
『What’s!? よーし、機械がイブったら殴ってもらおう!』
だったため、特に悪意なく知れ渡る事となった。
(しかし、エンジンがイブリース化か……)
アデルは事件のことを書類に纏めながら、深くため息をついていた。
(無生物がイブリース化するのなら、建物や船もイブリース化することがあるのだろう。幽霊屋敷や幽霊船。そういった類か……厄介なことだ。
今回はエンジンだけで済んだが、このティダルト全てがイブリース化する可能性もあるわけか)
そうなった時どうするか。アデルはそれをシミュレートし、そのアイデアを纏めていた。
キリはフリーエンジンの人に頼んで、幾つかの書類をイ・ラプセルに送ってもらった。少し前に助けた赤子へ経済的支援をする為の書類だ。こういう状況でなければつきっきりで世話をしたいのだが、致し方ないと諦める。
書類を乗せた車が視界から消えるまで眺めていたが、ふと技師とジーニアスの話し声が聞こえてきた。
「あ、修理ついでにエンジンの自爆装置の威力上げておいたよ!」
「え!」
「安全装置とか生命時装置とかその辺りは外したけど、他の機構には影響無いよ!」
「えええええええええええええ!?」
慌てて走る技師達。それを追うジーニアス。
そんな様子を見ながら、キリはヘルメリアの灰色の空を見ていた。何かあったら、また招集があるだろう。
三〇分後に奇妙な衝撃と爆発音が聞こえたが、概ね問題なくティダルトは荒野を走っていた。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
特殊成果
『用途不明のネジ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ジーニアス・レガーロ(CL3000319)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ジーニアス・レガーロ(CL3000319)
†あとがき†
どくどくです。
エンジンは暴走する物なんです。
以上のような結果になりました。
無限沸きと言う特殊な戦闘ですが、皆様の戦術が上手くはまった感じです。くそぅ。
MVPは技師的な面からエンジンの弱点を探ったレガーロ様に。
それではまた、イ・ラプセルで。
エンジンは暴走する物なんです。
以上のような結果になりました。
無限沸きと言う特殊な戦闘ですが、皆様の戦術が上手くはまった感じです。くそぅ。
MVPは技師的な面からエンジンの弱点を探ったレガーロ様に。
それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済