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黒き森のハッシェマン

●
ヨウセイの姉弟はバスケットを抱えて、薬草を詰んでいた。
母親が怪我をしたのだ。だから薬草が必要になった。他にもいくつか備蓄がなくなった薬草もあったので、彼らは少し遠出をして摘みに来たのだ。
広場になったそこには質のいい薬草が生えている。彼女らは夢中で薬草を詰む。すこしでも沢山あればお母さんの怪我のなおりはやくなるはずだ。
薬草たちに感応すれば優しく治ればいいねと意志を返してきて、さらなる薬草の場所を告げる。
ふと、木々が騒ぎはじめた。
姉のヨウセイが木々に触れれば、あぶない、にげてと伝えてくる。
「おねえちゃん?」
「木々があぶないって」
弟が怯えて下がれば、パキり、と乾いた小枝が折れる音が、おもいのほか大きく聞こえた。
「魔女だ! 魔女がいる!」
オニヒトの少年が叫んだ。
魔女狩りだ。
姉弟はそう思い逃げる。逃げ道は木々がおしえてくれるけど。でも。
どんどん気配は近づいてくる。
「おねえちゃん」
弟が転んで泣き始める。姉は弟を抱きしめた。
「手間をかけてくれたね」
悪魔のような魔女狩りはとてもきれいな顔をしていた。
●
「あのね、大変!」
『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)が呼び寄せた自由騎士達に逼迫した表情で告げる。
「ヨウセイさんたちが魔女狩りに追いかけられてるのが視えたの」
クラウディアは順をおってあなた達に水鏡に映った情報を開示する。
「まずは、場所はニルヴァン小管区の聖霊門より西側のほうかな? 少し距離はああるからお馬さんもつれていっていいよ。でも軍馬じゃないから戦闘があったら逃げると思うし、森の手前までくらいしかいけないけど。今からお馬さんで走れば間に合うと思う。視えたのは……」
クラウディアは水鏡の画面を操作し、断片をみせた。
「この広場で襲われるヨウセイさんの姉弟がふたり。武器とかはもってないから、戦闘はできないと思う。ふたりで薬草を採取してるときに、哨戒していた魔女狩りにみつかったみたい。
みんなもつかまったヨウセイがどうなるかって聞いたよね。
だからたすけてあげて!
助けてあげたあとは、保護してあげたほうがいいかなって思うんだ。
多分近くに小さな集落があるんだとおもう。
それで、彼女たちはウィッチクラフトの構成員ではないみたい。ウィッチクラフトのヨウセイさんにきいたけどみたことないって。だからあなた達のことをしらないから警戒はされるかも。
説得に回るひとと戦闘するひとで別れたほうがいいかもだね。もちろん皆に裁量はまかせるけど戦闘しながらじゃ説得は難しいかも知れない。
最悪、魔女狩りを撤退させて、本人たちが逃げ延びることができたらそれでいいと思うよ」
お願いするね、そういって、クラウディアはあなたたちに頭を下げた。
ヨウセイの姉弟はバスケットを抱えて、薬草を詰んでいた。
母親が怪我をしたのだ。だから薬草が必要になった。他にもいくつか備蓄がなくなった薬草もあったので、彼らは少し遠出をして摘みに来たのだ。
広場になったそこには質のいい薬草が生えている。彼女らは夢中で薬草を詰む。すこしでも沢山あればお母さんの怪我のなおりはやくなるはずだ。
薬草たちに感応すれば優しく治ればいいねと意志を返してきて、さらなる薬草の場所を告げる。
ふと、木々が騒ぎはじめた。
姉のヨウセイが木々に触れれば、あぶない、にげてと伝えてくる。
「おねえちゃん?」
「木々があぶないって」
弟が怯えて下がれば、パキり、と乾いた小枝が折れる音が、おもいのほか大きく聞こえた。
「魔女だ! 魔女がいる!」
オニヒトの少年が叫んだ。
魔女狩りだ。
姉弟はそう思い逃げる。逃げ道は木々がおしえてくれるけど。でも。
どんどん気配は近づいてくる。
「おねえちゃん」
弟が転んで泣き始める。姉は弟を抱きしめた。
「手間をかけてくれたね」
悪魔のような魔女狩りはとてもきれいな顔をしていた。
●
「あのね、大変!」
『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)が呼び寄せた自由騎士達に逼迫した表情で告げる。
「ヨウセイさんたちが魔女狩りに追いかけられてるのが視えたの」
クラウディアは順をおってあなた達に水鏡に映った情報を開示する。
「まずは、場所はニルヴァン小管区の聖霊門より西側のほうかな? 少し距離はああるからお馬さんもつれていっていいよ。でも軍馬じゃないから戦闘があったら逃げると思うし、森の手前までくらいしかいけないけど。今からお馬さんで走れば間に合うと思う。視えたのは……」
クラウディアは水鏡の画面を操作し、断片をみせた。
「この広場で襲われるヨウセイさんの姉弟がふたり。武器とかはもってないから、戦闘はできないと思う。ふたりで薬草を採取してるときに、哨戒していた魔女狩りにみつかったみたい。
みんなもつかまったヨウセイがどうなるかって聞いたよね。
だからたすけてあげて!
助けてあげたあとは、保護してあげたほうがいいかなって思うんだ。
多分近くに小さな集落があるんだとおもう。
それで、彼女たちはウィッチクラフトの構成員ではないみたい。ウィッチクラフトのヨウセイさんにきいたけどみたことないって。だからあなた達のことをしらないから警戒はされるかも。
説得に回るひとと戦闘するひとで別れたほうがいいかもだね。もちろん皆に裁量はまかせるけど戦闘しながらじゃ説得は難しいかも知れない。
最悪、魔女狩りを撤退させて、本人たちが逃げ延びることができたらそれでいいと思うよ」
お願いするね、そういって、クラウディアはあなたたちに頭を下げた。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.ヨウセイの姉弟を逃がす
2.ヨウセイの姉弟確保
3.魔女狩りの撃退 の3つのうちの一つを満たす
2.ヨウセイの姉弟確保
3.魔女狩りの撃退 の3つのうちの一つを満たす
ねこてんです。
ヨウセイを追いかけている魔女狩りと戦闘をしてヨウセイをたすけてあげてください。
上記成功条件のうち1つでも満たすことができれば成功です。
ロケーション。
少しくらめの森の中です。
彼女らは森のなかの広場で薬草をあつめていたところを運悪く見つかってしまいました。
自然共感で情報を得つつ多少は逃げていますが捕まるのは時間の問題でしょう。
足元はそれなりに走りにくいです。適応技能がない場合は移動に二倍の時間がかかると思ってください。
(戦闘、通常時かかわらずに)
事前付与する時間はありません。
お馬さんを貸し出してもらうので近隣の森までは間に合う時間帯でたどり着くことができます。
介入から5ターンほどで魔女狩りたちは彼女らを確保することができるでしょう。
彼女らのいる大まかな場所はわかりますが移動しているので、魔女狩りより先に接触するには技能を駆使して頑張ってみてください。
特に技能がない場合は魔女狩りたちと同時に見つけることになるでしょう。
逆に魔女狩りを先にみつけて足止めをすることも可能です。
魔女狩りのうちソラビトの二人は確保に廻る動きを優先します。
ヨウセイの少女たちはウィッチクラフト所属ではありません。あなた方のことは知りません。
近くにヨウセイの集落はあると思われます。
エネミー
10代くらいの魔女狩りたちです。やたら美少年です。
今回は司令官(ジェラルド)がいないので普通の格好です。
司令官のジェラルドの指示で森を哨戒中にヨウセイを見かけて捕獲のために追いかけています。
基本的には各々のジョブスタイルのランク2までつかえます。
・オニヒトの美少年(ガンナー)
命中高めです。
ウェッジショットを得意技としています
現段階ではリーダー扱いです。
ネズミのケモノビトの美少年(バスター)
火力高めです。
ウサギのケモノビトの美少年(バスター)
CT高めです。
ソラビトの美少年(マギアス)
魔導力高めです。速度もあります。
オニヒトの美少年(フェンサー)
速度は高めです。
ソラビトの美少年(ドクター)
魔導力高めです。
活性化技能はリュンケウスの瞳破とハイバラ序
一定のダメージ、もしくはヨウセイたちの確保が不可能としれば退却します。
ヨウセイを追いかけている魔女狩りと戦闘をしてヨウセイをたすけてあげてください。
上記成功条件のうち1つでも満たすことができれば成功です。
ロケーション。
少しくらめの森の中です。
彼女らは森のなかの広場で薬草をあつめていたところを運悪く見つかってしまいました。
自然共感で情報を得つつ多少は逃げていますが捕まるのは時間の問題でしょう。
足元はそれなりに走りにくいです。適応技能がない場合は移動に二倍の時間がかかると思ってください。
(戦闘、通常時かかわらずに)
事前付与する時間はありません。
お馬さんを貸し出してもらうので近隣の森までは間に合う時間帯でたどり着くことができます。
介入から5ターンほどで魔女狩りたちは彼女らを確保することができるでしょう。
彼女らのいる大まかな場所はわかりますが移動しているので、魔女狩りより先に接触するには技能を駆使して頑張ってみてください。
特に技能がない場合は魔女狩りたちと同時に見つけることになるでしょう。
逆に魔女狩りを先にみつけて足止めをすることも可能です。
魔女狩りのうちソラビトの二人は確保に廻る動きを優先します。
ヨウセイの少女たちはウィッチクラフト所属ではありません。あなた方のことは知りません。
近くにヨウセイの集落はあると思われます。
エネミー
10代くらいの魔女狩りたちです。やたら美少年です。
今回は司令官(ジェラルド)がいないので普通の格好です。
司令官のジェラルドの指示で森を哨戒中にヨウセイを見かけて捕獲のために追いかけています。
基本的には各々のジョブスタイルのランク2までつかえます。
・オニヒトの美少年(ガンナー)
命中高めです。
ウェッジショットを得意技としています
現段階ではリーダー扱いです。
ネズミのケモノビトの美少年(バスター)
火力高めです。
ウサギのケモノビトの美少年(バスター)
CT高めです。
ソラビトの美少年(マギアス)
魔導力高めです。速度もあります。
オニヒトの美少年(フェンサー)
速度は高めです。
ソラビトの美少年(ドクター)
魔導力高めです。
活性化技能はリュンケウスの瞳破とハイバラ序
一定のダメージ、もしくはヨウセイたちの確保が不可能としれば退却します。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年01月23日
2019年01月23日
†メイン参加者 8人†
●
視界前方。
5秒先の未来を見る。何もいない。ならばこちらではない。
『劫火』灯鳥 つらら(CL3000493)は炎のようなその瞳を閉じる。
未来を先取り見える影。それが未来視。
「ちょ、ちょっとまって、もう!」
さくさくと足場の不具合を物ともせず、魔女狩りたちを索敵する『魔女』エル・エル(CL3000370)とつらら、『天辰』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)と『艶師』蔡 狼華(CL3000451)に必死で追いつかんと『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)が頬を膨らます。
確かに靴は頑丈で滑りにくくはあるが、技能を持っているものの速度には及ばない。
「なんというか水を得た魚っていうのかな? こりゃあ追いつくのは難儀だねえ。こっちはヨウセイちゃんたちを探すしかないね」
『黒道』ゼクス・アゾール(CL3000469)はやれやれとエルシーの後に続く。彼も速度面で役にたつ技能は持ち合わせてはいない。
さらにその後を目星を使いながら注意深く周囲を見渡すのは『RED77』ザルク・ミステル(CL3000067)。
「何者かが歩いた跡がある。歩幅は狭いし子どもだな、人数は2人くらいってところか、ヌィ。自然共感を頼む。このあたりの木々に聞いてくれ」
「はいはいわかったよぉ」
『黒き森の魔女(元)』ヌィ・ボルボレッタ(CL3000494)は細い手のひらを大樹の幹に触れさせ共感すれば、大樹はヨウセイの子どもたちが向かった方向を示す。
ヌィはメガネを外し、目を細めリュンケウスの瞳を起動しその方角を見ると木立に隠れるヨウセイの衣服の裾が少しだけみえた。
「みつけたけどどうするぅ?」
「そうだな、ヌィは説得しにいってくれ。連れて皆の元に戻るよりは一緒に隠れている方が安全だろう。俺たちはカスカたちのところに向かうぞ」
魔女狩りは足の早いやつがそろそろみつける頃合いだろう。こちらのほうが先に接触できたのだ。水鏡の予測では彼らはこの近辺にはいるだろうが、『まだヨウセイを発見できていない』はずだ。このように介入し未来を変えることができるとは水鏡さまさまといったところか。
「ヌィだけでは不安じゃない?」
「まあ、魔女狩りちゃんがヨウセイに接触してないのだったらだいじょうぶじゃない? 魔女狩りちゃんの未来は『魔女の発見』ではなく『敵兵との接触』がおきたことに変わってしまうんだから、魔女探しどころじゃなくなるだろう?」
ゼクスが細い目を更に細めて言った。
「なるほどね、探しているものは『みつからなかった』、ってわけね」
ぽんと手をたたいてエルシーがゼクスの言葉の意図を察する。
「じゃあ、ヌィ。見つかってくれるなよ?」
「ヌィおねえちゃんにおまかせだよぅ」
ザルクにヌィは答えると怪しげな足取りでヨウセイの姉弟のいる森の奥に消える。
「さあて、俺たちは戦闘だ。俺たちがつく頃には戦場は温まっているころだろうぜ」
つららの瞳が木の影から現れる少年を幻視した。
「きた」
「おっと「視」えましたか?」
つららの直ぐ側を走るカスカが尋ね、つららの視線の方向を確認すると音もなく森に消える。カスカには彼女なりに考えがあるのだろう。
つららは同行者である狼華とエルに告げる。
「あと5秒後。4,3,2……」
いち、のカウントダウンの直後、がさりと数メートル先の梢が揺れた。
「お前たち! なにものだ!」
見目麗しい黒衣の少年たちが6人現れる。魔女狩りの少年たちだ。ヨウセイとの接触は果たせてはない未来(いま)にたどり着いたようだ。
つららとエルと狼華をみつけた彼らは、即座に戦闘態勢をとる。魔女ではないが、怪しいものたちだ。
味方ではないのであれば、それすなわち――神の敵だ。
「あらあら、ききしに勝る美少年やわぁ。でも、あかんあかん、艶があらへんやん」
狼華は匕首を構えると、フェンサーの少年に向かって走る。つららはドクターの少年に向かうがフェンサーを含め彼らの前衛は3人。前衛を抜けて後衛のもとに向かうことはできずにバスターの少年の二人に足止め(ブロック)をされてしまう。
まあいい、それも織り込み済みだ。バスターであれば足の速さは負けることはない。
つららは獰猛な笑みを浮かべる。
飛行するエルは同じくソラビトのマギアスの少年にむかい艶やかな笑みを浮かべると弔いの歌を謳う。その嘆きの言の葉は少しずつ燃え始め少年の顔を焼く。
「子どもだからってなに? 綺麗な顔がなに? 焼いてしまえば同じだわ」
「うぁ!」
ドクターの少年は叫び声をあげて落ちるソラビトの少年を癒やすために回復魔導を起動する。
「貴様ら、僕たちを魔女狩りと知ってか!」
「そんなのどうでもいいわ。魔女狩りは殺す」
エルは低い声で答えた。
「神敵だ。おちつけ。今はジェラルド様はいらっしゃらない。浮足立つな」
出会いざまの戦闘行為に魔女狩りの少年たちは浮足立つが、ガンナーの少年が冷静に指示を出し、各個撃破だと狼華をウェッジショットで穿った。
ネズミのバスターの少年がフェンサーの少年に合わせ狼華へ剣を振り下ろすのを匕首でかろうじて防御するがダメージは蓄積していく。
「私はあの羽虫のことは死ぬほどキライですが」
がさりと、木々の間から回り込んできたカスカが狼の影を纏いながら、ドクターの少年を切り裂いた。
「あなた方、魔女狩りのことはもっと……あー、いえ、やっぱり羽虫どもの方がキライですね」
(まあ、よくよく考えてみれば、あのなんでしたっけ? ウィッチがどうのこうのとかいうのが腹立つだけで、それ以外の羽虫は連中とは関係ありませんしね。助けることにはまあ、異論はありません)
「伏兵か?! この卑怯者が! 神に恥じよ!」
カスカが作ってくれた間隙につららは狼華の背を守るように死角を補う。
「大丈夫か?」
「わりかし痛いわぁ。でもまあ戦われへんほどではあらへんよ」
狼華の肩口からは大量の血液が流れている。
「まずは数減らしだ。私にあわせてくれ。バスターを狙う。ドクターへの攻撃は私たちからは届かない。カスカにまかせよう」
「んもう、このオニビトのこ、なんとかしたいけどまあしゃあないわぁ。ほんま、昂ぶってくるわぁ。難儀すぎて!」
狼華は頷きつららに攻撃対象をあわせた。
「あのねえ、ヌィお姉ちゃんはヌィおねぇちゃんっていうんだよぉ。ほぉら、みてのとおり。ヨウセイだよ」
怪しげな要望の女は怯える姉弟に話しかける。耳をみせて羽根をみせて。
「ヨウセイが魔女狩りはできないよぉ」
ねっとりとした口調に取って付けたような笑顔。魔女狩り、という言葉にビクリと震えた姉弟が女に問いかける。
「魔女狩りが、いるの? この森に」
「ああ、そうだよぅ。だからヌィお姉ちゃんが助けにきたんだよぅ」
ヌィは言葉を交わせたことに安心し、うんうんと頷き状況を説明する。
「今は仲間が魔女狩りをやっつけてるんだぁ。だから暫くここで隠れていようねぇ」
ヌィは周りを見渡す。
リュンケウスの眼が見える範囲で見えるものはないが、森が騒いでいるのが感じられる。おそらく戦闘がはじまったのだろう。
この場所まで来ることは無いだろうが油断は禁物だ。ヌィはもしものときのために龍氣を体内に巡らせた。
「さぁて、今の状況をおはなしするよぅ。もしもこわいのがきたらヌィお姉ちゃんがまもってあげるからねぇ」
剣戟の音や魔導が木々を焼く焦げ臭い匂いが漂ってくる。あの木々をぬけたところだと、ザルクとエルシーとゼクスは顔を見合わせ頷いた。
多少木の枝に引っかかれながらも、彼らは現場に突入する。つららたちの後ろから介入した形だ。
「おっと」
状況をすぐに把握してゼクスが豊穣の雨をその場に降らし、仲間のけが人を回復させる。一度では回復しきれないが、数度連発すればなんとか持ち直すはずだ。
「んもう、おそいわぁ」
「たすかる。5秒先の未来が少々雲行きが悪くてな」
「お前らが早すぎなんだ! ついていけるか! ……っていうかつららは俺たちが来るのは視えてたんだろう」
「もちろん」
口を尖らせる狼華としゃあしゃあとうそぶくつらら。
ザルクはつららと狼華の前でブロックしているバスターとフェンサーに向けて縛めの魔法陣を打ち込み、彼と彼女に回復のための余裕を作る。
カスカの集中攻撃からバスターの少年に庇われたドクターの少年が足止めされた前衛をクリアカースで縛めから開放する。
「ほわぁ! ほんとに美少年たち! もったいないけど! 私は惑わされないわよ!いくら美少年だからって……」
エルシーが美少年の姿に色めくが、頭をふって吹き飛ばす。
「貴様は! もしやイ・ラプセルのものか?!」
エルシーの赤髪に見覚えのあったネズミのバスターが叫ぶ。
「あ、バレちゃってる」
「どっちでもいいわ。魔女狩りは殺すから」
焦るエルシーにエルは何も状況はかわってないとつぶやいた。
突然の遭遇戦において彼ら魔女狩りは自分の敵が何者かわかってはいなかった。しかして一度見たことのある顔があればイ・ラプセルの者であると気づく。
「こわいんだもんなぁ」
エルシーは言いながらソラビトのマギアスを前衛ごと緋色の衝撃で撃ち抜いた。
エルと魔導の撃ち合いをしていたマギアスの少年はその緋色の拳の衝撃波に倒れる。エルは倒れたその少年を念入りに緋文字で焼き尽くした。
「羽根は残しといてよ! 売れるんだから!」
ゼクスが悲鳴を上げるが聞いてはいない。燃え盛る炎は羽根を黒炭にかえていく。
マギアスの少年が堕ち、現状5対7。数の優位はくるりとひっくり返る。
「ゼクス、流石に追い剥ぎはだめよ。そこから足がついちゃうもの」
エルシーが半眼で指摘した。あまり倫理的に悖ることを仲間がするのは少し嫌だったのもあるのだ。
「このっ! 痴れ者どもが!」
リーダーの少年がゼクスの言葉に激高し、その銃口を彼に向け防御のできない楔を放った。
「ははは!! くっそ痛ェわこれ! 痛いの痛いの飛んでいけー。敵のもとまで飛んでいけ!!」
ゼクスは悲鳴をあげながらも仲間の回復の手はとめない。
ドクターの少年はバスターに庇われながらも必死で回復魔導を仲間に施すが魔導力はもう底をつきかけている。
「ザルク、こっちにアレくださいよ。このバスターさっきから邪魔で」
ドクターを攻撃するにも味方カバーをしてくるバスターがうざったくなったカスカの要望にザルクが銃を向けた。
「避けろよ」
「言われなくても」
合図を伴えば味方からの範囲攻撃はある程度までは避けることも無理ではない。着弾点に魔法陣が浮かびドクターをかばうバスターの少年が縛められていく。カスカは小器用に魔法陣を避けると、フリーになったドクターの少年に剣閃を三連煌めかせる。追撃をするようにエルの二連の魔術の矢が心臓を狙って貫き、ドクターの少年は目を見開くが、その瞳にはもうなにも映ってはいない。
「くそう! くそう!」
減っていく味方に対してリーダーが怒りを露わにしながらウェッジショットの楔を神敵たちに放つ。アタッカーが減少した今、自由騎士へのダメージはすぐに回復され、焼け石に水にしかならない。一方彼らのドクターが倒れた今、こちらへのダメージは蓄積していく一方にしかならない。
分水嶺は超えた。退却だ、とリーダーの少年は叫ぶ。二人殺された。ジェラルド様の宝物を失ってしまったリーダーである自分は何をされるのかわからないがこれ以上失うわけにはいかない。
リーダーが撤退を叫ぶものの、こんどは逆につららと狼華にブロックされてしまい、前衛の二人は逃げることができない。かろうじて麻痺がとけたバスターの少年は指示に従い逃げようとするが、エルシーが邪魔をする。
「ちっ」
それなら最低でも自分だけはと逃げ出すが、カスカの影狼に回り込まれてしまう。
「自分だけなら逃げれるとお思いですか? それは甘い、というものです」
そういってカスカは微笑んだ。
あとは消化戦だ。彼ら自由騎士ははそれなりの怪我はおったものの魔女狩りの少年たちを一人たりとて逃がすことなく屠ることに成功した。
「あ~あ、素材はよかったんやけどなあ。マダムのとこ連れてったらマダムよろこぶやろうに」
ゼクスに包帯をまかれながら狼華がマイスコップで穴を掘るザルクを見ながらつぶやく。
「金目のものは持ってなかったねぇ。この魔女狩りちゃんたち。毛皮だけだめ? このまえ寝煙管で絨毯焦がしちゃってさあ! それの代わりに!」
「毛皮っていうか皮膚だぜ? 剥がしたところで代わりにはならんさ」
ザルクがこともなさげに答えればゼクスはやっぱだめかぁ、とため息をついた。
彼らは魔女狩りたちを埋めおえると、ヌィのまつ隠れ場所で合流する。
「大丈夫だった? お母さんの薬草はとれたのかしら?」
エルシーの言葉にいつの間にかずいぶんと仲がよくなったヌィと姉弟が頷いた。どうも待ち時間のあいだ一緒に薬草をさがしてつんでいたようだ。バスケットには薬草がたくさん入っている。
状況はヌィによりヨウセイの姉弟には知らされている。キジンであるザルクもまたヨウセイと同じくシャンバラでは迫害されるものだ。彼の存在もまた、自由騎士たちが敵ではないということをヨウセイたちに伝える十分な理由になった。
ヨウセイの姉弟の信頼を得た彼らは隠れ里である森の奥の集落に招待される。獣道ともいえないその道をエルシーとゼクスとザルクはずいぶんと難儀して進む。
カスカとエルはどうでもよさそうにしていたかと思えば、集落についたころには、いつの間にかふらりと消えていた。彼女らのことだ。気まぐれに先に帰ったのだろう。
自由騎士たちは集落のヨウセイたちにそれなりに歓迎された。
つららは興味なさげに集落の入り口を片目で見ている。もしものことがないように警戒しているのだろう。
ゼクスは子供のヨウセイが遠くから覗いているのに気づいて、にっこり笑って手を振れば隠れられてしまう。はは、こわがられちゃった、俺? とぼやけば、狼華がでくのぼみたいに大きゅうて怖いんやとおもうわあ、ところころ笑った。
おおよそ4家族程度のその小さな集落の代表者が姉弟に連れてこられ、ザルクとヌィ、狼華とエルシーが面会し状況の説明を始める。
近い内にこのあたりで戦いが勃発する。故に魔女狩りがこの辺りにやってくる可能性が高いと。
一時期だけこの集落から疎開することを勧める、と告げれば彼らはどこへいけばいいのだと尋ねた。
彼らは武闘派のウィッチクラフト者たちと違って闘うことができないヨウセイたちだ。ウィッチクラフトに身を寄せるにも武力がないことが彼らを逡巡させる。家族達を戦わせたくないのだ。
そんな彼らに、エルシーがイ・ラプセルなら保護ができるといえば、彼らは訝しげな顔をする。彼らにとってイ・ラプセルは異郷である。
「ウィッチクラフトに合流するか、このまま残るか
……どっち選んだとしても、情勢が分かっとる言うんは生き残る確率が上がるゆう事や。
自分の身の振り方は、自分で選ぶもんや」
狼華が蓮っ葉にそう言えばヨウセイたちは萎縮してしまう。
どのようにしたらいいのかすらわからない彼らに根気よくザルクたちが説明と説得をすれば、彼らはやっとのことで、イ・ラプセルへの移住に首を縦に振った。
「おねえちゃん」
エルシーの腕がヨウセイの姉によって引かれる。
「いつか、またこの集落に帰ってこれる?」
それはきっとこのヨウセイたちすべての不安の声であったのだろう。
「もちろんよ」
その不安を払拭するようにエルシーは笑顔で断言した。
視界前方。
5秒先の未来を見る。何もいない。ならばこちらではない。
『劫火』灯鳥 つらら(CL3000493)は炎のようなその瞳を閉じる。
未来を先取り見える影。それが未来視。
「ちょ、ちょっとまって、もう!」
さくさくと足場の不具合を物ともせず、魔女狩りたちを索敵する『魔女』エル・エル(CL3000370)とつらら、『天辰』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)と『艶師』蔡 狼華(CL3000451)に必死で追いつかんと『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)が頬を膨らます。
確かに靴は頑丈で滑りにくくはあるが、技能を持っているものの速度には及ばない。
「なんというか水を得た魚っていうのかな? こりゃあ追いつくのは難儀だねえ。こっちはヨウセイちゃんたちを探すしかないね」
『黒道』ゼクス・アゾール(CL3000469)はやれやれとエルシーの後に続く。彼も速度面で役にたつ技能は持ち合わせてはいない。
さらにその後を目星を使いながら注意深く周囲を見渡すのは『RED77』ザルク・ミステル(CL3000067)。
「何者かが歩いた跡がある。歩幅は狭いし子どもだな、人数は2人くらいってところか、ヌィ。自然共感を頼む。このあたりの木々に聞いてくれ」
「はいはいわかったよぉ」
『黒き森の魔女(元)』ヌィ・ボルボレッタ(CL3000494)は細い手のひらを大樹の幹に触れさせ共感すれば、大樹はヨウセイの子どもたちが向かった方向を示す。
ヌィはメガネを外し、目を細めリュンケウスの瞳を起動しその方角を見ると木立に隠れるヨウセイの衣服の裾が少しだけみえた。
「みつけたけどどうするぅ?」
「そうだな、ヌィは説得しにいってくれ。連れて皆の元に戻るよりは一緒に隠れている方が安全だろう。俺たちはカスカたちのところに向かうぞ」
魔女狩りは足の早いやつがそろそろみつける頃合いだろう。こちらのほうが先に接触できたのだ。水鏡の予測では彼らはこの近辺にはいるだろうが、『まだヨウセイを発見できていない』はずだ。このように介入し未来を変えることができるとは水鏡さまさまといったところか。
「ヌィだけでは不安じゃない?」
「まあ、魔女狩りちゃんがヨウセイに接触してないのだったらだいじょうぶじゃない? 魔女狩りちゃんの未来は『魔女の発見』ではなく『敵兵との接触』がおきたことに変わってしまうんだから、魔女探しどころじゃなくなるだろう?」
ゼクスが細い目を更に細めて言った。
「なるほどね、探しているものは『みつからなかった』、ってわけね」
ぽんと手をたたいてエルシーがゼクスの言葉の意図を察する。
「じゃあ、ヌィ。見つかってくれるなよ?」
「ヌィおねえちゃんにおまかせだよぅ」
ザルクにヌィは答えると怪しげな足取りでヨウセイの姉弟のいる森の奥に消える。
「さあて、俺たちは戦闘だ。俺たちがつく頃には戦場は温まっているころだろうぜ」
つららの瞳が木の影から現れる少年を幻視した。
「きた」
「おっと「視」えましたか?」
つららの直ぐ側を走るカスカが尋ね、つららの視線の方向を確認すると音もなく森に消える。カスカには彼女なりに考えがあるのだろう。
つららは同行者である狼華とエルに告げる。
「あと5秒後。4,3,2……」
いち、のカウントダウンの直後、がさりと数メートル先の梢が揺れた。
「お前たち! なにものだ!」
見目麗しい黒衣の少年たちが6人現れる。魔女狩りの少年たちだ。ヨウセイとの接触は果たせてはない未来(いま)にたどり着いたようだ。
つららとエルと狼華をみつけた彼らは、即座に戦闘態勢をとる。魔女ではないが、怪しいものたちだ。
味方ではないのであれば、それすなわち――神の敵だ。
「あらあら、ききしに勝る美少年やわぁ。でも、あかんあかん、艶があらへんやん」
狼華は匕首を構えると、フェンサーの少年に向かって走る。つららはドクターの少年に向かうがフェンサーを含め彼らの前衛は3人。前衛を抜けて後衛のもとに向かうことはできずにバスターの少年の二人に足止め(ブロック)をされてしまう。
まあいい、それも織り込み済みだ。バスターであれば足の速さは負けることはない。
つららは獰猛な笑みを浮かべる。
飛行するエルは同じくソラビトのマギアスの少年にむかい艶やかな笑みを浮かべると弔いの歌を謳う。その嘆きの言の葉は少しずつ燃え始め少年の顔を焼く。
「子どもだからってなに? 綺麗な顔がなに? 焼いてしまえば同じだわ」
「うぁ!」
ドクターの少年は叫び声をあげて落ちるソラビトの少年を癒やすために回復魔導を起動する。
「貴様ら、僕たちを魔女狩りと知ってか!」
「そんなのどうでもいいわ。魔女狩りは殺す」
エルは低い声で答えた。
「神敵だ。おちつけ。今はジェラルド様はいらっしゃらない。浮足立つな」
出会いざまの戦闘行為に魔女狩りの少年たちは浮足立つが、ガンナーの少年が冷静に指示を出し、各個撃破だと狼華をウェッジショットで穿った。
ネズミのバスターの少年がフェンサーの少年に合わせ狼華へ剣を振り下ろすのを匕首でかろうじて防御するがダメージは蓄積していく。
「私はあの羽虫のことは死ぬほどキライですが」
がさりと、木々の間から回り込んできたカスカが狼の影を纏いながら、ドクターの少年を切り裂いた。
「あなた方、魔女狩りのことはもっと……あー、いえ、やっぱり羽虫どもの方がキライですね」
(まあ、よくよく考えてみれば、あのなんでしたっけ? ウィッチがどうのこうのとかいうのが腹立つだけで、それ以外の羽虫は連中とは関係ありませんしね。助けることにはまあ、異論はありません)
「伏兵か?! この卑怯者が! 神に恥じよ!」
カスカが作ってくれた間隙につららは狼華の背を守るように死角を補う。
「大丈夫か?」
「わりかし痛いわぁ。でもまあ戦われへんほどではあらへんよ」
狼華の肩口からは大量の血液が流れている。
「まずは数減らしだ。私にあわせてくれ。バスターを狙う。ドクターへの攻撃は私たちからは届かない。カスカにまかせよう」
「んもう、このオニビトのこ、なんとかしたいけどまあしゃあないわぁ。ほんま、昂ぶってくるわぁ。難儀すぎて!」
狼華は頷きつららに攻撃対象をあわせた。
「あのねえ、ヌィお姉ちゃんはヌィおねぇちゃんっていうんだよぉ。ほぉら、みてのとおり。ヨウセイだよ」
怪しげな要望の女は怯える姉弟に話しかける。耳をみせて羽根をみせて。
「ヨウセイが魔女狩りはできないよぉ」
ねっとりとした口調に取って付けたような笑顔。魔女狩り、という言葉にビクリと震えた姉弟が女に問いかける。
「魔女狩りが、いるの? この森に」
「ああ、そうだよぅ。だからヌィお姉ちゃんが助けにきたんだよぅ」
ヌィは言葉を交わせたことに安心し、うんうんと頷き状況を説明する。
「今は仲間が魔女狩りをやっつけてるんだぁ。だから暫くここで隠れていようねぇ」
ヌィは周りを見渡す。
リュンケウスの眼が見える範囲で見えるものはないが、森が騒いでいるのが感じられる。おそらく戦闘がはじまったのだろう。
この場所まで来ることは無いだろうが油断は禁物だ。ヌィはもしものときのために龍氣を体内に巡らせた。
「さぁて、今の状況をおはなしするよぅ。もしもこわいのがきたらヌィお姉ちゃんがまもってあげるからねぇ」
剣戟の音や魔導が木々を焼く焦げ臭い匂いが漂ってくる。あの木々をぬけたところだと、ザルクとエルシーとゼクスは顔を見合わせ頷いた。
多少木の枝に引っかかれながらも、彼らは現場に突入する。つららたちの後ろから介入した形だ。
「おっと」
状況をすぐに把握してゼクスが豊穣の雨をその場に降らし、仲間のけが人を回復させる。一度では回復しきれないが、数度連発すればなんとか持ち直すはずだ。
「んもう、おそいわぁ」
「たすかる。5秒先の未来が少々雲行きが悪くてな」
「お前らが早すぎなんだ! ついていけるか! ……っていうかつららは俺たちが来るのは視えてたんだろう」
「もちろん」
口を尖らせる狼華としゃあしゃあとうそぶくつらら。
ザルクはつららと狼華の前でブロックしているバスターとフェンサーに向けて縛めの魔法陣を打ち込み、彼と彼女に回復のための余裕を作る。
カスカの集中攻撃からバスターの少年に庇われたドクターの少年が足止めされた前衛をクリアカースで縛めから開放する。
「ほわぁ! ほんとに美少年たち! もったいないけど! 私は惑わされないわよ!いくら美少年だからって……」
エルシーが美少年の姿に色めくが、頭をふって吹き飛ばす。
「貴様は! もしやイ・ラプセルのものか?!」
エルシーの赤髪に見覚えのあったネズミのバスターが叫ぶ。
「あ、バレちゃってる」
「どっちでもいいわ。魔女狩りは殺すから」
焦るエルシーにエルは何も状況はかわってないとつぶやいた。
突然の遭遇戦において彼ら魔女狩りは自分の敵が何者かわかってはいなかった。しかして一度見たことのある顔があればイ・ラプセルの者であると気づく。
「こわいんだもんなぁ」
エルシーは言いながらソラビトのマギアスを前衛ごと緋色の衝撃で撃ち抜いた。
エルと魔導の撃ち合いをしていたマギアスの少年はその緋色の拳の衝撃波に倒れる。エルは倒れたその少年を念入りに緋文字で焼き尽くした。
「羽根は残しといてよ! 売れるんだから!」
ゼクスが悲鳴を上げるが聞いてはいない。燃え盛る炎は羽根を黒炭にかえていく。
マギアスの少年が堕ち、現状5対7。数の優位はくるりとひっくり返る。
「ゼクス、流石に追い剥ぎはだめよ。そこから足がついちゃうもの」
エルシーが半眼で指摘した。あまり倫理的に悖ることを仲間がするのは少し嫌だったのもあるのだ。
「このっ! 痴れ者どもが!」
リーダーの少年がゼクスの言葉に激高し、その銃口を彼に向け防御のできない楔を放った。
「ははは!! くっそ痛ェわこれ! 痛いの痛いの飛んでいけー。敵のもとまで飛んでいけ!!」
ゼクスは悲鳴をあげながらも仲間の回復の手はとめない。
ドクターの少年はバスターに庇われながらも必死で回復魔導を仲間に施すが魔導力はもう底をつきかけている。
「ザルク、こっちにアレくださいよ。このバスターさっきから邪魔で」
ドクターを攻撃するにも味方カバーをしてくるバスターがうざったくなったカスカの要望にザルクが銃を向けた。
「避けろよ」
「言われなくても」
合図を伴えば味方からの範囲攻撃はある程度までは避けることも無理ではない。着弾点に魔法陣が浮かびドクターをかばうバスターの少年が縛められていく。カスカは小器用に魔法陣を避けると、フリーになったドクターの少年に剣閃を三連煌めかせる。追撃をするようにエルの二連の魔術の矢が心臓を狙って貫き、ドクターの少年は目を見開くが、その瞳にはもうなにも映ってはいない。
「くそう! くそう!」
減っていく味方に対してリーダーが怒りを露わにしながらウェッジショットの楔を神敵たちに放つ。アタッカーが減少した今、自由騎士へのダメージはすぐに回復され、焼け石に水にしかならない。一方彼らのドクターが倒れた今、こちらへのダメージは蓄積していく一方にしかならない。
分水嶺は超えた。退却だ、とリーダーの少年は叫ぶ。二人殺された。ジェラルド様の宝物を失ってしまったリーダーである自分は何をされるのかわからないがこれ以上失うわけにはいかない。
リーダーが撤退を叫ぶものの、こんどは逆につららと狼華にブロックされてしまい、前衛の二人は逃げることができない。かろうじて麻痺がとけたバスターの少年は指示に従い逃げようとするが、エルシーが邪魔をする。
「ちっ」
それなら最低でも自分だけはと逃げ出すが、カスカの影狼に回り込まれてしまう。
「自分だけなら逃げれるとお思いですか? それは甘い、というものです」
そういってカスカは微笑んだ。
あとは消化戦だ。彼ら自由騎士ははそれなりの怪我はおったものの魔女狩りの少年たちを一人たりとて逃がすことなく屠ることに成功した。
「あ~あ、素材はよかったんやけどなあ。マダムのとこ連れてったらマダムよろこぶやろうに」
ゼクスに包帯をまかれながら狼華がマイスコップで穴を掘るザルクを見ながらつぶやく。
「金目のものは持ってなかったねぇ。この魔女狩りちゃんたち。毛皮だけだめ? このまえ寝煙管で絨毯焦がしちゃってさあ! それの代わりに!」
「毛皮っていうか皮膚だぜ? 剥がしたところで代わりにはならんさ」
ザルクがこともなさげに答えればゼクスはやっぱだめかぁ、とため息をついた。
彼らは魔女狩りたちを埋めおえると、ヌィのまつ隠れ場所で合流する。
「大丈夫だった? お母さんの薬草はとれたのかしら?」
エルシーの言葉にいつの間にかずいぶんと仲がよくなったヌィと姉弟が頷いた。どうも待ち時間のあいだ一緒に薬草をさがしてつんでいたようだ。バスケットには薬草がたくさん入っている。
状況はヌィによりヨウセイの姉弟には知らされている。キジンであるザルクもまたヨウセイと同じくシャンバラでは迫害されるものだ。彼の存在もまた、自由騎士たちが敵ではないということをヨウセイたちに伝える十分な理由になった。
ヨウセイの姉弟の信頼を得た彼らは隠れ里である森の奥の集落に招待される。獣道ともいえないその道をエルシーとゼクスとザルクはずいぶんと難儀して進む。
カスカとエルはどうでもよさそうにしていたかと思えば、集落についたころには、いつの間にかふらりと消えていた。彼女らのことだ。気まぐれに先に帰ったのだろう。
自由騎士たちは集落のヨウセイたちにそれなりに歓迎された。
つららは興味なさげに集落の入り口を片目で見ている。もしものことがないように警戒しているのだろう。
ゼクスは子供のヨウセイが遠くから覗いているのに気づいて、にっこり笑って手を振れば隠れられてしまう。はは、こわがられちゃった、俺? とぼやけば、狼華がでくのぼみたいに大きゅうて怖いんやとおもうわあ、ところころ笑った。
おおよそ4家族程度のその小さな集落の代表者が姉弟に連れてこられ、ザルクとヌィ、狼華とエルシーが面会し状況の説明を始める。
近い内にこのあたりで戦いが勃発する。故に魔女狩りがこの辺りにやってくる可能性が高いと。
一時期だけこの集落から疎開することを勧める、と告げれば彼らはどこへいけばいいのだと尋ねた。
彼らは武闘派のウィッチクラフト者たちと違って闘うことができないヨウセイたちだ。ウィッチクラフトに身を寄せるにも武力がないことが彼らを逡巡させる。家族達を戦わせたくないのだ。
そんな彼らに、エルシーがイ・ラプセルなら保護ができるといえば、彼らは訝しげな顔をする。彼らにとってイ・ラプセルは異郷である。
「ウィッチクラフトに合流するか、このまま残るか
……どっち選んだとしても、情勢が分かっとる言うんは生き残る確率が上がるゆう事や。
自分の身の振り方は、自分で選ぶもんや」
狼華が蓮っ葉にそう言えばヨウセイたちは萎縮してしまう。
どのようにしたらいいのかすらわからない彼らに根気よくザルクたちが説明と説得をすれば、彼らはやっとのことで、イ・ラプセルへの移住に首を縦に振った。
「おねえちゃん」
エルシーの腕がヨウセイの姉によって引かれる。
「いつか、またこの集落に帰ってこれる?」
それはきっとこのヨウセイたちすべての不安の声であったのだろう。
「もちろんよ」
その不安を払拭するようにエルシーは笑顔で断言した。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
この小さなヨウセイの集落の人々は一次イ・ラプセル預かりになりました。
聖霊門については厳重に口止めをしています。
都会であるイ・ラプセルにかなり戸惑っているようですがすぐに慣れることでしょう。
MVPはヨウセイ探索と説得に尽力された貴女に。
探索面は各々で個々にヨウセイの姉弟探索と魔女狩りに分かれていたので、魔女狩り探索組に置いていかれる形にはなりましたが、それが功を奏して、魔女狩りとの接触、ヨウセイ姉弟との接触が別個におこなわれたため、魔女狩りはヨウセイに遭遇しないという未来にたどり着くことができましたので、守りながらの戦闘は発生しませんでした。
良い采配であったと思います。
戦闘面では足並みは合っていないのが少々不安でしたが、かえって消耗していない戦力の投入という形で数の不利をひっくり返したので問題はありません。
先行で戦っていたかたは少々傷を負う形になりましたが名誉の負傷ということで。
ご参加ありがとうございました。
聖霊門については厳重に口止めをしています。
都会であるイ・ラプセルにかなり戸惑っているようですがすぐに慣れることでしょう。
MVPはヨウセイ探索と説得に尽力された貴女に。
探索面は各々で個々にヨウセイの姉弟探索と魔女狩りに分かれていたので、魔女狩り探索組に置いていかれる形にはなりましたが、それが功を奏して、魔女狩りとの接触、ヨウセイ姉弟との接触が別個におこなわれたため、魔女狩りはヨウセイに遭遇しないという未来にたどり着くことができましたので、守りながらの戦闘は発生しませんでした。
良い采配であったと思います。
戦闘面では足並みは合っていないのが少々不安でしたが、かえって消耗していない戦力の投入という形で数の不利をひっくり返したので問題はありません。
先行で戦っていたかたは少々傷を負う形になりましたが名誉の負傷ということで。
ご参加ありがとうございました。
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