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【円卓の騎士】Keen! 鋭き必中の矢!



●円卓蒸気騎士、第二戦――
『ダンダンダーン、ダダッダー! ゆくーぞー、僕らの蒸気騎士ー♪
 そーらに光る太陽よー。あまねく光を我が民にー♪
 ひとをー、まもれー、円卓蒸気騎士ー♪
 蒸気の力は皆のためーにー! 鋼の身体は正義のためーにー♪
 ゆくぞー、王剣ーエクスカリーバー♪ 唸れ、必殺アロンダイトー♪
 ひとをー、まもれー、円卓蒸気騎士ー♪』

 マロリー司祭が1分半ほど自前でテーマソングを歌った後に、四体の蒸気騎士がせり上がってくる。
 トリスタン、パロミデス、ガレス、ディナダン。そう称された円卓蒸気騎士だ。
『私の名前はトリスタン。この矢から逃れた者はいません』
 紫色の弓を持った蒸気騎士だ。弓、と言ったがその弦は見るからに固く、梃子の原理を使って引きやすくしているとはいえかなりの剛力が必要だろう。更にはスコープまで付いている。
『パロミデス。槍を使う騎士だ』
 静かに言葉を放つパロミデス。槍自体は巨大ではあるが何の機械加工もされていない騎乗槍だ。だがそれを上手く扱えるように蒸気騎士の方が調整されているのだろう。槍を構えた姿は、隙が無い。
『ガレスです。よろしくお願いします』
 一礼するガレス。純白ともいえる鋼のボディだが、ことさら右手は見るも美しいほどに白く塗られている。稼働している歯車まで白く塗られており、一種の芸術品と言えなくもない。勿論、兵器である以上は美しいだけではないのだろう。
『やあやあ、あっしの名前はディナダン。自由騎士の皆々様、どうかこの憐れな音楽家に御慈悲を。勇ある騎士達に比べて、あっしはさしたる戦果も持たない道化師でして』
 竪琴を鳴らしディナダンが恭しく手を胸に当てる。竪琴だけではない。バグパイプやタンバリンと言った各種の楽器も持っている。……ただの賑やかしがここにいるはずはないのだが。
 なお、声は全てマロリーが宛てています。わざわざ音の質まで変えるあたり、凝っているというかなんというか。
『それでは 円卓蒸気騎士三本勝負、第二戦、開幕――!』
 本当にこの司祭ノリノリである。




†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
シリーズシナリオ
シナリオカテゴリー
自国防衛強化
担当ST
どくどく
■成功条件
1.円卓蒸気騎士4体との勝利
 どくどくです。
 このシリーズ、一番困ったのはマロリーが魔ロリに変換されることd(撲殺

このシナリオは合計三回の二回目のシリーズシナリオとなります。シリーズ終了後、蒸気騎士ジョブを会得できることが出来ます。
 本シナリオ参加時、次回同タグの依頼の参加優先権が得られます。

●敵情報
・円卓蒸気騎士(×4)
 自動で動く蒸気騎士です。正確には人機融合したマロリーがコントロールしています。分類は……イブリース化した器物が一番近いんじゃないですかね? 当然権能とか持ってません。バッドステータスも普通に効きます。

・トリスタン
 弓を持つ紅い鎧の蒸気騎士です。

攻撃方法
フェイルノート 攻遠単 必中の弓。高い命中値を有する。溜1 【必殺】【ブレイク2】
カーテナ    攻近単 先の折れた剣。慈悲の剣とも。【不殺】
金髪のイゾルテ 自付  HPが0になった時、一度だけHP4割で復活します。  
哀しみの子    P  呪われた子、毒で苦しんで死ぬ運命。常時【アンラック1】【ポイズン2】。このBSは回復されず上書きされない。

・パロミデス
 槍を持つ銀色の蒸気騎士です。

攻撃方法
回転して払う 攻近範  槍を横に払い、敵を一掃します。【スクラッチ1】
大きく突く  攻近貫2 槍を一突きし、その後ろにいる者にもダメージを与えます(100%、50%)
連続で突く  攻近単  連続で槍をついてきます。【三連】
柄を長く持つ 自付   攻撃&速度UP。『中ほど持つ』『柄を短く持つ』を解除。
中ほどを持つ 自付   物防&抵抗UP。『柄を長く持つ』『柄を短く持つ』を解除。
柄を短く持つ 自付   攻撃&命中UP。『柄を長く持つ』『柄を短く持つ』を解除。

・ガレス
 槍を持つ白色の蒸気騎士です。

攻撃方法
突撃   攻近単  真っ直ぐに突っ込んできます。20m移動可能。
白い手  攻近味単 輝く手が不浄を払います。HPとBS回復。
連携攻撃 P    息を合わせるのが上手いです。戦闘可能な蒸気騎士の数に応じて、攻撃力上昇。

・ディナダン
 楽器を持つ蒸気騎士です。

行進曲 味全  勇猛な音楽を鳴らし、味方を鼓舞します。攻撃力上昇。
幻想曲 魔遠全 聞く者を惑わず音楽を鳴らします。【ウィーク1】【スロウ1】
夜想曲 魔遠単 眠りを誘う曲を奏でます。【ヒュプノス2】

●NPC
メアリー・シェリー(nCL3000066)
 工場への案内人としています。戦闘に参加するつもりはないようです。
「その辺の部品で即席の人形作るから。次ぐらいは手伝えるわよ」

●場所情報
 元ヘルメリア首都、ロンディアナ。そこにある工場跡。そこに用意された闘技場で戦います。マロリーノリノリだな、おい。
 戦闘開始時、敵前衛に『パロミデス』『ガレス』『ディナダン』が、敵後衛に『トリスタン』がいます。
 事前付与は不可。ゴングと同時に試合開始です。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
2個  2個  6個  2個
14モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2020年05月04日

†メイン参加者 8人†




「……このテーマソング、毎回聞かなきゃいけねえの?」
 ヘルメリアの研究者ってわけわかんねぇ、そう言いたげな表情で『機神殺し』ザルク・ミステル(CL3000067)は頭を抱えた。そう言えばメアリーも割とあっさりこの手のノリを受け入れたところを見ると、そういう風潮があるのかもしれない。……いや、ない。
「エクスカリバーとかアロンダイトとかね……次何来るか予告してるようなもんじゃね?」
 苦笑するように『その過去は消えぬけど』ニコラス・モラル(CL3000453)は呟く。この二戦で出てきた騎士の名前を消去すれば、出てくる円卓の騎士は限られてくる。マロリーも隠すつもりはなのだろう。ある意味潔い。
「すごいすごい! ときめきが止まらない!」
 少年のように目を輝かせる『朽ちぬ信念』アダム・クランプトン(CL3000185)。立ちはだかる機神。唸る轟音。機械ならではの兵器。そして正々堂々とした騎士の出で立ち。全てがアダムにストライクであった。
「ええ、確かに見事。この騎士達に魔剣士の力がどれだけ通じるか、試させて貰いましょう!」
『冥王剣「タルタロス」』を掲げるようにして『俺様の道化力は53万です』クレヴァニール・シルヴァネール(CL3000513)が言う。蒸気技術の果てと、魔導国家の忘れ形見。さてどちらが有用か。胸を借りるつもりで戦い挑む。
「こうなれば、私も本気を出すしかないようですね……マスク! オン!」
 言ってパピヨンマスクを懐から取り出し、ポーズを決める『マスクド・パスター』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)。何か色々吹っ切ったらしい。ヘルメリアの正義を伝えた使者の遺志を継ぐように、アンジェリカもこの地に何かを刻む。
「さてさて自由騎士と円卓蒸気騎士も第二幕! どのような戦いになるか一同ご注目ください」
 言って一礼する『永遠のアクトゥール』コール・シュプレ(CL3000584)。蒸気騎士の技術を得るという目的もあるが、それはそれとしてこの状況は演出家として捨て置けない。マロリーの演出や騎士達に演劇の血が騒いでいた。
「要するに強いんだろ? だったら早くやろうぜ!」
 うずうずと戦意を押さえるのに必死な『砂塵の戦鬼』ジーニー・レイン(CL3000647)。蒸気技術が欲しいというよりは、誰でもいいから戦いたいという顔だ。ヘルメリアとの戦争も終わって間が開き、、すこし身体を動かしたいようだ。
「蒸気騎士の技術を応用すれば……生まれつき体の不自由な方達にも役立つ様な……そういった物も作れるのでしょうね」
『命を繋ぐ巫女』たまき 聖流(CL3000283)は蒸気騎士の技術を聞いて、そんな感想を告げる。欠損した身体部位の代替。カタクラフトとはまた別の可能性。技術を命を繋げるためにと考えるたまきならではの発想だ。
『準備は終わったかな? それではぁ、円卓Fight第二戦……レディィィィィィィィゴォォォォォォォ!』
 マロリーの声と同時に戦いが開始される。
 開始の鐘と蒸気騎士の駆動音、そして自由騎士達の雄叫びが重なった。


「我が身、一つの宇宙なり! 輝ける七点に燃ゆる命脈を流し込み、我は一時の魔人とならん!」
 ポーズを決めて叫ぶアンジェリカ。その身体に刻印される七つの魔光。光の位置、光同士の距離、そしてその形状。それらが意味をなし、魔法陣となってアンジェリカに力を注ぐ。全身を駆け巡る魔力の奔流に肉体が活性化されていく。
 祈りを捧げられ、金色になったアンジェリカの武器。それを手に真っ直ぐに蒸気騎士に向かう。踏み込みは早く、そして強く。裂帛とともに振るわれた金色が鋼の騎士達を穿ち、衝撃でその動きを封じていく。
「これが、マスクド・パスターの力です!」
「むむむ。魔剣士として私も負けてはいられませんね。
 直線軌道の回転刺突。穿ちの牙は獲物を求め、回り回りて螺旋を描く。これ防ぐこと能わず!」
 魔剣士となったクレヴァニールも負けじとばかりに声を張り上げる。貴族の出身ではあるがこういったノリは嫌いではない。エンターテインメントとして周囲を魅了できるのなら、率先して行うタイプだ。
 言葉と共に螺旋の力が武器に集まる。回転しながら収縮し、全てを貫く円錐の力。クレヴァニールは大きく腕を振るい、その力を解き放つ。振るわれた武器は魔力と武力を得て、蒸気騎士を貫き戦場を突き抜けていく。
「これがブラッディ……ではありません。デッドリースクライド!」
「よーし、僕も負けてられないぞ!」
 興奮と共に前に出るアダム。子供のようにはしゃぎながら、しかし騎士としての役割は忘れない。戦いに置いて誰かを守るのが騎士。その信念を胸に抱き、一歩一歩を突き進む。相手が騎士であるのなら、なおの事その矜持を示すように。
 機械の腕を構え、真っ直ぐに蒸気騎士の戦意を受け止める。敵の位置、味方の位置、自分の位置。それら全てを計算し、それぞれの動線を意識しながら守りの構えをとるアダム。より多くを守る。その為に編み出された防御法。ここで騎士達に見せつけてくれよう。
「我が名は自由騎士アダム・クランプトン! 我が守り砕ける者あらば砕いてみせるが良い!」
「助かります……でも、無理はなさらないで」
 アダムの守りをうけながら、たまきが言葉を返す。仲間のキジン達を診ながら、同時に他の仲間の傷具合を確認する。忙しい状況ではあるが、その分得る者も多い。この努力が明日の命を救うのだ。
 世界に漂う無形の力。その力を束ね、杖に集める。イメージするのは木々のせせらぎ、風でこすれ合う優しい葉音を想像しながらたまきは魔力を解き放つ。ふわり、とした感覚と共に解き放たれた癒しの力が、仲間達の傷を塞いでいく。
「少しでも、前に……!」
「前に進むのは風の精霊に任せときな!」
 斧を振るい、ジーニーが叫ぶ。それはまさに突風。あるいは激風だ。真っ直ぐに突き進み、立ちふさがるものあれば力で押す。その為にジーニーは体を鍛える。風が求める最終地点まで止まることなく。
 がむしゃらに突き進むように見えて、ジーニーの動きは合理的だった。騎士の武器の間合を把握し、それを意識するように立ちまわる。だが決して逃げはしない。左右異なる瞳を爛々と輝かせ、力の限りに斧を振るう。
「いいねぇ、蒸気騎士。加減が分からねぇからスクラップになっても恨むなよ!」
「確かに加減はできねぇな。円卓騎士のこだわりがなければ厄介な相手だぞ、これは」
 銃を構えて騎士達を見るザルク。円卓騎士の話は子供のころに聞いたことがある。その拘りゆえの弱点が付与されているのは憐れだが、逆に言えばそれがなければかなりの激戦となっていただろう。同じ遠距離タイプ同士、トリスタンの動きがよくわかる。
 息を吸い、吐く。それだけで意識は鋭くなっていく。狙うは回復と連携攻撃を担う白の騎士ガレス。弾丸に魔力を込め、狙いを定めて引き金を引いた。着弾と共に展開される束縛の魔術が円卓の動きを封じていく。
「先ずはお前の動きを封じさせてもらうぜ」
「回復封じは大事だからね。おじさんよくわかるわ」
 うんうんと頷くニコラス。相手の継戦能力を減らすために回復能力を持つ者を動けなくするのは戦いの鉄板だ。ニコラス自身が回復役だから、その戦略は身をもって知っている。前の円卓蒸気騎士戦でも狙われたし。
 アダムの守りに感謝しながら、ニコラスは魔力を展開する。厄介なのはディナダンの歌による付与効果とみて、それを取り除くことをメインにして動く。解き放たれた魔術が傷を癒すと同時に眠気を払っていく。
「しかしまぁ、ほんと愛着がすごいよな。趣味に走ってるって言うか」
「拘りこそが創造の原点なのだろうね。オマージュとはかくあるべきか!」
 うんうんと頷くコール。元の作品に敬意を表して作られるのがオマージュだ。マロリーの創造に悪意は感じられない。忠実に円卓騎士を模倣しているのが分かる。舞台俳優として様々な炎撃をこなしてきたコールには、その『熱』が理解できた。
 無論、その理解と勝負は別問題だ。全力を尽くして勝つことが、マロリーへの尊敬の返信となるのだから。ステップの順序と足の位置、そして鳴らす音が魔力の調べ。踊りの入り展開される軽快な空気が仲間達を活性化させていく。
「共に音により鼓舞する者同士、高め合おうではないか。ディナダン卿!」
 自由騎士の攻防に、蒸気排気をもって応える円卓蒸気騎士。そこに人の『心』はないのだが、それは自由騎士の戦意に応えるかのように見える。
 戦いは少しずつ、加速していく。


 自由騎士達はデバフを付与するディナダンを集中砲火し、その動きを封じる。十全に動きが取れず、トリスタンやパロミデスの攻撃に押し込まれる事を懸念しての作戦だ。
『はっはっは。道化であるあっしをねらっても火力は変わらない事を忘れるなー』
 負け惜しみか、ディナダン(正確にはそれを文ゆるマロリー)は動かなくなる寸前にそう言い放つ。事実、ディナダンを攻めている間はトリスタンやパロミデスは自由騎士を攻め立てていた。
「見事だ。だが負けるわけにはいかないよ。貴方達からまだ学ぶことはあるのだから!」
「この程度で膝を屈するマスクド・パスターではありません!」
「流石は必中の矢。見事な腕前だ!」
 アダムはその攻撃を受けて膝を着くも、不屈の精神で立ち上がる。アンジェリカとコールもフラグメンツを燃やして戦意を維持する。
「内ゲバで滅びるとか、ヘルメリアにしちゃ皮肉な内容だな!」
 円卓の騎士の最後を思い出しながらザルクが銃を撃つ。不貞により分裂した円卓の騎士。最後は騎士同士殺し合い、王剣は妖精に返還された。ヘルメリアも同じように神の暴走で滅びを迎えた。自分達もそうならないようにしないとな、と無言で律する。今のところ、問題はないはずだ。
「まだまだ負けてねーぞ! こっからが本番だ!」
 パロミデスの槍でフラグメンツを削られたジーニーが笑みを浮かべる。怒りと興奮で体に力が入ってくる。喉から漏れる息が熱い。その熱を冷やすように肺一杯に息を吸い込んで、吐き出すと同時に斧を振るう。爆発的な一撃が蒸気騎士の身体を揺らし、破壊していく。
「嗚呼、円卓の騎士達の強さはまさに伝承の如く! しかし今を生きる騎士達もそれに勝るに劣らず! 自由騎士達の活躍、御照覧あれ!」
 魔力の矢を展開しながら叫ぶコール。支援を重視するために魔力消耗を押さえた攻撃だが、それでもコール本来の魔力もあって蒸気騎士達を揺るがしていた、舞い、謡い、そして戦う。この演目はやることが多く、だからこそやりがいがある。
「円卓の守りは我が経験の中にある! その槍は必ず止めてみせる!」
 パロミデスとガレス。前に立つ二人の蒸気騎士の槍を受けながら、アダムが吼える。ガラハッドの盾はないけれど、ガラハッドの守りの精神は心の内にある。この戦いで得た経験も騎士達の精神も、同じようにアダムの心の中で昇華し、生き続けるのだ。熱き魂を受け継ぎ、騎士の道を突き進むアダム。
「傷ついた方はこちらに……あらゆる矢弾は、ここに届きません」
 印を切り、地面に魔力の刻印を穿つたまき。地面に刻まれた六つの刻印はそれぞれが同時に動き出して一つの結界を展開する。その内にある者を守る聖域。傷つけるのではなく、守る。それも一つの戦いなのだ。結界を維持しながら戦いを見守るたまき。仲間を信じ、守りを固めていく。
「これが魔剣士の奥義です……顕現せよ、地獄の奥底に封じられし終末の堕天使! おおおおおおおおお!」
 体内の魔力を展開し、刃に集めるクレヴァニール。刃に宿る不浄の力。それがクレヴァニールの武器を夜強く、より鋭く形成していく。業剣・終焉奈落。業とは悪意、不浄そのものその刃に刻まれし者は。地の底の終わりから響く叫び声に捕らわれる。心弱き人ならば膝をつき、苦悶に呻いているだろう。
「ま、これも実機のテスト込みなんだろうけど……それにしてもすごいもんだわ」
 円卓蒸気騎士達の動きに目を見張るニコラス。それぞれの伝承に合わせた武器と動き。それを忠実に再現しようとしているのが分かる。とても人殺しの兵器を作ったとは思えないほどだ――或いは、その環境から心を癒すためにこういった物を作ったのだろうか。そう思うと、人の心は業が深いものなのかもしれない。
「これこそが、ヘルメリアで学んだ正義の鉄槌! マスクド・パスターの一撃なのです!」
 アンジェリカは叫びながら真っすぐに突き進み、十字架状の武器を振るう。真っすぐ行ってぶっ飛ばす。言葉にすればそれだけの戦い方だが、シンプルな戦術を為すためにはどれだけの地力が必要なのか。アンジェリカはそれを理解したうえで、突き進んでいた。己の努力と正義の心を信じて。
『むぅ、これほどまでとは!』
 叫んだのはトリスタンの心情なのか、それともマロリーの本心か。自由騎士達の攻勢は円卓蒸気騎士を追い詰めていく。
「こいつで終わりだ! ハイッパアアアアアアアっ!」
 最後に残ったトリスタンに斧を構えて迫るジーニー。疲労した体に活を入れ、大きく力を込めて斧を構える。全身全霊の力技。如何なる守りもその力と斧を前には無意味。鋼の旋風が、吹き荒れる。
「トルネェェェェェド、アタァァァァァァァック!」
『見事! 戦いの中で死ねたのは、騎士として幸運だった……!』
 ジーニーの攻撃で動かなくなるトリスタン。最後のセリフを聞きながら、ジーニーは斧を杖にして拳を突き上げた。


 戦いが終わり、怪我人の治癒等を終えてひと段落する自由騎士達。
「成程、そういう構造なのか。大したものだね」
「やっぱり円卓の騎士カッコイー!」
 サポートで来ていた者達も仕事を終え、思い思いに行動していた。メアリーの作る即席人形を見る錬金術師と、円卓蒸気騎士を輝く目で見る魔導士。
『さすがだねー。流石はヘルメスを倒した自由騎士達だ。噂に違わない強さだよ』
 自由騎士達の健闘を褒めたたえるマロリー。手があったら拍手をしていただろう。
「これが! マスクド! パスターです!」
 一言ごとにポーズを決めて、そのたびにアイドルオーラを爆発させるアンジェリカ。オーラってそんな演出でき……まあいいや。ともあれ戦いは終わった。しかし次の戦いが待っている。がんばれ僕らのマスクド・パスター。負けるな僕らのマスクド・パスター!
「伝声管を通じて、中に居る人の声を、拡声器で拡大……そういう事が、なるほど……」
 たまきは蒸気騎士内の人間とコミュニケーションをとる時どうするか、という質問をマロリーにして、その回答に納得していた。時代が時代なのでこういった技術が戦争に使われるのは仕方ないが、事が終われば平和利用もできるかもしれない。
「魔剣士と蒸気騎士。今は魔剣士に軍配が上がりましたな。いやしかし、紙一重でした」
 ふう、と汗をぬぐうクレヴァニール。戦いとは様々な要因でひっくり返る。今勝利できたとはいえ、次も勝利できるとは限らない。常に邁進しなくては、と心に刻みクレヴァニールは剣を収める。
「なあなあ、斧の騎士とかいないのか。鉾槍ならいる? 騎士様はお堅いなあ」
 ジーニーは同じ斧使いの騎士がいないかをマロリーに聞いてみたが、斧をメインとして戦った騎士はいないようだ。古き騎士道の時代において、斧は城壁と門を壊す個人武器だったようだ。ジーニーは面白くねぇな、とため息をついた。
「残ってる円卓の騎士って誰がいたっけ? アーサー王とランスロットは確定だろうけど。……厄介だねぇ」
 記憶を呼び起こすようにニコラスが呟く。思えば厄介なのが残ったよな、と眉をひそめた。騎士の王と円卓最強の騎士。そしれこの二人に並ぶほどの存在。次は絶対楽出来ないなぁ、とため息をついた。
「そうも言ってられないさ。蒸気騎士の力は要る。ヴィスマルクにウィリアムが渡ったからな」
 面倒だがな、と肩をすくめるザルク。ウィリアム・ギブソンの亡命により、ヴィスマルクに蒸気騎士やプロメテウスの技術が渡った。鉄血国家の無茶な人海戦術で開発を行い、戦争に投入される可能性は高い。こちらも相応に戦力を高めなければ。
「かくして第二戦も無事乗り越えた自由騎士達。しかし最後の戦いはこれまで以上の騎士が立ちはだかるだろう。嗚呼、最終戦の演目はいかに!」
 傷を完全に癒し、次の戦いに備えるコール。円卓蒸気騎士は強く、油断ならない相手だ。だが自由騎士もそれに負けない強さを持っていると信じている。強者同士のぶつかり合いに、期待で胸が高まってくるのを感じていた。
「どのような高潔な騎士が立ちはだかろうとも、僕らは負けない!」
 宣言するように手を掲げるアダム。円卓蒸気騎士は厳密な意味で騎士ではない。彼らに命はなく、心はない。かつてあった騎士物語を真似た存在だ。創作から生み出された騎士を模した兵器。だが、そこには確かに騎士の誇りがあり、アダムはそれを確かに感じていた。
『最後の戦いはアーサー、ランスロット、ケイ、ベディヴィアの四名だよ。
 ゆくぞー、王剣ーエクスカリーバー♪ 唸れ、必殺アロンダイトー♪』
 歌うマロリー。その言葉と共にスポットライトが上がり、新たな円卓蒸気騎士が地面からせり上がってくる。
 円卓蒸気騎士三本勝負、最終戦。開幕――

†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

二番!
『ダンダンダーン、ダダッダー! すすーめー、僕らの蒸気騎士ー♪
 夜にーかがやく星々よー 静かな眠りを我が民にー♪
 世界をー、まもれー、円卓蒸気騎士ー♪
 蒸気の力は皆のためーにー! 鋼の身体は正義のためーにー♪
 はなてー、剛弓フェイルノートー♪ 輝け、太陽ガラティーン♪
 世界をー、まもれー、円卓蒸気騎士ー♪』
FL送付済