●STAGE II 彼は泣いた。この虚しい戦いに。 彼は哭いた。『彼ら』の思いが理解できる故に。 (だけど……っ!) 彼は振るう。血に濡れた剣を。 (だからって、声を表に出しちまったら、余計惨めだろう……っ?) 彼は振るう。涙に濡れたその剣を。 (オレも何度も夢見た!顔を赤らめ、チョコを差し出して告白してくる女の子! だが現実は……っ) 現実は非常だ。三千世界に何の救いもありはしない。 (ならばせめて! 俯かずに前を見て平然と受け流さなきゃ、平静を装わなきゃ!) そう。 「惨めすぎるだろうが――っ!」 黙っていればイケメン、略して黙イケ――戦場に響いた絶叫は楠神 風斗(BNE001434)のものだった。 「お菓子会社の陰謀に心を折られ続けて早三十四年! 積った鬱憤、今、そう今こそ! 覚悟しろよフィクサード! この八つ当たりは激しくなる、なるってばよ!」 劇場版・富永・喜平(BNE000939)が勢い良く走り出した。 「まったくもう。空気を読まないフィクサードだね」 少し疲れた声の有沢 せいる(BNE000946)の視界の中には既に新手が現れている。 「飴玉やるからお前ら黙っとけ」 素晴らしい速度と身のこなしから梁・天藍(BNE001819)が敵陣に切り込んだ。 踊るような動きから刃を煌かせ、素晴らしい連続攻撃で敵陣を幾重にも切り裂いた。 「突如、いい加減な事を抜かしおって……うるさい奴はばらばらにするだけだ。 安眠妨害の罪は重いぞ。とっととうせろ!」 「んーと、リア充爆発はよく分かんないけど…… バレンタインが無くなったら、チョコ食べられないからやだなぁ。 チョコあげたり、どきどきしたりっ、みたいなの、まだしてないもん。 今年は無理でも来年はー! と思うから、やっぱりバレンタインなくなるの困る!」 アーネスト・エヴァンス・シートン(BNE000935)の切っ先が煌き、ルゥル・ティル(BNE000508)の放った魔力の矢が絶望の波の如きフィクサード共に突き刺さる。 「バレンタイン中止! そんなの困っちゃうじゃん☆ なんたって僕にプレゼントを渡したいガールやボーイは沢山いるし 僕だって大好きなガールやボーイ達に沢山の愛をプレゼントしなくちゃ☆」 デイビッド・エンジェル(BNE000818)の『好みのタイプ(ピンポイント)』が敵の威圧を食い止め、 「俺達、リア充エンドブレイカー!」 「非リア充は消毒だー! ヒャッハー!」 「お前らな……私のな……バレンタインをな……許さーん!」 「リア充は消えるといいんじゃないかな! 確定的に明らか!」 無闇に挑発的な名乗りの方は見なかった事にして――霧島 俊介(BNE000082)、霧島・神那(BNE000009)、老神・綾香(BNE000022)に霧島・斑鳩(BNE001577)がチームを組んで敵の猛威を迎撃する。 ――戦場は御覧の通りである。秩序何てありゃしねぇ。 程無く始まった一大決戦は壮絶なものとなっていた。 その号砲を放ったのがどちらかを正確に知る者は居ない。 限界まで高まった緊張感は些細な何かを切っ掛けにして爆発したのだ。 怒号と悲鳴が上がり、軍勢同士はなし崩しに距離を縮め混乱の戦いを開始した。 多数の勢力と勢力のぶつかり合いは並の戦闘とは一線を画す強烈な乱戦の様相を呈する事となったのである。リベリスタにせよ、フィクサードにせよそう大物の集まりという訳では無いのだが数が集まれば迫力が段違いになるのは当然だ。 「たかが西洋の、それも歪められた催し如きでこのざまとは何事じゃ。その根性、我が叩き直してくれる」 精神注入棒を片手に天宮 輝夜(BNE001183)が不敵に笑う。 「バレンタイン中止? そんなことの為にこんな大軍勢で危険な儀式を行うっていうの?」 設楽 悠里(BNE001610)は渋い顔。 「……気に入らないわね。 そうやって貴方達は己の身勝手な欲望で他者を脅かし、踏みにじる……!」 ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)のマスケットが火を噴いた。 「異性からの施しが欲しいのでしょう? だったら、遠慮なく受け取りなさい!」 「どうせ貰うチョコはいつも義理だよ十円チョコだよ! 手作り貰ったと思ったら余り物の失敗作だよ! だから、それが何だってんだ!」 得物の大剣をぐるりと回し絶叫するように言ったのは桜小路・静(BNE000915)だ。 平素大人しい彼の事。小型犬のように可愛がられる彼の事……決して身の回りに女性が居ない等という事は無い。無いのだが。 「ちくしょー!」 全身の力を込め、体ごとぶん回した静の大剣が間合いを暴風の如く薙ぐ。 『いい人止まり』のバレンタイン、憂さを晴らすにはこの相手は十分過ぎた。 「贅沢な事言ってんじゃねーぞ!!!」 とは言え、フィクサードの方も譲らない。 「義理だ何だとか贅沢言ってんじゃねー! こちとら今月入ってから女と口聞いた総字数が四十八文字なんだよ!」 繰り出される気糸に静の剣が絡め取られた。 動きを封じようとするフィクサードに力を込めてその糸を引き千切らんとする静。 「なまじっかチャンスがあると辛いんだよ! パワーボムだって上げて落とすし!」 「最初からノーチャンスよりはマシだ馬鹿野郎!」 ……子供の喧嘩と言ってやるな。 決して譲れぬ二つの矜持のぶつかり合いであるならば、熱が篭るのも道理であった。 「なんでチョコがもらえなかったくらいでこんなことすんだよ……チョコ食いたいなら自分で買えばいいだろ?」 第一、鯨塚 モヨタ(BNE000872)(ほんとうのこども)の方が余程理性的である。 激戦を展開しているのは当然彼等ばかりでは無かった。 「チョコが、たらふく食べられるイベントを、阻止しようだなんて……フィクサード、許さない!」←キリッ 「そうだ、そうだ! 売れ残ったチョコを美味しく頂けなくなるじゃない!」←たゆん 蘭・羽音(BNE001477)、神楽坂・斬乃(BNE000072)…… 可愛い鳥ちゃんもギャラクシーおっぱいさんも、始まってしまえば一緒くただ。 混迷を増す乱戦の中は悲喜こもごも。細やかな主張の数々はとてもいちいち言い表せない…… 「踏み出そうって時に許せない! 私の戦争の邪魔しないでよ!」 そう叫んだのは斬風 糾華(BNE000390)だった。 全ては己の恋の為。大勝利の為である。瞼の裏の愛しき少女は相変わらずマジパンか何かで出来てそうな緩い微笑を浮かべていたけれど。 アレよりは大分血の気の多い糾華さんは断罪する。 「敵も元味方も関係ない。敵として立ち塞がるものは即断! 昨日の敵も今日の友も明日の恋敵も知ったことじゃないわ! 覚悟しなさいフィクサード!」 はいはい、ご馳走様。 ――バレンタインですか。 恋人たちの祭典ですよね。ああ、なんて甘美な響き。 溶けてしまいそう! ……溶解してッ、メルトダウンすればイイノニネ…… そして、暗い瞳で戦場を舞う戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)は真逆の方向にそのテンションを向けていた。 「ええ!? 分かりますか! ええ、そんな気持ちを皆胸に秘めながら、現実と戦ってるんですよ! 心で血の涙を流しながら、きゃー、おめでとうなんてキャピってるんですよ!? この気持ちが! あなた方に! 分かるんですか!」 平素内に秘めている分、吐き出されたら強烈である。 猛烈な勢いでフィクサードの襟首を掴み、がっくんがっくん締め上げるその舞姫の向こうで、 「その通り、恨み抱きしは何もチョコを貰えぬ男子だけではありませんぞ……」 ぶつぶつと呟いているのは土御門 “キキリ” メイコ(BNE001131)その人である。 「……ここ数年、気になるあの人に手作りチョコ(きゅるん)なんて乙女ちっくな真似をした覚えなどあるものですかあああああああ!!!」 情緒不安定にいきなり叫び目の幅涙で周囲に式符を投げまくる。 「ハハハハハ! リア充など爆発なされよ、ハハハハハ!」 目が完全にパラダイスである。 一発までなら誤射です、とのたまう彼女の鴉がリベリスタを狙撃したのは当然不幸な事故である。 「ホント駄目な屑ばっかりぃ。 で・も、自分の愛の深さは底なしよぉ。 自分の本気のあっつ~い愛、あなたに届けてあげるわぁ。 欲しいのなら、さあ、とっとと一列に並びなさぁ~いっ!」 一方で豊満な胸の谷間を寄せて上げて見せ付けたステイシー・スペイシー(BNE001776)は楽しんでいるようである。妙齢の女子ならば少なからず身の危険を感じるやかましい鼻息(ふんはふんは)にまるで動じていないのは流石といった所であろうか。 「――じゃあ、熱い一発をプレゼントっ!」 馬鹿正直に胸に吸い寄せられたフィクサードの一人を彼女の重い一撃がぶっ飛ばす。まるでボーリングのピンのように。 ――ああっ、同志!? 何て酷い事を! だが、あの胸だ。 うむ。仕方ないな。オパオパだ。 「薄汚いフィクサードどもが、中止だと? 聖ウァレンティヌスの祭日を? 身の程を知らん愚か者どもが! 一人残らず父なる神の元に送ってやる! 反省しろ! 神を讃えろ! ハレルヤと言え! ハレルヤ! ハレルヤ!」 ……ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)さん、あの、ちょっと、えーと…… 「ハアアアアレエエエエルウウウヤアアアア――ッ!!!」 ……酷い有様である。 「何でわざわざバレンタインなの!? リア充守るためにお前ら狩るとか俺結構いやだよ!?」 惨状と満ちる澱んだ空気に露骨に士気の低いのはケイマ F レステリオール(BNE001605)である。 リア充は爆発しても別に良い。カップルなんて守りたい筈も無い。 包み隠さぬ本音を言うならばこんな所でこんな風に戦うなど、御免蒙るといった気分だ。 とは言え、彼はリベリスタ…… 「……しょうがない。騒ぐなら殴ってやろうホトトギス……」 そしてやる気の全然無いケイマの視線の先には、 「ふむ。他人の恋路は許せないか……全く、見下げ果てた阿呆共だ。 宜しい! ならばかかってきたまえ! その根性、骨のォ髄からァ……! たたき直してやるッ! よぉぉぉオオオォォ! ハッ! ハハハハハハハ! ハァッハァー!」 仕事とか仕事がどうとか関係なくどう見てもトリガーハッピーに身を浸しているヴァルテッラ・ドニ・ヴォルテール(BNE001139)の姿がある。 「……らぶだのいちゃだの中止だのさせねえだのうるせええええええ!!! ええいバレンタインなんか金輪際中止だ! バレンタインは終了しました! 帰れ! リベリスタ? フィクサード? 知るか皆かえれえええ!!!」 辺り構わず当たるを幸い暴れる藤堂 圭太郎(BNE001707)の姿もあるし、 (お嬢様、誰にチョコレートを渡すのか聞いても教えてくれませんわ……! まさかチョコは他のイイ方に!? くっ、バレンタインなぞ無くなれば良いですわ! でもそれはお嬢様が悲しみますわ……ああ、私はどうしたら!) 気苦労の多いミルフィ・リア・ラヴィット(BNE000132)が八つ当たりをしている姿もある。 「やるせない怒りをぶつけているような……変なミルフィ」 小首を傾げるアリス・ショコラ・ヴィクトリカ(BNE000128)とミルフィの顛末は別所を御覧頂くとして…… 猛烈なぶつかり合いは刻一刻とその激しさを増していた。 「近付きたくない! 非リアが感染するわ!」 微妙にあちこちを逆撫でするような事を言いながらナハト・オルクス(BNE000031)が動き回っている。 曰く「痛いのはスパイス程度でいい」らしい彼は鮮烈なる神気閃光を叩きつけ、十分な距離を取りながらシューターに徹している。 「りあじゅうばくはつ? 意味わかんなーい」 ナハトの閃光に視界を奪われた敵を的確に沈めているのは偶然に轡を並べる形となった桜坂・メロウ(BNE001645)だった。 猛烈な敵の勢いを食い止めるように次々と攻撃は放たれていたが…… 「……たしかになんか近付きたくないていどにきもちわるいですね、こいつら」 叩いても叩いても現れる新手の数に彼女の表情も幾らか引き攣ったモノとなっている。 能力と戦力ではリベリスタ達が勝る部分が大きいが、怨念じみた戦意の面では及ばない。幾ら倒してもゾンビの如く復活し前身するその様は今夜の彼等が異常なドラマを抱いている嫌な現実を知らしめる。 「同士諸君よ! その気概、俺の魂にも届いた! だが協力はできん! イヴたんにお願いされたんだもの! 俺、ロリコンだものおおおおおおお!?」 「雷音とのバレンタインを中止するわけにはいかないでござる! 雷音、雷おおおおおおッ!?」 ――生かして返すな! ――泣いたり笑ったり出来なくしてやる! ――三枚目だって信じてたのに! ――おかーちゃーん! せめてチョコくれよー! ――妹萌えとか幻想だろ、常識的に考えて! ばきどすぼかべき。 「……あ、扱いがひでぇ……」 「ら、らいよん……」 裏切りとリア充の代償か念入りにボロ雑巾にされた結城 竜一(BNE000210)、鬼蔭 虎鐵(BNE000034)が物語る。局地的に稀に突然強烈な連携と戦力を発揮する彼等は決して侮れる敵では無かった。 「……バレンタインを中止したい、か……おぬしらの心情、全く判らぬではない。 ワシもこの南蛮渡来の行事には何の良い思い出も無かった。 喪われてしまえばいいと思う事もあった――かつては! じゃが今はな! この姿になってからは割とチョコレート貰えまくりなんじゃ! 判るか!? ウハウハなんじゃよ!よって潰させは! 潰させはせぬぞぉー!」 ~残酷シーンにつき、お花の映像が流れました~ バレンタインの代わりに御厨・九兵衛(BNE001153)(じいさん)が踏み潰されたのは良いとして。 「世界中の非リアに栄光あれ!」 前線指揮官となったヘルマン・バルシュミーデ(BNE000166)が叫んだ。声も枯れよと叫んでいる。 当然の顔をしてフィクサードを背にして戦う彼は頭痛を禁じ得ないアークの同僚達に暗い声で呼びかけた。 「あいつら今夜チョコ風呂で流しあいっことかするんですよ! やだーえっちとか何とか言っちゃって! 何がえっちだ! 何が! 嫌なのはこっちの方ですよ!」 正論過ぎて耳が痛い。 似たような事で心当たりでもあるのか微妙な顔をする一部リア充共。 そして露骨に士気の下がった顔をした一部リベリスタ達。ヘルマンが背後に背負う『同志』達が「大義は我に在り!」とか何とか叫んでいる。 「この絶望の海(主に千葉県沖)を…… 諸君らの血とカカオマスで染め上げてやるわぁー!」 圧倒的声援を受けたメリュジーヌ・シズウェル(BNE001185)の一喝にずざざっと後退するリベリスタ達。 「……昨日の友は今日の敵……か。しかし、これはまずいな」 自身も戦闘を繰り広げながら逢見 歯車(BNE001061)も戦場の旗色の変化を機敏に察していた。 大規模戦闘は個人の戦闘能力が全てを決める訳では無い。 「む……しぶといね……こいつ等」 バールのようなものでぐわんと殴りつけるも、又立ち上がる。 不気味な敵を目の前にキャサリン・桜庭(BNE001537)も思わずそんな声を漏らしていた。 一人一人は紙くずのような連中だ。先述の通り倒れる人数ではフィクサードの方が遥かに多い。だがゾンビの如く次々と蘇る彼等に対してリベリスタ達の防衛ラインは徐々に押し下げられ始めていた。 げに恐ろしきは妄執である。一念は時に実力差さえ覆すのか―― 「……五助……」 ちらりと歯車は空を見上げた。 敵の勢いを止めん為の切り札がそこにあった。 「貰えない悲しみは、与える事で取り去るのです」 こくりと頷く岩佐 五助(BNE001062)は飛行を駆使して爆撃のように作りすぎたチョコレートを撒いている。 「つまり、何だ。バレンタインを中止すれば、彼らは儀式を行うことがない、のではないのか?」 「ん。友チョコ用の一口チョコパイたくさん作ったし、ちょっとなら分けたげてもいいよ」 「ええ、それは恐らく正解でしょう。誰しもこう考えると思います。 チョコレートをあげれば怨嗟も薄れるのでは、と。しかし、いかんせん数が多すぎる」 「配っちまえば?」と皮肉気に提案した柘植 浅葱(BNE001684)に、五十嵐 真独楽(BNE000967)、したり顔の犬束・うさぎ(BNE000189)が頷いた。 しかしそこはそれ。無意味に話を訳の分からない方に転がしたくなる習性を持つトリックスターのうさぎさんである。一筋縄では応えない。 「しかし私は性別不詳ですからね。 贈呈自体は現役女子中学生である白石明奈さんにお任せです。 さあ! お願いします白石さん。お願いします! ミサイルさん! 最終承認、パトリオット白石です! 彼等に愛を振りまいてあげて下さい!」 「合点承知、おお、悲しきフィクサードよ。 お前らそんなに愛が欲しいか! 愛が欲しいならくれてやる! ワタシ特製のチョコで愛に飢えしフィクサードを改心させてみせよう! 大丈夫、ワタシの愛はプライスレス、そして無尽蔵(アンリミテッド)。 尽きぬ愛を胸に、食らえ究極奥義・現役女子学生チョコアタック!」 うさぎから溶かしたチョコの樽を受け取った白石 明奈(BNE000717)がぶんぶんと敵陣に投げ込んでいく。 煽られるままに樽を投げる乙女の残念っぷりがたまらない。 「つーか、こいつらってチョコレート貰えりゃ大人しくなるんじゃねーの。 おら、麦チョコを一人一粒ずつくれてやる。泣いて喜べ。そしてとっとと帰れ」 カミラ・ローレ・プライセル(BNE001452)は麦チョコをぴんぴんと弾いてその辺のフィクサードを撃っている。 五助のそれが空爆ならば、明奈さんはバンカーバスター。カミラは機銃掃射といった所か。 「さあ、配れ!」 「おいしいドーナツですよ、できたてのほやほやなの。めしあがれーっ」 「手作りです……どうぞ♪」 ランディ・益母(BNE001403)の命を受け、ニニギア・ドオレ(BNE001291)、シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)が菓子を配る。 無邪気に喜ぶフィクサードは気の毒で、手作りしたのはむくつけきランディというバレンタインテロである。 ランディ×フィクサード。誰得。嫌過ぎる。 「えーい、愛の義理チョコ!」 とてつもなく堅いチョコレートをばらばらと投げつけるのは御子神 のえる(BNE000303)。 「フィクサードのやつらにチョコを配りに行くの。仲間割れを狙ってみるの」 「ああ、情けない! 義理チョコで宜しければ差し上げますわ!」 「チョコレートをあげてみたら寝返……改心してくれませんかね?」 「HAHAHA、このロリコンどもめ! 人生の敗者どもにチョコレートでコーティングしたブート・ジョロキアをくれてやるとするかのぅ」 「まったく好き放題暴れて……!こっちだってあいていなくて暴れたい気分なんだから! ん……? そういやここに、沢山の男の子いるじゃん! 可愛い子は……えーと、居た!」 「まったく。アタシがチョコを配ってあげるから成仏しなさい」 「まぁ! お姉様、虫の如き駄目男にまで何てお優しい! 流石お姉様ですわ、感謝するがいいのです!」 とこ・とあ会議で結論を出した八咫羽 とこ(BNE000306)、半ば呆れたような桐月院・七海(BNE001250)、ばら撒きにかかる美角・あすか(BNE000813)、老成ロリの宵咲 瑠琵(BNE000129)、ポジティブに気を取り直した紅桐 杏子(BNE000840)、そして憎まれ口の割に面倒見の良い高原 恵梨香(BNE000234)(と追従する緋室・雛凰(BNE000922))、 「……これ、受け取ってくれますか?」 「あーっ!チョコを受け取ってるフィクサードがいるっ♪」 桜月 零音(BNE000244)に花咲 冬芽(BNE000265)の見事な離間コンビプレイ、 「あ、あの、これ、受け取って下さい……」 『お父さん以外の男の人にチョコ渡すの初めて』である言乃葉・遠子(BNE001069)等の攻勢は抜群だった。 「あの……これで、皆に迷惑かけるの止めてくれませんか?」 「えー、ユーリンの心の篭もった手作りチョコレート、いかがですかー♪」 更に中性的な佳倉守 祥司(BNE001263)、ユーレティッド・ユール・レイビット(BNE000749)、 「チョコいっぱいあるですよ! ぐるぐさんのラブ受け取ってくださーい」 歪 ぐるぐ(BNE000001)の追加空爆は荒ぶるフィクサード達に一定の効果を上げていたが。 煮詰められた執念と増していく勢いはそれだけで止め切れる程甘いものでは無い。 「えいやえいやー! ちょ……多すぎっ……待って! 今から作るから待ってー!? って、ええええええ!?」 暴徒の渦から伸びる無数の手。飛んでくる攻撃。「獲物が落ちたぞ」と叫ぶ誰か。 やがて敵に捉われ引っ掴まれたぐるぐが混沌の闇の中に飲み込まれていく。 「ぁー!」 ――戦果じゃ、戦果。 ――おなごじゃ、兄者。 ――よ、う、じょ! よ、う、じょ! 「ぐるぐさんは幼女でなく、八十一歳児でですね――ッ!?」 か細い悲鳴も最早聞こえぬ。っていうか聞かぬ。 獲物を食らい尽くさんとするかのような恐ろしき光景に誰かがごくりと息を呑んだ。 じわじわと距離を詰めてくるフィクサードの群れ。 じりじりと後退を余儀なくされるリベリスタ達。 「バレンタインの恨みとは斯くも激しいものでしたか…… 私は毎年お姉ちゃんから貰ってたので負のイメージは無いのですが……」 ドン引きした顔で久地院 鈴音(BNE000197)が呟いた。 猛烈な勢いを得たフィクサードの猛攻に防衛ラインが次々と食い破られていく。 ピンチだ、リベリスタ! どうなる、リベリスタ! シリアス、キリッ! 「あー、もー。どこ行ってもテレビつけてもバレンタイン特集ばっかでもううんざり。 何製菓会社の策略にまんまと引っ掛かってるの? 馬鹿なの? 死ぬの?」 「バレンタインに血の雨を! 敵は怯んだ! さあ、今だ! 皆、俺に続いて血路を開け!」 それにしても……アンジュ・ドラクロワ(BNE001679)さん、茶野 幸太郎(BNE001945)さん。 ……君等、馴染みすぎちゃいないかい? ![]() ![]() ![]() ![]() |