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『三高平のバレンタイン』~アーク本部~

●アーク本部
 ――味はあくまで付属品なんていうのは受け取り手の言い分。
 造り手が渡したいのはきっとチョコなんかじゃないですしね。
 どんなに下手っぴでも愛の一言であきらめるのはラブが足りてないと思うのっ。
 味や飾りや渡し方。それらすべてがチョコ作りなんですから――

 歪 ぐるぐ(ID:BNE000001)の言い分はまさに正鵠を射抜く真理である。
 二月十四日。そのチョコレート、誰が為か。気持ちは尊く、乙女を戦いに駆り立てる想いは代え難い。
 肝心の彼女自身はそれを『言葉遊び』と称したが、何処の世界に手抜きの真摯が有り得ようか。少なくとも誰かに『贈る』為のモノならば、その出来は兎も角としてプロセスに全身全霊を傾け『努力すべき』なのは全く正論そのものである。
 何事も一生懸命は美しい。例え拙い技術だったとしても、頑張った女の子の気持ちはチョコレートの甘さ以上に意味があるものなのだから。
 とは、言え。
 物事には限度というモノがある。
 味が全てでは無いにしろ、無いにしろ。
「……うわ、普通以上においしい。ケンカ売ってんですか」
「食べ物を作る職業なゆえ美味しいって言って貰えるとなによりの幸福でござるな」
 敗北感を覚えたぐるぐさん、目の前に立つむくつけき大男をやや恨めしそうに見上げるのである。
 彼の名は鬼蔭 虎鐵(ID:BNE000034)。元極道の強面で、一言で言うとロリコンだ。
「友チョコもいいけど、この機会に特別な人に思いっきり気持ちをぶつけてみるのも素敵よね」
 見かけたそんなやり取りにウーニャ・タランテラ(ID:BNE000010)はくすりと小さな笑みを漏らした。
 二月十四日――バレンタイン・デイ。アーク本部にも浮ついた空気が流れているのは確かだった。
 本来ならば日本のリベリスタを統制せんとする本部なのだからもう少し厳しくても罰は当たらないといった所であるが、
「あーん、さおりん! 約束のイチゴ園に行くのです!」
「高くつくな、お前のチョコは」
 今日も今日とて悠木 そあら(ID:BNE000020)に追い回される肝心要の司令代行を見ればその程度は知れてしまう。良く言えば清濁併せ呑み硬軟自在、スイッチのオンオフを使い分けるアーク。悪く言えば未だお気楽で緊張感の無いアークである。
 ばたばたと騒がしい二人のやり取りを見れば一目瞭然にお釣りが来るという所だろう。
「どうも街が浮かれた様子だと思ったが、イベントが開催さていたのか。何かとイベントの多い国だ」
 ウラジミール・ヴォロシロフ(ID:BNE000680)の台詞には呆れが半分感心が半分混ざっていた。
 外は寒いが、随分と騒がしいのは毎度の話である。
 彼は祖国の今時分に少しの想いを馳せた。懐かしいモスクワ、燃える暖炉の火。今時分のロシアは白と灰色の世界に凍り付いている。
 今の彼が直接実感出来るのは胸ポケットのウォッカ位のものである。
「バレンタイン……? 何をしろと? 何をしろっていうの?」
 冷たく室内光を照り返すリノリウムの床をガンガンと踏みながら暗い目をした佐野倉 円(ID:BNE001347)が見送った。
 やれ恋愛だ彼氏だ彼女だ友チョコだ。はは、わろす。おめでてぇな! 元より彼女のみならず、世間一般でも心ささくれ立つのを支援するに余念の無いイベントである。フィクサードの蜂起を聞いて激しくシンパシーを覚える彼女の場合言うに及ばぬ。
「ちょっと買いすぎてしまいましたか、チョコレート」
 専ら友人にあげる意味合いが強いのだが、門真 螢衣(ID:BNE001036)はかなりの大荷物を持っている。
「……むー……」
(ふふ。イヴさんは誰を待っているのかしらね――)
 何やらしきりに話しかける虎鐵に小さな唸り声を上げたイヴを眺めて棺ノ宮 緋色(ID:BNE001100)は口元だけで微笑んだ。
 彼女自身は実を言えば……と言う程意外でも何でもなく製菓会社の陰謀に余り興味が無い。
 とは言え、少女の少女らしい瑞々しさを応援するのはやぶさかでは無いのか何処か楽しげに落ち着かぬイヴを眺めている。
「ども、二月のサンタクロースです!」
「う、わぁっ! テロ!? 殺人鬼!? ホッケーのマスク!? ……ってメルシー棒?」
 デ・ジャ・ヴのような番町・J・ゑる夢(ID:BNE001923)、狼狽するのは免疫の無い螢衣。
「やあイヴ、待たせたかい?」
 フッと笑い、当然のようにスルーされる呉実 陣牙(ID:BNE000393)に続いて、
「ロリっ子がいると聞いて来ますた。……じゃなくて着てみた」
 黙ってさえ居たならばモテそうな委員長、結城 竜一(ID:BNE000210)がやって来た。
 当然のように瘴気の埠頭に入り浸る竜一曰く「俺は隔離施設の外では自重出来るクールな男」。すかさず正座して『チョコ募集チュ』の旗を立てる彼はその行動自体が何とも言わんや駄目駄目しい事にどうやら気付いていないらしい。委員長だし。←酷い
 しかしそれでも……捨てる神あれば拾う神も何とやらである。
 全く兎角理不尽な世の中ではあるが偶に救いの手が伸びる事もある。伸びない事もあるが。
「竜一さんがひとつももらえなくて可哀想可哀想なのです。いわゆるともちょこなのですよー」
「Go志郎からのみじゃ……や、友には感謝するが!」
 三村・豪志郎・茜(ID:BNE001571)の差し出したのは申し訳程度の義理である。
「竜一、旗、倒れてるにゃ……チョコ欲しいのかにゃん♪ ボクのは超甘々だけどいいのかにゃぁ♪」
 だが、続いた翡翠 向日葵(ID:BNE001396)の大きなチョコレート、
「……フィクサードになられても困るからね……」
 憎まれ口の割には可愛げ含有量の多い高原 恵梨香(ID:BNE000234)、
「む、これは竜一くんにチョコあげるながれ?」
 更には時勢に乗った紅桐 杏子(ID:BNE000840)の置いた板チョコに我等が委員長目を疑う。
 これは現実なのかと何気にちょっと頬を抓る。
「やべえええ! ついに俺にモテ期が到来!?」
 ハッキリと感じる。乗り遅れる訳にはいかないビッグ・ウェーブに。
 テンションの俄然上がった竜一はもう迷う事は無かった。
「向日葵ちゃんに恵梨香ちゃんに杏子ちゃんマジ天使!
 ちょっと、バレンタインを守るためにフィクサードに特攻しかけてくる!」
 先程聞いたやる気のでない任務も何するものぞ。
 今の竜一にとってバレンタインを中止にしよう等という反社会勢力は駆逐対象でしか有り得まい。
「戦場に赴くですかー。かの地は奪い奪われ阿鼻叫喚だと聞きます。若人よ、お気をつけなされー」
 武運を祈り(?)手を振ったぐるぐに竜一は無闇に爽やかに振り返り、親指を立ててサムズアップ。
「どうか彼がパンツ一枚でも残して帰ってこれますように……」
 杏子の言葉はそこはかとなく不吉な響きを持っていた。
 確かにクリスマスの時分にかの室長より委員長の座を譲り受け、死地で戦い抜いた竜一がこのざまなのだから歴史とは皮肉なものである。
 まぁ、彼の活躍がどうだったか語るのは機会を譲る事として、ともあれ男とは即物的な動物である証左と言えよう。背後から撃たれても僕知らない。メーディーック!
「ら、雷音! 会いたかったでござるよ!」
「う、うるさい! 虎鐵! お前は後だ! そのへんのカーテンでもだきしめていろ!」
 何時もと大して変わらないと言えばこの周辺である。
「えっと、いままで、友達らしい友達いなくて、ぐしゅ……
 こういう日くる……えぐ。おもわ、なくて。うわーん 嬉しくて。えっとありがっ、えぐっ、とうっ」
「あぅあぅ……てんちょ、そんなに感動されちゃうと照れるのです」
 沙織を間一髪逃がしたらしいそあらが感激する雷音に頬を染めていた。
 雷音の琴線を弾いたのは彼女が貼った『らいおんさんのシール』であった。
 憧れ続けて幾星層。女子らしい、実に女子らしい友達の輪に感激しきりのらいよんさんは可憐な美貌をぐしゃぐしゃの泣き顔に染めていた。
「感動的なシーンなのだよ……」
 同じくそあらにチョコレートを貰った遠野 うさ子(ID:BNE000863)はもぐもぐとその端っこを齧る。
 名前が表す通りうさぎのような様を見せる彼女、そして疎外感と娘の幸せを喜ぶ親の心を綯い交ぜで複雑な顔をした虎鐵を加えた 『陰ト陽』の面々はライオンに犬、うさぎで虎でどうにも動物園のようである。まぁ、捻りは無いのだが。
 で、確率変動入ります。EX 画面効果(キラキラフィルター)スイッチオン。

「――さて、そこで柱に抱きついているお前。
いい加減はなれろ。こっちにこい。いますぐこい」
「拙者で御座るか!」
「なにしょぼくれている。ほら、バレンタインにはチョコを渡すものなのだろう?」
「……雷音!」
「何を驚いている。べ、べつに義理じゃないんだからねっ!
 ……………こういって渡すといいと聞いた。さあ、受け取れ」


 言葉を良く良く噛み締めるらいよんちゃん。

(あれ、でも……義理じゃないなら……)

 頭がずどんと煙を噴く。受け売りの言葉は実は必要以上の火力(ポテンシャル)を秘めている。

「ら、雷音! せせせせ拙者も愛してるでござるよ!」
「ばかもん! 溶ける! チョコがとける!」


 きゃいきゃい煩い。

「雷音! 雷音! あーんでござる! あーん!」
「は、離れろ! 馬鹿者!
 するから……あーんってするから……

 ……( ´_ゝ`)
 言葉は後半に行くほどに尻すぼみ。
 無闇やたらに情熱的なロリコンと、満更でもないその娘。
 少なくとも当人は胸焼けがする程に幸せであろう光景に美角・あすか(ID:BNE000813)がしみじみ言った。
「でも、こうやって皆で騒げるのもすんごくリアル充実してますよね~」
 言葉を受けて光景にぼーっと涎を垂らしていたそあらさん、ぶんぶんと首を振って決意の拳を握り直す。
「あたしもさおりんとデートするです。絶対するです」
 彼女の戦果がどうなったかを、ここで語る心算は無いけれど――
「時村氏がいない? 事件の匂い!?」
「マスゴミはお呼びじゃないです」
「えぇ!?」
 ――ソリッジ・ヴォーリンゲン(ID:BNE000858)に容赦が無いぞ、そあらさん。