●日本ってヤツは 一般に現代日本とは宗教性の薄い地域であると言われている。 何処そこと比べてどうという事は言わないが、極東のこの島国は時に諸外国からすれば信じ難い程の『緩さ』を如何なく発揮するのである。 過ぎ去ったクリスマスが厳粛なる宗教儀式にならなかったのと同じように、元はそれ相応には意味があるこの二月十四日も――この国からすれば馴染みの無いお話だ。専ら何処かの製菓会社の仕掛けた史上稀に見る『販促計画の大成功例』に塗り潰されている感がある。 つまる所、何だ。バレンタイン・デイである。 特に学生の頃等、甘酸っぱい思い出の一つもある人も多いだろう。 年嵩を重ねる度に些かしがらみも増え、純粋さは薄れるがそこはそれ。 幾つになっても女子が女子であり、男子が男子である以上は――世界の要求する役割はそう変わらない。 夢物語の童話でお姫様を助けるのが王子様であると決まっているのと同じように。 この日ばかりはお手軽に――割と誰でもヒロインやヒーローになれてしまう魔力があるのである。 「日本では記念にチョコレート贈ると聞いたアル」 李 美楼の言葉に力強く頷いたのは梅子・エインズワースだった。 「さぁ、お前等! 乙女の戦場ですよ! 開幕ですよ!!!」 「期待に応えるのは良い事です。姉さん(ハズレ)はともかく」 美楼や梅子の言う通り、辛辣な妹、桃子・エインズワースの言う通り。 少なくともこの日本では、二月十四日は『大切な誰かにチョコレートを贈る日』なのである。 付属三高平高校の家庭科室をこの日大目的の為に占拠したのは津々浦々より集まった精鋭達。アークの擁する女性陣であった。 「チョコレート作らないとですねっ、日頃お世話になっているアークの皆さんに配りたいです」 そう言うエフィカ・新藤の目は輝いていた。 「……ん、作る……」 「チョコレート! 食べるのだ!」 イヴの様子は表情の良く変わるエフィカと対照的ではあったが、目の前に置かれた銀色のボウルをつぶさに物色するその姿からは幾らかの気合が感じられた。一方でテトラ・テトラの有様は御覧の通りであるが、彼女の場合それは通常営業であるから大した問題では無い。 「お腹すいてきたのだ……!」 「多めに作れば大丈夫ですよ。いい機会ですから練習してみましょうね」 冷静に淡々とテトラを宥めているのは白銀 玲香その人である。 クールビューティーな見た目と裏腹に料理を得手にする彼女はこの場の良心の一人である。 それは想像してみれば容易く分かる事。もし、玲香とエフィカが居なかったら…… 「あたしのチョコは一撃必殺!」 「ぐるるるる……」 「中国四千年にお任せアルよ! ちょあー!」 「……うさぎのチョコ……」 梅子やテトラや美楼やイヴ、 「よっしゃー! ばれんたいんごときのじぎ、このあるなさんにいっさいがっさいおまかせなんだぜー!」 ……更にはこの丸井 あるなの『挑戦した』前衛的なチョコレートを手渡されたなら。 美少女から渡された所で不安は尽きまい。結果はどうあれ食には多少の勇気が必要なのは事実である。 「頑張りましょう、エフィカさん」 「はいっ!」 気合を入れる良心二人。 「……どうして私をスルーするんですか?」 貴方は、別の意味で怖いからです。モモコサン。 ――閑話休題。 厨房に集まった女子達はああだこうだと言いながら、事の他楽しそうな華やいだ空気を撒いていた。 発端は何時もの梅子の大騒ぎではあるが、今回に限っては比較的その他の面々からのシンパシーもあった様子である。 命短し恋せよ、乙女。 面々に特別な思い入れがあるかどうかは神ならぬ身では知れないが。それはそれとして―― 「ふふふー。皆可愛いですね。まるで女の子みたいですよ」 ――何故か、居る。 余計な事を言った小鳥遊 あるとが集中砲火を浴びたのは。 窓の外から「バレンタイン中止!」とか怨嗟みたいなのが聞こえるのは実に些細な余談であった。 ![]() ●参加者向け情報● ![]() 書き込む際、『スレッドをチャット的に利用する事』はしても構いません。但し各スレッドの注意に従って下さい。 合計六箇所からなるイベント用特設会場(スレッド)の書き込みによって何かが起きるかも知れません。 何が起きるかは今の所秘密です。 又、一キャラクターにつき一回特設フォームに文章を送信する事が出来ます。 キャラクターの(或いはプレイヤーのを混ぜ込んでも……!)バレンタインに纏わる思い出等を是非是非投稿して下さい! 採用されたものは200GPと引き換えに特設ページで公開します。 特に面白いもの等があった場合は……?
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