●バレンタイン・ウォーズ 貴方は青天の霹靂という言葉を知っているだろう。 それは陸游『九月四日鶏未鳴起作』より。晴れ渡った空に突然起こる雷を顕し、予期せず急に起きる変化や事件を指す意味がある。 二月十四日――日本全国津々浦々の例に漏れず、歳若い男女が集まれば何処か浮かれた雰囲気となる三高平に強烈な激震が走ったのはまさにそんな言葉が良く似合う寝耳に水の出来事だった。 ――フィクサードが、現れたの。それも沢山―― アークのフォーチュナ・真白 イヴが震える唇で紡いだ言葉はアークにとって特別な意味を持っていた。 その名は紛う事無き敵のモノである。リベリスタにとって最大の宿敵とも言える存在、同じく革醒し――世界に受け容れられながらもリベリスタとは全く別の道を進む『同胞』は近しいが故に相容れぬ存在となって彼等の前に立ち塞がってきた。 それはアークのリベリスタにとっても身の引き締まる相手である事には変わらない。 「……それで、状況はどうなってる?」 「カレイド・システムが今夜最高潮に高まる敵の儀式をキャッチした。これを阻止するのが今回の目的」 リベリスタ達に広く周知が行なわれた以上、その異変が大きな事件の始まりである事は明白だった。 始まりとも言える実戦の訪れに些かの武者震いを禁じ得ないリベリスタの表情は緊張感と使命感にやや強張って見えた。 「……敵は……単純な組織じゃない。 日本全国から集まって……戦力を構成したフィクサードの群れ。 彼等は意思統一された組織ではないけれど、その目的はハッキリしてる。同じモノを見てる」 「……生半可な相手じゃなさそうだな……」 「フィクサード達は一つの目的に一つの手段を持ってる。 彼等の狙いは強力なエリューションを生み出す事。 数百人からなるフィクサードの力を結集して、危険な儀式を行なおうとしているの」 より深刻さを増すイヴの言葉にリベリスタは小さく頷いた。 望んだ戦いが来ている。すぐそこに。これに燃えない訳があろうか――? 「連中、何が狙い何だ……」 思わず呟いたリベリスタにイヴは真顔のまま静かに告げた。 「――バレンタイン中止にしたいみたい」 ……。 「……は?」 思わず間抜けな顔をして聞き返すリベリスタにイヴは淡々とした調子もそのままに説明を続ける。 「だから、バレンタイン中止! リア充爆発! とか言ってるフィクサードの群れ。 二月十四日をメチャクチャにする為に自らの怨念を集積させた超強力エリューションを生み出そうと画策してる。 これは大変。日本、ぴんち」 「……」 「……日本、ぴんち」 繰り返すイヴをリベリスタは手で制した。 「……てぇ事は何だ。その虚しいデモに参加するフィクサードを俺達で蹴散らせと?」 「虚しいデモじゃない。危険な儀式」 「……危険な儀式を蹴散らせと」 「うん。場所は千葉辺りの水っぽいテーマパークの周辺。 何かあの辺りは無性に敵意を掻き立てるスポットみたい。 戦場がテーマパークまで進んでしまうと悪目立ちしそうな予感」 そりゃあな。 実に全くナチュラルに自身の脱力を解しないイヴにリベリスタは軽い眩暈を覚えた。 確かに待ち望んだ事件である。最大のライバル――それも数百に及ぶ軍勢との死闘である。 だが、何つーか。なぁ? 「……頑張れ」 言葉と共に小さな白い手が気勢を殺がれたリベリスタの頭の上に載る。 少し背伸びをしたイヴは相変わらず真剣な表情のまま、彼の頭を撫でている。 「――ったく、しゃあねぇ」 幼女の期待は是非もなし。 どうあれ、これがアークにとって初めての『実戦』である事に違いは無いのだから。 細けぇ事はいいんだぜ? ![]() |
■シナリオの詳細■ | ||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||
■難易度:EASY | ■シナリオタイプ:無料イベント | |
■参加人数制限:??? | ■シナリオ出発日:2月14日23時59分 | |
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