下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






『三高平のクリスマス』~リア充撲滅委員会~

●リア充撲滅委員会
 貴方は『蟲毒』を知っているだろうか?
 古来中国にて発祥した呪法とその触媒として知られる神秘の名称である。
 その行使は中々に凄絶だ。
 まずは一つの壷に毒を持った生物をこれでもかと押し込んで堅く密封し土に埋める。
 結果、蟲毒の壷の中で彼等は空腹に耐えかね一緒にぶち込まれている連中と仁義無き生存競争を始めるのである。
 生き残った最後の一匹は彼等全ての怨念を喰らい、束ねて唯一にして完全なる『蟲毒』となる。
『蟲毒』はその名の通りの毒であり、対象を呪う式のような存在でもある。
 その術のおぞましさたるや古式ゆかしき呪術の名に恥じず、一言伝え聞けば想像するに難く無い。
 何れにせよ、この話を聞けば『蟲毒』なる存在が如何に罪深く、恐るべき存在なのかは分かって頂けるだろうが――
「リア充は爆発どころか、木端微塵になれば良い。そう思う者は集まりなさい――」
 ――まぁ、それはそれとして。
「――と言う解釈で良かったかしら?」
 源兵島 こじり(ID:BNE000630)は居並ぶ剛の者を眺めて何気なしに呟いた。
 今日は十二月二十四日、聖夜。元々は宗教的儀式の一環である厳かな祝いの日である。
 されど宗教色の薄い日本では専ら『恋人達の夜』として悪め……名高い浮かれ倒しの晩(イヴ)である。
 外は静岡には珍しく雪の積もる寒さである。何故わざわざクソ寒い埠頭に大勢が集まっているのか、ある意味一番盛り上がっているのかは世の業であった。
「何じゃ此処は。斯様な人の禍々しい思念を感じ取れる場所がこの祭りの場にあったとはのう……」
 嗚呼、泰然自若(?)たる龍泉寺 式鬼(ID:BNE001364)たんさえ腰を引くこの熱狂よ。
「リア充爆発しろ! めっさ爆発しろ!」
「リア充爆発しろなんて生温いの。
 イルミネーションを見てイチャコラする人達の顔面にパイ皿投げつけてやりたい気分なの」
「り~あ~じゅ~う~めぇ~っ!
 恋人と甘いクリスマスを過ごす奴らはもちろん……
 友達や家族とまったりワイワイしてる連中も恨めしいのです……にぎぎ……」
 御厨・夏栖斗(ID:BNE000004)、佐野倉 円(ID:BNE001347)、ジェイク・秀真・アシュフォード(ID:BNE001195)……
「それにしても、なんでおれは覇界闘士なのにハイアンドロウをダウンロードしちゃってるんだろう。
 ……これじゃあ、まるでなにかを爆破したがってるみたいだ」
「透明化して不意打ちかけようか悩む所なのだよ。
 爆弾生成できるナイトクリーフじゃないのが悔やまれる……」
 無自覚(?)なる虚義・千里(ID:BNE001134)も痛恨の呟きを漏らす遠野 うさ子(ID:BNE000863)も、
「リア充撲滅委員会ね、超いい響き」
「ああ、とうとうこの日が来ちまったわけか……まあ、アレだな。誰か爆薬持ってないか」
 半ばヤケクソに見える霧島 俊介(ID:BNE000082)、竜尾 駆(ID:BNE000730)も、
「ククク、ついにこの日がきてしまったっすか。
 まぁ三次元には欠片も興味ないっすけど、まわりがやたら幸せそーなのが何よりイラっときますっすね」
「リア充は敵だお! でもリア充の子供が伝説を作るハイパーエロゲクリエイターになるかもしれないお!
 少子化は良質なエロゲの減少にも繋がるお! 俺はどうしたらいいんだお!
 リア充は敵なのかお? 味方なのかお? さっぱりわからんお!」
 些か特殊な棚川・秋菜(ID:BNE000711)も特殊な上にパッシヴな妄想の翼で混乱が掛かっている内藤 アンドレ(ID:BNE000773)も。
「……あぁ、もう本当に皆可愛い子ね」
 くすくすと笑うマリアム・アリー・ウルジュワーン(ID:BNE000735)の視線の先――
 集まる顔に張り付く黒々とした表情と、吐き出される言葉達を聞けばもうあれこれ言う必要は無いだろう。
 真冬の埠頭に無意味に集まって暗い海に向けて怨嗟を吐き出す光景は人間らし過ぎてほっとする。
 妬み、嫉み、叶わない自己実現に夢と現実とのギャップ。傷の舐め合い結構ではないか、誰あろう神の子でさえ今夜の寒さは救えまい。
 埠頭でたむろするこの集団は誰が呼んだか『リア充撲滅委員会』という禍々しい異名を取っていた。
「爆発が見られると聞いて――ちょっと、遊びに」
 ……つまり、美月・香澄(ID:BNE001350)に見世物目的を頂戴してしまう、そういう集団であった。
「クリスマスイブなの! リア充撲滅委員会よ立ち上がるの!
 これは即ち聖戦なの! リア充どもの思い出に残る素敵な妨害工作をしようじゃないの!」
 十二月二十四日も際手前まで追い込まれればもう何に希望を見出す事も無いという事か、円の演説に何処か澱んだ賛意の声が上がっている。
「な、何この妖気……!?」
「こ……これが有名なリアジュウ撲滅というやつですかぁ! 怖いのですぅ。怖いのですぅ!」
 がくがくと震えるのは偶然に通りかかった中村 夢乃(ID:BNE001189)にマリル・フロート(ID:BNE001309)。
「取り敢えず、こっちには室長がいるの。室長はアーク司令代行なの。正義は我にあるの」
「だから、通りがかっただけだってば」
 何がどうしてこうなったを地で行く時村沙織(ID:nBNE000500)は錦の御旗にされかけて円に抗議めいた。
 とは言え、演説に酔っ払う円の方はそんな小さな抗議を聞いてはいない。
「やだ……リア充降臨なう! 倒せ! 倒せ!」
「時村さんは我々を茶化すためだけにここまでいらっしゃってるキングオブ非リア充なの。
 それ相応の敬意を持って接する必要があると思うの」
 夏栖斗の言葉はある意味で正鵠を射ていたがすかさず円は嗜める。
 こっちも十分的の真ん中を射抜いているから結構痛い。
「……………」
 なまじ全てが嘘八百で無い辺りが辛いのか、饒舌な沙織さえ黙り込む一言であった。
 確かに彼からすれば現在は『予定外』の状況である。出歩けないクリスマスを嫌って、クリスマスの方から出迎えさせた彼ではあったが……
 ……やはり根本的に立て込んだ仕事から早晩逃れる事は出来なかったという事情がある。
 となれば、何の為の、誰が為のクリスマス……と嘆きたくなる気持ちも沸いてくるというものだ。
「大丈夫、さおりんにはあたしがいるですよ」
「あ、アタシはただ室長を探していただけで、撲滅委員会とかは関係ないわよっ!」
「……え。やだ……こんな非リア専用ポイントでも格差が出来上がろうとしているなんて……!」
「両手に花だな。そのまま爆発すると良い」
 尤も神城・涼(ID:BNE001343)や不動峰 杏樹(ID:BNE000062)の言う通り、沙織の傍にはわさわさと子犬のように尻尾を振る悠木 そあら(ID:BNE000020)やら何かと騒がしく甲斐甲斐しく同時にややこしい高原 恵梨香(ID:BNE000234)辺りが居たりするのだが、面倒臭いという意味では当人も相当のものだから猫じゃらしを振るが如くからかうまでに留まっているようだ。現在は。
「そあらは追うより追われる方が好きなタイプか。ここでそれをやると、追ってくるのは撲滅委員会だけど」
 つれないタイプを釣りたがるというのは男女問わぬ業なのか。逃げるから追うのか、犬だから。
「ほれ、苺とってこい」
「いちごー!」
 ……犬だから。
「ア、アタシは室長に書類の承認を貰いに来ただけだけよっ……」
 はい、そうですね。
 日も落ち世界は闇に染まり、尚絶望は黒々とそこに横たわる。
「うっわー冷えるなここは。港だからかな」
 純朴な桜小路・静(ID:BNE000915)は空気を冷やす『それ以外』の理由に気付いていない様子。
「ほうほう、ここがリア獣になりきれない者たちの聖域……
 リア獣というのは大変にレアなビーストハーフのことでございますよ!」
「さぁて、ココが撲滅団様の巣窟。撲滅団の皆さん、このクリスマスの意気込みは!?」
 マスゴミ風に空気を読まずソリッジ・ヴォーリンゲン(ID:BNE000858)と歪 ぐるぐ(ID:BNE000001)が遊んでいる。
「えらい気ぃ張っとる場所やねェ。そないなこというてる子ぉほど、意外とお相手できるの早いんとちゃうのん」
「然り。リア充撲滅と謳いつつも機会さえあれば我先にとリア充への道へフォールダウンし、艱難辛苦共にして来た同志にさえ後ろ足で砂引っ掛ける思惑満々の姑息な皆様こんばんわ。
 モニカ・アウステルハム・大御堂、ただのメイドです。冷やかしに来ました。冗談です」
 化野・風音(ID:BNE000387)に応えたのは、九七式自動砲も真っ青にヤる気満々の面白メイド――
 一分たりともその表情を揺らがせずにモニカ・アウステルハム・大御堂(ID:BNE001150)その人である。
「まあ、まだ時間はあるし出会いもあるかも知れないじゃないか」
 新城・拓真(ID:BNE000644)の言葉は確かに事実だったが……兎に角、場は澱んでいた。
 時間が経過する程に、夜が深まる程に次々と現れ出でては澱に合流する亡者の群れ。
 中には彼女達のように半ば以上面白がって煽りに来る暇な連中も居るには居たが他所の会場に比べてこの場所は余りにも切実で悲痛であった。
 傷を舐め合いたいだけの者も居るかも知れない。
 或いはある意味単に面白がっているだけの者も居るかも知れない。
「……何故、わざとらしくカメラを向けるの? いくら美人だからって」←こじり
 こいつとか。
「『非リア充必死だな』……と。申し訳程度のショートケーキと安物の唐揚げを傍らに匿名掲示板で無意味に煽るのが最近のクリスマスの定番ですね。
 ぶっちゃけ三十余年も生きているとこのイベント自体に飽きてくるんですよね」←モニカ
 こいつとか。
「クリスマス鮮血で染め上げて。今日もアークは平和だね」←紅涙・りりす(ID:BNE001018)とか。
 しかし、やはり概ねの人間にとって記念日というのは特別なものである。
 何は無くとも人肌の恋しい季節は独り身で眠るには些か寒い。
 少なくとも真冬の埠頭で管を巻き、わざわざ聖夜に世を呪う面々の心情など単純明快だ。
「モテ秘訣をぷりーず! 俺も、モテてえ!
 撲滅される側にまわりてえ! 泣きたいのは俺だ! うわぁぁん!」
 結城 竜一(ID:BNE000210)程思い切るかどうかは別にしても、この辛さが人生なのか。
「ふと思ったが今の所ナンパで全敗してる拙者が一番非リア充だと思うんでござる」
「大丈夫だ。全敗はここにもいるぜ! おっさん一人だけにさせられるかよ!」
「ふ……だったらケーキを頂こうでござる……」
 鬼蔭 虎鐵(ID:BNE000034)とそんな竜一が微妙に友情を育んでいる。
 竜一がこの虎鐵とらいよんとの微妙なやり取りを知ったら即座に崩壊しそうな友情だが。
(らいよん逃げて! どうみてもあのおっさん真性だろ。筋モンだろ! 怖いわ!)
 夏栖斗の心配はある意味妥当である。まぁ、彼等幸せそうだから別にいいけど。
「……この、この位、これしきの事で……」
 一方でぜえはあと荒い呼吸で雪を踏みしめよれながらこの場まで辿り着いたのは大御堂 彩花(ID:BNE000609)だった。
「やっ……仕事、おわ……プロム……パー、ティ……」
 どしゃと白い雪面にダイヴしてうつ伏せに埋まって動かなくなっている。
 平素の完全なるお嬢様っぷりも何処へやら。その姿には凛とした彼女の威風が何処にも無い。
「じゃあ、行こうか大御堂君っ……て……」
 見た目よりずっと重いお嬢様はずぶずぶと雪に埋もれて。ついでに夢の中で平泳ぎ。
「ひょっとしなくてもその大御堂君というのは私ですか。
 おっさん相手の夜伽は慣れてはいますが、フラグが足りないのでイベント不成立です。またの機会に」
 見事にタイミングを外した沙織をボケ倒したモニカが見事に迎撃する。
『大御堂重工』の仕事を実に要領良くサボ……押し付け……回避した彼女は実に淡々とした調子。
 埋まる主人を見ても一ミリたりとも悪びれず、無表情のままに言葉を添える。
「皆様、大変お見苦しいところをお見せしました。
 お嬢様は此度のイベントの直前で急な仕事が入り参加もままならなくなってしまい、この様な無様な有様を皆様に晒す結果となりました。
 誰よりも心待ちにしていたというのに、御労しい限りですプギャー」
 ……誰の所為か等愚問である。
 人生三十余年生きていてイベントなんてそろそろ食傷だと言う割に齢十六にして瑞々しく、期待に胸を膨らませる主人の事は汲んでやらない。
 大人になるという事はまさに世知辛さを身に着けるという事であるかのようだ。
 ……いいぞ、お嬢。そこだ、一発殴れ、面白メイド。
「ほら、リボン! リボンですわ、お姉様!?」
「雛も、もう、変な事を言わないのっ!」
「お姉様、私の気持ちを――」
「――っ!? ああっもう、雛ったらはしたない。アタシのコートに入って隠しなさい!」
 何処と無く不毛な情熱を燃やす緋室・雛凰(ID:BNE000922)に恵梨香が圧倒されている。
「沙織はロリコンと」
「ロンリーリッチ婚活。つまり金に物を言わせて女を落とそうとする人の事よ」←K
「嘘はいけませんね。天然記念物です。食べられますよ」←M
「よーするに、おかねもちでおんなんこがすきなたべられる天然記念物なときむらのおっちゃん?」
 杏樹の寸評に怪情報を添えた二名の言葉を信じ込み、風芽丘・六花(ID:BNE000027)が首を傾げている。
 こめかみに指を当てる沙織に黒葛・義久(ID:BNE000044)は微笑んだ。
「あぁ、大丈夫だってわかってるさ時村君。ロリコンってのは中年が少女を好きになることだからね。
 つまり、中年じゃない俺たちはロリコンじゃない。だからただ俺もただ年下が好きだって言うだけでね。
 それに日本だと昔は十二歳歳で結婚してたんだし。だから普通だよ。うん、そうに決まってる」
「仲間にすんな!」
 状況は全く無軌道で何処にも増して纏まりが無い。
 そも騒ぐ事を至上とし、暴れる事を至上とした個人主義者達は根本的に協調性という部分を欠いていた。
 そしてそんな場は奇しくも面白メイドが予言した通りの展開を産み落としたのである。
「混乱に便乗してダンス相手を募集したらどうなるかしら」
「お、お、オネーサン!俺で良ければ!」
「身体のほうは十四で止まってるけどな。こんなお姉さんで良ければ、お相手願えるかしら」
「……え!? マジで!? アレ!? 受けてもらえたとか夢じゃね!?
 ちょっと誰か俺の頬引っ張れよ! って言うか、えー!? マジで! 僕と踊ってください!」
 ダークホースな杏樹とテンション爆上がりの涼のやり取りである。
「リア充撲滅したらリア充じゃなかった集団からリア充が生まれる。世の中上手く回っているな。ちなみに懺悔くらい聞くぞ」
 杏樹は淡々とした表情のまま誰に言うともなしに呟いた。
「……」
 竜一の目が暗く澱む。
 そして事態とは一つ動き出せば次々と動き出すものと相場は決まっているのであった。
「この場こそ駄目人間の複雑な事情でございますか、勉強になるのでございます。
 それはそうと、抜け駆けおめでとうでございます♪」
 悪気無くソフィア・プリンシラ(ID:BNE001375)が笑う。
「え? 私でございますか? わたしはこのとおり背がちびっこいでございますから、ダンスはもう少し背がのびてからかな、などと思っているのでございます」
「粛々とした場ではないのだし、気にしないで良いと思うがな。良かったら、踊りに行くか?」
 くーっと背伸びをする格好をして見せたソフィアに拓真はあくまでさらりと言葉を投げる。
「わ、わ、誘ってもらったでございます。はい、もちろん喜んで! でございます!」
 白い頬をうっすら赤く染めて大袈裟に飛び上がりそうになったソフィアは言う。
「……でも……きっと、身長差でおもしろダンスになってしまうのでございますよ?
 笑ったら駄目でございます。でも踊ってもらえたら嬉しいでございます」
 後半は少し小さく視線を僅かばかりに伏せて照れ半分、嬉しさ半分といった具合。
「……………」
 竜一の目がもっと澱む。
「リア充撲滅どころか、増えてるです。皆夜道に気をつけるといいです」
 望み果て無きそあらは厳重に抗議するが雪崩を打つように始まった裏切りの連鎖が止まらない。
 とは言えそんな彼女自身も隙あらば裏切ろうと思っているのだからそれは当然の事かも知れない。
 悲喜こもごも。悲鳴と恨み節と歓喜とあと色々あれこれに塗れてまさに今、委員会は崩壊の時を迎えようとしていた。
 中でも致命的なのは委員長と女帝(笑)の組み合わせである。
「と、言う訳で俺は予定通り裏切るから後は諸君等でよろしく! 後任委員長は結城君に任せた!」
「……屈辱だわ、言いくるめられるなんて何時ぶりかしら。ホントにもう……」
 何時の間に話を纏めたのか先程までの暗雲が嘘のように晴れやかに沙織。傍らのこじりは憮然とした様子で呟いている。
「よぉし! 後任のリア充撲滅委員長(偽)の結城だ!
 まずいっておく! 口でなんかいう前にサーと言えー!」
 それでぷちんと何かとメーターの振り切れた竜一がヤケクソになってはしゃぎだす。
「……よし。恵梨香、俺と一緒にプロム行かね?」
「……わかりました。いいですよ。行きましょうか」
 奇妙な緊張感を抱いたままそんなやり取りをしたのは駆と恵梨香。
 人類史において人間の感情のやり取り、特に男女間の機微というのは常に特別な意味を持ってきた。
 こんな場末の暴れ場に置いてもそれは変わらず、何とも言えない微妙な色を醸すのだ。
「どういう事なの……」
「さおりんのばかっ、ばかっ!」
「ぬぉぁー! 乗り遅れたのだよ! いきなり沙織が撲滅なのだよ!」
「よーし、ぐるぐさんもリア充観察してこよ~」
 茫然とする円、騒ぐわんこにうさこ。気楽なぐるぐ。
「むきぃー!」
 声を上げるのは真田・幸代(ID:BNE001411)。
「……さー、いえす、さー?」
「委員長は優しいなあ……ノってくれた」
 付き合ってくれた香澄に竜一が表情を崩す。
「リア充になれっつったって、俺だって、好きで非リアなわけじゃねー」
「男同士。それはダンスパーティにおける真の非リア充の定番ですな……うむ。
 サー! リア充撲滅委員長閣下には是非実戦して頂きたく思います、サー!」
 鬼ヶ島 正道(ID:BNE000681)が無責任なる期待を煽り、
「リア充撲滅を掲げながらその実出会いの場と化している不埒な者どもの集まりだったという事ですか」
 淡々とレイ・マクガイア(ID:BNE001078)が総括する。
「爆破です。日替わりで爆破する他ありません」
 レイの口から漏れる不穏な言葉も最早止める者は無い。
「情緒ー不安定にーなーるー……」
 千里の口から漏れる声。
「タイムリミットまであと三十分位ですね」
 止めないそあら。
「冬は空気が澄んでますからね。最後に弾ける音も良く響いて心地よいのです」
 達観したかのような雛凰。
 形骸と化した委員会はある種の壮絶なピリオドを望んでいた。時代が主に望んでいた。
 故にもう結末は避け得ない。無軌道すぎてもう無理だから、そういう事にしておいて。

 しゃんしゃんしゃん……

 喧々囂々と騒ぐ面々の頭上を軽やかに鈴の音が駆けていく。
 暗闇に糸を引く箒星のように『彼女』は空を滑っていたけれど。
 ここの面々は気付かない。気付けまい。
 彼女の存在も、彼女の痕跡も。『良い子』の知る由では無いのだから――嗚呼、Amen。