滅相銃の回る時、祈りの声が光りとならん。
【仏装仏具】滅相銃の回る時、祈りの声が光りとならん。


●滅相銃とソウガン和尚
 千葉県は九十九里、成東山不動院。
 美しい朱色の仁王門と、要塞の如く聳え立つ同じく朱色の本堂からなるその寺に、今崩壊の危機が訪れようとしていた。
「本堂が崩れる! 離れるのだ!」
 僧服を纏った男が本堂の手すりを飛び越え、はるか数メートル下の地面へと落下。
 鷹のような翼を広げてホバリングし、階段へと着地した。
 振り返ると、美しい本堂の屋根を突き破り、巨大な像が立ち上がるのが見えた。
 多くの寺職員たちが貴重品だけを持って逃げ出すなか、僧侶は強く歯噛みした。
「仁王像を妖化するとは……なんたる罰当たりな……!」
 黄金の剣をたずさえた巨大な仏像。
 その左右にはふたつの童子像が立ち上がり、それぞれの武器を振りかざす。
「かくなる上は……おい『滅相銃』をもて!」
「「ハッ!」」
 僧侶は弟子の持ってきた包みを開き、筒状の機関銃を取り出した。
 銃身がマニ車という特殊な術具でできた、まごうことなき『仏装仏具』である。
「ノウマク・サンマンダバザラダン・センダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ――カンマン!」
 真言と共に発射された無数の珠が妖と化した像へ命中し、次々に小爆発を起こしていく。
「ソウガン様、あなた一人では無理です! 助けを呼ばねば……!」
「ええい、逃げ延びる檀家さんがたを見過ごせるか! 皆が逃げ切るまでワシはここを動かん!」
「しかし……くっ、お許しください!」
 弟子の男は僧侶の頭を棍棒で叩いて気絶させると、彼を担いで逃げ出した。
「地蔵様に……鎬次郎さまに助けを求めるのです!」

●不動明王とこんがらせいたか
「ファイヴの諸君、久しいな!」
 ここはファイヴの会議室。
 かつて天獄村にてファイヴの覚者たちと共に戦った古妖地蔵、鎬次郎。ファイブに新神具『双刀』を授けた男でもある。
 彼は椅子にどっかりと座ると、まず地図と写真を広げた。
「私の顔なじみでもある寺が妖被害によって半壊してしまった。
 彼らは私の天獄刀を求めてやってきたが、今の戦力に武器を与えたとて焼け石に水。
 このままでは寺はおろか、周辺の檀家たちの住処まで被害に呑まれてしまうだろう。
 ゆえに、武器を与える代わりに最も信頼する戦士たちを紹介することにした。
 そう、お主たちのことだ!」

 ここに現われた妖は三体。
 不動明王像、こんがら童子像、せいたか童子像だ。
 これらが巨大な物質系妖となり、寺を破壊しているのだ。
「彼らは罰当たりにも仏具を武器とし、寺を破壊している。その被害はほどなく周辺家屋へと移るだろう。
 お主たちの誇り高き力で、この妖を撃滅してもらいたい。
 正しき祈りと力ならば、きっと仏も許すだろう!」


■シナリオ詳細
種別:シリーズ
難易度:普通
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.妖の撃破
2.なし
3.なし
 八重紅友禅でございます。ごきげんよう。

 こちらはシリーズシナリオとなっております。
 話数は未定ですが、およそ月イチペースとなる予定です。
 ちなみに単語の読み方が少し特殊で『仏装仏具(ほっそうぶつぐ)』『滅相銃(めっそうがん)』といった読み方をします。
 この辺にはまだ触れる段階では無いので、まずは妖の撃破に努めましょう。

●妖
・不動明王像の妖
 黄金の剣を武器とした巨大な像。
 剣による斬撃、薙ぎ払いを得意とする。
 それぞれ物理攻撃で単と列。ただし貫通2がついています。
 物質系妖ランク2。今回のボスです。残り2体を従わせています。

・こんがら童子像の妖
 物質系妖ランク1。
 くきの長い花を持ち、味方全体を大回復します。
 どう考えてもこいつから倒すべきですが、普通に後衛に下がっているのでブロックの困難さ(※)からいっても簡単に手が出せません。

・せいたか童子像の妖
 物質系妖ランク1。
 杖を持ち、周囲に炎をふりまいて特殊攻撃をします(特遠列【火傷】)。

※ブロック難易度
 敵が巨大なため、1体で6人分のブロック難易度があります。
 平たく言うとせいたか童子が前衛、不動明王像が中衛、こんがら童子が後衛に配置され、最初の前衛を抜くだけでも6人ほどせいたか童子に割り当てなければなりません。
 倒す順番やスキル選択も含め、作戦の流れを決めて行きましょう。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(4モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年08月27日

■メイン参加者 8人■



 美しい作りの赤門が崩壊し、停車した自動車が踏みつぶされる。
 見るからに暴虐的な様を、望月・夢(CL2001307)は冷静な顔つきで見つめていた。
「仁王像が妖化とは……僧侶にとっては屈辱でしょう」
 車を降り、覚醒に向けて意識を整える。
 一方で、『フローズン大斬り』渡慶次・駆(CL2000350)は黙ったまま後部座席から身を露わにした。既に覚醒状態だ。
 同じく黙って車を降りる『鴟梟』谷崎・結唯(CL2000305)。
 彼らの代弁をするわけではないが、鹿ノ島・遥(CL2000227)が軽くストレッチをしてから腕に帯を巻き付けていく。
「お不動さんはオレでも知ってる。そんな仏像を殴るってのは気が引けるけど、仕方ないよな。あの面構えと過多だ月で戦いたくなるのも仕方ないと思うし」
「ふん。とりあえずは粗大ゴミの始末か。精々いい発見でもさせろ」
 手首のストレッチをしながら歩き出す赤祢 維摩(CL2000884)。
 そんな彼らの背を眺め、夢は駆へと視線を移した。
「大丈夫ですか」
「ああ……」
 不動明王の名の通り不動の心、自制心や平常心の象徴である。
 現状は皮肉を通り越して侮辱だ。
 それを知ってか知らずか、『巖心流継承者』獅子王 飛馬(CL2001466)が別の車から降りてやってきた。
「仏像の姿で坊さんや檀家を襲うってのはどうにも趣味が良くねえな。けど、これ以上進まれちゃあ悪趣味で済まされねえ。止めるぞ」
 遅れて緒形 逝(CL2000156)と『ジャンガリアンマスター』工藤・奏空(CL2000955)がやってくる。
「こりゃあ大きいねえ」
「けど、巨大化した敵は負けるってニチアサで知ってる! 見ていてください鎬次郎さん。あなたから授かった力で、あのデッカイのやっつけますから!」


 まずは的の注意を引きつけなければならない。
 飛馬は境内のすぐ隣にある施設へと駆け込んだ。鉄柵を飛び越え、駐車場へ転がり込む。
「勝手に入っちゃっていいのか?」
 そう言いながら同じ鉄柵を飛び越える遥。
 なんだかの相談センターという看板はついていたが読んでいる暇は無いし今は相談する相手も避難所だ。
「後で謝るしかねーや。建物が壊れるのは確定してるようなもんだしな!」
 などと言っているうちに不動明王の剣が叩き込まれた。
 咄嗟に飛び退く飛馬と遥。駐車場のアスファルトが引っぺがされ、周囲に土砂が飛び散っていく。回避しきったかと思ったその時、地面ごとすくい上げるように剣がねじ込まれた。
 完全に宙へ浮く。
「早速かよ!」
「これでも食らえっ!」
 浮き上がった石を蹴り出し、不動明王にぶつける遥。
 そんな彼らに追い打ちをかけるようにせいたか童子が杖を振り上げ、地面から大量の火柱を吹き上げさせた。
 防御姿勢をとる飛馬たち。
「まずはせいたか童子からだ。集中攻撃。俺に出来る最善は早く終わらせることだけだ」
 駆は自らの肉体をブースト。アチャラータを重々しく構えると、潰れた自動車をステップにして相談センターの屋根へ飛び乗り、助走をつけてせいたか童子へと殴りかかった。
 追撃にと隆神槍を連射していく結唯。
 対するせいたか童子は杖を振り回して結唯たちを振り払い。巨体に似合わぬ軽やかな動きで飛び退いた。
 維摩が彼らに戦巫女之祝詞をかけながら距離をとった。
「何をのろのろやってる。直撃させなければ意味が無いぞ。役立たずに用は無いんだがな」
「そう思うなら自分でやれ」
「支援ならいくらでもくれてやる。さっさとばらせ」
「動きが良すぎるようですね。やはり……」
 夢は一度深い集中をかけると、地面に儀式刀を突き立てた。
 アスファルトを割るように無数の筋が走り、仏像妖たちの足下から植物のつるが次々と飛び出していった。
 足に巻き付いた。その瞬間を狙って跳躍する遥。
「稲妻ローキックをくらえ!」
 人間ではないとはいえ人の形をした物体である。向こうずねを蹴られてぐらつきもしないなんて嘘だ。
 遥は一瞬だけ動きの鈍ったせいたか童子の足をぶち抜く勢いで蹴りつけた。
 花を振って回復をかけるこんがら童子。くずれた足が徐々に修復されていく。
 その一方で、逝が飛馬を刀で突き刺し、無理矢理肉体を修復していく。
「もっとまともな回復方法ないのか」
「痛くないお注射とか聞いたことある?」
「ある!」
 わざとらしく肩をすくめてみせる逝。
「このっ」
 奏空が刀に雷を纏わせ、薙ぎ払うようにせいたか童子に繰り出した。
 直撃をうけてたたらを踏むせいたか童子。
 奏空は刀を構え直し、せいたか童子像をにらみ付けた。


 例えば犬の動物系妖がタマネギを食べても平気なように、自動車の物質系妖がエンジンやガソリンで動いていないように、非妖化対象の性質が影響されないことがままある。
 今回のケースもまた。
『防げ、壁』
「簡単に言うな!」
 剣をまるでゴルフクラブのように振り込んだ不動明王像を前に、飛馬は剣を交差させて防御した。
 したはいいがゴルフボールよろしく吹き飛ばされ、後方の民家の二階に突っ込み、ベッドルームをワンバウンドして壁の絵画を破壊。野外倉庫の屋根をも突き破って落下した。
「仏具でゴルフスイングって……おいおい、原作崩壊もいいところだぞ……」
 道路を走り、倉庫前へと飛び込んでくるせいたか童子像。
 起き上がろうとした飛馬に追い打ちをかけるように杖から火炎を放射。倉庫が爆発炎上した。
「どかどか走るんじゃねえ! 待ちやが――ッ!?」
 童子像を追いかけてきた駆が爆発に煽られて吹き飛び、アスファルトを転がる。
 その上をハードルジャンプで飛び越える遥。
 着地と同時に拳を中心に雷を発生。
「維摩!」
「五月蠅い。さっさとやれ」
 維摩の放った戦巫女之祝詞を受けて肉体をブースト。
 拳にため込んだ雷をせいたか童子像の足に叩き込んだ。
 足が砕け転倒するせいたか童子像。
 追加の活殺打を叩き込む結唯。
 その隙に飛馬をかっさらっていった逝が、道路に飛馬を放り投げつつ乱暴に腹や腕を切り裂いた。
 裂かれた部分からリバウンド式に回復していく飛馬。
「お、おい。本当に回復する気あるのか」
「おっさんヤる気満々よ?」
「俺たちって回復担当なんだよね?」
 吹き飛ばされていた駆を抱え上げ、水を飲ませる奏空。
 そんな彼の肩を叩いてゆっくりと立ち上がる駆。
「仏像を妖にってよ……」
「やっぱり、ムカついてる?」
「当たり前だろ。つってもアレだ、わかりやすい仏敵って感じで割り切りやすいけどよ!」
 起き上がろうとするせいたか童子像をにらみ付け、助走をつけて跳躍。
 剣を逆手に握り込み、スタンピングと同時にせいたか童子像の胸へ深く突き立てた。
 剣が硬いボディを貫き、地面にまで到達した。ヒビが広がり、像が爆発を起こして砕け散った。
 転がった石を蹴る維摩。
「ふん、せいたかは奴隷や従者の意味か。妖でいいようにされる姿では相応だな。あるいみ丁度いい中身だな」
「黙ってろ。俺をこれ以上ムカつかせてえのか」
「無駄口を叩くのは粗大ゴミをバラしてからにしろ」
 振り返り、手のひらを翳す維摩。電撃が放射され、駆け込んでくる不動明王像を包んだ。
「では、手はず通りに」
 夢がなにかの呪文を唱えた途端、不動明王像の足下から大量の蔓が出現。足首に巻き付いていく。
 ガッツポーズをとる奏空。
「よっし!」
「このかせ、たやすく解けると思わないでください。鹿ノ島様。どうぞ」
「お前の拳見せてやれ!」
「言われなくても――!」
 家の屋根を駆け、顔面めがけてとびかかる遥。
 全力で漲らせた拳が不動明王像の顔面へと繰り出され――る直前。
 手のひらによって拳が受け止められた。


「ぐっ……!?」
 空中。一秒に満たない時間の中で、遥は強く歯を食いしばった。
「鹿ノ島様」
 この世界。特に因子戦闘において、実力の開きすぎた敵とはたとえそれが1対100でも勝負にならないと言われている。
 その最も分かりやすい理由は、防御値と体力の差である。
 こちらが仮に全力で100の攻撃ができたとして、相手に200の防御で阻まれてはたとえ二倍のパワーで叩いてもノーダメージだ。それが百人束になったところで一発の総量が増えるわけではない。
 しかし。差があると言うことは、埋めることが出来るという意味でもある。
 望月夢は、差を埋めることにかけてスペシャリストだった。
「補助体術、戦之祝詞を準備。発動までカウント3、2、1――」
 従来的にみて、補助スキルとは戦闘のついでに使うものだった。
 乱暴にいって『味方前衛に蒼鋼壁をかけます』程度の使い方である。
 しかしこれを専門とした場合、意味が大きく変わってくるのだ。
 状況に応じてセットするブーストフレームを瞬時に切り替えることも、彼我の戦力差のどの部分を埋めれば決定打を与えられるかを判断することも可能になる。
 今のところ夢に足りていないものがあるとすれば、切り替え用の補助スキルと敵のスキャニング能力。ついでに言えば送受心能力くらいだろうか。
 なにせ身体能力を急に上昇されれば人は誰でもつんのめる。ジャストなアナウンスが必要になるのだ。
「顕現(エンター)」
「よし来たああああああああ!」
 遥の腕や足にみるみる力がみなぎり、目に見えて筋肉が膨張する。
 目を見開き、不動明王像の手のひらに膝をめり込ませる。左手で更にパンチ。
 右腕を引き抜く動きと腕のバネをそれぞれ使って殴り込み、一秒ほど強制対空しながらパンチラッシュを叩き込んでいく。
 と、手のひらに徐々にヒビが広がり、ついには粉砕。あまりのパワーに不動明王像は半歩たじろいだ。
 慌てた様子で回復を始めるこんがら童子像。
「味方が【致命】状態になった回復役ほど無価値な存在もないな。待っていろ、すぐに後を追わせてやる」
 維摩は手首を砲台のように握って構えると、拳を大きく開いて見せた。
 掌の中央が発光。光が収束したかと思うと細い光線が不動明王像へ発射、無数のリングレイが広がり、次の瞬間には爆発的なエネルギー放射となって不動明王像の肩口をえぐっていった。
 空に消え、雲をかきわける光線。
「集中砲火だ。潰せ」
「――!」
 危機を悟ったのは不動明王像の方である。剣を振り上げ、闇雲に叩き込む。
 見上げるような巨人の大上段斬りだ。似たような物理現象がまるでないので想像が難しいが、ダンプカーが突っ込んできたような物理的危機だと考えていい。
 そんな時、人は避けるか伏せるか諦めるかするものだが……。
「回復頼むぞ!」
 飛馬はあろうことか剣をクロスして防御姿勢。対人戦闘ではないのだ。突っ込んできたダンプカーに面打ち防御で対抗する剣道家などいない。
 が、彼が防御のスペシャリストであり後ろに控えた逝と奏空が有り余る攻撃力で回復に専念したとなれば話は別である。
 巨大剣接触。
 常人であれば潰れて死んでいる衝撃を、飛馬は両足と腕の踏ん張りでギリギリこらえた。
「工藤ちゃん、一緒にいこうか」
「おっし! フルパワーで飛ばす!」
 刀を野球バットのように構えた逝と、双刀を両方向から煽るように構える奏空。
 奏空の刀の切っ先に術式性の液体球が生まれ、その中に逝の瘴気めいたものが注入されていく。
「せー、っの!」
 同時スイング。
 飛馬の背中に叩き込まれた複合エネルギーが彼の全身の組織へと瞬間浸透。次々に断裂してへし折れる寸前だった肉や骨が強制的に修復され、飛馬は巨大剣をはねのけた。
 踏みつぶせると思っていたアルミ缶が急に自己修復して押し返してきたら誰だって慌て、そしてよろめくものだ。軽くバランスを崩した不動明王像の隙を突く形で結唯が隆神槍を発動。
 完全にバランスを失った不動明王像。
 その倒れる先にいるのは、駆である。
「ノウマク・サンマンバサラダン――」
 身体を傾け、片膝を曲げ、まるでスラッガーがホームランを狙うようなフォームで身体を引き絞ると、自らに内包された全てのエネルギーを解放した。
「カン!」
 フルスイング、アンドクラッシュ。
 倒れてきた巨大な不動明王像が胸部から粉砕し、駆の周囲に飛び散った。
 がらがらと音を立て、転がっていく破片。

 不動明王像の妖を撃破した後のことなど語っても意味は無い。
 全ての妖を撃破した後、維摩が拾い上げてみた。
 欠片は塵となり、霞となり、やがて物理的に消滅していく。
 どんな妖も元になったものがある。妖が倒されると思念は解放され、動物も(生死は別として)解放される。物体もまた、同じように解放されるのだ。
 道路に横たわった、砕けた不動明王像がそれだ。
「ふん。妖研究はサンプリングが難しくてイライラするな」
 さすがにこれを持って帰るわけにはいかない。妖から開放された物体に妖の痕跡が残らないのはこの一年の研究でできた定説だ。それに、いくら人格的に問題のある維摩とはいえ宗教的に価値のある仏像を奪っていく趣味などない。
 なにより、駆が手を合わせて目を瞑り、何かを祈っている場合などなおさらだ。


 寺を管理していたのはソウガンという住職である。
 妖撃破の連絡を受けた彼は、重々しい機関銃を手に破壊された寺へと戻ってきていた。
 落ちた看板を拾い上げ、海より深いため息をつく。
「修復費用がかさむ、な」
「そればっかりはしょうがないさね」
 割と軽い調子で言う逝に驚いて、奏空は間に割り込んだ。
「いやっ、ごめんごめん! できるだけのことはやったんだ。流石にお金は出せないけど」
「分かっておる。いくら払えばいい」
「こっちは営利団体じゃねーんだ。その辺は気にしな――」
「武器の話をしろ」
 結唯が一切の空気を読まずに割り込んだ。
 半眼でにらむ飛馬。
「なんだ。半分はそれが目的だったんだろう」
「だとしても今は空気を読もうぜ」
「しっかし。なんでまた仏像が暴れ出したりしたんだ? おっさんが物騒な武器持ってるから怒ったのかな。ってかなんだよその変な武器」
 空気をマックスで読まなかった遥が無邪気な顔で言った。
 地雷の上でタップダンスを踊るような有様に、飛馬は顔を覆って呻いた。
 柔らかく肩を叩き、ゆっくりと首を横に振る夢。
 なんかもう。自分たちが妖より大きな厄介者として更新されたような気分である。
 すると、駆が手を合わせて住職に挨拶した。
 一般にはあまり伝わっていない作法での挨拶である。
 彼に修行の経験を見た住職はこの世の終わりみたいな顔をやめた。
「あとで座禅させてくれ。それより、妖のことで聞きたいことがあるんだろ?」
「ああ、そうだった……妖化の原因で、心当たりはないか?」
 飛馬が渡りに船といった様子で問いかけると、ソウガン住職は驚きの顔をして掴みかかった。
「妖化に原因なんてものがあるのか!? なんだそれは、教えてくれ。今後の対策にしたいんだ!」
「やめろやめろ! こっちが知りたいんだっての!」
「いいから武器の話をしろ」
「それは後にしろ!」
「おっさんその武器趣味わるくね」
「黙ってろ!」
「帰っていいか」
「帰れ!」
 混乱に包まれる現場。
 夢はため息をついて、近くの石に腰掛けた。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
ここはミラーサイトです