鏡の中の魔物
鏡の中の魔物


●合わせ鏡の伝説
 夏、怪談話に花が咲く季節。
 だが迷信とされる話の中にも真実が隠されている。
「合わせ鏡? あたしは死後の顔が映るってきいたよ」
「私は祖先に会えるって」
「悪魔が出るんだぜ」
「いやいや、自分と霊が入れ替わるんだって」
 放課後の教室内、何人かの高校生達が口々に合わせ鏡について語っている。
「その話どれが真実かわからないけど……、試せる場所を知ってるよ」
 そういい一人の少女が教室の中に現れる。どこか怪しい雰囲気を纏った美しい黒髪の少女だ。
「夜、美術室の大鏡を合わせると……ふふふっ」
 少女が不気味に微笑む。それまで騒いでいた少年達は引きつった笑みを浮かべ、反対に少女達は騒ぎ立てる。
「じゃあ、やってみようぜ!」
 結局高校生の一団は夜の美術室に潜り込み合わせ鏡を行う。
 大きい二枚の鏡は少年達全員を難なく映しだし、鈍い光を放ち始める。
 視界が揺らめき、時空が歪む。それまでとすべてが真逆の世界に少年達は佇んでいる。次元の歪みを移動した事などつゆ知らず、少年達は少しめまいがした程度にしか認識しなかった。
「なぁんだ、なんともねーじゃん!」
一人が声を上げ笑い始めるとそれまで怯えていた他の者たちも笑い始める。じゃあ帰りましょうよと一人の少女が来た道を戻ろうとする。そこに入ってきたはずの入り口はなく、反対側に入ってきた扉がある。
 慌てふためく少女の様子に他のものもその異常さに気づき始める。
 周囲に響く高笑いと共に彼らを導いた黒髪の少女が現れ、周囲に高校生達の鏡写しの姿が現れる。
「ごちそう、たぁくさん♪」

●難敵の気配
「……はい。今回も皆さんの力を借りないといけません」
 そう切り出した夢見の久方 真由美(nCL2000003)は浮かない顔をしている。
「敵はどうやら鏡の中の特殊空間でしょうか。今はそこに潜んで待ち構ているようです」
 予知した内容を覚者たちに伝えながら真由美は少々言いづらそうに切り出す。
「今回の相手は皆さんのやりにくい相手だと思います。この黒髪の少女は古妖です。この者は特殊空間に訪れた者のコピーのようなものを作り出せるようです。その力は皆さんほど強いもののようには思えませんでしたが……」
 そう告げると、黒板に白のチョークで鏡写しの空間への行き方の説明を始める。学園から数駅離れた場所にある高等学校、その美術室にある二枚の大鏡で合わせ鏡を作ることで空間が歪み、異空間へ移動させられるようだ。
 今回の依頼の内容は相手の空間に飛び込み、古妖を撃破すること。合わせ鏡の実験をしにくる高校生達が来る前に決着をつけてほしいというものだ。
「主格である古妖を倒せば元の空間に帰れるはずですし、皆さんのコピー体も消えるはずです。この黒髪の古妖はそこまで強大な力はありません。惑わされることなく撃ち倒していければ必ず勝機が見えると思いますよ。ただ、コピー体は心霊系のランク1相当ですが、実体を持つため逆に物理攻撃が聞きやすいものと思われます。上手に使い分けてくださいね」
 ため息を一度吐き教卓の上に手を置く。顔を上げた真由美は覚者たちを見て微笑む。
「夢見は送り出すのが仕事。私が暗い顔ばかりしていてはいけませんね~。皆さんのご活躍に期待しています」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:鹿之助
■成功条件
1.古妖の撃破
2.なし
3.なし
こんにちは鹿之助です。
今回は夏の怪談の代表格との戦いです。

【敵】
古妖と皆さんのコピー体が今回の敵になります。

古妖
黒髪の少女たる古妖は最後衛に位置し、皆さんに術攻撃を仕掛けてきます
1.妖全体の能力強化
2.遠距離単体貫通3[100%,50%,25%]に混乱効果のある攻撃
3.単体への強力な遠距離攻撃
4.弱体効果のバステを付与する全体攻撃
の三種類の攻撃を使用してきます。 

コピー体(妖ランク1相当の能力)
戦闘に参加する覚者の数だけいますが使用できる攻撃は
1.単体近距離攻撃
2.コピーした覚者の因子の持つ初期スキルを劣化したもの
の2種類です。ただ、2.に関しては連続したターンに使うことはできません。

【場所】
敵の創り出した特殊空間で闘うことになります。
左右反転した美術室ですね。
特別なバッドステータスなどはありません。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(0モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
公開日
2016年08月20日

■メイン参加者 8人■

『静かに見つめる眼』
東雲 梛(CL2001410)
『見守り続ける者』
魂行 輪廻(CL2000534)
『夢想に至る剣』
華神 刹那(CL2001250)
『花屋の装甲擲弾兵』
田場 義高(CL2001151)
『怠惰なる剛拳』
東屋・右京(CL2000971)
『愛求独眼鬼/パンツハンター』
瀬織津・鈴鹿(CL2001285)


 夜の校舎内は昼間の熱さとは裏腹に冷えた印象を受ける。月明かりに照らされた校舎内はどこか不気味な印象を醸し出していた。
 『巖心流継承者』獅子王 飛馬(CL2001466)は美術室に入るとすぐに大鏡に駆け寄り、早く合わせ鏡を作るために鏡を運ぼうとする。
「合わせ鏡か……確かによく聞く類の怪談だよな。高校生のにーちゃんやねーちゃんが危険な目に遭う前に何とかしないと」
 そう呟く飛馬に対し東雲 梛(CL2001410)は苦笑いを浮かべながら作業を手伝っている。
「だがまさか怪談話を利用してくるとは、な。頭が回るというか、趣味が悪いというか」
 大鏡にはキャスターが付けられており、本来は相当な重量であろうそれを難なく運ぶことができる。また、大鏡は布が被せられており、鏡面は覆われていて見えない。
 梛と飛馬が美術室の中央に運ぶのと同時に、『花屋の装甲擲弾兵』田場 義高(CL2001151)、『怠惰なる剛拳』東屋・右京(CL2000971)の二人もまたもう一枚の大鏡を持ってきていた。
「ダリぃからさっさと終わらせちまおうぜ」
「おう。気持ち悪りぃのはさっさと潰すべきだぜ」
 そうして運ばれてきた大鏡がちょうど相対する形で並べられる。
「こんな時、進んで力仕事をしてくれる男性たちがいると助かりますね~」
「本当に大変なのはこの後であろう?」
 『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)が男性陣を褒めるのと同時に華神 刹那(CL2001250)は突っ込みを入れながら刀を抜き戦闘態勢に入る。
(身内と……まぁ、劣化という話だが、それと本気で斬り結べるいい機会だ。楽しませてもらおう)
 刹那は少々歪んだ嗤いを零す。
 そんな風に古妖撃破のために準備をしていた彼らを『愛求独眼鬼/パンツ脱がしの幼鬼』瀬織津・鈴鹿(CL2001285)は複雑な心境で眺めている。自身が古妖に育てられた身であり討滅することに気が進まないのだ。
 深くため息をついた彼女に『ドキドキお姉さん』魂行 輪廻(CL2000534)が頭に手を置き、優しくさする。
「大丈夫よん♪ 私たちも大人しくするっていうなら、そこで終わりにすればいいのよん♪」
「そうなの! うん、そうしてみるの!」
 輪廻に励まされ、鈴鹿は第三の選択肢に希望を持つ。
「おしゃべりはその辺だ。始めるぜ。田場さん!」
「おう!」
 梛と義高が鏡に掛けられていた布を勢いよく取りはずす。それまでと空気ががらりと変わり、周囲に妖気が立ち込めていく。空間が歪み、一般人には感じ取れない無理やり移動させられる感覚が覚者達を襲う。
 

 覚者達が違和感を感じなくなったあと、視界にはそれまでと左右反転した景色が映っていた。自分たちを確認しても、覚者たちの姿自体に変化はない。別空間に移動できたことに確信を得る。
「貴方達は……! 獲物じゃない……」
 突如教室に現れた黒髪の古妖は驚愕の顔を浮かべる。
「さっさと済ます」
 右京が瞬時にその身を漆黒の獣の如く変化させ、敵を抉らんとする。古妖も即座に対応し大きく飛び退く。それを合図に全員が戦闘態勢をとる。
「いいわ。貴方達も後からくる子達も皆食べてしまいましょう。さぁ、自分自身と踊りなさい!」
 そう少女が叫ぶと覚者達の前に姿見のようなものが突如現れ、そこに映し出された覚者達の虚像がズルリとこの空間に現れる。武器を持つ手も、髪型も、服装も何もかもが左右反転した存在。ただ、その顔は血が通ってないのか蒼白であった。
「作戦通りの陣形を取れ! 同士討ちは避けろ!」
 義高の叫びに全員が応じ、あらかじめ打合せしていた陣形を取る。それと対になるようにコピーたちも似たような陣形を取り始める。古妖の邪気が充満していき、それまで蒼白だったコピーの顔に色がついていく。
「これで互角くらいにはなるかしら。食い散らしなさい!」
 古妖の一声に敵が一斉に襲い掛かってくる。コピーたちはそれぞれの覚者達の持つ技の一部を用いて一気に勝負をかけにくる。
「おらっ! タイマンといこうぜ。この粗悪コピーが!」
 そう吼えた義高は彼のコピーと激しく衝突する。炎熱を纏った一撃というコピーにない力をいかんなく発揮し、敵を押さえ込む。
「所詮はコピー。魂のこもった俺のギュスターヴにゃ足下にも及ばねぇ! ていうか、形だけ似せただけで力を得られるって考えが気に入らねぇな!」
 一方、輪廻はスピード勝負に持ち込まれていた。
「あらん……思ってたよりついてくるわねん♪」
 自分とほぼほぼ同じ姿をした相手が執拗に攻め込んでくるのをどうにかいなすも反撃の手を出せずにいるところであった。相手も自分と同じ戦闘スタイル。斬撃をフェイントに拳や蹴りを主軸にした戦い方を行ってくる。時折服からその体が大きく露出しそうになるも、そうならないギリギリの部分での戦いというのも相手は知っているようだ。
「輪廻姉さまを、皆を助けるの!」
 鈴鹿の放った迷霧でコピー達の動きが一瞬止まる。攻撃手は一転し、輪廻は斬撃と打撃を組み合わせた連撃を敵に叩き込んでいく。さながら剣の舞だ。


「せぃあッッ!!」
 右京の渾身の一撃が彼のコピーの体を撃ち貫く。
 鈴鹿の術により動きが鈍った自分のコピーに連撃を入れその心の臓があるであろう部分を貫いたのだ。パシャリと黒い水のようなものに変質し、右京のコピーは跡形もなく消え去ってしまう。
(鬱陶しい……、自分となんて鍛錬だけで十分だ……)
「右京さん! 危ない!!」
 自分のコピー体が消えた先を見て、復活してこないことを確認していた右京の目の前に衝撃波が迫る。御菓子の言葉で気付いた右京はどうにか防御態勢を取るも、深い傷を負う。
「大丈夫ですか!? すぐに癒しの術を!」
 そう言い術で回復させようとする御菓子。しかし、手負いのモノを見逃す敵でもない。右京に刹那のコピーの凶刃が迫る。
ギィィィン――
 激しい金属音と共に、刹那のコピー体の剣を飛馬の二振りの刃が受ける。
「させるか! 巖心流の防御を見くびるなよ!」
 飛馬はそのまま敵の剣を上へ跳ね上げる。
「滅」
 がら空きになった胴へ刹那の渾身の一撃が叩き込まれ、その身を真っ二つに切り裂く。
(劣化しているとはいえ私の太刀を受け止め弾き返すか! 巖心流……試すか!)
 自分の刃を受け返すその防御に魅かれたのか、獲物を握る手に力が入る。一瞬だけ目を飛馬のコピーへと向ける。左右反対とはいえ同じ構え。心が疼いた。
 梛も同じく自分と同じ姿をした相手と戦っていた。コピー体の第三の目からは怪光線が打ち出されるも、その体は植物の蔓が雁字搦めにしていて狙いが定まっていない。
「さぁ、もう詰みだぜ! とどめ……!?」
 とどめを刺そうとしたその直後、妖気の塊のようなものが当てられる。体に走る激痛はともかくとしても頭に電流が走る。眩暈がしてその場で狼狽する梛。一部の植物の持つ幻覚作用の香気を吸ったのに近い感覚を覚える。木行使い故に即座にそう判断し正気を保つ。
「貴方は耐えたのね、偉いわ。でも、味方に斬られるのはどうかしら」
「ンだとぉ……」
 古妖がそう言い放つと、ゆらりと梛の後ろから鈴鹿が夫婦刀を手に襲い掛かる。どうやら梛を敵と認識し、襲い掛かってきているようだ。どこかふらつくその姿を見るに、敵の術中に嵌っているようだ。
「ま、まてまてまて! 瀬織津、落ち着け!」
「あなたなんか! コピーのくせに!」
 どうにか間合いを取りつつ振り返る。止まらぬ頭痛を無理やり抑え込み、どうにか鈴鹿を傷つけないように正気に戻そうと説得する梛。そこに雁字搦めにされていた梛のコピーが怪光線を放つ。その光線は梛の肩を貫く。

「ぐぅっ……クソ、倒れるわけにゃ……!」
 目の前からは鈴鹿が迫る。鈴鹿が刀を振り上げ、梛は反射的に防御姿勢を取り、目を瞑る。
 突如鈴鹿の動きが止まる。御菓子が後ろから彼女を抱きしめ、その動きを止めている。
「大丈夫よ、大丈夫。あれは敵じゃないわ。よく見るの。あなたの敵を、あなたの仲間を」
 そういって御菓子は鈴鹿を術中から解放する。
 ハッとした様子の鈴鹿は正気に戻ったらしく、いままで行っていたことを謝る。
「でぇっりゃあ!」
 そこに義高のコピーが吹き飛ばされてくる。その体は灼滅しており、ほどなく消滅する。
「今は戦闘中だぜ! そういうのは後にしな!」
 義高の言葉にハッと思い出したのか御菓子は周囲を見渡す。そこに梛のコピーの姿はなく、彼を雁字搦めにしていた蔓だけがその場に転がっていた。どうやら完全に血を吸われ切ってしまったようだ。
「最初ほどのスピードはないわねん♪」
 輪廻と刹那は輪廻のコピーを振り切り、敵陣の中央まで駆けこむ。目標は大将首だが、その前に討つべき相手が二人。お互いにアイコンタクトで自分の相手を決める。
「斬!」
(巖心流……相手にとって不足……コピーでは不足であるかな)
 速度に任せた踏込と呼吸、力強い斬撃はまさに修羅の一撃と化した。寸分たがわぬ必殺の間合いは飛馬のコピーの防御を撃ち崩し、そのまま敵を両断する。
「向こうは手際がいいわねぇ。さて、こっちも皆にイロイロ見られないようにしきゃいけないわねん♪」
 軽いノリながらも敵をその速度と手数で翻弄し、一太刀、また一太刀と鈴鹿のコピー体に浴びせていく。三度目の刃を振るときに敵の急所を裂く。しかし、コピーが倒れる時には皆からは自分の姿で見えない様に配慮する立ち回りをする。やがて力尽きた体はその場で消え去っていった。
 刹那、輪廻に振り切られた輪廻のコピーは追いかけるではなく、右京へと向かう。しかし、その刃は再び飛馬の両刃に阻まれる。
「させないって言っただろ! お前たちの攻撃は全部受け切ってやるよ!」
 コピーは攻撃を受け止められ、足を止めた時、その足から急速に植物が成長し、地面に根を張りはじめる。
「さぁ、これで動けねぇぜ。今だぜ右京!」
「でぇあッ!」
 梛が動きを止め、獣化した右京は四肢を力任せに振るい輪廻のコピー体を八つ裂きにする。空中に四散した体はことごとくその場で霧散していくのだった。
 

「ドォリャア!」
「あひぅ!」
「討!」
「ひぃん!」
 義高と刹那が攻撃するたびに御菓子は自分が攻撃されたかのように奇妙な声を上げる。もちろん痛みもなければ、悪影響があるわけでもないが、自分が攻撃されているような錯覚を覚えるらしい。
「あらん♪ 今日の下着はなかなか……隙ありよん♪」
 そういって輪廻が背後からペロリとスカートをめくったかと思うと、御菓子のコピー体からは刃が貫通してでている。
「あぁ~、やめてください~」
 そう涙を流しながら懇願する御菓子。自分のスカートをおさえるが、もちろん、自分がめくられたわけでもないので意味はない。衆目に晒される前にコピー体の姿は完全に消滅する。パンツの公開処刑だけは免れた。
「緊張感にかけておるが……。さて、刀の出番は終わりであるかな」
 刃を収め、水流の弾丸を準備する刹那。
「待って! 少しだけお話しさせて!!」
 鈴鹿は覚者達を止め、少女の古妖へと歩み寄る。
「合わせ鏡の古妖さん、もうコピー体もいないの。勝ち目はないの。だからもうやめよう?人を食べないと生きていけない種族なの? そうじゃないなら……わたし達は分かり合えると思うの。わたしは古妖さんと仲良くしたいの」
「黙れ人の子よ。喰うのは旨いから。貴方達とてそれは変わらないわ」
 鈴鹿は一瞬悲しい顔をしたかと思うと、再び構えを取る。
「だったら容赦しないの。欲望のままに仇なす者には容赦はなしなの」
 鈴鹿の太刀筋には言葉通り容赦はかけらもなかった。続けざまに覚者達は連携攻撃を重ねていく。敵はコピーで苦しめている間に勝利するタイプだったようで、その後の戦闘は一方的な展開となっていった。
「ぐっ、クソ、こんな、はずでは――」
「汝、悲しき存在よ。我が双刀の力を持って祓い清めん……さすれば、穏やかに黄泉の旅路へ行かん事を」
 苦悶の表情を見せる古妖を鈴鹿が引導を渡し決着がついた。


 空間が元に戻り、鏡を定位置に戻した覚者一行はそれぞれ撤収の準備を始めていた。
「さっきはごめんなさいなの」
「OKOK、問題なしだぜ。怪我も直してもらったしな」
 そんな中、鈴鹿は申し訳なさそうにぺこぺこ謝り、梛はヘラっとした笑みを浮かべそれに答える。
 鈴鹿の頭を撫で、その分助かったからいいんだよと言い残し梛はその場から立ち去っていく。どうやら、肝試しに来た高校生達の肝を冷やしに行くようだ。
「けっ! おえぇやつだったぜ。形だけ似せた自分たちの紛い物を相手にするなんてぇのはよ」
「まったくだ。あ~ダリぃ……」
 右京も義高も今回の敵には心底うんざりしたようで各々少しの恨み言を吐きつつその場を後にする。彼らは梛と行動を共にするわけでもなく普通に帰ってしまう。
「巖心流、この流派は見事であるな。その体で拙の……劣化してるとはいえ拙の太刀を受け切るとは」
「そうだろ! でも、あんたの太刀筋も凄まじかったぜ。ヘヘッ」
 達人である刹那に褒められ、飛馬は喜びを隠しきれなかった。
 そんな彼をよそに刹那はきょろきょろと周囲を見渡し始める。そんな様子に疑問を持ったのか飛馬が聞くと
「いや、中卒で渡米しててな。機会がなかっただけに時間が許すなら見て帰ろうと思ってるのだよ」
 それならば自分も知らないからと高校には似つかわしくない二人が出ていく。途中刹那が一通り謝り終わった鈴鹿も連れて行ったからさらに高校に似つかわしくない一行が散策に出かけていく。
 そんな彼らを見て、鼻歌混じりに輪廻も帰路につこうとしたところを御菓子に引き止められる。
「あのぅ……輪廻さん。わたしの……」
 その言葉を聞き、ニヤリと笑みを浮かべる輪廻。
「ん~、意外と御菓子ちゃんも~下着は~」
「あぁああぁあぁあ~! それ以上はしーっですよ! しーーっ!!」
 慌てた様子で御菓子は輪廻の口の前で人差し指をたてる。これまたいい弄り材料が手に入ったとご満悦顔の輪廻は鼻歌混じりに教室を出る。誰にも言わないようにと何度も何度も念を押す御菓子と駅に着くまでその問答を繰り返したという。
 その十数分後、深夜の校舎内に高校生達が悲鳴を上げながら学校を飛び出していく様子が近所の住人に目撃されたということだ。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

皆さんご参加ありがとうございました。
まだSTとして日は浅いですが、プレイング読むのもシナリオ書くのも楽しいですね!
個性的な皆さんとまたお会いしたいです!
それでは、次の機会に~




 
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