新たなる地下遺跡
新たなる地下遺跡


●遺跡の探索に当たって……
 『F.i.V.E.』の覚者達は、会議室へと呼び出されて出向く。
「皆さん、忙しい中、お疲れ様です」
 遅れてそこにやってきたのは、久方真由美(nCL2000003)だった。夢見が増えてそれなりに負担は軽減されているとはいえ、彼女の忙しさは変わることが無いようだ。
「各地で遺跡の発見があっているようなのですが、皆さんにはそのうちの1つの探索をと考えています」
 今回、真由美が口にするのは夢見としてではなく、『F.i.V.E.』のスタッフとしての依頼らしい。
 遺跡といえば。先日、とあるチームが『大亀遺跡』と名づけた遺跡に潜む強力な妖、大亀を討伐したばかり。
 遺跡の調査は考古学者達が進めてはいるが、大きな発見はもう無いだろうという見方が大きく、別の遺跡に人手を割こうという流れになってきていたようだ。
「それで、今回はこちらの遺跡を予定しているのですが……」
 真由美が手渡した資料、そして、スクリーンに合わせて映し出されたその遺跡は前回と同様、地下遺跡のようだ。
 場所はこの資料では記されてはいないが、とある林の中で地下に向けて口を開いた遺跡があるのだという。
「ただ、この林には妖が徘徊しているという話があります。その為、遺跡の調査が後手に回っていたようですね」
 ともあれ、遺跡探索に先立ち、この妖を倒さねばならない。
「妖は、自然系。付近の泥が意識を持った物が4体、そして、それより強い水の妖が3体いるようですね」
 どうやら、近場の泉から発生したらしい妖の群れ。今のところ、林から出る様子もなく、遺跡に入ることも無いらしい。ただ、林の中をうろうろとして、林に立ち入ろうとする人へと襲い掛かってくる。この話を自分達の縄張りとしているという意識があるのかもしれない。
 また、この妖は遺跡とは無関係ではないかと思われている。妖の発現した原因と遺跡……調査がまだ出来ていない為に可能性でしかないが、それでも、関連性は薄いと推測されている。
「妖については、以上です。付近の皆様の不安も高まっていますので、討伐を願います」
 後は余裕のある範囲で遺跡を探索したいところだが、今回は調査の為の下見という形で願いたい。
「ある程度状況が分かれば、次からの調査に当たって対策を講じることができますので。深くまでは立ち入らないよう願いますね」
 遺跡では何が起こるか分からない。未知なる遺跡の調査に胸は躍るが、何が起こるか分からない以上危険だ。ここは敢えて下見に徹するべきだろう。
「それでは、よろしくお願いしますね」
 真由美は改めて覚者達へと微笑んで見せ、説明を終えて資料の片付けに入っていた。


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:なちゅい
■成功条件
1.妖の撃破。
2.遺跡の探索。(入り口付近のみでOK)
3.なし
初めましての方も、
どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。

新たな地下遺跡が発見されました。
ただ、その進入を邪魔するように妖が現れるようですので、
討伐を願います。

●敵……妖(自然系)×7体
○水の妖……ランク2×3体。
 泉の水が力を持った妖です。
・水鉄砲……特単貫3(100・70・30)
 一直線に水を放ち、敵を貫きます。
・まとわりつき……物近単・負荷
 相手の体に絡みついて負荷をかけてきます。
・噴射……特全・弱体
 弾けるようにして全身から水を飛ばし、敵を弱体化します。

○泥の妖……ランク1×4体。
 土などが混ざった為、力が弱まった妖です。
・泥飛ばし……特遠列・消耗HP10
 体の泥を飛ばしますが、その分自らの体を削ってしまうようです。
・まとわりつき……物近単・負荷
 相手の体に絡みついて負荷をかけてきます。

●状況
遺跡へ近づくにも近場にいる妖が邪魔な為、撃破を願います。
遺跡は林の中、なだらかな坂道から遺跡の入り口に至り、
地下遺跡に入ることが出来ます。
入り口には封印などは施されておらず、普通に侵入可能です。
今回は浅い階層のみの確認だけ行い、報告を持ち帰るよう願います。

それでは、今回もよろしくお願いいたします。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
9/9
公開日
2016年08月21日

■メイン参加者 9人■

『五行の橋渡し』
四条・理央(CL2000070)
『マジシャンガール』
茨田・凜(CL2000438)
『歪を見る眼』
葦原 赤貴(CL2001019)
『探偵見習い』
賀茂・奏空(CL2000955)
『突撃巫女』
神室・祇澄(CL2000017)
『冷徹の論理』
緒形 逝(CL2000156)

●遺跡の探索の前に……
 『F.i.V.E.』の覚者達は、新たに発見された遺跡のある林へとやってきていた。
「新しい遺跡! わくわくする!」
 『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)を始め、皆、目を輝かせて依頼に参加している。
「新たな地下遺跡か。今度はどんな発見が待ってるんだろう?」
 遺跡の中での新たな出会い。それは物に限らない。資料的な物もそうだし、予想だにしないアクシデントだってあるだろう。『五行の橋渡し』四条・理央(CL2000070)はその全てを含めた発見に期待し、この依頼に参加している。
 準備も万全で、方眼紙に筆記用具、チョークに方位磁針。大亀遺跡に臨んだ際に持ち込んだ物を理央は所持していた。次からは、これを1セットで準備してもいいかなと考える彼女である。
「何が見つかるか、もそうだけど、このメンバーで調査できるのが楽しみだわ」
 『霧の名の鬼を咎める者』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)は、一緒に遺跡探索に臨むメンバーを見回す。
「新しい遺跡ですか。どんな遺跡で何があるのか、楽しみですね」
 表記は違うが、理央と同じ名前の上月・里桜(CL2001274)。彼女もまた神秘の解明に興味を抱いている。
 緒形 逝(CL2000156)も、あちらこちらで発見されている遺跡の入り口らしきものが気になっていた。
「少し前にも、別の遺跡に呼ばれたから行って来たが……。いや、この話は止めよう」
 それに基づき、逝は遺跡について仮説を立てている。
 もしかしたら、遺跡同士が地下で繋がっているのではないか。あるいは、地下道自体が妖となったもの……場合によっては古妖なのではないか。
(……ちと、夢見すぎか)
 とはいえ、噂による部分もあるので、全く荒唐無稽な仮説というわけでないと逝は思っているのだが。
「前回の、大亀遺跡は、さわりしか、参加出来なかった、ので、今度は、何が見つかるか、楽しみ、ですね」
「今度は大亀の代わりに何がいるんかな? また遺跡の冒険できるなんて、凜は超うれしいんよ」
 『突撃巫女』神室・祇澄(CL2000017)、茨田・凜(CL2000438)も、新しい遺跡の下見ということで、胸を躍らせている。
 凜もまた、いつもの探索セット、「懐中電灯とお菓子」を所持してきている。これからの戦いの都合もあって、それらが濡れないようにとビニール袋に入れていたようだ。
 同じく、遺跡に期待を寄せる、葦原 赤貴(CL2001019)。
 神秘探求を目的とした調査は『F.i.V.E.』本来の目的だろうし、赤貴自身もそれに協力は行うのだが、個人的にはその副産物に対する期待の方が大きい。
(妖、隔者、そして憤怒者。どう取り繕おうと、結局様々な敵と戦い続ける以上、戦闘力の向上・拡大は必須だ)
 武闘派チームを立ち上げた赤貴は、より貪欲に力を吸収していきたいと考えていたのだ。
「その前に、やることを、やらなくては、いけませんが」
「やっぱり、妖はいるんだね……。今度は水系か」
 祇澄がゆっくりと語り、仲間に改めて確認する。それに、奏空が敵について思い出す。ひとまず、遺跡周囲にいる妖を何とかせねばならない。
「遺跡との関係は薄いにしても、安全に探索するなら、前もって片付けておくに越したことはないってことだよな」
「え、前回の亀の次に水だから、今度は絶対竜だと思ったのに」
 『巖心流継承者』獅子王 飛馬(CL2001466)の言葉に驚く奏空。この妖は遺跡でなく、近場の泉から現れた妖との事である。確かに、今回の妖が奏空の仮説通りなら、大亀遺跡も今回の遺跡も、中国における四神と関連するようにも考えられるのだが。
「妖もずっと林の中にいてくれるならいいのですけれど。被害が出てもいけませんし……」
 里桜の言うように、このまま妖を放置して問題なければいいが、近隣住民の不安がっているとあらば、黙ってもいられないだろう。
 ともあれ、妖を討伐すべく、覚者達は林へと足を踏み入れていくのである。

●林の守護者気取り……?
 林の中を纏まって歩く覚者達。
 木々が疎らに生えているおかげで、所々から木漏れ日が差し込んでくる。移動する分に障害となる物はほぼなかったが、場合によっては物質透過してでもと、逝は構えつつ進む。
 やがて、前方、視界の奥に遺跡の入り口らしきものを発見したものの、妖が未だ出現しない。逸る気持ちを抑え、メンバーは妖の姿を探す。
「囲まれたりしないように、気をつけた方がいいかもしれませんね」
「濡れたような音とか泥のような音とか、聞き取れればいいけれど」
 守護使役の朧に、周囲の『ていさつ』を頼む里桜。奏空も同じく使役に『ていさつ』させ、上空から索敵を行っていた。
 ぶくぶく、ぽちゃん。
 偵察をしていた2人は、そんな水の音を聞き分ける。林へと入った覚者達を敵と見定めた妖がゆっくりと姿を現した。水と泥の妖。それらは縄張りを侵す人間を始末するべく、水流を描くようなフォルムでこちらに近づいてくる。
 それを見て、覚者達も戦闘態勢へと入る為、次々と覚醒していく。
(狙われるのが分かってれば、やることは決まってんだよ。少しでも長く、隊列を維持する……)
 初陣となる飛馬は覚醒してもほぼ変化は見られないが、太刀と脇差を両手に持ち、気合を入れて仲間の盾となるべく構える。
 凜はというと、相手が水の妖ということで羽織っていたパーカーを脱ぎ捨て、空色に光らせた右肩の刺青を露わにした水着姿で戦いに臨む。
 その間に、里桜は朧へ敵の数と位置の確認を任せていた。
「数は報告の通りですね。手前に泥が3と水が1、中衛に泥が1に水が2、です」
 ともあれ、敵はすでに臨戦態勢にある為、覚者達も応戦を開始する。里桜も覚醒して髪を桃色に、瞳を銀色へと変色させていた。
 先んじて動く奏空。灰色の髪を輝く金色に変えた彼は前に立ち、雷雲を発生させて雷を落とす。敵は自然系ということもあり、効果はなかなかのもの。奏空の狙い通りに、泥2体がその身に痺れを走らせる。
「調査前のお掃除だ、キレイにしないとな?」
 その前に立つ逝。械の因子持ちの彼は両腕を戦闘機の主翼のように、両足にカナードを付けた姿へと変貌していた。まずは、害なす敵の攻撃に備え、逝は岩を鎧のようにして纏い、自らの防御力を強化する。
 英霊の力を引き出して自身の力を高めるエメレンツィア。髪を真っ赤に染めた彼女は鋭く金の瞳で敵を射抜いて、言い放つ。
「どんな妖が現れようと、全て女帝の前に跪かせてあげるわ!」
 その最中にも、水の妖らが襲ってくる。後方の水が噴射して覚者達に水を浴びせかけ、あるいは、水鉄砲を撃ってくる。水鉄砲は後衛にまで及ぶ+貫通力があり、非常に強力な一撃だ。
 その妖の攻撃から皆を守らねばと、手首の刺青を黒く光らせた祇澄は飛んでくる水を受け止めた。その直後、祇澄もまた岩の鎧で防御力を高め、次なる敵の攻撃に備える。
 泥の妖もまた、前に立つメンバーに絡みつき、あるいは自らの身を削って泥を飛ばしてくるが、理央は赤い瞳で敵を見据え、構わず手前の敵へと炎柱を上げる。燃え上がる炎によって水は蒸発し、泥の焦げる臭いがした。
(汚いのはイヤなんよ)
 敵が飛ばす泥に嫌悪感を抱く凜。ともあれ、この場は仲間の援護をと、凜は仲間達を爽やかな空気で包み込み、身体能力を高めていく。
 力を得た里桜は逆に、粘りつくような霧を発することで敵の能力をダウンさせる。妖達はその霧を受けてもなお、水や泥をこちらに飛ばしてきた。
「まだまだひよっ子なのは、俺だって分かってるけどな。これくらいはやってみせる!」
 他の仲間と同様、岩の鎧を纏った飛馬は、2本の刀で飛んでくる水や泥を受け止める。仲間が攻撃する間、彼は己を強化しつつ全力で防御する構えだ。
「隙だらけ、です!」
 敵の攻撃の直後には大きな隙ができる。敵前列には4体も並ぶのは脅威ではあるものの、纏めて倒すチャンス。祇澄は前項のタイミングで雌雄一対の日本刀『夫婦刀・天地』を振るい、妖達の体を薙ぎ払っていく。
 広範囲に渡る斬撃に妖が怯み、覚者達はなおも攻撃を畳み掛ける。
 相手が何であろうと、それが道義的にどう捉えられようとも。行為自体が変わるものでなければ、正論も大義も飾りでしかない。赤貴はそう考えていた。
「こいつらは遺跡に無関係という話だからな。ただの邪魔でしかないなら、手早く消えてもらおう」
 目の前の敵は障害でしかない。覚醒したことで瞳を赤く、そして銀色の髪へと変色させた赤貴が呼び出す炎を津波のように高く押し寄せた。
 その炎に、早くも泥が1体飲み込まれ、原型を留めなくなってしまう。
 妖は仲間を失ってもなお、執拗に体を構成する体液を覚者へと飛ばし、迎撃を行ってくるのである。

●縄張りを荒らしてでも
 着実に、覚者達は妖に攻め入る。
 比較的弱い泥の妖は、覚者達がスキルを駆使して纏めて攻撃を仕掛けていた。
 例えば、奏空は序盤から前列の泥の妖メインに、周囲の水の妖を巻き込んで雷を叩き落とす。
 泥の妖1体がそれにより、ボロボロと地面に崩れて落ちていく。耐性の低い残る泥も身を痺れさせて硬直させていた。
 そこで、逝がさらに前のめりの体勢で、地を這うようにして『直刀・悪食』で連撃を妖達へと叩き込んでいく。決して弱い敵ではないが、対策をそれなりに練っている覚者達にとっては、泥の妖など恐れる敵ではない。
「いかせません!」
 泥がしぶとく纏わり突いてこようとするのを見た祇澄が、そいつをブロックする。そして、前列がすでに2体にまで減っているのを見て、確実に潰そうと、彼女はまたも天地で泥に連撃を繰り出す。
「邪魔、です!」
 物理攻撃はやや効きづらい敵ではあるが、仲間の手数で圧倒してきたこともあり、泥の妖はただの泥土へと戻っていく。
 それにより、後ろにいた水、泥の妖全てが前へと進み出てくる。敵は意地でも覚者達を逃さぬつもりだ。
 自身の力を考え、敢えて盾に徹して防御し、刀で水を捌こうとする飛馬。
「こっちは遺跡ってのを早く見たくて、うずうずしてんだよ。大人しく引っ込みやがれ!」
 彼は声を荒げて威嚇するが、妖は全く応じない。
 それどころか、水の妖は殺傷力を持つ水鉄砲で飛馬や逝の体を易々と貫いてくる。泥はともかく、水は気を抜けば危険な相手だ。
「それにしても、こいつらは何なのかしら。遺跡の守護者……? それとも、遺跡に眠る物に惹かれて?」
 エメレンツィアは癒しの滴を仲間に振りまきつつ考える。遺跡とは関係ないと言われているが、これほど邪魔してくるのは気になるところだ。
 そのエメレンツィアと連携し、凜も同じく仲間に神秘の力を生成して仲間へと落とし、妖につけられた傷を塞いでいく。
 妖はただ水を飛ばし、あるいは体を直接覚者に絡まらせて応戦する。
 理央は時に、回復役となる後ろ2人の援護に回りながらも、攻撃はしっかりと行う。
(水の力で擬似的な龍を生成するのが、水龍牙。なら、炎柱の術式構成を用い、火の力で擬似的な龍を生成して敵にぶつけられないかな?)
 根っからの学者肌なのか、理央は戦闘中ですらもそんな思案をしていて。
 それと同時に、彼女は神秘の力で呼び起こした水竜を敵陣へと浴びせかける。
 さすがに、思いつきでその術式を発動させることは叶わなかったが、その感覚だけでもつかんで次に繋げていければと前向きに考える理央である。
 その水竜は、1体の水の妖を飲み込んでいた。それに妖達が刹那、恐れの色が浮かんだように見えて。
 それを逃さず、祇澄が土の力で岩を作り出し、粉砕したその岩を妖達へと浴びせかける。
 それらを叩きつけられた泥の妖がただの泥塊に成り果てる横で、残る水の妖が長くその身を伸ばし、逝や飛馬の体に絡み付いてくる。
 相手はランク2。非常に強力な力で締め付けてくる。だが、奏空が落とす雷1体がその身を硬直させた。それによって力尽きたのか、ぼとりと地面へと落下に落下する。
 ここまでくれば、後は押し切るのみ。
 逝は試しにと大亀遺跡の亀と同じような靄を発してみる。相手を惑わす効果があるというが、命中率に難があるということで、妖に効果を示すことはなかったようだ。
 だが、メンバー達は比較的余裕を持って、最後の敵に対する。
「どうでもいい相手に、負傷も時間の浪費も与えてやる気はない。掃除とは、短時間に手際よく済ませるべきものだ」
 赤貴は敵の足元から岩槍を突き出し、妖の体を貫く。それにより、敵の体が弾け飛ぶ。
 それが再び形を成すことはなく、意志を失った水は地面と同化していったのだった。

●その遺跡は……
 妖を全て殲滅した覚者達。凜が脱ぎ捨てたパーカーを回収した後、一行は前方に見える遺跡へと向かう。
 入り口付近から、理央がパシャパシャとカメラで撮影を行う。これは大亀遺跡との関連性を調べる為だ。
「入り口に看板でも見つけられれば、呼称も付けやすいのだがな」
 赤貴がそんな言葉を漏らす。
 大亀遺跡なる名称がついたのは、最後に出された大亀討伐の依頼時だった。とはいえ、特徴がなければ、名前も付けづらいというものだが……。
「ふふ、さあどんな結果が待ち受けるかしら」
 遺跡に突入する仲間を見て、エメレンツィアはくすりと笑う。
 中へ突入すれば、理央が道具を取り出し、マッピングを担当する。他のメンバーは彼女をサポートする形で探索を進めることにしていた。
 祇澄が暗視で内部を見回し、土の心で地形を確認しながら、マッピングの手伝いを行う。
「ほー。遺跡ってのは、こんな風になってんだな。……龍丸、出番だ。よろしく頼むな」
 飛馬が感嘆しつつ、遺跡内部を見回す。
 大亀遺跡には壁に照明が取り付けられていたが、それすらもここでは確認できない。その為、奏空はヘッドライトを使う。飛馬も守護使役にともしびを使わせて、周囲を照らし出していた。
 歩くのにさほど苦労することのない石造りの迷宮。あからさまに人の手で造られたような……そう感じさせる遺跡だ。
「一体、誰が、このような、遺跡を、作ったの、でしょうか」
 未知に触れる喜びを感じながら、祇澄は仲間へと問いかけた。
「造られた意図が残されているはずよ、探しましょう」
 エメレンツィアは毅然として答え、内部をくまなく探る。
 大亀遺跡では、侵入者避けの封印や、妖が噴き出す瘴気などあったことから、メンバー達は慎重に歩を進める。
 里桜が林と同様に守護使役の朧に『ていさつ』を任せ、特に天井や上部に装飾がないか、また、隠し通路や隠し部屋がないかどうかと確認する。
「かなり広いですね……」
 具体的には分かりづらいが、上は見上げられるくらいには高い。
 赤貴も耳を澄ませ、足音の反響音に注意をしていた。その音の響き方からすれば、この遺跡が相当に広く、奥が深いことを窺わせる。
「なんというか静かなところだね」
 奏空はそんな印象を抱く。突入した最初の階に、特徴らしい特徴が見られないのだ。
 壁も天井も、内装は単一の構造で、とりわけ目に付く装飾は全く見られない。レトロなロールプレイングゲームで見られるような、単調ながらも厳かなダンジョン。そんな雰囲気を感じさせる。
 奏空は交霊術を、エメレンツィアが熱感知など、覚者達は色々と試してみるが、これといったものを感じ取ることができない。
 少なくとも、入り口付近には罠など、神秘的な防衛機構を感じさせるものは確認できない。隠し扉など、巧妙な仕掛けも見つけ出すことができなかった。
 また、内部には妖の気配を感じさせないのも不気味だ。外には妖がいたというのに、内装に特徴が見られないというのも逆に不自然さを覚えさせる。
 また、大亀遺跡とは違い、先……さらに下の階層に進む為の階段も、比較的あっさりと発見する。
「先に進めば、何か見つけはできるだろうが……」
 逝は階段を物質透過で下りつつ見回す。さすがに仲間からはぐれて先に進むことはしなかったが、どれほど奥までこの迷宮が続いているのか、想像もつかない。この遺跡は、大規模なものだと思わせる。
「記念のお宝、欲しかったんよ」
 お菓子をぽりぽりと食べながら、凜も胸を高まらせて奥を覗き込む。探索を決めた範囲では目立つものが発見できなかっただけに、その奥へと興味を抱く彼女。先に行けばあるいは、何かアイテムが見つかる可能性があるかもしれないが……。
「この後は一般人も入るって話だしな。罠なんかは絶対見落とさないようにしないとな」
 そう意気込んで探索に当たっていた飛馬だったが、結局は力を消耗しただけといった感もある。探索するならば、気力勝負となりそうだ。
 ともあれ、日が暮れてきたこともあり、覚者達は探索を切り上げることにする。
 どこまで続くとも分からぬ迷宮。メンバー達は改めて、探索を行うことに決めながらも、その場から撤収することにしたのだった。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

お世話になります。なちゅいです。

MVPは、
敵の素早い殲滅に尽力していただいたあなたへ。

今回は参加していただき、
ありがとうございました!




 
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