≪嘘夢語≫アラタナル世紀末:新たなるデス・ロード
●ヒャッハー! オープニングだ!
20XX年! 世界はエイプリルフールの炎に包まれた!
海は死に山は死に、全ての生物が死滅したかのように見えた。
だが、人類は死滅してませんでした! 人類、結構頑丈ですから。
「うう、やめて……それは、最後の……」
「ヒャッハー! うるせぇ、これは俺達のモンだぁ!」
速水 結那(nCL2000114) をゲシゲシと蹴りつつ、彼女から荷物を奪うのはモヒカン肩パットの暴徒である!
世界がエイプリルフールの炎に包まれてから数年、国家機能はその力を失い、人類の統治能力はなんやかんやで、つまりそう、この世は暴力が支配するモノになっていた! いつものパターンだ!
そんなわけで、か弱い結那ちゃんは奪われる側である! というかこの子、初登場依頼がこれでいいのだろうか。
「……でも、そないなもの、暴力が支配するこんな時代に、一体何に使うん? それ、私が絵を描くためにとっておいた絵の具なんやけど……」
突如真顔で尋ねる結那に、モヒカンは一瞬、困惑した顔を見せたが、
「え? あ、ほら、こんな時代だからこそ、芸術って大切って言うか……なんだったら、威圧するための化粧とかにも使えるし?」
「なるほどなー」
なるほど。
●ヒャッハー! 村だ!
「くそっ、オレもいい加減我慢の限界だ!」
ボロボロになって帰ってきた結那を介抱しながら、怒りをあらわにするのは、神林 瑛莉(nCL2000072)だ。
ここは結那達が住む村、その村長の家である。村とはいっても、旧世紀の遺物である建造物(と書くとかっこいいが、つまりその辺の元民家とかである)を再利用しているため、牧歌的、という言葉はかけ離れ、割とアスファルトとコンクリートが多めな感じである。
「村長、オレに行かせてくれ! 奴らをボコボコにしてきてやる!」
「あ、アカンよ、神林さん! 神林さんじゃ、なんかうっかり死んだり、うっかり拉致されたりして、結局助けられた後『ごめんな……助かったよ』ってデレる未来しか見えないんよ!?」
「やめろ! そういう事言うな! マジで傷つく!」
ごめんなさい。
「その子の言う通りですよ、神林君」
そういうのは、村の長である。イメージ的には、この間の依頼で出てきたF.i.V.E.の研究者のおっちゃん。
「実際君拉致されてたじゃないですか」
「やめろー! ホントやめろ! 何でこうなったんだ!? オレってこう、不良っぽくて怖そうだけど実は面倒見のいい系女子だったハズだろ!?」
ごめんなさい。
「まぁ、冗談はさておき、今の我々の戦力では、あの暴徒たちには勝てませんよ。それこそ、伝説の男でもない限り、ね」
そういって、村長は遠い目をする。
伝説の男。それは、圧倒的な拳法とか凄い生存力とか犬と車とかで世紀末の世を駆け抜け正義をなすとされる伝説上の存在だ。
もはや、そう言った伝説に頼るしかないほどに、この村は追い詰められていたのである。
「そないな事言うけど、村長、プレイングで伝説の女の人とか来てもうたらどうするん?」
「それはそれで」
「なるほどなー」
なるほど。
20XX年! 世界はエイプリルフールの炎に包まれた!
海は死に山は死に、全ての生物が死滅したかのように見えた。
だが、人類は死滅してませんでした! 人類、結構頑丈ですから。
「うう、やめて……それは、最後の……」
「ヒャッハー! うるせぇ、これは俺達のモンだぁ!」
速水 結那(nCL2000114) をゲシゲシと蹴りつつ、彼女から荷物を奪うのはモヒカン肩パットの暴徒である!
世界がエイプリルフールの炎に包まれてから数年、国家機能はその力を失い、人類の統治能力はなんやかんやで、つまりそう、この世は暴力が支配するモノになっていた! いつものパターンだ!
そんなわけで、か弱い結那ちゃんは奪われる側である! というかこの子、初登場依頼がこれでいいのだろうか。
「……でも、そないなもの、暴力が支配するこんな時代に、一体何に使うん? それ、私が絵を描くためにとっておいた絵の具なんやけど……」
突如真顔で尋ねる結那に、モヒカンは一瞬、困惑した顔を見せたが、
「え? あ、ほら、こんな時代だからこそ、芸術って大切って言うか……なんだったら、威圧するための化粧とかにも使えるし?」
「なるほどなー」
なるほど。
●ヒャッハー! 村だ!
「くそっ、オレもいい加減我慢の限界だ!」
ボロボロになって帰ってきた結那を介抱しながら、怒りをあらわにするのは、神林 瑛莉(nCL2000072)だ。
ここは結那達が住む村、その村長の家である。村とはいっても、旧世紀の遺物である建造物(と書くとかっこいいが、つまりその辺の元民家とかである)を再利用しているため、牧歌的、という言葉はかけ離れ、割とアスファルトとコンクリートが多めな感じである。
「村長、オレに行かせてくれ! 奴らをボコボコにしてきてやる!」
「あ、アカンよ、神林さん! 神林さんじゃ、なんかうっかり死んだり、うっかり拉致されたりして、結局助けられた後『ごめんな……助かったよ』ってデレる未来しか見えないんよ!?」
「やめろ! そういう事言うな! マジで傷つく!」
ごめんなさい。
「その子の言う通りですよ、神林君」
そういうのは、村の長である。イメージ的には、この間の依頼で出てきたF.i.V.E.の研究者のおっちゃん。
「実際君拉致されてたじゃないですか」
「やめろー! ホントやめろ! 何でこうなったんだ!? オレってこう、不良っぽくて怖そうだけど実は面倒見のいい系女子だったハズだろ!?」
ごめんなさい。
「まぁ、冗談はさておき、今の我々の戦力では、あの暴徒たちには勝てませんよ。それこそ、伝説の男でもない限り、ね」
そういって、村長は遠い目をする。
伝説の男。それは、圧倒的な拳法とか凄い生存力とか犬と車とかで世紀末の世を駆け抜け正義をなすとされる伝説上の存在だ。
もはや、そう言った伝説に頼るしかないほどに、この村は追い詰められていたのである。
「そないな事言うけど、村長、プレイングで伝説の女の人とか来てもうたらどうするん?」
「それはそれで」
「なるほどなー」
なるほど。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.ヒャッハー! 成功条件だ!
2.ヒャッハー! する
3.村を守ってもいい。
2.ヒャッハー! する
3.村を守ってもいい。
そういうシナリオです。
■エイプリルフール依頼について
この依頼は参加者全員が見ている同じ夢の中での出来事となります。
その為世界観に沿わない設定、起こりえない情況での依頼となっている可能性が
ありますが全て夢ですので情況を楽しんでしまいしょう。
またこの依頼での出来事は全て夢のため、現実世界には一切染み出す事はありません。
※要約すると夢の世界で盛大な嘘を思いっきり楽しんじゃえ!です。
●やれること
1.モヒカン肩パットの暴徒になって、村を襲ったり、ヒャッハーしたり、伝説の男に倒されたりできます。仲間内で同士討ちしたりしてもいいです。
夢ですから、うっかりあべしたわばうわらばしても大・丈・夫。
2.伝説の男……女でもいいですが、兎に角村を救う側になって村を救ってもいいです。報酬は水と食料ですがこの時代には貴重な物です。「私が町長です」みたいなだましはないので、好きに村を救ってください。
夢ですから、うっかり一片の悔い無しとかしても大・丈・夫。
3.神林瑛莉で遊ぶ。泣きます。
4.速水結那と遊ぶ。喜びます。
なお、最終的に村が守れたかどうかは、モヒカン参加者と伝説の男or女参加者一人につき点数を加算し、それぞれどちらの点数が多かったかで決定します。モヒカン側は一人1点、伝説側は一人3点となります。
と見せかけて、多分ダイス振るか皆さんのプレイング見てその場のフィーリングで決めます。
では、良き世紀末ライフを。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
7日
7日
参加費
50LP
50LP
参加人数
26/30
26/30
公開日
2016年04月16日
2016年04月16日
■メイン参加者 26人■

●ヒャッハー!
(お好きな世紀末風ヒャッハーBGMをおかけください)
「おーっほっほっほっほ! さあ、略奪の限りを尽くすのよ!」
ついに暴徒たちによる村への侵攻が始まった!
暴徒たちのリーダー、エメレンツィア・フォン・フラウベルクの号令のもと、モヒカン肩パッドの暴徒たちがヒャッハー! とか叫びながらバイクに乗って暴れまくる!
その光景はまさに世紀末! 彼らの通った後にはぺんぺん草一本残らぬほどに略奪され尽くされるのだ!
「ぺんぺん草は薬効がある貴重な植物です。一本残らず回収です」
暴徒たちに指示を出すのは、エメレンツィアの従者であるクー・ルルーヴだ。なるほど、ぺんぺん草って意外と便利な草だったんだね!
「ヒャッハー! 食料と水をだすのー!」
野武 七雅が斧をブンブン振り回しながら、食料を奪い取る。七雅の髪型はもちろんモヒカンだ! その恥ずかしさのあまり斧を過剰に振り回しているのである! ご両親には本当に申し訳ない!
「汚物は消毒なのー! 斧で!」
斧で。
「ヒャッハー! そうだそうだ、汚物は消毒だァー! ホラホラ、これ凄いよ、ほんとに火が出る!」
肩パットの天城 聖も火炎放射器でヒャッハーを満喫していた。やっぱり人間一度くらいは火炎放射器にあこがれるよね。ちなみに、モヒカンはノーサンキューらしく、髪型は普通だ!
「あっ、天城さん、ちょっと火を貸してよ! そうそう、その辺の薪に。ドーナッツ作るから!」
と、聖の火炎放射器で薪に火をつけ、ドーナッツを揚げ始めたのはモヒカンヅラを装備した工藤・奏空だ! この時代にお菓子などのし好品はまさにぜいたく品! これを餌にモヒカン仲間を増やそうというのである! これにはどんな人間も釣られてしまうに違いない(伏線)! なんと狡猾な事か!
「うーん、ナイスな香り。出来上がったら一つ欲しいねヒャッハー!」
聖もうっとりな香りである。女子力の高いモヒカンであった。
「ボク様は世紀末の魔王だぜえ!! パラリラパラリラ! そこ退け轢くぞ!! 轢いても知らん!」
一方で、やたらノリノリでバイク(と言う名のやたら筋肉質な馬)に乗って走り回るのが、葉柳・白露だ!
「ヒャッハー! アレを寄越せー! 白くて粉状でとろんとした気分になるアレだよ!!」
うわぁ、ヤバイ、この人本当にヤバい事言ってる! すみません、コンプライアンス的にそれはアウトですよ!
「はい違いますー! 何想像してるんですか全然違いますー! SA TO U! 寄越せ!!」
言うや否や、民家の台所から砂糖を一袋かっぱらって来る白露! そして砂糖を手づかみで取り出すと、ザリザリと舐め始めた! 確かに世紀末の世、多分砂糖も貴重品である! おお、なんと恐ろしい暴挙か!
「砂糖もあるんだね! よーし、略奪だー! ルーティング&クッキング!」
「ヒャッハー! 砂糖をくれなきゃ略奪するのー!! そろそろ斧の振りすぎで腕が痛いからはやくするのー!」
「ヒャッハー! ドーナッツが出来上がったらドーナッツの上についてる砂糖だけザリザリさせろ! 後酒も持ってこーい!」
「ヒャッハー! 火加減はどうかなー!」
おお、何たる世紀末の光景か! もはや人々は暴徒たちに黙って蹂躙されるだけなのか!?
「かんにん……かんにんしてぇな。それ持っていかれたら、ぶぶづけ出されへん……」
「ヒャッハー! うるせぇ! 米も俺達のモンだー!」
と、モヒカン雑魚にすがり付くのは光邑 研吾だ。ちなみに、モヒカン雑魚の足下では、光邑 リサがモヒカン雑魚の足にこっそりご飯粒をつけていたりした。
二人はこの村に住む夫婦である。モヒカン雑魚に目をつけられ、家まで押しかけらてしまった光邑家では、さっそくモヒカンによる略奪が行われていた!
「おい新入り! テメェ何後ろでこそこそしてんだ!?」
モヒカン雑魚に叱責され、びくり、と肩を震わせたのは、グレてモヒカン雑魚の仲間入りをしていた奥州 一悟である。
「あ、いや……ほら、オレ、新入りっすから……まず先輩たちの仕事ぶりを見てからにしようって言うか」
なぜか妙に焦り、光邑夫婦から姿を隠そうとする一悟。しかし、モヒカン雑魚はデリカシーが無いので、そういう微妙な態度に気付く事は出来ないのだ!
「うるせぇ! 新入りは当たって砕けろだコラ―! 前に前に出てい行けコラー!」
突き飛ばされ、夫婦の前に飛び出る一悟。光邑夫婦と、一悟の視線が交差する。と、次の瞬間、おどおどしていた研吾が、突如激怒して怒鳴り始めた!
「なんや、一悟! そのダサい髪型は! 女の子にモテへんで!」
「や、やっぱり爺ちゃん!」
情けない声を上げる一悟! そう、彼は光邑夫婦の孫であったのだ! 家を飛び出して数年、まさかこんな所で再会するとは! まさに運命のいたずら!
「イチゴ……イチゴ……せめてモヒカンの色は赤にしてチョウダイ……レインボーはないワ。ダサすぎヨ……」
「う、うぅ……爺ちゃん……リサさん……ごめんよぉ……」
世紀末の空に、悲しき家族の声がこだまする……。
さて、この暴挙に村の人間も黙っていることは出来なかった。未だ伝説の男とか女は現れなかったが、抵抗しなければ一方的に蹂躙されるのみである。
そんなわけで、よせばいいのに神林瑛莉が出撃するのだ!
そんな瑛莉のもとに、一人の少女が現れた。
「何でこんな世界に……まぁ、また夢だよね。とにかく、友達が困ってるなら手を貸すよ」
と、爽やかに言うのは鐡之蔵 禊だ。彼女の言葉に、瑛莉は「悪いな、助かるよ」と早速1デレを披露した後、握手を求めて手を差し出した。禊はそんな瑛莉の手を取り、
「大丈夫! 捕まるときは一緒だよ!」
「……あ、ああ、別に捕まる予定はねぇけど、とにかく頼むぜ!」
そして、二人の戦いが幕を開けた――!
~数分後~
「くっ……殺せ!」
「いや、まさか本当に捕まるとは思わ……ううん、ゴメン、正直また捕まると思ってた。後なんか即落ち2コマ漫画みたいだよ、神林……」
ごめんなさい。
そんなわけで、二人はものの見事に捕まったのである! 瑛莉を囲むように、奏空と環 大和をはじめとするモヒカンたちがマイムマイムを踊っていた。なぜマイムマイムなのかはよくわからないが、どうもこの曲、歌詞が『ヒャッハー! 水だ!』みたいな内容らしいので、ある意味世紀末ソングとしては丁度いいのかもしれなかった。ヒャッハー! 神林だ!
「おーっほっほっほ! 馬鹿な子ねぇ、カンバヤシ・エリ! そしてテツノクラ・ミソギ! これから存分にあなた達で遊ばせてもらうわ? ……クー!」
パチン、とエメレンツィアが指を鳴らすと、クーが何やら服を一式持ってくる。ばさぁっ、とそれを広げると、おお、なんと! それはフリル満載のロリータ服だ!
「貴女にはこれを着てもらうわ!」
「うわーッ! やめろーッ! 絶対似合わないからそういうの!!」
顔を真っ青にして本気で嫌がる瑛莉。
「あっ、結構可愛いかも……」
対照的に、割とかわいい物に興味があるのが禊だった。
「うん、着てみなよ神林! 結構かわいいと思うよ?」
と言うか、敵に回った。何やら酷いことをされるなら身を挺して助けようと思った禊ではあったが、これ位ならまぁ。と言うか、やっぱり着せ替えさせるのって女の子的に楽しいし? 可愛い物は大好きな禊である。
「観念しなさい、抵抗は無意味です。ちなみに私達の可愛い服は108着はあります。メイド服もいいですね。一緒に従者となりましょう」
「やっ、やめ、ちょ、マジ、お前ら……ウワーーッ!!」
●ヒャッハー!
(お好きな世紀末風救世主的BGMをおかけください)
ああ、このまま村は蹂躙されてしまうのだろうか! この世紀末の世に神は死んだのか!
神は死んだかもしれない! だが、伝説は生きている! 伝説の男たちは、確実に世に存在していた!
「先に言っとくが、こんなかで一番見た目凶悪なのは俺だぜ」
と、すごんでみせるのは伝説の男、田場 義高だ! 獲物である斧、ギュスターブを構え、モヒカン雑魚を挑発する。
彼は、先日より村に世話になっており、今回は一宿一飯の恩義を返すために参戦したのだ!
「ヒャッハー! 血祭りだー!」
奇声をあげ襲い掛かるモヒカン雑魚たち! だが、義高はにやりと笑うと、次々とモヒカン雑魚たちを返り討ちにしていった!
「アビャァァアー!」
「キュスターァア!」
モヒカン雑魚たちが次々爆散していく!
「かかってきな! ギュスターブのさび位にしてはてやるぜ!」
モヒカン雑魚の群れに飛び込む義高! 次々と気勢を上げながら、モヒカン雑魚たちは爆散していった!
「ナニコレ、どういうカオスなの? もうよく分かんない」
困惑しつつ呟くのは伝説の男……女……? まぁ、兎に角伝説の緋神 悠奈だ!
その困惑はよくわかります。そういう時は素直にはっちゃけるといいと思いますよ。
「ならもう思考放棄してもいいよな! もう考えるのはめんどくせぇ!!」
そう、それでいいんだよ。
「ヒャッハー!」
そんな悠奈に、雑魚モヒカン達がヒャッハりながら襲い掛かる! 悠奈は辞書を持っていて両手が使えないので足技で迎撃する! 百裂脚だ!
「おぁたたたたたたたたた……おぁたぁ! ……貴様は既にヤられている」
「オブリッ!」
「ゲイリッ!」
悲鳴を上げながらモヒカン雑魚たちが爆散していく! ちなみに、百裂脚とは言う物の、50回くらいしか蹴っていないらしい(本人申告)。
「もうあとはダメだって、マジ疲れたから許して……!」
そして、そんな彼女へ村人たちが水を持っていくのだった。
さて、そんな光景を高所より眺める、あるモヒカン集団の姿があった。
「ヒャッハーッ! 種籾なのです! ……言ってみたかっただけなのです」
その中の一人、車いすの少女、橡・槐が言った。
「所でリーダー、さっき爆散した人、貴方の右腕だった気がするのです」
と、集団のリーダーである紅月・まうるに尋ねるが、
「わたしの右腕? ここにあるけど?」
彼女は自らの右腕を指さしながら、さらっと答えた! 酷い!
「なるほど、確かにその通りなのです」
しかし、槐もさらりとドライに答えた。
彼女は勢いとノリでモヒカン側に属してはいたものの、略奪などに加担するつもりは一切なく、むしろモヒカン雑魚共が討ち死にしていくさまを眺めて楽しもうとしている口であった。
「いいぞ、野郎ども、もっとやるのです……あ、また爆発したのです。汚い花火なのです」
酷い。
「てめぇら! なに可愛い女の子いじめてんだ! ゴラァ!」
と、暴徒たちを爆散させるのが坂上・恭弥だ!
ん? 今可愛い女の子って言った?
「瑛莉嬢ちゃん、女の子には辛いよなぁ……分かるぜ! 今助ける!」
確かに、瑛莉は今や乙女チックな衣装を着ている。可愛い女の子と言われればまさにその通り! イラスト出来たばっかりなのに新BU作らないといけないか!?
「え? 可愛い女の子ってオレのこと!? 違、ちょっとまて、この格好は色々あってだな!?」
「おう! 分かってる。瑛莉嬢ちゃんは可愛いぜ! 心配すんな。この俺が必ず助けてやる!」
言うや否や、再びモヒカン達へ襲い掛かった! 恭弥はモヒカン達を容赦なく爆散する!
「ねぇ、聞いて!? オレの話!」
「ああ、ちゃんと聞いてるぜ、か弱く繊細な女性が助けを呼ぶ声をな! 絶対に守ってやるからな……俺の命に代えても!」
「ウワーッ! ヤメローっ! ほんとウワーーッ!!!」
羞恥で顔を真っ赤にして、地面に蹲りながら足をバタバタとさせる瑛莉!
「そうだな、嬢ちゃんみたいな繊細な女の子にはきつい光景だよな……すまねぇ、ちょっとそうやって目を閉じててくれ! すぐに終わらせるからな……!」
「グワーーーーーッ!!!」
無自覚に、瑛莉に対して尋常でないダメージを与え続ける恭弥であった!
「えっと……神林さん、助けに……」
と、瑛莉を助けに来た明石 ミュエルだったが、その異様な光景に些か気後れしていた。
何せ、顔を真っ赤にして足をバタバタさせるやたらかわいい服を着た瑛莉の周囲を、大和や奏空をはじめとするモヒカンたちがマイムマイムしているのである。うん、なんだろうこれ。
「えっと、助け……要る……よね?」
「明石か! 要るよ! 超いるよ!」
「でも……ちょっと、楽しそう、だし……」
「楽しくねぇよ! 恥ずかしいよ! 助けてくれ!」
思わず泣き出しそうな感じの瑛莉を見、流石にこれは助けなければ、と意を決するミュエルだったが、
「まぁまぁ、まってよ明石さん。今俺達に協力してくれれば、これを上げちゃうよ?」
と、ひと際悪い顔で、ミュエルに何かを差し出す奏空。
「これは……この世界では希少な、チョコレートドーナツ……?」
「そう、そして今ならこういったお菓子もつけるわ。どうかしら」
と、淡々と勧誘する大和。そして、差し出されたお菓子を見て、考え込む様子のミュエル。
「まて……まって? 明石、その、オレ達、友達だよな……?」
すがるような目でミュエルを見る瑛莉だったが、
「ヒャ、ヒャッハー……神林さん、あの、こっちの服も……似合う、かな……って」
「味方が! 居ないッ!!」
頭を抱えながら、半泣きで叫ぶ瑛莉の周りを、ミュエルを加えたモヒカン軍団がマイムマイムする!
「ふふ……偶にはこういうのも楽しいわね」
と、呟く大和。なんか楽しげだからいいのかもしれない。
「あらあら、奏空くん、たのしそうねぇ?」
にこやかな笑顔でのんびりとした口調、しかし声色には絶対零度の冷たさを湛えながら、奏空に迫るのは、伝説の女教師、向日葵 御菓子だ!
「うえぇっ、せ、先生!!」
「それに他の生徒の皆も……ふふっ…何してるのかなぁ~? 人様に迷惑をかけるだなんて……許されるとでも思っているのかなぁ? そんなこと、先生は教えてないぞぉ~♪」
愛らしい笑顔――その瞳は笑っていない。その声に温かさはない。恐らく、今日この場に存在するすべての人間よりも恐ろしい――あ、はい、何でもないです、先生!
「どうやら今後、悪い考えがおきないように、効果的な授業(ちょうきょう)が必要そうね?」
にっこりと、天使のような笑顔で、先生はそういうのです。
それから起きた事は、筆舌に尽くしがたいものだった。
なんというか、こう……生きててよかったね、と言うか……。
ああ、先生、そんな……気絶した生徒を回復させて起こした後また気絶するまで……! むごい……!
「むごくなんてありません、愛ある教育的指導です」
すみません!
最終的に、全生徒がぼこぼこにされ……あ、いや、愛の授業をうけた後、もうしません、と誓約させられたのだった。
「うん♪ 分かってくれて嬉しいわ。先生はそんなみんなが大好きだよ」
はい、先生、もうしません。
一方、運命のいたずらにより、引き裂かれた者たちも存在する。
「何故そちらで暴れているのでござるかエヌ殿!」
伝説の男である神祈 天光は、モヒカン一味の一人となったエヌ・ノウ・ネイムと対峙していた。
「……おや、神祈君ではありませんか。まあ、君は其方に立つでしょうねぇ」
嘲る様に答えるエヌ。天光は、ぎり、と奥歯を噛みしめ、
「覚者としての正義をどこまで捨て……いや、本物の外道に堕ちたでござるか!」
「僕は僕の欲のままに世を歩むまで。君の正義など無関係です」
そう、この狂った世界にもはや規範となる正義も秩序もない。
この世界で絶対的な物はただ一つ、暴力。
それが欲望を満たすための物であろうと、守るための物であろうと、根本にあるものは同じ。
なれば、この狂った世において、必要なのは言葉にあらず。
ただ己が力を以て、世に己が信を布くのみ――!
「なら、拙者は拙者の正義を通すのみでござるよ」
天光が刀を構える。エヌはそれを、ある種の喜びを持って迎えた。
「好いでしょう、僕としても君の声を、僕の手で、是非拝聴してみたいと思っていたのですよ」
エヌの言葉に応えるように、雷雲が立ち込め、雷がとどろく。
「――いざ、尋常に」
「――さあ、生も根も尽き果てるまで共に踊りましょうかッ!」
同時に。
二人の男が、駆け出した。
刀による近接戦闘が得手である天光に対して、遠距離主体のエヌでは、近距離では分が悪い。だが、エヌは敢えて飛び込んだ。エヌを迎撃するようにきらめく天光の神速の刃は、しかしエヌを捕らえる事が出来ない。
「は――やはり! この期に及びまだ峰打ちで――殺さずに済ませようとしている! 神祈君! その甘さは命取りとなる!」
言うや、エヌは呼び出した雷雲より雷轟を撃ち放つ。文字通り光速で迫る雷撃を、天光はギリギリで回避しきった。
「これは拙者の正義――魂でござる。これを捨てれば、拙者は拙者で無くなるでござるよ!」
再び天光はエヌへと肉薄する。打ち下ろされたカタナを、エヌは手にした杖で受ける。
「正義……魂……あっは! なんと愚か極まりない!」
「魂なき力を振るえば、その身を冥府魔道に落とすだけでござる!」
「望むところですよ! 神祈ィ君ッ!」
「エヌ殿ォッ!」
……あ、すみません、これ、一応コメディシナリオなので、この辺で……。
「夢と理解は出来るが……何だここは?」
天明 両慈は困惑しながら言った。周囲では車いすの少女がモヒカンと共に爆走したり、教師が生徒を教育していたり、マジバトルしてたり……うん、予想以上に混沌っぷりが加速している。
「あれ、えと、天明さん、やったよね?」
と、そんな両慈に話しかけてきたのは速水 結那だ。スケッチブックを片手にとてとてと走り寄ってくると、突然、足元の石に躓いてしまう。
「おっと、だ、大丈夫か?」
慌てて抱きとめる両慈。
「あ、ありがと……あ、あの、その、手が……」
と、顔を赤らめながら結那が言う。両慈は彼女の控えめな胸の感触を腕に感じ、慌てて手を放す。
「す、すまん……!」
そう、両慈は無自覚ではあったが、伝説の男の一人である。彼は忍法ラッキースケベの術の無自覚伝承者であり、つまりこれも無自覚なラッキースケベだ! 無自覚なので汝に罪なし。
「ご、ゴホン……それはそうと、しばらくぶりだな……元気だったか?」
気恥ずかしさを隠すように、世間話を振る両慈である。
「うん。あの時はありがとなぁ。ホントは皆にもちゃんとTOPでお礼とかしたかったんよ。でも、ちょっと色々あって……ごめんなぁ」
ごめんなさい。
「そうか……む? 伏せろ、速水!」
叫ぶや否や、両慈は結那を押し倒した! 間髪入れず、数発の銃弾が、周囲に着弾する!
「は、はわわ……」
思わずはわわする結那。銃撃にも驚いたが、いきなり押し倒されてラッキースケベで胸をわしづかみにされているのにも驚いている! これも無自覚なので汝に罪なし。ところで、ここで『え、ええよ……天明さんになら……』とか言わせた方が(人の恋路を複雑にできて)よかったかなぁ?
とにかく、立ち上がった二人の前に、一人の少女が立ちはだかる。
「フフ、力こそ正義! 良い時代になったモノデス。強い者は心置きなく好きなものを手に入れラレル……フフフ」
そう、彼女は両慈に恋する乙女、リーネ・ブルツェンスカだ!
「り、リーネか……? どうしたんだいきなり……」
尋ねる両慈に、リーネは、
「フフ……アレは今から数分前の事デス……」
~ここから回想~
「う、うぅ……! 両慈が違う女の子ト……しかもあんなに楽しそうニ……!」
崖の上、思わず歯噛みをするリーネ。視線の先には、親しげに会話をする、両慈と結那の姿があった。明らかに良い雰囲気……嫉妬にさいなまれるリーネの目には、もうカップル成立一歩手前なんじゃない? みたいな感じに映っていた。
「ふふ……どうしたのかな?」
そんなリーネに近づくのは、近衛 康一郎だ。普段の格好とは違い、あからさまに怪しげな仮面をかぶっている。
「……なるほど、愛しの彼が振り向いてくれないのかい。ならば、力で奪い取ってはどうかな」
「そ、そんなコト……!」
康一郎の提案を、拒絶するリーネ。しかし、悪魔は彼女の心の隙間に入り込んでくる。
「君もあの男の優しさは知っているだろう……このままだと彼の優しさにあの女の子が惚れてしまう、そして彼女の猛アピールに彼は奪われる、それでも良いのかい?」
「う……うう……」
「そうだ、彼を幸せに出来るのは君だけだ、彼の魅力に一番先に気付いたのは君じゃないか、何を迷う事がある? さぁ奪い取れ!」
「そ……そう……! 私の方が両慈の事ヲ……!」
「……今は悪魔が微笑む時代なんだ……!」
~ここまで回想~
「と言うわけで両慈! 私を愛シテルと、言うのデス!」
「そうか……何を言っているんだお前は……」
思わず頭を抱える両慈であったが、正気を失っているとはいえリーネはあくまで本気だ! このままでは結那に被害が及ぶのは間違いあるまい。両慈は片手で結那に下がるように指示――この時ちょっと結那の胸に手が触れてラッキースケベが発動したが、結那も空気を読んで報告しなかった――すると、
「さがっていてくれ、速水。あいつは俺が止める」
「う、うん……天明さんも、気つけてぇな……?」
「ソコノ女の子ニハ渡しマセン……両慈! 力で貴方の愛を頂キマス!」
そして、2人が対峙する。
愛ゆえに、人は戦わねばならぬのか!
愛ゆえに、人は傷つかねばならぬのか!
そう、そしてあまりにも悲しい戦いの幕が、
「ヒャッハー!! パンツ寄越せなのー!」
あまりにも場違いな酷い叫びをあげながら乱入してきたのは、瀬織津・鈴鹿だ! 彼女こそ、パンティ脱がすの術を継承せし伝説の(幼)女! どうも報酬にパンツを要求した所普通に断られたので、無差別にパンツを脱がすことにしたらしい。犯罪ですよ!
「そこの2人! いや、3人! なんでもいいからパンツを寄越すの! そして売るの!」
え、男のパンツも取るんですか?
「好事家はどこにでもいるの!」
なるほど。
そして、あまりにも唐突過ぎる、あんまりと言えばあんまりな登場に、流石の両慈とリーネもあっけに取られて反応できない! そして、鈴鹿にとっては、それは十分すぎる隙!
「ヒャッハー! 戴いていくのー! ノーパン最高なのー!」
目にもとまらぬ早業、とはまさにこのこと。電撃の如き動きで3人のパンツを掠め取った鈴鹿は、現れた時と同様にまた酷い叫びをあげながら次の獲物を探して去っていく!
そして、鈴鹿の動きと共に、一陣の風があたりを吹き抜けるわけで――。
そうなると、結那とリーネ、2人のスカートがちょっとめくれてしまうわけで――。
2人、いまノーパンなわけで――。
『き、きゃああっ!!』
2人は悲鳴を上げながら、慌ててスカートを押さえた! 結那はもちろん、あまりの衝撃に正気に戻ったリーネの顔も真っ赤である!
「リョ、両慈……見タ?」
上目遣いで尋ねるリーネ。そりゃあ見ただろう。だって忍法ラッキースケベの術の無自覚伝承者なのだから。しかし、両慈はその問いに答える事はなった。
「て、天明さん!?」
「両慈!?」
彼は、立ったまま気絶していたのである。ああ、流石にちょっと許容限界だったポイですね……。
さて。
「お止めなさい!」
と颯爽と現れたのは、秋津洲 いのりである。
彼女はばさぁっ、と体を覆うマントを脱ぎ捨てた! そう、彼女こそ、紅の女王を纏った伝説の大魔法使い、マジカルイノリン! 中々きわどいコスチュームである! ちょっと恥じらう姿がとてもいいぞ!
「あ、秋津洲か……お前は……オレの味方か……?」
色々あってすっかり憔悴しきった瑛莉が尋ねる。いのりはにっこりと微笑むと、
「当然ですわ。まったく、瑛莉様には殺されたり拉致られたりすると困るので下がっていてもらおうと思いましたのに。まぁ、そこが瑛莉様らしいと言えば瑛莉様らしいのですが――いえ、特に他意はありませんのよ。だからそんなに泣かなくても良いですわ♪」
「ごふっ」
無自覚な――いや、いのりにとっては善意の塊なのだが、瑛莉にとっては下手なナイフより突き刺さった様である。だばだばと涙を流しながら、瑛莉はついに折れた。
ともあれ。
「さぁ、行きますわよ、ヒャッハーたち! 汚物は消毒ですわ!」
そう叫ぶと、いのりは大魔法メテオストライクを発動した! 雨あられと降り注ぐ隕石群が、モヒカンどもを殲滅、粉砕、木っ端微塵にする……のは良いんだけど、あの、村とか、陣営関わらず降り注いでるんですけど、その……。
うん、収集がつかなくなったら爆破オチ。基本だよね。
それでは皆様、また次回の獏依頼でお会いする日まで、さような――――。
●ヒャッハー!
さて、結論から言うと、今回の騒動は双方痛み分けとなった。
モヒカンたちはその戦力を大きく削られ速やかに逃走したし、村は村で大きくない損害を被った。ついでに神林瑛莉の心にも割と消えない傷が残った気もするが、まぁ、いつもの事だし、皆楽しそうだったからいいかな、って。
さて、そんな狂乱も夢の後、人々が消え去った村の入り口に、ひょっこりと顔を出す一人の女性。
あの騒乱の中何をしていたのか、華神 刹那である。
彼女はきょろきょろとあたりを見まわして誰もいない事を確認すると、ふぅ、と一息つきながら、背負った荷物を降ろし、中身の広げた。
なんと、中には彼女一人が数日は食いつなげるであろう量の食料が!
「ひゃっはー、などと大騒ぎしてくれて、此方は実にやりやすかったぞ」
ちょっと悪そうな顔で刹那が呟く。
そう、彼女は今回の騒動に対して、暴徒側と村側、どちらに対しても関与していなかった。彼女は今回の騒ぎに乗じ、こっそりと村中の食料をくすねとる事にしたのである。しかも、逃げやすいようにあえて数日分と言う少量の食料を、だ。結果は言うまでもないだろう。本人曰く、『同士討ち? 抜け駆け? いやいや、拙はひとりものよ』。かしこい。
「むっ」
刹那が人の気配を察してふり返ると、そこには荷物を背負いながら、こそこそと村の入り口へとやってきたまうるが居た。ちなみに、先ほどまでは葉巻を咥えていたが、今は葉っぱを咥えている
「ん?」
まうるも前方の刹那に気付き、歩みを止めた。
数秒、見つめ合う。
そして、お互い、同時に、相手が自身と同じ穴の狢である事を察した。
まうるはさもモヒカンの一味のような顔をしていたが、実は最初から適当な所で裏切り、暴徒たちから食料をくすねとろうとしていたのである。
二人は共にお互いの利益を害する存在ではないという事、そしてある種最終的に勝利した事を確信すると、にやり、と笑った。
「分かりやすく、生き易い世であるな。メシなぞ、食った者勝ちよ」
「そう。象を倒せばいいんじゃない。最終的に象の肉を食べられればいいんだ」
二人は頷くと、意気揚々と世紀末砂漠へと消えていったのだった。
(お好きな世紀末風ヒャッハーBGMをおかけください)
「おーっほっほっほっほ! さあ、略奪の限りを尽くすのよ!」
ついに暴徒たちによる村への侵攻が始まった!
暴徒たちのリーダー、エメレンツィア・フォン・フラウベルクの号令のもと、モヒカン肩パッドの暴徒たちがヒャッハー! とか叫びながらバイクに乗って暴れまくる!
その光景はまさに世紀末! 彼らの通った後にはぺんぺん草一本残らぬほどに略奪され尽くされるのだ!
「ぺんぺん草は薬効がある貴重な植物です。一本残らず回収です」
暴徒たちに指示を出すのは、エメレンツィアの従者であるクー・ルルーヴだ。なるほど、ぺんぺん草って意外と便利な草だったんだね!
「ヒャッハー! 食料と水をだすのー!」
野武 七雅が斧をブンブン振り回しながら、食料を奪い取る。七雅の髪型はもちろんモヒカンだ! その恥ずかしさのあまり斧を過剰に振り回しているのである! ご両親には本当に申し訳ない!
「汚物は消毒なのー! 斧で!」
斧で。
「ヒャッハー! そうだそうだ、汚物は消毒だァー! ホラホラ、これ凄いよ、ほんとに火が出る!」
肩パットの天城 聖も火炎放射器でヒャッハーを満喫していた。やっぱり人間一度くらいは火炎放射器にあこがれるよね。ちなみに、モヒカンはノーサンキューらしく、髪型は普通だ!
「あっ、天城さん、ちょっと火を貸してよ! そうそう、その辺の薪に。ドーナッツ作るから!」
と、聖の火炎放射器で薪に火をつけ、ドーナッツを揚げ始めたのはモヒカンヅラを装備した工藤・奏空だ! この時代にお菓子などのし好品はまさにぜいたく品! これを餌にモヒカン仲間を増やそうというのである! これにはどんな人間も釣られてしまうに違いない(伏線)! なんと狡猾な事か!
「うーん、ナイスな香り。出来上がったら一つ欲しいねヒャッハー!」
聖もうっとりな香りである。女子力の高いモヒカンであった。
「ボク様は世紀末の魔王だぜえ!! パラリラパラリラ! そこ退け轢くぞ!! 轢いても知らん!」
一方で、やたらノリノリでバイク(と言う名のやたら筋肉質な馬)に乗って走り回るのが、葉柳・白露だ!
「ヒャッハー! アレを寄越せー! 白くて粉状でとろんとした気分になるアレだよ!!」
うわぁ、ヤバイ、この人本当にヤバい事言ってる! すみません、コンプライアンス的にそれはアウトですよ!
「はい違いますー! 何想像してるんですか全然違いますー! SA TO U! 寄越せ!!」
言うや否や、民家の台所から砂糖を一袋かっぱらって来る白露! そして砂糖を手づかみで取り出すと、ザリザリと舐め始めた! 確かに世紀末の世、多分砂糖も貴重品である! おお、なんと恐ろしい暴挙か!
「砂糖もあるんだね! よーし、略奪だー! ルーティング&クッキング!」
「ヒャッハー! 砂糖をくれなきゃ略奪するのー!! そろそろ斧の振りすぎで腕が痛いからはやくするのー!」
「ヒャッハー! ドーナッツが出来上がったらドーナッツの上についてる砂糖だけザリザリさせろ! 後酒も持ってこーい!」
「ヒャッハー! 火加減はどうかなー!」
おお、何たる世紀末の光景か! もはや人々は暴徒たちに黙って蹂躙されるだけなのか!?
「かんにん……かんにんしてぇな。それ持っていかれたら、ぶぶづけ出されへん……」
「ヒャッハー! うるせぇ! 米も俺達のモンだー!」
と、モヒカン雑魚にすがり付くのは光邑 研吾だ。ちなみに、モヒカン雑魚の足下では、光邑 リサがモヒカン雑魚の足にこっそりご飯粒をつけていたりした。
二人はこの村に住む夫婦である。モヒカン雑魚に目をつけられ、家まで押しかけらてしまった光邑家では、さっそくモヒカンによる略奪が行われていた!
「おい新入り! テメェ何後ろでこそこそしてんだ!?」
モヒカン雑魚に叱責され、びくり、と肩を震わせたのは、グレてモヒカン雑魚の仲間入りをしていた奥州 一悟である。
「あ、いや……ほら、オレ、新入りっすから……まず先輩たちの仕事ぶりを見てからにしようって言うか」
なぜか妙に焦り、光邑夫婦から姿を隠そうとする一悟。しかし、モヒカン雑魚はデリカシーが無いので、そういう微妙な態度に気付く事は出来ないのだ!
「うるせぇ! 新入りは当たって砕けろだコラ―! 前に前に出てい行けコラー!」
突き飛ばされ、夫婦の前に飛び出る一悟。光邑夫婦と、一悟の視線が交差する。と、次の瞬間、おどおどしていた研吾が、突如激怒して怒鳴り始めた!
「なんや、一悟! そのダサい髪型は! 女の子にモテへんで!」
「や、やっぱり爺ちゃん!」
情けない声を上げる一悟! そう、彼は光邑夫婦の孫であったのだ! 家を飛び出して数年、まさかこんな所で再会するとは! まさに運命のいたずら!
「イチゴ……イチゴ……せめてモヒカンの色は赤にしてチョウダイ……レインボーはないワ。ダサすぎヨ……」
「う、うぅ……爺ちゃん……リサさん……ごめんよぉ……」
世紀末の空に、悲しき家族の声がこだまする……。
さて、この暴挙に村の人間も黙っていることは出来なかった。未だ伝説の男とか女は現れなかったが、抵抗しなければ一方的に蹂躙されるのみである。
そんなわけで、よせばいいのに神林瑛莉が出撃するのだ!
そんな瑛莉のもとに、一人の少女が現れた。
「何でこんな世界に……まぁ、また夢だよね。とにかく、友達が困ってるなら手を貸すよ」
と、爽やかに言うのは鐡之蔵 禊だ。彼女の言葉に、瑛莉は「悪いな、助かるよ」と早速1デレを披露した後、握手を求めて手を差し出した。禊はそんな瑛莉の手を取り、
「大丈夫! 捕まるときは一緒だよ!」
「……あ、ああ、別に捕まる予定はねぇけど、とにかく頼むぜ!」
そして、二人の戦いが幕を開けた――!
~数分後~
「くっ……殺せ!」
「いや、まさか本当に捕まるとは思わ……ううん、ゴメン、正直また捕まると思ってた。後なんか即落ち2コマ漫画みたいだよ、神林……」
ごめんなさい。
そんなわけで、二人はものの見事に捕まったのである! 瑛莉を囲むように、奏空と環 大和をはじめとするモヒカンたちがマイムマイムを踊っていた。なぜマイムマイムなのかはよくわからないが、どうもこの曲、歌詞が『ヒャッハー! 水だ!』みたいな内容らしいので、ある意味世紀末ソングとしては丁度いいのかもしれなかった。ヒャッハー! 神林だ!
「おーっほっほっほ! 馬鹿な子ねぇ、カンバヤシ・エリ! そしてテツノクラ・ミソギ! これから存分にあなた達で遊ばせてもらうわ? ……クー!」
パチン、とエメレンツィアが指を鳴らすと、クーが何やら服を一式持ってくる。ばさぁっ、とそれを広げると、おお、なんと! それはフリル満載のロリータ服だ!
「貴女にはこれを着てもらうわ!」
「うわーッ! やめろーッ! 絶対似合わないからそういうの!!」
顔を真っ青にして本気で嫌がる瑛莉。
「あっ、結構可愛いかも……」
対照的に、割とかわいい物に興味があるのが禊だった。
「うん、着てみなよ神林! 結構かわいいと思うよ?」
と言うか、敵に回った。何やら酷いことをされるなら身を挺して助けようと思った禊ではあったが、これ位ならまぁ。と言うか、やっぱり着せ替えさせるのって女の子的に楽しいし? 可愛い物は大好きな禊である。
「観念しなさい、抵抗は無意味です。ちなみに私達の可愛い服は108着はあります。メイド服もいいですね。一緒に従者となりましょう」
「やっ、やめ、ちょ、マジ、お前ら……ウワーーッ!!」
●ヒャッハー!
(お好きな世紀末風救世主的BGMをおかけください)
ああ、このまま村は蹂躙されてしまうのだろうか! この世紀末の世に神は死んだのか!
神は死んだかもしれない! だが、伝説は生きている! 伝説の男たちは、確実に世に存在していた!
「先に言っとくが、こんなかで一番見た目凶悪なのは俺だぜ」
と、すごんでみせるのは伝説の男、田場 義高だ! 獲物である斧、ギュスターブを構え、モヒカン雑魚を挑発する。
彼は、先日より村に世話になっており、今回は一宿一飯の恩義を返すために参戦したのだ!
「ヒャッハー! 血祭りだー!」
奇声をあげ襲い掛かるモヒカン雑魚たち! だが、義高はにやりと笑うと、次々とモヒカン雑魚たちを返り討ちにしていった!
「アビャァァアー!」
「キュスターァア!」
モヒカン雑魚たちが次々爆散していく!
「かかってきな! ギュスターブのさび位にしてはてやるぜ!」
モヒカン雑魚の群れに飛び込む義高! 次々と気勢を上げながら、モヒカン雑魚たちは爆散していった!
「ナニコレ、どういうカオスなの? もうよく分かんない」
困惑しつつ呟くのは伝説の男……女……? まぁ、兎に角伝説の緋神 悠奈だ!
その困惑はよくわかります。そういう時は素直にはっちゃけるといいと思いますよ。
「ならもう思考放棄してもいいよな! もう考えるのはめんどくせぇ!!」
そう、それでいいんだよ。
「ヒャッハー!」
そんな悠奈に、雑魚モヒカン達がヒャッハりながら襲い掛かる! 悠奈は辞書を持っていて両手が使えないので足技で迎撃する! 百裂脚だ!
「おぁたたたたたたたたた……おぁたぁ! ……貴様は既にヤられている」
「オブリッ!」
「ゲイリッ!」
悲鳴を上げながらモヒカン雑魚たちが爆散していく! ちなみに、百裂脚とは言う物の、50回くらいしか蹴っていないらしい(本人申告)。
「もうあとはダメだって、マジ疲れたから許して……!」
そして、そんな彼女へ村人たちが水を持っていくのだった。
さて、そんな光景を高所より眺める、あるモヒカン集団の姿があった。
「ヒャッハーッ! 種籾なのです! ……言ってみたかっただけなのです」
その中の一人、車いすの少女、橡・槐が言った。
「所でリーダー、さっき爆散した人、貴方の右腕だった気がするのです」
と、集団のリーダーである紅月・まうるに尋ねるが、
「わたしの右腕? ここにあるけど?」
彼女は自らの右腕を指さしながら、さらっと答えた! 酷い!
「なるほど、確かにその通りなのです」
しかし、槐もさらりとドライに答えた。
彼女は勢いとノリでモヒカン側に属してはいたものの、略奪などに加担するつもりは一切なく、むしろモヒカン雑魚共が討ち死にしていくさまを眺めて楽しもうとしている口であった。
「いいぞ、野郎ども、もっとやるのです……あ、また爆発したのです。汚い花火なのです」
酷い。
「てめぇら! なに可愛い女の子いじめてんだ! ゴラァ!」
と、暴徒たちを爆散させるのが坂上・恭弥だ!
ん? 今可愛い女の子って言った?
「瑛莉嬢ちゃん、女の子には辛いよなぁ……分かるぜ! 今助ける!」
確かに、瑛莉は今や乙女チックな衣装を着ている。可愛い女の子と言われればまさにその通り! イラスト出来たばっかりなのに新BU作らないといけないか!?
「え? 可愛い女の子ってオレのこと!? 違、ちょっとまて、この格好は色々あってだな!?」
「おう! 分かってる。瑛莉嬢ちゃんは可愛いぜ! 心配すんな。この俺が必ず助けてやる!」
言うや否や、再びモヒカン達へ襲い掛かった! 恭弥はモヒカン達を容赦なく爆散する!
「ねぇ、聞いて!? オレの話!」
「ああ、ちゃんと聞いてるぜ、か弱く繊細な女性が助けを呼ぶ声をな! 絶対に守ってやるからな……俺の命に代えても!」
「ウワーッ! ヤメローっ! ほんとウワーーッ!!!」
羞恥で顔を真っ赤にして、地面に蹲りながら足をバタバタとさせる瑛莉!
「そうだな、嬢ちゃんみたいな繊細な女の子にはきつい光景だよな……すまねぇ、ちょっとそうやって目を閉じててくれ! すぐに終わらせるからな……!」
「グワーーーーーッ!!!」
無自覚に、瑛莉に対して尋常でないダメージを与え続ける恭弥であった!
「えっと……神林さん、助けに……」
と、瑛莉を助けに来た明石 ミュエルだったが、その異様な光景に些か気後れしていた。
何せ、顔を真っ赤にして足をバタバタさせるやたらかわいい服を着た瑛莉の周囲を、大和や奏空をはじめとするモヒカンたちがマイムマイムしているのである。うん、なんだろうこれ。
「えっと、助け……要る……よね?」
「明石か! 要るよ! 超いるよ!」
「でも……ちょっと、楽しそう、だし……」
「楽しくねぇよ! 恥ずかしいよ! 助けてくれ!」
思わず泣き出しそうな感じの瑛莉を見、流石にこれは助けなければ、と意を決するミュエルだったが、
「まぁまぁ、まってよ明石さん。今俺達に協力してくれれば、これを上げちゃうよ?」
と、ひと際悪い顔で、ミュエルに何かを差し出す奏空。
「これは……この世界では希少な、チョコレートドーナツ……?」
「そう、そして今ならこういったお菓子もつけるわ。どうかしら」
と、淡々と勧誘する大和。そして、差し出されたお菓子を見て、考え込む様子のミュエル。
「まて……まって? 明石、その、オレ達、友達だよな……?」
すがるような目でミュエルを見る瑛莉だったが、
「ヒャ、ヒャッハー……神林さん、あの、こっちの服も……似合う、かな……って」
「味方が! 居ないッ!!」
頭を抱えながら、半泣きで叫ぶ瑛莉の周りを、ミュエルを加えたモヒカン軍団がマイムマイムする!
「ふふ……偶にはこういうのも楽しいわね」
と、呟く大和。なんか楽しげだからいいのかもしれない。
「あらあら、奏空くん、たのしそうねぇ?」
にこやかな笑顔でのんびりとした口調、しかし声色には絶対零度の冷たさを湛えながら、奏空に迫るのは、伝説の女教師、向日葵 御菓子だ!
「うえぇっ、せ、先生!!」
「それに他の生徒の皆も……ふふっ…何してるのかなぁ~? 人様に迷惑をかけるだなんて……許されるとでも思っているのかなぁ? そんなこと、先生は教えてないぞぉ~♪」
愛らしい笑顔――その瞳は笑っていない。その声に温かさはない。恐らく、今日この場に存在するすべての人間よりも恐ろしい――あ、はい、何でもないです、先生!
「どうやら今後、悪い考えがおきないように、効果的な授業(ちょうきょう)が必要そうね?」
にっこりと、天使のような笑顔で、先生はそういうのです。
それから起きた事は、筆舌に尽くしがたいものだった。
なんというか、こう……生きててよかったね、と言うか……。
ああ、先生、そんな……気絶した生徒を回復させて起こした後また気絶するまで……! むごい……!
「むごくなんてありません、愛ある教育的指導です」
すみません!
最終的に、全生徒がぼこぼこにされ……あ、いや、愛の授業をうけた後、もうしません、と誓約させられたのだった。
「うん♪ 分かってくれて嬉しいわ。先生はそんなみんなが大好きだよ」
はい、先生、もうしません。
一方、運命のいたずらにより、引き裂かれた者たちも存在する。
「何故そちらで暴れているのでござるかエヌ殿!」
伝説の男である神祈 天光は、モヒカン一味の一人となったエヌ・ノウ・ネイムと対峙していた。
「……おや、神祈君ではありませんか。まあ、君は其方に立つでしょうねぇ」
嘲る様に答えるエヌ。天光は、ぎり、と奥歯を噛みしめ、
「覚者としての正義をどこまで捨て……いや、本物の外道に堕ちたでござるか!」
「僕は僕の欲のままに世を歩むまで。君の正義など無関係です」
そう、この狂った世界にもはや規範となる正義も秩序もない。
この世界で絶対的な物はただ一つ、暴力。
それが欲望を満たすための物であろうと、守るための物であろうと、根本にあるものは同じ。
なれば、この狂った世において、必要なのは言葉にあらず。
ただ己が力を以て、世に己が信を布くのみ――!
「なら、拙者は拙者の正義を通すのみでござるよ」
天光が刀を構える。エヌはそれを、ある種の喜びを持って迎えた。
「好いでしょう、僕としても君の声を、僕の手で、是非拝聴してみたいと思っていたのですよ」
エヌの言葉に応えるように、雷雲が立ち込め、雷がとどろく。
「――いざ、尋常に」
「――さあ、生も根も尽き果てるまで共に踊りましょうかッ!」
同時に。
二人の男が、駆け出した。
刀による近接戦闘が得手である天光に対して、遠距離主体のエヌでは、近距離では分が悪い。だが、エヌは敢えて飛び込んだ。エヌを迎撃するようにきらめく天光の神速の刃は、しかしエヌを捕らえる事が出来ない。
「は――やはり! この期に及びまだ峰打ちで――殺さずに済ませようとしている! 神祈君! その甘さは命取りとなる!」
言うや、エヌは呼び出した雷雲より雷轟を撃ち放つ。文字通り光速で迫る雷撃を、天光はギリギリで回避しきった。
「これは拙者の正義――魂でござる。これを捨てれば、拙者は拙者で無くなるでござるよ!」
再び天光はエヌへと肉薄する。打ち下ろされたカタナを、エヌは手にした杖で受ける。
「正義……魂……あっは! なんと愚か極まりない!」
「魂なき力を振るえば、その身を冥府魔道に落とすだけでござる!」
「望むところですよ! 神祈ィ君ッ!」
「エヌ殿ォッ!」
……あ、すみません、これ、一応コメディシナリオなので、この辺で……。
「夢と理解は出来るが……何だここは?」
天明 両慈は困惑しながら言った。周囲では車いすの少女がモヒカンと共に爆走したり、教師が生徒を教育していたり、マジバトルしてたり……うん、予想以上に混沌っぷりが加速している。
「あれ、えと、天明さん、やったよね?」
と、そんな両慈に話しかけてきたのは速水 結那だ。スケッチブックを片手にとてとてと走り寄ってくると、突然、足元の石に躓いてしまう。
「おっと、だ、大丈夫か?」
慌てて抱きとめる両慈。
「あ、ありがと……あ、あの、その、手が……」
と、顔を赤らめながら結那が言う。両慈は彼女の控えめな胸の感触を腕に感じ、慌てて手を放す。
「す、すまん……!」
そう、両慈は無自覚ではあったが、伝説の男の一人である。彼は忍法ラッキースケベの術の無自覚伝承者であり、つまりこれも無自覚なラッキースケベだ! 無自覚なので汝に罪なし。
「ご、ゴホン……それはそうと、しばらくぶりだな……元気だったか?」
気恥ずかしさを隠すように、世間話を振る両慈である。
「うん。あの時はありがとなぁ。ホントは皆にもちゃんとTOPでお礼とかしたかったんよ。でも、ちょっと色々あって……ごめんなぁ」
ごめんなさい。
「そうか……む? 伏せろ、速水!」
叫ぶや否や、両慈は結那を押し倒した! 間髪入れず、数発の銃弾が、周囲に着弾する!
「は、はわわ……」
思わずはわわする結那。銃撃にも驚いたが、いきなり押し倒されてラッキースケベで胸をわしづかみにされているのにも驚いている! これも無自覚なので汝に罪なし。ところで、ここで『え、ええよ……天明さんになら……』とか言わせた方が(人の恋路を複雑にできて)よかったかなぁ?
とにかく、立ち上がった二人の前に、一人の少女が立ちはだかる。
「フフ、力こそ正義! 良い時代になったモノデス。強い者は心置きなく好きなものを手に入れラレル……フフフ」
そう、彼女は両慈に恋する乙女、リーネ・ブルツェンスカだ!
「り、リーネか……? どうしたんだいきなり……」
尋ねる両慈に、リーネは、
「フフ……アレは今から数分前の事デス……」
~ここから回想~
「う、うぅ……! 両慈が違う女の子ト……しかもあんなに楽しそうニ……!」
崖の上、思わず歯噛みをするリーネ。視線の先には、親しげに会話をする、両慈と結那の姿があった。明らかに良い雰囲気……嫉妬にさいなまれるリーネの目には、もうカップル成立一歩手前なんじゃない? みたいな感じに映っていた。
「ふふ……どうしたのかな?」
そんなリーネに近づくのは、近衛 康一郎だ。普段の格好とは違い、あからさまに怪しげな仮面をかぶっている。
「……なるほど、愛しの彼が振り向いてくれないのかい。ならば、力で奪い取ってはどうかな」
「そ、そんなコト……!」
康一郎の提案を、拒絶するリーネ。しかし、悪魔は彼女の心の隙間に入り込んでくる。
「君もあの男の優しさは知っているだろう……このままだと彼の優しさにあの女の子が惚れてしまう、そして彼女の猛アピールに彼は奪われる、それでも良いのかい?」
「う……うう……」
「そうだ、彼を幸せに出来るのは君だけだ、彼の魅力に一番先に気付いたのは君じゃないか、何を迷う事がある? さぁ奪い取れ!」
「そ……そう……! 私の方が両慈の事ヲ……!」
「……今は悪魔が微笑む時代なんだ……!」
~ここまで回想~
「と言うわけで両慈! 私を愛シテルと、言うのデス!」
「そうか……何を言っているんだお前は……」
思わず頭を抱える両慈であったが、正気を失っているとはいえリーネはあくまで本気だ! このままでは結那に被害が及ぶのは間違いあるまい。両慈は片手で結那に下がるように指示――この時ちょっと結那の胸に手が触れてラッキースケベが発動したが、結那も空気を読んで報告しなかった――すると、
「さがっていてくれ、速水。あいつは俺が止める」
「う、うん……天明さんも、気つけてぇな……?」
「ソコノ女の子ニハ渡しマセン……両慈! 力で貴方の愛を頂キマス!」
そして、2人が対峙する。
愛ゆえに、人は戦わねばならぬのか!
愛ゆえに、人は傷つかねばならぬのか!
そう、そしてあまりにも悲しい戦いの幕が、
「ヒャッハー!! パンツ寄越せなのー!」
あまりにも場違いな酷い叫びをあげながら乱入してきたのは、瀬織津・鈴鹿だ! 彼女こそ、パンティ脱がすの術を継承せし伝説の(幼)女! どうも報酬にパンツを要求した所普通に断られたので、無差別にパンツを脱がすことにしたらしい。犯罪ですよ!
「そこの2人! いや、3人! なんでもいいからパンツを寄越すの! そして売るの!」
え、男のパンツも取るんですか?
「好事家はどこにでもいるの!」
なるほど。
そして、あまりにも唐突過ぎる、あんまりと言えばあんまりな登場に、流石の両慈とリーネもあっけに取られて反応できない! そして、鈴鹿にとっては、それは十分すぎる隙!
「ヒャッハー! 戴いていくのー! ノーパン最高なのー!」
目にもとまらぬ早業、とはまさにこのこと。電撃の如き動きで3人のパンツを掠め取った鈴鹿は、現れた時と同様にまた酷い叫びをあげながら次の獲物を探して去っていく!
そして、鈴鹿の動きと共に、一陣の風があたりを吹き抜けるわけで――。
そうなると、結那とリーネ、2人のスカートがちょっとめくれてしまうわけで――。
2人、いまノーパンなわけで――。
『き、きゃああっ!!』
2人は悲鳴を上げながら、慌ててスカートを押さえた! 結那はもちろん、あまりの衝撃に正気に戻ったリーネの顔も真っ赤である!
「リョ、両慈……見タ?」
上目遣いで尋ねるリーネ。そりゃあ見ただろう。だって忍法ラッキースケベの術の無自覚伝承者なのだから。しかし、両慈はその問いに答える事はなった。
「て、天明さん!?」
「両慈!?」
彼は、立ったまま気絶していたのである。ああ、流石にちょっと許容限界だったポイですね……。
さて。
「お止めなさい!」
と颯爽と現れたのは、秋津洲 いのりである。
彼女はばさぁっ、と体を覆うマントを脱ぎ捨てた! そう、彼女こそ、紅の女王を纏った伝説の大魔法使い、マジカルイノリン! 中々きわどいコスチュームである! ちょっと恥じらう姿がとてもいいぞ!
「あ、秋津洲か……お前は……オレの味方か……?」
色々あってすっかり憔悴しきった瑛莉が尋ねる。いのりはにっこりと微笑むと、
「当然ですわ。まったく、瑛莉様には殺されたり拉致られたりすると困るので下がっていてもらおうと思いましたのに。まぁ、そこが瑛莉様らしいと言えば瑛莉様らしいのですが――いえ、特に他意はありませんのよ。だからそんなに泣かなくても良いですわ♪」
「ごふっ」
無自覚な――いや、いのりにとっては善意の塊なのだが、瑛莉にとっては下手なナイフより突き刺さった様である。だばだばと涙を流しながら、瑛莉はついに折れた。
ともあれ。
「さぁ、行きますわよ、ヒャッハーたち! 汚物は消毒ですわ!」
そう叫ぶと、いのりは大魔法メテオストライクを発動した! 雨あられと降り注ぐ隕石群が、モヒカンどもを殲滅、粉砕、木っ端微塵にする……のは良いんだけど、あの、村とか、陣営関わらず降り注いでるんですけど、その……。
うん、収集がつかなくなったら爆破オチ。基本だよね。
それでは皆様、また次回の獏依頼でお会いする日まで、さような――――。
●ヒャッハー!
さて、結論から言うと、今回の騒動は双方痛み分けとなった。
モヒカンたちはその戦力を大きく削られ速やかに逃走したし、村は村で大きくない損害を被った。ついでに神林瑛莉の心にも割と消えない傷が残った気もするが、まぁ、いつもの事だし、皆楽しそうだったからいいかな、って。
さて、そんな狂乱も夢の後、人々が消え去った村の入り口に、ひょっこりと顔を出す一人の女性。
あの騒乱の中何をしていたのか、華神 刹那である。
彼女はきょろきょろとあたりを見まわして誰もいない事を確認すると、ふぅ、と一息つきながら、背負った荷物を降ろし、中身の広げた。
なんと、中には彼女一人が数日は食いつなげるであろう量の食料が!
「ひゃっはー、などと大騒ぎしてくれて、此方は実にやりやすかったぞ」
ちょっと悪そうな顔で刹那が呟く。
そう、彼女は今回の騒動に対して、暴徒側と村側、どちらに対しても関与していなかった。彼女は今回の騒ぎに乗じ、こっそりと村中の食料をくすねとる事にしたのである。しかも、逃げやすいようにあえて数日分と言う少量の食料を、だ。結果は言うまでもないだろう。本人曰く、『同士討ち? 抜け駆け? いやいや、拙はひとりものよ』。かしこい。
「むっ」
刹那が人の気配を察してふり返ると、そこには荷物を背負いながら、こそこそと村の入り口へとやってきたまうるが居た。ちなみに、先ほどまでは葉巻を咥えていたが、今は葉っぱを咥えている
「ん?」
まうるも前方の刹那に気付き、歩みを止めた。
数秒、見つめ合う。
そして、お互い、同時に、相手が自身と同じ穴の狢である事を察した。
まうるはさもモヒカンの一味のような顔をしていたが、実は最初から適当な所で裏切り、暴徒たちから食料をくすねとろうとしていたのである。
二人は共にお互いの利益を害する存在ではないという事、そしてある種最終的に勝利した事を確信すると、にやり、と笑った。
「分かりやすく、生き易い世であるな。メシなぞ、食った者勝ちよ」
「そう。象を倒せばいいんじゃない。最終的に象の肉を食べられればいいんだ」
二人は頷くと、意気揚々と世紀末砂漠へと消えていったのだった。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
