<ヒノマル戦争・アフター>終わりのその先
●戦後処理会議
中 恭介(nCL2000002)は五麟大学の講堂に立ち、集まった覚者たちを見回した。
「皆、集まってくれてありがとう。まずはさきのヒノマル大戦、ご苦労だった。
活躍の結果、ファイヴは神秘史初の七星剣幹部撃破という偉業を成し遂げたことになる。
とはいえ、ヒノマル戦争はまだ完全に終わったわけではない。
戦後処理は戦時中よりも大変だという話もある。皆には、その協力やプロデュースを頼みたい」
七星剣直系隔者組織・ヒノマル陸軍。
総帥である暴力坂乱暴を倒し、最終決戦に参加した部下の約九割を拘束。
戦争準備期間においては関連する拠点を複数制圧し、一時管理下に置いた。
残された仕事とは、この『拘束した敵』と『制圧した拠点』、そして『押収した武器と技術者』の今後についてである。
「分野ごとに部屋と解説担当を振り分けている。まずは興味のある部屋に移ってくれ」
●Aルーム:拘束した敵の処遇
「よう! あのデカい軍事組織を倒したそうだな! さすがだぜ!」
サブミッション 緑川(nCL2000052)はぐっと拳を握って皆を出迎えた。
「決戦日にはお互い事前に避難を終えていたから、民間人への被害もナシ!
沖縄決戦や準備期間でも誠意をもって戦った結果、ヒノマル幹部勢の殆どはファイヴに対して協力的な姿勢をとっている。
ということで、本来はメチャクチャ面倒くさい筈の捕虜問題がスムーズに進むことになった。変な話だが、仕事が減って嬉しいような寂しいようなって具合だ!
現在、ヒノマル決戦に参加した敵兵は全て拘束している。
俺たちに任せて貰えるならそれなりに対応するが、皆の中には『罪を憎んで人を憎まず』って考えの奴も居れば『敵は皆殺すべし』って奴もいるだろう。『警察に丸投げしたい』って考え方もあるかもな。
だからまずは、皆の意見を尊重したい。この場で会議を行なって、拘束した敵の処遇を決定しようと思う。
ということで皆、よろしくな!」
●Bルーム:制圧した拠点
「皆さん、お疲れ様でした。戦争期間中に制圧した拠点は複数ありますが、これらの活用方法はまだ決まっていません。皆さんの意見を聞いて、施設の活用方法を決めていきましょう。特に意見が無ければ私たちのほうで決めていくことになりますね」
久方 真由美(nCL2000003)は大きなディスプレイに資料を表示させた。
その多くは利用方法のない拠点ばかりなので単純に凍結扱いになるのだが、なにかしらの方法で利用が可能な施設がピックアップされている。
「中には『ただの保養地』といった具合の施設もありますから、『保養地の使い心地を確かめる』という理由で利用して頂いてもかまいませんよ?」
●Cルーム:押収した武器と技術者
「みんなお疲れ様。こんな顔で悪いわね、もう何日も寝られてないのよ」
御崎 衣緒(nCL2000001)は疲労困憊といった様子で皆を会議室に出迎えた。
「ヒノマル陸軍の神具が強力なのは『ショットガントレット』の例で分かっていると思うけど、基本的な防具や火器に関しても同じことが言えるわ。できることなら片っ端から研究してファイヴの武装に加えたい所なんだけど……」
衣緒は『うー』と『ばー』が混じったため息をついた。
「人手不足が深刻だわ。一つの兵器を解析するのに一ヶ月から二ヶ月かかるのに、これがいくつもあるとなると通常業務に差し支えるの。だから、実用実験のスタッフとして協力してくれないかしら
そして、スタッフの中にはヒノマル陸軍の研究者をスタッフに加えてはという声も出てるわ。けど、全ての功労者である皆の意見を介さないわけにはいかないでしょう? だからそれに関する意見も聞いておきたいわね」
中 恭介(nCL2000002)は五麟大学の講堂に立ち、集まった覚者たちを見回した。
「皆、集まってくれてありがとう。まずはさきのヒノマル大戦、ご苦労だった。
活躍の結果、ファイヴは神秘史初の七星剣幹部撃破という偉業を成し遂げたことになる。
とはいえ、ヒノマル戦争はまだ完全に終わったわけではない。
戦後処理は戦時中よりも大変だという話もある。皆には、その協力やプロデュースを頼みたい」
七星剣直系隔者組織・ヒノマル陸軍。
総帥である暴力坂乱暴を倒し、最終決戦に参加した部下の約九割を拘束。
戦争準備期間においては関連する拠点を複数制圧し、一時管理下に置いた。
残された仕事とは、この『拘束した敵』と『制圧した拠点』、そして『押収した武器と技術者』の今後についてである。
「分野ごとに部屋と解説担当を振り分けている。まずは興味のある部屋に移ってくれ」
●Aルーム:拘束した敵の処遇
「よう! あのデカい軍事組織を倒したそうだな! さすがだぜ!」
サブミッション 緑川(nCL2000052)はぐっと拳を握って皆を出迎えた。
「決戦日にはお互い事前に避難を終えていたから、民間人への被害もナシ!
沖縄決戦や準備期間でも誠意をもって戦った結果、ヒノマル幹部勢の殆どはファイヴに対して協力的な姿勢をとっている。
ということで、本来はメチャクチャ面倒くさい筈の捕虜問題がスムーズに進むことになった。変な話だが、仕事が減って嬉しいような寂しいようなって具合だ!
現在、ヒノマル決戦に参加した敵兵は全て拘束している。
俺たちに任せて貰えるならそれなりに対応するが、皆の中には『罪を憎んで人を憎まず』って考えの奴も居れば『敵は皆殺すべし』って奴もいるだろう。『警察に丸投げしたい』って考え方もあるかもな。
だからまずは、皆の意見を尊重したい。この場で会議を行なって、拘束した敵の処遇を決定しようと思う。
ということで皆、よろしくな!」
●Bルーム:制圧した拠点
「皆さん、お疲れ様でした。戦争期間中に制圧した拠点は複数ありますが、これらの活用方法はまだ決まっていません。皆さんの意見を聞いて、施設の活用方法を決めていきましょう。特に意見が無ければ私たちのほうで決めていくことになりますね」
久方 真由美(nCL2000003)は大きなディスプレイに資料を表示させた。
その多くは利用方法のない拠点ばかりなので単純に凍結扱いになるのだが、なにかしらの方法で利用が可能な施設がピックアップされている。
「中には『ただの保養地』といった具合の施設もありますから、『保養地の使い心地を確かめる』という理由で利用して頂いてもかまいませんよ?」
●Cルーム:押収した武器と技術者
「みんなお疲れ様。こんな顔で悪いわね、もう何日も寝られてないのよ」
御崎 衣緒(nCL2000001)は疲労困憊といった様子で皆を会議室に出迎えた。
「ヒノマル陸軍の神具が強力なのは『ショットガントレット』の例で分かっていると思うけど、基本的な防具や火器に関しても同じことが言えるわ。できることなら片っ端から研究してファイヴの武装に加えたい所なんだけど……」
衣緒は『うー』と『ばー』が混じったため息をついた。
「人手不足が深刻だわ。一つの兵器を解析するのに一ヶ月から二ヶ月かかるのに、これがいくつもあるとなると通常業務に差し支えるの。だから、実用実験のスタッフとして協力してくれないかしら
そして、スタッフの中にはヒノマル陸軍の研究者をスタッフに加えてはという声も出てるわ。けど、全ての功労者である皆の意見を介さないわけにはいかないでしょう? だからそれに関する意見も聞いておきたいわね」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.なし
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
参加できる部屋はPC一人につき一つまでとなっております。プレイングの冒頭で『Aルーム』といった具合に参加する部屋を指定してください。
ここではそれぞれの細かい解説を加えていきます。
●Aルーム:拘束した敵の処遇
拘束している敵の処遇を決定します。
相手も人間なので、デリケートな問題でもあるようです。
同時進行していた『神秘の国境調査シナリオ』でヒノマル陸軍の兵隊を島の防衛に当たらせるプランが提案されています。
・幹部勢:決戦時の主要敵です。巨大組織を維持するだけあって人格の整った人間が多くを占めます。多くはファイヴに協力的です。
・一般兵:様々な理由でヒノマル陸軍にリクルートされた兵隊たちです。覚者と非覚者の混合。軍が続く限り自分と家族の生活が保障されていましたが、今現在保証のない状態にあります。場合によっては不満を爆発させるでしょう。
・古妖兵:様々な理由からヒノマル陸軍に参加した戦闘能力に優れた古妖たちです。一般兵と同じく色々なものが保証されていました。
●Bルーム:制圧した拠点
制圧した拠点の活用方法を決めましょう。
調査や運用は放って置いてもAAAのプロスタッフが行なうので必要ありませんが、試しにやってみるくらいならOKです。
活用ができそうな拠点は以下の通りです。
・技術訓練場:都市戦闘を想定した大型訓練場。ビル街がまるごと建造されている。今のところただの巨大なハリボテ。
・丹波山研究所:ヒノマル陸軍の神具開発を行なっていた研究施設。設備はそろっているが、ファイヴの人員だけでは持て余す規模。
・湯涌温泉:保養のためだけに作られた温泉宿。営業はしていない。
・佐渡島兵器工場:非覚者用兵器を大量に生産する施設。神具開発にはあまり役に立たない。
・敦賀中継基地:かなり昔に封印された禁止兵器などが格納されている隠し倉庫。変に手を出すと事故のもと。
・金沢大学:実質的にヒノマル陸軍の本拠地になっていた大学。普通に大学として機能している一方で、対覚者要塞としての立地を兼ねる。
・沖縄居住区:ヒノマル陸軍兵の家族や各地で保護した一般人が住んでいる巨大な居住区。一度雷獣事件の舞台となり崩壊しかけたが、ヒノマル陸軍によって修復が済んでいる。
●Cルーム:押収した武器と技術者
ヒノマル陸軍の技術を学習し、ファイヴの装備強化につとめます。
プロトタイプが作成されているので、実用実験に参加してロールアウトを早めましょう。
ファイヴの武装強化に使えそうなものは『軽・重装防具(霊子装甲服)、盾(ライオットシールド)、重火器(ヘビーアームズ)、投具(炸裂ダガー)、短刀(コンバットナイフ)、斧(ヒートアックス)、槌(バトルスコップ)、鞭(バトルワイヤー)』です。この作業に集まった人員に応じてロールアウトされます。
また、神具等の技術者を多く抱えるヒノマル陸軍ですので、彼らの処遇についても決定する必要があるでしょう。
●Xルーム:その他
三つの部屋とは異なるお話をする部屋です。一人だけしかいなかったり、他三部屋に分類されそうな話だったりした場合はそちらに振り分けられることもあります。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
6日
6日
参加費
50LP
50LP
参加人数
18/∞
18/∞
公開日
2017年03月07日
2017年03月07日
■メイン参加者 18人■

●Aルーム:拘束した敵の処遇
ヒノマル戦争に勝利したことで拘束した大量の敵兵。
数にしてゆうに百を超える彼らの処遇を話し合うため、約七人の覚者たちが集まっていた。
「個人的には、希望する人は全てファイヴに併合しちゃっても良いんじゃないかなって思うよ」
そう語るのは蘇我島 恭司(CL2001015)。
かたわらでジュースのグラスを見つめる柳 燐花(CL2000695)も、ちらりと周りをみて言った。
「そうですね。強制とはいきませんが、行くあてがないのであれば」
「私も賛成です。あちらも協定を守ったのですから」
机に組んだ手を乗せる上月・里桜(CL2001274)。
皐月 奈南(CL2001483)も『さんせー!』と言って高く手を上げた。
「暴力坂ちゃんは約束を守ってくれたんだから、ナナンたちも守らないとダメだよぉ。この人たちに危害を加えるなんて、ぜーったいダメだよぉ!」
おおむね賛成だ、という顔で頷く納屋 タヱ子(CL2000019)と栗落花 渚(CL2001360)。
話し合いはこのまま進むかに思われたが、勒・一二三(CL2001559)が小さく手を上げたことで差し止まった。
「僕はここに来てからまだ日も浅く、ヒノマル陸軍の方々と戦ったことはありません。そんな新参者が何を言うか、とお叱りを受ける覚悟でお話しさせていただきます」
少々慎重すぎるほどの前置きを経て、資料にならぶ無数の人名を見下ろした。
「私は、隔者として罪を犯した人たちにはきちんと償って頂きたいです。裁判を受けて刑を確定させて、発現者用の施設で反省をして欲しいのです。出所後は来て頂きたいとは思いますが……特に幹部勢は周りの目が許さないでしょう。優秀なひとたちなのでしょうが、彼らは元七星剣の組織幹部だったのですから」
「うん……」
苦笑して煙草を手に取る恭司。周囲の子供たちを見て、火をつけるのをやめて手元に下ろした。
「誰か言うんじゃないかとは思ってたよ。えっとね、直接戦って話し合いもした僕らから言わせてもらうと、彼らを引き入れたいのは『有能だから』じゃないんだ。『信用できるから』なんだよね。第一、ファイヴは元七星剣や元イレブンも普通に受け入れているし、皆多かれ少なかれ犯罪を黙認されている立場だから、僕らは良くて相手はダメってわけにいかないんだよ」
「しかし、罪を放置するわけにはいきませんよね」
「もっともな考え方ですね」
一二三の言い分を噛み砕くようにして、里桜が別の資料を引っ張ってきた。
「けど、多分『裁判をして刑務所で懲役を経て出てくる』は無理だと思います。現行法では、覚者を正しく裁けませんから」
「……そうなんですか?」
難しい話になってきた、という顔で目を向ける燐花。
タヱ子が硬いせんべいをかじってから言った。
「私たちは存在自体が『永久の銃刀法違反』ですから。実質全員終身刑なんじゃありませんか? 現行法では過剰な刑罰を受けたり、裁くべき罪が裁けなかったりするんですよ。それに私たちを拘束できるレベルの施設というのはは恐らく……」
「うん……」
渚が露骨に顔をしかめた。彼女にしては珍しい表情である。
皆が想像するような刑務所に入れられた場合、脱獄する手段など百通りは思いつく。覚者を拘束できる道具こそあれ、抑制かつ制御できるほどとは思えない。そんなものがあるなら今頃七星剣を警察が鎮圧しているはずだ。
なんとなく雰囲気から察したのか、ナナンがぶんぶんと首を振った。
「ダメだよぉ。約束破りになっちゃうよぉ!」
「うん……残念だけど、今の法律や政治じゃあ隔者や憤怒者をちゃんと裁けないんだよ。だから私たちがいるし、いなきゃダメなんじゃないかな」
「でも言いたいことは分かるよ。『周りが許さない』っていうのは、『自分の常識感覚にそぐわない』っていう意味の誤謬だと思うし、ヒノマル陸軍を外から見ていた人にはそう考えるひとも少なくないだろうしね」
恭司は資料をぱらぱらとめくっていった。
「彼らを引き入れるなら、僕らはその責任をちゃんと負わなきゃならないんじゃないかな。入れるだけ入れて、あとは批判と偏見のサンドバッグにさせるわけにはいかないし、彼らが信用できるってことを理解させなきゃいけない。あ、勿論人として信用できなさそうな人は弾いていくよ。ヒノマル陸軍にもそういう人は少なからずいるだろうしね」
それでもあまり納得のいっていない様子の一二三に、里桜が提案の形で問いかけた。
「懲役ができないなら、労役という形はどうでしょうか。お仕事を与えて、その様子を見るんです。実際的に納得してもらえると思うんですが」
本来ならヒノマル陸軍がそうしていたように、家族や生涯にかけての保証をしてあげたいところだが非営利団体であるファイヴにそこまでの財力はない。スポンサーから受け取ったお金を分配するだけだからだ。
しかし仕事を都合することはできるし、今の世の中ではファイヴの看板をアテにして仕事を依頼したい者は少なくないだろう。
「まずはファイヴが仲介して、警備や建設の仕事を与えてはどうでしょうか」
「それならまず、与那国島に建設予定の保護施設を担当して欲しいのですが」
タヱ子が自前の資料を出してきた。
「彼らは防衛経験がありますし、沖縄では顔が利くでしょう。守られるほうも安心だと思います」
「じゃあ私は古妖兵を担当しようかな。ファイヴ村に古妖に対応した職業紹介所があるから、声をかけてみるね」
渚は渚で自前の資料を取り出して来た。
二人とも、自力で積み上げてきた実績からの提案である。かなり信頼できる案件だろう。
火の付いていない煙草を手に二度頷く恭司。
「うん、じゃあ、まずは仕事の紹介からだね。福利厚生はおいおい考えていくことにしようか。ヒノマル陸軍の時みたいに一生涯を保障できないかもしれないけど、できる限りのことはしたいよね」
●暴力坂の墓参り
話し合いは難しい。そう思って会議室を抜け出した燐花は、裏庭に立つ時任・千陽(CL2000014)を見つけた。
「暴力坂には墓がないんだそうです。財産も組織の基金にあてていて、引き払うのはあのアパートだけだったと……」
骨壺は共同墓地に入り、せめてもの気持ちで千陽はそこにない骨に手を合わせていた。
「彼は軍人として、部下を護る戦いをした。俺もまたそのつもりでしたが……」
千陽の表情は複雑だ。
燐花には、推し量ることも難しい。
ゆえに黙っていると、後ろから声をかけられた。
「燐ちゃん、そろそろ行こうか」
恭司の声だ。
燐花は小さく頭をさげて、その場を後にした。
●Bルーム:制圧した拠点
ヒノマル戦争のおりに制圧したいくつかの拠点。その運用方法を巡る話し合いには、ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)と風祭・誘輔(CL2001092)、そして七海 灯(CL2000579)や奥州 一悟(CL2000076)の四人が加わっていた。
「土地を遊ばせとくのはもったいねーな」
誘輔は沖縄居住区に非迫害者の保護施設を併設することを提案した。
閉鎖的な環境にいた覚者を慣れさせるための場だ。
「それと、気になるのは技術訓練場と研究所だ。設備をそのまんま利用でいねーか」
「それには賛成です。加えて、ヒノマル陸軍にある独自技術を共有するための合同訓練が行なえればと思うのですが……」
灯の提案に、誘輔もまた頷いた。
「悪くねえアイデアだ。研究所は蒐囚壁財団へのカードにならねえか?」
「どうでしょう。話をしてから決めることになりますね」
そうこうしていると、一悟がハイハイッといって手を上げた。
「オレは金沢大学が気になるな! あれってどういう立ち位置なんだ? 大学の中を兵隊が歩いてて不安だったり恐かったりしてないのかな」
「私が聞いた限りですと、ごく普通に過ごしていたそうですよ。大学内のローカルルールとしてヒノマル陸軍の存在があったとか。特に脅されていたとか何かが侵害されていたということは無いと聞いています」
ラーラはそこまでを資料を読みながら述べた上で、ぱらりと次のページをめくった。
「私としては、対覚者戦闘での重要な拠点として利用できると考えています。ファイヴの支所を置くこともできるでしょうし、場合によっては避難場所としても機能するでしょう」
「なるほど。その辺は決まりだな。とりま居住区と訓練場、金沢大学はその線で進めてもらおうぜ」
●天吹の病室
プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)は精神病棟の廊下にいた。
強化ガラス越しに、天吹アマネが見えない誰かと会話をしているさまを見ていた。
「あの民、ずっとああなの? 大丈夫?」
「目に付く人をみな自分の恋人だと思い込んでいるようです。名前も特徴も聞くたびにバラバラなので、痴呆症の一種だと思うんですが……」
医師の話を半分くらいまで聞いて、プリンスは面会室へと入った。
持参した明石組の捜査資料は、持ち込みを許されなかったが……。
「余はほら、ナイス王家だから。約束はそこそこ守るから」
いつか彼女が正気を取り戻し、プリンスが自分の恋人と似ても似つかないと気づいた日には……。
「その時には、カレシの話を聞かせて貰うね」
●Cルーム:押収した武器と技術者
「バトルワイヤーか、こいつはいい!」
ゲイル・レオンハート(CL2000415)はイキイキした顔でワイヤーを巧みに操っては人型の的を次々と破壊していった。
さすがに霊糸を武器として使っていただけのことはある。武器になじむのがきわめて早かった。
「これ、遠距離武器にならないかな。カッコイイと思うんだ!」
「おもしろそうですね。次の研究材料にしてみます」
ノートに書きとめる研究員。
また一方では、緒形 逝(CL2000156)がバトルスコップを握って連打を繰り出していた。
まあスコップは掘る道具とされていて、大抵の人はこれを無造作に振り回すだけだと思いがちだが、逝は不思議と斬突打のあらゆる手段でもって攻撃を繰り出していく。
なんかどっかで使い方でも訓練したのかというなじみぶりである。
対する獅子王 飛馬(CL2001466)は霊子装甲服とライオットシールドで彼の攻撃を防御しつづける。
「このシールド、霊子装甲服と同じ原理で動いてんだな。鉄板バージョンと透明バージョンがどっちも同じ防御力だってんだから」
「神秘界隈じゃよくあることさね。後で重火器(ヘビーアームズ)も試したいから付き合ってね」
「任せとけ!」
まるで遊ぶみたいに楽しく武器を使いこなす仲間たちを眺めながら、坂上 懐良(CL2000523)はヒノマル研究員に関する話し合いを続けていた。
「そうか。ゴウハラ博士たちは引き抜きに応じたか」
「研究環境が保たれるなら所属は問わないと」
「良くも悪くも研究者ってか」
後でデルタちゃんたちとデートしたいなとか思いながらも、色々な書類に提案事項を書いていく懐良。
他のメンバーもそうだが、放っておけばヒノマル陸軍の優秀な研究員はよそに引き抜かれてしまう。このタイミングでファイヴに吸収するのがベストなのだ。
「よし、じゃあこの調子で他の研究員もガンガン引き抜いていくか!」
●禍ツ神へのお参り
鹿ノ島・遥(CL2000227)はかつて戦った愛宕神社にて手を合わせていた。
「楽しい戦いさせてくれて、サンキューな。でもどうせ、そのうち復活するんだろ? そしたらまた戦おうぜ!」
お賽銭を箱にねじ込み、きびすを返す。
だが彼はまだ気づいていない。
彼の魂から立ち上る気配は既に、一柱の氏神に匹敵しうるものであるということに。
「楽しかったぜ」
日本をめぐる戦乱の中、次々と生まれ行く禍ツ神。怨敵必殺の願いを叶える戦の神。
それは既に、現人神としてここに存在しているのかもしれない。
彼のみならず、何人も。
そして、次の戦乱はやってくる。
ヒノマル戦争に勝利したことで拘束した大量の敵兵。
数にしてゆうに百を超える彼らの処遇を話し合うため、約七人の覚者たちが集まっていた。
「個人的には、希望する人は全てファイヴに併合しちゃっても良いんじゃないかなって思うよ」
そう語るのは蘇我島 恭司(CL2001015)。
かたわらでジュースのグラスを見つめる柳 燐花(CL2000695)も、ちらりと周りをみて言った。
「そうですね。強制とはいきませんが、行くあてがないのであれば」
「私も賛成です。あちらも協定を守ったのですから」
机に組んだ手を乗せる上月・里桜(CL2001274)。
皐月 奈南(CL2001483)も『さんせー!』と言って高く手を上げた。
「暴力坂ちゃんは約束を守ってくれたんだから、ナナンたちも守らないとダメだよぉ。この人たちに危害を加えるなんて、ぜーったいダメだよぉ!」
おおむね賛成だ、という顔で頷く納屋 タヱ子(CL2000019)と栗落花 渚(CL2001360)。
話し合いはこのまま進むかに思われたが、勒・一二三(CL2001559)が小さく手を上げたことで差し止まった。
「僕はここに来てからまだ日も浅く、ヒノマル陸軍の方々と戦ったことはありません。そんな新参者が何を言うか、とお叱りを受ける覚悟でお話しさせていただきます」
少々慎重すぎるほどの前置きを経て、資料にならぶ無数の人名を見下ろした。
「私は、隔者として罪を犯した人たちにはきちんと償って頂きたいです。裁判を受けて刑を確定させて、発現者用の施設で反省をして欲しいのです。出所後は来て頂きたいとは思いますが……特に幹部勢は周りの目が許さないでしょう。優秀なひとたちなのでしょうが、彼らは元七星剣の組織幹部だったのですから」
「うん……」
苦笑して煙草を手に取る恭司。周囲の子供たちを見て、火をつけるのをやめて手元に下ろした。
「誰か言うんじゃないかとは思ってたよ。えっとね、直接戦って話し合いもした僕らから言わせてもらうと、彼らを引き入れたいのは『有能だから』じゃないんだ。『信用できるから』なんだよね。第一、ファイヴは元七星剣や元イレブンも普通に受け入れているし、皆多かれ少なかれ犯罪を黙認されている立場だから、僕らは良くて相手はダメってわけにいかないんだよ」
「しかし、罪を放置するわけにはいきませんよね」
「もっともな考え方ですね」
一二三の言い分を噛み砕くようにして、里桜が別の資料を引っ張ってきた。
「けど、多分『裁判をして刑務所で懲役を経て出てくる』は無理だと思います。現行法では、覚者を正しく裁けませんから」
「……そうなんですか?」
難しい話になってきた、という顔で目を向ける燐花。
タヱ子が硬いせんべいをかじってから言った。
「私たちは存在自体が『永久の銃刀法違反』ですから。実質全員終身刑なんじゃありませんか? 現行法では過剰な刑罰を受けたり、裁くべき罪が裁けなかったりするんですよ。それに私たちを拘束できるレベルの施設というのはは恐らく……」
「うん……」
渚が露骨に顔をしかめた。彼女にしては珍しい表情である。
皆が想像するような刑務所に入れられた場合、脱獄する手段など百通りは思いつく。覚者を拘束できる道具こそあれ、抑制かつ制御できるほどとは思えない。そんなものがあるなら今頃七星剣を警察が鎮圧しているはずだ。
なんとなく雰囲気から察したのか、ナナンがぶんぶんと首を振った。
「ダメだよぉ。約束破りになっちゃうよぉ!」
「うん……残念だけど、今の法律や政治じゃあ隔者や憤怒者をちゃんと裁けないんだよ。だから私たちがいるし、いなきゃダメなんじゃないかな」
「でも言いたいことは分かるよ。『周りが許さない』っていうのは、『自分の常識感覚にそぐわない』っていう意味の誤謬だと思うし、ヒノマル陸軍を外から見ていた人にはそう考えるひとも少なくないだろうしね」
恭司は資料をぱらぱらとめくっていった。
「彼らを引き入れるなら、僕らはその責任をちゃんと負わなきゃならないんじゃないかな。入れるだけ入れて、あとは批判と偏見のサンドバッグにさせるわけにはいかないし、彼らが信用できるってことを理解させなきゃいけない。あ、勿論人として信用できなさそうな人は弾いていくよ。ヒノマル陸軍にもそういう人は少なからずいるだろうしね」
それでもあまり納得のいっていない様子の一二三に、里桜が提案の形で問いかけた。
「懲役ができないなら、労役という形はどうでしょうか。お仕事を与えて、その様子を見るんです。実際的に納得してもらえると思うんですが」
本来ならヒノマル陸軍がそうしていたように、家族や生涯にかけての保証をしてあげたいところだが非営利団体であるファイヴにそこまでの財力はない。スポンサーから受け取ったお金を分配するだけだからだ。
しかし仕事を都合することはできるし、今の世の中ではファイヴの看板をアテにして仕事を依頼したい者は少なくないだろう。
「まずはファイヴが仲介して、警備や建設の仕事を与えてはどうでしょうか」
「それならまず、与那国島に建設予定の保護施設を担当して欲しいのですが」
タヱ子が自前の資料を出してきた。
「彼らは防衛経験がありますし、沖縄では顔が利くでしょう。守られるほうも安心だと思います」
「じゃあ私は古妖兵を担当しようかな。ファイヴ村に古妖に対応した職業紹介所があるから、声をかけてみるね」
渚は渚で自前の資料を取り出して来た。
二人とも、自力で積み上げてきた実績からの提案である。かなり信頼できる案件だろう。
火の付いていない煙草を手に二度頷く恭司。
「うん、じゃあ、まずは仕事の紹介からだね。福利厚生はおいおい考えていくことにしようか。ヒノマル陸軍の時みたいに一生涯を保障できないかもしれないけど、できる限りのことはしたいよね」
●暴力坂の墓参り
話し合いは難しい。そう思って会議室を抜け出した燐花は、裏庭に立つ時任・千陽(CL2000014)を見つけた。
「暴力坂には墓がないんだそうです。財産も組織の基金にあてていて、引き払うのはあのアパートだけだったと……」
骨壺は共同墓地に入り、せめてもの気持ちで千陽はそこにない骨に手を合わせていた。
「彼は軍人として、部下を護る戦いをした。俺もまたそのつもりでしたが……」
千陽の表情は複雑だ。
燐花には、推し量ることも難しい。
ゆえに黙っていると、後ろから声をかけられた。
「燐ちゃん、そろそろ行こうか」
恭司の声だ。
燐花は小さく頭をさげて、その場を後にした。
●Bルーム:制圧した拠点
ヒノマル戦争のおりに制圧したいくつかの拠点。その運用方法を巡る話し合いには、ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)と風祭・誘輔(CL2001092)、そして七海 灯(CL2000579)や奥州 一悟(CL2000076)の四人が加わっていた。
「土地を遊ばせとくのはもったいねーな」
誘輔は沖縄居住区に非迫害者の保護施設を併設することを提案した。
閉鎖的な環境にいた覚者を慣れさせるための場だ。
「それと、気になるのは技術訓練場と研究所だ。設備をそのまんま利用でいねーか」
「それには賛成です。加えて、ヒノマル陸軍にある独自技術を共有するための合同訓練が行なえればと思うのですが……」
灯の提案に、誘輔もまた頷いた。
「悪くねえアイデアだ。研究所は蒐囚壁財団へのカードにならねえか?」
「どうでしょう。話をしてから決めることになりますね」
そうこうしていると、一悟がハイハイッといって手を上げた。
「オレは金沢大学が気になるな! あれってどういう立ち位置なんだ? 大学の中を兵隊が歩いてて不安だったり恐かったりしてないのかな」
「私が聞いた限りですと、ごく普通に過ごしていたそうですよ。大学内のローカルルールとしてヒノマル陸軍の存在があったとか。特に脅されていたとか何かが侵害されていたということは無いと聞いています」
ラーラはそこまでを資料を読みながら述べた上で、ぱらりと次のページをめくった。
「私としては、対覚者戦闘での重要な拠点として利用できると考えています。ファイヴの支所を置くこともできるでしょうし、場合によっては避難場所としても機能するでしょう」
「なるほど。その辺は決まりだな。とりま居住区と訓練場、金沢大学はその線で進めてもらおうぜ」
●天吹の病室
プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)は精神病棟の廊下にいた。
強化ガラス越しに、天吹アマネが見えない誰かと会話をしているさまを見ていた。
「あの民、ずっとああなの? 大丈夫?」
「目に付く人をみな自分の恋人だと思い込んでいるようです。名前も特徴も聞くたびにバラバラなので、痴呆症の一種だと思うんですが……」
医師の話を半分くらいまで聞いて、プリンスは面会室へと入った。
持参した明石組の捜査資料は、持ち込みを許されなかったが……。
「余はほら、ナイス王家だから。約束はそこそこ守るから」
いつか彼女が正気を取り戻し、プリンスが自分の恋人と似ても似つかないと気づいた日には……。
「その時には、カレシの話を聞かせて貰うね」
●Cルーム:押収した武器と技術者
「バトルワイヤーか、こいつはいい!」
ゲイル・レオンハート(CL2000415)はイキイキした顔でワイヤーを巧みに操っては人型の的を次々と破壊していった。
さすがに霊糸を武器として使っていただけのことはある。武器になじむのがきわめて早かった。
「これ、遠距離武器にならないかな。カッコイイと思うんだ!」
「おもしろそうですね。次の研究材料にしてみます」
ノートに書きとめる研究員。
また一方では、緒形 逝(CL2000156)がバトルスコップを握って連打を繰り出していた。
まあスコップは掘る道具とされていて、大抵の人はこれを無造作に振り回すだけだと思いがちだが、逝は不思議と斬突打のあらゆる手段でもって攻撃を繰り出していく。
なんかどっかで使い方でも訓練したのかというなじみぶりである。
対する獅子王 飛馬(CL2001466)は霊子装甲服とライオットシールドで彼の攻撃を防御しつづける。
「このシールド、霊子装甲服と同じ原理で動いてんだな。鉄板バージョンと透明バージョンがどっちも同じ防御力だってんだから」
「神秘界隈じゃよくあることさね。後で重火器(ヘビーアームズ)も試したいから付き合ってね」
「任せとけ!」
まるで遊ぶみたいに楽しく武器を使いこなす仲間たちを眺めながら、坂上 懐良(CL2000523)はヒノマル研究員に関する話し合いを続けていた。
「そうか。ゴウハラ博士たちは引き抜きに応じたか」
「研究環境が保たれるなら所属は問わないと」
「良くも悪くも研究者ってか」
後でデルタちゃんたちとデートしたいなとか思いながらも、色々な書類に提案事項を書いていく懐良。
他のメンバーもそうだが、放っておけばヒノマル陸軍の優秀な研究員はよそに引き抜かれてしまう。このタイミングでファイヴに吸収するのがベストなのだ。
「よし、じゃあこの調子で他の研究員もガンガン引き抜いていくか!」
●禍ツ神へのお参り
鹿ノ島・遥(CL2000227)はかつて戦った愛宕神社にて手を合わせていた。
「楽しい戦いさせてくれて、サンキューな。でもどうせ、そのうち復活するんだろ? そしたらまた戦おうぜ!」
お賽銭を箱にねじ込み、きびすを返す。
だが彼はまだ気づいていない。
彼の魂から立ち上る気配は既に、一柱の氏神に匹敵しうるものであるということに。
「楽しかったぜ」
日本をめぐる戦乱の中、次々と生まれ行く禍ツ神。怨敵必殺の願いを叶える戦の神。
それは既に、現人神としてここに存在しているのかもしれない。
彼のみならず、何人も。
そして、次の戦乱はやってくる。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
