
悪意の拡散 ―その後―
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一連の事件がひとまずの終わりを告げた後、今回の事件を予知した夢見を含む4人の覚者は会議室に集まった。
「報告は手短にしてほしかったんだけど、ずいぶん長かったわね」
そう言う眩(クララ)・ウルスラ・エングホルム(nCL2000164)の世界には恐らく愛しい弟の骨のレプリカしか映っていない。
「それにしても、憤怒者たちも大変ねぇ~」と語る投げやりな態度がそれを如実に表している。
それとは対照的なのが菊本 正美(nCL2000172)である。
「これは他人事で済むことじゃないと思うんだが……」
デマ論文を何度も読み返しながら言うその顔は、深刻なものであると同時に、完全に『論文に見入っている学者の顔』である。
同じ夢見、同じ『覚者への風評被害』に端を発する事件を予知しておきながらこの反応の差は、夢見自身の性格故か。それとも見た夢の内容故か。……どっちも自分の世界に入りかけているのはあまり変わりがないが。
そんな2人の夢見の反応を見ていた鼎 飛鳥(CL2000093) が首を傾げて、ポツリと一言。
「結局、憤怒者達は何したかったのよ?」
「電波障害の再来を彷彿とさせ、覚者が電磁波を発していることを印象付けさせ……」
飛鳥の言葉に新田・成(CL2000538) が自分の世界に入りかけている夢見に代わって答えた。
「そしてその電磁波が如何に一般人の害になるかを喧伝しようとしたのでしょうが……真意が少々見えませんな」
発現者限定の電波障害。それが発端で起きた事件。
それには最大の憤怒者組織、XI(イレブン)が絡んでいる。間違いなく。
「それで原因は携帯電話でしたか?」
覚者たちは電波障害を起こしていたと思われる携帯電話を回収し、解析をFiVEに依頼した。確かその結果が出たと飛鳥は聞いたのだが。
「それは、そこの理系先生が知ってるんじゃない?」
「へ……?」
突如、眩に話を振られた正美は硬直した。確かに、携帯の解析を行った祠堂 薫からから直に話を聞いたのは正美と御崎所長、そして成だけである。しかし。
正美が成に視線をやると、彼はニコニコと笑いながら一言。
「私はこの分野は何分、素人ですので」
「……新田先生もお人が悪い」
学者なら誰しも戦慄する言葉に乾いた笑いを返し、私は工学に明るくないのになとぼやいてから正美は口を開いた。
「携帯電話の中に、特定の周波数の電磁波を増幅させる装置が……」
そこまで言って飛鳥と目が合う。彼は言葉を止めた。
仕組みを詳しく説明しようと思えばいくらでもできるのだが、いま求められているのは結論だ。
「……覚者が覚醒時に発する電磁波を増幅させる装置が携帯電話の中にあった、って言えば分かりやすい?」
頷きを返され、正美は胸を撫で下ろした。
供給の追いついていない携帯電話を不特定多数に売って覚者が持つ確率を上げようとしたのだろう。電磁波を発しているのは覚醒中の覚者のみなので、非発現者が持っていても特に問題が無い。……覚者からしてみればタチの悪い話だ。
「それ、せっかくだから何かに利用しましょうなのよ」
飛鳥の言葉に、眩は首を傾げて曖昧に微笑む。正美もそれにはうーんと唸った。
「その気持ちはわかるけれども……」
「電波障害を起こしますからね。我々が今持つべき代物ではないでしょう」
触らぬ神に祟りなし。成の言葉に一同は頷いた。
とはいえ、これでひとまず覚者の偏見もまた一つ無くなったのは事実だ。
話を終えて飛鳥がぽそりと。
「とりあえず解決してよかったのよ」
飛鳥の言葉に、眩は再び微笑んだ。
その一方で、正美は成に頭を深々と下げる。
「この度は見苦しい姿をお見せして、本当に……」
成は手を前に出して、微笑んだまま首を横に振った。
「いえ、夢見として歯痒いことも多々あるでしょう」
これからも夢見は悪夢を見る。それでも、彼等がいる限りは、きっと……。
関連依頼:
⇒≪悪意の拡散≫2人の思想
⇒≪悪意の拡散≫3つの概念
⇒≪悪意の拡散≫想定の圏内
⇒≪悪意の拡散≫思慮の圏外
「報告は手短にしてほしかったんだけど、ずいぶん長かったわね」
そう言う眩(クララ)・ウルスラ・エングホルム(nCL2000164)の世界には恐らく愛しい弟の骨のレプリカしか映っていない。
「それにしても、憤怒者たちも大変ねぇ~」と語る投げやりな態度がそれを如実に表している。
それとは対照的なのが菊本 正美(nCL2000172)である。
「これは他人事で済むことじゃないと思うんだが……」
デマ論文を何度も読み返しながら言うその顔は、深刻なものであると同時に、完全に『論文に見入っている学者の顔』である。
同じ夢見、同じ『覚者への風評被害』に端を発する事件を予知しておきながらこの反応の差は、夢見自身の性格故か。それとも見た夢の内容故か。……どっちも自分の世界に入りかけているのはあまり変わりがないが。
そんな2人の夢見の反応を見ていた鼎 飛鳥(CL2000093) が首を傾げて、ポツリと一言。
「結局、憤怒者達は何したかったのよ?」
「電波障害の再来を彷彿とさせ、覚者が電磁波を発していることを印象付けさせ……」
飛鳥の言葉に新田・成(CL2000538) が自分の世界に入りかけている夢見に代わって答えた。
「そしてその電磁波が如何に一般人の害になるかを喧伝しようとしたのでしょうが……真意が少々見えませんな」
発現者限定の電波障害。それが発端で起きた事件。
それには最大の憤怒者組織、XI(イレブン)が絡んでいる。間違いなく。
「それで原因は携帯電話でしたか?」
覚者たちは電波障害を起こしていたと思われる携帯電話を回収し、解析をFiVEに依頼した。確かその結果が出たと飛鳥は聞いたのだが。
「それは、そこの理系先生が知ってるんじゃない?」
「へ……?」
突如、眩に話を振られた正美は硬直した。確かに、携帯の解析を行った祠堂 薫からから直に話を聞いたのは正美と御崎所長、そして成だけである。しかし。
正美が成に視線をやると、彼はニコニコと笑いながら一言。
「私はこの分野は何分、素人ですので」
「……新田先生もお人が悪い」
学者なら誰しも戦慄する言葉に乾いた笑いを返し、私は工学に明るくないのになとぼやいてから正美は口を開いた。
「携帯電話の中に、特定の周波数の電磁波を増幅させる装置が……」
そこまで言って飛鳥と目が合う。彼は言葉を止めた。
仕組みを詳しく説明しようと思えばいくらでもできるのだが、いま求められているのは結論だ。
「……覚者が覚醒時に発する電磁波を増幅させる装置が携帯電話の中にあった、って言えば分かりやすい?」
頷きを返され、正美は胸を撫で下ろした。
供給の追いついていない携帯電話を不特定多数に売って覚者が持つ確率を上げようとしたのだろう。電磁波を発しているのは覚醒中の覚者のみなので、非発現者が持っていても特に問題が無い。……覚者からしてみればタチの悪い話だ。
「それ、せっかくだから何かに利用しましょうなのよ」
飛鳥の言葉に、眩は首を傾げて曖昧に微笑む。正美もそれにはうーんと唸った。
「その気持ちはわかるけれども……」
「電波障害を起こしますからね。我々が今持つべき代物ではないでしょう」
触らぬ神に祟りなし。成の言葉に一同は頷いた。
とはいえ、これでひとまず覚者の偏見もまた一つ無くなったのは事実だ。
話を終えて飛鳥がぽそりと。
「とりあえず解決してよかったのよ」
飛鳥の言葉に、眩は再び微笑んだ。
その一方で、正美は成に頭を深々と下げる。
「この度は見苦しい姿をお見せして、本当に……」
成は手を前に出して、微笑んだまま首を横に振った。
「いえ、夢見として歯痒いことも多々あるでしょう」
これからも夢見は悪夢を見る。それでも、彼等がいる限りは、きっと……。
関連依頼:
⇒≪悪意の拡散≫2人の思想
⇒≪悪意の拡散≫3つの概念
⇒≪悪意の拡散≫想定の圏内
⇒≪悪意の拡散≫思慮の圏外