神出鬼没の、あの古妖

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「つまり今後は、F.i.V.E.にもちょくちょく顔を出す、と」
 あかりが片目を瞑ってそう、蓮風の言った結論を繰り返した。
「はい! あの後ふぁいぶのあたりさんから、色々お話も聞きました」
 うんうん、と腕組みをして何やら頷く蓮風の発音は妙に不穏で、聞く者に、本当にわかっているのだろうかという不安を抱かせる。彼女を最初に助けたのは去年の秋のこと。まだF.i.V.E.が組織の存在を隠していた頃だ。
 それから諸々あった結果、彼女は『郷土史研究クラブ』と名乗った彼ら彼女らに興味を持ち、とうとう五麟市に引っ越してきてしまったのだった。
「前向き、言うたら聞こえはええんやけど。蓮風さんの場合、S字やらクランクやらでも直進しそうな感じやからなあ……」
 心配でならない。呻きにすら近い声で、凛がそう呟く。
 どうして自分が呼ばれたのだろうかと訝しんでいた赤貴だったが、はたとこの場には彼女と何度か顔を合わせた者がいるのだと気がついた。
 なるほど、よく知らぬ者に案内を任せるよりは、ということだろう。
「せやけど……実際にウチら、古妖の研究とかをしてるいうわけやないんですよ?」
 どうしても言い訳にした郷土史研究クラブのことが引っかかってしまうようで、かがりは口元に指を当て、申し訳無さげにそう切り出す。
 不思議そうに首を傾げてから、何かに思い至ったようで、蓮風は「ああ!」と胸の前で手をあわせた。
「そのことは、まあ、ちょっとはびっくりしましたけど。そんなに気にしてません。ただ、私、どうしても会いたい方がいて」
 真剣な目をして、蓮風はそこで言葉を切った。
「もしかしてっ、蓮風おねーさんに恋の予感が!?」
「や、えっと……その…………、はい……」
 おお!? とばかり食いついてみた奏空だったが、蓮風の反応が本当にそんな方向性だったことに目を丸くする。
「そうなんです、もうあれから片時も忘れられなくって……」
 きょろきょろと蓮風の目が、顔が動き、それがまことを見つけて止まる。
「えっ、僕?」
「あのっ、以前助けてもらった時……あの時、触れた腕の」
 その展開に多少なりとも動揺するまことの前で、蓮風がもじもじと、それでもきっぱりと続ける。
「けむっとした柔らかさが、あのモルモットみたいな子のことが、どうしても忘れられないんです!」
「そっちなの!?」
 がくり、とお約束的に脱力するまことの付き合いの良さ。
 それはともかくとして。数多が「それって」と、ポケットごそごそと探り、数枚のコインを取り出す。
 モルコインだ。
「前にも見せたけど、このコインの、モルモットっぽい古妖っていうやつよね?」
 こくり、と強く頷いた蓮風は、自作の鞄からノートを取り出し、自筆のメモに目を通す。
「あの子……モルちゃんなんですけど。いろいろ、調べてみたんですが、神出鬼没ということのほかは、ほとんどわからなくて。みなさんが知らないうちに持ってたっていうそのコインも、あの子が配っているって説もあるみたいで」
「そういえば、中さんからそんなこと言われたな」
 どういうわけか自販機から出てきたみかんの缶詰を持て余しながら、ヤマトはふぅむと唸る。
「だから、というわけではないですが。
 それもあの子の、手がかりって言えるんじゃないかなって思うんです、私」
「なんだったらこれ、全部あげよっか?」
 と、さらにコインを取り出そうとしたあかりを蓮風は慌てて制する。
「いえいえいえ、そんなわけには!
 それはみなさんのものです。私がただもらってしまうわけにはいかないです。
 ――そこで、ちょっとした提案があるんですが!」
 その口調、テレビの通販番組が如く。
 蓮風はその『提案』を口にしながら、いっそう笑みを深くした。

⇒蓮風のモルコイン交換

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