≪聖夜2016≫光彩満つる、水の都
●光実る園
この頃の冬の夕暮れは、まるで駆け足。
地下鉄の階段を上がると、目に飛び込んできたのは、暗闇に包まれた街並み――ではなく、色彩の奔流だった。
光輝く雪の結晶の飾られた門が、たたずむ。誘われるようにくぐり抜ければ、耳になじんだクリスマスソングが流れだす。旋律に合わせて、通りの両脇の並木の枝が、無数の煌めきの鼓動を宿す。ゴールド、赤と緑、深い青――ダンスを踊るように色彩を変えて、明滅する。
この季節、大阪、中之島はイルミネーションの色彩を宝石箱のように閉じこめて輝く。
雪の結晶の導く、光の門のつらなるイルミネーションストリート。
広場には、三角屋根を光に縁どった、フランス風の屋台が軒を連ねる。
その先は、光のシャンパングラスを並べたような意匠を並木に施した、フランスアベニュー。
川辺の遊歩道をたどっていけば、冬枯れの庭園いっぱいに、淡い色彩をともした光が実る。袋をかぶせられた光は、ピンク、水色、緑、黄にむらさき――優しい色調となり、ツリーを模した樹々を果実のごとく彩る。
そのさまは、まるで妖精の森に迷い込んでしまったようだ。
踏み出し、色彩の門をくぐり抜ければ、だれもがおとぎ話の主人公になれる。
そんな会場内は、人々でにぎわう。嬉しそうなはしゃぎ声をあげる子供たちを連れた、家族。指を絡めあった恋人たち。勤め先帰りのスーツ姿の男女も、足を止めて見入っている。
彼らはみな、目を開けたまま、夢の世界を訪れてしまったようだ。
●或る男子高生、語る
「なんか……こういうのってさ、だれかと一緒に見るほうがいいよなって」
机に身をもたせかけて、萩野屋 伊都見(nCL2000181)は言った。
談話室のにぎわいにまぎれて言ったその話に、耳を傾け、足をとめて振り返っている者がいる。
「寂しいっていうよりかはさ……みんなで見なきゃ、もったいないと思って」
しみじみと頷く彼がその地を訪れたのは、近くで用事を頼まれたからに過ぎない。
大切なだれかと、気の合う友達と、あるいは、偶然めぐりあった仲間たちと。
冬枯れの木立に咲き競うようなイルミネーションを眺めたり、濃厚なホットチョコレートを両手に包んで暖を取りながら語らったり、光実る園を散策して回るのもよいかもしれない。
一人で、心ゆくまで眺めるのもよいだろう。フランス風の屋台には、軽食から本格的なグルメまで販売されている。
「なっ、楽しもうぜ」
伊都見は、居合わせた仲間の肩をぽんとたたいた。
この頃の冬の夕暮れは、まるで駆け足。
地下鉄の階段を上がると、目に飛び込んできたのは、暗闇に包まれた街並み――ではなく、色彩の奔流だった。
光輝く雪の結晶の飾られた門が、たたずむ。誘われるようにくぐり抜ければ、耳になじんだクリスマスソングが流れだす。旋律に合わせて、通りの両脇の並木の枝が、無数の煌めきの鼓動を宿す。ゴールド、赤と緑、深い青――ダンスを踊るように色彩を変えて、明滅する。
この季節、大阪、中之島はイルミネーションの色彩を宝石箱のように閉じこめて輝く。
雪の結晶の導く、光の門のつらなるイルミネーションストリート。
広場には、三角屋根を光に縁どった、フランス風の屋台が軒を連ねる。
その先は、光のシャンパングラスを並べたような意匠を並木に施した、フランスアベニュー。
川辺の遊歩道をたどっていけば、冬枯れの庭園いっぱいに、淡い色彩をともした光が実る。袋をかぶせられた光は、ピンク、水色、緑、黄にむらさき――優しい色調となり、ツリーを模した樹々を果実のごとく彩る。
そのさまは、まるで妖精の森に迷い込んでしまったようだ。
踏み出し、色彩の門をくぐり抜ければ、だれもがおとぎ話の主人公になれる。
そんな会場内は、人々でにぎわう。嬉しそうなはしゃぎ声をあげる子供たちを連れた、家族。指を絡めあった恋人たち。勤め先帰りのスーツ姿の男女も、足を止めて見入っている。
彼らはみな、目を開けたまま、夢の世界を訪れてしまったようだ。
●或る男子高生、語る
「なんか……こういうのってさ、だれかと一緒に見るほうがいいよなって」
机に身をもたせかけて、萩野屋 伊都見(nCL2000181)は言った。
談話室のにぎわいにまぎれて言ったその話に、耳を傾け、足をとめて振り返っている者がいる。
「寂しいっていうよりかはさ……みんなで見なきゃ、もったいないと思って」
しみじみと頷く彼がその地を訪れたのは、近くで用事を頼まれたからに過ぎない。
大切なだれかと、気の合う友達と、あるいは、偶然めぐりあった仲間たちと。
冬枯れの木立に咲き競うようなイルミネーションを眺めたり、濃厚なホットチョコレートを両手に包んで暖を取りながら語らったり、光実る園を散策して回るのもよいかもしれない。
一人で、心ゆくまで眺めるのもよいだろう。フランス風の屋台には、軽食から本格的なグルメまで販売されている。
「なっ、楽しもうぜ」
伊都見は、居合わせた仲間の肩をぽんとたたいた。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.イルミネーションの祭典を楽しむ!
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
年の瀬も押し迫って参りましたが、心躍る一息はいかがでしょうか?
夜の長い冬ならではの楽しみを、ご堪能頂ければ幸いです。
・時刻
クリスマス当日。晴れまたは曇り。
滞在時刻は、日が暮れた後~21時頃です。
・場所
大阪は中之島のイルミネーション会場となります。
・できること
【1】イルミネーションを眺める
今回、舞台となるのは以下の三ヶ所です。
・イルミネーションストリート
並木道と、そこに連なる門に施されたイルミネーションが、音楽に合わせて変化し、明滅します。
門の下をくぐって歩き、通りを会場の奥へ進む道です。
音楽は、定番のアップテンポな洋楽や民謡系のクリスマスソング、バラード等です。
・フランスアベニュー
並木に、シャンパングラスの形のイルミネーションを施した通りです。
輝きの強い電球を使用しており、色彩鮮やかにキラキラと輝いて見えます。
通りの低い柵はピンク色の光で縁どられ、シャンパングラスはゴールドにブルーのアクセントが通っています。
・ローズガーデン
回廊式(デジタル表示の8の字のような形)の庭園に、果実のような色とりどりの光を内包した袋が飾られています。二つの庭園の間を結ぶ、可愛らしい橋も水路にかかっています。
【2】屋台でグルメを楽しむ
フランスのクリスマス市風の、白い小屋が並んでいます。
・濃厚なホットチョコレート
・クラムチャウダーや野菜たっぷりのポトフ、シチュー入りの丸いパン
・ポテトやフィッシュアンドチップス、ドイツ風ソーセージ
・食べやすいように筒状に巻いたクレープがあります。
広場にテーブルと椅子が出ているので、屋外で座って食べることができます。
飲食物の持ち込みはご遠慮ください。
ここに登場しない飲食物は、他のものに置き換わる可能性があります。
【3】その他
屋台のある広場から、ローズガーデンへ向かう水辺の遊歩道。
イルミネーションの光から少し離れ、落ち着いた水辺を眺めることができます。
●注意事項
お連れ様がいらっしゃる方は、『同行者のフルネームとID』、または【参加グループ名】を「プレイングの冒頭」にご記載ください。
記載のない場合は、はぐれてしまう可能性があります。
お一人でご参加の方は、他のPC様やNPCと絡む場合があります。
単独行動のみをご希望の方は、【絡み不可】とプレイングにご記載ください。
以下の行為は禁止です(描写されません)。
・未成年者の飲酒喫煙
・公序良俗に反する行為
・戦闘行為および他の来場者の迷惑になる行為
(一般の人々も多数来場しています)
また、シナリオの趣旨から大幅に外れたプレイングは、描写されない可能性があります。
ご理解の上、ご参加くださいませ。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『萩野屋 伊都見(nCL2000181)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
●NPC
萩野屋 伊都見(nCL2000181)が同行します。
気さくで、ほのかに大人びた男子高生です。
会場を巡り歩いているので、お気軽にお声がけください。
「風邪ひかないように、あったかい恰好してきてくれな」
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
6日
6日
参加費
50LP
50LP
参加人数
17/30
17/30
公開日
2017年01月10日
2017年01月10日
■メイン参加者 17人■

●光彩と音色踊るイルミネーション通りにて
通りの両側からアーチを描く並木道が、夜の世界に黄金の雪を降らせるように、瞬く。
わぁ、と声を上げたのは、どちらが先だったろう。
「ほら、たまきちゃんこっちこっち!」
シャンシャンと流れ出す鈴の音に、躍りだすような足取りを隠しきれず、工藤・奏空(CL2000955)は、賀茂 たまき(CL2000994)の手を引いた。
すでに通りを埋めた人混みの合間を縫って、溢れる光を見渡せるよう端へ導く。
「色の波の中に居る様で、とっても幻想的ですね」
「わぁ……ほんとにすごい綺麗だねー……」
奏空の隣で色彩の煌めきに見入りながら、たまきは胸の内に、イベントを支える者たちに感謝する。
だって、昨日も今日も、恋しいあなたと一緒にいられるのだから。
「寒くない?」
気遣う奏空の首から、不意にたまきの首へ回されたマフラーは、大切な贈り物。
「たまきちゃんのマフラー、すごくあったかいね」
同じ温もりに包まれて、弾けるような笑顔の花が咲く。
ベンチに腰掛けたふたりの手には、湯気の立つホットチョコレート。
「ずっとずっとこうして一緒に居たいね」
呟きながら、奏空はたまきの手をそっと探り当てて、握る。
冴えた冬の夜の大気に、ぽかぽかと温まる頬は、誰のせい。
「これからも大変な事が次々とやって来るかもしれませんが、二人で乗り越えて行きましょうね」
たまきもその手を、キュッと握り返す。
大切な人と過ごせる幸せを、二人の手のひらの内に、閉じ込めるように。
視界がさあっと真っ青に染まれば、頭上の雪の結晶が、白銀に瞬き始める。
「こんなところで雪の女王が誘いに来れば、うっかりとついていってしまいそうです」
歩調を合わせながら、時任・千陽(CL2000014)が冗談めかして言えば、
「そうね、古妖が混ざっていても可笑しくなさそうよ」
隣で、環 大和(CL2000477)もごった返す人波を見渡し、くすりと笑んだ。
「君は古妖が好きだったりするんですか? 彼らのことを語るとき、すこし嬉しそうにみえたので」
「古妖とは仲良くしていきたいと思っているの。度が過ぎた悪戯をする子もいるけれど、わかりあえれば共存できると思うから」
そうですね、と応じた千陽もまた、華やかな祝祭に誘われるように、異国の旋律を口の端に紡ぎだす。
目を丸くした大和も、音色に耳を澄ませば、青と白の夢の国に紛れ込んだよう。
「千陽さんも、メロディを口ずさむことがあるのね」
「っと、聞こえてしまいましたか。そんなに意外ですか?」
「初めて聞くけれど、不思議な気持ちにさせてくれるメロディだわ」
白く煙る吐息に気づき、千陽は問う。
「あちらに温かいものがあるそうですから、飲みにいきませんか? 奢らせていただきます、レディ」
「今日はお言葉に甘えさせて頂くわ。丁度温かいものが欲しいと思っていた所よ……ありがとう」
今宵は、もう古妖に化かされているのかもしれないわね、なんて思いながら。
足取りも優雅に、軍人と淑女は歩む。
弾むようなリズムの楽曲が、黄金模様の光の織物に、赤や緑の煌めきをちりばめる。
「自分で弾けるわけでもないんですけど、音楽って好きで」
宮神 羽琉(CL2001381) が楽しげに見上げれば、明石 ミュエル(CL2000172) も、都会の華やぎを丸い瞳いっぱいに映して歩く。
「この時期は、街が光とクリスマスソングで溢れて……ただ歩いてるだけで、楽しい気分になっちゃう……」
ふと、羽琉の足取りがぎこちなくなり、どことなく緊張した面持ちでミュエルを見つめる。
「ミュエルさんはいつも周りを優しく気遣うひとだから……あなたと一緒の今が、とても穏やかな楽しさをくれるんです」
少女は、思いがけず貰った言葉に目を瞬き、ほろり、と満面を緩めて。
「アタシも……いつも頑張ってる羽琉くんを見てると、もっと頑張ろうって、勇気づけられる気がするよ……」
その笑顔が胸を温めて、羽琉も屈託のない笑みを返す。
「寒くなってきたし、屋台で温かいものでも、買いに行こう……?」
「あっでも、あんまり暗いところはですね。ほら、折角の光の祭典なわけで……まあ、だ、だいじょうぶ、ですよ?」
羽琉は上ずってしまった声を窘めるように、背筋を伸ばす。
そんな少年へ、ミュエルは、ふんわりと笑みを浮かべて。
「一緒なら……暗い道も、きっと大丈夫、だよ……」
するりと羽琉の手を握れば、暗闇にぽつりと優しい灯火が燈ったよう。
二人で歩みを揃えて、目指す広場のほうへ。
●揺らめく水辺の遊歩道にて
階段を下りて、一段低くなった川辺の遊歩道をたどっていく。
「遠くから見える光だけでも、とても輝いて見えるね」
水辺の柵を抜ける湿った風に吹かれて、酒々井・千歳(CL2000407)は、会場を遠巻きに眺める。
「光だけでも賑やかな感じですね。イルミネーション……」
と、水瀬 冬佳(CL2000762)が応じた。
ふと、千歳が足をとめて、視線を街の上方へ巡らせれば、冬佳もそれにならう。
「あ、今日は天気も良かったから……見て、空の星もよく見えるよ」
「……本当に。満天の星空、今日は街中からでも随分はっきり見えるんですね」
澄み渡った夜空に、浮かび上がる星々が瞬く。
天上と地上、二つの煌めきの狭間に立つ。
綺麗、と呟きを重ねれば、千歳に肩を抱き寄せられ、冬佳は身を預けた。
「冬佳さん」
緩やかに波打つ水面に響く、名を呼ばれれば。
鍛錬を重ねた千歳の指が、そっと冬佳の頬をすべる。そちらへ顔を向ければ、柔らかな唇の感触に、吐息が吸い込まれた。
少女は見開いた瞼を、ぱたり、と閉じて、その唇を受けとめる。
まるで、凍れる大気から切り離されたように、互いの体温と鼓動を直に感じて……そっと唇が離れる。
「これでもう、この景色も今夜あった事も忘れないね」
千歳が笑みを浮かべれば、冬佳は恥ずかしさを堪えきれずに、少し俯いてしまう。
「…………もう。酒々井君」
この煌めきも、夜も、初めての温もりも……本当に忘れられるはずがないと、胸に刻み込んで。
遊歩道には、見物客に混じって、普段着の人々も行きかう。
中身の詰まった買い物袋を手に提げて、通りすがった紅崎・誡女(CL2000750) も、きらびやかに明滅するイルミネーション会場へ、のんびりと視線を送る。
(この時期は、やはりにぎやかですね。十二月の頭は、寒いばかりで少し物悲しかったですが……)
行く先に、同じく景色を眺めていた伊都見が気づき、どうも、と手を振った。
「だいぶ寒くなってきましたし、年の瀬もほんとに近くなりましたよね」
「ほんと寒いよな……」
同じ方向へ、自然に並び歩いていく。
さっと青を刷いた景色を眺めた誡女は、感嘆にあふれた形容ではなく、脳裏をよぎった思考を、ふと口にする。
「そういえば、電球ではなくLEDが使われだしたのは、青のLEDが出来てからでしたか……?」
わからないなあ、と伊都見は首をかしげながら。
「青のLEDって、綺麗だよな……この時代に生まれたから、見られる風景なんだよなあ。オレたち、時代の最先端にいるんだなって思うよ。……大げさかな?」
と、軽く笑った。
「さて、それでは用事も済みましたし帰りましょうか……」
「ああ、気をつけてな!」
白衣を羽織った後姿を、にこやかに伊都見が見送った。
そんな彼女が、今日はクリスマス当日だったと気が付くのは、研究所の机に買い物袋を置いてから。
●光の実る庭園にて
橋の下を潜り抜ければ、川の流れの中洲に造られた、薔薇の庭園に出る。
今は冬の眠りに就く木立に代わり、植樹の至る所にパステルカラーのまろやかな色彩を灯す光の果実は、まるで妖精たちが掛けたランプのようだ。
三島 椿(CL2000061) の黒髪に、柔らかなピンク色の薔薇が咲く。夢見心地になるのは、何故だろう。
「去年の今頃は、こんな風に二人で出かけるなんて思ってなかったけど……いいな、こういうの」
体温を感じる距離に並び歩く、六道 瑠璃(CL2000092)が、ふと足を止めた。
「椿」
名を呼ばれ、不意に手を握られた椿の頬が、熱を帯びる。
逡巡するように、再び歩みを進めた瑠璃が、指先に胸元のペンダントの青い石をなぞる。
「二人でいられる時間が増えていくのが嬉しいし、思い出が増えていくのが嬉しい」
まるで勇気を手繰り寄せたように、彼は言葉を紡ぐ。
「明日も、明後日も、その先も、二人でいる時間が増えていったら、嬉しいと思う」
ぴたり、と足を止めて、椿へ向き直る。
その両手を、ぎゅっと握った。
「オレ、椿が好きだ。よかったら、付き合ってほしい」
真剣な眼差しに射抜かれ、椿はみるみる熱くなる頬も、駆け足に速まる鼓動もとめられない。
(私は……私は……)
思考はぐるぐる巡って、眼を逸らせない椿の顔が、朱に染まっていく。
(瑠璃さんはずるいわ)
それでも、かっこよくて優しい、彼のもっと近くで一緒に時間を過ごせたなら――
探るように、相手の手を握り返す。
「ゆっくりでもいいかしら」
「ゆっくりでもいい。椿にそばにいてもらいたい」
瑠璃は、確かな意思を瞳にのせて、頷く。
「……私で良かったら」
微かに震えた声が、光の花園へ溶けていく。
藤色、緑、オレンジ、ピンク……まるで優しい色彩のステンドグラスを眺めるような庭園を眺め、二人はそぞろ歩く。
冴え渡る大気の中、繋ぎ合わせた手の温もりは、なんだか気恥ずかしい。
そんな柳 燐花(CL2000695)へ、蘇我島 恭司(CL2001015) は、ふと不安を覚えて声をかける。
「此処もまた綺麗だねぇ……二日連続だと飽きちゃうかな?」
「飽きたりはしないです。本当に綺麗でずっと見ていたいです」
燐花はゆるりと首を振る。明滅する光は、まるで魔法の中にいるみたいで……そう口にしたら、恭司に笑われてしまいそうな気がした。
「夏の花火も冬の光の宝石箱も、どちらも好きです。連れて来て下さって、ありがとうございます」
燐花は自然に口元をほころばせて、お礼を言いながら。
ふと、自分はこんなに笑えるようになったのかと気づいて、瞬きを打つ。
「刹那に輝く花火も良いけれど、宝石のように輝く冬の光も美しいからねぇ……此方こそ、一緒に見に来てくれてありがとう!」
恭司の笑みもまた、自然にこぼれ出る。同じ景色を眺め、同じように綺麗だという気持ちを共有できる、そんな存在が居るというのは、胸に沁みて嬉しいことだから。
「また来年、連れて来て下さいますか?」
「喜んで! 来年と言わず、再来年もその次も……こうやって一緒に見よう!」
燐花は透きとおるような微笑みを、さらにほころばせた。
「……それでは、来年も再来年も……一緒に」
きっと、幾度の季節が廻っても。
互いの想いを重ねて、交わした一つの約束を、二人の宝物に。
可愛らしい趣の橋の上に、切裂 ジャック(CL2001403)が足をとめれば、優しい色彩に包まれた庭園が一望できる。
「こういう幻想的な世界も素敵やんな、ミク」
傍らの片桐・美久(CL2001026)へ、気前よく笑いかけてから、言葉尻を濁らせた。
「あ、ミクって呼ばれるのあかんかったっけ? あんま好きじゃないって……」
美久は、瞼を伏せて少し思案し、視線が戻れば微笑みを向ける。
「みくって響きが女の子みたいで……でも、お兄さんが呼んでくれるなら、好きになれそうです」
「じゃあ他のやつが駄目でも、俺だけはミクって呼ばせてな」
綺麗な光を集めて花束にしてみようか、と悪戯に笑ってみせるジャックへ、美久はすっと手のひらを差し出した。
「ほら、これ……光にかざしたら、キラキラしたお花になると思いませんか?」
そこに、きらりと輝き咲くのは、ビーズの花の付いた髪ゴム。
「メリークリスマス、お兄さん」
「あ、……ありがとう! 俺、クリスマスのプレゼント初めてかも……!」
目を瞠ったジャックは、お返しになるかと、美久の額にちゅっ、と口付けを贈った。
美久も照れながら、笑顔で応じる。
「僕も初めてのプレゼントです」
「ほらミク! 冷たい手やけど、心はあったかいってゆうやん?」
ジャックは親しげに名を呼んで、手を差し伸べる。
その手を、美久がぎゅうっと包み込めば、二人の体温が溶け合って。
「お兄さんの手も心も、ぽかぽかですね!」
心温めるぬくもりに、二人は顔を見合わせ、笑いあう。
庭園の中央にある、背の高いツリーの前で黒崎 ヤマト(CL2001083)は足を止めた。
「ありす、メリークリスマス」
驚いた鈴駆・ありす(CL2001269)の髪へ、緊張した手つきで蒼いリボンを結ぶ。
頬に朱を刷いたありすは、意を決したように、相手の顔を見つめる。
「えっと、あのね、ヤマト。色々と、ホントにありがとう。色んな人と出会えたし、色んな事を体験できた。今のアタシがあるのはヤマトのおかげだから。だからその……これからも、一緒にいてくれる?」
お互い、顔はもう真っ赤になっていたけれども、今は互いの瞳を離さない。
「オレも、一緒にいたい。ありすとずっと一緒に居たい。もっと、色々な事を一緒に経験してみたい」
ヤマトは少女の両手を握り、一つ一つが熱を帯びるような、真剣な言葉を紡いでいく。
「ありす。大好きだ」
夢中に聞いていたありすは、ふっと緊張の糸を緩めたように、笑顔をみせた。
「ありがとう……ヤマト」
そのまま、彼の首に優しく腕を絡めて、まっすぐに唇を重ねる。
その身を受けとめたヤマトは、高鳴る胸の鼓動が弾けそうになる。
繋いだ唇から、互いの熱い想いが流れ込んで、一つに溶けるように。
「……大好きよ。アタシをこんなに夢中にさせた責任、取ってもらうからね」
急に赤面して俯いてしまった彼女を、ヤマトは抱きしめて、額にキスを落とす。
「ずっと夢中でいてもらえるように頑張る! オレも、ありすしか見えないから」
これからも、ずっと一緒に歩いていこうと、囁いて。
夜の都会を流れる川の中洲に、光と人々の想いが実る。
そんな一夜を、優しい月が見守っていた。
通りの両側からアーチを描く並木道が、夜の世界に黄金の雪を降らせるように、瞬く。
わぁ、と声を上げたのは、どちらが先だったろう。
「ほら、たまきちゃんこっちこっち!」
シャンシャンと流れ出す鈴の音に、躍りだすような足取りを隠しきれず、工藤・奏空(CL2000955)は、賀茂 たまき(CL2000994)の手を引いた。
すでに通りを埋めた人混みの合間を縫って、溢れる光を見渡せるよう端へ導く。
「色の波の中に居る様で、とっても幻想的ですね」
「わぁ……ほんとにすごい綺麗だねー……」
奏空の隣で色彩の煌めきに見入りながら、たまきは胸の内に、イベントを支える者たちに感謝する。
だって、昨日も今日も、恋しいあなたと一緒にいられるのだから。
「寒くない?」
気遣う奏空の首から、不意にたまきの首へ回されたマフラーは、大切な贈り物。
「たまきちゃんのマフラー、すごくあったかいね」
同じ温もりに包まれて、弾けるような笑顔の花が咲く。
ベンチに腰掛けたふたりの手には、湯気の立つホットチョコレート。
「ずっとずっとこうして一緒に居たいね」
呟きながら、奏空はたまきの手をそっと探り当てて、握る。
冴えた冬の夜の大気に、ぽかぽかと温まる頬は、誰のせい。
「これからも大変な事が次々とやって来るかもしれませんが、二人で乗り越えて行きましょうね」
たまきもその手を、キュッと握り返す。
大切な人と過ごせる幸せを、二人の手のひらの内に、閉じ込めるように。
視界がさあっと真っ青に染まれば、頭上の雪の結晶が、白銀に瞬き始める。
「こんなところで雪の女王が誘いに来れば、うっかりとついていってしまいそうです」
歩調を合わせながら、時任・千陽(CL2000014)が冗談めかして言えば、
「そうね、古妖が混ざっていても可笑しくなさそうよ」
隣で、環 大和(CL2000477)もごった返す人波を見渡し、くすりと笑んだ。
「君は古妖が好きだったりするんですか? 彼らのことを語るとき、すこし嬉しそうにみえたので」
「古妖とは仲良くしていきたいと思っているの。度が過ぎた悪戯をする子もいるけれど、わかりあえれば共存できると思うから」
そうですね、と応じた千陽もまた、華やかな祝祭に誘われるように、異国の旋律を口の端に紡ぎだす。
目を丸くした大和も、音色に耳を澄ませば、青と白の夢の国に紛れ込んだよう。
「千陽さんも、メロディを口ずさむことがあるのね」
「っと、聞こえてしまいましたか。そんなに意外ですか?」
「初めて聞くけれど、不思議な気持ちにさせてくれるメロディだわ」
白く煙る吐息に気づき、千陽は問う。
「あちらに温かいものがあるそうですから、飲みにいきませんか? 奢らせていただきます、レディ」
「今日はお言葉に甘えさせて頂くわ。丁度温かいものが欲しいと思っていた所よ……ありがとう」
今宵は、もう古妖に化かされているのかもしれないわね、なんて思いながら。
足取りも優雅に、軍人と淑女は歩む。
弾むようなリズムの楽曲が、黄金模様の光の織物に、赤や緑の煌めきをちりばめる。
「自分で弾けるわけでもないんですけど、音楽って好きで」
宮神 羽琉(CL2001381) が楽しげに見上げれば、明石 ミュエル(CL2000172) も、都会の華やぎを丸い瞳いっぱいに映して歩く。
「この時期は、街が光とクリスマスソングで溢れて……ただ歩いてるだけで、楽しい気分になっちゃう……」
ふと、羽琉の足取りがぎこちなくなり、どことなく緊張した面持ちでミュエルを見つめる。
「ミュエルさんはいつも周りを優しく気遣うひとだから……あなたと一緒の今が、とても穏やかな楽しさをくれるんです」
少女は、思いがけず貰った言葉に目を瞬き、ほろり、と満面を緩めて。
「アタシも……いつも頑張ってる羽琉くんを見てると、もっと頑張ろうって、勇気づけられる気がするよ……」
その笑顔が胸を温めて、羽琉も屈託のない笑みを返す。
「寒くなってきたし、屋台で温かいものでも、買いに行こう……?」
「あっでも、あんまり暗いところはですね。ほら、折角の光の祭典なわけで……まあ、だ、だいじょうぶ、ですよ?」
羽琉は上ずってしまった声を窘めるように、背筋を伸ばす。
そんな少年へ、ミュエルは、ふんわりと笑みを浮かべて。
「一緒なら……暗い道も、きっと大丈夫、だよ……」
するりと羽琉の手を握れば、暗闇にぽつりと優しい灯火が燈ったよう。
二人で歩みを揃えて、目指す広場のほうへ。
●揺らめく水辺の遊歩道にて
階段を下りて、一段低くなった川辺の遊歩道をたどっていく。
「遠くから見える光だけでも、とても輝いて見えるね」
水辺の柵を抜ける湿った風に吹かれて、酒々井・千歳(CL2000407)は、会場を遠巻きに眺める。
「光だけでも賑やかな感じですね。イルミネーション……」
と、水瀬 冬佳(CL2000762)が応じた。
ふと、千歳が足をとめて、視線を街の上方へ巡らせれば、冬佳もそれにならう。
「あ、今日は天気も良かったから……見て、空の星もよく見えるよ」
「……本当に。満天の星空、今日は街中からでも随分はっきり見えるんですね」
澄み渡った夜空に、浮かび上がる星々が瞬く。
天上と地上、二つの煌めきの狭間に立つ。
綺麗、と呟きを重ねれば、千歳に肩を抱き寄せられ、冬佳は身を預けた。
「冬佳さん」
緩やかに波打つ水面に響く、名を呼ばれれば。
鍛錬を重ねた千歳の指が、そっと冬佳の頬をすべる。そちらへ顔を向ければ、柔らかな唇の感触に、吐息が吸い込まれた。
少女は見開いた瞼を、ぱたり、と閉じて、その唇を受けとめる。
まるで、凍れる大気から切り離されたように、互いの体温と鼓動を直に感じて……そっと唇が離れる。
「これでもう、この景色も今夜あった事も忘れないね」
千歳が笑みを浮かべれば、冬佳は恥ずかしさを堪えきれずに、少し俯いてしまう。
「…………もう。酒々井君」
この煌めきも、夜も、初めての温もりも……本当に忘れられるはずがないと、胸に刻み込んで。
遊歩道には、見物客に混じって、普段着の人々も行きかう。
中身の詰まった買い物袋を手に提げて、通りすがった紅崎・誡女(CL2000750) も、きらびやかに明滅するイルミネーション会場へ、のんびりと視線を送る。
(この時期は、やはりにぎやかですね。十二月の頭は、寒いばかりで少し物悲しかったですが……)
行く先に、同じく景色を眺めていた伊都見が気づき、どうも、と手を振った。
「だいぶ寒くなってきましたし、年の瀬もほんとに近くなりましたよね」
「ほんと寒いよな……」
同じ方向へ、自然に並び歩いていく。
さっと青を刷いた景色を眺めた誡女は、感嘆にあふれた形容ではなく、脳裏をよぎった思考を、ふと口にする。
「そういえば、電球ではなくLEDが使われだしたのは、青のLEDが出来てからでしたか……?」
わからないなあ、と伊都見は首をかしげながら。
「青のLEDって、綺麗だよな……この時代に生まれたから、見られる風景なんだよなあ。オレたち、時代の最先端にいるんだなって思うよ。……大げさかな?」
と、軽く笑った。
「さて、それでは用事も済みましたし帰りましょうか……」
「ああ、気をつけてな!」
白衣を羽織った後姿を、にこやかに伊都見が見送った。
そんな彼女が、今日はクリスマス当日だったと気が付くのは、研究所の机に買い物袋を置いてから。
●光の実る庭園にて
橋の下を潜り抜ければ、川の流れの中洲に造られた、薔薇の庭園に出る。
今は冬の眠りに就く木立に代わり、植樹の至る所にパステルカラーのまろやかな色彩を灯す光の果実は、まるで妖精たちが掛けたランプのようだ。
三島 椿(CL2000061) の黒髪に、柔らかなピンク色の薔薇が咲く。夢見心地になるのは、何故だろう。
「去年の今頃は、こんな風に二人で出かけるなんて思ってなかったけど……いいな、こういうの」
体温を感じる距離に並び歩く、六道 瑠璃(CL2000092)が、ふと足を止めた。
「椿」
名を呼ばれ、不意に手を握られた椿の頬が、熱を帯びる。
逡巡するように、再び歩みを進めた瑠璃が、指先に胸元のペンダントの青い石をなぞる。
「二人でいられる時間が増えていくのが嬉しいし、思い出が増えていくのが嬉しい」
まるで勇気を手繰り寄せたように、彼は言葉を紡ぐ。
「明日も、明後日も、その先も、二人でいる時間が増えていったら、嬉しいと思う」
ぴたり、と足を止めて、椿へ向き直る。
その両手を、ぎゅっと握った。
「オレ、椿が好きだ。よかったら、付き合ってほしい」
真剣な眼差しに射抜かれ、椿はみるみる熱くなる頬も、駆け足に速まる鼓動もとめられない。
(私は……私は……)
思考はぐるぐる巡って、眼を逸らせない椿の顔が、朱に染まっていく。
(瑠璃さんはずるいわ)
それでも、かっこよくて優しい、彼のもっと近くで一緒に時間を過ごせたなら――
探るように、相手の手を握り返す。
「ゆっくりでもいいかしら」
「ゆっくりでもいい。椿にそばにいてもらいたい」
瑠璃は、確かな意思を瞳にのせて、頷く。
「……私で良かったら」
微かに震えた声が、光の花園へ溶けていく。
藤色、緑、オレンジ、ピンク……まるで優しい色彩のステンドグラスを眺めるような庭園を眺め、二人はそぞろ歩く。
冴え渡る大気の中、繋ぎ合わせた手の温もりは、なんだか気恥ずかしい。
そんな柳 燐花(CL2000695)へ、蘇我島 恭司(CL2001015) は、ふと不安を覚えて声をかける。
「此処もまた綺麗だねぇ……二日連続だと飽きちゃうかな?」
「飽きたりはしないです。本当に綺麗でずっと見ていたいです」
燐花はゆるりと首を振る。明滅する光は、まるで魔法の中にいるみたいで……そう口にしたら、恭司に笑われてしまいそうな気がした。
「夏の花火も冬の光の宝石箱も、どちらも好きです。連れて来て下さって、ありがとうございます」
燐花は自然に口元をほころばせて、お礼を言いながら。
ふと、自分はこんなに笑えるようになったのかと気づいて、瞬きを打つ。
「刹那に輝く花火も良いけれど、宝石のように輝く冬の光も美しいからねぇ……此方こそ、一緒に見に来てくれてありがとう!」
恭司の笑みもまた、自然にこぼれ出る。同じ景色を眺め、同じように綺麗だという気持ちを共有できる、そんな存在が居るというのは、胸に沁みて嬉しいことだから。
「また来年、連れて来て下さいますか?」
「喜んで! 来年と言わず、再来年もその次も……こうやって一緒に見よう!」
燐花は透きとおるような微笑みを、さらにほころばせた。
「……それでは、来年も再来年も……一緒に」
きっと、幾度の季節が廻っても。
互いの想いを重ねて、交わした一つの約束を、二人の宝物に。
可愛らしい趣の橋の上に、切裂 ジャック(CL2001403)が足をとめれば、優しい色彩に包まれた庭園が一望できる。
「こういう幻想的な世界も素敵やんな、ミク」
傍らの片桐・美久(CL2001026)へ、気前よく笑いかけてから、言葉尻を濁らせた。
「あ、ミクって呼ばれるのあかんかったっけ? あんま好きじゃないって……」
美久は、瞼を伏せて少し思案し、視線が戻れば微笑みを向ける。
「みくって響きが女の子みたいで……でも、お兄さんが呼んでくれるなら、好きになれそうです」
「じゃあ他のやつが駄目でも、俺だけはミクって呼ばせてな」
綺麗な光を集めて花束にしてみようか、と悪戯に笑ってみせるジャックへ、美久はすっと手のひらを差し出した。
「ほら、これ……光にかざしたら、キラキラしたお花になると思いませんか?」
そこに、きらりと輝き咲くのは、ビーズの花の付いた髪ゴム。
「メリークリスマス、お兄さん」
「あ、……ありがとう! 俺、クリスマスのプレゼント初めてかも……!」
目を瞠ったジャックは、お返しになるかと、美久の額にちゅっ、と口付けを贈った。
美久も照れながら、笑顔で応じる。
「僕も初めてのプレゼントです」
「ほらミク! 冷たい手やけど、心はあったかいってゆうやん?」
ジャックは親しげに名を呼んで、手を差し伸べる。
その手を、美久がぎゅうっと包み込めば、二人の体温が溶け合って。
「お兄さんの手も心も、ぽかぽかですね!」
心温めるぬくもりに、二人は顔を見合わせ、笑いあう。
庭園の中央にある、背の高いツリーの前で黒崎 ヤマト(CL2001083)は足を止めた。
「ありす、メリークリスマス」
驚いた鈴駆・ありす(CL2001269)の髪へ、緊張した手つきで蒼いリボンを結ぶ。
頬に朱を刷いたありすは、意を決したように、相手の顔を見つめる。
「えっと、あのね、ヤマト。色々と、ホントにありがとう。色んな人と出会えたし、色んな事を体験できた。今のアタシがあるのはヤマトのおかげだから。だからその……これからも、一緒にいてくれる?」
お互い、顔はもう真っ赤になっていたけれども、今は互いの瞳を離さない。
「オレも、一緒にいたい。ありすとずっと一緒に居たい。もっと、色々な事を一緒に経験してみたい」
ヤマトは少女の両手を握り、一つ一つが熱を帯びるような、真剣な言葉を紡いでいく。
「ありす。大好きだ」
夢中に聞いていたありすは、ふっと緊張の糸を緩めたように、笑顔をみせた。
「ありがとう……ヤマト」
そのまま、彼の首に優しく腕を絡めて、まっすぐに唇を重ねる。
その身を受けとめたヤマトは、高鳴る胸の鼓動が弾けそうになる。
繋いだ唇から、互いの熱い想いが流れ込んで、一つに溶けるように。
「……大好きよ。アタシをこんなに夢中にさせた責任、取ってもらうからね」
急に赤面して俯いてしまった彼女を、ヤマトは抱きしめて、額にキスを落とす。
「ずっと夢中でいてもらえるように頑張る! オレも、ありすしか見えないから」
これからも、ずっと一緒に歩いていこうと、囁いて。
夜の都会を流れる川の中洲に、光と人々の想いが実る。
そんな一夜を、優しい月が見守っていた。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
特殊成果
なし

■あとがき■
皆様、素敵なプレイングをありがとうございました。
夜薙の中では、全員がMVPです。
形式としてのMVPは、特に勇気を振り絞ったであろう御三方へ。
ご参加いただき、誠にありがとうございました。
夜薙の中では、全員がMVPです。
形式としてのMVPは、特に勇気を振り絞ったであろう御三方へ。
ご参加いただき、誠にありがとうございました。
