過去ログ
帝都にて
[2019/02/19]

「聖域、か」
ヴィスマルク5世は伝令より伝えられたその情報に流麗な眉をしかめる。
「20年前でも使用されたアレ、か。デウスギアであれば破壊も可能ではあるが、我が国の切り札(ジョーカー)を切るには早い、な」
ヴィスマルク5世の肩にしなだれかかる皇后がつぶやいた。
「大方我が国への挑発か……それとも……」
存外にイ・ラプセルが健闘したということか。
「ああ、貴様は大義であったな。退がれ」
伝令兵を退がらせたヴィスマルク5世は伝令の差し出した羊皮紙を上からまた読み直し精査する。
「道化師! 道化師」
皇后が両手を叩いていつものように道化師、アレイスター・クローリーを呼び出す。
「はいはい、いるよ、僕ぁここにいるよ」
「ねえ、聖域ですって」
「ああ、20年前のアレかあ、あれ硬いんだよねえ」
「当時はデウスギアでしか壊すことができなかったが、今はあの頃にくらべ兵器の威力も上がっている。戦術兵器をもって、かの聖域を破壊することは可能と思うか? 道化師よ」
20年前に比べヴィスマルクにおける蒸気関連の兵器は驚くほどに発達してきている。大火力をもつ列車砲、重戦車。まだ開発中ではあるが爆撃機もないわけではない。
「やってみなきゃわからないけど、ヘルメリアのプロメテウスならいい線いくかもね。うちの戦力でいくなら、そうだなあ、爆撃機を聖域の真上に落とすとかさ」
クローリーはそう答える。
「そう! そうね!! じゃあ、道化師。貴方に爆撃機をかしてあげるから、貴方ごと飛び込んできてくれない? ついでにあなたのその得体の知れない魔導で爆発力を強化してみたら壊せるのじゃないかしら?!!」
両手をパチパチと叩きながら満面の笑みで皇后は提案する。
「あのさ! 僕を便利な兵器扱いすんのやめてくんない??? 自爆しろとかどんな拷問だよ?」
「なによ、便利どころか、あなたってすっごく不便じゃない、たまには便利にやくだちなさいな」
「■■■■、キミの■■■■殿の教育どうなってんだよ」
「悪くはないとは思うが」
クローリーに水を向けられたヴィスマルク5世はしれっと皇后の作戦に同意する。
「はぁ、あのさ、ちょっとヘルメリアに行ってきてプロメテウス出せないか聞いてくる。我が帝国もプロメテウスの現状を知ることができる、聖域も壊せるかもしんない、もし壊せるなら万々歳! それでいいだろ?」
「列車砲で、壊れちゃったおもちゃでなんとかなるのかしら?」
昨年、ヴィスマルクはヴィスマルクに向け配置されたプロメテウスをできたばかりの列車砲で破壊したばかりだ。ヘルメスはずいぶんとお冠だった。当然だろう。彼らヘルメリアの蒸気技術の粋を結集した兵器を試し撃ちで破壊されたのだ。
「それだよ、それ、あいつ多分それ根にもってると思うぜ」
「あんな場所に配置している方が悪いのよ。だって可愛くないもの」
アレイスター・クローリー (VC: えまる・じょん)
ヴィスマルク5世(VC: 神崎恭一)
ヴィスマルク皇后(未登録VC: H8K2)