――シャンバラとの決戦が目の前に迫った、ある夜のことだった。

「水鏡が……」

　王都にある水鏡階差演算装置が、新たな未来の映像をそこに映し出した。
　かの装置が映すのはあくまでも断片。全体像の何割かに過ぎない。
　ゆえに、プラロークによる解析が必要となるのだが、しかし、今映されようとしている未来の光景は、ある意味では解析などする必要がないものだった。

「何だ、これは？」

　プラロークの一人が、そこに映し出された映像を見て息を飲み込んだ。
　それは、天から降り注ぐ純白の光であった。
　夜だというのに空は眩しく輝いて、真昼よりもさらに明るい。
　光は上空からまっすぐイ・ラプセル王都へと注がれて、全てを焼いた。

「城が……、都が……！」

　プラローク達が見ている前で、王都は完全に光に包まれ消失した。
　強大に過ぎる威力。
　果てなき破壊力。
　間違いない。これは――

「アルス・マグナ……」

　シャンバラの超規模破壊神造兵器『大いなるすべ（アルス・マグナ）』。
　それは、敵の切札が王都を焼くという最悪の予知であった。

　アルス・マグナの発射はまだ先のことではなかったのか。
　などという疑問は、この未来予知の前には全く意味をなさない。
　水鏡が映し出した以上、それが近い未来に現実として起こりうることだ。

「自由騎士を集めろ、早く！

　焦燥駆け巡る演算室内で、プラロークの声がこだまする。
　かくして、自由騎士達に緊急招集がかけられることとなった。
　白き神を奉ずる楽土との最終決戦は、今まさにこれから始まろうとしていた。


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