過去ログ
[2019/03/19]

「これはいかなることかね、ゲオルグ・クラーマー!」
聖央都ウァティカヌスのさらに中央、ミトラース大聖堂にて。
教皇ヨハネス・グレナデンは、戻ってきたゲオルグに対してそう怒鳴った。
普段温厚な彼がこれほどの激昂を見せることは滅多にない。
しかし、怒りを向けられたゲオルグは恭しく頭を下げて、
「大変申し訳ございません、教皇猊下。叱責は後程に。今は諸々の差配をするので手一杯でして。ああ、何たる未熟。本来であればこのゲオルグ、教皇猊下の憤怒をすべて受け入れるべき身ではありますが、今はとかく時間が惜しいのでございます。ですのでどうか、今少しの辛抱をお願いいたします」
――おまえにかける時間はない。
要約すればそのようなことをヨハネスに言って、彼は配下の大司教に対して指示を出すため別室に移った。
そこには、シャンバラの行政を担う大司教達が集められていた。
「報告はすでに聞いています。落ちた管区は一旦捨てましょう。そこにまだ兵が残っているのならばすぐに撤退を命じなさい。抗戦は主の望むところではありません。代わりに、今残っているグラーニア、アストラント、メルキュールの各管区の防衛に振り分けるのです。これ以上、シャンバラの国土を異神の教徒共に荒らされるワケにはいきませんからね」
「了解いたしました。すぐに手配いたします」
ゲオルグの指示を受けて、数名の大司教が部屋を後にする。
すでに、イ・ラプセル以外の国もシャンバラを切り取りに来ている。
特にヴィスマルクは往年の因縁もある。
ある意味ではイ・ラプセル以上に警戒するべき敵国であろう。
「枢機卿猊下、ピルグレイス大管区についてはどうなさいますか?」
大管区は先頃、ピルグレイス大聖堂にあった聖櫃を破壊されたばかりだ。
が、逆にいえばまだそこまでしか被害が出ていないことになる。
聖櫃があった大聖堂は大管区内の主要拠点であったが、点は点でしかなく、大管区全体にイ・ラプセルの影響が及んでいるワケではない。
「直ちに聖堂騎士団を派遣するように。大管区の幾らかは敵の勢力圏内に落ちるかもしれませんが、全てをくれてやる謂れもありません。全力での死守を」
「はっ!」
「それ以外の聖堂騎士団は聖央都に集めるように。聖域の守りが揺らぎかけている以上、この都を守ることこそが至上の命題と思いなさい」
「枢機卿猊下、落とされた管区より多数の民が他の管区に流れ込んできていますが、そちらはどのように――?」
「無論、最大限の庇護を。彼らは皆、我らが主ミトラースの愛する子供達なのです。我々の兄弟なのです。救いなさい。助けるのです。まずは難民の数と、各管区が受け入れ可能な数を把握し、それをもとにどの管区に何人を送るかを決定するのです。できる限り手厚く保護するように。そのための費用と手段は問いません。いいですね」
このようにして、ゲオルグは山積した問題に次々対応していった。
現状、シャンバラ皇国は危機に立たされている。
それを支えている柱のうちの一つは、間違いなくゲオルグであろう。
だが、この場に集まった大司教達が最も気になっているのは、この国が起こすべき次の行動だ。
「そういえば――」
ふと、ゲオルグがいきなり話題を変えてきた。
「“獄層”の方はどうなっていますか。何か変化などは?」
「は、いえ、特にはありませんが」
「それは重畳」
彼はにこやかに笑う。
“獄層”とはこのウァティカヌスの地下に存在する大きな施設のことだ。
そこでは捕らえられたヨウセイ達が“飼育”されている。
これまで各管区で消費されていた聖櫃の燃料を“生産”していたのが、この地下施設“獄層”であった。
「さて、では次の一手と行きましょう」
ゲオルグの言葉に、大司教達がザワつく。
ここまで追い込まれた現状、必要なのはまさに起死回生の一手だが――
「イ・ラプセルに講和を打診します」
⇒【S級指令】枢機卿との講和会議(質問受付時間 3/27の12:00迄)
☆注意:このスレッドはS級指令参加者が参加することはできません。
(現在書き込んでいる方に関しましては、S級指令の結果が出た後に、調整いたしますので、書き込んだ=予約/参加禁止ではありません)
関連依頼:
⇒【S級指令】ピルグレイス大聖堂制圧(担当ST:吾語)
ゲオルグ・クラーマー
(VC:L)