過去ログ

ヘルメリアに暗躍する思い

[2019/04/27]

 シャンバラ戦、決着。
 ヘルメリア首都ロンディアナは戦争結果を受けて議会が行われていた。
「今回の戦争における費用は――」
「拡大した領地より得られた奴隷は――」
「今後の展望は――」
 そういった報告事項の後に、沈黙が落ちる。皆、言わなく手はいけない事項がある事を分かっているが、敢えて誰もそれを告げずにいた。
「イ・ラプセルにもっていかれた形だな」
 それを告げたのは『蒸気王』の声だ。伝達管から聞こえる無機質な声が、沈黙した議会によく響く。
 満を持して打ち出したヘルメリアの花形プロメテウスは十全に機能せず、再起動用のエネルギーを待っている間に戦争は終結する。報告を読み解けば、その影にイ・ラプセルの妨害があったことは明白だ。
 こちらが動くより先にイ・ラプセルは動いている。それがデウスギアの水鏡運命階差演算装置の効果であることは明白だ。だがその精度はいまだに謎に包まれ、予測が出来ない。未来を読み解く、というふざけた意見も出るほどだ。
 反論の言葉もない議員達。しかし『蒸気王』はそれを予期していたかのように言葉を続ける。
「良い。完全勝利とは言わないが得るものはあった。大陸に足掛かりをくれたことは大きい」
「『プロメテウス/カーネイジ』はどうされます?」
「急ぐ必要はない。プロメテウスはそこにあるだけで武力示威になる。睨みを付ける意味も含め、現状維持だ」
「ヴィスマルクへの牽制ですか。しかしかの国に対する圧力は『新型』の――」
「ヴィスマルクではない」
 報告をする議員の言葉を遮る『蒸気王』。
「イ・ラプセルへの牽制だ。あの国を小国と侮ってはならない。
 我がヘルメリアの敵とみなし、打ち滅ぼすのだ」

「あの戦争嫌いなアクアディーネが勝つとはね。少し意外な結果だよ」
『蒸気王』の隣でヘルメスが口を開く。
「イ・ラプセルが聖櫃システムのようなものを作り出す可能性は?」
「ない。アクアディーネの性格からすれば聖櫃のようなシステムは作らないだろう」
 首を振って否定するヘルメス。
「なら問題ない。シャンバラの強みは肥沃且つ広大な大地だ。『枯れた土地』をどれだけ有しようが国力としてはさして強みにはなるまい。
 戦後処理に追われている間に工作と強兵に努めよう」
『蒸気王』の言葉は正しかった。だが――
(侮るな、と言っている傍からこれだものな。言ってることは正しいけど、それじゃあ駄目だ。
 その常識を覆すからこその可能性<■■■シス>なんだよ)
 細くほほ笑むヘルメス。何も言わずに窓の外を見る。


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ヘルメス(VC: 誤侍郎