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【楽土陥落】聖央塔の魔女狩り将軍



●決戦を前に彼は嗜む
 ワイングラスに注がれたのは、鮮血のように赤い液体。
 ゲオルグ・クラーマーはそれを一口啜って、小さく息を吐き出した。
 ウォンウォンと、周りからは低い音が鳴っている。
 ここは、本来人がいるべき場所ではない。
 聖央都ウァティカヌスのさらに中央にある純白の螺旋塔――聖央塔。
 高さ100mを超えるこの聖塔こそは、シャンバラが誇る超規模破壊神造兵器アルス・マグナそのものであった。
 ゲオルグがいるのは、その地表部分。
 汲み上げた魔力を純粋な破壊エネルギーへと変換する魔導装置機関部である。
 そこはまるで人の臓腑の中のようであった。
 やけに滑らかな質感の魔導材質が、有機的な形状で絡まり合っている。
 ただし色は全て白。
 純白の臓腑が壁から天井まで絡まり合って昇っているのだ。
 ウォンウォンという音は、この純白の臓腑が魔力を上へと送る音だった。
 この、シャンバラ内でも特に現実感を欠いた場所で、ゲオルグは簡素な木のテーブルと椅子を用意し、そこに座して赤い液体を飲み続けた。
「枢機卿猊下」
 彼を呼ぶ声がする。
 向くと、そこには真っ赤な鎧を着た長身の女性がいた。
 赤竜騎士団団長アルマイア・エルシーネスである。
「お前か」
「猊下、騎士団の配置を――」
「ここは俺とお前だけだ。格式ばった言い方はしないでいい」
 ゲオルグに言われ、アルマイアは言いかけた口を閉ざす。そして、
「……義兄様」
「ああ、どうした。我が麗しの義妹よ」
「赤竜騎士団の招集を完了した。配置について指示をいただきたい」
「やれやれ、素で堅苦しいねぇ、お前の喋り方は」
「生まれつきだ。許されよ」
「別に構わねぇさ。……一杯、どうだ?」
 軽く笑って、ゲオルグはアルマイアにワイングラスを差し出した。
「……それは?」
「ワインだ。魔女の血が混ぜてある」
「悪趣味ではないかと」
「知ってんよ、ンなこたぁ」
 肩をすくめて、ゲオルグは瓶を放り捨てた。
 床に落ちた瓶は割れて、中のワインが大きく広がる。
 ワインはすぐに蒸発して消えた。混じり込んだ血の魔力を、魔導装置が感知して吸い尽くしたのだ。
「おーおー、何とも貪欲なことで」
「これは……」
「“聖櫃の雛型”さ、こいつは」
 こともなげに言って、ゲオルグは笑う。
「命と魔力を諸共吸い上げ、別の力に変えて放つ。どうよ? 聖櫃そのままだろう? 聖櫃ってのは元々、アルス・マグナの魔力吸収・集束・蓄積・変換機構を原型として、主ミトラースがそれを模倣して作り上げたモンなのさ」
「…………」
 アルマイアはその美しい顔を驚きに歪めはしたが、特に何かを言うことはなかった。むしろ、ここが原点なのかと納得したくらいだ。
 聖央塔は普段は厳重に管理され、立ち入りは禁止されている。
 だからこそ、この光景とそれが持つ機能には驚かされたが、しかし、今はそれはさして重要ではない。重要なのは――
「ここで、迎え撃つ気ですか」
「聡いねぇ、さすがに」
 ゲオルグがニヤリと笑った。
「まぁ、そうでもしないと間に合わないからな」
 彼は床の下に目を向けると、爪先で床を幾度か叩いた。
「獄層に集めた異端共だけじゃあ、さすがに魔女の代わりは務まらねぇ。一匹あたりから採れる量がまるで足らねぇんだ。やっぱ魔女でなきゃな」
「だから、ここで、と……?」
「最後の手段だ。是非もねぇだろ」
 ゲオルグは肩をすくめるが、アルマイアはそんな彼を鋭く見据えた。
「義兄様が出る必要がありのですか? ここは私が――」
「やめとけ。お前はシャンバラ最強戦力だろうが。我が神をお守りしろ」
「ならば、義兄様が指揮を執られるとよい」
「いいや。お前は教皇猊下に指示を仰げ。俺の持ち場はここだ」
「ヨハネス……。あの愚物の指揮下に入れと……?」
 珍しく、アルマイアが顔をしかめた。彼女をして、教皇ヨハネスは敬うに値しない存在であるようだった。
「まぁ、そう言うな。俺の発破が効いたなら、アレも相応に化けるだろうよ」
「……その言葉、信じますよ」
 まだ幾分不服そうではあったが、アルマイアは引き下がった。
 そのときのことだった。遠くから地鳴りのようなものが聞こえてきた。
「来たか」
 それが敵軍の進撃の音であると、ゲオルグはすぐに見抜いた。
「そろそろ行け。部下を待たせっぱなしだろうが、お前」
「しかし義兄様のみでここに留まるのは……」
「クック、確かに俺も持ち場はここだが、俺だけとは言ってないぞ?」
 刹那、アルマイアはようやく気づいた。
 自分の背後に立っている、幾つかの人影。シャンバラ最強騎士団を束ねる彼女をして、そこに立たれるまで全く存在に気づくことができなかった。
 振り向くと、そこには漆黒の鎧を身に帯びた騎士が六人ほど。
「……彼らが?」
「そう、俺のとっておきだ。……まぁ、今のところこれで全員だがな」
 音もないまま立っている六人を見渡し、アルマイアはゲオルグに向き直る。
「それでは、私は行きます」
「ああ」
「おそらくは、ここで別れとなりますが」
「ああ」
「何か、ありますか?」
「一人でも多く殺せ。限界が来たら死ね。――生き残るな。必ず死ね」
「では、そのように」
「それと」
「はい、他に何か」
「久しぶりに『マリアンナの妹』と会話できて嬉しかったぜ。感謝する」
「…………」
 アルマイアは何も言うことなく会釈だけして去っていった。
 それを見送って、ゲオルグは手の中にあるワイングラスを握り潰した。

●聖塔へ
 聖央都に突入した自由騎士達のうち、何割かは聖央塔を目指していた。
「塔はあっちだ、急ぐぞマリアンナ!」
「分かってるわ!」
 自由騎士達と共に、マリアンナ・オリヴェル(nCL3000042)もまた聖央塔を目指して走り続けた。
 彼女達がそれだけ急いでいるのには理由があった。
 水鏡が映し出してしまったのだ。
 決戦のさなかにアルス・マグナが発射されるという、最悪の未来を。
 敵の時間稼ぎは潰したはずだ。
 それ以前に、こんなに早くアルス・マグナが発射されるはずがない。
 自由騎士達のそういった認識を、しかし、水鏡の映像は全て裏切っていた。
 ならばイ・ラプセルが打つべき手段はただ一つ。
 速やかにアルス・マグナに到着し、敵戦力を打倒し、制圧する。
 ――それしかない。
 強い焦りを胸に、彼女達は走った。走った。走った。
 途中、剣戟の音が遠くに聞こえたり、割と近くで魔法が炸裂したりした。
 戦っているのだろう。自分達以外の自由騎士が、シャンバラの敵を相手に。
 おかげで、聖央都を往くのは案外楽だった。
「……見えた!」
 マリアンナが指をさす。そこに、白い光に包まれた螺旋の塔があった。
 水鏡に映し出されたというアルス・マグナ本体――聖央塔。
 だが同時に、自由騎士の一人が言った。
「だけど簡単すぎないか。これは、もしや罠か?」
「だとしても行かないと……。アルス・マグナが……」
「ああ、分かってる。用心はしておこう。今まで見たことないような技を使う連中も水鏡に映ってたらしいしな」
「……行きましょう」
「ああ」
 そして、決断したマリアンナ達一団は聖央塔の中へと突入した。

●その因縁に決着を
「ゲオルグ・クラーマー!」
 聖央塔の中へ、ついにイ・ラプセルの自由騎士団が踏み込んできた。
「ン~フフフ♪ そう大声で叫ばずとも、私はここにいますとも」
 木の椅子に座り、テーブルの上に足を投げ出した状態で、ゲオルグはいつもの人をおちょくるような笑みを浮かべて自由騎士を出迎えた。
「これはこれは、イ・ラプセルの皆様。ようこそ聖央都ウァティカヌスに。どうです、我が神の都は美しゅうございましょう? ククク、ハーッハハハ!」
 左右に総勢六人の黒騎士を侍らせて、彼はあくまで余裕を見せた。
「“魔女狩り将軍”ゲオルグ……!」
「おやおや、これはマリアンナ嬢ではありませんか。まさかこのようなところでお会いできるとは奇遇ですね。いや、これは必然? 運命でしょうか?」
「お前は……!」
 ゲオルグの挑発に、マリアンナは気色ばんだ。
 しかし、彼女の怒りなどどこ吹く風と、ゲオルグはさらに挑発を重ねる。
「どうやらご両親とも再会できたようで。これで思い残すことはありますまい? ならばここで他の皆様と共に、豚のように死んでいただきたい。その死を、我が神ののちの栄えに捧げてさしあげましょう」
「言ってくれるな枢機卿殿。だがアルス・マグナを発射するまでの時間も稼げないまま、討たれるのはそちらではないのか?」
 言い返してくる自由騎士に、ゲオルグは笑みを深めた。
「いいえいいえそのような! 今この場に皆様がいらっしゃった時点で、時間を稼ぐ必要はなくなりました! フフフ、フハハハハハハハ!」
「何を……ッ!?」
 そのとき、自由騎士は不意に虚脱感を感じた。
 疲労? そんな馬鹿な!
「そう、それは疲労などではありません。神の敵たる皆様の命がこの場に吸収されているだけのこと。フフフフフ、アルス・マグナの器を満たす最後の命! それこそがこの場にいる皆様なのですよ!」
「馬鹿なッ! そんな簡単にアルス・マグナが撃てるはずが……!」
「撃てるのですよそれが! すでに我が主ミトラースによりアルス・マグナを発射するためのスイッチは押されています、あとは、器に力を満たすのみ!」
「ゲオルグ! お前はその力をどこから……!」
 アルス・マグナを発射するためには莫大な魔力が必要だ。
 それは、通常の手段で蓄積する場合一か月以上を必要とするもののはず。
 きっとゲオルグはそれを加速させるための手段として、“獄層”のヨウセイを使おうと考えていたのだろう。
 しかし、それはヨウセイを救出したことで不可能となった。
 ならば、魔力の蓄積・充填を加速させる手段はないはず。
「魔女が使えないならば、代わりの“薪”を用意すればいいだけでしょう?」
「まさか……!」
 自由騎士が、その言葉に目を剥いた。
「キジンと、マザリモノ……! その命を燃料にしたのか!?」
「そうですとも。ついでにこの都の市民もねェ!」
「「なっ……!?」」
 マリアンナと自由騎士が、戦慄に身を強張らせた。
「市民……、まさか、ノウブルまで……?」
「言っておきますが、こっちから頼んだワケじゃあありませんよ? 我が主ミトラースにその命を捧げ、その教えに殉じ、罪ある者を討ち滅ぼす。彼らはその尊き使命を自ら果たそうと、率先して名乗り出てくれたのですよ」
「何て、ことを……!」
「これは私にとっても実に意外な展開でした。おかげで、アルス・マグナの器には今や99.5%まで魔力の充填が完了できている。魔女を使う場合よりも七倍の数の“薪”が必要となりましたが、まぁこの際それは目を瞑りましょう」
 言い切るゲオルグに、自由騎士達は改めて嫌悪感を感じた。
 シャンバラの教えがどうであろうと、ミトラースの治世がどれだけ優れていようとも、自国の民に犠牲を強いる。そんな在り方が正しいはずがない。
「ゲオルグ・クラーマー……!」
 名を呼ばれ、ゲオルグはその顔に張り付く笑みを嫌らしく深めた。
「クックックック! 我が国の神造兵器は器に力が溜まり切らねば撃てないのが難点。されど最後の力は今ここに集いました! さぁ、我がシャンバラのためにその命、その魔力、髄の髄まで捧げてもらいましょうかねぇ!」
「冗談じゃないわよ!」
 自身も虚脱感に苛まれながら、マリアンナはゲオルグに言い返した。
 思えば、イ・ラプセルとシャンバラの因縁は、自分がゲオルグから逃げてイ・ラプセルに到着したところから始まっている。
 何やら、彼個人としても自分に執着があるようだが、そんなものは気持ち悪いだけで全くもって願い下げだ。
 マリアンナが願うことはただ一つ。
「終わってしまえ、シャンバラ! 消えてしまえ、ゲオルグ・クラーマー! 私は、私達(ヨウセイ)は、みんなと一緒に未来を掴む!」
「ヒハハハハハハハハハハハハハハ! 終わらせてみせろよ、自由騎士団! 消してみせろよ、マリアンナ! 俺は、俺達(シャンバラ)は、ここにいるぞォォォォォォォォォォ!」
 ――今こそ、この因縁に決着を。そして楽土を陥落せしめよ!


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
EXシナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
担当ST
吾語
■成功条件
1.18ターン以内にゲオルグを倒す
----------------------------------------------------------------------
「この共通タグ【楽土陥落】依頼は、連動イベントのものになります。同時期に発生した依頼ですが、複数参加することは問題ありません」
----------------------------------------------------------------------

さぁ、やってまいりました。
ある意味でのメインイベント。ゲオルグ・クラーマーとの決戦です。

思えば遠くへ来たもんです。
当初の予定では、こいつ顔つきNPCになる予定さえなかったのに。
それでは、魔女狩り将軍との最終決戦の詳細に入りましょう。

◆戦場
・聖央塔地表部
 神造兵器アルス・マグナの砲塔である聖央塔の地表部分での戦闘となります。
 ここは屋内になっていますが戦闘できるだけの広さはあります。
 内部は真っ白い内臓の中みたいな、かなりキショい空間となっております。

 なお、今回の戦場は特殊な環境となっており、
 毎ターン終了時に皆さんのMPが5%ずつ減少していきます。
 MPが0になった場合はHPが5%ずつ減少していきます。
 これは、皆さんの生命力がアルス・マグナの機関部に吸収されているからです。

 また、成功条件通り、3分(18ターン)以内にゲオルグを倒す必要があります。
 もし3分を過ぎた場合、アルス・マグナがイ・ラプセル王都へと発射されます。
 アルス・マグナが発射されるとシナリオは失敗となります。
 アルス・マグナの破壊を試みた場合、『必ず』敵の妨害が入って失敗します。

◆敵勢力
・“魔女狩り将軍”ゲオルグ・クラーマー
 最後の最後まで『魔女の革鎧』という己にとっての神職衣を着続けています。
 マリアンナに対して何らかの執着を抱いているようです。
 高レベルネクロマンサーであると同時に、接近戦も心得ています。
 ネクロマンサーのスキルを使用すると共に――?

 Exスキル:マレウス・マレフィカルム
 魔女の力を奪い、魔女の行動を阻み、魔女の命脈を断ち切る。これぞ我が正義、魔女への鉄鎚である。
 敵近単・ヨウセイ特攻/行動阻害

・黒騎士×6
 聖堂騎士のいずれの騎士団にも属していない、漆黒の鎧を纏った騎士です。
 ゲオルグは彼らを「自身のとっておき」と称しています。
 ここまで一度も登場したことがないスキルを使用するようです。
 ネクロマンサーのスキルも使用してくるようです。
 いずれも現在の自由騎士よりも高レベルです。
 また、纏っている漆黒の鎧はHPチャージの効果が付与されています。

※ゲオルグも黒騎士も説得には決して応じません。特攻兵と化しています。

◆マリアンナについて
 マリアンナは皆さんの指示に従って動きます。
 指示がない場合は個人的な判断により行動します。


今回は難易度も相当なものとなっています。
判断を間違えれば時間はすぐに過ぎてしまうでしょう、お気を付けください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
4個  8個  4個  4個
10モル 
参加費
150LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
10/10
公開日
2019年04月20日

†メイン参加者 10人†



●1、2、3、4――
 白が脈打つ塔内部、響いたのは『魔女』エル・エル(CL3000370)の声だった。
「開幕の号砲よ、マリアンナ! カマしてやんなさい!」
「――くらえェェッ!」
 マリアンナが気合の声と共に矢を放つ。
 だが、ゲオルグの前に立った黒騎士が長剣を一閃。
 半ばから立たれた矢が、勢いを失って地面に落ちた。
「号砲と言いながら放ったのは見えずの矢か! 殺意満点じゃあないか!」
 黒騎士が作る壁の向こう、ゲオルグは腕を組んで笑った。
「当たり前だろうが」
 言い返すのは、『RED77』ザルク・ミステル(CL3000067)。
「正念場なんだ。やれることは何でもするさ」
「……クク」
 ゲオルグはただ笑うだけだった。だが、笑みは深まっていた。
「この期に及んで余裕ぶってくれちゃって、ホントムカつくヤツね!」
 抑えきれない殺気を振りまき、『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)が指先に魔力を集める。
「――燃やすわ!」
 虚空に記された文字は炎となってゲオルグを襲った。
「いいのかい? 始まって早々そんなに力を振り絞って?」
 抜いた剣で炎を切り裂き、ゲオルグがそう尋ねる。
 今、この場には自由騎士の命を喰らう機構が働いていた。
 既にそれは虚脱感として表れている。おそらく長くはもたないだろう。
「とんだ愚問ね」
「――そちらこそ、覚悟はできていますよね?」
 答えたのは、『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)と『RE:LIGARE』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)であった。
 命を吸われる喜色悪さを肌に感じながら、だが、彼女達は前へと出る。
 一方で、黒騎士達もまた前へと踏み出した。
「悪趣味な空間に、悪趣味な黒い騎士。……豪勢なラインナップね」
 軽口を叩いて、『神の御業を断つ拳』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)もまた最前線へと自ら進んでいく。
 場が孕む緊張は急激に膨れ上がっていった。
 弓に新たな矢をつがえ、マリアンナが頬に汗を伝わせる。
「大丈夫だ、マリアンナ」
 『鋼壁の』アデル・ハビッツ(CL3000496)がそう告げた。
「負けはしない。勝つ。最短で、最速で、全ての一撃に魂を込めることで」
「……クハッ!」
 それを聞いていたゲオルグが、盛大に噴き出した。
「言うは易いと、誰もが分かること。――言うなら示せよ、行動で!」
「敗れたいならそうしてやろう」
 挑発に挑発で返し、アデルは後ろに控える二人のヒーラーを見た。
「頼む、支えてくれ」
「はい! 分かってます!」
 『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)が威勢よく答えた。
 だが一方――『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。
「ついに来てしまったなぁ、このときが」
 彼女だけは確かに何かを惜しんでいた。
「だがここで殺さにゃ止まらんだろう、貴様」
 ゲオルグは何も言わない。
 ツボミは残念そうに息をつく。だがすでに、彼女にも覚悟はあった。
「ならばそうするさ。それしかないのだからな」
「行くわ――! ここで、この戦いで、全部終わらせるのよ!」
 『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)がライフルを構えてしっかりと照準を合わせる。
 アルス・マグナ発射のために命を捧げた聖央都の民を思えば、心は哀しみに満たされるばかりだ。だが、それでも止めなければならない。
 引き金にかけたこの指は平和を作るためにこそあるのだから。
「「ゲオルグ・クラーマー!」」
 自由騎士達の声が、そのとき一つに重なった。
 アルス・マグナ発射まで、あと、2分50秒。

●24、25、26、27――
「ゲェェェオルグゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 絶叫は、エルのものだった。
 天井スレスレの高さにまで飛び上がって、彼女は魔導を解き放つ。
「クハッ、ハッ!」
 だがゲオルグは飛来する魔力弾をすんでのところでかわして黒騎士に命じた。
「やれ」
「――業剣」
 エルの背後に、漆黒の影が出現する。
「なっ!?」
 空中、彼女は身をひねってよけるが、影は伸びて彼女の肩口に突き刺さった。
「うぐ、ァ……!」
 激痛に顔を歪め、エルは地面へと墜落していった。
「追撃なんてさせない!」
 だが敵が動くよりも早く、アンネリーザがライフルを構えていた。
 銃声、弾丸がゲオルグの革鎧の表面を強くひっかく。
「その隙、見逃しません!」
 一歩後退したゲオルグに、ミルトスが殴りかかった。
 ガントレットに包まれた拳撃を、しかし彼は剣の峰で受け止める。
「甘い甘い。まだまだ、俺に打ち込むには技がつたないな」
「……さすがですね」
 ニタリと笑うゲオルグに、ミルトスは小さく笑い返した。
「この都の民に、何故、死ぬまで戦えと命じなかったのですか」
 ミルトスの問いかけは唐突だった。
「私達にとって、一番辛いのはそれでした」
「…………」
「ああ、何て勿体ない」
「……何だと?」
 彼が見るミルトスの顔には、ゲオルグのような薄い笑みが浮かんでいた。
「残念です。過去でも未来でもなく、今この瞬間にこそ命を輝かせる最高の闘争は、もはや失われてしまいました。とても残念です」
「そうかい、クククク! ハハハハハハ!」
 ゲオルグはひとしきり笑うと、予備動作なしにミルトスの顔面を打った。
「む、ゥ……!?」
「これが正しい隙の突き方だ、お嬢ちゃん」
「……学ばせていただきました」
 身を震わせ、鼻と口から大量の血をこぼしながら、だがミルトスはその笑みを崩さずにうなずいたのだった。
「下がってて! ここはあなたの遊び場じゃないのよ!」
 アンネリーザに鋭く叱責されて、ミルトスは素直にその場から退いた。
 代わりに飛び込んできたのが、ライカとエルシーだ。
「フン、何とも目まぐるしい」
「黙れ! アルス・マグナの発射なんて絶対に阻んでやる!」
「やってみな。できるのならばなぁ!」
「言われないでも……!」
 女性拳士二人がゲオルグへと同時に攻めかかった。
「ク、ック、クック!」
「笑ってんじゃ――」
「――ないわよ!」
 さらに後方よりエルときゐこが加わって、攻勢は一気に苛烈さを増す。だが、
「フ、ハハ! ハハハハ! クハハハハハハハハハハハ!」
 ゲオルグは笑っていた。笑い続けていた。
 拳士の攻撃を防ぎ、いなし、回避して、押し寄せる魔導を受けながらも揺らがず、よろけず、倒れることなく、笑い続けていた。
「分かっちゃいたことだがなぁ……」
 その光景に、ツボミが小さく息を吐いた。
 強い。飛びぬけて強い。一戦士として、ゲオルグの力量は飛びぬけていた。
「いやいや、俺だけが働くのも不公平だ。そろそろ動け、俺の“黒”!」
 ガシャン!
 黒騎士が踏み出し、硬い足音を鳴らした。
「止まれよ、無個性共!」
 だが先んじて、ザルクが騎士達の動きを縛ろうとする。
 彼の弾丸が床を抉り、束縛の決壊が発生した。
 お得意のパラライズ・ショット。しかし、彼の狙いは束縛ではなかった。
 敵がもし束縛を防ぐようならば、それに合わせて攻め方を変えればいい。そこまで考えての、試金石としての一発だ。
「……呪法」
 黒騎士が低く呟くと結界に足を踏み入れ、そのまま突き進んできた。
「ああ、そう」
 束縛の結界は意味をなさない。
 ザルクは早々に見切りをつけて両手に銃を構え直した。
 ゲオルグの“とっておき”が、いよいよ自由騎士達の前に立ちはだかる。
 アルス・マグナ発射まで、あと、2分20秒。

●59、60、61、62――
 場はあっという間に激戦区と化した。
「おおォ――!」
 アデルが気合と共に槍を床に突き立て、衝撃波を発生させる。
「ぐぅ!」
 間合いに入っていた黒騎士三人が、くぐもった声を漏らし吹き飛ばされた。
「追撃するわ!」
「派手に行きましょう!」
 相対するため地を蹴ったのはエルシー、そしてミルトス。
 まずはエルシーがいかにも重装備な黒騎士を素早い動きで攪乱しようとする。
「はぁっ!」
 拳、蹴り、拳、三度のフェイントののちに敵背後へと――
「……そこ!」
 だが黒騎士はたやすくそれを見破って、彼女の方に振り返った。
「エルシーさん!」
 ミルトスがフォローに入ろうとするも、黒騎士は手をかざし、
「――魔剣」
 いきなり立ち上がった黒い焔が、二人を諸共巻き込んで燃え上がった。
「「うああああああああ!?」」
「いけない!」
 フーリィンが癒しの魔導を発動させようとする。
 すると、黒騎士は今度は彼女の方を向いた。
「させないわよ!」
 フォローに入ったのはきゐこだった。
 発生した電磁力場がその黒騎士ともう一人を巻き込んで派手に爆ぜた。
「キ、サ、マ……!」
「……そうよねぇ、一発じゃ決まらないわよねぇ。ムカつく!」
 きゐこは舌打ちをして一度下がろうとする。
「見えているぞ。……返礼だ。受け取れェ!」
 虚空より発生した影の刃が、きゐこの背中をバッサリと切り裂いた。
「きゐこ!?」
「ぐぐっ、こ、こんくらい何よ……!」
 きゐこは気丈にも痛みを耐え抜き、汗まみれの顔に悪態をつく。
「いかにも騎士って装備のクセに、遠当ての技もあるのか……!」
 ザルクが小さくうめく。
 彼自身、影の刃を肩に喰らってその切れ味は体感していた。
 ガシャン、と、黒騎士が床を鳴らす。
「シャンバラのために」
「我らが神ミトラースのために」
「神敵必滅」
「神敵必滅」
「「神敵必滅!」」
 それは、自由騎士達が幾度となく聞いて来た言葉であった。
 しかし何かが違っていた。
 刃を交える自由騎士だからこそ分かる、この違和感。
「明確に自分の意志で言っているわね、アレは」
 気づいたのは、アンネリーザだった。
 これまで戦ってきたシャンバラの敵は皆、その根底に信仰があった。
 ミトラースの権能によって植え付けられた無垢なる信心がそこにあった。
 だが黒騎士達は違う。
 信仰心はあるのだろう。権能は働いているのだろう。しかし――
「まるでお前のようね。ねぇ、ゲオルグ」
 エルが指摘する。
 黒騎士と共に最前線に立つゲオルグは、唇の端を釣り上げた。
「そう、だからこいつらは、俺の“とっておき”なのさ」
 返ってきた答えは、肯定だった。
「洗礼によって得た祝福、権能による信仰! だがそれを超え、真にシャンバラを想い、真にシャンバラのために身命を捧げる者! 盲目をよしとせず自ら眼を見開き、信じるために神を疑い、その末に真実の忠に目覚めし者――!」
 両腕を大きく開くゲオルグの左右で、黒騎士は揃って剣を構え直した。
「それが俺の“黒”だ。……強いぜェ、こいつらは」
「そんなどうでもいいこと、得意げに語るなァ!」
 エルが魔力の矢を放った。が、ゲオルグはそれを左腕の籠手で受け止める。
 ヨウセイの皮で作られた籠手が、その一撃に吹き飛んだ。
「……どうでもいい、と、来るか。自由騎士諸君。ああ、お前らならばそう答えるだろうなぁ」
 だが口元の笑みを消すと、ゲオルグは今度はその顔に露骨な嫌悪を浮かべた。
 彼が初めて見せる、忌々しげなものを見る目。
「だからおぞましいんだよ、お前らは」
 ゲオルグがかすれた声で漏らしたその一言が、自由騎士達を驚かせた。
 アルス・マグナ発射まで、あと、1分40秒。

●93、94、95、96――
「あの講和会議は有意義だった」
 籠手がなくなった左手を右手で握り、ゲオルグは語る。
「交渉自体に価値はなくとも、俺は貴様らという存在をこれ以上なく理解できた。……感謝しているよ」
「随分と、含んだ物言いね」
 食ってかかったのはエルシーであった。
「――お前。お前も答えていたな、自分は神のために戦うのではない、と」
 ゲオルグの瞳が剣呑な光を帯びる。それだけで場の重圧が増した。
「自由騎士……。なるほど、自由をこそ尊ぶ騎士、か。言い得て妙とはこのことか。しかし、だからこそお前達は、おぞましい!」
 ギシリと噛み合わせた歯を軋ませて、ゲオルグは叫んだ。
「神と人に差はない。共に等しく在るなどと、何故堂々と言い張れる!」
「それが、イ・ラプセルの……!」
「――まさか気づいていないのか、お前達は」
 アンネリーザが言いかけるが、ゲオルグがそれを遮った。
「何のこと、ですか?」
 フーリィンが胸にざわめきを覚えつつ、尋ねた。
「分かっているんだろう? お前達はこう言っているんだよ――」
 ゲオルグが目を見開き、言った。
「自分達は神にも等しい存在であるのだ、と」
「違う、それは!」
「何が違うものか。今さら言い訳など、くだらん!」
 言い返そうとする者もいたが、ゲオルグはそれを一蹴した。
「自由、平等、公平、公正! そんなものばかりを重く見た結果、お前達は神を穢し、貶め、自らが神と等しいなどと嘯いた! これこそはまさに人の傲慢。そしてそれを赦すアクアディーネなる神の怠慢! 嗚呼、おぞましい、おぞましい、おぞましい!」
 吼えるゲオルグの声には、嫌悪しかなかった。
 これこそはまごうことなき彼の本音。
 神を頂点とするシャンバラと、人と神とが共に在るイ・ラプセル。
 両国の間に存在する、これはおそらくは最も大きな価値観の相違であろう。
「それが、アルス・マグナがイ・ラプセルを狙う理由か!」
 ザルクが気づいた。
「そうだ! イ・ラプセルは滅ばなければならない! お前達はその存在からして世界を穢し蝕むもの。あってならない絶対悪なのだ!」
「勝手な、ことをォ!」
 アンネリーザが激昂し、ライフルをぶっぱなす。
 だが前に出た黒騎士が弾丸を壁となって受け止めた。
「総員、この場にいる邪悪を断罪せよ! 命を賭して世界を救済せよ!」
 ゲオルグが左手を振り回して、配下の黒騎士全員に命じる。
「「応ッッ!」」
 黒騎士達が動き出す。
 その身から迸る殺気を、自由騎士達はひしひしと感じていた。
 さらに言えば、彼らの体力は今もなお、少しずつ空間に喰われている。
 残された時間は少ない。
 そんな現状、打開する手段はただ一つのみ。
「往くわ」
「往こう」
「生きて勝利を!」
 自由騎士達が、戦場へと駆け出していく。
 そして、死闘は始まった。
 アルス・マグナ発射まで、あと、1分20秒。

●108、109、110、111――
 純白の空間に朱が舞う。無論、それは血の朱だ。
 真っ赤な鮮血が、雫となり、飛沫となり、霧となって散っていく。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!」
 ザルクが叫ぶ。
 彼は二丁拳銃に力を注ぎ、ひたすらひたすら連射した。
 灼熱の弾幕は黒騎士三人へと襲い掛かり、火花は幾重にも重なった。
「――魔剣」
「――業剣」
 だが、反撃。
 ザルクの足元に黒焔が立ち上がり、背後から影刃が襲い来る。
「く、ぐっ、ォ! オオオオ!」
 焼かれ、刻まれ、傷つきながら彼はまだ倒れない。
 余裕があれば黒騎士の業を見ておきたかった。
 だが無理だ。攻撃以外に意識を割り振れば、瞬く間にもっていかれる。
「神敵必殺!」
「神敵必滅!」
 相手はハナから命を捨ててる。
 そんな連中に、攻める以外に何ができる。
 守りに回った瞬間に喰われるのは目に見えていた。だから攻めろ。
 攻めろ。
 攻めろ!
「ザルクさん……!」
 背後から声。一拍置いて、痛みが幾らか消えていく。
 フーリィンが傷を癒してくれたのだ。
 そうだ、攻める以外のことは仲間に任せればいい。それが連携だ!
「ありがとよ!」
 一言告げてトリガーを引く。
 彼の弾幕を下地にして、エルシーが前線へと出張っていった。
 本音を言えばゲオルグを狙いたかった。だが、黒騎士が壁を作っている今、それを何とかするのが先決であった。
「遠くへ攻撃できるのはそっちだけじゃない!」
 練り上げた闘気を光球として現出させ、彼女はそれを放った。
 光球が空に轟と唸りを挙げて、黒騎士にブチ当たった。
「ぐ……! っのれェェェェェ!」
 だが、倒れない。単発では威力が足りないか。
「ちっ、次……!」
 エルシーは舌打ちをしてそこから跳ぼうとする。
「逃がすか!」
 だが声と共に、床がドロリと泥化して彼女の足に絡みついた。
 それは、ネクロマンサーが使用する足封じの魔導だ。
「この……!」
「死ィィねえええェェェェェ!」
 黒騎士が長剣を前に突き出し、串刺しにしようと突っ込んでくる。
「ええい、世話の焼ける!」
 だが間一髪、ツボミが床の泥化を解除した。
「ツボミさん、ナイス!」
「言っている場合か、避けろ!」
 ツボミが怒鳴る。
 だが、回避はもう無理だ。それはエルシー当人がよく分かっていた。
「だから、こうする!」
 エルシーは右膝を突き上げ、己の右足で敵の剣を受け止めた。
 刃が、折り曲げた右足を貫通する。
「ああああ! ……ぐ、ぎ!」
 噴き出る血に赤く染まりながら、彼女は歯を食いしばった。
「よく頑張ったよ、エルシー!」
 動きを止められた黒騎士へ、飛び込んできたライカが殴りかかる。
「せぇぇぇぇ、やァ!」
 最高速の一撃が、強固な甲冑にはっきりと拳の跡を残す。
 音は、まるで爆音だった。
「ガアアアァァァァ!!?」
 エルシーの足に剣を残し、吹き飛ばされた黒騎士が床をバウンドしていった。
 それはまさしく会心の一撃。黒騎士は倒れて動かなくなる。
「無茶しすぎだろ、オイ……」
 ツボミが呆れたように言うが、エルシーに代わってライカがかぶりを振る。
「今は無茶しなきゃいけない場面でしょう?」
「やれやれ、貴様ら、治す方の身にもだな――」
 フラリ、ツボミが軽くよろめいた。
「……ツボミ?」
「いや、大丈夫だ。すぐにエルシーを診てやろう」
 ツボミはすぐに癒しの魔導を準備する。その内心に思った。
 ――気づかん間にかなり吸われていたのか。もつのか、これは。
 彼女をしてそう感じさせる、純白の吸命空間。
 状況は、加速度的に悪化していく。
 アルス・マグナ発射まで、あと、1分。

●133、134、135、136――
 自由騎士達は追い詰められていた。
「いいっ加減に、倒れなさいっての!」
 いきり立ったきゐこが、氷の魔導を黒騎士に向かって放つ。
 ギシリと空気が軋んで場が氷結した。が、それでも黒騎士は倒れない。
「まだ、だ……!」
 彼はその強靭な意志力をもって、ダメージを無視していた。
「神敵必滅、神敵、必滅……!」
 立つ。
 立つ。
 立ってくる。
「こいつらは……」
 彼らを前に、きゐこは背中に冷たいものを感じていた。
 まるで、これはまるで――自由騎士を相手にしているかのようではないか。
 きゐこは思い知った。
 強い決意、強い意志。それを敵に回すことの厄介さを。
「ゲオルグゥゥゥゥ――――ッッ!」
 高い場所から、エルの絶叫が聞こえた。
 ゲオルグが戦っている。
「ハハハハハハハハハハハハハハハ!」
 エルの魔道を片手で受け止め、アンネリーザの狙撃をかわし、突っ込んでくるアデルの槍を逆の手で掴み上げる。
「オ――ラァ!」
「ぬ、おォ……!?」
「キャアァ!」
 あろうことか彼は槍をアデルごと振り回し、ミルトスにぶつけた。
「こんなモノか、自由騎士ィ!」
 猛り吼えるゲオルグも当然無傷ではない。
 エルの魔導を弾いた手からは、血がだくだくと流れ落ちている。
 それでもゲオルグは威風堂々そこに立っていた。
「こんな……」
 目の当たりにしたきゐこが弱気に囚われた、その一瞬のことだった。
「隙、ありィィィ!」
「え」
 彼女の腹に黒騎士の剣が突き刺さっていた。
「……ァ」
 痛みはなく、ただ、脱力感が一気に強まった。
 視界が白む。
 意識が薄れる。
 無明の中に諦観がジワリと広がって、冷たい実感がきゐこを襲う。
 ――ああ、自分達はここで負け、
「負 け ま せ ん ッ !」
 何者かの絶叫が、きゐこの諦観をブン殴った。
 直後に、失われていた痛みが一気に体に押し寄せてくる。回復の証だった。
「負けません、負けてなんて、あげません!」
 怒鳴っているのはフーリィンだと、きゐこはやっと気づいた。
 見ると、彼女は全身を切り刻まれていた。
 串刺しにされたきゐこを、黒騎士の追撃から守ってくれたのだ。
 ――奮い立たないワケにはいかない。
「分かってんのよ、そんなの分かってんのよ……!」
「なっ!?」
「この女、まだ……!」
 死に体だったきゐこの復活に、黒騎士達が驚きの声を上げる。
「死に損ないが!」
 そして、彼女へトドメを刺そうと、黒騎士達は間合いを詰めてきた。
「――みんな、ありったけを込めなさいよねェ!」
 きゐこが吠え猛る。そして、雷鳴が場に轟いた。
 まさかの、剣に貫かれたままのユピテルゲイヂであった。
「「グオオオオアアアアアアアア!!?」」
 焦雷が、黒騎士達を包んでその場に炸裂する。そして――
「ありったけだ!」
「全部、全部……!」
「持ってけェェェェェ!」
 ザルクが二丁拳銃をブッ放した。
 ライカが最速の一撃をふり下ろした。
 エルシーが舞踏の如き連撃を黒騎士にお見舞いした。
「神敵、共ォ、ォ……」
 黒騎士の一人がズルリと地に墜ちる。それを見届けて、ザルクが倒れた。
 二人目の黒騎士が倒れ、同時にライカが意識を失う。
 三人目が倒れたのち、エルシーもまた――
 言葉通りのありったけ。体力も気力も全て尽くしての、相討ちであった。
 最後に残った黒騎士が、おぼつかない足取りできゐこに近寄ってくる。
「き、貴様……、貴様、だけ、は……」
「大したものだったわよ、実際。……でも、ここまでよ」
 きゐこが言って、最後の魔導を放った。
 それは氷の魔導。黒騎士は氷の像となってその生涯を終えた。
「ああ、ちくしょう……」
 意識が薄れるその間際、きゐこはゲオルグの方を見た。
「しばいて、やりたかったのに、な、ぁ――」
 最後に毒づくだけ毒づいて、彼女はついに力尽き、その場に倒れた。
 アルス・マグナ発射まで、あと、30秒。

●156、157、158、159――
「黒い騎士達を、全員、やっつけました……!」
 フーリィンは叫び、そのまま倒れた。彼女もまた限界であったのだ。
 その叫びに最も早く反応したのは、ゲオルグだった。
「……!? 出任せを……!」
 絶対の優位を保っていたゲオルグが初めて見せた動揺。
 そこに隙が生じた。
 自由騎士達にとってはまさに千載一遇の好機。当然、狙う。
「マリアンナ、合わせて!」
「分かったわ! アンネリーザ!」
 真っ先に、アンネリーザが動いた。
「ゲオルグ・クラーマー!」
 名を呼ばれ、我に返ったゲオルグが振り向こうとする。
 そこに銃声。彼は右に身をかわし、アンネリーザの狙撃を何とか回避した。
 だがそれは誘い。マリアンナこそが本命だ。
「――覚悟!」
 放つは見えずの一矢。ファンタズマ。
 いかにゲオルグといえど体勢を崩しているなら避けられまい。
 確信の上での手ではあったが――
「な、めるなァアアア!」
 ゲオルグは叫び、心臓狙いの矢を右腕で受け止めた。
 右の籠手が、それで砕ける。
「ぐ、ぅぅぅぅ――――!」
 危機を凌ぎながらも、彼の顔に余裕が戻ることはなかった。
 エルとミルトスが、すでに彼に向かって襲い掛かっていたからだ。
「爛れろ!」
 エルが虚空に文字を描き、火弾を作ってゲオルグへと放った。
 平常であれば取るに足らない一撃だったろう。
 しかし、この現状において、エルの魔導は驚くほどに有効に働いた。
「グオアアアア!」
 火弾を散らそうと、ゲオルグが両腕を振り回す。
 その間、彼は棒立ちとなる。アンネリーザが狙いをつけた。
「やっと、やっとチャンスが来たわ!」
 しっかりと床を踏みしめ、彼女は意識を一転に集中させる。
 針の方に細く、長く、鋭く、強く。胸に秘めるのはただ一つ。平和への願い。
 アルス・マグナのために命を注いだという、聖央都の住人達。
 どうして、そんな選択ができるのだろう。
 何で、ミトラースはそれを赦してしまったのだろう。
 尽きない疑問は、いつだって悲しみと共に彼女の胸をチクチクと苛んだ。
 戦いの中で彼女は考えて、考えて、考えて、そして一つの結論を得る。
「結局、負けられないのよ、私達は!」
 月並みな答えなのかもしれない。
 だが、敵がそこにいる以上、負けられない。負けるワケにはいかない。
 マリアンナを守るため、それを害するゲオルグへ――!
「叩き込んで、やるッ! 喰らえェェェェ!」
 トリガーをひく。
 弾丸は、音もないままゲオルグの右胸に見事突き刺さった。
「グオ、オ、オオオオオオオ!」
 絶叫。衝撃に、ゲオルグはその身を大きくのけ反らせた。
 必然、彼の懐はガラ空きになった。そこへミルトスが滑りこんでいく。
「フ、ゥ――――ッ!」
 固有の歩法より繰り出す、それは彼女の決殺奥義。
 掌底によって発生した破壊の力が、ゲオルグの体内で爆ぜて荒れ狂う。
「……がッッ!」
 彼の身体が不自然に震え、口から血が零れた。
 だが驚愕したのはミルトスの方だった。
「衝撃が、伝わりきってない。……肉体が強すぎるッ!」
「う、お……」
 身を震わしながら、ゲオルグが見たのはマリアンナだった。
「な、何……?」
 目を大きく開き、彼はマリアンナに手を伸ばそうとする。
 だがアデルが間に割って入った。
「中から壊せないのならば、真正面から壊せばいい」
「アデル……」
「見ていてくれ、マリアンナ」
 彼は、槍を構えて一気に駆け出した。
 一直線、速度が乗った無骨な槍の穂先が、ゲオルグに直撃する。
「――この役割だけは、誰にも譲るつもりは、無いッ!」
 この瞬間、アデルは槍に搭載された撃発機構を作動させた。
 爆音は立て続けに三度。
 至近距離で炸裂した槍身が、ゲオルグの革鎧を完全に打ち砕く。
「……魔女狩り将軍の鎧が、割れた」
 エルが呟いた。
「…………が、はァァ!」
 服までも千々に破れ、肌を晒したゲオルグが大量の血を吐いて吹き飛ぶ。
 だが攻撃したアデルも、その場に膝を突いた。
「ダメージを、溜め込みすぎたか……」
「黙ってろ。大した施術もできんができる限りはやってやる」
 駆け寄ってきたツボミが、癒しを施そうとした。
 だが、エルが叫んだ。
「待って、まだよ!」
「何ィ……?」
 見てみれば、そこには起き上がったゲオルグの姿があった。
 胸の真ん中に大きな凹みを作り、大量の血を吐いた“魔女狩り将軍”が両眼を爛々と輝かせて、そこに立っていたのだ。
 血に濡れてくぐもった声で、彼は言った。
「――ま、りァ、ンな」
 アルス・マグナ発射まで、あと、20秒。

●やがて時は尽きて――
 妻は美しい女性だった。
 身体こそ弱かったが、性格は気丈で明るく、何よりよく笑った。
 まだ“魔女狩り将軍”になる前の彼は、そんな彼女を心より愛していた。
 だが運命は過酷であった。
 愛した女性は病に倒れ、この世を去った。
 父の暗殺から十年後に訪れた、それは二度目の断絶。二度目の絶望。
 神の教えがなければ、きっと自分は妻の後を追っていただろう。
 そう、だから――
「……まりあんな」
 濁った瞳のゲオルグが、歩き始める。
「た、倒れなさいよ!」
 アンネリーザの狙撃を肩に受けても、揺らぐことなく。
「もう、終わりましょうッ!」
 ミルトスが全力で身体ごとぶつかっても、退くことなく。
「まりあんな……」
「そん、な!?」
 ゲオルグの右手が、ミルトスの首を掴んだ。
 そして、彼は片手でシスターの身体を吊り上げると、そのまま尋常ではない膂力で振り回して地面に叩きつけた。
 グチャ、という生々しい音がした。
「まりあんな、嗚呼、まりあんな……」
 一歩、また一歩、床に血の跡を転々と残しながら、ゲオルグが近づいていく。
「倒れろ、もう、倒れてよ!」
 半ば恐慌に陥ったアンネリーザがライフルを連射した。
 ゲオルグの肩や足に、パッと血の花を咲く。
「……まりあんな」
 だが応じなかった。動じなかった。今さら激痛など、彼には通じなかった。
「まりあんな……、お前を、お前を……」
 さらに歩み寄って、ゲオルグが言い出す。
 それこそは彼の目的。マリアンナへ執着する理由そのもの。

「――殺してやる」

「……え?」
「まりあんな。お前を殺してやる。お前を」
 うわごとのように、彼はそれを繰り返した。
「腕を切り落としてやる。足をもいでやる。腹を抉って臓腑を引きずり出し、肉片になるまで刻んでやる。その首を刎ねて、顔の皮を剥いでやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる!」
 殺意であった。
 殺意でしかなかった。
「俺の妻の名を奪った魔女よ、俺の妻の顔を奪った魔女よ! 俺はお前を認めない。他の誰がお前を祝福しようとも、俺は、俺だけはお前を呪う!」
 怨恨、憎悪、憤怒、執着、執念、殺意、殺意、殺意、殺意!
 この場にいる皆が知る。
 “魔女狩り将軍”がマリアンナに見せてきた執着、その根底にあるのは、狂おしいほどの、そしてどこまでも純粋な殺意であった。
「あの鎧は、殻だったのか……」
 アデルがその事実に思い至った。
 彼が砕いた革鎧は、ゲオルグ・クラーマーという純粋殺意の塊を“魔女狩り将軍”という鋳型に押し込めておくための殻だったのだ。
 殻は砕け、ここに中身は溢れ出た。
 そして晒された本性は、愛憎に吠え猛る、醜悪ながらも人間臭い姿であった。
「まりあんな……!」
「させは――」
「――しないわ!」
 さらに迫らんとするゲオルグへ、背後からアデルとアンネリーザが躍りかかるが、
「邪、魔、を、するなあああぁぁぁぁ!」
「きゃああああ!」
「う、おおおお!?」
 虚空から現れた影の刃が二人を無残に切り刻んだ。黒騎士が使っていた業だ。
「あ、ぁあ……」
「まりあんな。まりあんな」
「い、いや、来ないで……!」
 へたり込み、首を振って拒む彼女へ、ゲオルグが手を伸ばそうとする。
 だが逆にその手を掴み取る者がいた。
「おいおい、本当にマリアンナだけしか見えてないんだな、貴様は」
 ツボミであった。
「……どけ」
 ツボミは、何とそこで笑みすら浮かべてゲオルグに言う。
「知らん顔でもなかろうに、私の相手もしてくれよ。寂しいだろ」
 マリアンナは彼女に「逃げて」と言いかけるがしかし、エルに手を引っ張られて、強引にその場から引き離された。
「エル、待って……、ツボミが!」
「いいから来なさい。でないと、巻き込まれるわよ」
「え、巻き……?」
 理解できずにいるマリアンナが、ツボミとゲオルグの方を見る。
 先刻まで“魔女狩り将軍”であった男は、指をゴキリと鳴らしてマザリモノの医者を見下ろしていた。
「お前に用はない」
「そうつれないことを言うなよ。こっちにゃ聞きたいことがあるんだ」
 挑発するように笑みを深め、ツボミはゲオルグに尋ねた。
「なぁ、貴様の嫁さん、どれだけいい女だったんだ?」
 ピクリ、ゲオルグが身じろぎする。
「貴様がそこまで拗らせる程なんだ。さぞかしいい女だったんだろう?」
「それ以上、囀るな」
「いいだろ? 聞かせろよ。どうせこれで最後なんだ」
「…………」
 ゲオルグが、空いている方の手を振り上げた。
「たかがヒーラー程度。……そう思ってるんだろう?」
 笑みをますます深めてツボミがそう指摘する。
 ゆるやかな風が生じた。ゲオルグが異変に気付いた。
「お前は、何を……!」
「知っているか枢機卿殿。自由騎士はな、奇跡を起こせるのさ」
 ツボミは今、運命を燃やしていた。
 それは、己の魂を炎とするよりもさらに劇的な力の励起。
 彼女の身から光は溢れ、暴風が吹き荒れる。
 戦うすべを持たないツボミの、単純にして明快なる奇跡の発現であった。
「運が悪けりゃ共にお陀仏。……己の無事を神に祈りな、枢機卿猊下」
「うお、おおおおおおお――――!」
 無音から、爆絶。
 解放された力は光となって場を満たし、爆音が他の全てを呑み込んだ。
「ツボミ――――ッ!」
 叫んで伸ばしたマリアンナの手は、だが、弾けた光には届かなかった。
 アルス・マグナ発射まで、あと――

●“魔女狩り将軍”の最期
 ツボミは、命を力に変えて自爆した。
「無茶なんてモンじゃないわね、全く」
 さすがのエルも、そう言わざるを得ないツボミの行動であった。
 巻き起こった煙を見つめ、マリアンナは手を合わせて願った。。
 シャンバラも、ゲオルグも、そんなのどうでもいいから。
 ツボミが無事なら、それでいいから!
「……誰かいるわ」
 薄れゆく煙の向こうに、エルは一つの影を認めた。
 マリアンナも顔を上げてそちらを見やる。
 立っているのはツボミなのだということを、確かめたかったからだ。
 だが――
「クヒ、ヒ……」
 聞こえた笑いは、彼女の期待を裏切るものだった。
 マリアンナの顔に絶望の色が差す。
 煙が晴れた。
 その向こうに、オルグ・クラーマーは立っていた。
 彼の足元にはツボミが転がっていた。全身焼け爛れ、無残な有様だった。
「ツボミ!」
 マリアンナが必死に呼んでも、答えは返ってこなかった。
 代わりというワケでもなかろうが、ゲオルグが身を揺らして歩き出す。
 もはやその身は半死半生。
 皮膚は爛れ、肉はそげ、片腕などはもげかけている。
 だが彼は歩み、進む。
「まりあんな、ぁ、ぁぁ……」
「大した執念ね。それだけは認めてやるわよ」
 だがそれを阻むように、エルが立った。
「お前の執念は、あたしの矜持を上回るのかもしれない」
 言いながら、彼女は右手を高くかざした。
「けどそんなの関係ないわ。お前は、あたしに殺されるんだから」
 その手に、黒が集まっていく。闇が凝縮されていく。
「一度は否定された、魔女というあたしの拠り所。ああ、けれども関係ないわ。関係ないのよ。だって、魔女のあたしはここで死ぬから」
 集い、凝り固まった怨嗟が、闇の球を顕現させる。
「やっと来たのよ、このときが」
 エルは薄ら笑いを浮かべていた。
「死ね“魔女狩り将軍”。お前を殺して、あたしは世界と共に喪に服す。お前こそが、魔女の憎しみに憑き殺される、最後の贄だ!」
 その手に収束した闇を、彼女は絶叫と共に解き放つ。
「我が内に潜む魔女よ! その憎しみごと、ここで果てろォ!」
 行使されしは血の断末魔。
 怨念を核として形成された、超域の重力塊。
 ゲオルグめがけて撃たれたそれは――しかし、彼に当たることはなかった。
「ァ……」
 ゲオルグは言いかけて、そのまま倒れてしまったからだ。
「え――」
 マリアンナが目を剥く。
 重力塊は、伏した彼の頭上を行き過ぎ、アルス・マグナ機関部へと直撃した。
 解放された重力波が機関部をズタズタに引き裂いて破壊する。
 ツボミの自爆によって、それは半ば壊れていたのだろう。
 ――変化が起きた。
「光が……」
 白い空間内が、淡い光に満たされていく。
 それは、聖央塔に蓄えられた魔力の光であった。
 機能が停止した機関部から漏れ出したのだ。
「う……」
 完全に意識を失っていたザルクが、小さくうめいた。
 漏れた光はただの魔力ではない。それは彼らが吸い取られた命そのもの。
 光に触れることで、吸われた命が幾分戻ったのだろう。
 だが、ゲオルグは目覚めなかった。
「――フン」
 倒れたままの彼を、エルは冷ややかな目で見下ろした。
「エル……?」
「こいつはツボミの一撃で死んでたのよ。つまりは、ツボミの手柄ね」
 言って、エルは肩をすくめた。
「アルス・マグナだって、誰にでも破壊できるものだったんでしょうね。ま、いいけど。それでも魔女狩りの国の象徴をブチ壊したのは、このあたしよ」
「うん、そうね。助けてくれて、ありがとう」
「それは他の連中に言いなさい。あたしはあたしのエゴを貫いただけ」
「知ってる。でも、ありがとう」
「……フン。ほら、さっさと寝ている連中を起こしに行くわよ」
 礼を言われたエルは、そっぽを向いて歩き出す。
「あ、ま、待ってよ! エル!」
 マリアンナは追いかけようとして、ふと、ゲオルグの亡骸を見た。
「さようなら、最悪な人」
 それが、長らく続いた因縁の相手へ贈る別れの言葉であった。



 ――自由騎士達が聖央塔を去って数分後。
「な、こ、これは……!?」
 ゲオルグが息を吹き返した。
「何たることだ……!」
 目の前に広がっている惨憺たる光景に、彼は絶句するしかなかった。
 嗚咽が漏れ、涙が溢れる。
 彼は泣き叫びながら、そこに横たわる亡骸へと駆け寄った。
「おおおおお! 枢機卿猊下ァァァァ――――ッッ!」
 彼は――黒騎士の一人ゲオルグ・ホーソーンが、枢機卿ゲオルグ・クラーマーの骸を抱え起こした。
「こんな、こんなことが……!」
 ホーソーンが泣き縋っていると、クラーマーの身体がピクリと身じろぎする。
「……猊下? 枢機卿猊下!」
 必死になって何度も揺さぶる。
 すると、クラーマーは唇を小さく動かした。
「何です? 何を言おうとしているのですか、猊下!」
「――行け」
「枢機卿、猊下?」
「ォ、お前の仕事は、まだ、残っている。……行け」
「…………」
「まだ、間に合う。務めを果たせ」
「……分かりました」
 クラーマーの言葉にうなずき、ホーソーンは立ち上がった。
 鎧をさすれば、そこには自由騎士に抉られた拳の跡がくっきり残っている。
「自由騎士……」
 決戦を生き残った黒騎士が、前を向いて踏み出した。
「行ってこい、ゲオルグ」
「行ってきます、ゲオルグ」
 “魔女狩り将軍”が最期に見た光景は、己と同じ名の騎士が新たな旅路に就く姿であった。
 こうしてゲオルグ・クラーマーは死んだ。
 だが、彼の遺志を受け継ぐ者がいる。彼の名を受け継ぐ者がいる。
 だからきっと、この戦いはまだ終わっていない――

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『喪主』
取得者: エル・エル(CL3000370)
『赫怒の魔導使い』
取得者: 猪市 きゐこ(CL3000048)
『徹甲拳士』
取得者: ライカ・リンドヴルム(CL3000405)
『殲滅弾頭』
取得者: ザルク・ミステル(CL3000067)
『魔女狩り将軍の友人』
取得者: 非時香・ツボミ(CL3000086)
『血風飛翔』
取得者: エルシー・スカーレット(CL3000368)
『爆ぜ砕く戟槍』
取得者: アデル・ハビッツ(CL3000496)
『弾丸に願いを宿す』
取得者: アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)
『闘争に躍れ』
取得者: ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)
『伝令者』
取得者: フーリィン・アルカナム(CL3000403)

†あとがき†

お疲れさまでした。
“魔女狩り将軍”ゲオルグ・クラーマーは最期を迎えました。
アルス・マグナの破壊にも成功し、結果は成功となりました。
厳しい戦いでしたが、皆さんの勝利で終わったわけです。

この後の話につきましては、次の展開をお待ちください。
シャンバラの物語はまもなく終わりを迎えますが、
その中で展開した全ての物語に決着がつくワケではありません。

今後にご期待ください。
最後に、ゲオルグの最期に皆さまは何を思ったのか。
それを想像しながら、次のシナリオを練ることにいたします。

それでは、次のお話しでまたお会いしましょう。
ありがとうございました。
FL送付済