MagiaSteam




アマノホカリ式、春の優雅な楽しみ方

●
春──。
「アマノホカリではサクラの開花にあわせて春を祝うそうですな」
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)が集まった自由騎士たちに言った。
「ハナミ……っていうらしいな。自由騎士にはアマノホカリ出身も多いから聞いた事がある」
「そう、花見! 花の咲く頃を祝う……そんな素敵な文化、このイ・ラプセルにもあっていいのではありませんかな?」
ジローの両手には沢山の食べ物と飲み物。
「街の外れのハナズオウ並木が、ちょうど見ごろと聞きました。アマノホカリのサクラ、とはまた違うかもしれませんがこちらもなかなかのものですぞ」
春の宴が始まる──
春──。
「アマノホカリではサクラの開花にあわせて春を祝うそうですな」
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)が集まった自由騎士たちに言った。
「ハナミ……っていうらしいな。自由騎士にはアマノホカリ出身も多いから聞いた事がある」
「そう、花見! 花の咲く頃を祝う……そんな素敵な文化、このイ・ラプセルにもあっていいのではありませんかな?」
ジローの両手には沢山の食べ物と飲み物。
「街の外れのハナズオウ並木が、ちょうど見ごろと聞きました。アマノホカリのサクラ、とはまた違うかもしれませんがこちらもなかなかのものですぞ」
春の宴が始まる──
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.春の訪れを楽しむ
麺です。お花見の季節です。このビッグウェーブに乗るしかない……っ!
ジローからイ・ラプセルではまだ一般的ではないお花見へのお誘いです。
でもアマノホカリ出身の者も多い自由騎士には馴染みあるもの。
国と国の戦い、日々のイブリースやふとどき者との戦い。
今日だけは開花を祝うアマノホカリの優美な行事を楽しんで見ませんか。
●ロケーション
首都郊外の街道沿い。セイヨウハナズオウ並木が続くその場所でお花見を行います。
食べ物や飲み物は自由騎士団の経費で凡そ用意されています。
自国は昼過ぎから夜。ジローが張り切っており夜はライトアップも行うようです。
昼と夜、どちらで花見をするか記入していただけると嬉しいです。
●参加NPC
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
麺をゆでて振舞っています。
『演算子』テンカイ・P・ホーンテン(nCL3000048)
お酒を飲んでほろ酔い気分になっています。
『竜の落とし子』ジョアンナ・R・ロベルトドーン(nCL3000052)
ドコから聞きつけたのか気付けばアンと共にそこにいます。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
皆様のご参加お待ちしております。
ジローからイ・ラプセルではまだ一般的ではないお花見へのお誘いです。
でもアマノホカリ出身の者も多い自由騎士には馴染みあるもの。
国と国の戦い、日々のイブリースやふとどき者との戦い。
今日だけは開花を祝うアマノホカリの優美な行事を楽しんで見ませんか。
●ロケーション
首都郊外の街道沿い。セイヨウハナズオウ並木が続くその場所でお花見を行います。
食べ物や飲み物は自由騎士団の経費で凡そ用意されています。
自国は昼過ぎから夜。ジローが張り切っており夜はライトアップも行うようです。
昼と夜、どちらで花見をするか記入していただけると嬉しいです。
●参加NPC
『ヌードルサバイバー』ジロー・R・ミタホーンテン(nCL3000027)
麺をゆでて振舞っています。
『演算子』テンカイ・P・ホーンテン(nCL3000048)
お酒を飲んでほろ酔い気分になっています。
『竜の落とし子』ジョアンナ・R・ロベルトドーン(nCL3000052)
ドコから聞きつけたのか気付けばアンと共にそこにいます。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
皆様のご参加お待ちしております。

状態
完了
完了
報酬マテリア
0個
0個
0個
1個




参加費
50LP
50LP
相談日数
6日
6日
参加人数
9/30
9/30
公開日
2019年04月15日
2019年04月15日
†メイン参加者 9人†

●
春を感じる心地よい日。
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は従者と共にハナズオウが咲き乱れる並木を散策していた。特に誰かと待ち合わせているわけではないのだが、この良き日に楽しまないのもまた風情が無い。
静かに花を見て、情景を楽しみつつ酒を飲むのがよいのだろうな。そんな事を思いながら静かに腰を下ろす。
「皆と賑やかにというのも良いが、たまにはこういう過ごし方もいいのだろう」
そういうと傍に居たテンカイに良い景色だ、と一声掛けると、テンカイは何も言わずにテオドールに酒を勧める。
いつしかテオドールの周りをゆったりとした時間が包み込んでいた。
「やった! 経費なのね。タダ酒ね!」
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は提供されるお酒に舌鼓を打っていた。
なるほどねぇ……アマノホカリにはこんな行事があるのね。春の暖かな陽気のなか、咲いたお花を愛でながらお酒を楽しむ……いいわね。エルシーの中でアマノホカリの好感度がぐっと上がる。
「これが風流ってやつかしら?」
そんな事を感じながらエルシーのお酒は進むのであった。
「む、貴方は……」
なぜかひょっこり現れたジョアンナを見つけた『慈葬のトリックスター』アリア・セレスティ(CL3000222)。一瞬腰の武器に手をかけたものの思いとどまる。ジョアンナは確かにラスカルズの配下組織の人間だ。だがこれまで相手してきた者達とは少し違う。それはアリアも感じていたからだ。
そういえば今日は非番。それに開花を祝うこんな素敵な行事に騒ぎを起こして水を差すのは無粋よね。アリアから発せられる緊張感がふっと緩む。
「この間、貴方が私たちに同行した理由。それは家族ですか」
アリアは気になっていた事を単刀直入に聞いた。アリアにしては珍しく直球の質問。そこにはやはりまだジョアンナという人物を図りかねている部分があるからであろう。
「飼いならされたゴソムシ風情がジョアンナ様に突然何を!」
突然深く切り込んでくるアリアの質問に傍に居たアンが憤る。
「アン。気にしないでいい。ん? 何でそんな事聞くの?」
アンを制止するジョアンナの答えも尤もだ。家族や恋人、身の回りの人の話は本人にとってとてもデリケートなもの。そこに深く踏み入る事は親しい仲でも案外躊躇するものだ。
「まぁ、いいけど。んー。まぁ家族といえば家族かな。ジョーは知らないんだよね、母親の事。まぁどこかで生きてるらしいんだけど、あのバカ親父に聞いてもわからねぇって言われるし。大体アイツ何人孕ませて兄弟増やすんだって話でさぁ──」
綺麗な景色と振舞われた美味しい料理がジョアンナの心も穏やかにしているのだろうか。ぽんぽんんと言葉が出てくるジョアンナに少々驚きを感じるアリア。
まぁこれを聞いたからといって何が変わるわけでもない。
だがアリアは素直にこう感じていた。探せる家族がいるなら、見つかれば良いな──と。
「ん? そういえばラスカルズって他の国もいるの?」
アリアはふと思ったことを口にした。
「んー。さぁ? ジョーはそのあたりは知らない。興味も無いし。そんな事よりお代わりとってこないと」
気付けばあれほど大量に運んできていた料理はすべて空になっていた。
お代わりを取りに行くジョアンナを見送るアリア。
まぁどんな組織だろうと私が──。アリアの意思は強く固いものだった。
『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)のこの日にかける情熱はかなりのものだ。当日ある程度の飲食は用意されているのだが。朝早くに起き、腕によりを掛けて人数分のお弁当を用意。
具沢山のサンドイッチにおにぎり、塩焼きそば。甘いのとしょっぱいのを両方揃えた卵焼きにクロケット。しっかりと下味をつけた冷めても美味しい唐揚げに一口サイズのハンバーグ。野菜も食べようポテトサラダにプチトマト、自家製ザワークラウト。
一つ一つ紹介していては日が暮れるほどの沢山のこだわりの詰まった料理たち。
「ちょーっと作りすぎた気もしますけど、リムちゃんとルー君で食べ切れるでしょうか
……まぁ、きっと大丈夫ですよね♪」
フーリィンの予定では3人でしっかり食べ終わる予定。
「おねえちゃんのおべんとう。とてもたのしみ。……はな? うん、はなもみる」
『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)の表情は読み取りにくい。だがその言動からはこのお花見はかなり楽しみだった様子が伺える。
「はなはきれい。けっこうすき」
リムリィの短い言葉には様々な意味が集約されている。どれも同じに見える花。だけどよく見るとどれも違う。そんな違いを見つけることが楽しい。
まるで人みたい。リムリィの頭にこれまで出会った人たちの顔が浮かぶ。表情が和らぐリムリィ。
そんなリムリィを穏やかに見ているのは『私立探偵』ルーク・H・アルカナム(CL3000490)。フーリィンに手を引かれ、半ば強引につれてこられた。
幸いにも仕事は入っていない。まぁこの春の陽気の中、わざわざ辛気臭いスラムの探偵事務所まで来るような酔狂な客もいないだろう。
かくして今、俺はここにいる。目の前にはフーリィンの作った弁当の数々。穏やかな時。似合わない? ……放っておけ。
ルークは改めてハナズオウ並木を見上げる。常日頃生活する場では嗅ぐ事の無い春の香り。
ルークはそっと煙草の火を消す。誰に言われるわけでも無く、さも当然のように。
この場所には煙草の煙は無粋過ぎるのさ。
仕事も休みも、やると決めたら妥協はしない。徹底的に花見を楽しむとしよう。ルークはポツリと呟く。
「今日はもう仕事にならんな」
「しごと、きょうはわすれる」
リムリィもこくりと頷いた。楽しいお花見が始まる──。
30分後。
「……さすがに弁当のこの量は多過ぎないか?」
食べても食べても一向に減らないお弁当。味は抜群。3人ともかなり食べているはずだ。
「ダメでしたー♪」
明るく言ってもダメなものはダメ。フーリィンの予想は外れ、まだまだ終わりの見えない料理たち。
3人は意を決したように頷くとそれぞれあたりを見回し始める。
「あ、ジローさーん! お弁当、如何ですか?」
ジロー。フーリィンの弁当を前に奮闘。しかし自身も面料理の提供という役割があるため、途中離脱。
「む? あれは……テンカイか」
テンカイ。すでにかなり酔いどれ。呼んだはいいものの全く戦力にならず、元々あったっ料理を持ちこみさらに量が増える。
「あ、このまえのこ」
ジョアンナとアン。ジョアンナは見た目どおりおいしそうによく食べた。それでもすべてを食べきるには至らない。そして底なしの胃袋を見せ付けたのは伏兵のアンだった。
残っていた料理をぺろりと平らげると、何事も無かったかのように立ち去って言った。知られざる爆食女王の誕生である。
「なんらか……いい気分らわ」
いつしかろれつも怪しいエルシー。ほろ酔い?というには飲み過ぎの気配。
「そうら、ジローさんに麺料理をもらいに行からいろ」
そういと少しふらふらしながらも立ち上がり、ジローの屋台へ向かうエルシー。
「らっしゃい!」
そこには1人の先客。テオドールだ。無難なものを──。テオドールのジローへの注文はある意味正しい。何せ隙を見せればあの呪文が炸裂する可能性があるのだ。少し寂しそうなジローは放っておいて、美味しく食べられる適切な量を注文したテオドールに間違いは無い。もう少し何か頂こうかな──腹八分の余裕が、精神的にも心地よい。
「やっほー、ジローさぁん。わらしにも麺ちょーらい!」
エルシーはすっかり出来あがっている。
「あいよっ! 少し待ってくだされ。すぐに出来たてを出しますぞ~」
嬉しそうに麺をゆでるジローとその様子をじっと見つめているエルシー。
「完成ですぞっ! 熱々なので気をつけてくださいですぞ」
エルシーの前には油で揚げた麺にとろみに付いたあんがのった見たことの無い麺料理。所謂皿うどんだった。
「これはなんら? なんの麺料理ら?」
初めて見る料理に興味津々のエルシー。早速箸を伸ばす。
「はふっはふっ」
結構な暑さのはずなのだが、よほど美味しいのかどんどん食べ進めるエルシー。その様子を驚きの表情で見ているテオドールと相変わらず嬉しそうなジロー。
「おいしー! おかわりぃ! ねぇねぇジローさぁんもお酒飲も! 乾杯しよーっ! あははは」
「ははは。もちろんですぞー。今日ばかりはワタシも作るばかりではなく、食べて飲みますぞー!」
宴は続く。そして──タダ酒を堪能し過ぎたエルシーは翌日ひどい二日酔いに襲われたという。
●
夜──。
そこには仕事を終え、店じまい後にやってきた『もう最初っからうさみみ生えてた』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)の姿があった。
「まぁ商売上、どうしても夜になっちまうよな」
そんな事を呟きながらウェルスがふと見るとそこにはジローの屋台。
おまちしておりまたぞ。そういいながらジローが笑顔でウェルスを迎える。差し出されたジローの麺に、しばしの間舌鼓を打つウェルス。
「それにしても……最初に旦那を見たときはインパクト極大のイロモノかと思ったが、何度か依頼に同行してもらって助けてもらったりしたな」
それを聞いたジローは驚いた表情。自身は全くそのつもりは無いようだ。
「真面目で頼りになるし、人は見かけによらないって思い知ったぜ」
ははは、褒めても何も出ませんぞ。といいながらも替玉の準備をしているのはどういう事であろうか。
改めてウェルスは美味いな、と暖かな湯気が立ち上る丼を見る。
「まぁ美味い麺を求めるのもいいが、わかりやすい罠にあっさりかかるのだけはよしてくれよ? ジローの旦那は悪運が強いから死にはしないだろうけど……」
ハハハ、気を付けますぞ。ジローはそう言った。
だがウェルスは思った。この顔はきっとまたひっかかるんだろうなぁ、と。
「ふぅ。この季節、まだ夜は少し肌寒いですね。ウドーンを頂けますか」
手に息を吹きかけながらジローの屋台へやってきたのは『マギアの導き』マリア・カゲ山(CL3000337)。
幼い頃にアマノホカリからイ・ラプセルへ両親と共に移住してきたマリア。ジローからの誘いにふと郷愁を感じ、この場にいる。夜桜──まぁ此方の場合は桜ではなくハナズオウなのだが、それでもライトアップされそよぐ風に揺れるその様子はどこか優雅で風流な雰囲気を醸し出していた。
その雰囲気がそうさせるのだろうか。マリアは自然とこれまでの出来事を思い出していた。
「思えば……イ・ラプセルにきて……オラクルとなって。いろいろな事がありました。そしてシャンバラ。戦いがここまで熾烈なものになるとは、少し前までは考えもしませんでしたね」
事実これまでは細かいいざこざあっても何とか保たれていた国家間の均等。それが今大きく崩れようとしている。世界が大きく変わろうとしている。その瞬間にマリアは今身を置いているのだ。それにはもちろん危険が伴う。自由騎士たちは常に覚悟を持って行動している。
「たまには命の危険も策謀も関係なく、こうやって息抜きをするのもいいもんだな」
マリアの空気を察してか、ウェルスが同意を求めるようにニカっと笑いかける。
「そうですね。イ・ラプセルでの生活は楽しいですし、これからも楽しみたいですね」
マリアは淡い光に照らされたハナズオウを見上げる。改めて見るとやはり美しい。
「生きてまた花見ってのをするためにも死ねないな」
「ええ、そのためにも戦争は絶対生きて帰らないと。そのためにも今は英気を養っておきましょう」
ウェルスにも、マリアにも。明日からもまた自由騎士としての忙しい日々が続いていくのだ。
そこに少々疲れ気味で現れたのは『はくばにのったおじさま(幻想)』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)。父親の愚痴やら諸々から逃れる為に、これ幸いと誘いに乗ったデボラ。だがせっかくの羽を伸ばそうとした花見に、さも当然と付いてくる使用人たち。この使用人を撒くまでが長かった。行き先を暈し、人ごみにまぎれて何度も使用人を振り切ろうと努力した結果、気付けばこの時間になっていた。
「ご機嫌よう。お酒を嗜まれるのは結構ですがお花も愛でられていますか?」
花見酒にしゃれ込んでいたのは居るのはプラロークのテンカイ。昼から今までずっと。だいぶ飲んでいるようだ。
「フフッ。花は酒を飲む口実さ。まぁこれだけ綺麗だとさすがに目に入るけどね」
そういいながらくいっと注がれた酒を飲み干す。
「サクラとはどのような花なのでしょうね」
「さぁな。だがアマノホカリではこうやって花が咲いたってだけで一つの行事にしちまうんだ。そりゃあ綺麗なんだろうぜ。しかし……」
テンカイはフフフと笑う。
「なにがおかしいのです?」
「いやあな。普段は何かにつけて勝負だ、戦いだといってるヤツが花に興味を持つなんてねぇ」
テンカイはなんだか楽しそうだ。
「失礼な。私だって空気を読まずこんな場で模擬戦だ! なんてさすがに言いません!」
そういって頬を膨らませるデボラ。すまんすまんと肩を叩くテンカイ。
「分かっていますよ、普段は確かにそうですからね。もう……お酌くらいさせて下さい。ね?」
テンカイがお猪口をすっと差し出す。デボラは笑顔でお酒を注いだ。
お花見はまだまだ続く。それは自由騎士たちにとってほんのひと時の安らぎであった。
春を感じる心地よい日。
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は従者と共にハナズオウが咲き乱れる並木を散策していた。特に誰かと待ち合わせているわけではないのだが、この良き日に楽しまないのもまた風情が無い。
静かに花を見て、情景を楽しみつつ酒を飲むのがよいのだろうな。そんな事を思いながら静かに腰を下ろす。
「皆と賑やかにというのも良いが、たまにはこういう過ごし方もいいのだろう」
そういうと傍に居たテンカイに良い景色だ、と一声掛けると、テンカイは何も言わずにテオドールに酒を勧める。
いつしかテオドールの周りをゆったりとした時間が包み込んでいた。
「やった! 経費なのね。タダ酒ね!」
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は提供されるお酒に舌鼓を打っていた。
なるほどねぇ……アマノホカリにはこんな行事があるのね。春の暖かな陽気のなか、咲いたお花を愛でながらお酒を楽しむ……いいわね。エルシーの中でアマノホカリの好感度がぐっと上がる。
「これが風流ってやつかしら?」
そんな事を感じながらエルシーのお酒は進むのであった。
「む、貴方は……」
なぜかひょっこり現れたジョアンナを見つけた『慈葬のトリックスター』アリア・セレスティ(CL3000222)。一瞬腰の武器に手をかけたものの思いとどまる。ジョアンナは確かにラスカルズの配下組織の人間だ。だがこれまで相手してきた者達とは少し違う。それはアリアも感じていたからだ。
そういえば今日は非番。それに開花を祝うこんな素敵な行事に騒ぎを起こして水を差すのは無粋よね。アリアから発せられる緊張感がふっと緩む。
「この間、貴方が私たちに同行した理由。それは家族ですか」
アリアは気になっていた事を単刀直入に聞いた。アリアにしては珍しく直球の質問。そこにはやはりまだジョアンナという人物を図りかねている部分があるからであろう。
「飼いならされたゴソムシ風情がジョアンナ様に突然何を!」
突然深く切り込んでくるアリアの質問に傍に居たアンが憤る。
「アン。気にしないでいい。ん? 何でそんな事聞くの?」
アンを制止するジョアンナの答えも尤もだ。家族や恋人、身の回りの人の話は本人にとってとてもデリケートなもの。そこに深く踏み入る事は親しい仲でも案外躊躇するものだ。
「まぁ、いいけど。んー。まぁ家族といえば家族かな。ジョーは知らないんだよね、母親の事。まぁどこかで生きてるらしいんだけど、あのバカ親父に聞いてもわからねぇって言われるし。大体アイツ何人孕ませて兄弟増やすんだって話でさぁ──」
綺麗な景色と振舞われた美味しい料理がジョアンナの心も穏やかにしているのだろうか。ぽんぽんんと言葉が出てくるジョアンナに少々驚きを感じるアリア。
まぁこれを聞いたからといって何が変わるわけでもない。
だがアリアは素直にこう感じていた。探せる家族がいるなら、見つかれば良いな──と。
「ん? そういえばラスカルズって他の国もいるの?」
アリアはふと思ったことを口にした。
「んー。さぁ? ジョーはそのあたりは知らない。興味も無いし。そんな事よりお代わりとってこないと」
気付けばあれほど大量に運んできていた料理はすべて空になっていた。
お代わりを取りに行くジョアンナを見送るアリア。
まぁどんな組織だろうと私が──。アリアの意思は強く固いものだった。
『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)のこの日にかける情熱はかなりのものだ。当日ある程度の飲食は用意されているのだが。朝早くに起き、腕によりを掛けて人数分のお弁当を用意。
具沢山のサンドイッチにおにぎり、塩焼きそば。甘いのとしょっぱいのを両方揃えた卵焼きにクロケット。しっかりと下味をつけた冷めても美味しい唐揚げに一口サイズのハンバーグ。野菜も食べようポテトサラダにプチトマト、自家製ザワークラウト。
一つ一つ紹介していては日が暮れるほどの沢山のこだわりの詰まった料理たち。
「ちょーっと作りすぎた気もしますけど、リムちゃんとルー君で食べ切れるでしょうか
……まぁ、きっと大丈夫ですよね♪」
フーリィンの予定では3人でしっかり食べ終わる予定。
「おねえちゃんのおべんとう。とてもたのしみ。……はな? うん、はなもみる」
『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)の表情は読み取りにくい。だがその言動からはこのお花見はかなり楽しみだった様子が伺える。
「はなはきれい。けっこうすき」
リムリィの短い言葉には様々な意味が集約されている。どれも同じに見える花。だけどよく見るとどれも違う。そんな違いを見つけることが楽しい。
まるで人みたい。リムリィの頭にこれまで出会った人たちの顔が浮かぶ。表情が和らぐリムリィ。
そんなリムリィを穏やかに見ているのは『私立探偵』ルーク・H・アルカナム(CL3000490)。フーリィンに手を引かれ、半ば強引につれてこられた。
幸いにも仕事は入っていない。まぁこの春の陽気の中、わざわざ辛気臭いスラムの探偵事務所まで来るような酔狂な客もいないだろう。
かくして今、俺はここにいる。目の前にはフーリィンの作った弁当の数々。穏やかな時。似合わない? ……放っておけ。
ルークは改めてハナズオウ並木を見上げる。常日頃生活する場では嗅ぐ事の無い春の香り。
ルークはそっと煙草の火を消す。誰に言われるわけでも無く、さも当然のように。
この場所には煙草の煙は無粋過ぎるのさ。
仕事も休みも、やると決めたら妥協はしない。徹底的に花見を楽しむとしよう。ルークはポツリと呟く。
「今日はもう仕事にならんな」
「しごと、きょうはわすれる」
リムリィもこくりと頷いた。楽しいお花見が始まる──。
30分後。
「……さすがに弁当のこの量は多過ぎないか?」
食べても食べても一向に減らないお弁当。味は抜群。3人ともかなり食べているはずだ。
「ダメでしたー♪」
明るく言ってもダメなものはダメ。フーリィンの予想は外れ、まだまだ終わりの見えない料理たち。
3人は意を決したように頷くとそれぞれあたりを見回し始める。
「あ、ジローさーん! お弁当、如何ですか?」
ジロー。フーリィンの弁当を前に奮闘。しかし自身も面料理の提供という役割があるため、途中離脱。
「む? あれは……テンカイか」
テンカイ。すでにかなり酔いどれ。呼んだはいいものの全く戦力にならず、元々あったっ料理を持ちこみさらに量が増える。
「あ、このまえのこ」
ジョアンナとアン。ジョアンナは見た目どおりおいしそうによく食べた。それでもすべてを食べきるには至らない。そして底なしの胃袋を見せ付けたのは伏兵のアンだった。
残っていた料理をぺろりと平らげると、何事も無かったかのように立ち去って言った。知られざる爆食女王の誕生である。
「なんらか……いい気分らわ」
いつしかろれつも怪しいエルシー。ほろ酔い?というには飲み過ぎの気配。
「そうら、ジローさんに麺料理をもらいに行からいろ」
そういと少しふらふらしながらも立ち上がり、ジローの屋台へ向かうエルシー。
「らっしゃい!」
そこには1人の先客。テオドールだ。無難なものを──。テオドールのジローへの注文はある意味正しい。何せ隙を見せればあの呪文が炸裂する可能性があるのだ。少し寂しそうなジローは放っておいて、美味しく食べられる適切な量を注文したテオドールに間違いは無い。もう少し何か頂こうかな──腹八分の余裕が、精神的にも心地よい。
「やっほー、ジローさぁん。わらしにも麺ちょーらい!」
エルシーはすっかり出来あがっている。
「あいよっ! 少し待ってくだされ。すぐに出来たてを出しますぞ~」
嬉しそうに麺をゆでるジローとその様子をじっと見つめているエルシー。
「完成ですぞっ! 熱々なので気をつけてくださいですぞ」
エルシーの前には油で揚げた麺にとろみに付いたあんがのった見たことの無い麺料理。所謂皿うどんだった。
「これはなんら? なんの麺料理ら?」
初めて見る料理に興味津々のエルシー。早速箸を伸ばす。
「はふっはふっ」
結構な暑さのはずなのだが、よほど美味しいのかどんどん食べ進めるエルシー。その様子を驚きの表情で見ているテオドールと相変わらず嬉しそうなジロー。
「おいしー! おかわりぃ! ねぇねぇジローさぁんもお酒飲も! 乾杯しよーっ! あははは」
「ははは。もちろんですぞー。今日ばかりはワタシも作るばかりではなく、食べて飲みますぞー!」
宴は続く。そして──タダ酒を堪能し過ぎたエルシーは翌日ひどい二日酔いに襲われたという。
●
夜──。
そこには仕事を終え、店じまい後にやってきた『もう最初っからうさみみ生えてた』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)の姿があった。
「まぁ商売上、どうしても夜になっちまうよな」
そんな事を呟きながらウェルスがふと見るとそこにはジローの屋台。
おまちしておりまたぞ。そういいながらジローが笑顔でウェルスを迎える。差し出されたジローの麺に、しばしの間舌鼓を打つウェルス。
「それにしても……最初に旦那を見たときはインパクト極大のイロモノかと思ったが、何度か依頼に同行してもらって助けてもらったりしたな」
それを聞いたジローは驚いた表情。自身は全くそのつもりは無いようだ。
「真面目で頼りになるし、人は見かけによらないって思い知ったぜ」
ははは、褒めても何も出ませんぞ。といいながらも替玉の準備をしているのはどういう事であろうか。
改めてウェルスは美味いな、と暖かな湯気が立ち上る丼を見る。
「まぁ美味い麺を求めるのもいいが、わかりやすい罠にあっさりかかるのだけはよしてくれよ? ジローの旦那は悪運が強いから死にはしないだろうけど……」
ハハハ、気を付けますぞ。ジローはそう言った。
だがウェルスは思った。この顔はきっとまたひっかかるんだろうなぁ、と。
「ふぅ。この季節、まだ夜は少し肌寒いですね。ウドーンを頂けますか」
手に息を吹きかけながらジローの屋台へやってきたのは『マギアの導き』マリア・カゲ山(CL3000337)。
幼い頃にアマノホカリからイ・ラプセルへ両親と共に移住してきたマリア。ジローからの誘いにふと郷愁を感じ、この場にいる。夜桜──まぁ此方の場合は桜ではなくハナズオウなのだが、それでもライトアップされそよぐ風に揺れるその様子はどこか優雅で風流な雰囲気を醸し出していた。
その雰囲気がそうさせるのだろうか。マリアは自然とこれまでの出来事を思い出していた。
「思えば……イ・ラプセルにきて……オラクルとなって。いろいろな事がありました。そしてシャンバラ。戦いがここまで熾烈なものになるとは、少し前までは考えもしませんでしたね」
事実これまでは細かいいざこざあっても何とか保たれていた国家間の均等。それが今大きく崩れようとしている。世界が大きく変わろうとしている。その瞬間にマリアは今身を置いているのだ。それにはもちろん危険が伴う。自由騎士たちは常に覚悟を持って行動している。
「たまには命の危険も策謀も関係なく、こうやって息抜きをするのもいいもんだな」
マリアの空気を察してか、ウェルスが同意を求めるようにニカっと笑いかける。
「そうですね。イ・ラプセルでの生活は楽しいですし、これからも楽しみたいですね」
マリアは淡い光に照らされたハナズオウを見上げる。改めて見るとやはり美しい。
「生きてまた花見ってのをするためにも死ねないな」
「ええ、そのためにも戦争は絶対生きて帰らないと。そのためにも今は英気を養っておきましょう」
ウェルスにも、マリアにも。明日からもまた自由騎士としての忙しい日々が続いていくのだ。
そこに少々疲れ気味で現れたのは『はくばにのったおじさま(幻想)』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)。父親の愚痴やら諸々から逃れる為に、これ幸いと誘いに乗ったデボラ。だがせっかくの羽を伸ばそうとした花見に、さも当然と付いてくる使用人たち。この使用人を撒くまでが長かった。行き先を暈し、人ごみにまぎれて何度も使用人を振り切ろうと努力した結果、気付けばこの時間になっていた。
「ご機嫌よう。お酒を嗜まれるのは結構ですがお花も愛でられていますか?」
花見酒にしゃれ込んでいたのは居るのはプラロークのテンカイ。昼から今までずっと。だいぶ飲んでいるようだ。
「フフッ。花は酒を飲む口実さ。まぁこれだけ綺麗だとさすがに目に入るけどね」
そういいながらくいっと注がれた酒を飲み干す。
「サクラとはどのような花なのでしょうね」
「さぁな。だがアマノホカリではこうやって花が咲いたってだけで一つの行事にしちまうんだ。そりゃあ綺麗なんだろうぜ。しかし……」
テンカイはフフフと笑う。
「なにがおかしいのです?」
「いやあな。普段は何かにつけて勝負だ、戦いだといってるヤツが花に興味を持つなんてねぇ」
テンカイはなんだか楽しそうだ。
「失礼な。私だって空気を読まずこんな場で模擬戦だ! なんてさすがに言いません!」
そういって頬を膨らませるデボラ。すまんすまんと肩を叩くテンカイ。
「分かっていますよ、普段は確かにそうですからね。もう……お酌くらいさせて下さい。ね?」
テンカイがお猪口をすっと差し出す。デボラは笑顔でお酒を注いだ。
お花見はまだまだ続く。それは自由騎士たちにとってほんのひと時の安らぎであった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
特殊成果
『ハナズオウの花びら』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
†あとがき†
ハナズオウのお花見いかがだったでしょうか。
アマノホカリ出身者も多いのでいつかイ・ラプセルにもこの行事が根付く事があるかもしれないですね。
MVPは楽しんでいただいた皆様へ。
ご参加ありがとうございました。
アマノホカリ出身者も多いのでいつかイ・ラプセルにもこの行事が根付く事があるかもしれないですね。
MVPは楽しんでいただいた皆様へ。
ご参加ありがとうございました。
FL送付済