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【アクアフェスタ!】水の都お祭り狂騒曲



●アクアフェスタというからには
 ついにこの日がやってきた。
 ――アクアフェスタ。
 水の都イ・ラプセルで開催される、感謝祭である。
 先日ようやく還リビトに関する事件も解決し、街はお祭りムードに染まっていた。
 戦時下とはいえども人々は日常を送り続ける。
 戦いばかりでは心身ともに疲弊するばかりだろう。
 だからこそ、人々の心を癒し、盛り上げ、喜びを分かち合うためにもこのような催しは必要不可欠であった。
 通りにはいくつもの屋台が並び、人々がそこを行き交っている。
 見えるのは的あてや景品付きのくじ引き。
 中には遥か東から伝わってきた天魚すくいという店もある。
 さして高く飛べない小型幻想種の天魚を小さな網で捕らえるというものだ。
 小さく、そしてそれなりの速度で舞う天魚をすくうのはそれなりに難しかったりする。
 もちろん、出ている店はそれだけではない。
 イ・ラプセル各地域の郷土料理を食べることもできるし、スイーツの店も出ている。
「あ、あれ美味しそう!」
 道を歩く『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)も、売られている様々な料理に目移りしっぱなしだ。
 今夜はお祭り。
 人々はいっとき、戦争のことを忘れて思うように騒いでもよい日なのだ。
「――それでは、これより警備を開始する!」
 だが、そんな中でも職務に励む者もいた。
 自由騎士団に所属する『黒騎獅』ライル・ウィドル(nCL3000013)が集まった自由騎士と共に、祭りの警備を始めようとしていた。
 ハメを外しても構わない日だからこそ、外しすぎる者が出ないように見張る者もまた必要ではあるのだろう。
 これもまた祭りの一環といえなくもない。
 かくして、騒ぐ者、見張る者、それぞれがこのお祭りを過ごしていく。
 アクアフェスタ、開催!


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
イベントシナリオ
シナリオカテゴリー
日常α
担当ST
吾語
■成功条件
1.お祭りを楽しむ!
夏はまだまだ終わらない! 祭りじゃー!
吾語です。
アンデッドのお祭りが終わったので普通のお祭りしましょうぜ。
参加される方は下記の行動からいずれか1つを選んでください。
また、どなたかと同行する方は同行する相手のIDとお名前を記載してください。

◆的あて・くじ引き・天魚すくい
 こちらのゲームでは優れた結果を残せば称号を得られるかもしれません。
 天魚すくいは網が張られた室内で浮遊する天魚を小さい網ですくう遊びです。

◆料理屋台
 肉の串焼きやらお手頃スイーツやらが売られています。
 食べ歩きには最適でしょう。

◆警備要員
 祭りで騒ぎが起きないように周辺を警備します。
 ライルはこちらで行動します。


●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
状態
完了
報酬マテリア
1個  0個  0個  0個
16モル 
参加費
50LP
相談日数
7日
参加人数
22/∞
公開日
2018年09月13日

†メイン参加者 22人†

『皇の薬師』
皇 弥悠(CL3000075)
『慈悲の刃、葬送の剣』
アリア・セレスティ(CL3000222)
『イ・ラプセル自由騎士団』
シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『異邦のサムライ』
サブロウ・カイトー(CL3000363)
『みんなをまもるためのちから』
海・西園寺(CL3000241)
『ひまわりの約束』
ナナン・皐月(CL3000240)


●祭りの風景:露店巡り
 祭りはいつだって、人の心を浮き立たせる。
 行き交う人々はそれぞれに祭りに合わせた服を着て、笑顔で往来を闊歩していた。
 これまでの戦いの日々を思えば、それは何と幸福な景色であるだろう。
 自分たちの戦いに意味はあったのだと、『蒼の審問騎士』アリア・セレスティ(CL3000222)は素直に思えた。
「ヒルダちゃん、遊びましょう!」
「OKOK、あたしとアリアで露店をオールコンプリートよ!」
 応じるのは『白金の星』ヒルダ・アークライト(CL3000279)であった。
 親友にして相棒同士の二人、今日は揃ってこの祭りを楽しみに来ていた。
 そんなアリアとヒルダが挑むのは、天魚すくいという遊戯である。
「これは私のステージね!」
 網が張られた遊技場で、ふよふよと浮遊している天魚を救うための小型網を手にしたアリアが拳を握った。
「アリア、がーんばれー!」
 ヒルダの応援を受けながら、アリアは早速手にした網を振り回す。
 戦闘では軽やかに空を舞って戦うアリアだが、浮遊する天魚はこれはこれでなかなかの強敵だった。
「この! やぁ! えーい、待ちなさい!」
「そこ! ほら、もうちょっと! 頑張って!」
 ムキになってジャンプするアリアを、何故かヒルダがしゃがんで応援する。
 その視線の先には、ジャンプによってヒラリと舞うアリアのスカートが……。
「ヒルダちゃん、何見てるの?」
「え、別に? な~んにも~?」
 朗らかな笑顔で言い切って、ヒルダは口笛を吹いてごまかすのだった。

「レディ、お待たせしてしまいましたか?」
 待ち合わせ場所には、すでに『砂糖菓子のソンリッサ』アンジェ・ヘルベチカ(CL3000328)の姿があった。
「いいえ、お兄さま。私も今来たところよ」
 『鷹狗』ジークベルト・ヘルベチカ(CL3000267)に返されるのは、妹の笑顔とそんな常套文句。
 にぎわう街の中を、義理の兄妹二人、並んで歩く。
 だがさすがに人が多い。
 これは、離れぬように手でも繋いだ方がよいのでしょうか。ジークベルトは悩んだ。
「お兄さま?」
「何ですか、レディ」
 自分の袖を引っ張り義妹に気づいて、彼は視線をそちらに向ける。
「私、あれで遊んでみたいわ!」
 アンジェが指さしたのは射的の屋台だった。
「わぁ、あのぬいぐるみ、可愛いわ!」
「では俺が見事にあれを手に入れて見せましょう」
 白いぬいぐるみに瞳を輝かせるアンジェに、ジークベルトはやる気を漲らせた。
 まるで実際の射撃のように、ぬいぐるみに狙いを定め、絶対に撃ち抜くという意思を引き金に込める。
「お兄さま、これは任務じゃないのよ?」
「遊びに本気になれないようでは仕事にも本気にはなれないものなんですよ」
 聞こえてきたアンジェの声に意識をそらしたそのとき、
「やったー!」
 猫のぬいぐるみが倒れ、聞こえてきたのは子供の声。
 ジークベルトが気を抜いた瞬間、別の客がぬいぐるみを撃ってしまったのだ。
「これは、何とも……。申し訳ありません、レディ」
「フフフ、いいえ。お兄さまのかっこいいところは十分に見れたわ」
 謝るジークベルトへ、アンジェはそう言って彼の手をしっかりと握った。
「行きましょう、お兄さま。お祭りは始まったばかりよ!」

 藤色に映える白牡丹。
 母が仕立ててくれた浴衣であった。
「……見違えたな」
 待ち合わせの場所で、彼女の姿を見た『皇の剣』ハルト・スメラギ(CL3000083)は目を丸くして呟く。
 その声に振り向いた『皇の薬師』皇 弥悠(CL3000075)も、ハルトの装いに口元をほころばせた。
 彼女に合わせるように、ハルトは甚兵衛姿だったのだ。
「ハルトも……、似合うね?」
「……そんなことはないよ」 
 褒められて、ハルトは視線をそらした。
 彼の頬がかすかに紅潮しているのを、しかし、弥悠は見逃さなかった。
「どこ、行く?」
 ややぶっきらぼうな物言いをしつつ、ハルトは弥悠に促した。
「……天魚すくい、あっちにあるみたい」
「ああ、そうみたいだな」
 彼女の見ている方をハルトも見て、しかめてばかりだった表情をようやくやわらげた。
 子供の頃にも遊んだ記憶がある、二人にとってはそれは懐かしい思い出だった。
「……遊びに、行こう?」
「ああ、そうするか」
 二人は並んで歩こうとする。しかし、やはりどうにも人が多い。
「離れるなよ」
 無意識のうちに、ハルトは弥悠の手をしっかりと握っていた。
「……うん」
 うなずいて、弥悠もまた彼の手を弱い握力なりに一生懸命握り返すのだった。

 こちら、祭りの中に幾つかある天魚すくいの屋台のうちの一つ。
「ナナンだよー! 天魚すくいに挑戦しまーす! キリッ!」
 去年、浮遊する天魚の前に完全敗北を喫した『ちみっこマーチャント』ナナン・皐月(CL3000240)が鼻息も荒く網をくぐって天魚舞う遊戯場へとやってくる。
 今年のナナンは去年とは一味違う。
 どう違うかと問われると何が違うのかは本人も分かっていないが、一味違うのだ。
「リベンジだー!」
 と、息巻いて小網を掲げるも、そこにはフワフワしている天魚たちがいて、
「ふわぁ~……」
 ナナンはそのポーズを保ったまま、ついつい見惚れてしまうのだった。
 今年も、ナナンは敗北を喫することになりそうだ。
「フッフッフ、鋼鉄の川魚ハンターとはまさにワシのこと!」
 一方で、鋼の駆動音を響かせながらその豊満な体を躍動させるのが『揺れる豊穣の大地』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)だ。
 浮遊する天魚の不規則な軌道を見事に捉え、その小網が一匹、また一匹と見事にすくっていく。
 浴衣姿でありながら全く構わず動き回る彼女へと、自然と視線は集まった。
「む、これはなかなか逃げ足が……、待て。待たんか!」
 だが本日は休日のシノピリカ、それも気にせず天魚相手に心の底から戯れる。
 結局、目に見える成果は大して得られなかった。
 しかし童心に帰ることができたこの時間は、彼女にとって大きな癒しとなったに違いなかった。
「おや」
「お?」
 天魚すくい、また別の屋台にて。
 『天辰』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)と『星達の記録者』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)がばったりと出くわした。
「奇遇ですね」
「おう。カスカも遊びに来たのか?」
「ええ、こういったお祭りは嫌いではありませんので」
 談笑しつつ、二人は網をくぐって天魚が浮遊する遊技場へ。
 少しばかりの広さを持ったそこを漂う天魚を見上げながら、ウェルスは小さく苦笑する。
「カスカがいてよかったぜ。一人で遊ぶってのも味気ないもんな」
「そういうものですか?」
「少なくとも俺はな。……で、賭けるか? どっちが多くすくえるか」
「それは面白くありませんよ」
 言いながら、カスカが軽戦士としての身軽さを見せて、近くを漂っている天魚を一匹捕まえた。
「ほら、勝負になりませんし。それに」
「……それに、何だよ?」
「こういうのは、競うのではなく気楽に楽しむのが一番ですよ」
 それだけ言って、カスカはさっさと天魚すくいを再開してしまう。
 なるほど、彼女の言葉は確かにもっともであろう。
 しかし、そこでウェルス、何故か妙な負けん気に駆られてしまった。
「……負けねぇ」
 と、ひそかに思って数分ばかり頑張ってみるが、結果は――
「無・理!」
 朗らかに言い切って、彼は隣の射的屋に足を運んだ。この鬱憤、射撃で晴らしてやるぜ!
 と、そこには海・西園寺(CL3000241)の姿があった。
「的あて。それは、ガンナーとしての腕前を惜しげもなく披露してドヤ顔できる場所!」
 始める前からすでにドヤ顔になっている海が、早速おもちゃのライフルを手に景品を狙った。
 狙うべきはおもちゃの人形。
 それも同じものを三つ。
 友人、相棒、ライバルに、それぞれドヤ顔するために!
「いざ! バキューン!」
 外した。
「…………」
 咳ばらいを一つして、もう一度。
「それ! バキューン!」
 また外した。
「……………………」
 さらにもう一度。
 外した。
 そしてもう一度。
 外した。
「ムキー!」
 どうやら、ドヤ顔ができるまでの道のりはなかなか遠そうだった。

●祭りの風景:屋台巡り
 祭りといえば、欠かせないのが食欲をそそる数々の屋台であろう。
 売る者がいて、買う者がいる。
 例えば売る者。
「はーい! 暑いですね暑いですね、まだまだ暑いですね! そんなときはこちらー!」
 屋台の前で手を叩き、『商売繁盛どどんこどん』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)が自分の店の売り物を大々的に宣伝している。
 彼女の店で売っているのは、凍らせた果物を刃物で削って作った贅沢な氷菓だった。
 その冷たさと美味しさで、店の前には大きな行列ができている。
「うふふふふ、かき入れどきですねぇ~。きゃ~、まだまだ追いつかない~!」
 このままでは用意してきた果実が全てなくなってしまいそうな勢いだ。
 しかし、そこは商売人。
 すでに新たな食材の注文は済ませてある。
「ちょいと、材料はどこに置けばいいんだい!」
 噂をすれば何とやら、食材の入ったかごを抱えてトミコ・マール(CL3000192)がやってきた。
「あ、そっちの方に置いてくれますかぁ~?」
「こっちかい? あいよ!」
 シェリルの指示を受けて、トミコがかごを店の脇に下ろした。
 それにしてもかなりの行列だ。しかし、きっともうすぐ今以上に忙しくなるだろう。
「いっちょあたしも手伝ってやるかねぇ!」
 それを察したトミコが、腕まくりをして屋台の裏側へと回ろうとする。
「ほんまですか? 屋台は回らないんです?」
「あたしゃ食べさせる方が性に合ってるからねぇ!」
 思わぬ助っ人に、シェリルは口をにんまりさせる。
 売る者は売る者でこの祭りをしっかりと楽しんでいる。という話だった。
 そして、買う者。
「お祭りだー! 屋台がいっぱい、美味しそー!」
 往来ではしゃいでいるのは、『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)だった。
 その手にはすでに何本もの串焼きが握られている。
「よーし、次はソースヌードルだー!」
 ソースヌードルとは、その名の通りソースを絡めて炒めた麺のことだ。
 お祭りの醍醐味。
 それは自分の胃と懐の限界を取っ払って食道楽に走ること!
 今のカーミラの姿こそ、まさにそれを体現していると言ってよいだろう。
 そして彼女と同じように食ロードを爆走した結果、悲劇を迎えた者もいたりする。
「ぴ、ぴ~んち……」
 ベンチに座って、サシャ・プニコフ(CL3000122)が小さくうめいていた。
 ほんの数分前――
「屋台あるところにサシャあり! 全屋台制覇するぞー!」
 と、鼻息も荒く屋台通りに来たのはいいものの、
「ううう、むぐむぐ。……おいひい」
 何とか手に持っていた肉焼きをほおばって、それを咀嚼する。
 しかし噛む速度は遅く、呑み込めるまで随分と時間がかかっていた。
 要は、お腹がいっぱいなのだ。
「くるひぃ……。ぴんち、大ぴ~んち……」
 無計画に買いすぎて食べ過ぎればどうなるか。
 その見本とも言うべき例であった。
 しかしそれでも、サシャは食べるのをやめない。
「く、それもこれも、全部屋台の料理がどれもこれも魅力的だから……!」
 その言葉そのものは言いがかりにも等しいが、今も串焼きをもぐもぐしているから言い訳ではないのだろう。
 しかしやっぱり、お腹が苦しい。
「サ、サシャには屋台を制覇するという使命が……、バタリ!」
 サシャ・プニコフ、志半ばにして倒れる!
 その一方で――
「えー、さてさて、次はどこに行こうかな、と……」
 街の地図を手にした『子リスの大冒険』クイニィー・アルジェント(CL3000178)が次の屋台に狙いを定めようとしていた。
 彼女の目的はサシャと同じく、屋台の制覇である。
 しかし、違うのは全屋台ではなく、気になる屋台の制覇なのだった。
「お次はサンドイッチ屋かー、いざゆかん! 覚悟しろー!」
 自分の目的のため、突進するのではなく考えて進んでいく。
 ただ、サシャもクイニィーも祭りを楽しむという一点においては何も変わらない。
 売る者も、買う者も、己の思うがままに楽しむべく今この場にいるのだ。
 そして楽しみ方も人それぞれ。
 例えば、『裏街の夜の妖精』ローラ・オルグレン(CL3000210)のような者もいる。
「ふんふ~ん♪」
 鼻歌を歌いつつ、白のワンピースドレス姿で祭りを歩く彼女は、ぱんつをはいていなかった。
 いや、彼女が露出狂とかそういう話ではない。
 きっと健康法とかそういうのだ。そうに違いない。
「どっかにいい男、いないかな~?」
 と、そんな彼女の目的は、その一言に集約される。
 ひと夏の恋。
 いや、一夜の火遊びとでもいうべきか。
 それをできる相手を求めて、彼女は屋台通りに繰り出していた。
 食べ物を探してつっていうか、食べるは食べるでも違う食べるっていうか!
 その結末はここで書けるワケがないが、ローラの危険が危ない夏祭りは、まだ始まったばかりだ! 

●祭りの風景:巡回警備
 祭りは楽しいものである。
 しかしそれゆえにハメを外しすぎて諍いが起きることもある。
「何とか収まりましたね……」
 また一件、喧嘩騒ぎを鎮圧した『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)が小さくため息をついた。
 自由騎士として、警備に参加している彼は今日だけで何度こうした仲裁を行なったことか。
「お祭りですもの、仕方ありませんわ」
 隣を歩く『命短し恋せよ乙女』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)がアダムを励ますように笑って言った。
 本当は、彼も彼女も祭りを楽しみたい。
 だがアダムは騎士として、その想いをグッと飲み込んで警備にあたっていた。
 ジュリエットは、まぁ、言わぬが花であろう。
 それに彼女は案外、この時間が苦ではないようで、
「フフフ、この時間も貴重ですわ……」
 焦がれる殿方を隣に置いて、仕事とはいえ共に祭りを回って歩く。
 役得といえば、これ以上ない役得ではあった。
 と、そんなことを思っていたときに限って、
「あっちで喧嘩だー!」
 聞こえてきた民の声に、アダムもジュリエットも苦虫を噛み潰したような顔をする。
「よくもまぁ、飽きもせずに……! ジュリエットさん、失礼!」
 駆け出すアダムがはぐれないよう、ジュリエットの手を取った。
「あ……」
 呆けたのも一瞬。
 すぐに彼女は引っ張られて、慌ててその場から走り出す。
 あわただしいことこの上ない巡回警備意だが、やはり役得。にやける唇を押さえられないジュリエットであった。
 その頃、警備員の詰め所としてあてがわれた建物では――
「このタイミングでヴィス公が攻めてきたらコトだな」
「祭りの日くらい気にするのをやめたらどうだ?」
 腕組みをする『黒騎獅』ライル・ウィドル(nCL3000013)に、テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)が忠告する。
「む、そうだな。……いかんな。どうにもそこばかりが気にかかる」
 ライルはうなずくが、彼の石頭はちょっとやそっとでは柔らかくはならないらしい。
「全く。……見てみろ、みんなあんなに楽しそうではないか」
 道を歩く人々を、テオドールが指さした。
 なるほど、皆、祭りに浮かれて陽気に笑っている。その景色を眺めるだけで、こっちの気分も明るくなる。
「そうそう、今日はお祭やー!」
 そこで、『イ・ラプセル自由騎士団』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)がいきなり騒ぎ始めた。
「どうした、急に……」
「うちの警備の時間終わったから交代にきたんやでー! うち、早くお祭り行きたい!」
「おっと、もうそんなタイミングか」
 アリシアの説明を受けて、鼻白んでいたテオドールが時間の経過に気づく。
 警備任務中でも休憩はもちろんある。
 休憩中であれば自由行動が認められていた。
「なるほど、だったらちょうどいいですね。アリシアさんの持ち場には僕がつきましょう」
 そこに、ちょうど休憩から戻ってきたサブロウ・カイトー(CL3000363)がひょっこりと顔を出してくる。
「やった! ほなら、休憩いってきまーす!」
「ハメを外しすぎるなよ」
 装備一式を詰め所に置いて、アリシアが祭りへと繰り出していく。
 その背中を見ながら、サブロウが呟いた。
「いいものですね、お祭というのも」
「ああ。それを守ってるのが俺達というのもなかなか誇らしいものだ」
 言って、テオドールが見上げればそこには輝く月と瞬く星々。
 次に、この夜空を奇麗と思える余裕が生まれるのはいつの日のことか。
 今日が終われば、また戦いの日々が始まるだろう。
 だから、せめて今夜だけは。
「じゃあここはライルさんに任せて、僕達は見回ることにしましょうか」
「そうしよう」
 人々の笑顔を守るために、自由騎士はもう少しだけ頑張るのであった。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

大変お待たせいたしました!
遅れてしまい申し訳ありませんでした!

夏祭りの風景を描いてるのは楽しかったです。
皆さんの想いでの一ページとなれば幸いです!

おそれでは、お疲れさまでした!
FL送付済