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光り散らして咲く夜蝶

●胡蝶の夢、ではないけれど
「夜光蝶花を飾りたいの」
その豪奢な一室で、マダム・シープがそう告げる。
集められた自由騎士達は、揃って首をかしげた。
「近年発見されたばかりの花でね、花弁が蝶の形をしているの。夜になると、淡い光を放つのよ。綺麗でしょう?」
妖艶に微笑むマダム・シープは、昼間はパーティー会場、夜は高級風俗店として邸宅を開いている女性であり、今回、個人的な理由から知り合いの自由騎士に依頼を持ち込んできたのだ。その内容が『夜光蝶花』の採取である。
「美しいものを身近に置きたい。女性なら誰でも思うことね」
ソファに優雅に座って、彼女は一枚の地図を差し出す。
そこには、×印が四つほど記されていた。
「場所は、元ヘルメリア領の山岳地帯。この三つの印が『夜光蝶花』が群生しているとおぼしき場所の予想地点よ。発見されたのは、たまたま離れた場所に発見された少数の花だけ。おそらく近くに群生地があるっぽいのよね」
何でも、彼女が師事している生け花職人から得た情報であるという。
「今のところ、この花そのものは特別な力はないとされているわ。ただ、綺麗というだけ。でも、綺麗な花はそれだけで誰かにとって特別な価値を持つことがあるわ。それを欲する今の私のように。ね?」
花については、きっとこの場の誰よりも造詣が深いであろうマダム・シープに、何か言葉を返せる者などいなかった。
「花は咲く瞬間が最も美しいの。できれば、夜に咲きそうな蕾をもってきていただけませんかしら? 廊下に飾って、夜に咲く瞬間が見てみたいの」
何とも贅沢な注文である。
しかし、想像するだに風流な風景ではあった。
それに群生地を発見できれば、この花に関する研究も一層進むだろう。
「ただ、地図にある一帯には危険な幻想種がいるという話もあります。だから皆さんにお願いすることにしたわけですけれど。気をつけてちょうだいね」
そんな感じ、夜の蝶を探すことになった自由騎士達であった。
「夜光蝶花を飾りたいの」
その豪奢な一室で、マダム・シープがそう告げる。
集められた自由騎士達は、揃って首をかしげた。
「近年発見されたばかりの花でね、花弁が蝶の形をしているの。夜になると、淡い光を放つのよ。綺麗でしょう?」
妖艶に微笑むマダム・シープは、昼間はパーティー会場、夜は高級風俗店として邸宅を開いている女性であり、今回、個人的な理由から知り合いの自由騎士に依頼を持ち込んできたのだ。その内容が『夜光蝶花』の採取である。
「美しいものを身近に置きたい。女性なら誰でも思うことね」
ソファに優雅に座って、彼女は一枚の地図を差し出す。
そこには、×印が四つほど記されていた。
「場所は、元ヘルメリア領の山岳地帯。この三つの印が『夜光蝶花』が群生しているとおぼしき場所の予想地点よ。発見されたのは、たまたま離れた場所に発見された少数の花だけ。おそらく近くに群生地があるっぽいのよね」
何でも、彼女が師事している生け花職人から得た情報であるという。
「今のところ、この花そのものは特別な力はないとされているわ。ただ、綺麗というだけ。でも、綺麗な花はそれだけで誰かにとって特別な価値を持つことがあるわ。それを欲する今の私のように。ね?」
花については、きっとこの場の誰よりも造詣が深いであろうマダム・シープに、何か言葉を返せる者などいなかった。
「花は咲く瞬間が最も美しいの。できれば、夜に咲きそうな蕾をもってきていただけませんかしら? 廊下に飾って、夜に咲く瞬間が見てみたいの」
何とも贅沢な注文である。
しかし、想像するだに風流な風景ではあった。
それに群生地を発見できれば、この花に関する研究も一層進むだろう。
「ただ、地図にある一帯には危険な幻想種がいるという話もあります。だから皆さんにお願いすることにしたわけですけれど。気をつけてちょうだいね」
そんな感じ、夜の蝶を探すことになった自由騎士達であった。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.夜光蝶花の群生地を見つける
リクエストあrrrrrぃがとうございまーす。(巻き舌)
吾語です。
※このシナリオは蔡 狼華(CL3000451)のリクエストによって作成されたシナリオです。
リクエストした以外のPCも参加することができます。
では、以下シナリオ詳細~。
◆群生地候補
下記の三か所があります。ただし群生地は一か所です。
どう探すかは皆さんにお任せします。
全部探してもいいし、一か所決め打ちでも構いません。
探索について、失敗時のペナルティなどは特にないので、気楽にどーぞー。
・候補地A
森の中です。色んな植物が茂ってます。
ここを巣にしている爬虫類型の幻想種(後述)がいるようです。
・候補地B
山岳地帯です。緑もそこそこあります。
この辺りに巣を作っている鳥型の幻想種(後述)がいるようです。
・候補地C
平原地帯です。近くに川が流れています。
川を水飲み場にしている四足獣の幻想種(後述)がいるようです。
◆生息してる幻想種達
・候補地A
双頭の大蛇が生息しています。
長い、太い、強い。しかも毒蛇。さらに双頭なので1ターン2回攻撃。
牙の攻撃を受けた場合、パラライズ2、ポイズン2を被ります。
・候補地B
四枚の翼を持つ人よりでっかい猛禽類がいます。
デカイ。速い。強い。しかも巣が近い。卵を守るためにめっちゃ獰猛です。
飛行持ちの上、回避率バカ高です。鉤爪攻撃を喰らったらスクラッチ3を被ります。
・候補地C
普通の三倍近い大きさの六本足の一角馬がいます。
速い。頑丈。強い。そして女好き。処女でもビッチでもロリでもBBAでも無問題。
女の子に向かって突進してきます。貫通100・100です。迷惑な。
なお、これらの幻想種は別に倒す必要はありません。
一定以上ダメージを与えたらどっかに逃げていきます。
それでは、皆さんのご参加をお待ちしています!
吾語です。
※このシナリオは蔡 狼華(CL3000451)のリクエストによって作成されたシナリオです。
リクエストした以外のPCも参加することができます。
では、以下シナリオ詳細~。
◆群生地候補
下記の三か所があります。ただし群生地は一か所です。
どう探すかは皆さんにお任せします。
全部探してもいいし、一か所決め打ちでも構いません。
探索について、失敗時のペナルティなどは特にないので、気楽にどーぞー。
・候補地A
森の中です。色んな植物が茂ってます。
ここを巣にしている爬虫類型の幻想種(後述)がいるようです。
・候補地B
山岳地帯です。緑もそこそこあります。
この辺りに巣を作っている鳥型の幻想種(後述)がいるようです。
・候補地C
平原地帯です。近くに川が流れています。
川を水飲み場にしている四足獣の幻想種(後述)がいるようです。
◆生息してる幻想種達
・候補地A
双頭の大蛇が生息しています。
長い、太い、強い。しかも毒蛇。さらに双頭なので1ターン2回攻撃。
牙の攻撃を受けた場合、パラライズ2、ポイズン2を被ります。
・候補地B
四枚の翼を持つ人よりでっかい猛禽類がいます。
デカイ。速い。強い。しかも巣が近い。卵を守るためにめっちゃ獰猛です。
飛行持ちの上、回避率バカ高です。鉤爪攻撃を喰らったらスクラッチ3を被ります。
・候補地C
普通の三倍近い大きさの六本足の一角馬がいます。
速い。頑丈。強い。そして女好き。処女でもビッチでもロリでもBBAでも無問題。
女の子に向かって突進してきます。貫通100・100です。迷惑な。
なお、これらの幻想種は別に倒す必要はありません。
一定以上ダメージを与えたらどっかに逃げていきます。
それでは、皆さんのご参加をお待ちしています!
状態
完了
完了
報酬マテリア
6個
2個
2個
2個




参加費
100LP
100LP
相談日数
7日
7日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2020年06月19日
2020年06月19日
†メイン参加者 6人†
●おきばりやす
「マダムからのご依頼や。失敗は許されまへんえ?」
開幕早々、ドスの利いた声がする。
集められた自由騎士にそう言い聞かせたのは、『艶師』蔡 狼華(CL3000451)である。
「気合入ってんな~」
今回の参加メンバーの一人『罰はその命を以って』ニコラス・モラル(CL3000453)がそう漏らす。彼はそこで軽く苦笑して、
「いやしかし、オーナーもとんだ無茶振りすンよなぁ。ここからオーナーの館までどれだけ距離があると思ってんだ? 希望通りの株を探せるもんかね?」
「お探しやす」
零すニコラスに、狼華はにこやかにそう告げた。
果たして、ニコラスに「はい」以外の返答方法はあるだろうか。いや、ない。
「がんばります」
肩を落としてそう返すニコラスに、ルエ・アイドクレース(CL3000673)が、
「ああ、珍しい花らしいし、ちょっと頑張ってみるか」
特に気負った様子もなく、彼は笑って言うのだった。
「話を聞くだに幻想的な花だな。きっとすげー綺麗なんだろうな。楽しみだ」
詩人である『ウインドウィーバー』リュエル・ステラ・ギャレイ(CL3000683)も乗り気な様子だった。
一方で、やや変わった動機で参加しているのが瑠璃彦 水月(CL3000449)である。
「夜光蝶花、探し出して味見をしてみたいものですな」
「味見て……」
まさかの食欲。
ニコラスが若干驚き、水月を眺める。
「何でもいいですわぁ。見つけてさえもらえれば」
狼華としては許容範囲らしい。
『マダムが欲しいなら、ぼく、お花を探しますね』
最後の一人、『おもてなすもふもふ』雪・鈴(CL3000447)はマイペースに筆談でそう記し、この辺り一帯が描かれている地図を広げた。
夜光蝶花の群生地候補とされている三か所と、他に一つ、計四つの印が記されている。
「この四つ目の印は」
「ここですわぁ」
尋ねるニコラスに、狼華は笑って自分が立っている地面を指差した。
この場は、三つの候補地から一番合流しやすい地点なのである。
「どなたか、他に何か質問は?」
狼華が皆に問うが、特に質問はないようだった。
それを確認し、彼は皆に向かって告げる。
「みなはん、おきばりやす」
夜光蝶花探索、開始である。
●候補地:平原
参加した自由騎士のうち、まずルエと水月が赴いたのが平原地帯だった。
「かなり広いな。それに花がやたら咲いてる」
時期が晩春ということもあって、日中は大体常にポカポカ陽気。
そりゃあ花だって謳歌爛漫この上ない感じに咲き誇る季節なのであった。
「お、この草は食べれそうですな。あ、こっちも」
「ブレないな……」
早速花を探し始めた水月を見て、ルエはやや呆れた調子の声を出す。
しかしいい天気だ。雲も少なくて大きく広がる青空は、すでに夏の色がにじんでいる気がする。周りに伸びる草花の香りと、近くに聞こえる川のせせらぎ。
声を出さず、ただそこに立ちつくしているだけで心が安らいでいくのを感じる。
「いいときに来れたのかもしれないな」
ルエは言いながら、まずは川の方へと寄っていった。
見ると、小さな動物が水を飲んでいた。
この辺りは、近隣の動物達の水飲み場になっているようだった。
「これだけ水が澄んでれば、そうもなるだろうな」
その場にかがんで手で軽く水を掬う。
鮮烈な冷たさは常人ならば驚くだろうがルエはミズヒトだ。問題はない。
掬った水は陽光を受けてキラキラと輝き、覗き込めばそこに彼の顔が映り込む。
「いい水だ」
と、呟いたときだった。
「来ましたぞー!」
水月が何やら大声で騒ぎだした。
彼が指さす方をルエが見ると、そこにはかなりの巨体を持つ馬がいる。
六本足に一本角。
事前に話が出ていた幻想種であった。
「思っていたより、さらに大きいな……」
「食いでがありそうですな!」
警戒を露わにするルエの隣で、信じがたい水月の発言。
「……ちょっと待ってくれ。食べるのか?」
「食いますが?」
さも当然のように返されてしまった。
「え、いや、だけれど……」
「考えていただきたい」
逡巡するルエに、水月が何かを訴えようとする。
「今回、我々は花を探して採取するためにここに来ましたな?」
「あ、うん。そうだけど……」
「それと馬肉を探して採取する。それに何の違いがありましょうッッッ!」
「あ、はい」
違うのだ! と反論できるほど、ルエは状況をよく理解できていなかった。
というか、くだんの幻想種は女性を見ると容赦なく突撃を仕掛けてくるという。
もし仮にこの辺りに人が来たら、あるいは、被害が出るかもしれない。
そう考えると、今のうちに危険の芽を摘むのもありかも。
という、半ば自己暗示に近い流れでルエは無理やり自分を納得させた。
そしてルエの納得などそもそも求めてないし、何と言われようとも桜肉を食うことを誓っている水月は、そのための第一歩として龍氣螺合を発動させる。
気合バリバリであった。
「あー、じゃあ、俺は花探すから」
「我輩も馬肉をほぐしながら探しますぞ! キェ――――ッ!」
そして、水月はデカ馬幻想種の方へとすっ飛んでいった。
一人残ったルエは、始まったバトルからついっと目をそらして、周りの景色を見る。
声を出さず、立ち尽くしているだけで聞こえてくる音がある。
花が風に揺れる音。
澄んだ川のせせらぎ。
そして巨大馬肉と狩猟者の情け無用のバトルの音。
「……今日はいい日だな」
一部の音を意識の外に追いやって、ルエはしみじみ呟いた。
残念ながら、夜光蝶花はここにはなかった。
●候補地:森
「マダムからの御依頼や、失敗できへんわぁ~」
「マダムが欲しいなら、ぼく、がんばります」
こちら森の中、マダム・シープにお熱な二人の探索風景である。
しかし周りには木ばかり、足元には草ばかり。
そんな中であるかもわからない花を探す。というのはなかなかに骨が折れる作業だ。
「あぁん、こっちにはあらへんわぁ」
「……こっちも、見つかりません」
「ほな、次行きますえ」
「はい、がんばりましょう」
だがマダムのためという動機を共有する二人には苦にもならなかった。
狼華はその卓越した視力をもって周りを隙なく探していく。
時々、獣の唸り声なども聞こえたりしたが、そのくらいで止まる彼ではない。
目的を持った女は強い。
それを地で行くような今の狼華とは少し離れた場所で、鈴もまたしっかりと辺りを見る。
マダムのため、というのが第一だが、自分自身が珍しい花を見たい気持ちも強かった。
しかし、これがなかなか見つからない。
「……お花、どうやって探したらいいでしょう?」
しばらく探しての作戦会議。
鈴が狼華に向かって首をかしげる。
「気合、ですわぁ」
「気合、ですかぁ」
「そうどす。気合があれば何でもできるんや。叶うんや」
「なるほどぉ~」
狼華の確信に満ちた返答に、鈴はさしたる疑問を抱くこともなかった。
そして探索は再開される。
「マダムのためや。マダムのために絶対見つけなあきまへん」
いつもの雅な狼華はここにはいない。
今、この森にいるのは、自らが敬愛するあの方のため、血眼になって一輪の花を探す探し物の鬼。荒い息遣いとまばたきをしない見開かれた瞳が特徴的な、愛の狩人である。
しかし、目的のものを探すことに専念しすぎたがゆえの弊害、というものもある。
「あ」
見つけたのは、鈴だった。
「狼華さん、あの……」
「何ですの? 花は見つかりましたかぁ?」
「いえ、まだですけど、あの……」
「だから、一体何やのぉ?」
「上」
「上?」
言われて、狼華が上を見る。
彼の直上、太く伸びた木の枝に、でっかい蛇が巻き付いていた。
長い、太い。そして頭が二つある。
事前に話に出ていた幻想種だ。
二つの頭は揃って狼華を凝視しており、ジャラララと舌を出して威嚇してきている。
それを見て、一瞬だけ狼華の動きが止まった。
鈴がすぐに庇えるよう、盾を持って前に出ようとするが――、
サクッ。
二つの頭の丁度境目に、狼華が小太刀を突き立てる。
「あ」
このいきなりすぎる行動に、鈴の方が固まった。
「何人たりとも、うちの邪魔はさせまへんえ?」
それを言い渡す狼華からは、黒い炎めいた殺気が溢れ出ていた。
そして始まるフルボッコ。
「何やあんたはん、爬虫類如きがうちの邪魔しはるんか? なぁ? なぁ?」
「わ、わぁ~……」
鈴が思わず感嘆の声をあげてしまうくらいに、それは徹底したボコりであった。
さすがにたまらず、双頭の蛇が逃げ出そうとする。
「雪! 逃がさんといてな! うちの前に出てきたことを死んで後悔させな!」
「いや、逃がしてあげましょうよ……」
蛇が襲ってきたならば共に戦うつもりの鈴であったが、逃げるならば追う必要はなく。
「あ~ん、着物が汚れてしもた。踏んだり蹴ったりやわぁ……」
「それはきっと蛇も一緒じゃないかなって……」
少年二人、会話しながら再び蝶の花を探し始める。
だが残念なことに、二人の頑張りが報われることはないのであった。
●候補地:山
何故なら、夜光蝶花は山の上に咲く花であったからだ。
「うぅ~わ、あった」
まず見つけたのは、ニコラスだった。
そして彼がドンビキしたのには、ちゃんとした理由がある。
「あったけどよぉ、こいつはキツくないかい?」
割と険しい崖にべったりと張り付いて、彼はそこに咲く夜光蝶花を観察する。
群生、と呼ぶには数が少し足りないのは、そこがあまり広くないからだ。
崖の上にポツンとある、小さな広場。
せいぜい二人が立てば目一杯になってしまう程度の広さに、花がおそらく五輪くらい。
まず、採取する人間はここまで到達する必要がある。それが厄介だ。
その上――、
「あ、また増えたぞ」
リュエルがのん気に呟くが、ニコラスにとっては凶報でしかない。
空を舞う巨大な影。
四枚翼の猛禽型幻想種が、悠々と飛行しているのだ。
何羽も。――何十羽も。
「いやぁ、ちょっとこれは、おじさんが聞いてた話とだいぶ違くないかい?」
「あー、そうだなぁ。でもすごい光景だよなぁ。くぅ~、イメージが湧いてくるぜ」
「詩人って人種は命知らずなのかな? 怖いモノ知らずなのかな? それともただのバ」
だがニコラスは最後まで言い切ることはしなかった。
「さて、どうしたもんかね?」
崖を降りて、ニコラスは思案を巡らせる。
花は見つかった。しかし、見つけたのはきっと群生地全体のほんの一角に過ぎまい。
「確かに厄介だよな。花が咲いてる場所と幻想種の巣がある場所がぴったり重なってる」
リュエルが言う。
そう。それなのだ。問題はそれ。
今のところ、猛禽型幻想種にこっちを襲ってくる気はなさそうだ。
だがそれはニコラスとリュエルを警戒していないということには繋がらない。
いや、むしろバリバリに警戒されている。
「花を採ろうとしたら卵を狙ってると勘違いされて攻撃される。……あるな」
「十分にありうる」
二人は頭上を見上げる。
猛禽型幻想種が、折り重なるようにして集まって空を飛んでいた。
さすがに自由騎士といえど、たった二人ではそれら全てを相手取ることは不可能だ。
「一応、花があった場所は地図に記しておいたけど」
「巣がある場所も明らかにしておかないと、危ないわなぁ、こりゃあ……」
地図を広げるリュエルと、唸るニコラス。
「「…………」」
二人はまた、しばし黙り込む。
「民族音楽な感じにまとめるのがよさそうだな」
「あ、考えてたの、そっち?」
小さく漏らすリュエルに、ニコラスは頬をヒクつかせた。
そして、さらに考えこんで、ついに二人は結論を出す。
「呼ぶか、他の連中」
「そうしよう」
英断であった。
●そして蝶は夜に舞う
こうして、採集された夜光蝶花は無事にサロン・シープに持ち込まれた。
「いやぁ、大冒険だったな!」
店の中で、ニコラスが半ばヤケクソ気味にそんなことを叫ぶ。
しかし、それが揶揄でもなく比喩でもなく、単なる事実なのだから始末に悪い。
「うちの大活躍、マダムにお見せしたかったわぁ」
心なしドヤ顔気味な狼華。
ニコラス達の召集を受けて、いの一番に到着した彼は着物の汚れも気にせず崖を昇り、見事に花開く直前の夜光蝶花の蕾をゲットしたのであった。
その鬼気迫る様子たるや、リュエルが思わず筆を執ったほどである。
そして、一方で、もう一人大活躍した人物がいた。
「結局、味見できませんでしたな……」
すっかりしょげ返っている水月である。
馬肉をもう少しで仕留められるというところで召集を受け、結局見逃した。
代わりに焼き鳥の材料をゲットすべく、猛禽型幻想種に挑んでいったワケである。
「水月がいなければ、もう少し花を採ってくるのに苦労しただろうな」
ルエが言う。
隣で「そうですね」と鈴がうなずいた。
ニコラス達の予想通り、自由騎士が花の最終を始めようとした途端、猛禽型幻想種が一斉に襲いかかってきたのだ。が、そこで囮の役割を果たしたのが水月だ。
彼が幻想種の大半を受け持たなければ、きっとかなりの被害が出ていただろう。
しかし、そんな水月も結局食材を入手できずしょんぼりなのであった。
他にも、様々な大活躍や大冒険エピソードがあったわけだが、それらを描いたら文字数がえらいことになってしまうので泣く泣くではあるが割愛する。
「う~ん、今回はどんなジャンルで曲を書くかなぁ」
「皆様、おそろいかしら?」
リュエルが作曲に頭を悩ませているところに、マダム・シープがやってきた。
「マダムー! うち頑張りましたえー!」
はしゃぐ狼華に、マダムは「そうね」と笑いかける。
そして視線は、未だ悩むリュエルの方へ。
「お預かりした地図、とても助かりましたわ。ありがとうございます」
「え、ああ。必要だろうと思ったしなぁ」
礼を言われて、リュエルが顔を上げた。
彼は、夜光蝶花が咲いている場所と幻想種の巣がある場所を全て地図に記したのだ。
それは今後、花を採集する際に大いに役に立つに違いない。
「いやぁ~、やり通しましたぜ、マダム。とんだ無茶振りだったがよ~」
「ニコラス様も、本当に助かりましたわ」
「お。そう思ってくださる? んじゃちょっとくらいサービスお願いしちゃっていい?」
「ええ、構いませんわ」
「やったぜ」
これには中年も満面ニッコリ。
「さぁ、皆様、こちらへどうぞ」
狼華の頭を優しく撫でながら、マダム・シープが皆を部屋の外へといざなう。
すると――、
「おお……」
ルエが思わず驚きの声を漏らす。
開け放たれた窓。そこから差し込む冴えた月の光。
そして、月光の中、淡い蒼白の燐光を纏って、蝶の形をした花が咲き誇っている。
通路の左右に置かれた夜光蝶花は、まさしくその名が示す通りの光景を作っていた。
皆は息を呑む、幻想的な風景であった。
「喜んでいただけたかしら?」
見惚れる自由騎士達に、マダム・シープが微笑みかける。
それはきっと、一生涯忘れられない光景であったろう。
「最高ですわぁ……」
狼華のため息混じりの感想が、全てを物語っていた。
サロン・シープに、また一つ新たなウリができたのであった。
「マダムからのご依頼や。失敗は許されまへんえ?」
開幕早々、ドスの利いた声がする。
集められた自由騎士にそう言い聞かせたのは、『艶師』蔡 狼華(CL3000451)である。
「気合入ってんな~」
今回の参加メンバーの一人『罰はその命を以って』ニコラス・モラル(CL3000453)がそう漏らす。彼はそこで軽く苦笑して、
「いやしかし、オーナーもとんだ無茶振りすンよなぁ。ここからオーナーの館までどれだけ距離があると思ってんだ? 希望通りの株を探せるもんかね?」
「お探しやす」
零すニコラスに、狼華はにこやかにそう告げた。
果たして、ニコラスに「はい」以外の返答方法はあるだろうか。いや、ない。
「がんばります」
肩を落としてそう返すニコラスに、ルエ・アイドクレース(CL3000673)が、
「ああ、珍しい花らしいし、ちょっと頑張ってみるか」
特に気負った様子もなく、彼は笑って言うのだった。
「話を聞くだに幻想的な花だな。きっとすげー綺麗なんだろうな。楽しみだ」
詩人である『ウインドウィーバー』リュエル・ステラ・ギャレイ(CL3000683)も乗り気な様子だった。
一方で、やや変わった動機で参加しているのが瑠璃彦 水月(CL3000449)である。
「夜光蝶花、探し出して味見をしてみたいものですな」
「味見て……」
まさかの食欲。
ニコラスが若干驚き、水月を眺める。
「何でもいいですわぁ。見つけてさえもらえれば」
狼華としては許容範囲らしい。
『マダムが欲しいなら、ぼく、お花を探しますね』
最後の一人、『おもてなすもふもふ』雪・鈴(CL3000447)はマイペースに筆談でそう記し、この辺り一帯が描かれている地図を広げた。
夜光蝶花の群生地候補とされている三か所と、他に一つ、計四つの印が記されている。
「この四つ目の印は」
「ここですわぁ」
尋ねるニコラスに、狼華は笑って自分が立っている地面を指差した。
この場は、三つの候補地から一番合流しやすい地点なのである。
「どなたか、他に何か質問は?」
狼華が皆に問うが、特に質問はないようだった。
それを確認し、彼は皆に向かって告げる。
「みなはん、おきばりやす」
夜光蝶花探索、開始である。
●候補地:平原
参加した自由騎士のうち、まずルエと水月が赴いたのが平原地帯だった。
「かなり広いな。それに花がやたら咲いてる」
時期が晩春ということもあって、日中は大体常にポカポカ陽気。
そりゃあ花だって謳歌爛漫この上ない感じに咲き誇る季節なのであった。
「お、この草は食べれそうですな。あ、こっちも」
「ブレないな……」
早速花を探し始めた水月を見て、ルエはやや呆れた調子の声を出す。
しかしいい天気だ。雲も少なくて大きく広がる青空は、すでに夏の色がにじんでいる気がする。周りに伸びる草花の香りと、近くに聞こえる川のせせらぎ。
声を出さず、ただそこに立ちつくしているだけで心が安らいでいくのを感じる。
「いいときに来れたのかもしれないな」
ルエは言いながら、まずは川の方へと寄っていった。
見ると、小さな動物が水を飲んでいた。
この辺りは、近隣の動物達の水飲み場になっているようだった。
「これだけ水が澄んでれば、そうもなるだろうな」
その場にかがんで手で軽く水を掬う。
鮮烈な冷たさは常人ならば驚くだろうがルエはミズヒトだ。問題はない。
掬った水は陽光を受けてキラキラと輝き、覗き込めばそこに彼の顔が映り込む。
「いい水だ」
と、呟いたときだった。
「来ましたぞー!」
水月が何やら大声で騒ぎだした。
彼が指さす方をルエが見ると、そこにはかなりの巨体を持つ馬がいる。
六本足に一本角。
事前に話が出ていた幻想種であった。
「思っていたより、さらに大きいな……」
「食いでがありそうですな!」
警戒を露わにするルエの隣で、信じがたい水月の発言。
「……ちょっと待ってくれ。食べるのか?」
「食いますが?」
さも当然のように返されてしまった。
「え、いや、だけれど……」
「考えていただきたい」
逡巡するルエに、水月が何かを訴えようとする。
「今回、我々は花を探して採取するためにここに来ましたな?」
「あ、うん。そうだけど……」
「それと馬肉を探して採取する。それに何の違いがありましょうッッッ!」
「あ、はい」
違うのだ! と反論できるほど、ルエは状況をよく理解できていなかった。
というか、くだんの幻想種は女性を見ると容赦なく突撃を仕掛けてくるという。
もし仮にこの辺りに人が来たら、あるいは、被害が出るかもしれない。
そう考えると、今のうちに危険の芽を摘むのもありかも。
という、半ば自己暗示に近い流れでルエは無理やり自分を納得させた。
そしてルエの納得などそもそも求めてないし、何と言われようとも桜肉を食うことを誓っている水月は、そのための第一歩として龍氣螺合を発動させる。
気合バリバリであった。
「あー、じゃあ、俺は花探すから」
「我輩も馬肉をほぐしながら探しますぞ! キェ――――ッ!」
そして、水月はデカ馬幻想種の方へとすっ飛んでいった。
一人残ったルエは、始まったバトルからついっと目をそらして、周りの景色を見る。
声を出さず、立ち尽くしているだけで聞こえてくる音がある。
花が風に揺れる音。
澄んだ川のせせらぎ。
そして巨大馬肉と狩猟者の情け無用のバトルの音。
「……今日はいい日だな」
一部の音を意識の外に追いやって、ルエはしみじみ呟いた。
残念ながら、夜光蝶花はここにはなかった。
●候補地:森
「マダムからの御依頼や、失敗できへんわぁ~」
「マダムが欲しいなら、ぼく、がんばります」
こちら森の中、マダム・シープにお熱な二人の探索風景である。
しかし周りには木ばかり、足元には草ばかり。
そんな中であるかもわからない花を探す。というのはなかなかに骨が折れる作業だ。
「あぁん、こっちにはあらへんわぁ」
「……こっちも、見つかりません」
「ほな、次行きますえ」
「はい、がんばりましょう」
だがマダムのためという動機を共有する二人には苦にもならなかった。
狼華はその卓越した視力をもって周りを隙なく探していく。
時々、獣の唸り声なども聞こえたりしたが、そのくらいで止まる彼ではない。
目的を持った女は強い。
それを地で行くような今の狼華とは少し離れた場所で、鈴もまたしっかりと辺りを見る。
マダムのため、というのが第一だが、自分自身が珍しい花を見たい気持ちも強かった。
しかし、これがなかなか見つからない。
「……お花、どうやって探したらいいでしょう?」
しばらく探しての作戦会議。
鈴が狼華に向かって首をかしげる。
「気合、ですわぁ」
「気合、ですかぁ」
「そうどす。気合があれば何でもできるんや。叶うんや」
「なるほどぉ~」
狼華の確信に満ちた返答に、鈴はさしたる疑問を抱くこともなかった。
そして探索は再開される。
「マダムのためや。マダムのために絶対見つけなあきまへん」
いつもの雅な狼華はここにはいない。
今、この森にいるのは、自らが敬愛するあの方のため、血眼になって一輪の花を探す探し物の鬼。荒い息遣いとまばたきをしない見開かれた瞳が特徴的な、愛の狩人である。
しかし、目的のものを探すことに専念しすぎたがゆえの弊害、というものもある。
「あ」
見つけたのは、鈴だった。
「狼華さん、あの……」
「何ですの? 花は見つかりましたかぁ?」
「いえ、まだですけど、あの……」
「だから、一体何やのぉ?」
「上」
「上?」
言われて、狼華が上を見る。
彼の直上、太く伸びた木の枝に、でっかい蛇が巻き付いていた。
長い、太い。そして頭が二つある。
事前に話に出ていた幻想種だ。
二つの頭は揃って狼華を凝視しており、ジャラララと舌を出して威嚇してきている。
それを見て、一瞬だけ狼華の動きが止まった。
鈴がすぐに庇えるよう、盾を持って前に出ようとするが――、
サクッ。
二つの頭の丁度境目に、狼華が小太刀を突き立てる。
「あ」
このいきなりすぎる行動に、鈴の方が固まった。
「何人たりとも、うちの邪魔はさせまへんえ?」
それを言い渡す狼華からは、黒い炎めいた殺気が溢れ出ていた。
そして始まるフルボッコ。
「何やあんたはん、爬虫類如きがうちの邪魔しはるんか? なぁ? なぁ?」
「わ、わぁ~……」
鈴が思わず感嘆の声をあげてしまうくらいに、それは徹底したボコりであった。
さすがにたまらず、双頭の蛇が逃げ出そうとする。
「雪! 逃がさんといてな! うちの前に出てきたことを死んで後悔させな!」
「いや、逃がしてあげましょうよ……」
蛇が襲ってきたならば共に戦うつもりの鈴であったが、逃げるならば追う必要はなく。
「あ~ん、着物が汚れてしもた。踏んだり蹴ったりやわぁ……」
「それはきっと蛇も一緒じゃないかなって……」
少年二人、会話しながら再び蝶の花を探し始める。
だが残念なことに、二人の頑張りが報われることはないのであった。
●候補地:山
何故なら、夜光蝶花は山の上に咲く花であったからだ。
「うぅ~わ、あった」
まず見つけたのは、ニコラスだった。
そして彼がドンビキしたのには、ちゃんとした理由がある。
「あったけどよぉ、こいつはキツくないかい?」
割と険しい崖にべったりと張り付いて、彼はそこに咲く夜光蝶花を観察する。
群生、と呼ぶには数が少し足りないのは、そこがあまり広くないからだ。
崖の上にポツンとある、小さな広場。
せいぜい二人が立てば目一杯になってしまう程度の広さに、花がおそらく五輪くらい。
まず、採取する人間はここまで到達する必要がある。それが厄介だ。
その上――、
「あ、また増えたぞ」
リュエルがのん気に呟くが、ニコラスにとっては凶報でしかない。
空を舞う巨大な影。
四枚翼の猛禽型幻想種が、悠々と飛行しているのだ。
何羽も。――何十羽も。
「いやぁ、ちょっとこれは、おじさんが聞いてた話とだいぶ違くないかい?」
「あー、そうだなぁ。でもすごい光景だよなぁ。くぅ~、イメージが湧いてくるぜ」
「詩人って人種は命知らずなのかな? 怖いモノ知らずなのかな? それともただのバ」
だがニコラスは最後まで言い切ることはしなかった。
「さて、どうしたもんかね?」
崖を降りて、ニコラスは思案を巡らせる。
花は見つかった。しかし、見つけたのはきっと群生地全体のほんの一角に過ぎまい。
「確かに厄介だよな。花が咲いてる場所と幻想種の巣がある場所がぴったり重なってる」
リュエルが言う。
そう。それなのだ。問題はそれ。
今のところ、猛禽型幻想種にこっちを襲ってくる気はなさそうだ。
だがそれはニコラスとリュエルを警戒していないということには繋がらない。
いや、むしろバリバリに警戒されている。
「花を採ろうとしたら卵を狙ってると勘違いされて攻撃される。……あるな」
「十分にありうる」
二人は頭上を見上げる。
猛禽型幻想種が、折り重なるようにして集まって空を飛んでいた。
さすがに自由騎士といえど、たった二人ではそれら全てを相手取ることは不可能だ。
「一応、花があった場所は地図に記しておいたけど」
「巣がある場所も明らかにしておかないと、危ないわなぁ、こりゃあ……」
地図を広げるリュエルと、唸るニコラス。
「「…………」」
二人はまた、しばし黙り込む。
「民族音楽な感じにまとめるのがよさそうだな」
「あ、考えてたの、そっち?」
小さく漏らすリュエルに、ニコラスは頬をヒクつかせた。
そして、さらに考えこんで、ついに二人は結論を出す。
「呼ぶか、他の連中」
「そうしよう」
英断であった。
●そして蝶は夜に舞う
こうして、採集された夜光蝶花は無事にサロン・シープに持ち込まれた。
「いやぁ、大冒険だったな!」
店の中で、ニコラスが半ばヤケクソ気味にそんなことを叫ぶ。
しかし、それが揶揄でもなく比喩でもなく、単なる事実なのだから始末に悪い。
「うちの大活躍、マダムにお見せしたかったわぁ」
心なしドヤ顔気味な狼華。
ニコラス達の召集を受けて、いの一番に到着した彼は着物の汚れも気にせず崖を昇り、見事に花開く直前の夜光蝶花の蕾をゲットしたのであった。
その鬼気迫る様子たるや、リュエルが思わず筆を執ったほどである。
そして、一方で、もう一人大活躍した人物がいた。
「結局、味見できませんでしたな……」
すっかりしょげ返っている水月である。
馬肉をもう少しで仕留められるというところで召集を受け、結局見逃した。
代わりに焼き鳥の材料をゲットすべく、猛禽型幻想種に挑んでいったワケである。
「水月がいなければ、もう少し花を採ってくるのに苦労しただろうな」
ルエが言う。
隣で「そうですね」と鈴がうなずいた。
ニコラス達の予想通り、自由騎士が花の最終を始めようとした途端、猛禽型幻想種が一斉に襲いかかってきたのだ。が、そこで囮の役割を果たしたのが水月だ。
彼が幻想種の大半を受け持たなければ、きっとかなりの被害が出ていただろう。
しかし、そんな水月も結局食材を入手できずしょんぼりなのであった。
他にも、様々な大活躍や大冒険エピソードがあったわけだが、それらを描いたら文字数がえらいことになってしまうので泣く泣くではあるが割愛する。
「う~ん、今回はどんなジャンルで曲を書くかなぁ」
「皆様、おそろいかしら?」
リュエルが作曲に頭を悩ませているところに、マダム・シープがやってきた。
「マダムー! うち頑張りましたえー!」
はしゃぐ狼華に、マダムは「そうね」と笑いかける。
そして視線は、未だ悩むリュエルの方へ。
「お預かりした地図、とても助かりましたわ。ありがとうございます」
「え、ああ。必要だろうと思ったしなぁ」
礼を言われて、リュエルが顔を上げた。
彼は、夜光蝶花が咲いている場所と幻想種の巣がある場所を全て地図に記したのだ。
それは今後、花を採集する際に大いに役に立つに違いない。
「いやぁ~、やり通しましたぜ、マダム。とんだ無茶振りだったがよ~」
「ニコラス様も、本当に助かりましたわ」
「お。そう思ってくださる? んじゃちょっとくらいサービスお願いしちゃっていい?」
「ええ、構いませんわ」
「やったぜ」
これには中年も満面ニッコリ。
「さぁ、皆様、こちらへどうぞ」
狼華の頭を優しく撫でながら、マダム・シープが皆を部屋の外へといざなう。
すると――、
「おお……」
ルエが思わず驚きの声を漏らす。
開け放たれた窓。そこから差し込む冴えた月の光。
そして、月光の中、淡い蒼白の燐光を纏って、蝶の形をした花が咲き誇っている。
通路の左右に置かれた夜光蝶花は、まさしくその名が示す通りの光景を作っていた。
皆は息を呑む、幻想的な風景であった。
「喜んでいただけたかしら?」
見惚れる自由騎士達に、マダム・シープが微笑みかける。
それはきっと、一生涯忘れられない光景であったろう。
「最高ですわぁ……」
狼華のため息混じりの感想が、全てを物語っていた。
サロン・シープに、また一つ新たなウリができたのであった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
お疲れさまでした!
綺麗な花は高嶺に咲くもの。
というわけで、山でした。
咲く場所もわかって、今後は研究も進むでしょう。
それでは、ご参加いただきありがとうございました!
綺麗な花は高嶺に咲くもの。
というわけで、山でした。
咲く場所もわかって、今後は研究も進むでしょう。
それでは、ご参加いただきありがとうございました!
FL送付済