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ニミミトモラカナク漁村をプロデュース

●解放条件:『ニミミトモラカナク漁村で見回りをする』を10人以上が表明する
『これはオラクル諸氏の申請に基づきニミミトモラカナク漁村での発展プロデュースを任せるものとする。
終了期間は未定。スケジュールは有志メンバー内の合議制によって決定するものとする。
恙無也――クラウス・フォン・プラテス』
イ・ラプセルは海に囲まれたまあるい国である。
首都やそれに続く港はいつも大賑わいを見せるものだが、遠く離れた漁村ともなればやはり寂れるものなのだろうか。
ニミミトモラカナク漁村はそんな場所のひとつ。
漁業を主な収入源とする小さな村で、観光とは無縁の場所だ。
誰もが今日食う分ともう少しの魚をつって、加工して、来年くらいは生きられる程度の細い人生を送る。
「この生き方をむなしいと思ったことはありませんわ。毎日魚をさばいてぬめった床を掃除する青春もあると、私は思います」
村の娘はそんな風に語る。
ここはニミミトモラカナク漁村。
ただの漁村。
昨今、この村はいつになく賑わった。
国のヒーロー的存在である自由騎士、ないしはオラクルが頻繁に訪れ見回り警備を行なうようになったからだ。
「キッカケはたしか、スチームジャッカルの駆除だったかな。生態系ごと壊してしまうわけにも行かぬゆえ、スチームジャッカルならぬスチームお姉さんたちが継続的に見回りをしようということになったのじゃ」
ぐるぐると肩を回して言うシノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)。
彼女を筆頭に、現時点で実に11人もの自由騎士が村を訪れ、自主警備にあたったのだ。
出会う人にトラブルの有無を尋ね、夜に村の周りを歩いて安全を確かめるという簡単なものではあったが、先にも述べたように彼らは国のヒーロー的存在。それがおよそ三日に一度の割合でやってくる様は村にちょっとしたお祭り気分をもたらした。
「といっても、あたしたちは最初の事件に関わってないんだけどね。狩りのついでだし」
「これもまた騎士の仕事の一環。巡回ルートに入れたまでです」
「二人とも真面目だなー。私はお魚とれないと困るから、だよ!」
ヒルダ・アークライト(CL3000279)、ジークベルト・ヘルベチカ(CL3000267)、カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)がそれぞれお茶のカップを前に並んでいる。
ここはニミミトモラカナク漁村の端にある空き家。誰も使うものがいないからと、暫定的に見回りにやってきた自由騎士たちの事務所代わりに開放された建物である。
オラクル有志見回仮事務所、といったところだろうか。
「そのうち呼びやすい名前も考えなければな」
「できれば可愛い名前だといいよねっ」
会議室(仮)と札が添えられた部屋にやってきた非時香・ツボミ(CL3000086) とシア・ウィルナーグ(CL3000028)。
ここへ何人もの自由騎士がそろっているのは偶然ではない。
「やあ、みんな。集まってくれてありがとう」
アダム・クランプトン(CL3000185)が花をもって現われた。
目も覚めるような青色。四枚の花びらをもつちょっと特徴的な花だ。
「なあに、その花。綺麗だね」
「ああ、いや、その……」
息を吸い込んで天井をにらむアダム。
後ろからやってきたジーニアス・レガーロ(CL3000319)が肘で彼をこづいた。
「村の娘さんに貰ったんだよ。二人とも顔を真っ赤にしちゃってさ」
からかうように笑うジーニアス。ヒルダたちもつられておかしそうに笑った。
「私たちが来てから、村の皆さんともすこし……打ち解けてきたように思います」
「ツナサンド分のはたらきは、できたかな」
たまき 聖流(CL3000283)とイーイー・ケルツェンハイム(CL3000076) も加わり、部屋へと入っていく。
10人も入ると部屋はずいぶん手狭になるようで、何人かは椅子の後ろで立ち見状態だ。
「おーい、お待たせ! もう始まってるか!?」
立って並ぶジークベルトたちの後ろから、ぴょんぴょんとジャンプする影。
肩越しからねじ込むように顔を見せたのはマリア・スティール(CL3000004)だった。
ニッと笑顔を見せるシノピリカ。
「いいや、今始めるところだ。折角これだけの自由騎士が参加を表明してくれているのだしな。一度、見回りをして気づいたことを共有して置こうと思ったのじゃ」
●開拓者を名乗ったとき開拓が始まる
「やはり防衛力の不足は問題だね」
アダムをはじめとして、ジークベルトやツボミたちもそれに同意見を示した。
「今は我々が自主的に見回りを行なうことで多少の害獣を追い払うことができていますが、『先日』のような自由騎士全体を巻き込む大規模活動の際には流石に駆けつけることができないでしょう」
「留守を任せられるくらいに防衛力を持って貰う……いや、そもそも村自体が自衛できる環境があったほうがいい」
たまに来る害獣にすら自由騎士の力を借りねばならず、その間は漁業を控え保存食でしのいでいたという。
確かにその状態は村としてとても脆弱だ。
「ツナは美味かったけど、毎日ツナ缶じゃ飽きちゃうもんな。もっと色々自分で作れるようにならないとダメなんじゃないか?」
「食糧自給か……。食べるものが無くなるのは、つらいよね」
マリアやイーイーたちが述べたのは食料問題だ。
出会った村人たちは皆大体お腹をすかせていて、今日の空腹を耐えしのぐ作業で一日を潰す……なんて人も見かけるくらいだった。
「漁業が止まって、お仕事ができない方もいます。それ以前に……最近はあまりお魚もとれないと、聞きました」
「困るよー! それじゃあ美味しいお魚料理が遠のいちゃう」
たまきの言葉に、シアが頭を抱えるようにした。
腕組みをしてややのけぞるカーミラ。
「食糧問題に失業者問題……うーん、この村、思ったよりギリギリだったんだね」
見回りの中で見つかるいくつもの問題。
ジーニアスはぱちんと指を鳴らした。
「じゃあ、おいらたちが村に呼びかけて開拓しちゃうっていうのはどうかな。村がいいところになれば、国だって嬉しいし、これが成功例になれば他にも同じような問題を抱えた村を助けられるかも!」
そうやってゆくゆくは国家繁栄だよ、とげんこつ山的なジェスチャーで示すジーニアス。
また大それたことを……と途中まで顔に出ていたヒルダだが、すぐにいいアイデアに思えたのか眉を上げた。
「それって結構重要な話かも。あたしたちって結構、『魔物が出た! 悪党が出た! やっつけろ!』て具合に出動することが多かったけど、そもそも皆に自衛能力をつけたり、発見や連絡を早くする仕組みをつくることって……あんまりしてこなかったかも」
「食料が沢山行き渡れば美味しい料理も食べられるようになるしな!」
結局そこに行き着くのだ、という具合に立ち上がるマリア。
その頭に手を置いて、シノピリカはうむうむと頷いた。
「丁度いいと言うべきか……先日ここの村長から申し出があった。村の運営にあたってアドバイスを求めるというもので……うーん、なんて言ったらいいか……うーん……」
次第にぷすぷす煙を出し始めるシノピリカ。
オーバーヒートしないようにどうどうとギアをなだめるたまきたち。周りも周りで丁度いい言葉が出なくてうーんと天井を見始める。
そんななか。
イーイーがぽつりと言った。
「プロデュース?」
「「それだ!」」
『これはオラクル諸氏の申請に基づきニミミトモラカナク漁村での発展プロデュースを任せるものとする。
終了期間は未定。スケジュールは有志メンバー内の合議制によって決定するものとする。
恙無也――クラウス・フォン・プラテス』
イ・ラプセルは海に囲まれたまあるい国である。
首都やそれに続く港はいつも大賑わいを見せるものだが、遠く離れた漁村ともなればやはり寂れるものなのだろうか。
ニミミトモラカナク漁村はそんな場所のひとつ。
漁業を主な収入源とする小さな村で、観光とは無縁の場所だ。
誰もが今日食う分ともう少しの魚をつって、加工して、来年くらいは生きられる程度の細い人生を送る。
「この生き方をむなしいと思ったことはありませんわ。毎日魚をさばいてぬめった床を掃除する青春もあると、私は思います」
村の娘はそんな風に語る。
ここはニミミトモラカナク漁村。
ただの漁村。
昨今、この村はいつになく賑わった。
国のヒーロー的存在である自由騎士、ないしはオラクルが頻繁に訪れ見回り警備を行なうようになったからだ。
「キッカケはたしか、スチームジャッカルの駆除だったかな。生態系ごと壊してしまうわけにも行かぬゆえ、スチームジャッカルならぬスチームお姉さんたちが継続的に見回りをしようということになったのじゃ」
ぐるぐると肩を回して言うシノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)。
彼女を筆頭に、現時点で実に11人もの自由騎士が村を訪れ、自主警備にあたったのだ。
出会う人にトラブルの有無を尋ね、夜に村の周りを歩いて安全を確かめるという簡単なものではあったが、先にも述べたように彼らは国のヒーロー的存在。それがおよそ三日に一度の割合でやってくる様は村にちょっとしたお祭り気分をもたらした。
「といっても、あたしたちは最初の事件に関わってないんだけどね。狩りのついでだし」
「これもまた騎士の仕事の一環。巡回ルートに入れたまでです」
「二人とも真面目だなー。私はお魚とれないと困るから、だよ!」
ヒルダ・アークライト(CL3000279)、ジークベルト・ヘルベチカ(CL3000267)、カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)がそれぞれお茶のカップを前に並んでいる。
ここはニミミトモラカナク漁村の端にある空き家。誰も使うものがいないからと、暫定的に見回りにやってきた自由騎士たちの事務所代わりに開放された建物である。
オラクル有志見回仮事務所、といったところだろうか。
「そのうち呼びやすい名前も考えなければな」
「できれば可愛い名前だといいよねっ」
会議室(仮)と札が添えられた部屋にやってきた非時香・ツボミ(CL3000086) とシア・ウィルナーグ(CL3000028)。
ここへ何人もの自由騎士がそろっているのは偶然ではない。
「やあ、みんな。集まってくれてありがとう」
アダム・クランプトン(CL3000185)が花をもって現われた。
目も覚めるような青色。四枚の花びらをもつちょっと特徴的な花だ。
「なあに、その花。綺麗だね」
「ああ、いや、その……」
息を吸い込んで天井をにらむアダム。
後ろからやってきたジーニアス・レガーロ(CL3000319)が肘で彼をこづいた。
「村の娘さんに貰ったんだよ。二人とも顔を真っ赤にしちゃってさ」
からかうように笑うジーニアス。ヒルダたちもつられておかしそうに笑った。
「私たちが来てから、村の皆さんともすこし……打ち解けてきたように思います」
「ツナサンド分のはたらきは、できたかな」
たまき 聖流(CL3000283)とイーイー・ケルツェンハイム(CL3000076) も加わり、部屋へと入っていく。
10人も入ると部屋はずいぶん手狭になるようで、何人かは椅子の後ろで立ち見状態だ。
「おーい、お待たせ! もう始まってるか!?」
立って並ぶジークベルトたちの後ろから、ぴょんぴょんとジャンプする影。
肩越しからねじ込むように顔を見せたのはマリア・スティール(CL3000004)だった。
ニッと笑顔を見せるシノピリカ。
「いいや、今始めるところだ。折角これだけの自由騎士が参加を表明してくれているのだしな。一度、見回りをして気づいたことを共有して置こうと思ったのじゃ」
●開拓者を名乗ったとき開拓が始まる
「やはり防衛力の不足は問題だね」
アダムをはじめとして、ジークベルトやツボミたちもそれに同意見を示した。
「今は我々が自主的に見回りを行なうことで多少の害獣を追い払うことができていますが、『先日』のような自由騎士全体を巻き込む大規模活動の際には流石に駆けつけることができないでしょう」
「留守を任せられるくらいに防衛力を持って貰う……いや、そもそも村自体が自衛できる環境があったほうがいい」
たまに来る害獣にすら自由騎士の力を借りねばならず、その間は漁業を控え保存食でしのいでいたという。
確かにその状態は村としてとても脆弱だ。
「ツナは美味かったけど、毎日ツナ缶じゃ飽きちゃうもんな。もっと色々自分で作れるようにならないとダメなんじゃないか?」
「食糧自給か……。食べるものが無くなるのは、つらいよね」
マリアやイーイーたちが述べたのは食料問題だ。
出会った村人たちは皆大体お腹をすかせていて、今日の空腹を耐えしのぐ作業で一日を潰す……なんて人も見かけるくらいだった。
「漁業が止まって、お仕事ができない方もいます。それ以前に……最近はあまりお魚もとれないと、聞きました」
「困るよー! それじゃあ美味しいお魚料理が遠のいちゃう」
たまきの言葉に、シアが頭を抱えるようにした。
腕組みをしてややのけぞるカーミラ。
「食糧問題に失業者問題……うーん、この村、思ったよりギリギリだったんだね」
見回りの中で見つかるいくつもの問題。
ジーニアスはぱちんと指を鳴らした。
「じゃあ、おいらたちが村に呼びかけて開拓しちゃうっていうのはどうかな。村がいいところになれば、国だって嬉しいし、これが成功例になれば他にも同じような問題を抱えた村を助けられるかも!」
そうやってゆくゆくは国家繁栄だよ、とげんこつ山的なジェスチャーで示すジーニアス。
また大それたことを……と途中まで顔に出ていたヒルダだが、すぐにいいアイデアに思えたのか眉を上げた。
「それって結構重要な話かも。あたしたちって結構、『魔物が出た! 悪党が出た! やっつけろ!』て具合に出動することが多かったけど、そもそも皆に自衛能力をつけたり、発見や連絡を早くする仕組みをつくることって……あんまりしてこなかったかも」
「食料が沢山行き渡れば美味しい料理も食べられるようになるしな!」
結局そこに行き着くのだ、という具合に立ち上がるマリア。
その頭に手を置いて、シノピリカはうむうむと頷いた。
「丁度いいと言うべきか……先日ここの村長から申し出があった。村の運営にあたってアドバイスを求めるというもので……うーん、なんて言ったらいいか……うーん……」
次第にぷすぷす煙を出し始めるシノピリカ。
オーバーヒートしないようにどうどうとギアをなだめるたまきたち。周りも周りで丁度いい言葉が出なくてうーんと天井を見始める。
そんななか。
イーイーがぽつりと言った。
「プロデュース?」
「「それだ!」」
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.村をプロデュースする
*この依頼はブレインストーミングより発生した依頼です。
みなさまごきげんよう。八重紅友禅でございます。
こちらは以下の実績によってアンロックされたシナリオです
アンロックに関わったPCの皆さんがOPに登場していますが、参加優先権ナシの通常シナリオ扱いになっておりますので、どなたもお気軽にご参加ください。
・ブレインストーミングスペースにてニミミトモラカナク漁村の見回りを提案する
・ニミミトモラカナク漁村の見回りに2PC以上が賛成する
・リプレイ公開から一ヶ月以内でニミミトモラカナク漁村の見回りに5PC以上が加わる
・リプレイ公開から一ヶ月以内でニミミトモラカナク漁村の見回りに10PC以上が加わる(※想定中最大成果)
PC(自由騎士)の皆様による想定を超える成果が満たされたため、特別シナリオをアンロックしました。
このシナリオに参加した自由騎士は『村プロデューサー』となり、ニミミトモラカナク漁村の運営に対して実効的なアドバイスを行なうことになります。
●プロデュース
ニミミトモラカナク漁村は気づいているだけでも以下の問題を抱えています。
参加PCたちで2~3人のグループを作り、手分けして改善にあたりましょう。
・防衛力の不足
村人は非力で老人ばかりです。若者と呼べる程若い住民はごく僅かしかいません。
そのため害獣程度の被害でも対処ができず、発見も非常に遅いのです。
現状は村人がたまたま発見したトラブルを村長が受け止め、首都に手紙を出し、自由騎士が派遣されてやっと対応に至る形です。
それまで漁業を停止するのは勿論村人たちも外出を控え、生活力は大きく低下してしまいます。
・食糧問題
漁業に頼っている村ですが、魚がすごく沢山とれるというわけではありません。
毎日それなりの魚をとって保存用に加工し、なんにもとれない時はそれを食べてしのぐ……というのが現状です。
お金にも余裕はないので、このままでは外からの買い付けでは追いつかないでしょう。
とはいえこの時代魚肉の保存技術が弱いので、魚の生食ができる貴重な土地と言えるかも知れません。
・失業者
お金があまり入らず漁業が全盛期より廃れた結果、老人と古い船ばかりが残っています。
一部の船は使い物にならず、失業している者を多く見かけます。その殆どは老人か、なにかしらの理由でよそで働けない人々です。
・雰囲気
何度かこの村に来ると分かることですが、ニミミトモラカナク漁村はとってもじめーっとしています。
実際古い漁村なのでじめっとしてるし軽く生臭いのですが、それ以前に住民が外の人との付き合い方がわからず引きこもるパターンが多いようです。
今は自由騎士たちがあしげくかようことで多少会話をしてくれるようになりましたが、やはりまだ外の人は苦手なようです。
※補足
ここで行なうのはあくまでプロデュースです。
例えば『自分で畑を耕します』というプレイングを書いた場合、初日一部だけその作業をして残る全行程を村人の誰かが行ないます。
自由騎士パワーをもってしても家一軒建てることすら困難なのが世のしくみでございますが、人望や結託した村人たちのパワーがあれば一夜にして城をたてることも不可能ではありません。
自由騎士の……あなたの人望を使い、この村を発展させましょう。
みなさまごきげんよう。八重紅友禅でございます。
こちらは以下の実績によってアンロックされたシナリオです
アンロックに関わったPCの皆さんがOPに登場していますが、参加優先権ナシの通常シナリオ扱いになっておりますので、どなたもお気軽にご参加ください。
・ブレインストーミングスペースにてニミミトモラカナク漁村の見回りを提案する
・ニミミトモラカナク漁村の見回りに2PC以上が賛成する
・リプレイ公開から一ヶ月以内でニミミトモラカナク漁村の見回りに5PC以上が加わる
・リプレイ公開から一ヶ月以内でニミミトモラカナク漁村の見回りに10PC以上が加わる(※想定中最大成果)
PC(自由騎士)の皆様による想定を超える成果が満たされたため、特別シナリオをアンロックしました。
このシナリオに参加した自由騎士は『村プロデューサー』となり、ニミミトモラカナク漁村の運営に対して実効的なアドバイスを行なうことになります。
●プロデュース
ニミミトモラカナク漁村は気づいているだけでも以下の問題を抱えています。
参加PCたちで2~3人のグループを作り、手分けして改善にあたりましょう。
・防衛力の不足
村人は非力で老人ばかりです。若者と呼べる程若い住民はごく僅かしかいません。
そのため害獣程度の被害でも対処ができず、発見も非常に遅いのです。
現状は村人がたまたま発見したトラブルを村長が受け止め、首都に手紙を出し、自由騎士が派遣されてやっと対応に至る形です。
それまで漁業を停止するのは勿論村人たちも外出を控え、生活力は大きく低下してしまいます。
・食糧問題
漁業に頼っている村ですが、魚がすごく沢山とれるというわけではありません。
毎日それなりの魚をとって保存用に加工し、なんにもとれない時はそれを食べてしのぐ……というのが現状です。
お金にも余裕はないので、このままでは外からの買い付けでは追いつかないでしょう。
とはいえこの時代魚肉の保存技術が弱いので、魚の生食ができる貴重な土地と言えるかも知れません。
・失業者
お金があまり入らず漁業が全盛期より廃れた結果、老人と古い船ばかりが残っています。
一部の船は使い物にならず、失業している者を多く見かけます。その殆どは老人か、なにかしらの理由でよそで働けない人々です。
・雰囲気
何度かこの村に来ると分かることですが、ニミミトモラカナク漁村はとってもじめーっとしています。
実際古い漁村なのでじめっとしてるし軽く生臭いのですが、それ以前に住民が外の人との付き合い方がわからず引きこもるパターンが多いようです。
今は自由騎士たちがあしげくかようことで多少会話をしてくれるようになりましたが、やはりまだ外の人は苦手なようです。
※補足
ここで行なうのはあくまでプロデュースです。
例えば『自分で畑を耕します』というプレイングを書いた場合、初日一部だけその作業をして残る全行程を村人の誰かが行ないます。
自由騎士パワーをもってしても家一軒建てることすら困難なのが世のしくみでございますが、人望や結託した村人たちのパワーがあれば一夜にして城をたてることも不可能ではありません。
自由騎士の……あなたの人望を使い、この村を発展させましょう。
状態
完了
完了
報酬マテリア
1個
1個
5個
1個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2018年08月22日
2018年08月22日
†メイン参加者 8人†
●ニミミトモラカナク漁村をプロデュース
辺鄙な漁村に向かう馬車は、相も変わらずによく揺れる。
されども『揺れる豊穣の大地』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は大胆に足を組み、遠い空と海の境界を指さした。
「プロデューサーさん、漁村ですよ漁村!」
「ンッ、え……な、なんだい急に?」
水筒を口につけていた『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)が思わず吹き出しそうになりながら振り返る。
「ふふん、一度言ってみたかったのじゃ。オヤクソクじゃろ?」
「そういうものなのかな……」
苦笑いをするアダム。彼らがはじめに言い出したことだからか、いつもよりもテンションが高かった。特にシノピリカは。
「あのツナサンドの味と気持ちは忘れぬぞ。騎士の恩義は高いのだ!」
「それもあるけれど……」
口元の水滴を指でぬぐって、アダムは顔つきを鋭くした。
「ひとつひとつの村が発展していけば、それはやがて国の発展になる。小さなことからコツコツと、国の未来をよくする偉大な一歩になるはずさ」
「ソーダイな話だなー」
ちょっぴり高い馬車の椅子。『見習い銃士』グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)は足をぶらぶらとさせながら背もたれによりかかった。
「僕はもっと、こう……」
言葉に迷うグリッツに、『異国のオルフェン』イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)が小首を傾げて言葉をつなげた。
「人助け?」
「そうそれ!」
ぱちんと手を叩くグリッツ。そのまま手を開いて見せる。
「あと恩返し! 新鮮なお魚がいっぱい食べられるようになれば、きっとみんな元気になると思うんだよね」
「うん。貴重な保存食を分けてくれたもんね」
イーイーはふと、ひとつのパンを二つにわけて食べなければいけない日のことを思った。
「おれたちに、何ができるんだろう」
「考えようね。一緒に」
やがて馬車は潮の香りが濃いミニニトモラカナク漁村へとたどり着いた。
明日にまた迎えに来るといって来た道をもどっていく馬車。それをつま先立ちで大きく手を振って見送る 『おにくくいたい』マリア・スティール(CL3000004)。
マリアの背中に、聞き覚えのある声がかかった。
「ようこそ、みなさん。今日はお揃いなのですね」
ミニニトモラカナク漁村の顔役、と言われている老人だ。
「今日も、パトロールでしょうか」
「いや、今日は違うよ!」
『神秘(ゆめ)への探求心』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)が頭としっぽをそれぞれマリアの後ろからのぞかせてみせた。
「漁村の村おこし! 国家繁栄の第一歩だよ!」
「それはそれは……前向きに考えてくださっていたのですね。お任せしても、よろしいのでしょうか」
老人の言葉に、マリアは胸をグーで叩いた。
「ん、まかせとけ! 毎日肉食えるところにしような!」
一足遅れて、もうひとつの馬車がとまる。
馬車の扉を開いて下りてきたのはトミコ・マール(CL3000192)だった。
「ここがミニニトモラカナク漁村だね。さてと、あたしも得意分野でお手伝いさせてもらうおうかねぇ」
トミコの後ろからぴょんと飛ぶように降りる『イ・ラプセル自由騎士団』シア・ウィルナーグ(CL3000028)。
羽根飾りのついた白いブーツが、水気のある土をふんでぴしゃんと音をたてた。
「いまはちょっと寂しい村だけど、頑張って活気のある村にしようね!」
他にも手伝いにやってきた仲間たちの馬車が到着して、村の入り口には多くの自由騎士が並ぶ形になった。
頭を下げる老人。
「どうぞ、よろしくおねがいします」
●足りないものの洗い出し
一通りの話し合いが済んでいると言っても、全ての家々を回って聞いてみたわけじゃない。
グリッツとイーイー、そしてジーニアスは端っこから順番に家を回って挨拶をすることにした。
「何が出来るかわからない時は、まずは話を聞いてみればいいんだよ」
とはイーイーの言葉である。
「実際に顔を見せて挨拶すれば、元気が伝わるかもしれないもんね」
というのは、ジーニアスの言葉だ。
ちなみにグリッツはというと、『なんだかお祭りみたいだね』とちょっぴり楽しげだった。
真面目にてきぱき働くのもいいけれど、年老いた人々ばかりの村だけに若さと無邪気さはきっとみんなを元気にしてくれることだろう。
実際、グリッツたちの挨拶回りはお祭りのようだった。
ドアをコンコンとノックして、扉が開けば三人並んでご挨拶。
「なにか困ってることはない?」
と聞いてみれば、住民ははじめのうちこそ遠慮するものの、雨どいが壊れただとか重いものが運べないだとか、小さな悩みを告白してくれるようになっていった。
ジーニアスもただ挨拶回りがしたかったわけじゃなく、各家々の問題を自力で解決して回りたかったようで、詰まった暖炉の煙突や竈の亀裂やベッドの傾きなんかを地道に修理していった。
おかげで村の半分も回っていないのに日が暮れて、彼らは一度集会場へと戻ることにした。平均年齢10歳の自由騎士たちによる、いわばこども会議であった。
「力仕事が多かったね。おれたちでもこなせる程度でよかったよ」
村の地図(大雑把に家の位置が手書きされているだけのもの)に印をつけて、イーイーは息をついた。
キッチンから飲み物をもってやってくるグリッツ。
「やっぱりお年寄りが多いからかな。みんな身体が痛いのを気にしてるみたい。村の人たちどうしの会話も少なそうだったし……ある意味、家に閉じこもってるような気分になってるのかな」
ずっと家から出ていないと、陰鬱な気持ちになったり不安が増えたりするらしい。本でそんな話を読んだことがあった。
そんな中で、ジーニアスがスパナをくるくると回しながら言った。
「おいら思ったんだけど、この村の人たちって蒸気機械を全然置いてないんだな」
あるところにはあるという蒸気機械だが、専門的な知識や技術が必要だったり、導入コストや維持コストが高かったりする手前ないところには全然ないようだ。
聞けば漁に使う船もオールで手こぎする木製ボートらしく、複数のボートで網を仕掛けて翌日引き上げるといった古くからある漁法を用いていた。
「戦艦みたいに蒸気機関をぎっしり積んだ船ってわけじゃなくてもさ、動力の強い船にのって沖で魚を沢山とったりできたら、村にも沢山お金とか入るんじゃないかな」
「うーん……将来的にはアリ、かな。ずっと僕らがここに居続けるわけにもいかないし」
「あとはさ、マキナ=ギアみたいに遠くの人と連絡できる機械とかあったらいいと思わない? 首都に助けを呼ぶのが簡単になると思うんだ」
「あったらいいよね。そういうの」
ある地球世界で電磁波による無線通信技術が発見されるのは1830年ごろと言われていて、無線通信が確立するのはもっと先という話があります。
一方この世界ではエーテル石の固有周波に乗せた通信技術が確立していますが、エーテル石がイ・ラプセルでのみ産出されるとっても貴重な鉱物であるために一般には出回りづらいようです。
……という話はさておいても、この村の通信環境を押し上げるのはまだちょっと難しそうだった。
「この村だけ特別にってわけにもいかないだろうし、国の要所要所にエーテル石の通信設備を置いて……こう、蜘蛛の巣みたいに網を張るといいんじゃないかな?」
といった話を、したくらいだった。
「それじゃあ明日は、使えなくなってる船の修理をしよう」
「「賛成!」」
と、三人はコップを打ち合わせるのだった。
●お金を増やす方法を考えよう
アダムにはある考えがあった。
「村の中だけで発展をしようとしても限界がある。外から人や物を入れていくしかないと思うんだが……そのためにはお金が足りないんだ」
経済の話をするわけではないけれど、お金を沢山使えるということは人や物が沢山行き交うということで、それすなわち復興であるとする向きもある。
そしてお金というのは他者が認めた価値が数値化されたものなので、村の外にいる人が普通よりも大きな価値を見いだしそうなものを産出するのがベターということになる。
すごくざっくり言うと、特産品を作って売ろうという話だ。
「料理に関しては任せてね。この村の名物料理になるような海の幸を使った料理を見つけて見せるさ」
トミコは自慢の料理センスをもとに、村でとれる魚介類の洗い出しをはかるようだ。
ただのジャガイモよりも美味しく食べられるジャガイモのほうが価値をもつように、料理レシピの開発によって既存の資源に付加価値をもたらすことがある。
今はまだ無理でもこの土地発祥の料理となれば観光資源化も夢じゃない。
「まずはこの村で取れる魚介類を調べて、一番よくとれるものを選ぶつもりだよ。せっかくの名物料理なのにあまり取れないものじゃ有名になる以前に広げにくいからねぇ」
そんなトミコを手伝って、アマノホカリ出身の自由騎士がツナ料理を試したり他にも何人かが手伝ったりしていた。
……一方で料理をトミコたちに任せアダムは別の資源を探していた。
といっても、目星はついている。
「あの花は、どこに咲いているものなのでしょうか」
村の女性。かつて小屋を借り、ツナサンドを振る舞って貰った女性のもとをアダムは尋ねた。
「とてもキレイな花でした。都の人々も気に入ると思うので……ええと……」
「栽培してみたらどうかな、って」
途中から顔を真っ赤にして言葉につまったアダムの背後から、シアがぴょんと顔を覗かせた。
びっくりして背筋を伸ばすアダム。
「手が空いたから手伝いに来たよ。お花、探してるんだよね?」
「あ、ああ……」
照れ隠しに頬をかくアダム。
問いかけられた女性はしばらくきょとんとしていたが、口元に手を当てて笑った。
「まあ、まあ。あの花のことでしたら、すぐに案内できますわ。一緒にいらしてくださいな」
女性に案内されてやってきたのは、村からやや山側にはいった場所だった。
特徴らしい特徴はなかったが、案内された場所には青い花がひたすらに咲き乱れていた。
やや盛り上がった土の上に、それはもうびっしりとだ。
「わぁ……」
アダムはもちろん、手伝いについてきたシアも目を大きく見開いた。
「一度持ち帰って家の周りに植えてみたことがあるんですけれど、うまく増えてはくれなくて……この場所が一番よく咲くようです」
「素敵! これを押し花だとか鉢植にしたら、きっと気に入るよ!」
膝をついて花をつむシア。
その様子に、アダムは優しげに微笑んだ。
「思ったよりなんにもねーなこの村……」
小声でそんな風に呟いて、マリアは桟橋の上に立っていた。
「けど海は広いんだよなー。海を売ったらいーんじゃね?」
「そう言われましても……」
「しょっぱいし、塩みたいな……あっ、海水から塩って作れたよな」
かくんと首を傾げて記憶を探るマリア。
案内役の老人も同じように首を傾げてから暫く……。
「塩田、でございましょうか」
「それそれ!」
塩田。海の近い地域の、特に日照の強い土地で多くみられる資源工場のひとつ。
海水を蒸発させると塩だけが残ることを利用して大量の食塩を生産、出荷する施設だ。
ミニニトモラカナク漁村でも個人的に塩を作っている家庭も多く、それを拡大するだけだったら今からでもこなせそうだった。
大変なことがあるとすれば、一日じゅう日の当たる場所を確保する必要があったり、海水の出し入れがある程度簡単な地形にする工事が必要なくらいだった。
「ま、安心してくれよな! 何日かはこの村にいるし、身体の頑丈さなら自信あるからさ!」
そんな具合に、マリア主導による塩田作りが村で始まったのだった。
●もうひとまわり大きなものに
「……って具合にさ、塩を作る設備ができそうなんだよ。今はまだ足腰使いそうな部分多いけど、そのうち自動化できるだろうし、外から若いやつが入ってきたらもっと効率あがると思うぜ」
身振り手振りで説明するマリア。
その様子を、シノピリカはうんうんと頷きながら聞いていた。
テーブルにコップをコンと置いて、『素晴らしい!』と眉尻をあげる。
「他にはどんなことをしたのじゃ?」
「ボクたちの所はお花の栽培を始めたよ。かわった花が偶然咲く場所があったから、そこをちょっとずつ広げて花畑にしようと思うの」
シアがサンプルにととってきた青い花を翳して見せた。
どこか照れくさそうにするアダム。
その隣ではジーニアス、イーイー、グリッツがおいらたちの出番だとばかりに手を上げていた。
「こっちは船をなおしたよ!」
「木の船だったから修理も簡単だったよね」
「板を当てて打つだけだったし。人手はまだ間に合わせだけど、徐々に魚もとれるようになるよ」
『あとカッコカワイイ色に塗ったよ!』と横からみょーんと手を伸ばすシア。
話に区切りが付くのを待って、トミコが料理を盛りつけたお皿をテーブルに並べていった。
「あたしたちは料理をいくつか開発してみたよ。といっても、まだ数を作ってなにがあたるか試す段階だけどねぇ」
「なるほど、皆それぞれ頑張っているのだな……」
うんうんと腕組みして感慨深そうな顔をするシノピリカ。
「私はもっぱらコレじゃ!」
シノピリカは機械化された拳をぎゅっと握って突き出してみせた。
「村の山側に、獣が寄ってきたら音がなる仕掛けをつくらせた。他にも堀を作ったりなんだりじゃな……この辺りは前にも問題になっていたスチームジャッカル対策じゃ。
加えて、村の若者たちに護身術を教えることにした。
少しでも戦えるようになれば、獣の一匹か二匹くらいなら追い払えるかもしれないからのう」
と、そこまで言ってからピッと指を立てた。
「そうそう! 村での人付き合いの仕方にもアドバイスをすることにしたぞ。
押しつけ合ったり否定しあったりしない関係性を作っていくのじゃ。
理想は高めに、気持ちのよい村にしていきたいからのう」
シノピリカをはじめ自由騎士たちが村に通うようになってから、村の雰囲気は徐々によくなっている。
この数日グリッツたちが村のあちこちを回って小さなトラブルを解決していったのも、着実に良い影響を与えていた。
「といっても村の復興は始まったばかり。これからも末永く見守ってゆこうではないか!」
拳を高く突き上げるシノピリカに、グリッツたちが『おー』といって拳を掲げた。
こうして少しずつ変わり始めたミニニトモラカナク漁村。
村の未来がどんなふうに変わるのかは、まだまだわからない。
辺鄙な漁村に向かう馬車は、相も変わらずによく揺れる。
されども『揺れる豊穣の大地』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は大胆に足を組み、遠い空と海の境界を指さした。
「プロデューサーさん、漁村ですよ漁村!」
「ンッ、え……な、なんだい急に?」
水筒を口につけていた『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)が思わず吹き出しそうになりながら振り返る。
「ふふん、一度言ってみたかったのじゃ。オヤクソクじゃろ?」
「そういうものなのかな……」
苦笑いをするアダム。彼らがはじめに言い出したことだからか、いつもよりもテンションが高かった。特にシノピリカは。
「あのツナサンドの味と気持ちは忘れぬぞ。騎士の恩義は高いのだ!」
「それもあるけれど……」
口元の水滴を指でぬぐって、アダムは顔つきを鋭くした。
「ひとつひとつの村が発展していけば、それはやがて国の発展になる。小さなことからコツコツと、国の未来をよくする偉大な一歩になるはずさ」
「ソーダイな話だなー」
ちょっぴり高い馬車の椅子。『見習い銃士』グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)は足をぶらぶらとさせながら背もたれによりかかった。
「僕はもっと、こう……」
言葉に迷うグリッツに、『異国のオルフェン』イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)が小首を傾げて言葉をつなげた。
「人助け?」
「そうそれ!」
ぱちんと手を叩くグリッツ。そのまま手を開いて見せる。
「あと恩返し! 新鮮なお魚がいっぱい食べられるようになれば、きっとみんな元気になると思うんだよね」
「うん。貴重な保存食を分けてくれたもんね」
イーイーはふと、ひとつのパンを二つにわけて食べなければいけない日のことを思った。
「おれたちに、何ができるんだろう」
「考えようね。一緒に」
やがて馬車は潮の香りが濃いミニニトモラカナク漁村へとたどり着いた。
明日にまた迎えに来るといって来た道をもどっていく馬車。それをつま先立ちで大きく手を振って見送る 『おにくくいたい』マリア・スティール(CL3000004)。
マリアの背中に、聞き覚えのある声がかかった。
「ようこそ、みなさん。今日はお揃いなのですね」
ミニニトモラカナク漁村の顔役、と言われている老人だ。
「今日も、パトロールでしょうか」
「いや、今日は違うよ!」
『神秘(ゆめ)への探求心』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)が頭としっぽをそれぞれマリアの後ろからのぞかせてみせた。
「漁村の村おこし! 国家繁栄の第一歩だよ!」
「それはそれは……前向きに考えてくださっていたのですね。お任せしても、よろしいのでしょうか」
老人の言葉に、マリアは胸をグーで叩いた。
「ん、まかせとけ! 毎日肉食えるところにしような!」
一足遅れて、もうひとつの馬車がとまる。
馬車の扉を開いて下りてきたのはトミコ・マール(CL3000192)だった。
「ここがミニニトモラカナク漁村だね。さてと、あたしも得意分野でお手伝いさせてもらうおうかねぇ」
トミコの後ろからぴょんと飛ぶように降りる『イ・ラプセル自由騎士団』シア・ウィルナーグ(CL3000028)。
羽根飾りのついた白いブーツが、水気のある土をふんでぴしゃんと音をたてた。
「いまはちょっと寂しい村だけど、頑張って活気のある村にしようね!」
他にも手伝いにやってきた仲間たちの馬車が到着して、村の入り口には多くの自由騎士が並ぶ形になった。
頭を下げる老人。
「どうぞ、よろしくおねがいします」
●足りないものの洗い出し
一通りの話し合いが済んでいると言っても、全ての家々を回って聞いてみたわけじゃない。
グリッツとイーイー、そしてジーニアスは端っこから順番に家を回って挨拶をすることにした。
「何が出来るかわからない時は、まずは話を聞いてみればいいんだよ」
とはイーイーの言葉である。
「実際に顔を見せて挨拶すれば、元気が伝わるかもしれないもんね」
というのは、ジーニアスの言葉だ。
ちなみにグリッツはというと、『なんだかお祭りみたいだね』とちょっぴり楽しげだった。
真面目にてきぱき働くのもいいけれど、年老いた人々ばかりの村だけに若さと無邪気さはきっとみんなを元気にしてくれることだろう。
実際、グリッツたちの挨拶回りはお祭りのようだった。
ドアをコンコンとノックして、扉が開けば三人並んでご挨拶。
「なにか困ってることはない?」
と聞いてみれば、住民ははじめのうちこそ遠慮するものの、雨どいが壊れただとか重いものが運べないだとか、小さな悩みを告白してくれるようになっていった。
ジーニアスもただ挨拶回りがしたかったわけじゃなく、各家々の問題を自力で解決して回りたかったようで、詰まった暖炉の煙突や竈の亀裂やベッドの傾きなんかを地道に修理していった。
おかげで村の半分も回っていないのに日が暮れて、彼らは一度集会場へと戻ることにした。平均年齢10歳の自由騎士たちによる、いわばこども会議であった。
「力仕事が多かったね。おれたちでもこなせる程度でよかったよ」
村の地図(大雑把に家の位置が手書きされているだけのもの)に印をつけて、イーイーは息をついた。
キッチンから飲み物をもってやってくるグリッツ。
「やっぱりお年寄りが多いからかな。みんな身体が痛いのを気にしてるみたい。村の人たちどうしの会話も少なそうだったし……ある意味、家に閉じこもってるような気分になってるのかな」
ずっと家から出ていないと、陰鬱な気持ちになったり不安が増えたりするらしい。本でそんな話を読んだことがあった。
そんな中で、ジーニアスがスパナをくるくると回しながら言った。
「おいら思ったんだけど、この村の人たちって蒸気機械を全然置いてないんだな」
あるところにはあるという蒸気機械だが、専門的な知識や技術が必要だったり、導入コストや維持コストが高かったりする手前ないところには全然ないようだ。
聞けば漁に使う船もオールで手こぎする木製ボートらしく、複数のボートで網を仕掛けて翌日引き上げるといった古くからある漁法を用いていた。
「戦艦みたいに蒸気機関をぎっしり積んだ船ってわけじゃなくてもさ、動力の強い船にのって沖で魚を沢山とったりできたら、村にも沢山お金とか入るんじゃないかな」
「うーん……将来的にはアリ、かな。ずっと僕らがここに居続けるわけにもいかないし」
「あとはさ、マキナ=ギアみたいに遠くの人と連絡できる機械とかあったらいいと思わない? 首都に助けを呼ぶのが簡単になると思うんだ」
「あったらいいよね。そういうの」
ある地球世界で電磁波による無線通信技術が発見されるのは1830年ごろと言われていて、無線通信が確立するのはもっと先という話があります。
一方この世界ではエーテル石の固有周波に乗せた通信技術が確立していますが、エーテル石がイ・ラプセルでのみ産出されるとっても貴重な鉱物であるために一般には出回りづらいようです。
……という話はさておいても、この村の通信環境を押し上げるのはまだちょっと難しそうだった。
「この村だけ特別にってわけにもいかないだろうし、国の要所要所にエーテル石の通信設備を置いて……こう、蜘蛛の巣みたいに網を張るといいんじゃないかな?」
といった話を、したくらいだった。
「それじゃあ明日は、使えなくなってる船の修理をしよう」
「「賛成!」」
と、三人はコップを打ち合わせるのだった。
●お金を増やす方法を考えよう
アダムにはある考えがあった。
「村の中だけで発展をしようとしても限界がある。外から人や物を入れていくしかないと思うんだが……そのためにはお金が足りないんだ」
経済の話をするわけではないけれど、お金を沢山使えるということは人や物が沢山行き交うということで、それすなわち復興であるとする向きもある。
そしてお金というのは他者が認めた価値が数値化されたものなので、村の外にいる人が普通よりも大きな価値を見いだしそうなものを産出するのがベターということになる。
すごくざっくり言うと、特産品を作って売ろうという話だ。
「料理に関しては任せてね。この村の名物料理になるような海の幸を使った料理を見つけて見せるさ」
トミコは自慢の料理センスをもとに、村でとれる魚介類の洗い出しをはかるようだ。
ただのジャガイモよりも美味しく食べられるジャガイモのほうが価値をもつように、料理レシピの開発によって既存の資源に付加価値をもたらすことがある。
今はまだ無理でもこの土地発祥の料理となれば観光資源化も夢じゃない。
「まずはこの村で取れる魚介類を調べて、一番よくとれるものを選ぶつもりだよ。せっかくの名物料理なのにあまり取れないものじゃ有名になる以前に広げにくいからねぇ」
そんなトミコを手伝って、アマノホカリ出身の自由騎士がツナ料理を試したり他にも何人かが手伝ったりしていた。
……一方で料理をトミコたちに任せアダムは別の資源を探していた。
といっても、目星はついている。
「あの花は、どこに咲いているものなのでしょうか」
村の女性。かつて小屋を借り、ツナサンドを振る舞って貰った女性のもとをアダムは尋ねた。
「とてもキレイな花でした。都の人々も気に入ると思うので……ええと……」
「栽培してみたらどうかな、って」
途中から顔を真っ赤にして言葉につまったアダムの背後から、シアがぴょんと顔を覗かせた。
びっくりして背筋を伸ばすアダム。
「手が空いたから手伝いに来たよ。お花、探してるんだよね?」
「あ、ああ……」
照れ隠しに頬をかくアダム。
問いかけられた女性はしばらくきょとんとしていたが、口元に手を当てて笑った。
「まあ、まあ。あの花のことでしたら、すぐに案内できますわ。一緒にいらしてくださいな」
女性に案内されてやってきたのは、村からやや山側にはいった場所だった。
特徴らしい特徴はなかったが、案内された場所には青い花がひたすらに咲き乱れていた。
やや盛り上がった土の上に、それはもうびっしりとだ。
「わぁ……」
アダムはもちろん、手伝いについてきたシアも目を大きく見開いた。
「一度持ち帰って家の周りに植えてみたことがあるんですけれど、うまく増えてはくれなくて……この場所が一番よく咲くようです」
「素敵! これを押し花だとか鉢植にしたら、きっと気に入るよ!」
膝をついて花をつむシア。
その様子に、アダムは優しげに微笑んだ。
「思ったよりなんにもねーなこの村……」
小声でそんな風に呟いて、マリアは桟橋の上に立っていた。
「けど海は広いんだよなー。海を売ったらいーんじゃね?」
「そう言われましても……」
「しょっぱいし、塩みたいな……あっ、海水から塩って作れたよな」
かくんと首を傾げて記憶を探るマリア。
案内役の老人も同じように首を傾げてから暫く……。
「塩田、でございましょうか」
「それそれ!」
塩田。海の近い地域の、特に日照の強い土地で多くみられる資源工場のひとつ。
海水を蒸発させると塩だけが残ることを利用して大量の食塩を生産、出荷する施設だ。
ミニニトモラカナク漁村でも個人的に塩を作っている家庭も多く、それを拡大するだけだったら今からでもこなせそうだった。
大変なことがあるとすれば、一日じゅう日の当たる場所を確保する必要があったり、海水の出し入れがある程度簡単な地形にする工事が必要なくらいだった。
「ま、安心してくれよな! 何日かはこの村にいるし、身体の頑丈さなら自信あるからさ!」
そんな具合に、マリア主導による塩田作りが村で始まったのだった。
●もうひとまわり大きなものに
「……って具合にさ、塩を作る設備ができそうなんだよ。今はまだ足腰使いそうな部分多いけど、そのうち自動化できるだろうし、外から若いやつが入ってきたらもっと効率あがると思うぜ」
身振り手振りで説明するマリア。
その様子を、シノピリカはうんうんと頷きながら聞いていた。
テーブルにコップをコンと置いて、『素晴らしい!』と眉尻をあげる。
「他にはどんなことをしたのじゃ?」
「ボクたちの所はお花の栽培を始めたよ。かわった花が偶然咲く場所があったから、そこをちょっとずつ広げて花畑にしようと思うの」
シアがサンプルにととってきた青い花を翳して見せた。
どこか照れくさそうにするアダム。
その隣ではジーニアス、イーイー、グリッツがおいらたちの出番だとばかりに手を上げていた。
「こっちは船をなおしたよ!」
「木の船だったから修理も簡単だったよね」
「板を当てて打つだけだったし。人手はまだ間に合わせだけど、徐々に魚もとれるようになるよ」
『あとカッコカワイイ色に塗ったよ!』と横からみょーんと手を伸ばすシア。
話に区切りが付くのを待って、トミコが料理を盛りつけたお皿をテーブルに並べていった。
「あたしたちは料理をいくつか開発してみたよ。といっても、まだ数を作ってなにがあたるか試す段階だけどねぇ」
「なるほど、皆それぞれ頑張っているのだな……」
うんうんと腕組みして感慨深そうな顔をするシノピリカ。
「私はもっぱらコレじゃ!」
シノピリカは機械化された拳をぎゅっと握って突き出してみせた。
「村の山側に、獣が寄ってきたら音がなる仕掛けをつくらせた。他にも堀を作ったりなんだりじゃな……この辺りは前にも問題になっていたスチームジャッカル対策じゃ。
加えて、村の若者たちに護身術を教えることにした。
少しでも戦えるようになれば、獣の一匹か二匹くらいなら追い払えるかもしれないからのう」
と、そこまで言ってからピッと指を立てた。
「そうそう! 村での人付き合いの仕方にもアドバイスをすることにしたぞ。
押しつけ合ったり否定しあったりしない関係性を作っていくのじゃ。
理想は高めに、気持ちのよい村にしていきたいからのう」
シノピリカをはじめ自由騎士たちが村に通うようになってから、村の雰囲気は徐々によくなっている。
この数日グリッツたちが村のあちこちを回って小さなトラブルを解決していったのも、着実に良い影響を与えていた。
「といっても村の復興は始まったばかり。これからも末永く見守ってゆこうではないか!」
拳を高く突き上げるシノピリカに、グリッツたちが『おー』といって拳を掲げた。
こうして少しずつ変わり始めたミニニトモラカナク漁村。
村の未来がどんなふうに変わるのかは、まだまだわからない。