MagiaSteam
豊穣の恵みを守り切れ!




 今月末に近づいてきた『豊穣祭ウィート・バーリィ・ライ』。
 それはイ・ラプセルにおける、豊作を水の女神に捧げ、出来た料理を皆で分かち合うイ・ラプセルの祭の一つだ。
 収穫されたばかりの麦を使ったパン、ビールなどは、世界的にも有名なところ。
 それだけでなく、様々な地方から海の幸、山の幸が集まり、様々な料理が振舞われる。
 これを食する為、わざわざ他国から来訪してくる貴族もいるそうだ。
 だが、そんな有名な祭りであり、料理であるからこそ、狙ってくる輩だっているのだ。


 イ・ラプセル王国の階差演算室。
 演算士の金髪少女、『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)は集まった自由騎士達に感謝の意を示してから話を始める。
「みんな、豊穣祭には参加するのかな?」
 気づけば、祭りの日まで近づいてきている。
 どうしようかと語らう自由騎士達へと、クラウディアはこんな依頼を持ちかける。

 現状、色々な場所から祭りの会場に、沢山の食材、食料を運び込んでいる途中なのだそうだ。
「それに乗じて、食材を狙う野盗がいるようだね」
 場所はイ・ラプセル内の草原地内の街道。
 草原の起伏の影に隠れていた野盗は、食材を輸送する馬車を狙って襲撃し、御者を脅して馬車ごと奪い去ろうとするのだという。
「全く、ひどい話だよね。欲しければ真っ当に働いて食べればいいのに」
 やや呆れながらも、クラウディアは説明を続ける。
 出現する野盗は8体。どうやらあちらこちらで人を襲っているらしく、戦い慣れした相手のようだ。
 全員が軽装で戦いに臨み、個々人で得意なレンジで攻撃を仕掛けてくる。
 最優先は食料が積まれた馬車の奪取のようだが、それが無理だとわかれば、荷台の中の食材をピンポイントで狙ってくる可能性もあるので注意したい。
 事件が起こるのは昼、太陽が少しだけ傾きかけた頃だ。
「敵の襲撃はみんなが馬車と接触するかどうかというタイミングになるかと思うよ」
 どちらが早いかは状況如何。
 ともあれ、敵の撃破もそうだが、馬車と食材を護り切りたい。
 いずれかが達成されなければ、豊穣祭の会場に食材を届けることができなくなるからだ。
 敵情報を纏めた紙を自由騎士達へと渡しつつ、クラウディアはさらに続ける。
「無事に野盗を撃退出来たら、御者の人からパンと果実ジュースなど軽食を頂くことができるから、会場まで護衛を頼むよ」
 会場までは2~3時間の道のり。到着は夜になると思うが、ゆっくり歩きつつ向かうといいだろう。

 説明は以上だよと、クラウディアは一呼吸おいて。
「折角の豊穣祭に水を差す野盗を許してはならないよ」
 そう告げ、彼女は説明を締めくくったのだった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
担当ST
なちゅい
■成功条件
1.全ての野盗の討伐
2.馬車、および積まれた食料を護り切ること
 初めましての方も、どこかでお会いして事のある方もこんにちは。
 STのなちゅいと申します。よろしくお願いします。
 豊穣祭の食糧を狙う野盗の討伐を願います。

●野盗
 全てノウブルによって構成されたごろつき達です。

◎ボス……格闘
 いかにも悪党面といった三白眼の男。
 引き締まった体つきをしており、
 ナックルを装着し、素早い動きで攻め立ててきます。
・獅子吼(A:攻近単【グラビティ2】【パラライズ2】)

〇子分×7
・レンジャー×4
 2体が投具、ブリッツクリークを使用。
 2体が弓を所持。アローレインを使用。

・ダンサー×3、剣を所持。太陽と海のワルツを使用。

●状況
 場所は、イ・ラプセルの草原に挟まれた街道です。
 昼から夕方に差し掛かるくらいの時間に、ウィート・バーリィ・ライ……イ・ラプセルの豊穣祭へ運ぶ食料を積んだ馬車が野盗の一団に狙われます。
 馬車は御者と付き添いの男性がいるのみで、命の代わりにと馬車ごと奪われてしまいますので、駆け付けて撃退を願います。
 事後は食料の一部を軽食として頂きつつ、祭りの会場まで付き添い、護衛を願います。
 食材を口にしつつ、来る祭りを楽しみにしつつ、語らっていただければと思います。

 それでは、よろしくお願いいたします。
状態
完了
報酬マテリア
2個  6個  2個  2個
8モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
7/8
公開日
2019年11月07日

†メイン参加者 7人†




 イ・ラプセル王国草原地帯。
 この場所に、食料などを積み荷とする馬車が通りかかる。
「積荷は街の皆が楽しみにしている豊穣祭のモノ。野盗なんぞにくれてやれないわ」
 弾けんばかりにナイスボディの『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は、道中拳を鳴らす。
「ノウブルだけで構成された野盗、か」
 かなり熊に近い容姿のケモノビト、ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は、相手の種族に注目して。
「このご時勢、ノウブルってだけでいい暮らしできる国ばかりなのに態々盗みを働くなんざぁ、贅沢な野郎どもだ」
 ノウブル以外の種族は国によって迫害も受けている。ウェルスの憤りに同調する者は多いはずだ。
「何もこんな時期に悪さしなくてもいいのになあ」
 肩まで伸ばした赤髪を後ろで纏めた少年、『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441) がそんな同じノウブルの野盗に些か呆れも見せてから少し考え直して。
「いや、みんなが浮かれているときだからこそ、なのかな」
 豊穣の祭りも前とあれば、皆気分は浮つく。そこを狙っての犯行ということだろう。
 自由騎士のメンバー達はその野盗達を討伐しに、辺境のこの地域までやってきていた。
「ほんま困るわぁ」
 女性にも見え、それでいて艶やかさを感じさせるオニヒトの『艶師』蔡 狼華(CL3000451)も続ける。
「うちのお棚も仰山予約が入っとりますし、食材横取りされたらかないまへん」
「食糧問題は国民の問題、つまり最終的にサシャの問題になるんだぞ!」
 狼華に合わせるように、『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)が力説する。
「食べ物は大事だけど、人から奪い取ったらいけないんだぞ!」
 なぜか、自分にもダメージを受けていたサシャ。
 そんな彼女を、金色の毛と体毛のケモノビトシスター、『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)がじっと見つめると。
「教会でつまみ食いとか、盗み食いとかしてないんだぞ!!」
 サシャは思いっきり目を泳がして、大声で主張していた。
 野盗に憤るメンバーが多い中、子供のような体躯に3本の角を生やす非常に長い桃色の髪の『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は、違った視点でその野盗達を捉えていて。
「彼等は……僕達が生み出した者達なのかも知れない……」
 『神の蠱毒』の為、勝利すべく各国と戦争するイ・ラプセル。
 この野盗達はいずれかの国から流れ着いたのか、あるいはこの国で「普通」とされる生活水準からはみ出したものかもしれないとマグノリアは考える。
「今、『普通』を保つのは……意外と難しい事だから……」
 ただ、彼らの境遇がどうあれ、悪事を働く以上は止めねばならない。
「悪事は止める。みんなの笑顔を護る。いつもどおり、オレのやるべきことをやるのみだ」
 ナバルが意気込みを見せる
 前方からやってくる馬車。
 それを狙い、迫ってくる野盗の姿を視界に捉えた自由騎士一行はすぐさまその応戦に動くのである。


 馬車には御者と付き添いの男性のみ。
 イ・ラプセル国内とあって、さほど警戒せずに馬を歩かせていた彼らだったが、急に側面から襲い掛かってきた野盗に驚いて。
「ハイヨー、急げ、追いつかれるぞ!」
「へっ、逃がすかよ!」
 野盗のボスが素早く駆け、馬車の速度が上がる前に進行方向へと立ち塞がると、御者は思わず馬を急停止させてしまう。
 そこに、子分達も集まり、止まった馬車へと襲い掛かろうとしてくる。
 そこへ、羽ばたき機械を使ったウェルスが空を飛び特攻しながらも狙撃銃を連射させ、灼熱の弾幕で野盗へと威嚇射撃を行う。
 敵が後ろから来る自分達に注意を向けたのであれば十分と、ウェルスはさらに飛び込む。
(悪党が盗む理由なんて、知ったこっちゃない)
 敵を飛び越えたウェルスは馬車の前に着地し、戦闘態勢へと入る。 後方に控えるサシャも仲間に合わせて聖書を手にし、仲間の支援強化へと動き出す。
「自由騎士だ! お前たちの悪事はすでに露見している!」
 足を止めた野盗へとナバルが呼びかけると、野盗のボスが聞えよがしに舌打ちする。
 ナバルを含め、自由騎士達は次々に馬車と野盗の間へと割り込んで。
「大人しく縛につけばよし、抵抗するなら少し痛い目を見てから捕まることになるぞ!」
 ショートスピアを突きつけるナバルが敵を牽制する間に、エルシーが馬車の2人へと呼び掛ける。
「私達は自由騎士よ。ココは任せて隠れていて」
「わ、わかった……」
 エルシーの呼びかけで彼らが馬車を後退させる間、マグノリアが野盗を見回して思う。
(本来なら仕事が得られたのならば、こんな事をせずとも豊穣祭を心から楽しめた筈……)
 安定的に得られる食べ物、定住出来る場所。彼らにはそれがないのではと、マグノリアは推測する。
 野盗となり果てた彼らにそれを科してしまっているのは、自分達がしている罪の証なのではないか。
「でも『今、この時』は……一度捕らえさせて貰うよ」
 なお、マグノリア以外のメンバーは野盗達の罪を咎めようとして。
「さあ、貴方の罪を数えなさい」
 そこで、アンジェリカが巨大な十字架を手に言い放つ。
「尤も……、数え終わる前に終わるでしょうけど」
「きつぅくお灸を据えてよろしおすな? ふふ、楽しくやらせてもらいます」
 狼華もすらりと抜いた小太刀の刃を陽の光に反射させ、楽しげに呼びかける。
 すると、苛立つ野盗のボスが逆上して叫ぶ。
「自由騎士がなんだ、おい、やっちまえ!!」
「「お、おう……!!」」
 子分達も後には引けず、玉砕覚悟で来る様子。
「悪いが……、手加減は一切なしでやらせてもらおう」
 ウェルスはやむなしと仲間の後ろに陣取り、再び銃を構えて。
「ここがお前らの最後だ」
 躊躇なく引き金を引いた彼の一発が戦いの始まりとなるのだった。


 ファイティングポーズをとって向かってくる野盗のボスは、ナックルを付けた拳を突き出して来るが、ナバルが悠然と立ち塞がって。
「大将、あんたは強いかもしれないが、その攻撃はオレ以外の誰かに届くことは無い」
「るせえええ!!」
 叫びを上げて殴りかかってきた一撃を、防御態勢をとったナバルが盾で受け止める。
「そしてオレは、お前みたいなセコい悪党の攻撃では絶対に倒れない!」
 反撃とばかりに彼は気を解き放ち、周囲の子分と纏めて吹っ飛ばす。
「うふふ、ワイルドも悪ないなぁ。頭は悪そうやけど、血ぃは濃そうで……ふふっ、昂るわぁ!」
 妖艶な笑みを浮かべる狼華が近づき、軽やかにステップを踏みながら彼は切りかかる。
「なぁ、うちと遊んでおくれやす?」
 恍惚とした表情を浮かべる彼の表情に、野盗達はさぞ恐ろしさを抱いたことだろう。
 ボスを抑える2人にサシャは魔導医学の応用術式を使い、防御を固めていく。
 攻撃より、回復支援が得意なサシャは全力で仲間を支えながら、野盗達へと訴えかける。
「豊穣祭では色々無料でふるまわれるから、食べ物は盗まなくても一杯食べれるんだぞ?」
 しかし、それで納得する野盗ではない。
「そんなはずあるか!」
 ボスは苛立ちげに拳を振り上げ、殴り掛かってくるのである。

 他メンバー達は、その間に子分達を相手取る。
「豊穣の祭なのに、食料が枯渇するとか洒落になりません!」
 柳凪の構えを取るアンジェリカは子分達へと突っ込む。
 狙うは、後方の魔導技を使う弓持ちのレンジャー達。
「絶対に守りましょう……皆が笑顔で祝えるように!」
 アンジェリカはそいつら目がけ、個別に断罪と救済の十字架を叩きつけていく。
 エルシーもまた柳凪の構えを取り、手前のダンサー達へと攻め入る。
 剣で切りかかってくる敵の斬撃をエルシーはできる限り躱し、避けられぬ一撃は籠手で弾いて。
「さっさと逃げればよし。でなければ、ぶちのめす」
 だが、ボスが戦っているのに、子分だけ逃げるはずもない。
「「おおおおおっ!!」」
 子分達は全員が得意とする攻撃を続ける。
 後方からレンジャースタイルの子分が素早く投具を三連続で投げ飛ばし、弓から多数の矢を雨の様に降らせてきた。
 それらを倒すべく、ウェルスが次なる一撃の為に力を溜める。
 マグノリアもギリギリの距離から全火力速攻で討伐に当たり、魔導のダンスを舞い踊って。
 直後、巻き起こる見えない大渦に、野盗達は巻き込まれていく。
「な、なんだこれは!」
「足が動かん……!!」
 動きを止めた子分達。だが、ボスだけはナバルへの攻撃を止めない。
 全身から気を放ツナバルに続き、疾風の舞踏で狼華がボスへと切りかかる。
「子分7人は早う片付けておくれやす」
 狼華の叫びに応じ、アンジェリカが弓持ちの1体を殴り倒してしまうと、エルシーは手前のダンサー達を纏めて殴り掛かり、追い込んでいく。
 すると、ウェルスは狙撃銃を刹那カスタマイズし、溜めていた力を解き放つ。
「食らうがいい」
 発射した大型弾頭は上空で爆破して鉄矢の雨となり、野盗達へと降り注ぐ。
「ぐああ……っ」
「おわあああ……!」
 それらに打ち付けられた子分達は重い音を立て、1人、2人と倒れていくのである。


 子分達は徐々に自由騎士達の攻撃によって倒れていく。
 弱者のみ選んで襲いかかっていた連中。強者も相手取り、勝利を重ねてきている自由騎士と比べればその力量差は一目瞭然だ。
 前線の敵が全て倒れたことで、手前へと出てきたレンジャー達がこちらの虚を突いて近づいてきた。
 しかし、馬車を護る最終防衛ラインとなるマグノリアがそれを見逃さず、賢き者が零す雫……強毒を含む炸薬を飛ばし、残る投具持ちを撃ち抜いて倒してしまう。
「油断も隙もないわね、まったく」
 さらに、エルシーが残る敵に影となって攻め入り、虎狼のごとく牙を剥く。
 子分は道の上に崩れ、意識を失ってしまった。

 だが、野盗のボスはかなりの修羅場をくぐってきている様子。
「よくも、子分をやりやがったな……!」
 最初から、ボスも相手が自由騎士と分かった地点で、勝利は難しいと察してはいる。
 だからこそ、全力を尽くし、握りしめた拳でせめて抵抗する。
 仲間達が近づいてきていれば、ナバルは仲間を庇い、敵の拳を受け止めてから叫ぶ。
「武器を捨てて降参しろ!」
 すでに幾度か呼びかけを行っているが、ボスは応じる素振りを見せない。
「早く降参すればするだけ、怪我は深くならずに済む! その後の裁きの印象も良くなるぞ!」
「子分が全員倒されて、俺だけ降参できるわけねぇだろうが!」
 さすがに、自由騎士が子分の命を奪うとはボスも思っていない。
 だからこそ、彼らが目覚めたときに失望されぬよう、全力で戦い抜くつもりだ。
 傷つくナバルへ、サシャは魔導医学を駆使した癒しを振りまく。
「悪いことして手に入れた食べ物のほうが美味しいって思うのは、子供の考えなんだぞ!」
 自身がそう思うからこそ、サシャはただ率直な想いをぶつけて彼らの罪を咎め続ける。
「大人はしっかり働いて、食べ物を手に入れないといけないんだぞ」
「知ったようなことを……!」
「速さなら、うちも負けとらへんやろ?」
 距離をとるボスへと狼華が近づき、素早く斬撃を浴びせかける。
「まだまだお楽しみはこれからや、精魂果てるまで付きおうてなぁ?」
 恍惚とした表情で相手を煽る狼華に対し、ボスは苛立ちながらも猛り吠える。
「おおおおおおおおおおおおお!!」
 その叫びは子分が倒された恨みか、それとも……。
 激しい感情によって、力を高めるボス。
 近づくエルシーはそれに肌をピリ突かせて。
「なかなかやるわね。相手にとって不足なし!」
 速度を火力に変え、エルシーは一気に拳を打ち込もうとする。
 孤軍奮闘するボスは自由騎士達を薙ぎ倒そうとするが、アンジェリカは彼を狙って聖なる祈りを込めた一振りを叩きつけ、衝撃波を合わせて二重の重撃を叩き込む。
 敵に逃げる素振りは全く見られない。
 数においても優位に立ったこの状況でも、ウェルスは力の限り灼熱の銃弾をボスへと浴びせて。
 さらにマグノリアが矢の雨を降らせたことで、若干怯んだボスは再度獅子のように吠えて。
「おおおおおおおおっ!!」
 傷だらけの身体で振り絞った最後の力は、ナバルによって遮られて。
「なかなか楽しめたでありんすえ?」
 時を超えるかの如く狼華が近づき、小太刀を振り下ろす。
「か、あああっ……」
 次の瞬間、赤いものをぶち撒けたボスは白目を向き、地面へと伏していったのだった。


 野盗を懲らしめた自由騎士達は、彼らが逃げないようにと手足を縛り付けていく。
「檻の中で、自らの行いを悔い改めなさい」
 罪は消えないが、心優しい女神アクアディーネ様は全てをお赦しになられると、アンジェリカは祈りを捧げる。
 その後、ウェルスはさらに国防騎士団に引き渡すまではと、目隠し、耳栓も装着させる。
「もう大丈夫ですよ。怪我はないですか?」
 完全に安全が確保できてから、エルシーは馬車の2人に告げた。
「助かった、恩に着るよ」
 すると、彼らは食料の一部を軽食として自由騎士達に分けてくれる。
 麦はパンとして。飲み物はブドウジュースを振舞ってくれた。
「しっかり働いた後の果実ジュースはとっても美味しいんだぞ」
 サシャはありがたくいただいた軽食を美味しそうに頂く。

 そのまま、一行は祭り会場まで馬車を護衛することになる。
「はぁ、これから馬車で2~3時間も揺られなあかんの?」
 馬車は食べ物と捕えた野盗でいっぱいだ。
 自由騎士は乗れても2、3人。交代で乗る為馬車に揺られる時間もないことに狼華は嘆息する。
「辛いわぁ、早う帰って湯浴みせんと、身体中臭うてかなわへん。やっぱり盗賊はあきまへんなぁ」
 服を叩いて埃を落とそうとする彼の言葉が耳栓をしていた野盗達に聞こえていなかったのは、幸いだったかもしれない。
「犯罪者のミンチとして珍味になりたくなければ、おとなしくしてろよ?」
 交代で馬車に乗る自由騎士はそのタイミングで軽食を頂くが、ウェルスは監視の間に、野盗の耳栓をとって注意する。
 次の瞬間、ウェルスは仲間の行動に驚きをみせた。
 マグノリアは目隠しもとり、自らの分の軽食を全て野盗らへ差し出したのだ。
 1人分を8人に分ければ、かなり足りないのは間違いないが、マグノリアはこう話す。
「彼等の様な者にこそ、豊穣祭を祝って欲しいから」
「……俺はいい。子分に分けてくれ」
 その施しを、子分達が申し訳なさそうに口にする。
 エルシーもびっくりしながらも、話題を変えた。
「いよいよ豊穣祭ですね」
 街の人々も楽しみにしている祭り。自分もその1人と語る。
「ですが、あなた達は今年の豊穣祭は檻の中で過ごしてください」
 罪は償わなければならない。
 今回の1件は自由騎士が食い止めたが、彼らはこれまで多数の人々を襲って強盗を働いているはずなのだ。
「国に着いたら、僕はクラウスに何か仕事に就けるよう進言を考えているよ」
 マグノリアの一言に、やや思い悩む野盗達へとナバルが告げる。
「もし更生する気があるのなら、罪を償った後にシャンバラに行くといい」
 あの地は今人手の少なさで困っている為、きっと仕事にありつけると彼らに告げる。
「人間、失敗してもやり直せるんだ」
 それで根本の解決になるならありかもしれないと、マグノリアは考えていたようだ。

 その後、イ・ラプセル王都に戻ったマグノリアは報告書を作成し、国へと提出する。
 有志で自由騎士の報酬の一部を集め、定住できる場所も作れないかという提案もつける。
 とはいえ、シャンバラであれば、定住の地もすぐ決まる可能性もあるかもしれないと期待しながら、マグノリアは走らせていた筆を止めたのだった。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『野盗にも生活の保障を』
取得者: マグノリア・ホワイト(CL3000242)

†あとがき†

リプレイ、公開です。
 MVPは、最初から最後まで、野盗を救おうとしたあなたへ。
 今回はお疲れ様でした。
 ゆっくりとお休みくださいませ。
FL送付済