MagiaSteam




大工廠の怪

●
噎セ返ルヨウナ炭ノ匂イ。
熱ク濃密ナコノ煙。
アア、良イ時代ニナッタモノダ。
サア人間ヨ、私ノ為ニ働クガイイ。
コノ時代ハ、オ前達ノモノデハナイ。私ノモノダ−−
●
「ガスティール大工廠って知ってる?」
『あたしにお任せ』バーバラ・キュプカー(nCL3000007)は、そう自由騎士達に切り出した。「アデレード郊外にあるすごく大きな工場。鉄とか糸とか木材とか、もっと複雑なものとか、何でも作ってる。中央動力室には巨大な蒸気機関があって、そこからパイプで各棟にエネルギーを供給してるらしいわ」
「そこで、『煙を食う怪物』が出るんですって」
「……煙を食う、怪物?」
「最初は機関の誤作動だと思われてたの。誰もいない夜中に機関が動いてるって。でも、ある日の夜中に工場に入った工員が見たらしいわ。熱い蒸気を啜るように食う、痩せすぎの怪物を」
「……それから、どうなったんです?」
「怪物は工員に気づくと、煙の中に飛び込むようにして消えたらしいわ。煙と同化する能力があるのかも。だから退治するなら、蒸気が出てくるところで待ち伏せするのが一番じゃないかしら」
成程、と自由騎士達が頷く。それから、とバーバラが言葉を続けた。
「ちなみにだけど、大工廠の工員は殆どがリブラの裏街の宿舎にいるらしいわ。−−知り合いの子が行けば、色々と教えてくれるんじゃない?」
言って、バーバラは微笑んだ。
噎セ返ルヨウナ炭ノ匂イ。
熱ク濃密ナコノ煙。
アア、良イ時代ニナッタモノダ。
サア人間ヨ、私ノ為ニ働クガイイ。
コノ時代ハ、オ前達ノモノデハナイ。私ノモノダ−−
●
「ガスティール大工廠って知ってる?」
『あたしにお任せ』バーバラ・キュプカー(nCL3000007)は、そう自由騎士達に切り出した。「アデレード郊外にあるすごく大きな工場。鉄とか糸とか木材とか、もっと複雑なものとか、何でも作ってる。中央動力室には巨大な蒸気機関があって、そこからパイプで各棟にエネルギーを供給してるらしいわ」
「そこで、『煙を食う怪物』が出るんですって」
「……煙を食う、怪物?」
「最初は機関の誤作動だと思われてたの。誰もいない夜中に機関が動いてるって。でも、ある日の夜中に工場に入った工員が見たらしいわ。熱い蒸気を啜るように食う、痩せすぎの怪物を」
「……それから、どうなったんです?」
「怪物は工員に気づくと、煙の中に飛び込むようにして消えたらしいわ。煙と同化する能力があるのかも。だから退治するなら、蒸気が出てくるところで待ち伏せするのが一番じゃないかしら」
成程、と自由騎士達が頷く。それから、とバーバラが言葉を続けた。
「ちなみにだけど、大工廠の工員は殆どがリブラの裏街の宿舎にいるらしいわ。−−知り合いの子が行けば、色々と教えてくれるんじゃない?」
言って、バーバラは微笑んだ。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.スモーカーの撃破
皆様こんにちは。鳥海きりうです。よろしくお願いします。
煙を食うという謎の怪物との戦闘シナリオです。怪物の撃破が成功条件となります。
敵キャラクターのご紹介です。
・スモーカー
煙を食うという謎の怪物。スモーカーは便宜上の呼称。詳細不明。
バーバラが言っていた通り、蒸気が出てくるところで待ち伏せするのが上策でしょう。
蒸気が噴出している場所はいくつかありますので、お好きなロケーションをお選びください。
・中央機関室
巨大な蒸気機関がある部屋。広さは中程度で遮蔽物無し。各棟へのパイプにはそれぞれバルブが設えられ、回転させることでエネルギー供給をオン/オフできる。
・第一工場
最も大きな作業場。非常に広く遮蔽物も無い。
・鍛冶場
鍛治師達が作業する小部屋。狭いが遮蔽物は無い。
・機械化工場
大型機械を用いた作業をする工場。広さは中程度だが遮蔽物が多い。
それぞれのエリアは離れた位置に点在しています。離れた味方と連絡を取り合うことは可能でしょうが、助けに行くにはそれなりの時間がかかるとお考えください。
スモーカーの戦闘力は不明ですが、「一人で正面から戦うのは危険である」とだけ申し上げておきます。何か作戦を考えてください。
また、行動パターンからするに、スモーカーは人間を見ると戦わずに逃げるところがあるようです。−−つまり、待ち伏せしても見つかったらすぐ逃げられる可能性があるということです。逆に言うなら、これを利用してスモーカーの動きを誘導することも可能でしょう。
また、バーバラも言っていた通り、リブラの住人から情報収集することも可能です。必須条件ではありませんが、敵の情報は少なからず戦闘の助けになるでしょう。
また、『裏街の巨人』にご参加頂いたPC様は、この情報収集の際にプラス補正がかかるものとします。
簡単ですが、説明は以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。
煙を食うという謎の怪物との戦闘シナリオです。怪物の撃破が成功条件となります。
敵キャラクターのご紹介です。
・スモーカー
煙を食うという謎の怪物。スモーカーは便宜上の呼称。詳細不明。
バーバラが言っていた通り、蒸気が出てくるところで待ち伏せするのが上策でしょう。
蒸気が噴出している場所はいくつかありますので、お好きなロケーションをお選びください。
・中央機関室
巨大な蒸気機関がある部屋。広さは中程度で遮蔽物無し。各棟へのパイプにはそれぞれバルブが設えられ、回転させることでエネルギー供給をオン/オフできる。
・第一工場
最も大きな作業場。非常に広く遮蔽物も無い。
・鍛冶場
鍛治師達が作業する小部屋。狭いが遮蔽物は無い。
・機械化工場
大型機械を用いた作業をする工場。広さは中程度だが遮蔽物が多い。
それぞれのエリアは離れた位置に点在しています。離れた味方と連絡を取り合うことは可能でしょうが、助けに行くにはそれなりの時間がかかるとお考えください。
スモーカーの戦闘力は不明ですが、「一人で正面から戦うのは危険である」とだけ申し上げておきます。何か作戦を考えてください。
また、行動パターンからするに、スモーカーは人間を見ると戦わずに逃げるところがあるようです。−−つまり、待ち伏せしても見つかったらすぐ逃げられる可能性があるということです。逆に言うなら、これを利用してスモーカーの動きを誘導することも可能でしょう。
また、バーバラも言っていた通り、リブラの住人から情報収集することも可能です。必須条件ではありませんが、敵の情報は少なからず戦闘の助けになるでしょう。
また、『裏街の巨人』にご参加頂いたPC様は、この情報収集の際にプラス補正がかかるものとします。
簡単ですが、説明は以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。
状態
完了
完了
報酬マテリア
6個
2個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2018年07月08日
2018年07月08日
†メイン参加者 8人†
●Noontide -Gasteel Factory-
正午過ぎのガスティール大工廠。操業中の工場群には無数の煙突が立ち並び、機械が打ち合う騒音と黒や灰色の煙を周囲に撒き散らしている。
「煙を食べる怪人かぁ! どんなやつだろう? ワクワクしちゃうね! 早速情報収集だ!」
『知りたがりのクイニィー』クイニィー・アルジェント(CL3000178)はそう言って、楽しげに大工廠の敷地へと走り込んだ。「お、さっそく第一工員発見!」その辺に座って弁当を食べていた数人の工員に近寄る。
「……あん? 何だよ嬢ちゃん」
「ねぇねぇ、煙を食べる怪人の噂を聞いたんだけど、何か知らない? 何処で出没目撃が多発してるかとか、いつ頃から目撃され始めたとか。その前後に変わったことがあったとか、なんでもいいから知りたいんだ」
元気よくまくし立てるクイニィーに、工員達は顔を見合わせる。
「結構いろんなとこで出てるらしいな。第一工場とか鍛冶場とかよ」
「出始めたのはつい最近だよ。昔からそんな話があったわけじゃねえ」
「でもな、嬢ちゃん。俺らが知ってるのはそのくらいだぜ?」
「あれ。そーなの?」
驚くクイニィーに工員達は頷く。「この大工廠はシフト制で、朝早くから夜遅くまで操業してる。24時間ってわけじゃねえけどな。だから、怪物を見たって言ってんのは遅番の連中なんだよ。今ここにいる俺達は早番さ。夕方になったらもう帰る。夜中の怪物とはご縁が無いってこった」
「……そっかー……」
「あ、でもよ」
「「?」」
工員の一人が声を上げ、他の工員とクイニィーがそちらを見る。「何だよ」「いや、関係あるか分かんねえけど」「なになに?」
「ここが大工廠になる前−−この近くの沼地には、『フォグレット』がいたんだ」
「ふぉぐれっと?」
訊き返すクイニィーに工員は頷く。「霧に潜み人を食う怪物。グールの亜種って話らしいけどな。この辺に住んでる連中は皆、沼には絶対に近づかねえ。怪談とか御伽噺じゃなくて、本当にいるんだよ。幻想種≪モンスター≫が」
「……」
「それは全く関係無えだろ。嬢ちゃんが聞きてえのは工場の煙を食う怪物だ。沼の人食い鬼は全然違え。お前人の話聞いてんのか」
「……そうかなあ」
え、と工員達が振り返り、クイニィーはふむ、とため息を一つ漏らした。
●Noontide -Libra Slum-
ほぼ同時刻。リブラの裏街・ガスティール工員宿舎。ここにも数人の自由騎士達が、怪物の情報を求めてやって来ていた。
「うーむ、蒸気を喰らう怪物とはのう……」
「街の公害を食べてくれるだけなら別にイイっていうかむしろ助かっちゃうんだけど。この街って居心地は良いけど、埃っぽくて汚れやすいのがイヤなんだよね」
(うー、あの人達疲れるんだよね……)
『ビッグ・ヴィーナス』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)と『裏街の夜の妖精』ローラ・オルグレン(CL3000210)がそんな呟きを漏らす。その傍で『蒼の審問騎士』アリア・セレスティ(CL3000222)は微妙に憂鬱そうだった。
「スモーカー、煙を食う怪物か。幻想種か、それともイブリースか」
「目撃情報があるのならば、それらを時系列に並べて目標の行動パターンや、生息域がわかるだろう。パイプの蒸気で逃げているなら、パイプの繋がった先に巣がありそうでもある」
『清廉なる剛拳』アダム・クランプトン(CL3000185)と『イ・ラプセル自由騎士団』ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)も、それぞれ自分の意見を述べた。
「さて、この前話を聞いた連中はおるかのう? とりあえず今回は化粧やら扮装やら濃い味付けは無しじゃ! やはり騎士≪もののふ≫は素材で勝負よ!」
「ローラもいつも通りでいくよー♡ というわけで! お兄さん達、こんにちはー♡」
ローラが早速、宿舎の前の屋台で昼飯を食っていた住人達に声をかけた。相変わらずガラの悪い住人達が振り返る。「おお、ローラにシノにアリアか。今日は早えな」「おっはー♡」「おっはーじゃ!」「ど、どうも……」
「で、あんたは……こないだ巨人と戦ってたな」
「先日は騒がせてすまない。−−今日も仕事で来たんだ」
「また騒がすって?」
「いや−−教えて欲しいことがあってね」
ローラとシノピリカが顔見知りの住人と挨拶を交わし、アダムは別の住人に声を掛けられる。その傍で、ルシアスもまた別の住人に絡まれていた。
「お前は? 見ない顔だな」
「……『スモーカー』を殺すのに雇われた。情報が欲しい」
「ふん……」
男はルシアスの姿を見る。纏ったボロ布に胸元に光るタグ。男は小さく笑うようなため息を漏らした。「何が聞きたい?」
「最初に怪物を見たのは誰だ?」
「……向こうの卓で食ってるアゼルだ」
「礼を言う」
言って、ルシアスは少し離れた卓へ向かった。「アゼルか?」
「……あ? 何だよ」
「スモーカーについて聞きたい。どんな奴だった?」
その住人−−アゼルは少し考え、言った。「グールだよ。ありゃ」
「グール?」
「聞いたことあるだろ? 屍食鬼さ。爪が長くて鋭かった。人間も怪物も手で判るんだ。ありゃあ土方の手でも芸術家の手でもない。それなりにでかい獲物を、食える大きさに切り刻む為の手だ。俺が殺られなかったのは、生きてる肉だったからだろうよ」
「……ふむ」
アゼルの言葉にルシアスは唸る。少し離れてアダムも住人と話していた。
「怪物は、どんな時に目撃されてるんだ?」
「どんなって、そりゃ煙とか蒸気が出てるとこさ。それぐらいは聞いてんだろ?」
「もう少し詳しく」
「ふむ、そうだな……そういや、煙が出てんのはいいんだが、何で機関が動いてたかは分からねえんだよな。誰かが火を消し忘れたか−−怪物が自分で動かしたんかね?」
「機械を動かせる可能性か……ありがとう。よく分かったよ」
「待てよ。ありがとう、で終わりか? もっと何か無えのかよ」
「……はっきり言おう。お金は無い」
「……ほおおお?」
「持って来てない。ただ、どうしてもというなら何とかしよう。その代わり」
言葉を切り、アダムは卓に肘を突いた。「これで、僕に勝てれば、だ」
「……ふん。面白え」
男が卓に肘を突き、アダムと手を組む。「お前ら来い! 俺らが勝てば騎士様の奢りだ!」男の声に他の連中も集まってくる。
「怪物じゃが、蒸気の『好み』は無いかの? 出現する際の前兆は?」
「そういうのは聞かねえな。どこにでも出てくるし、なんかもう気がついたらそこにいた、って感じらしいぜ」
「そいつって、煙を食べたらどう変化するの? あと、逃げる時はどんな風に?」
「変化するって話は聞かねえが−−そう、煙の中に溶け込むみたいに消えるんだとよ。その後、パイプの中から音がしたって言う奴もいるな」
「ちょっと気になったんですけど、人的、物的な被害は出ていますか?」
「いや。目撃証言だけだ。怪我人は出てねえよ」
シノピリカ達の聞き込みは順調に続く。「お嬢達。俺達もそろそろ飯にしよう。食い物買って来たぜ」補佐に来ていた自由騎士がシノピリカ達にトレイを差し出した。その上にはやたら色の濃い煮物が載っている。「……何これ」ローラが素のトーンで尋ねた。
「煮物だ。俺も食ってみたが、美味いぜ。この味と量でこの価格はいっそ犯罪だ。どうしてもレシピは教えてくれねえけどな」
「「「……」」」
女子三人はまじまじと煮物を見る。たっぷり盛られた濃い煮汁で中身は確認できない。ただ、確かに美味そうな匂いはする。「そっちはどうだ。順調か?」
「おお、ルシアスの旦那。丁度いい。飯にしようぜ」
「……何だこれは」
戻ってきたルシアスは謎の煮物に眉を顰める。女子三人の救世主を見るような目がいまいち気に入らない。「だーっ! 勝てねえ!」「くっそおいアンドレ呼べアンドレ!」「いいとも。さあ、次々とかかってきたまえ!」
●Predator Summary
深夜のガスティール大工廠。誰もいないはずの工場に火が入った。機械が静かな唸りを上げ、各所から蒸気と煙が排出される。
「ボクは機械化工場での追い込みですね……がんばりますっ」
サブロウタ リキュウイン(CL3000312)は大工廠内の機械化工場にいた。部屋を足元から蒸気が覆っていく。「さぁ、出てこいっ!」
蒸気が人の背丈ほども吹き出した頃、その向こうから何かが現れた。痩せぎすの軀。茶色の体表。鋭く長い爪。黄色く濁った双眸。サブロウタは思わず身構える。
低い笑い声を残し、そいつは煙の中に消えた。−−人間のような、声だった。サブロウタはマキナ=ギアを起動する。
「出ました。皆さん、頼みます」
「りょーかいっ! さぁ、ついにご対面だよ! 楽しみだなぁ〜こっちに来てくれないかなぁ〜?」
クイニィーは第一工場で待機していた。すでに周囲には蒸気が蔓延している。
「−−そこっ!」
クイニィーの超直観が煙の向こうに何かを捉えた。迷わず蒸気カメラを構え、シャッターを切る。フラッシュが焚かれ、煙の向こうの何かが蹌踉めくように動いた。「……イツモト様子ガ違ウナ」
「面白イ。付キ合ッテヤロウ。−−ドンナ遊ビヲ用意シテルノカナ?」
言い残し、そいつは煙の中に消えた。クイニィーはカメラを下ろし、呟く。
「……喋れるんだねぇ」
「……来ましたね」
鍛冶場に待機していたアリアは、煙の中に何かが動いたのを見て気を引き締めた。やがてそいつが煙の向こうから歩み出てくる。
「−−貴方はどこから現れたんですか?」
怪物が足を止めた。笑う。「私ガ現レタノデハナイ。現レタノハ、オ前達ダ」
「貴方は人間をどう思っていますか?」
「感謝シテイルヨ。コノ工場ヲ懸命ニ動カシ、私ニ食料ヲ供給シテクレル−−家畜。豚ダ」
「……敵意が無いなら、攻撃はしません。この工場では多くの人に迷惑になってしまうので、一先ず他所に移れませんか?」
「オ前達ノ迷惑ナド知ッタ事デハナイ。働ケ。オ前ハドウスル? 私ヲ慰メデモシテクレルノカ?」
「よく分かりました。−−人に害を為すなら、貴方を討ちます」
アリアの言葉にスモーカーは笑う。−−笑うだけで、何もしてこなかった。「どうしたんです? 何もしないんですか?」
「樂ハ最後ニ取ッテオコウ。金髪ノ女トリスノ娘モ見セテモラッタガ−−オメデトウ。オ前ガ最モ適任ダ」
笑い、怪物は煙と消えた。アリアは唾を飲み込む。−−負けられない。絶対に。マキナ=ギアを起動する。
「敵は鍛冶場を出ました。私もすぐ行きます」
中央機関室。待ち受けるシノピリカとアダムの前に、煙の中からスモーカーが現れた。
「よく来たのう怪物よ! ワシの蒸気は美味いぞ!」
「ふはははは! その痩せぎすの体では逃げる事しか出来ない様だね! まるで鼠の様じゃないか! あまりにも哀れ!」
鎧装から蒸気を噴出させるシノピリカと、案外サマになっている悪役台詞で挑発するアダム。しかしスモーカーはウウム、と踏みとどまった。
「後ニ予定ガ出来タカラ、手早ク済マセタイノダガ−−オ前達二人ハイカニモ時間ガ掛カリソウダ。ヨカロウ。予定変更ダ。要求ヲ飲モウ。取引トイコウジャナイカ」
「−−取引じゃと?」
「……内容は?」
「ココハ私ニトッテ大事ナ餌場ダ。ココヲ失ウノハ非常ニ痛イ。命ニ関ワル。立退クナラ、相応ノ対価ヲ求メタイ」
「具体的には?」
「女ヲ一人。アノ、鍛冶場ニイタ蒼イ服ノ女ガ良イ」
「……何の為に?」
「説明シヨウカ?」
言って、スモーカーは愉しげに笑い−−その笑いを、風が遮った。鮮血。腹を斬り裂かれて血を噴き上げたスモーカーが呻き、蹌踉めく。
「怪物にくれてやるものなんかありませんよ。何一つね」
『護神の剣』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)が刀の血を払い、振り返る。彼女の方を見たスモーカーを、続いて極低温の魔力の奔流が襲い、吹き飛ばした。
「カスが。金が無いならお前は客じゃねえ。出てけ」
暗がりから真顔のローラが歩み出る。スモーカーがこびり付いた氷を払いながら立ち上がり−−今度は側面からバスタードソードが振り下ろされた。命中。スモーカーは再び地に倒れる。
「……女は敵に回すべきじゃないな」
呟き、ルシアスは大剣を構え直す。スモーカーはふらふらと、しかし小さく笑いながら立ち上がった。
「コレハ、ズルクナイカ? 取引シヨウト言ッテイルダロウ」
「ていうか、まだ立ちますか」
「やーん、カタいのね♡」
「(ローラさん、さっきのは……いや、聞き違いだ。きっと。多分。まさかね)」
「……条件は飲めん。俺達は、てめえを殺しに来たんだよ」
「ソウカネ。−−デハ仕方アルマイ!」
スモーカーが踏み込む。カスカを狙った。「お、私ですか」回避。カスカはスモーカーの爪を半身を開いてかわす。反撃。しかしスモーカーもこれをかわした。カスカはさらにヒートアクセルで攻撃する。「チィ!」スモーカーは避けきれないと判断し、爪でガードして堪えた。身を翻して爪で反撃する。
「させません!」
アリアが飛び込み、剣でスモーカーの爪を払う。「邪魔ダ!」「くっ!」スモーカーの蹴りがアリアを打ち据える。「お待たせ皆! スパルトイ!」クイニィーが放ったスパルトイがスモーカーを襲う。しかしスモーカーは人形兵士を爪で斬り裂き消滅させた。
「We haven’t came to terms!≪交渉決裂じゃな!≫」
「ムゥ!」
SIEGER・IMPACT改二。シノピリカの剛腕がスモーカーを殴り飛ばす。スモーカーは防御して堪え、飛ばされながらも何とか着地した。「いちおー回復ね♡」「ありがとうございます!」ローラがアリアのダメージを癒す。
「着地を狙う……!」
「ソレハ貰エンナ!」
ルシアスの斬撃をスモーカーは半身を開いてかわし、爪で反撃する。命中。「!? ……こっちもそう何発も貰えんな……!」
「ルシアスさん、回復を!」
「助かる!」
追いついて来たサブロウタがルシアスの傷を癒す。
「刻もう、我が魂のビート! 山吹色の掌撃≪サンライト・インパクト≫!」
「グァ−−!」
アダムの掌打がスモーカーを捉える。ガードしたスモーカーの腕が吹き飛び、嫌な音が響いた。脱臼。スモーカーの片腕が死ぬ。「この感じ……完全に入った!」
「発破抜打……勝負!」
「何−−!」
銃声の如き轟音と共に、カスカの抜き撃ちが叩き込まれる。命中。「……なんてね」刀を払い、担ぐ。逆袈裟に斬られたスモーカーが鮮血を噴き上げ、倒れる。
「……樂は、おあずけですね」
倒れたスモーカーに、アリアが歩み寄る。スモーカーが苦しげに首を巡らせ、アリアを見る。「仲間ガ、欲シカッタ」「え?」
「皆死ンデ、住処ノ沼モ汚レテ……ソレデモ、生キタイト思ッタ。気ガツイタラ、コノ『力』ヲ手ニシテイタ」
「やっぱり、沼の鬼だったんだね……スモーカー・フォグレット」
「グールの亜種の、さらに突然変異種か……人間の環境汚染で生まれた……」
「人類の天敵たり得る存在……恐ろしい敵であった」
「公害を食ってくれるだけならば、有り難いお話でしょうが……そうであっても駆逐するしかないのですよ。 文明開化の音と煙はヒトの欲望の結晶。ヒト以外に恩恵を与える義理など無いってことです」
「……」
アリアがしゃがみ込み、スモーカーに手を伸ばす。しかしスモーカーは、拒絶するように首を振った。
「覚エテオケ。私ノ存在ハ神ノ意思ダ。ソウデモナケレバ説明ガツカヌ。オ前達ノヤリ方ヲ、神ハ肯定シテイナイ。イズレ、ソレガ分カル時ガ来ル−−」
スモーカーは事切れた。アリアは逡巡し、やがて立ち上がり、
「……ご忠告は、胸に留めておきます」
敬礼した。
正午過ぎのガスティール大工廠。操業中の工場群には無数の煙突が立ち並び、機械が打ち合う騒音と黒や灰色の煙を周囲に撒き散らしている。
「煙を食べる怪人かぁ! どんなやつだろう? ワクワクしちゃうね! 早速情報収集だ!」
『知りたがりのクイニィー』クイニィー・アルジェント(CL3000178)はそう言って、楽しげに大工廠の敷地へと走り込んだ。「お、さっそく第一工員発見!」その辺に座って弁当を食べていた数人の工員に近寄る。
「……あん? 何だよ嬢ちゃん」
「ねぇねぇ、煙を食べる怪人の噂を聞いたんだけど、何か知らない? 何処で出没目撃が多発してるかとか、いつ頃から目撃され始めたとか。その前後に変わったことがあったとか、なんでもいいから知りたいんだ」
元気よくまくし立てるクイニィーに、工員達は顔を見合わせる。
「結構いろんなとこで出てるらしいな。第一工場とか鍛冶場とかよ」
「出始めたのはつい最近だよ。昔からそんな話があったわけじゃねえ」
「でもな、嬢ちゃん。俺らが知ってるのはそのくらいだぜ?」
「あれ。そーなの?」
驚くクイニィーに工員達は頷く。「この大工廠はシフト制で、朝早くから夜遅くまで操業してる。24時間ってわけじゃねえけどな。だから、怪物を見たって言ってんのは遅番の連中なんだよ。今ここにいる俺達は早番さ。夕方になったらもう帰る。夜中の怪物とはご縁が無いってこった」
「……そっかー……」
「あ、でもよ」
「「?」」
工員の一人が声を上げ、他の工員とクイニィーがそちらを見る。「何だよ」「いや、関係あるか分かんねえけど」「なになに?」
「ここが大工廠になる前−−この近くの沼地には、『フォグレット』がいたんだ」
「ふぉぐれっと?」
訊き返すクイニィーに工員は頷く。「霧に潜み人を食う怪物。グールの亜種って話らしいけどな。この辺に住んでる連中は皆、沼には絶対に近づかねえ。怪談とか御伽噺じゃなくて、本当にいるんだよ。幻想種≪モンスター≫が」
「……」
「それは全く関係無えだろ。嬢ちゃんが聞きてえのは工場の煙を食う怪物だ。沼の人食い鬼は全然違え。お前人の話聞いてんのか」
「……そうかなあ」
え、と工員達が振り返り、クイニィーはふむ、とため息を一つ漏らした。
●Noontide -Libra Slum-
ほぼ同時刻。リブラの裏街・ガスティール工員宿舎。ここにも数人の自由騎士達が、怪物の情報を求めてやって来ていた。
「うーむ、蒸気を喰らう怪物とはのう……」
「街の公害を食べてくれるだけなら別にイイっていうかむしろ助かっちゃうんだけど。この街って居心地は良いけど、埃っぽくて汚れやすいのがイヤなんだよね」
(うー、あの人達疲れるんだよね……)
『ビッグ・ヴィーナス』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)と『裏街の夜の妖精』ローラ・オルグレン(CL3000210)がそんな呟きを漏らす。その傍で『蒼の審問騎士』アリア・セレスティ(CL3000222)は微妙に憂鬱そうだった。
「スモーカー、煙を食う怪物か。幻想種か、それともイブリースか」
「目撃情報があるのならば、それらを時系列に並べて目標の行動パターンや、生息域がわかるだろう。パイプの蒸気で逃げているなら、パイプの繋がった先に巣がありそうでもある」
『清廉なる剛拳』アダム・クランプトン(CL3000185)と『イ・ラプセル自由騎士団』ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)も、それぞれ自分の意見を述べた。
「さて、この前話を聞いた連中はおるかのう? とりあえず今回は化粧やら扮装やら濃い味付けは無しじゃ! やはり騎士≪もののふ≫は素材で勝負よ!」
「ローラもいつも通りでいくよー♡ というわけで! お兄さん達、こんにちはー♡」
ローラが早速、宿舎の前の屋台で昼飯を食っていた住人達に声をかけた。相変わらずガラの悪い住人達が振り返る。「おお、ローラにシノにアリアか。今日は早えな」「おっはー♡」「おっはーじゃ!」「ど、どうも……」
「で、あんたは……こないだ巨人と戦ってたな」
「先日は騒がせてすまない。−−今日も仕事で来たんだ」
「また騒がすって?」
「いや−−教えて欲しいことがあってね」
ローラとシノピリカが顔見知りの住人と挨拶を交わし、アダムは別の住人に声を掛けられる。その傍で、ルシアスもまた別の住人に絡まれていた。
「お前は? 見ない顔だな」
「……『スモーカー』を殺すのに雇われた。情報が欲しい」
「ふん……」
男はルシアスの姿を見る。纏ったボロ布に胸元に光るタグ。男は小さく笑うようなため息を漏らした。「何が聞きたい?」
「最初に怪物を見たのは誰だ?」
「……向こうの卓で食ってるアゼルだ」
「礼を言う」
言って、ルシアスは少し離れた卓へ向かった。「アゼルか?」
「……あ? 何だよ」
「スモーカーについて聞きたい。どんな奴だった?」
その住人−−アゼルは少し考え、言った。「グールだよ。ありゃ」
「グール?」
「聞いたことあるだろ? 屍食鬼さ。爪が長くて鋭かった。人間も怪物も手で判るんだ。ありゃあ土方の手でも芸術家の手でもない。それなりにでかい獲物を、食える大きさに切り刻む為の手だ。俺が殺られなかったのは、生きてる肉だったからだろうよ」
「……ふむ」
アゼルの言葉にルシアスは唸る。少し離れてアダムも住人と話していた。
「怪物は、どんな時に目撃されてるんだ?」
「どんなって、そりゃ煙とか蒸気が出てるとこさ。それぐらいは聞いてんだろ?」
「もう少し詳しく」
「ふむ、そうだな……そういや、煙が出てんのはいいんだが、何で機関が動いてたかは分からねえんだよな。誰かが火を消し忘れたか−−怪物が自分で動かしたんかね?」
「機械を動かせる可能性か……ありがとう。よく分かったよ」
「待てよ。ありがとう、で終わりか? もっと何か無えのかよ」
「……はっきり言おう。お金は無い」
「……ほおおお?」
「持って来てない。ただ、どうしてもというなら何とかしよう。その代わり」
言葉を切り、アダムは卓に肘を突いた。「これで、僕に勝てれば、だ」
「……ふん。面白え」
男が卓に肘を突き、アダムと手を組む。「お前ら来い! 俺らが勝てば騎士様の奢りだ!」男の声に他の連中も集まってくる。
「怪物じゃが、蒸気の『好み』は無いかの? 出現する際の前兆は?」
「そういうのは聞かねえな。どこにでも出てくるし、なんかもう気がついたらそこにいた、って感じらしいぜ」
「そいつって、煙を食べたらどう変化するの? あと、逃げる時はどんな風に?」
「変化するって話は聞かねえが−−そう、煙の中に溶け込むみたいに消えるんだとよ。その後、パイプの中から音がしたって言う奴もいるな」
「ちょっと気になったんですけど、人的、物的な被害は出ていますか?」
「いや。目撃証言だけだ。怪我人は出てねえよ」
シノピリカ達の聞き込みは順調に続く。「お嬢達。俺達もそろそろ飯にしよう。食い物買って来たぜ」補佐に来ていた自由騎士がシノピリカ達にトレイを差し出した。その上にはやたら色の濃い煮物が載っている。「……何これ」ローラが素のトーンで尋ねた。
「煮物だ。俺も食ってみたが、美味いぜ。この味と量でこの価格はいっそ犯罪だ。どうしてもレシピは教えてくれねえけどな」
「「「……」」」
女子三人はまじまじと煮物を見る。たっぷり盛られた濃い煮汁で中身は確認できない。ただ、確かに美味そうな匂いはする。「そっちはどうだ。順調か?」
「おお、ルシアスの旦那。丁度いい。飯にしようぜ」
「……何だこれは」
戻ってきたルシアスは謎の煮物に眉を顰める。女子三人の救世主を見るような目がいまいち気に入らない。「だーっ! 勝てねえ!」「くっそおいアンドレ呼べアンドレ!」「いいとも。さあ、次々とかかってきたまえ!」
●Predator Summary
深夜のガスティール大工廠。誰もいないはずの工場に火が入った。機械が静かな唸りを上げ、各所から蒸気と煙が排出される。
「ボクは機械化工場での追い込みですね……がんばりますっ」
サブロウタ リキュウイン(CL3000312)は大工廠内の機械化工場にいた。部屋を足元から蒸気が覆っていく。「さぁ、出てこいっ!」
蒸気が人の背丈ほども吹き出した頃、その向こうから何かが現れた。痩せぎすの軀。茶色の体表。鋭く長い爪。黄色く濁った双眸。サブロウタは思わず身構える。
低い笑い声を残し、そいつは煙の中に消えた。−−人間のような、声だった。サブロウタはマキナ=ギアを起動する。
「出ました。皆さん、頼みます」
「りょーかいっ! さぁ、ついにご対面だよ! 楽しみだなぁ〜こっちに来てくれないかなぁ〜?」
クイニィーは第一工場で待機していた。すでに周囲には蒸気が蔓延している。
「−−そこっ!」
クイニィーの超直観が煙の向こうに何かを捉えた。迷わず蒸気カメラを構え、シャッターを切る。フラッシュが焚かれ、煙の向こうの何かが蹌踉めくように動いた。「……イツモト様子ガ違ウナ」
「面白イ。付キ合ッテヤロウ。−−ドンナ遊ビヲ用意シテルノカナ?」
言い残し、そいつは煙の中に消えた。クイニィーはカメラを下ろし、呟く。
「……喋れるんだねぇ」
「……来ましたね」
鍛冶場に待機していたアリアは、煙の中に何かが動いたのを見て気を引き締めた。やがてそいつが煙の向こうから歩み出てくる。
「−−貴方はどこから現れたんですか?」
怪物が足を止めた。笑う。「私ガ現レタノデハナイ。現レタノハ、オ前達ダ」
「貴方は人間をどう思っていますか?」
「感謝シテイルヨ。コノ工場ヲ懸命ニ動カシ、私ニ食料ヲ供給シテクレル−−家畜。豚ダ」
「……敵意が無いなら、攻撃はしません。この工場では多くの人に迷惑になってしまうので、一先ず他所に移れませんか?」
「オ前達ノ迷惑ナド知ッタ事デハナイ。働ケ。オ前ハドウスル? 私ヲ慰メデモシテクレルノカ?」
「よく分かりました。−−人に害を為すなら、貴方を討ちます」
アリアの言葉にスモーカーは笑う。−−笑うだけで、何もしてこなかった。「どうしたんです? 何もしないんですか?」
「樂ハ最後ニ取ッテオコウ。金髪ノ女トリスノ娘モ見セテモラッタガ−−オメデトウ。オ前ガ最モ適任ダ」
笑い、怪物は煙と消えた。アリアは唾を飲み込む。−−負けられない。絶対に。マキナ=ギアを起動する。
「敵は鍛冶場を出ました。私もすぐ行きます」
中央機関室。待ち受けるシノピリカとアダムの前に、煙の中からスモーカーが現れた。
「よく来たのう怪物よ! ワシの蒸気は美味いぞ!」
「ふはははは! その痩せぎすの体では逃げる事しか出来ない様だね! まるで鼠の様じゃないか! あまりにも哀れ!」
鎧装から蒸気を噴出させるシノピリカと、案外サマになっている悪役台詞で挑発するアダム。しかしスモーカーはウウム、と踏みとどまった。
「後ニ予定ガ出来タカラ、手早ク済マセタイノダガ−−オ前達二人ハイカニモ時間ガ掛カリソウダ。ヨカロウ。予定変更ダ。要求ヲ飲モウ。取引トイコウジャナイカ」
「−−取引じゃと?」
「……内容は?」
「ココハ私ニトッテ大事ナ餌場ダ。ココヲ失ウノハ非常ニ痛イ。命ニ関ワル。立退クナラ、相応ノ対価ヲ求メタイ」
「具体的には?」
「女ヲ一人。アノ、鍛冶場ニイタ蒼イ服ノ女ガ良イ」
「……何の為に?」
「説明シヨウカ?」
言って、スモーカーは愉しげに笑い−−その笑いを、風が遮った。鮮血。腹を斬り裂かれて血を噴き上げたスモーカーが呻き、蹌踉めく。
「怪物にくれてやるものなんかありませんよ。何一つね」
『護神の剣』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)が刀の血を払い、振り返る。彼女の方を見たスモーカーを、続いて極低温の魔力の奔流が襲い、吹き飛ばした。
「カスが。金が無いならお前は客じゃねえ。出てけ」
暗がりから真顔のローラが歩み出る。スモーカーがこびり付いた氷を払いながら立ち上がり−−今度は側面からバスタードソードが振り下ろされた。命中。スモーカーは再び地に倒れる。
「……女は敵に回すべきじゃないな」
呟き、ルシアスは大剣を構え直す。スモーカーはふらふらと、しかし小さく笑いながら立ち上がった。
「コレハ、ズルクナイカ? 取引シヨウト言ッテイルダロウ」
「ていうか、まだ立ちますか」
「やーん、カタいのね♡」
「(ローラさん、さっきのは……いや、聞き違いだ。きっと。多分。まさかね)」
「……条件は飲めん。俺達は、てめえを殺しに来たんだよ」
「ソウカネ。−−デハ仕方アルマイ!」
スモーカーが踏み込む。カスカを狙った。「お、私ですか」回避。カスカはスモーカーの爪を半身を開いてかわす。反撃。しかしスモーカーもこれをかわした。カスカはさらにヒートアクセルで攻撃する。「チィ!」スモーカーは避けきれないと判断し、爪でガードして堪えた。身を翻して爪で反撃する。
「させません!」
アリアが飛び込み、剣でスモーカーの爪を払う。「邪魔ダ!」「くっ!」スモーカーの蹴りがアリアを打ち据える。「お待たせ皆! スパルトイ!」クイニィーが放ったスパルトイがスモーカーを襲う。しかしスモーカーは人形兵士を爪で斬り裂き消滅させた。
「We haven’t came to terms!≪交渉決裂じゃな!≫」
「ムゥ!」
SIEGER・IMPACT改二。シノピリカの剛腕がスモーカーを殴り飛ばす。スモーカーは防御して堪え、飛ばされながらも何とか着地した。「いちおー回復ね♡」「ありがとうございます!」ローラがアリアのダメージを癒す。
「着地を狙う……!」
「ソレハ貰エンナ!」
ルシアスの斬撃をスモーカーは半身を開いてかわし、爪で反撃する。命中。「!? ……こっちもそう何発も貰えんな……!」
「ルシアスさん、回復を!」
「助かる!」
追いついて来たサブロウタがルシアスの傷を癒す。
「刻もう、我が魂のビート! 山吹色の掌撃≪サンライト・インパクト≫!」
「グァ−−!」
アダムの掌打がスモーカーを捉える。ガードしたスモーカーの腕が吹き飛び、嫌な音が響いた。脱臼。スモーカーの片腕が死ぬ。「この感じ……完全に入った!」
「発破抜打……勝負!」
「何−−!」
銃声の如き轟音と共に、カスカの抜き撃ちが叩き込まれる。命中。「……なんてね」刀を払い、担ぐ。逆袈裟に斬られたスモーカーが鮮血を噴き上げ、倒れる。
「……樂は、おあずけですね」
倒れたスモーカーに、アリアが歩み寄る。スモーカーが苦しげに首を巡らせ、アリアを見る。「仲間ガ、欲シカッタ」「え?」
「皆死ンデ、住処ノ沼モ汚レテ……ソレデモ、生キタイト思ッタ。気ガツイタラ、コノ『力』ヲ手ニシテイタ」
「やっぱり、沼の鬼だったんだね……スモーカー・フォグレット」
「グールの亜種の、さらに突然変異種か……人間の環境汚染で生まれた……」
「人類の天敵たり得る存在……恐ろしい敵であった」
「公害を食ってくれるだけならば、有り難いお話でしょうが……そうであっても駆逐するしかないのですよ。 文明開化の音と煙はヒトの欲望の結晶。ヒト以外に恩恵を与える義理など無いってことです」
「……」
アリアがしゃがみ込み、スモーカーに手を伸ばす。しかしスモーカーは、拒絶するように首を振った。
「覚エテオケ。私ノ存在ハ神ノ意思ダ。ソウデモナケレバ説明ガツカヌ。オ前達ノヤリ方ヲ、神ハ肯定シテイナイ。イズレ、ソレガ分カル時ガ来ル−−」
スモーカーは事切れた。アリアは逡巡し、やがて立ち上がり、
「……ご忠告は、胸に留めておきます」
敬礼した。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
『剛拳一閃』
取得者: シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『秘されし氷の魔女』
取得者: ローラ・オルグレン(CL3000210)
『逆打ちのリス探偵』
取得者: クイニィー・アルジェント(CL3000178)
『山吹色の拳騎士』
取得者: アダム・クランプトン(CL3000185)
『黒の重剣士』
取得者: ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)
『≪母≫の因子』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『一刃にて天つ国迄斬り往くは』
取得者: カスカ・セイリュウジ(CL3000019)
取得者: シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『秘されし氷の魔女』
取得者: ローラ・オルグレン(CL3000210)
『逆打ちのリス探偵』
取得者: クイニィー・アルジェント(CL3000178)
『山吹色の拳騎士』
取得者: アダム・クランプトン(CL3000185)
『黒の重剣士』
取得者: ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)
『≪母≫の因子』
取得者: アリア・セレスティ(CL3000222)
『一刃にて天つ国迄斬り往くは』
取得者: カスカ・セイリュウジ(CL3000019)
特殊成果
『ネームド・ゲスト・タグ』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
†あとがき†
皆様お疲れ様でした並びにご参加ありがとうございました。
楽しすぎてちょっと悪ノリが過ぎたかもしれませんが、私はだいたいこんな感じです。何卒ご容赦ください。
MVPはアリア・セレスティ様。最後にスモーカーがぽろぽろ喋り出したのは、何にせよ彼女の真摯な姿勢があったからです。そうでなければ、この依頼はもう少し苦い後味になったかもしれません。
重ねまして、皆様お疲れありがとうございました。
楽しすぎてちょっと悪ノリが過ぎたかもしれませんが、私はだいたいこんな感じです。何卒ご容赦ください。
MVPはアリア・セレスティ様。最後にスモーカーがぽろぽろ喋り出したのは、何にせよ彼女の真摯な姿勢があったからです。そうでなければ、この依頼はもう少し苦い後味になったかもしれません。
重ねまして、皆様お疲れありがとうございました。
FL送付済