MagiaSteam
炎の魔女




 彼女の父は、学者だった。偉大な、と言っていいかどうかは分からないが、研究分野は魔術や錬金術など多岐に及んでいた。−−しかし、本当は違ったのかもしれない。幼い彼女は何となくそう思っていた。父が見ようとしていたのはもっと違う世界−−もっと違う未来なのだと。
 父は研究に没頭し、やがて狂った。−−と、他人には見えていたらしい。父の研究は人の理解を得られなかった。やがて父は街を去り、山深い邸でひっそりと暮らし始めた。彼女は母と共に、街に残った。
 長い時が経ち、彼女は父の邸を訪れた。老齢の父の安否確認の為だ。−−そして、父の屍を発見した。誰にも気づかれず、ドラマにもならないほどあっさりと、父は死んだ。
 父を弔った後、彼女は邸の新しい主人となった。邸に籠って父が遺した大量の蔵書を読み漁り、研究設備を弄り回すようになった。
 父に続いて娘まで−−と、他人には見えていたのだろう。
 彼女が何を思うのか、確かめる勇気のあるものはいない−−


「アデレードの西にあるメリオール山に最近、ゴーレムが出るんですって」
『あたしにお任せ』バーバラ・キュプカー(nCL3000007)は、そんな話を自由騎士達に語った。「ゴーレムですか?」
「ただのゴーレムじゃないわ。ブラストゴーレム。燃えてるのよ。結構凶暴で、麓の村の樵とか漁師とかも困ってるらしいわ。危ないから退治してあげてくれない?」
「……まあ、凶暴な幻想種なら」
「ありがと。−−あ、そうそう、いっこ注意点があるわ」
 バーバラがそう付け加えた。この適当おば−−お姉さんには珍しい。何か、と自由騎士の一人が尋ねた。
「なんで貴方達にこの話を振るのかってこと。実は貴方達の前に、村人が傭兵を雇ったのよ。腕自慢のね。実際結構な腕前で、ゴーレムの一体を倒す寸前までいったらしいわ。−−そしたらね」
「……そしたら?」
「爆発したんですって」
「はい?」
 思わず訊き返した自由騎士に、バーバラは繰り返した。「爆発したんですって。大爆発。超危険でしょ? 退治してあげて?」
「……嫌です」
「そーんなこと言わないで。お腹あたりが明らかに炎が渦巻いててヤバいらしいわ。トドメさせそうになったら気をつけてね。油・断・禁・物♡」
 バーバラのウインクに、自由騎士達はため息を吐いた。「−−ところで、どうして急にそんなところにゴーレムが?」
「……急に、ってわけじゃないわ」
「……?」
「実はね……」
 少しトーンを落とし−−しかしどこか愉しげに、バーバラは『その話』を語り始めた−−。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
鳥海きりう
■成功条件
1.敵の全滅
 皆様こんにちは。鳥海きりうです。よろしくお願いします。
 メリオール山に突如現れたブラストゴーレムとの戦闘シナリオです。敵の全滅が成功条件となります。

 敵キャラクターのご紹介です。
・ブラストゴーレム ×10
 強固な石と燃え盛る炎で形成されたゴーレム。全高4m前後。高い攻撃力と防御力、そして自爆装置を備える。
・狂気の娘、シモーヌ
 メリオール山の奥にある邸に棲む女。

 ゴーレムに関してはだいたいバーバラの言った通りです。周囲は山林となっており、傾斜と障害物が多くなります。なお、山に入る時間は昼でも夜でも好きな方で構いません。どっちにしろ敵は絶賛活動中です。

 出発前にシモーヌの噂をバーバラから聞いたという体で構いません。よってゴーレムさえ始末すれば、邸には問題無く辿り着けるものとします。
 シモーヌの処遇は皆様にお任せします。戦うことを選んだ場合、シモーヌは主に攻撃魔法を得意とします。−−え? なんかどっかで見た事がある? 今回も同じとは限りませんよ?

 簡単ですが、説明は以上です。
 皆様のご参加をお待ちしております。
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
14モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
8/8
公開日
2018年11月06日

†メイン参加者 8人†




「ゴーレムって殴っても熱くないかな……お腹の辺りに炎が渦巻いたら自爆の前兆? らしいから、まぁ、わかるでしょう」
 日中のメリオール山。『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)はそんなことを言いながら歩いていた。油断もしていないが、過度に慎重でもない。いつも通りである。
「炎の魔女、狂気の娘、か。……独りで生きるには、辛かろうにね」
 ウダ・グラ(CL3000379)も歩きながらそう呟いた。フードの向こうに隠れた表情は見えないが、その言葉には気遣わしげな響きがある。
「そうね。爆発する炎のゴーレムに引きこもりの女性、かぁ……関係があるなら早急に何とかしなきゃね」
『梟の帽子屋』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)も思案しながらそう言った。バーバラから聞いた噂では、ゴーレムとその女の関係性までは分からなかった。後は現地で調査するしかない。
「ゴーレムですか……パワーはおありでしょうけれど、足元からぶっ倒せば問題ないですよね? 私は遠くからのんびりやらせてもらいますよ」
『見返り美人?』ディルク・フォーゲル(CL3000381)はそう言った。すでに作戦は出来ているらしい。微妙に表現が不穏当なのはおそらく地なのだろう。歩く姿は至って冷静である。
「おーっほっほっほ!! ゴーレムとの戦闘などたぶん他愛ないですわー! とっとと片付けて、噂のシモーヌとやらを訪問しますわよ!」
 たぶん。『高潔たれ騎士乙女』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)はいっそ清々しいほどのお嬢様笑いを響かせながらそう言った。彼女もやはりゴーレム自体よりはシモーヌの噂の方が気になっているらしい。
「ヒルダちゃん。もう爆発オチも、私諸共爆破も勘弁だからね」
「もう爆発オチは散々やったから今回はさすがに無いわよ、本当よ……あっはっは」
 なんか笑い方が嘘くさいのは気のせいだろうか。ジト目で見ながら言った『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)に、『ヘヴィガンナー』ヒルダ・アークライト(CL3000279)はなんか乾いた笑いを返した。
「僕は……彼女……シモーヌと、彼女の父が遺した物……正直に言うと、その研究に興味があるかな……」
『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)はぽつぽつとそう語った。彼女の父が何を見ようとしていたのか。彼はそれに興味があった。この世界の事、そして、今のこの世界以外の違う世界。
(……そして、シモーヌ。君自身にも)
 マグノリアが何を目指そうとしているのか、そして、今回の事件はその役に立つのか−−今は、まだ分からない。


「だいたい見てきましたよ。ゴーレムはこの先をうろうろ巡回してます。邸を中心に広く周回してますね。後は木が多いのと、基本登り坂なので注意してください。デカいのがスピードに乗ると面倒ですよ」
 斥候に出ていた自由騎士が戻ってきた。「一番近いのは?」ヒルダが尋ね、彼女が指差す。木々の間に歩くゴーレムの姿が見えた。こちらにはまだ気づいていない。
「圧巻ね……でも、単体なら各個撃破で」
 アリアが走る。ヒートアクセル。ゴーレムの股下を潜りながら斬りつけた。反撃。驚きながらも振り下ろされたゴーレムの拳をアリアは難なくかわす。煤色のマフラーがその動きを追って翻る。(成程、見るからに腹部中央に炎が渦巻いてる。下手に触るのは危険そう。頭に描かれた文字が制御の中枢ってケースがあったと思うけど、このゴーレムはどうかしら……?)ゴーレムを観察する。確かにあった。ゴーレムの左胸辺りに、怪しく光る古代文字が描かれている。「あそこね」
「周囲に延焼していないって事は、ゴーレムの炎は特殊なのかしら……?」
 呟きながら、続いてエルシーが仕掛けた。スカーレット・ナックル。ゴーレムの背中を打ち据え、ゴーレムは大きくバランスを崩すが、身を翻して裏拳で反撃した。
「防御なんて無理よね。ガードごと吹っ飛ばされるのがオチよ」
 回避。エルシーはサイドロールでかわし、近くの木陰に隠れる。「こんなでかいの相手に真正面からやってられないわ」木から木へカバーしつつ斜面の上を目指す。
「いいわね……もらったわ!」
 上空。滞空したアンネリーザがスナイパーライフルを構えた。ヘッドショット。命中。頭を吹き飛ばされたゴーレムが仰向けに倒れる。しかし同時にゴーレムの腹の炎が膨れ上がり、不穏な鳴動を始めた。「来る……!? 二人とも、逃げて!」
「大丈夫……」
 アイスコフィン。マグノリアの放った氷塊が炎を押し潰す。鎮火。炎が消え、ゴーレムは焦げた石塊となって動かなくなった。
「次は……あそこかな」
 サーモグラフィ。ウダの熱量視覚が次のゴーレムを捉えた。アイスコフィン。氷塊がゴーレムに撃ち込まれ、その巨体を大きく傾がせる。
「いきますか……スパルトイ」
 続いてディルクがスパルトイを放つ。人形兵士が剣でゴーレムに斬りかかった。ゴーレムは斬られながらも反撃し、人形兵を破壊する。
「いきますわよ! 聳え立て、我が麗しの玻璃の城! ですわ!」
 玻璃の城≪クリスタル・キャッスル≫。地面から連続して突き出した水晶の刃がゴーレムを突き刺し、斬り刻む。爆発。水晶の城の頂上でゴーレムが爆散し、割れた水晶の破片が降り注ぐ。
 二体が撃破され、他のゴーレムが異変に気付いた。斜面の上、左右から四体ずつ向かってくる。それぞれアリアとエルシーを取り囲んだ。
「この感じ……ぎりぎりまで引き付ければ……!」
「ギャンブラーね。私は普通に手堅くいくわ!」
 アリアは敢えて回避を捨てて敵を待った。二発を剣でガードしつつ受け、同時に来た残りの二体とすれ違いざまに三体目をヒートアクセルで斬りつける。誤射。後の二体の攻撃は勢い余って前の二体に命中した。ゴーレムの拳が同じくゴーレムの巨体を打ち、轟音を響かせる。
 エルシーは一体目の攻撃をやはりサイドロールでかわし、反撃の拳を撃ち込むが二体目がそこへ殴り込む。被弾。反撃。さらに襲いかかった残り二体の攻撃を連続スウェイでかわし、「そろそろいいかな!」鉄山靠。固まっていたゴーレム達が吹き飛び、斜面を転がる。
「それじゃ……実際にやってみようかな」
 アリアは転針し、自分に正面を向けているゴーレムを狙った。左胸の古代文字を狙い、剣を突き立てる。硝子が割れるような甲高い音がして、ゴーレムの身体が激しく痙攣した。炎が膨れ、鳴動する。「アリア!」「−−!」爆発。アリアは吹き飛ばされて斜面を転がり、木にぶつかって止まる。「あ−−結構、まずいかも」ゴーレムの拳二発と爆発。直撃はしないが、看過できる傷でもない。爆発には周囲のゴーレムも巻き込まれたが、もとが炎のゴーレムだからか、さほど堪えた風ではなかった。
「さて、定石通り高所は確保したけど……」
 ある程度距離も取れたエルシーは戦況を観察する。「与えたダメージはどっちも同じくらいだから……アリアの援護に行きましょうか」アリアに近い方の敵集団を狙い、再び鉄山靠を放つ。命中。巻き込まれた敵がやはり斜面を転がり落ちた。「スカーレット・ナックルは、15発の激痛のうちに考えるゆ−−やめた。灼けた石なんか15発も殴ってたら疲れるものね」
「数を減らすなら、集中攻撃でしょうね……!」
 アンネリーザが再びライフルで銃撃する。命中。ゴーレムが爆発の兆候を見せた。「マグノリア、お願い!」「うん」アイスコフィン。ゴーレムは寸前で鎮火され、機能を停止する。四体目。
「近い敵から潰していこうか」
 ウダが転がってきたゴーレムにアイスコフィンを放つ。氷弾がゴーレムの腕を破砕した。ゴーレムは呻きながらもまだ起き上がる。
「終わりですね」
 ディルクの放ったスパルトイがとどめを刺した。倒れたゴーレムの腹部が鳴動する。サーモグラフィ。「来る……! 皆さん、離れて!」ディルクの警告で周囲の味方が退避し、ゴーレムが爆発した。五体撃破。
「アリア、しっかりなさい!」
「うん、ありがとう!」
 ジュリエットがメセグリンでアリアを回復する。
「こっちの方が多く巻き込める……アリア、うまくやりなさいね!」
 ヒルダはウダ達に近い方の三体を狙った。バレッジファイヤ。直撃。二体のゴーレムが苦悶の声を上げ、爆発する。すでに退避は済んでいたので味方の被害は無い。残り三体。
 敵が動く。ゴーレムの二体がウダに向かった。「おっと……これは」ウダが身構え、ゴーレムの拳が振り下ろされる。一発はかわし、一発は食らった。「っ……結構痛いね……けど」
「僕を狙ったのは正解だよ、いろんな意味でね……!」
 反撃。アイスコフィン。零距離で撃ち込まれた氷弾がゴーレムに風穴を開け、打ち倒す。「もともと低刺激な生き方してたけど……ふふ、どうやら賑やかなのは、嫌いじゃないみたいだ」
 残る一体はディルクに向かった。攻撃。命中。ゴーレムの拳がディルクをなぎ倒す。「ぐあっ……!」
「くっ……なめるな!」
 深手を負いながらもディルクは反撃する。スパルトイ。命中。人形兵がゴーレムを斬り倒し、倒れたゴーレムから炎が噴き上がる。爆発。「ちぃっ……!」ディルクはほぼ同時に後方へ跳んだ。爆風に煽られ、地面を転がる。
「ディルク! 大丈夫ですの!?」
「生きてるかい……?」
 近くにいたジュリエットとマグノリアが近寄ってくる。
「ああ……いや、大丈夫です。ちょっとひやっとしましたけど、ね」
 身体を起こし、ディルクはそう言って声だけで笑った。


 ゴーレムの群れを降した自由騎士達は、バーバラから聞いた噂に従って山奥へ進み、遂にその邸を発見した。瀟洒な作りだが、かなり古い。壁や天井には色褪せ劣化している部分も少なくなかった。
「ごめんくださーい。お邪魔しますね」
 エルシーがノックし、声をかけて玄関を開けた。自由騎士達はエントランスホールに入る。ホールは広いが照明が焚かれておらず、昼なお薄暗かった。「こんにちは! シモーヌさん、居ますか? 私達は王国自由騎士です!」アンネリーザも声を上げる。
「−−何? 騒々しいわね」
 声は上から聞こえた。ローブを着た女が階段をゆっくりと降りてくる。
「どうも……ゴーレムが山にでてきたことから、キミを心配してここに来た次第だ。ひょっとしたら空腹で倒れているのかとも思ったんだが……」
 言って、ウダが持参した弁当を掲げる。女−−シモーヌは笑う。
「心配、ね−−はっきり言ったら? ゴーレムを造ったのは私だと思ってるんでしょう?」
「いや。薬業を担うものとしては、あのようなゴーレムを作れる人間が字義通り狂ったとは思えない。きっと、理由があったのだろうと思ったんだけど」
「何かお心当たりはありますか? それについて困った事とか。ここに篭もって何か研究をされていらっしゃるんですよね、どんな研究を?」
 アンネリーザの問いに、シモーヌは答える。「父の研究をもとに、私が開発した新しい兵器よ。父は爆発物とかを研究してたんだけど、それが自分の意思で敵に向かって歩いたら便利でしょう? まだ試運転中だったんだけど、見事に全部壊してくれたわね」
 シモーヌの言葉にエルシーが返した。「近くの住民に被害が出たから討伐したの。貴女に敵意はないわ」
「何者かに狙われてゴーレムで身を守っていたのですか? 何かお力になれる事があれば、ご協力いたしますよ?」
 ディルクの言葉にシモーヌは小さくふむ、と呟く。
「実を言うと、あのゴーレムは未完成でね。−−部品が、足りてないの」
「……何の部品が?」
「動力源になるエレメンタルストーン。前に作ってた分が無くなって、新しく作るには材料が足りないの。それがあれば主魔導力は全て攻撃に回して駆動系はエレメンタルストーンで賄えるから、ゴーレムはさらに強力になるわ」
「さて……宝石ならそこそこ詳しいつもりですが、エレメンタルストーンとは……」
「シモーヌ。単刀直入に申しますけれど、これ以上ゴーレムを野放しにしないでいただきたいのですわ。凶暴なゴーレムを野放しにして、近隣住民を危険にさらすことだけはやめていただきたいんですの。難しい提案ではないと思うのですけれど、いかがかしら」
 ジュリエットの言葉に、シモーヌは小さく頷く。「近隣住民はどうでもいいんだけど、私の頼みを聞いてくれたら考慮するわ」
「むむ。……まあ後で話しましょう。ちなみに、いったい何が目的でゴーレムを作り出しているのかしら。せめて、もっと温和で安全なゴーレムにすることはできませんの?」
「できるわよ。時間と材料さえあれば、研究者に不可能は無いわ。−−でも、まずはエレメンタルストーンが先よ。あれが無いと何をするにしても動作が安定しないのよね」
(……あれ、アリア、話さないの?)
(うん。私が何か言わなくても、普通に話が通じそうだもの。ヒルダちゃんは?)
(あー、そうね……じゃあ)
 何か拍子抜けしつつ、ヒルダが口を開く。「ええと、シモーヌ」「何?」
「話を整理すると、ゴーレムが凶暴なのは兵器だからで、でもそれは改良できるのね? で、そのためにはエレメンタルストーンが欲しいと」
「そう」
「じゃあ、まともなゴーレムが作れる確証が取れるまで新しいのは作らないで。無益な怪我人を出すのは貴女も本意じゃないでしょ?」
「……わかった。我慢するわ」
「我慢?」
「ほんとはもっと作りたいの。今すぐにでも、二十体でも三十体でも。でも、貴女がそう言うなら我慢するわ。私の欲しいものを取ってきてくれるならね」
「早く持って来いってことね。……そう言われてもねぇ」
「探すしかないね……シモーヌ、それはどこにある? 何を持ってくればいいの……?」
 マグノリアが言い、シモーヌが振り向く。−−そして、目を丸くした。
「ちょっと、貴方」
「何……?」
「それ」
「……?」
 シモーヌが指差し、マグノリアはそれを辿る。彼女はマグノリアの持ち物の一つを指差していた。残り火。マグノリアはそれを手に取る。暖かさが普段より強く、微かに鳴動していた。
「……まさか……これが、そうなのかい……?」
「貸して。すぐに終わるわ」
「……どうぞ」
 マグノリアから残り火を受け取り、シモーヌは邸の奥へ消えた。−−そして、しばらくして戻ってきた。笑顔で。
「ありがとう。問題は解決したわ」
 言って、シモーヌはマグノリアに残り火を返す。「解決したんですか?」アリアが尋ね、シモーヌは頷く。
「ええ。これで完全に制御できるゴーレムが造れるわ。まあそれも誰かさん達のおかげで数が揃うのはかなり先になるけどね。きっと役に立つはずよ。今日はどうもありがとう」
「……まあ、どんな研究も、いつどんな形で役に立つかわからないし。無駄な事なんてないわよね」
 エルシーの言葉に、シモーヌはまた頷く。「いいこと言うわね。父が聞いたら喜ぶわ。完成したら、きっとまた呼ぶわね」
「……シモーヌ」
 マグノリアが呼びかける。「何?」
「最後に、一つだけ教えて。−−君の父さんは、どんな世界を見ていたの?」
 マグノリアの問いに、シモーヌはふと笑みを消し、呟くように答えた。
「魔法でも、錬金術でもないもの−−最初は科学だと思ってた。でも違うのかもしれない。……私にも、まだ分からないわ」

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

特殊成果
『シモーヌの護符』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員

†あとがき†

皆様お疲れ様でしたならびにご参加ありがとうございました。

 MVPはエルシー・スカーレット様。堂に入った戦闘もさることながら、シモーヌへの言葉も秘めた優しさが感じられました。

 改めまして、皆様お疲れありがとうございました。
FL送付済