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<<豊穣祭WBR>>かっこつけ用大麦エスプレッソ!




「まずは論より証拠。召し上がって下さいな」
 『発明家』佐クラ・クラン・ヒラガ(nCL3000008)に勧められるまま、デミタスカップに満たされたドロリと粘りのある真っ黒い液体をすすった。
 香ばしさとぽくぽくした甘味。まろやかな苦みとコク。ごくごくほのかに酸味。
 香りが鼻に抜けるとき、これは麦なのだとわかる。
「牛乳入れはります? お砂糖もたっぷりいれてもおつですの」 
 誘われるまま、牛乳に砂糖を入れたのを飲みこむと、もう、ほっこり。としか言えない。温かな丸いものが、ホカホカと胃の腑に流れていくのだ。
「背伸びしたい大人になりかけの皆さん用に用意しました麦湯の上位互換。名付けて『大麦エスプレッソ』ですわ。コーヒー豆使ってませんけど」
 イ・ラプセルにおいて成人とは、豊饒祭でエールを出してもらえるようになることである。
 炒った麦から煮出した麦湯では格好がつかなくなったハイティーンが毎年エール飲ませろと詰め寄り、来年来やがれと押し問答するのは豊穣祭の風物詩。
 割とゆるゆるのイ・ラプセルの人々も、エールは大人の飲み物だというのだけはがっちり守る。そういうお国柄なのだ。子供が酔っぱらってるの、かっこ悪い。
「このごろ流行りの蒸気抽出コーヒーを知ってはります? 濃くてとろーっとしたコーヒーができる奴ですわ。エスプレッソ言いますの。それで、この機械で麦湯の麦淹れたらどうなるやろってやってみたら――」
 商人って何でもやるんだね。
「これがまた、結構なものが出来ました。ほんとの子供には勧められへんけど、大人の階段上りかけの登竜門にはええんじゃないかと思いましたの。夜眠れなくなることもありませんし」
 途中でやっぱり苦いってなったら、牛乳で割ればよろし。と、ふわふわさんが言うとなんか和む。かわいい。カップは両手で持ってほしい。
「戦にでてるのに子ども扱いとはどういうこっちゃっていうのも一理あります。需要があるなら供給するのが商売人です。お祭り期間中は無料提供ですけどな。おふるまいです」
 愛飲者を増やしてから商売するんだろ。知ってる。
 で。それと自由騎士にどんな関係があるのかなー。
「最新鋭の蒸気抽出機械を用意しました。まだ動作不安定ですよって、とっさに修理したり、高温の蒸気噴き出しても大事にならない頑丈な方言うたら、自由騎士はんやろってことで」
 このピンクいウサギさん、なんか大麦エスプレッソ並みに黒いこと言ってるぞ。
「それなりに用意はしましたけどな? 麦煎り追加―ってなったらさらに煎らんといけませんの。これが弱火でじっくり焦げ付かんようにずっと鍋ふらなあかんからやっぱり力自慢の男衆の腕の見せ所ですやろ? 後、飲んだこの様子見て砂糖や牛乳入りを勧める方もほしいし。そういう観察眼をお持ちの方、自由騎士さんにいはりますやろ?」
 自由騎士団は人材の宝庫です。
「お祭りに貢献するのもお国のためですわ。あんじょうよろしゅう」


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
日常α
担当ST
田奈アガサ
■成功条件
1.大麦エスプレッソを提供する。
2.豊穣採を楽しむ。
 田奈です。

 手指真っ黒にしながら麦を煎ったり、いつボンと言うかわからない蒸気機械の機嫌を取ったり、噴き出す蒸気におびえつつ大麦エスプレッソ淹れたり、背伸びしすぎた人の方をポンと叩いて「ミルクと砂糖はどうだい?」とお勧めしたりするお仕事です。
 サポート参加さんは、飲みに来ればいいんじゃないかな!
 拾えるネタは拾いますので、楽しいお祭りの裏方さんを楽しんでください。

*大麦エスプレッソ
 すごく黒くてドロッとしている。普通はデミタスカップで出てくるよ。苦くておいしい。濃いの飲んでも眠れなくなったりしないから禁止される要素がない。
 蒸気機械の発達で麦湯から進化したよ!
 味は、エスプレッソコーヒーの後味が麦茶だと思って下さい。

*淹れ方は事前に特訓されます。不慮の事故が起きなければ安心。
 メンテ用機械のマニュアルはもらえます。手書きのやつ。改善の余地はあります。

場所:広場の特設会場。
 カウンター式の臨時店舗。紙コップでの提供になります。無料。
 実際、初めて飲む人や子供には普通に苦いので、牛乳瓶と砂糖持ってうろうろしてフォローするお仕事もあります。観察眼と敏捷な動きが大事ですね。テーマパークのキャストさんみたいな感じです。
 お衣装は佐クラさんが用意してくれますので、相談して決めてください。バラバラでも大丈夫です。

*作業:麦煎り
 巨大なフライパンいっぱいの麦をいい感じに焦げるまでじっくり煎るお仕事です。
 10キロダンベルを片手で30分休みなく振るくらいの運動強度。
 炭火焙煎なので遠赤外線でじっくり熱いです。
 熱と重みに耐えるお仕事です。

 どんなお仕事するかは相談してくださいね。足りないところは佐クラさんが手配しますので、自分の心の思うままに。
状態
完了
報酬マテリア
2個  1個  1個  1個
11モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
5日
参加人数
8/8
公開日
2018年11月14日

†メイン参加者 8人†




 お祭り当日、早朝。
「人にお勧めするのであれば、わたくし自身がその味を知らねばなりませんわ」
『ライバルは女海賊』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)は、大変建設的かつ合理的なのだ。ただ、その前に三呼吸分の高笑いが付くだけで。仕様なので蒸気エンジンの慣らし運転だと思ってください。
 ごもっとも。ということで、佐クラさん関係の食堂のカウンターをお借りして試飲会です。
 何が何だかわからないものを作るのと、どういうものになるのが正解かわかっているのでは、豆煎りの加減にも影響するよね。生煎り良くない。おいしくない。
「これはすごい。よく使い込まれている。これまでも大切につかわれていたんだね」
『道化の機械工』アルビノ・ストレージ(CL3000095)が高圧蒸気式大麦麦汁抽出装置――平たく言えばエスプレッソマシンの手書きマニュアルに目を通しながら、あちこち触っている。
 コーヒー豆を使ったエスプレッソマシンの歴史も始まったばかりで機械ごとの出来不出来の差が激しい。だが、この機械はなかなかいい機械。ただし、急ごしらえのカートリッジと元の機械のなじみがいまいち。
「ふむ、確かにこれは改善の余地があるね――おやおや、ちょっとご機嫌が悪いみたいだね」
 思ったより、動作が不安定。
「機械が調子が悪くなったり、壊れそうになったらすぐに修理に取り掛かるよ」
 機械の腕による疲れ知らずの豆煎り要員として参戦の予定が、マシンにつきっきりになりそうだ。
「あらあらまぁまぁ! 麦のエスプレッソですかぁ! 流石佐クラさん、目の付け所が違いますねぇ〜」
『翠氷の魔女』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)は、ビジネスチャンスに目がない。
「佐クラ嬢も面白い事考えるもんだ」
『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は、佐クラにいいとこ見せたい。渾身の決め顔にイケメンパウダーが散っている。
 カップをそれぞれ手に取ると口に含んだ。
「と、とっても濃厚で、コクがありますわね……!!」
 ジュリエット、涙目。
「そうですねぇ」
 シェリルの首肯。
 ごくごく飲んだ『飢えた白狼』リンネ・スズカ(CL3000361)、顔の表情は変わらないが真っ白いおしっぽがしなしな~と下を向いてしまった。
「苦いですね。ミルクと砂糖をください」
「わたしには少々苦いかな。砂糖とミルクをもらえるかい?」
 アルビノも手を上げる。
「あ、そ、そうですわね。次はお砂糖とミルクを入れて試してみますわ」
 ジュリエット、スプーンで砂糖ダバ。行きがかり上リンネとアルビノのカップにもダバ。
「もっと。もっと。もう少し。はい、その辺で」
 行きがかり上、ジュリエット更にダバダバ。
 リンネは四倍量になった麦茶牛乳をぐびーっと飲み干した。表情は変わらない。おしっぽはフリフリさんだが。
「これなら美味しいです。私はたっぷりミルクと砂糖を入れた方が好きです」
「んっ……! これは後を引く美味しさですわね!!! 煎られた麦の香ばしさがミルクとお砂糖と絡み合って……素晴らしいですわ!」
「うちは、ストレートはちょっと苦かったからミルク入れたらちょうどよかったかな。砂糖まで入れるとちょっと甘すぎる感じがしたわ」
『イ・ラプセル自由騎士団』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)は、カップにちょっとづつ分けて飲み比べしている。
 一気に表情が明るくなった一同に頷きつつ、シェリルがひと。と、ダバダバ入れたリンネとジュリエットの持つカップに指をあてる。
「ふむ、折角温かい飲み物なのに、ミルクを入れてぬるくしてしまうのは勿体ない気がしますぅ」
 収穫祭、おひさまかげるとちょっと冷えるよね。酔っ払いの大人はいいけど素面の子供、ちょっと辛い。
「しかも、まぁ……なんとも見栄えが悪いですねぇ……」
 ウェルス、シェリルの忌憚のない意見に、ひぃっと息をのんだ。
 だがシェリルが正しい。
 入れたまんまだと、ぶっちゃけトテモ泥水。そこに粒々が残っちゃうのもリアル泥水度をアップしている。
「味はそこそこ……悪くはないですが……エールの黄金色と白い泡の対比は見た目にも美しく、未成年が憧れるのも分かりますぅ」
 秋の空に白い泡、すがすがしいよね!
「まぁ、これを大人の味と言って興味で飲んでみたくなるのもまた、未成年らしいとも言えますが」
 そういう背伸びちゃん対象です。とはいえ、商人的には年一ではなくリピーターになってほしい。
「――そうだ!」
 牛乳を入れた小鍋を火にかけ、泡だて器で一気に攪拌する手並みはさすが和菓子屋。
「フォードミルクの出来上がり。ふわふわ甘くてあったかい!」
 たっぷりカップに入れると見栄えもいい。
「とてもいいと思いますけれど、これを入用のお客様全てにふるまえるほどの量を確保するのは――冷めたら元も子もないですし。一気に泡立てる腕力と集中力が必要ですわ。それと、カウンターに入ってもらうことになりますから、あまり鬼気迫る感じになってもエレガントさに欠けます」
ジュリエット、工程の手間暇から必要労力算出は骨の髄がやる。
「それは――そうですねぇ」
「これしき余裕とエンターテイメント的な感じで――」
 その時、ウェルスは悟った。ここで、泡だて器を握るのが自分の使命なのだと。
 佐クラ嬢が用意したこの大麦エスプレッソをファッショナブルでキャッチーにするために不可欠なミルクを攪拌し続けるのが自分の使命であると。
「商人的に売りものが増えるってのはいいことだからな」
 ウェルスは厳かに名乗り出た。
「俺がミルクを泡立てるぜ! くまさんだからな。ノウブルのおっさんより祭りっぽいだろ!」

 お気づきだろうか。
 この時点で、豆煎り要員が二人消えていることを。
 大丈夫なのか? 行けるのか?

「よしっ!」
 トミコ・マール(CL3000192)が気合を入れた。
「普段鍛えたフライパン使い、今使わないでどこで使うってんだい。アタシは自分専用の特大フライパンを使うよ!」
 日頃、下町のみんなのおなかをいっぱいにしている量を作るためのフライパンを祭りのための大麦煎りに使うのだ。
「やっぱり調理道具は自分の手になじんだいつものを使うのが一番だからねぇ」
 戦闘用ハンマーに匹敵する代物だ。重量は相当のもの。
「おトミさんにお任せだよ!」 


 というわけで、特設店舗でおふるまいの始まりである。
「道行く皆様! 大麦エスプレッソ! 大麦エスプレッソはいかがかしら!」
 メイド服のジュリエットがキランキランとオーラ垂れ流しで声をはり上げている。
「コーヒーとは一味違う、麦を煎って淹れたエスプレッソですわよ! とっても濃厚で香ばしくて、口の中に広がる深いコクが絶品ですの!」
(これだけのオーラを纏っているわたくしが声をかければ、皆さん足が止まること間違いなし! ですわ!!!)
「よろしければぜひお試しになってくださいまし!」
 すかさず、アリシアが試飲カップを載せたトレーを持って、ひじには角砂糖を入れたカップを持って広場を回っている。
「ええ香りするでしょ? これ、豆やのうて大麦で作ってるんで優しい味わいなんです」
 ジュリエットが皆様に。なら、アリシアはあなたにこっそりプレゼンだ。もちろん、周囲にも聞こえている。いいところを前面に出すお勧めの仕方、イエスだね!
「ちょっと苦いと感じる人のためにミルクとお砂糖もあるんで、よかったら味わっていって下さい」
 キャーっと歓声が上がる。
 カウンターでは、火の上で牛乳を泡立てるウェイター姿のウェルスに子供の人気が大集中だ。
 子供っておっきい泡だて器大好きだよね。
 温度を下げない、供給量を安定させるとなると、小さいボウルでちまちまとよりは、ドバっとやった方がいいのだ。回転運動で肩が死ぬが。
 フライパンで豆をいるのは腕の前後あるいは左右運動だが、攪拌は回転だ。手首のスナップがモノを言う。
 みんな手にほんのちょっとだけエスプレッソが入ったカップを持っている。
 そこにたぷぷぷとふわふわミルクの泡が注がれるのだ。もちろんお砂糖も忘れない。
 ふうふうしながらすすりこむお子様たちがんっきゅうううう! とおいしい顔をするのに、子供たちの親もにっこりする。
 子供連れでエールを飲むわけにもいかない世代も徐々にカップを手に取りだした。
 こうなると、子供を押しのけて牛乳くれと言い難い世代が出てくる。
 カッコつけたいお年頃。後期思春期の男子というやつである。
「大麦エスプレッソ。いただくとしようか――この苦味。癖になりそうだ。」
 粋な大人がそう言っているのだ。この苦いのがいいんだ、多分。
 そう自らに言い聞かせつつ、わりに涙目。
 かえって若い成人ほど、アリシアやジュリエット目当てでお砂糖入れてくださ~い。とかミルクくださ~い。とか突進している。イ・ラプセルの男としてとても正しい。
 そんな男士の気持ちがどっちもわかる男。『静かなりしもののふ』サブロウ・カイトー(CL3000363)、今日は特定顧客用給仕さんである。
(男には…いやさ女にも、意地を張りたい張らねばならぬ、と言う時がある事も分かるのです)
「ヴッ」
「にがっ……」
 小声でうめく青少年の背後にサブロウはそっと忍び寄った。
「今はその時ではない」
 馬手に角砂糖、弓手にミルク、背後にニッコリ美少年じゃなくて中年おっさん。
「きっとこの世界には、貴方が意地を張るに相応しい『その日』『その時』『その場所』が在り得る」
 ほ~ら、今ならミルク熱々だよー。熊さんが泡立てたのを保温してるんだよー。
「ですから今は、どうか無理をなさらずに。楽しく和やかな祭りの日に、苦く苦しい思い出が刻まれるのは我々とて不本意なのです――そう、この砂糖と牛乳は逃避にあらず! 正当な調味なのです! 何人に恥じる事も無し!」
 ミルクと砂糖ダバダバ派のサブロウの説得に言霊が乗る。
「それでも征く、ここが俺の花道だと言うならそれも良し! もはや止めますまい! ぐぐいと干すがよろしいでしょう、いざ一献!」
 冷めると苦みが増すぞ。後、酸っぱくなる。
 青少年は、意地を張るのをやめた。イ・ラプセルの民は素直である。
 サブロウは惜しみなく砂糖とミルクをふるまう伝道師となった。


「お疲れ様でーす」
「お疲れ様です」
「お疲れ様ですっ。こちら失礼しやーす」
「重いですから、私が運びます」
「お疲れ様でーす。追加になりまーす」
「お疲れ様です。こちらに頂戴します」
 生大麦が運び込まれ、煎られた大麦が運び出されていく。
 というわけで舞台裏だ。豆煎り焙煎工房だ。
 リンネがすごいフットワークで煎られた大麦を袋に詰め、生麦をトミコのフライパンに開け、自分もフライパンを振っている。トミコさんによるチェックが随時入るので、料理は素人のリンネも安心だ。心の余裕が無理ない立ち回りを生む。戦場と一緒だ。
 ジャンジャラジャンジャラと麦がフライパンを叩く音がやまない。
 遠赤外線で焙煎されているのは、オラクルのお肌だって同様である。低温やけど怖い。
「リンネ。あんた、大丈夫かい!?」
 トミコにとって自由騎士は子も同然。熱さと苦役で昏倒させたとあってはおトミさんの名が泣くというものだ。
「最近、温泉のサウナで修行した故に問題ないかと。ご安心を」
 無駄のない動線の確保は戦場での位置取りの修行になるし、刻々と変わる優先順位はまさに戦場の如し。
「絶対に炒り麦が足りないなんて状況は起こさせません!」


 ぷし、ぷ、ぷしー。
 異音がして今まで出ていたエスプレッソが出なくなる。
 抽出スタッフが息をのむ。オラクル達のプレゼンがいい感じで当初の予想よりエスプレッソの需要が高い。ミルクと砂糖推し、大当たり。
「任せてくれ」
 アルビノは、機械の後ろに回り込んだ。
 動力を切ることはできないし、食品を扱っている以上、ここで機械油をさすなどもできない。
 高圧蒸気がどこかから漏れていると判断し、急いで緊急修復用の不燃布を用意する。
(ここか)
 わずかに穴が開いた感は高圧高温蒸気が通っている。並の人間では触れない。
 機械の腕はこの時のためにあるとばかりに、アルビノは素早く感に不燃布を巻き付けた。異音は止まった。
 緊張のため、缶を蒸気が通り麦汁を抽出するわずかな時間がものすごく長く感じる。麦汁が引用に耐えうるものかが重要なのだ。
「大丈夫です! おいしいです! いい匂いです!」
 抽出スタッフの声に、アルビノは大きく息をついた。
 その手も顔も真っ黒だが、だれも笑ったりしなかった。宇屋宇安く差し出されたおしぼりにアルビノは優雅に顔を埋めた。


 こうして、大麦エスプレッソはデビューした。
 当初の大人の背伸びのブラックで。というマーケティング予想に反し、砂糖を入れて、温めた牛乳を入れるカプチーノ、あるいは、ふっかふかのフォームドミルクを入れて楽しむマキアートがスタンダードになった。
「少し加筆修正させてもらうよ……こうすればきっともっともっとこの子達は長い間活躍できる」
 アルビノが実際使ってみて、最初に想定していたものにくわえ、更なるトラブル対処法を書き加えていく。
 自由騎士がここまで消耗するなら専用機械があった方がいいだろうと、麦に合わせたカートリッジと出力調整機能の改修、自動焙煎器も開発されるそうだ。
 どうせ機械が進化するなら、そういうのがいい。
「佐クラ嬢にいいとこ見せられたかな」
「喜ばれたんじゃないですかー? ミルクと砂糖の需要も生まれたことだし」
 ウェルス、にやける。
「アルビノさん、蒸気でミルクを泡立てる機能も行けそうだって言ってましたけど」
 やった。自動化、素晴らしい。
「収穫祭に関しては、子供集客要員としての熊さんホイッパーも捨てがたいとか言ってたそうですよー?」
 肩がガッチガチのウェルスを下からのぞき込むように八千代は言う。
 素晴らしきかな、機械化文化。
 来年は、オラクルたちも筋肉痛に悩まされずに祭りの終わりの一杯を楽しめそうだ。
 約一名を除いては。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

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