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神隠しはいたずら天狗の御業?

とおりゃんせ とおりゃんせ
ここはアマノホカリ。イ・ラプセルや他国と比べても独特な文化が根付いている。島国とは往々にしてそういうものである。
そんなアマノホカリ、聖霊門のある梗都の、見慣れない雰囲気に包まれた町中を歩く君たちを引き止めたのは、なんとも見慣れた顔、見慣れた出で立ちの『あたしにお任せ』バーバラ・キュプカー(nCL3000007)だった。
「あら、こんにちは。ここで会うのはなんだか新鮮味があって乙なものね。……え、ここで何をしているのか、ですって?せっかく聖霊門が開通したのだから、アマノホカリがどんなところか情報収集も兼ねて見に来てみたのよ。噂ばっかりじゃなくて、自分の目で見ることも大事だものね。……噂と言えば、さっき住民から妙な話を聞いたわね、確か……」
ばあばら曰く、ここより少しのきたる村に神隠しの噂あり、と。なんちゃって。つまり、ここから少し離れた村に神隠しの噂があるのだという。民家の食べ物や小道具が急に消えたり、外れの山の麗で遊んでいた子供の帰りがやたら遅かったりするらしい。この噂は以前からずっと村に根付いていたものではなく、最近になってこのような現象が起こり、件の子供の証言からおそらく天狗の仕業ではないかと噂になったのだという。まださほど大きな被害が出ているわけでもないからか、村の人々は「ちょっと困るが、たぶん天狗様の仕業だから……」と言って対処しようとする様子もない。とはいえ村の子供が本当に連れ去られでもしてからでは遅いのではないか?
「まだこの国についてあまり詳しくはないけれど、妖怪信仰?があるとはいえあまり放置しておいて良い話ではないと思うのよね。時間があるのなら、お願いできるかしら?」
バーバラも同意見のようだ。ともかくバーバラに頼まれた君たちは、噂のあった村近くの山の方へと向かっていくのであった。
さてさて……行きはよいよい?
ここはアマノホカリ。イ・ラプセルや他国と比べても独特な文化が根付いている。島国とは往々にしてそういうものである。
そんなアマノホカリ、聖霊門のある梗都の、見慣れない雰囲気に包まれた町中を歩く君たちを引き止めたのは、なんとも見慣れた顔、見慣れた出で立ちの『あたしにお任せ』バーバラ・キュプカー(nCL3000007)だった。
「あら、こんにちは。ここで会うのはなんだか新鮮味があって乙なものね。……え、ここで何をしているのか、ですって?せっかく聖霊門が開通したのだから、アマノホカリがどんなところか情報収集も兼ねて見に来てみたのよ。噂ばっかりじゃなくて、自分の目で見ることも大事だものね。……噂と言えば、さっき住民から妙な話を聞いたわね、確か……」
ばあばら曰く、ここより少しのきたる村に神隠しの噂あり、と。なんちゃって。つまり、ここから少し離れた村に神隠しの噂があるのだという。民家の食べ物や小道具が急に消えたり、外れの山の麗で遊んでいた子供の帰りがやたら遅かったりするらしい。この噂は以前からずっと村に根付いていたものではなく、最近になってこのような現象が起こり、件の子供の証言からおそらく天狗の仕業ではないかと噂になったのだという。まださほど大きな被害が出ているわけでもないからか、村の人々は「ちょっと困るが、たぶん天狗様の仕業だから……」と言って対処しようとする様子もない。とはいえ村の子供が本当に連れ去られでもしてからでは遅いのではないか?
「まだこの国についてあまり詳しくはないけれど、妖怪信仰?があるとはいえあまり放置しておいて良い話ではないと思うのよね。時間があるのなら、お願いできるかしら?」
バーバラも同意見のようだ。ともかくバーバラに頼まれた君たちは、噂のあった村近くの山の方へと向かっていくのであった。
さてさて……行きはよいよい?
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.いたずら天狗(?)を退治(?)する
お久しぶりです?リクヲです。
早速依頼内容の説明といきましょう。
【場所と時間】
場所はアマノホカリ国内のとある村外れの山、時間はお昼過ぎです。
【敵?】
・天狗 ×3
別の山から流れてきた天狗たち、人間換算したらまだまだ子供なのでしょうか。純粋ないたずらっ子たちです。いたずらはしますが、悪さをする気自体は特に無いようです。人間に興味があるのか、それとも遊んでほしいのでしょうか?
特徴的な攻撃方法
風起こし:遠/範囲【ノックバック】 葉っぱの団扇で風を起こします。威力は控え目です。
いたずら:近/単体【アンガー1】or【ショック】 しょうもないいたずらを仕掛けてきます。ダメージは無いですが上記BSいずれかを付与します。
【目的とプレイングについて】
天狗が村の人々に迷惑をかけないようにしてあげたら依頼成功となります。彼らは人間の方から意図的に近付かれた経験は無いので、出会った矢先に〈風起こし〉で攻撃してくることでしょう。「退治」と書きましたが、ある程度体力を削ると疲れて降参してきます。天狗の攻撃〈いたずら〉についてですが、特にいたずらされたいPC様はExプレイングなどに具体的にどんないたずらをされたいか書いていただけると、それはそれは捗ります。
天狗ちゃんたちは強くはないので、戦闘はさほど苦労しない筈です。その後、村の子供を連れだしたり、物を勝手に持ち出したりしないように約束してもらうとか?なんなら皆様が遊んであげるとか、友達になってあげるとか?
天狗について、妖怪について、アマノホカリについて、依頼についてなどに対するキャラクターの感情も書いていただけると嬉しいです。
皆様のアイデア溢れるプレイングをお待ちしております~~
早速依頼内容の説明といきましょう。
【場所と時間】
場所はアマノホカリ国内のとある村外れの山、時間はお昼過ぎです。
【敵?】
・天狗 ×3
別の山から流れてきた天狗たち、人間換算したらまだまだ子供なのでしょうか。純粋ないたずらっ子たちです。いたずらはしますが、悪さをする気自体は特に無いようです。人間に興味があるのか、それとも遊んでほしいのでしょうか?
特徴的な攻撃方法
風起こし:遠/範囲【ノックバック】 葉っぱの団扇で風を起こします。威力は控え目です。
いたずら:近/単体【アンガー1】or【ショック】 しょうもないいたずらを仕掛けてきます。ダメージは無いですが上記BSいずれかを付与します。
【目的とプレイングについて】
天狗が村の人々に迷惑をかけないようにしてあげたら依頼成功となります。彼らは人間の方から意図的に近付かれた経験は無いので、出会った矢先に〈風起こし〉で攻撃してくることでしょう。「退治」と書きましたが、ある程度体力を削ると疲れて降参してきます。天狗の攻撃〈いたずら〉についてですが、特にいたずらされたいPC様はExプレイングなどに具体的にどんないたずらをされたいか書いていただけると、それはそれは捗ります。
天狗ちゃんたちは強くはないので、戦闘はさほど苦労しない筈です。その後、村の子供を連れだしたり、物を勝手に持ち出したりしないように約束してもらうとか?なんなら皆様が遊んであげるとか、友達になってあげるとか?
天狗について、妖怪について、アマノホカリについて、依頼についてなどに対するキャラクターの感情も書いていただけると嬉しいです。
皆様のアイデア溢れるプレイングをお待ちしております~~
状態
完了
完了
報酬マテリア
6個
2個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
4/8
4/8
公開日
2020年08月28日
2020年08月28日
†メイン参加者 4人†
●
噂の天狗についてバーバラに頼まれた自由騎士たちは、件の山に向かう前に麓にある村へと向かっていた。イ・ラプセル同様に緑豊かで、しかし我らが国のそれとは異なる生態系が築かれているアマノホカリの自然を感じながら、一行は進む。
「それにしても、神隠しに天狗ねえ。異国の民である俺たちが勝手に解決していいか、少し悩むよな」
「村人たちは対処しようとする様子はなし、ですものね。アマノホカリの妖怪というのは人々と近い存在なのでしょうか。それとも天狗様だから、かしら……?」
アマノホカリ神に客として歓迎されているとはいえ、よそ者である自分たちが干渉していい問題なのか疑問に思う『ラスボス(HP50)』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)と、自国では幻想種に該当するアマノホカリの妖怪と人々との関係について関心を寄せるセアラ・ラングフォード(CL3000634)。アマノホカリについては文化水準や慣習など、まだまだ知らないことが多い。彼らの疑問や興味は尤もだろう。まずは村で情報収集をした方が色々と都合が良さそうだ。
麓の村で各自情報収集を行った騎士たちは広場に集合して有用そうな情報を共有する。
「道端にいたおばさまから天狗という妖怪についての情報を得られたわ。外見は鼻が長くて、一本歯の下駄を履いているみたい。葉っぱの団扇を持っていて、その見た目からは想像もつかないような強風を起こすとか」
「本当にお話とかで聞いたことあるような姿なんだね!早く会ってみたいな~」
村人に教えてもらった種としての天狗の特徴を挙げる『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)と、それが風聞通りで実際に会えるかもしれないことに胸を躍らせる『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)。そこにセアラが得られた情報をつけ加える。
「私が得た情報では、現れた天狗は民家やお供え物のお菓子類を持っていくことが多くて、農作物への被害はほとんどないようです。道具は草履のような小さいものが持ち出されることが多いみたいでした。現れたことについての心当たりは特に無くて、外れの山に住んでいると推測されているみたいですね」
「確かに困ることには困るが、まだ悪戯程度って印象だな。俺は天狗に連れていかれた子どもが住んでる家の場所を聞けた。実際に会ったやつの口からなら、もっと詳しいことが聞けるだろうしな」
ウェルスの得た情報を基に、一行は天狗に連れ去られた子どもが住む民家へと向かう。
「友達と山に入ったのに、気付いたら僕だけになってて周りがもやもやになって……そしたら天狗がいたんだ。天狗にも仲間がいたよ!それで一緒に遊ぶことになって遊んで、そろそろ帰らなきゃいけない時間だと思って話したら、またもやもやになって村の近くに出て、僕が思ってたよりも夜になってたから、お母さんとか村の皆にも心配されちゃった」
「なるほど……天狗たちとお喋りとかはしたのですか?あと、どんな遊びをしましたか?」
件の少年に話を聞く一行。もう少し情報を引き出そうとセアラが尋ねる。
「ん~……お喋りは会ってすぐに『遊ぼうよ!』ってなってそのまま遊んだからあんまり覚えてない。鬼ごっことか木登りとか、村で友達と遊ぶときと同じような遊びばっかりで楽しかった!」
「……教えてくれてありがとうございます。ささやかなものですが、お礼にお菓子を貰ってください」
話をしてくれた少年へのお礼として、セアラは持っていたお菓子を少し渡す。天狗がお菓子をよく盗むということで、遭遇する時などに使えるかもしれないと、料理上手であるカノンと一緒に先ほど作っていたのだ。
「村人たちの話を総合すると、やはり迷惑はしているみたいだな。一先ずその天狗とやらに会って、様子を見てみた方が良さそうだ」
「じゃあ山に向かおう!天狗探しにしゅっぱ~っつ!!」
これ以上被害が重くならないとも限らない。自分たちでも解決できそうなうちに、様子を見て対処したいというのがウェルスの意図だった。ではでは山へと向かいましょう。カノンの年相応の無邪気さを感じさせる声と共に、少年の家を出た一行は天狗がいるとされる山へと進んでいく。
●
「天狗さ~ん、いたら出てきてくれませんか~」
山に入ってから数十分が経過していた。天狗についてはまだ痕跡らしきものも見つかっておらず、天狗を呼ぶエルシーの声が山にただただ響き渡る。
天狗のものと思われる一本歯の下駄の足跡が見えたのは、それからもう少し山道を進んだところだった。足跡は所々重なっていたり、同じ場所をぐるぐる回っていたりと、ただ道を進んでいるというよりは何かふざけ合うような、遊んでいるかのように感じられた。跡がまだ新しく、ここを通ってからまだそれほど経っていないようだ。自由騎士一行は気を引き締める。
間もなく天狗の姿が見え、天狗たちもまた人々が近付いてくることに気がつく。ここに居る者たちで全てなら、天狗は三匹。彼らがこちらを向いた時、一行は少なからず動揺した。天狗は各々がイメージしていたサイズの二、三回り小さい――おそらくそれは、子どもであったからだ。カノンは分かりやすく目をぱちくりさせる。
「あれ?まだ子供なのかな?」
束の間、天狗たちは手に持っている葉っぱの団扇を振りかぶり、それを力一杯扇ぐ。扇いだ風は団扇の華奢な見た目からは想像もつかない強風となり、騎士一行を襲った。
「きゃあっ!」
ミニスカートを履いているセアラは突然の強風に両手でスカートを押さえる。はいそこウェルス君、おいしいみたいな表情しない。あ、してない?
「天狗さん?私たちは貴方達と戦いに来たわけじゃないの!ちょっと話を……」
強風に曝されながら天狗に紳士的な話し合いを持ち掛けるエルシー。だが、天狗たちは突然の訪問者を警戒しているのか、変わらず強風を送り続ける。
「ちょっと待って!話せばわかるから!ちょっと!待ちなさいって!」
聞く耳を持たない天狗たちに語気が熱を帯び始めるエルシー。ホントに紳士的にやるつもり、あったんだろうか。いや、つもりはあったのだろう。すぐ熱くなってしまっただけで。
こうなってはもういきなり話し合いというのは双方に無理があるだろう。戦闘開始だ。
「風には風で対抗だよ!」
旋風腿で天狗たちに対抗するカノン。螺旋状に薙ぎ払われる蹴りから巻き起こる風と、天狗が作り出す風とがぶつかり、相殺される。
「……さて、やるか」
「戦闘ですね。皆様、回復は私にお任せください」
後衛で愛銃を構えるウェルスと、いつでも回復呪文を打てるように待機するセアラに、前衛のエルシーとカノンは軽く笑みを送り頷く。天狗たちに接近して獅子吼の構えをするエルシーに、天狗たちは散開。そのうちの一匹がエルシーに小さな何かを投げつける。構えているエルシーに近付いてくる何か、やっと目視できるところまで近づいてきた「それ」は……百足だ。
「きゃあああっっっ!?」
百足を視認して素っ頓狂な声を上げたエルシーの技は不発に終わり、天狗たちはクスクスと笑い出す。
●
それから続く戦闘は、天狗との戦いというよりは、前衛二人の己の沸点との戦いだった。天狗たちはといえば虫を投げたり、背後を取ってきたと思ったらおしりを数回叩くだけでまた離れていったり、時折セアラの方向へ風起こしをしてスカートを押さえる彼女を見て楽しんでいたり……もはや遊んでいるようだった。天狗たちは悪戯を仕掛けてはきゃいきゃいするのを、かれこれ数分間繰り返している。
「これはなんというか……」
「彼らに戦う気はあるのでしょうか……?」
後衛の二人は既に違和感に気がついていた。一応ウェルスはバレッジファイアで天狗たちの体力を徐々に削り、セアラは前衛二人を回復し続けてはいるが、特に戦意の無さそうな天狗たちの様子にやや戸惑っていた。前衛の二人はそうではなさそうだが。
「あーもう知らない!これでも喰らいなさい!」
「むかー!悪い子にはでこぴんだよ!」
繰り出される悪戯の数々にいよいよ苛立ちを隠せなくなってきたエルシーとカノンはそれぞれ影狼で天狗の背後を取る。エルシーの一撃は体力の削れていた天狗をそのままダウンさせ、カノンは二匹の天狗に素早くでこぴんを当て元の位置に戻る。どうやらカノンの方がどちらかというと冷静だったらしい。少し威嚇するために、カノンは神紅を地面に打ち込んで見せる。
「早く降参しないとこうだよ!」
カノンの威嚇攻撃が効いたのもあり、味方の一匹がダウンしたのもあり、単純に疲れてきたのもあり、天狗たちはぺたりとそこに座り込み、降参の意を示す。戦闘の途中から彼等に戦意は無いのだろうと察していたセアラは、天狗たちの体力を回復する。
「なにも退治しようってわけじゃないのよ。貴方達にお願いがあって会いにきたのよ。村の人たちに悪戯をするのを止めてほしくて……」
体力の戻った天狗たちに、冷静な状態に戻ったエルシーが話しかける。天狗たちは悪戯という言葉の意味をあまり分かっていないようで、首を傾げている。
「お前たちはどうして村の物を持ち出したり、子どもを連れ去ったりしていたんだ?」
悪戯を言い換えつつ、そもそもの疑問をウェルスが尋ねる。原因が分かれば、もっと良い対処ができるかもしれないし。
「僕たちは遠くの山から流れてきたんだ。この辺のことはよく知らなくて、少し山から出てみたら、人間の村があったんだ。見たことない道具や、甘くておいしそうな食べ物や、楽しそうに遊んでる子どもたちが居て、面白いなぁって思って。でも僕たちは人間のことをあんまり知らないから、どうすればいいか分からなくて……」
「……なるほど、彼等に悪気はあまりないようですね」
天狗の一匹が事情を話し、悪意でやっていたわけではないことをセアラは理解する。しかし悪いことは悪いことだと教えなければならない。人間換算したら最も年が近いであろうカノンがそっと諭す。
「あのね、君達も自分たちの物を急に取られたり、お友達が急に居なくなったら嫌でしょ?自分がされて嫌な事は人にもしたらいけないんだよ?」
まだ幼い天狗たちはハッとしたようだ。純粋な子どもには、この手の言い方が一番効きやすいものだ。天狗たちは反省するような素振りを見せ、そのようなことはしないと約束してくれた。
「まぁ今回の件に関しては村人たちも特別困っていたわけじゃないし、村まで連れてって謝らせるとかはせずに有耶無耶にしちまった方が良さそうだな」
ウェルスの意見に皆が賛同した。まだ妖怪とアマノホカリの人間との関係も理解しきれていないし、あまり干渉し過ぎても面倒事になるかもしれない。これくらいが丁度いいのだろう。
「よーし、聞き分けの良い子にはとっておきのすぺしゃるな技を教えてあげるよ!」
天狗たちが素直に反省してくれたお礼に、カノンは人間には言わずと知れた(?)荒ぶる鷹のポーズをとってみせる。ポーズを決めると、どこからともなくちゃららら~と音楽が流れる。子どもはこの手のやつが好きなのだ。例え天狗であっても、たぶん。
「ねえおねーさんたちも遊んでよ!」
カノンのポーズにさぞご満悦の天狗たちは、エルシーたちにも遊んでほしいようで誘ってくる。
「私たちも?遊び相手くらいならいいわよ?えーっと……何して遊びたいの?」
それから騎士一行は天狗たちと鬼ごっこや、だるまさんがころんだなど色んな遊びをした。カノンは同年齢の友達と遊ぶかのように遊びまわり、エルシーは年の離れた子どもたちに振り回されているかのようだった。ウェルスは熊の姿になって天狗たちを驚かせてみせたり、セアラは皆でちょっと休憩している時に作ってきたお菓子をあげたりした。
日が暮れそうな頃、天狗たちとすっかり友達になった一行は天狗たちにまたねをして、イ・ラプセルへの帰路に就いた。いずれあの天狗たちが、村の人間たちとも仲良くなれることを願いながら。
噂の天狗についてバーバラに頼まれた自由騎士たちは、件の山に向かう前に麓にある村へと向かっていた。イ・ラプセル同様に緑豊かで、しかし我らが国のそれとは異なる生態系が築かれているアマノホカリの自然を感じながら、一行は進む。
「それにしても、神隠しに天狗ねえ。異国の民である俺たちが勝手に解決していいか、少し悩むよな」
「村人たちは対処しようとする様子はなし、ですものね。アマノホカリの妖怪というのは人々と近い存在なのでしょうか。それとも天狗様だから、かしら……?」
アマノホカリ神に客として歓迎されているとはいえ、よそ者である自分たちが干渉していい問題なのか疑問に思う『ラスボス(HP50)』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)と、自国では幻想種に該当するアマノホカリの妖怪と人々との関係について関心を寄せるセアラ・ラングフォード(CL3000634)。アマノホカリについては文化水準や慣習など、まだまだ知らないことが多い。彼らの疑問や興味は尤もだろう。まずは村で情報収集をした方が色々と都合が良さそうだ。
麓の村で各自情報収集を行った騎士たちは広場に集合して有用そうな情報を共有する。
「道端にいたおばさまから天狗という妖怪についての情報を得られたわ。外見は鼻が長くて、一本歯の下駄を履いているみたい。葉っぱの団扇を持っていて、その見た目からは想像もつかないような強風を起こすとか」
「本当にお話とかで聞いたことあるような姿なんだね!早く会ってみたいな~」
村人に教えてもらった種としての天狗の特徴を挙げる『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)と、それが風聞通りで実際に会えるかもしれないことに胸を躍らせる『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)。そこにセアラが得られた情報をつけ加える。
「私が得た情報では、現れた天狗は民家やお供え物のお菓子類を持っていくことが多くて、農作物への被害はほとんどないようです。道具は草履のような小さいものが持ち出されることが多いみたいでした。現れたことについての心当たりは特に無くて、外れの山に住んでいると推測されているみたいですね」
「確かに困ることには困るが、まだ悪戯程度って印象だな。俺は天狗に連れていかれた子どもが住んでる家の場所を聞けた。実際に会ったやつの口からなら、もっと詳しいことが聞けるだろうしな」
ウェルスの得た情報を基に、一行は天狗に連れ去られた子どもが住む民家へと向かう。
「友達と山に入ったのに、気付いたら僕だけになってて周りがもやもやになって……そしたら天狗がいたんだ。天狗にも仲間がいたよ!それで一緒に遊ぶことになって遊んで、そろそろ帰らなきゃいけない時間だと思って話したら、またもやもやになって村の近くに出て、僕が思ってたよりも夜になってたから、お母さんとか村の皆にも心配されちゃった」
「なるほど……天狗たちとお喋りとかはしたのですか?あと、どんな遊びをしましたか?」
件の少年に話を聞く一行。もう少し情報を引き出そうとセアラが尋ねる。
「ん~……お喋りは会ってすぐに『遊ぼうよ!』ってなってそのまま遊んだからあんまり覚えてない。鬼ごっことか木登りとか、村で友達と遊ぶときと同じような遊びばっかりで楽しかった!」
「……教えてくれてありがとうございます。ささやかなものですが、お礼にお菓子を貰ってください」
話をしてくれた少年へのお礼として、セアラは持っていたお菓子を少し渡す。天狗がお菓子をよく盗むということで、遭遇する時などに使えるかもしれないと、料理上手であるカノンと一緒に先ほど作っていたのだ。
「村人たちの話を総合すると、やはり迷惑はしているみたいだな。一先ずその天狗とやらに会って、様子を見てみた方が良さそうだ」
「じゃあ山に向かおう!天狗探しにしゅっぱ~っつ!!」
これ以上被害が重くならないとも限らない。自分たちでも解決できそうなうちに、様子を見て対処したいというのがウェルスの意図だった。ではでは山へと向かいましょう。カノンの年相応の無邪気さを感じさせる声と共に、少年の家を出た一行は天狗がいるとされる山へと進んでいく。
●
「天狗さ~ん、いたら出てきてくれませんか~」
山に入ってから数十分が経過していた。天狗についてはまだ痕跡らしきものも見つかっておらず、天狗を呼ぶエルシーの声が山にただただ響き渡る。
天狗のものと思われる一本歯の下駄の足跡が見えたのは、それからもう少し山道を進んだところだった。足跡は所々重なっていたり、同じ場所をぐるぐる回っていたりと、ただ道を進んでいるというよりは何かふざけ合うような、遊んでいるかのように感じられた。跡がまだ新しく、ここを通ってからまだそれほど経っていないようだ。自由騎士一行は気を引き締める。
間もなく天狗の姿が見え、天狗たちもまた人々が近付いてくることに気がつく。ここに居る者たちで全てなら、天狗は三匹。彼らがこちらを向いた時、一行は少なからず動揺した。天狗は各々がイメージしていたサイズの二、三回り小さい――おそらくそれは、子どもであったからだ。カノンは分かりやすく目をぱちくりさせる。
「あれ?まだ子供なのかな?」
束の間、天狗たちは手に持っている葉っぱの団扇を振りかぶり、それを力一杯扇ぐ。扇いだ風は団扇の華奢な見た目からは想像もつかない強風となり、騎士一行を襲った。
「きゃあっ!」
ミニスカートを履いているセアラは突然の強風に両手でスカートを押さえる。はいそこウェルス君、おいしいみたいな表情しない。あ、してない?
「天狗さん?私たちは貴方達と戦いに来たわけじゃないの!ちょっと話を……」
強風に曝されながら天狗に紳士的な話し合いを持ち掛けるエルシー。だが、天狗たちは突然の訪問者を警戒しているのか、変わらず強風を送り続ける。
「ちょっと待って!話せばわかるから!ちょっと!待ちなさいって!」
聞く耳を持たない天狗たちに語気が熱を帯び始めるエルシー。ホントに紳士的にやるつもり、あったんだろうか。いや、つもりはあったのだろう。すぐ熱くなってしまっただけで。
こうなってはもういきなり話し合いというのは双方に無理があるだろう。戦闘開始だ。
「風には風で対抗だよ!」
旋風腿で天狗たちに対抗するカノン。螺旋状に薙ぎ払われる蹴りから巻き起こる風と、天狗が作り出す風とがぶつかり、相殺される。
「……さて、やるか」
「戦闘ですね。皆様、回復は私にお任せください」
後衛で愛銃を構えるウェルスと、いつでも回復呪文を打てるように待機するセアラに、前衛のエルシーとカノンは軽く笑みを送り頷く。天狗たちに接近して獅子吼の構えをするエルシーに、天狗たちは散開。そのうちの一匹がエルシーに小さな何かを投げつける。構えているエルシーに近付いてくる何か、やっと目視できるところまで近づいてきた「それ」は……百足だ。
「きゃあああっっっ!?」
百足を視認して素っ頓狂な声を上げたエルシーの技は不発に終わり、天狗たちはクスクスと笑い出す。
●
それから続く戦闘は、天狗との戦いというよりは、前衛二人の己の沸点との戦いだった。天狗たちはといえば虫を投げたり、背後を取ってきたと思ったらおしりを数回叩くだけでまた離れていったり、時折セアラの方向へ風起こしをしてスカートを押さえる彼女を見て楽しんでいたり……もはや遊んでいるようだった。天狗たちは悪戯を仕掛けてはきゃいきゃいするのを、かれこれ数分間繰り返している。
「これはなんというか……」
「彼らに戦う気はあるのでしょうか……?」
後衛の二人は既に違和感に気がついていた。一応ウェルスはバレッジファイアで天狗たちの体力を徐々に削り、セアラは前衛二人を回復し続けてはいるが、特に戦意の無さそうな天狗たちの様子にやや戸惑っていた。前衛の二人はそうではなさそうだが。
「あーもう知らない!これでも喰らいなさい!」
「むかー!悪い子にはでこぴんだよ!」
繰り出される悪戯の数々にいよいよ苛立ちを隠せなくなってきたエルシーとカノンはそれぞれ影狼で天狗の背後を取る。エルシーの一撃は体力の削れていた天狗をそのままダウンさせ、カノンは二匹の天狗に素早くでこぴんを当て元の位置に戻る。どうやらカノンの方がどちらかというと冷静だったらしい。少し威嚇するために、カノンは神紅を地面に打ち込んで見せる。
「早く降参しないとこうだよ!」
カノンの威嚇攻撃が効いたのもあり、味方の一匹がダウンしたのもあり、単純に疲れてきたのもあり、天狗たちはぺたりとそこに座り込み、降参の意を示す。戦闘の途中から彼等に戦意は無いのだろうと察していたセアラは、天狗たちの体力を回復する。
「なにも退治しようってわけじゃないのよ。貴方達にお願いがあって会いにきたのよ。村の人たちに悪戯をするのを止めてほしくて……」
体力の戻った天狗たちに、冷静な状態に戻ったエルシーが話しかける。天狗たちは悪戯という言葉の意味をあまり分かっていないようで、首を傾げている。
「お前たちはどうして村の物を持ち出したり、子どもを連れ去ったりしていたんだ?」
悪戯を言い換えつつ、そもそもの疑問をウェルスが尋ねる。原因が分かれば、もっと良い対処ができるかもしれないし。
「僕たちは遠くの山から流れてきたんだ。この辺のことはよく知らなくて、少し山から出てみたら、人間の村があったんだ。見たことない道具や、甘くておいしそうな食べ物や、楽しそうに遊んでる子どもたちが居て、面白いなぁって思って。でも僕たちは人間のことをあんまり知らないから、どうすればいいか分からなくて……」
「……なるほど、彼等に悪気はあまりないようですね」
天狗の一匹が事情を話し、悪意でやっていたわけではないことをセアラは理解する。しかし悪いことは悪いことだと教えなければならない。人間換算したら最も年が近いであろうカノンがそっと諭す。
「あのね、君達も自分たちの物を急に取られたり、お友達が急に居なくなったら嫌でしょ?自分がされて嫌な事は人にもしたらいけないんだよ?」
まだ幼い天狗たちはハッとしたようだ。純粋な子どもには、この手の言い方が一番効きやすいものだ。天狗たちは反省するような素振りを見せ、そのようなことはしないと約束してくれた。
「まぁ今回の件に関しては村人たちも特別困っていたわけじゃないし、村まで連れてって謝らせるとかはせずに有耶無耶にしちまった方が良さそうだな」
ウェルスの意見に皆が賛同した。まだ妖怪とアマノホカリの人間との関係も理解しきれていないし、あまり干渉し過ぎても面倒事になるかもしれない。これくらいが丁度いいのだろう。
「よーし、聞き分けの良い子にはとっておきのすぺしゃるな技を教えてあげるよ!」
天狗たちが素直に反省してくれたお礼に、カノンは人間には言わずと知れた(?)荒ぶる鷹のポーズをとってみせる。ポーズを決めると、どこからともなくちゃららら~と音楽が流れる。子どもはこの手のやつが好きなのだ。例え天狗であっても、たぶん。
「ねえおねーさんたちも遊んでよ!」
カノンのポーズにさぞご満悦の天狗たちは、エルシーたちにも遊んでほしいようで誘ってくる。
「私たちも?遊び相手くらいならいいわよ?えーっと……何して遊びたいの?」
それから騎士一行は天狗たちと鬼ごっこや、だるまさんがころんだなど色んな遊びをした。カノンは同年齢の友達と遊ぶかのように遊びまわり、エルシーは年の離れた子どもたちに振り回されているかのようだった。ウェルスは熊の姿になって天狗たちを驚かせてみせたり、セアラは皆でちょっと休憩している時に作ってきたお菓子をあげたりした。
日が暮れそうな頃、天狗たちとすっかり友達になった一行は天狗たちにまたねをして、イ・ラプセルへの帰路に就いた。いずれあの天狗たちが、村の人間たちとも仲良くなれることを願いながら。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
†あとがき†
依頼お疲れ様でした。
種族や民族全体の間での相互理解とは難しいものですが、個人間での相互理解というのは案外シンプルなものなのかも、と思ったりします。僕の独り言です。
種族や民族全体の間での相互理解とは難しいものですが、個人間での相互理解というのは案外シンプルなものなのかも、と思ったりします。僕の独り言です。
FL送付済