MagiaSteam
クラブエッグ



「うち、頼みたい事があるんです」
 彼女は手を合わせ、こちらの様子を伺う様に依頼の内容を口にした。
「海に『ジャイアントクラブ』ゆう魔物がおりはるよね? 今回はそのジャイアントクラブの卵をとってきて欲しいんです。え〜っとわかりはります? 両手がハサミの横にしか動けないあれです」
 ジャイアントクラブのことは知っていた。陸地でも海でも活動する大きな両手の挟みが特徴の魔物だ。だが、その魔物の何を彼女『発明家』佐クラ・クラン・ヒラガ(nCL3000008)が欲しているのかわからなかった。
「うちが欲しいのんは。ジャイアントクラブの卵です。飲み薬をその卵の中に入れて丸薬として売りたいと思っとるんです。だからジャイアントクラブを狩って卵をたくさん持ち帰って欲しいんです」
 そういうことならと了承し海に出かけることにした。
「ああ、そうそう。この時期海はかなり寒いはずやか 何か体を温める工夫と海の中で活動できるようにしておいた方がいいかもしれへんなぁ。うちからはこれくらいしか言えへんけどあんじょう頑張ってください」


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
イブ
■成功条件
1.ジャイアントクラブと遭遇する
2.ジャインアントクラブを倒す
3.蟹の卵を手に入れる
時期
 冬

天候
 晴れでいるが寒い

時間帯
 昼

海の状態
 凪いでいる

場所
 砂浜のある海辺


ジャイアントクラブ
 大きな蟹。両手がハサミ状になっており、脚は八本。大きさは三メートル

特徴と攻撃方法
挟む:人くらいならハサミに挟まれ真っ二つになる
泡:泡を吐き視界を雲らせる
外皮:鎧のように硬く柔な剣では攻撃が通らない
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
12モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
6/10
公開日
2020年04月16日

†メイン参加者 6人†



「うおおおおおおおお! 海だああああああ! うおおおおおおおお!」
 海に向かいそう叫ぶ男『森のホームラン王』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は興奮していた。
「佐クラじょおおおおお! 俺は、俺は、取るぞおおおおおおお!」
 なんと言ってもこの依頼は佐クラ・クラン・ヒラガからの依頼だ。彼女の事を好ましく思っている彼にとっては気合が入れるには十分な理由だろう。
「いやー、元気だねぇ」
 そんなウェルスの様子を見てその元気さに少し唖然とする男。『その過去は消えぬけど』ニコラス・モラル(CL3000453)はそのテンションに少し引いていた。
「元気だね。ああ言う浮き沈みが激しい人は嫌いじゃないよ」
 そう言ったのはウェルスと比べるまでも無く落ち着いた雰囲気を醸し出している『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)だ。
「……意外だ。マグノリアは静かな方が好みだと思っていたんだが……」
「そうでもないさ」
「うおおおおおおお! 佐クラじょおおおおお!」
「……いや、すまない。少し苦手かも知れない……」
「……そうか……」
 雄叫びを上げるウェルスとそれを見つめるニコラスとマグノリアは何とも言えない様子でウェルスを見つめるのだった。
「みなさ〜ん」
 そんな時だ。遠くから手を振りこちらに駆け寄ってくる影が二つあった。
「どうじゃ? 余の水着はまだまだイケるであろう?」
「申し訳ありません。待ちましたか?」
 水着に着替えた二人の女性が彼ら三人の元へ駆け寄ってきていた。『くっころ(ぱすた)』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)と氷面鏡 天輝(CL3000665)の二人だ。
「いや、あまり待っていないさ」
「似合ってるぜ二人とも」
「ぅぉぉぉぉぉおおおおおお! 二人とも可愛いぜっ!」
 落ち着いて二人を褒めるニコラスとマグノリア。そして、海に向かって叫んでいたと思ったらいつの間にかこちらに近づき二人の水着を誉め出すウェルスにアンジェリカと天輝は少し驚きの表情を見せた。
「あ、ありがとうございます」
「う、うむ。所で、どうじゃった?」
「さっぱり」
「僕の方もだ」
「こっちもだ! この様子だと陸にはいないな……」
「何故でしょう? 産卵には陸に上がると思っていたのですが……」
「それは、卵が孵る時でしょうね」
 そんな話しをしているとこちらに近づきながらそんな事を言いながら彼らの輪に入るものがいた。レイラ・F・月宮(CL3000620)だ。彼女は苛立っている様で口調が少し冷たい。
「今は冬。多分まだ卵が孵化する時期じゃないようね」
「ああ、そう言えば俺のコネで商人に話しを聞いたが、多分今はジャイアントクラブは海の中で抱卵している時期だと言っていったな」
 ウェルスとレイラは情報を出し、一つの解が出た。
「と、なると目的のブツは海の中ってわけだな」
 その答えをニコラスは代表する様に言った。
「まあ、やることは変わりありません。私とニコラス、それと──」
「ぷはっ! 余が海に入る!」
 天輝は酒を飲み体を温めてからそう言った。
「いやー、蟹肉炒飯が楽しみじゃ!」
「むっ、待ってください。ここは茹でガニでしょう! 塩をかけて食べるべきです!」
「おや、アンジェリカ。パスタは作らないのかい? まあいいさ。僕も行こう」
 そういって、マグノリアは手に持っていた羽織を着込む。
 その羽織を見てその場にいる皆が驚いた。何故ならその背中には大漁という字がデカデカと書かれていたからだ。
「? 何かな?」
「い、いえ……」
「……何というか」
 彼ら一同は思った。『意外』マグノリアの様子からはそこまで気合が入ってる様子が伺えなかったからだ。だが、実は彼女が一番今回のジャイアントクラブに期待を寄せている人物だった。
「ふふっ、浜焼き、蟹しゃぶ、蟹汁、それから蟹味噌。ああ、蟹味噌をお酒に混ぜるのも良いかも知れない。ふふっ」
(((((良い!)))))
 彼らの中でこれが終わればカニを堪能するという思いが強くなり、芽生えた瞬間だった。
「ん? ああ、安心した前。出汁とお酒は準備している。安心したまえ軽い宴分くらいは準備してある」
「流石です!」
「あなたが神か!」
 なんて、声が周りから上がる。
「ふふっ、さあ、頑張ろうか」
 マグノリアの掛け声と共に彼らは後々の楽しみのために作戦を練り出すのだった。

「さて、どこにいるかねぇ」
 そんな事を海の中で呟くニコラスの姿があった。
 水中で一番動けるニコラスは今海の中でジャイアントクラブの探索を行なっていた。
 作戦はできた。しかし、獲物たるジャイアントクラブが見つからなければ意味がない。そのため、水中探索の要としてミズヒトたるニコラスが抜擢されたのだった。
「多分岩場だろうが、はてさて……」
 佐クラの事だ。この時期をわざわざ選んだのは多分、ジャイアントクラブの習性を考えてのことだろう。
 ジャイアントクラブ交配し卵をその身に宿すまではオスがメスを守る習性がある。しかし、その後はメスを追い出し。メスは身を隠し卵から子供が孵化するのを待つ習性がある。
 そのため、今の時期卵を持つメスは岩場の影に隠れているのではないかと当たりをつけながら当たりを探す。
 ジャイアントクラブの大きさは三mほどの巨体だ。隠れる場所は限定される。すなわち砂の中だ。
 そうと知っていれば大体の場所は見当がつく。
「あそこだな」
 砂の中から飛び出ている大きな目玉。その大きさと形はジャイアントクラブのもので間違いがない。
 あとはメスかオスかだが、ジャイアントクラブは基本姿を隠しはしない。その巨体さと生息地から天敵はほとんどいないからだ。そのため、姿を隠すのは卵を抱えたメスだけだ。
「さて、始めますか『コキュートス』」
 彼は、氷の魔法を唱え、陸に向かってジャイアントクラブを誘導し始めた。

(あそこですか)
 海底から離れた場所。そこからジャイアントクラブを探索していたアンジェリカは、ニコラスのコキュートスの魔法によってできた水中の氷の柱を見てそこにジャイアントクラブがいたのだという事を知った。
(流石ですね)
 彼女は内心でニコラスへの称賛を送った。海底近くにいたとは言え易々とあの巨体を見つけたこと。コキュートスという魔法を瞬時に選択し周りに知らせる技法にだ。
 そうんな事を思いながら、彼女は二発、三発と放たれるコキュートスの場所に向かって泳いで行く。

 一方その頃陸上では、マグノリアとレイラが海の様子を見ていた。
「おや、動きがあったね」
 少しの海の動きがおかしな場所その場所を見てマグノリアはそう言った。
「どんな感じ?」
「さて、少し、手こずっている様だ」
 その言葉にレイらはそう尋ね。マグノリアはそう返した。
「少し散文的だな。あちらこちらに向かっていて、うまく誘導できていない様だ」
「そう」
「まあ、信じて待つしかないね」

「ちっ、ちょこまかと」
 コキュートスを何度も放って少し疲れ気味なニコラスは焦りを感じていた。
「分かってはいたが、うまく誘導出来ない」
 陸の方に誘導したいというのにジャイアントクラブは上手く誘導できていなかった。
 というのも、彼が担っているのはジャイアントクラブの発見と誘導なのだが、これが思ったよりも難しい。一方向だけに動くのならばいいのだが、相手は生物、生き物だ。いろんな場所に動き回るし、予想以上のことをしてくることもあるものだから、やりにくい事この上ない。と、いうのもあるが彼がミズヒトだからこその欠点があったのだ。
(他の奴等がおじさんに付いてこれてねぇ)
 そうなのだ。ニコラスがジャイアントクラブを一人で誘導することになっているのは、ジャイアントクラブとニコラスの水中での行動力が圧倒的に高いからに他ならない。
 つまり、ニコラスの水中での機動力が逆に彼一人への負担を大きくしてしまっているのだ。
「これは、ちょっとミスったかねぇ」
 最初は誘導のために挑発行動を続けて陸に誘導させるのは軽いものだと思っていたが、よくよく考えればジャイアントクラブの大きさ的にその移動速度もかなりのものであると予想するべきだったと、彼は自身のミスを悔いた。
「けど、おじさんにもミズヒトの意地があるんでな!」
 ニコラスは何とか陸地に誘導しようと大奮発を始めた。ウェッジショットとコキュートスの乱れ打ちだ。自身の限界まで力を振り絞ることに決め、あと先は考えない様にした。

(うむ、これは、まずいな)
 天輝はニコラスが行なっている陸地への誘導。それが上手くいっていないことは一目でわかった。
 何とかしたい。そう思うのはやまやまだが、彼女の水中での行動力ではそれができないのはすぐにわかった。
(なんとかせねばのう……ふむ)
 と、そこまで考えて、一つの名案が生まれた。
(むっ、やってみるかの)
 そう思い、隣で泳ぐアンジェリカの肩を叩き上にあがる様に指示を出した。
 アンジェリカは不思議そうな顔をしながら海上に出るとこう尋ねた。
「何でしょうか?」
「はっはっ、何、海には飽きたとは思わんか?」
「は?」
「空を飛びたい気分ではないか?」
「あの、言っている意味が──」
「ちょっと行って来るのだ」
「いくってどこに?」
 アンジェリカがそう尋ねた時だ天輝は彼女の腕をむんずと掴んだ。
「まあ、ちょっと手助けして来るのだアンジェリカよ」
「あっえっ? あっ、私がですかぁぁぁぁぁ!」
 そう言って、天輝はアンジェリカをジャイアントクラブがいるであろう位置にな放り投げた。
 海での移動は不得意なら、それよりも早く移動する手段を使えば良い。すなわち水中以外での移動、彼女はそれに気付き実行したに過ぎなかった。
「まあ、これで上手くいけば良いのだが……」
 天輝はアンジェリカが落ちた海面の水柱を見てそう呟いた。

(天輝は後で説教ですね)
 アンジェリカはそう思いながら、彼女の直感に舌を巻いた。
 何と、ちょうどニコラスの近く、さらにはまだ少し遠いが手助けができる距離に自身がいることに気が付いた。
(合流できることが一番いいのですが……)
 それは望み過ぎというものだ。
 そう思いながら、アンジェラは行動を開始した。

「おっ? ……ありがたい」
 ニコラスはいつの間にか追いついているアンジェラに気づきそう呟いた。
「こうなれば、まっ何とかなるだろ」
 一人よりも二人になったことで何とか余裕ができたニコラスは少し我を忘れていた事を反省した。
「熱くなってたな……たっく俺らしかねぇ」
 楽して生きる。それがモットーだ。だが、少し我を忘れていたらしい。多分、ミスった自身に腹を立ててだろう。
「楽して生きる。だが、俺のせいで台無しにするのもってか、ったく、なら今回は最後まで全力だ」
 そう言って、彼はジャイアントクラブの誘導に専念するのだった。

「来たね」
 そう言った瞬間だ。ウェルスとレイラはそれぞれ構えをとった。
 レイラは剣を抜き、ウェルスは銃を構えた。そして、ジャイアントクラブがその姿を見せた。
「さて、ここからが仕事だよ。ウェルス」
「おう!」
 ウェルスはその声が聞こえるとその手に持つ銃から弾を打ち出した。彼の撃ったシルバーバレットはジャイアントクラブに直撃しその動きを一時期的に止めた。
「さて、お次はアンジェリカ」
「追いつきました! 食らいなさい! 『ギアインパクト』」
 そう言って彼女はその手に持つ大きな十字架を振り上げ、ジャイアントクラブに背後から一撃を与える。
 その思い一撃によってジャイアントクラブの甲羅にヒビが入る。
「レイラ」
「わかってる」
 マグノリアが声を掛けるよりも先にレイラは動いた。
「援護射撃だ」
 それを見たウェルスは銃を放ち、足の関節部分をピンポイントで撃ちまくった。
 その痛みによってだろうか。ジャイアントクラブはその自信の重さに耐えかね地面に崩れ落ちた。
「終わり」
 そして、その一言と共にその剣を蟹の脳天に突き刺すのだった。
 そして、ジャイアントクラブは息絶えたのだった。

 その日の夜。
「始まったね。『蟹料理』勝負。司会兼味見役のマグノリア・ホワイトだ。今回は誰が一番おいしい蟹料理を作れるのか競ってもらう。選手は一言ずつ意気込みを頼む」
「頑張ります」
 アンジェリカがそう言い。
「はっはっはっ!」
 天輝が笑い。
「何で私まで……」
 レイラは不平を呟いた。
「さて、僕においしいご飯を食べさせてくれ」
「いや、待て」
「何だい? 途中抜けのニコラス」
「おかしいだろ。何で料理勝負が始まるんだ……」
「仕方ないじゃないか。ほら、ウェルスが張り切り過ぎてあんなに採ってきてしまったのだから」
 そう言ってマグノリアはある場所を指差す。
 そこにはジャイアンクラブが山の様に積んであった。
「採りすぎた。なら、食べるしかない」
「いや、意味がわからない」
「さあって、次いくぞー!」
「ちょっと待てウェルス!」
 そう言って、ジャイアントクラブを絶滅させんという様にまた漁に出かけようとする彼を止めんと動き出すニコラス。
「さて、じゃあみんな始めよう。蟹料理を作って食べて飲もうか」
(まあ、ジャイアントクラブの生息域、捕獲方法、色々の情報が得られた。ジャイアントクラブの養殖も夢じゃないな)
 そんな打算を脳内で計算しながら、目の前の女性陣が作るかに料理に期待するマグノリアだった。