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ヨアヒム主催の怪談大会・求む、怖いもの好き参加者!

とある日の昼下がり、『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)は、自宅の机にて筆を執りながら苦戦していた。
「ぬおお……!? お化け、怪物、怪奇現象……。巷では色んな小さな怪談あるけれど、あえて原稿起こしするほどの怪談って何かな!? ぐはあ、頭がまっさらだぜ……。とんでもねえ依頼を受けちまったかもしれねえ……」
ヨアヒムは普段は軽い人間っぽく振舞うが、何気にいい奴でもある。
友人であるホラーハウス出版社の編集者に頼まれて雑誌の原稿執筆を引き受けたのだ。
次号の『月刊ホラーハウス』では、イ・ラプセルで起こった怪談の大特集が予定されていた。
しかし、引き受けたものの、特に良いアイデアもなく締め切りも近い!
「お!? そうだ!!」
ぴこん、とヨアヒムの頭上で電球が光り、閃いた!
「オラクルのみんなを誘うか……。そうだな……ヨアヒム主催の怪談大会ってことにするか! ま、このまえアクアフェスタとかあったし、ああいうお祭りにあやかって、ここはひとつお祭り騒ぎだ! それで、みんなからネタもらって、その勢いで原稿完成! ふはは、俺って天才!!」
お調子者のヨアヒムが閃いたのは怪談のネタではなく、怪談のネタ集めの方法だった。
おいおい、自力で原稿書けよ! と、いうツッコミはさて置いといて……。
ヨアヒム個人主催の怪談大会が近日、開催の運びとなった!
怪談ネタが好きあるいは得意なオラクルの皆さん、このどうしょうもないが愛嬌のある三文文士を助けてくれないだろうか?
「ぬおお……!? お化け、怪物、怪奇現象……。巷では色んな小さな怪談あるけれど、あえて原稿起こしするほどの怪談って何かな!? ぐはあ、頭がまっさらだぜ……。とんでもねえ依頼を受けちまったかもしれねえ……」
ヨアヒムは普段は軽い人間っぽく振舞うが、何気にいい奴でもある。
友人であるホラーハウス出版社の編集者に頼まれて雑誌の原稿執筆を引き受けたのだ。
次号の『月刊ホラーハウス』では、イ・ラプセルで起こった怪談の大特集が予定されていた。
しかし、引き受けたものの、特に良いアイデアもなく締め切りも近い!
「お!? そうだ!!」
ぴこん、とヨアヒムの頭上で電球が光り、閃いた!
「オラクルのみんなを誘うか……。そうだな……ヨアヒム主催の怪談大会ってことにするか! ま、このまえアクアフェスタとかあったし、ああいうお祭りにあやかって、ここはひとつお祭り騒ぎだ! それで、みんなからネタもらって、その勢いで原稿完成! ふはは、俺って天才!!」
お調子者のヨアヒムが閃いたのは怪談のネタではなく、怪談のネタ集めの方法だった。
おいおい、自力で原稿書けよ! と、いうツッコミはさて置いといて……。
ヨアヒム個人主催の怪談大会が近日、開催の運びとなった!
怪談ネタが好きあるいは得意なオラクルの皆さん、このどうしょうもないが愛嬌のある三文文士を助けてくれないだろうか?
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.イ・ラプセルの夏の怪談を披露すること。
プレイヤーの皆様、はじめまして。
新人ストーリーテラーのヤトノカミ・ケイジロウと申します。
今後ともよろしくお願いいたします。
さて、今回のシナリオですが、内容はずばりそのもの、怪談大会です。
アクアフェスタは終わってしまいましたが、夏はまだ終わっていません。
まあ、アクアフェスタも終わり、晩夏という時期に差し掛かっていますが。
さて、夏と言えば、水着や海もいいけれど、怪談!
ヨアヒム主催の怪談大会が開かれます!
以下、怪談大会の予定です。
<概略>
・この依頼はヨアヒム個人からの依頼(元をたどれば出版社の依頼)です。ヨアヒムが皆さんに事情を打ち明けた上での大会となります。ヨアヒムが勝手に皆さんの披露した怪談ネタをパクッて出版社に売ることはありません。スペシャルサンクスの形で皆さんのクレジット表記が『月刊ホラーハウス』に出ます。
・皆さんには怪談を披露して頂きます。この夏、イ・ラプセルで起こった怪談であれば基本的にOKです。PC視点では、実際にPCさんが体験したことでも創作でもかまいません。PL視点では、ぜひ怖い怪談を創作してみましょう。(あまり露骨な版権のパクりなどは禁止です。他のSTの「リプレイ」からの参照・引用もご容赦願います)
・怪談の司会進行はヨアヒムがやります。彼自身は怪談を披露しません。PCさんの予定参加人数は最大8名です。1人ずつ順番に怪談を披露して頂きます。複数人で同じ話を披露する場合は、最大3名までのチームでお願いします。(順番は誰からでもかまいません。皆さんの方で決めて頂いてもかまいません。決まっていない場合はSTの方で決めます)
<場所と時間帯など>
・怪談大会は、ヨアヒムの友人が個人経営している小さなレストラン「ドラキー」が会場となります。当日の夜は、店長のご厚意で店が貸し切りですので他のお客さんはいません。(店長は、ヨアヒムから普段、情報提供などをしてもらっている貸しがありますので)
・怪談大会の時間帯は午後8時から全員の怪談が終わるまでです。(2、3時間程度が予定)。ちなみにレストラン「ドラキー」がある場所は、街中でも治安が良い方面にあるお店ですので、夜開催の当イベントでも安心してご参加できます。
・店内は蒸気の力でやや涼しく保っています。25℃程度です。
・当日の天気は「くもり」です。
<その他>
・ヨアヒムからのサービスで皆さんにワンドリンクが付いています。飲みたい人は1杯までならどうぞ。未成年はソフトドリンク(アルコールを含まない飲料全般)のみ。成人はソフトドリンクあるいはアルコール。飲料の種類はレストランに一般的に置いてあるソフトドリンクかアルコールがあります。なお、当日は飽くまで怪談大会ですので食事はできません。
・「プレイング」では、怪談話そのもの以外にも話すときや聞くときの「演出」も入れられます。特別なアイテムが必要な場合は所持アイテムから出すようにお願いします。安くて簡単な小道具であればヨアヒムかお店が貸してくれます。例、ロウソク、鈴など。なお、「演出」を入れるのは必須ではありません。(ない場合、ST側でアレンジするかもしれません)
・「リプレイ」の文字数制限もあります。「怪談」の全文が長い場合、「プレイング」に入力した「怪談」全文がそのまま載らない場合もありますのでご了承ください。
<称号の予定>
・怪談の披露でご活躍された方には怪談に関する「称号」配布を予定しています。
新人ストーリーテラーのヤトノカミ・ケイジロウと申します。
今後ともよろしくお願いいたします。
さて、今回のシナリオですが、内容はずばりそのもの、怪談大会です。
アクアフェスタは終わってしまいましたが、夏はまだ終わっていません。
まあ、アクアフェスタも終わり、晩夏という時期に差し掛かっていますが。
さて、夏と言えば、水着や海もいいけれど、怪談!
ヨアヒム主催の怪談大会が開かれます!
以下、怪談大会の予定です。
<概略>
・この依頼はヨアヒム個人からの依頼(元をたどれば出版社の依頼)です。ヨアヒムが皆さんに事情を打ち明けた上での大会となります。ヨアヒムが勝手に皆さんの披露した怪談ネタをパクッて出版社に売ることはありません。スペシャルサンクスの形で皆さんのクレジット表記が『月刊ホラーハウス』に出ます。
・皆さんには怪談を披露して頂きます。この夏、イ・ラプセルで起こった怪談であれば基本的にOKです。PC視点では、実際にPCさんが体験したことでも創作でもかまいません。PL視点では、ぜひ怖い怪談を創作してみましょう。(あまり露骨な版権のパクりなどは禁止です。他のSTの「リプレイ」からの参照・引用もご容赦願います)
・怪談の司会進行はヨアヒムがやります。彼自身は怪談を披露しません。PCさんの予定参加人数は最大8名です。1人ずつ順番に怪談を披露して頂きます。複数人で同じ話を披露する場合は、最大3名までのチームでお願いします。(順番は誰からでもかまいません。皆さんの方で決めて頂いてもかまいません。決まっていない場合はSTの方で決めます)
<場所と時間帯など>
・怪談大会は、ヨアヒムの友人が個人経営している小さなレストラン「ドラキー」が会場となります。当日の夜は、店長のご厚意で店が貸し切りですので他のお客さんはいません。(店長は、ヨアヒムから普段、情報提供などをしてもらっている貸しがありますので)
・怪談大会の時間帯は午後8時から全員の怪談が終わるまでです。(2、3時間程度が予定)。ちなみにレストラン「ドラキー」がある場所は、街中でも治安が良い方面にあるお店ですので、夜開催の当イベントでも安心してご参加できます。
・店内は蒸気の力でやや涼しく保っています。25℃程度です。
・当日の天気は「くもり」です。
<その他>
・ヨアヒムからのサービスで皆さんにワンドリンクが付いています。飲みたい人は1杯までならどうぞ。未成年はソフトドリンク(アルコールを含まない飲料全般)のみ。成人はソフトドリンクあるいはアルコール。飲料の種類はレストランに一般的に置いてあるソフトドリンクかアルコールがあります。なお、当日は飽くまで怪談大会ですので食事はできません。
・「プレイング」では、怪談話そのもの以外にも話すときや聞くときの「演出」も入れられます。特別なアイテムが必要な場合は所持アイテムから出すようにお願いします。安くて簡単な小道具であればヨアヒムかお店が貸してくれます。例、ロウソク、鈴など。なお、「演出」を入れるのは必須ではありません。(ない場合、ST側でアレンジするかもしれません)
・「リプレイ」の文字数制限もあります。「怪談」の全文が長い場合、「プレイング」に入力した「怪談」全文がそのまま載らない場合もありますのでご了承ください。
<称号の予定>
・怪談の披露でご活躍された方には怪談に関する「称号」配布を予定しています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
1個
2個
1個
1個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
6/8
6/8
公開日
2018年09月11日
2018年09月11日
†メイン参加者 6人†
●トミコ「食の怪談」
暗闇でロウソクの灯がゆらぎ、蒸気の冷気が妙に心地良い中、怪談大会が始まる。
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)は、厳かに口を開いた。
「さて、本日は怪談大会にお集り頂き誠にありがとうございます! ま、さっそく始めようか! トップバッターは、食堂の怪談おばちゃん、トミコおばちゃんだ!」
暗闇の中、トミコ・マール(CL3000192)は、燃えているロウソクを支える大きめのスタンドの前に立つ。
ゆらりと顔が浮かぶと、神妙な顔つきで怪談を始めた。
「さあてと……。アタシの怪談は、世にも恐ろしい食べ物の恨みの話だ……」
***
むか~しむかし、あるところにそれはなんと裕福な家庭があったそうじゃ。
その夫婦には一人娘がおり、その子は生まれた時から何不自由なく育てられておった。
(演出なので、おばあちゃんのような語り口調で行くよぉ!)
そのせいかのぅ。
その子は少し、いや、かなりわがままな子に育ってしもうた。
「何? あたしが一番可愛くないってどういうこと? もっと洋服買いなさいよ!」
何をやっても自分が一番でないとかんしゃくを起こす子じゃった。
「ふん! こんなおかず、まずくて食べられない! ケーキ持って来なさいよ!」
もちろん食べ物も好きなものしか食べないのじゃ。
ある日、その子が食事をとらなくなった。
心配した両親は有名な料理人の料理を食べさせてみることしたんじゃが。
「おええ! なにこれ、まずい!! ぺっぺ!!」
口にした途端、料理を吐き出して皿ごと捨ててしまったそうな。
そんなことが続いたある日、それは起こったんじゃ!
その日の晩も、女の子は料理を食べず、捨て散らかしおった。
その子は、あまりにもお腹がすいたので、夜、起きてしまったんじゃ。
両親にばれないように何か食べ物はないかと台所へ行くと……。
そこには何かがガサゴソと動く音がするとな!
『ざくり、ざくり。べちょ、べちょ、ぐしゃあああ!!』
なんと、それは!?
***
「と、いうお話なのさ」
声色を使ったトミコの怪談は終わりを告げた。
そこでヨアヒムがコメントする。
「ふぅ。トップバッターに相応しい怖い話だね? あ、でも、その話のオチは!?」
トミコがニヤリと答える。
「ひひひ……。あえて語らないのさ。その後どうなったか、語らない方が怖いだろうねぇ?」
うふふ、と『ぷりけつ。』タマキ・アケチ(CL3000011)が笑い出す。
「いやあ、ゾクゾクしました! 美味しそうなお話、ごちそうさまでした、ふふ!」
え? そういう話だったか!?
皆、焦った。
●カノン「海の怪談」
「続いては……。劇団仕込みのカノンちゃん! お願いするね!」
今度は『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)の怪談だ。彼女は、飲んでいたオレンジジュースをテーブルに置いた。ロウソクの位置をやや離した場所に移動させ、ガサガサと何かする。ん? 仕掛けだろうか?
「カノンの劇団でもホラー系のお芝居は割と人気あるからねー! とっておきの怪談を披露するよー!」
***
今年の夏、とある夫婦がとある島で旅をしてたんだ。
島の末端、断崖絶壁の方で二人は観光してたんだけれど……。
その日、大嵐に遭って、遭難状態になったんだよ。
「ねえ、あなた? 本当にこの道でいいの?」
「うむ。この道を通ると島の大通りに出るはずだ!」
夫に促されて、妻も断崖絶壁の細道を歩くことに……。
海際なので、嵐に加えて大波もすさまじい日だ。
夫婦は、大波にさらわれないように、一定間隔で岩陰に身を潜ませて進まないといけなかったんだよ。
でもね。
幾つめかの岩陰に差し掛かったとき、そこには一人分の大きさしかなかったんだ。
夫婦に迷っている時間はなかった。
大波は、すぐそこまで来てたんだ!
「すまん、おまえ!」
「きゃ!?」
夫の方が、自分が助かるために妻を崖から突き落としたんだよ!
「ふはは。邪魔な奴が消えた。遺産も不倫も思いのままだ!」
そして夫の方はその晩、何とか無事に宿まで帰れたんだけれど……。
ぴちゃり、ぴちゃり……。
***
カノンは、足に巻いた濡れタオルを踏みつけながら、足音の効果音を出す。
怪談仲間たちは、どこからか怪しい水音の足音が聞こえて来て、ぞっとしている。
(お? みんな顔色青いね? 早く来て準備したかいあったね?)
怪談は続く。
***
『ここでもなーい、ここでもなーい!』
その声の主は、次々と客室の扉を開けて行く……。
夫は、聞き覚えがあるその声に真っ青だ!
そう、それは死んだはずの妻の声だからだよ!
やがて、足音が止まり……。
急に扉がバタン、と開いて……。
***
『ここだー!!』
カノンが突然、叫ぶ!
血だらけの顔にメイクしたカノンの顔のアップがロウソクから浮き上がった!
「きゃあああ!!」
真っ先に悲鳴を上げたのはエル・エル(CL3000370)だった。
(はっ!? しまった、術にハマったわ! あたしとしたことが……)
エルは外見こそ少女だが200才を超えている。
なので、ちょっと恥ずかしかった。
「どーかな? 怖かったかなー?」
カノンはニヤニヤとしてエルに声をかける。
「ま、まあ、認めてもいいぐらいの怖さだね……。現にそこのヨアちゃん、腰抜かしているし?」
エルが右手で指さした先には、ヨアヒムが椅子をひっくり返して倒れていた。
●エル「不思議体験」
「いやー、マジこえかったー!? お陰で盛り上がったね? んじゃ、次は魔女っ娘エルちゃん、行ってみようか?」
エルはザクロジュースを飲み干すと、ロウソクを自身に近づけた。
そして、少々迷いながらの口調で話し始める。
「あたしの怪談……。いや、怪談って程でもないわね? ちょっと不思議な体験談なんだけれど、聴いてくれる?」
***
この話は、まだあたしが小さかった頃のこと。
10才ぐらいのときだったかな?
森に住んでいたんだけれどね、迷子になったことがあったの。
ざああああ……。
と、突然の強い霧に強い雨……。
もう家に帰れないと思ったわ、そのときは。
「ああん!? どうしよー? ん? あそこにいるのは!?」
黒い髪のお姉さんがいたのよ。
そうねえ、外見年齢で20才ぐらいだったかしら。
あたしは、恐る恐る、道を尋ねて……。
「あら? あなた迷子なのですか? え? 魔女の住処ですか? そうですね……。あそこに大きな一本杉が見えますよね? それでですね……。ん? わからないですか? では、一緒に行きましょう! ご案内します!」
「(え? なんで知ってるの?)う、うん、おねがい……」
とにかく、そのお姉さんと一緒に言われた通りの道を進んでみたの。
そうしたら、見覚えのある道にやっと出くわして、ほっとしたら……。
「あ! ここだわ! もうわかる!!」
あたしは、うれしくなって全力で集落まで走っちゃって……。
お礼するのも忘れちゃった。
でも変よね。
その森にはあたしたち魔女の一族くらいしか住んでないし。
しかもそのお姉さん、頭に、ソラビトのような羽があったから、てっきり血族の誰かかと思ったんだけれど……。
「え? 誰だ?」
みんなそう言うの!
知らないって!
なんか怖くない?
まあ、あたしはお礼が言えなかったのがちょっと心残りだけれど……。
***
エルが不思議な話を語り終えると、ヨアヒムがうなっていた。
「ううむ……。興味深い話だね……。ホラーというより、ミステリ寄りかな?」
悩んでいるヨアヒムに『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)が助け船を出した。
「そうだな……。これは私の邪推ではあるが……おそらくその女は神使ではないだろうか? 頭に羽がある、普通は知らないことを知っている、親切に導く、でも誰も彼女を知らない……」
エルも当時のことをもう一度、思い出してみる。
「そうかも……!? 口惜しいけれど、うろ覚えなんで何とも……」
いったいそのお姉さんは何者だったのか?
不思議が不思議を呼ぶ話だ。
怪談の夜は深まる……。
●タマキ「怪談というより?」
「序盤戦も終わり、加熱してきたところで、怪人のタマキ君に次をお願いしようか!」
「あはは、もちろんですとも! ヨアヒムさんたちのためなら喜んでお話し致しましょう……! 世にも恐ろしい晩夏の怪談を……」
今度は、優雅にローズティをすすっていたタマキが怪談を始める。
タマキは声を潜め、真剣な表情になる。
声のトーンに抑揚を付けながら、語り出す……。
***
先日、寝苦しい暑さの夜のことでした……。
あまりの暑さで深夜に目覚めました。
「ふわぁ……。暑いですね……実に……寝られません」
暑さでぼんやりしていましたら……。
『うぅう、うぅう……!!』
「おや? どうしたものでしょう!?」
どこかから男性の低いうめき声が聞こえてきたのです!
そして、その瞬間……。
「はうぅ!?」
私の身体が動かなくなったのです!
金縛りという奴でしょうか?
『うぅう、うぅう……!!』
しかもその声は止みません! 止むどころか、むしろ……。
『うぅうー!!』
『うぅー!!』
『うー!!』
どんどん私に近づいて来ます!
一方、私の方は目だけは何とか動かせました。
部屋の様子をざっと目視で確認しました。
でも、誰もいなかったんです!
『うぅぅぅ……!!』
ついにうめき声が私の耳元まで近づいた瞬間……!!
血走った目をした髪の長い男が、私をじぃっと見つめていたのです!
***
『うぎゃあああ!!』
タマキは早着替えのスキルで黒髪ロングウィッグを装着!
その幽霊男の姿を真似て、お化け屋敷そのものの迫力で叫び出した!
「ぎゃあー!」
ここでヨアヒム、再びひっくり返る!
女性陣は無言かつ真剣な目つきで、タマキの変装を凝視していた。
怪談は続く。
***
その後、私はそのままその男に目を塞がれて……。
身体をまさぐられる感覚に陥りました。
「あん♪ あはん♪ いやん♪ うふふ~♪」
やがて私は意識を失いました。
それが眠りだったのか気絶だったのか定かではありませんが。
「ん? スズメに淡い日差し……朝……ですか?」
気付けば、朝になっていました。
昨夜のことは夢だったのでしょうか?
違和感を覚えつつも、洗面台へと向かい……私は驚愕しました!
鏡に、真っ赤な血文字でこう書かれていたのです。
『ネルトキ パンツ ハケ』
そう、寝るときは全裸だったんですよ、私!!
起きたら、いつの間にかピンクのガラパンが装着されていたのでした!!
***
『きゃあああ!!』
女性陣が叫び出した。軽くパニック状態だ。
「うふふ……。大成功です! 皆様、とても怖がっていらっしゃる!」
ヨアヒムがタマキの理解を助ける。
「う、うん? 女性陣は、怪談を怖がっているというよりは……変態を恐れて叫んでいるように見えないだろうか?」
そこで真っ赤な顔になった『イ・ラプセル自由騎士団』シア・ウィルナーグ(CL3000028)が事のてん末を正確な言葉でまとめる。
「キミさ、それ怪談じゃなくて猥談だよっ!!」
女性陣全員がうなずいた。
なんと、タマキは怪談を語るつもりが、いつの間にか猥談になっていたのだ!
いやいや、怖いのでこれも立派な怪談だ。
●シア「孤児院の怪談」
「さあ、クライマックスに差し掛かったね! んじゃ、怪談騎士のシアちゃんに次をお願い!」
司会から呼ばれたシアは、ホットミルクを飲み終えると、きらりと目が光った。
「いよいよボクの番!? 今からお話する怪談、ボクが実際に体験した話だよ……」
***
ボクがお世話になってた孤児院は託児所もやっているんだよ。
いつも真っ赤なボールで遊んでたAちゃんっていう子が託児所にいたんだ。
ある日のこと、彼女は遊んでいる最中にボールをなくしてしまったらしくて……。
「うぇぇぇん! ボールがないよ! 助けてー!」
「だいじょーぶっ! ボクも手伝うっ!!」
ボクらでボールを探したんだけれど……。
暗くなっても、とうとう見つからず……。
また明日、探そうってことになったんだ。
やがて晩ご飯の時間が過ぎ、食後、間もなくのこと……。
『私のボールが見つからないの……。 私のボールはどこ……?』
Aちゃんの声がどこからか聞こえてきたんだけれど……。
「ねえ、先生? 今、Aちゃんの声、聞こえたよねっ?」
「は? それは誰だい、シアちゃん!?」
子どもたちはAちゃんの声だと騒ぐ一方、先生たちは誰も彼女を知らなかったんだ!
どうも耳を澄ますと、倉庫から声が聞こえてくるみたいなので……。
ボクは勇気を出して倉庫へ向かった。
ぼぉぉぉ……。
薄暗い倉庫の中央で女の子が立っていたんだ。
なぜか、首から上が影になっていて顔が見えなかったけれど……。
Aちゃんは尋ねてきた。
「私のボールが見つからないの……。あなたのボールをちょうだい?」
「ボール? 持ってないけれどっ?」
答えたらAちゃんは……。
『じゃあ、あなたの頭をちょうだいっ!』
ボクの頭を欲して、刈り取るかの勢いで、Aちゃんが突っ込んで来たんだ!
ドカッ!!
倉庫の扉が大開きした。
異常事態を察した先生が駆けつけてくれた!
「大丈夫か、シアちゃん!?」
「う、うん、大丈夫……。先生、そこにAちゃんがっ!!」
でも、Aちゃんはもういなかったんだ……。
その後、Aちゃんが現れることもなかった。
しかも、ボク含めて誰一人、Aちゃんの顔を思い出せなかったんだよね……。
***
シアが怪談を語り終えると、会場はシーンと静まった。
怖さで誰一人、口が利けなくなってしまったのだろうか?
唯一、シアだけが口を開いて、場を和ませるかのようににこやかに話し出す。
「あはは、なんてね♪ 怖かったかな? ん? あれ!? 誰だろう? キミの背後に誰かいるみたいだねっ? なんか人数が増えてないっ?」
ヨアヒムの背後には……。
首がなくて赤いボールを抱えているAちゃんがそこにいた!
『私のボールはどこ……?』
「ぎゃあああ!!」
ヨアヒムは今度こそ卒倒した!
パニックなのはヨアヒムだけじゃない!
怪談仲間全員が、わー、きゃー、と大騒ぎだ!
「あはは、ごめん、やり過ぎたっ! そこのAちゃんって本物じゃないんだっ! ボクが『幻想』のスキルで創った『演出』なんだよっ!」
カノンはパニックの中、解答を教えられるとほっとした。
そして、プロの演劇人として心の中でメモを取る。
「なるほどね……。『幻想』ってスキル使うとこんなに怖い演技ができるんだね? よし、カノンも今度、応用して試してみよ♪」
●ツボミ「降霊術」
半ば腰を抜かしつつあるヨアヒムは、これでも司会なのでキリっと持ち直した。
「おっしゃあ! 次でラスト! 悲しいが怪談ナイトもこれでお別れだ! 最後を飾るのは、マッドなドクター・ツボミセンセだ!」
ツボミはアマノホカリのお茶をすすった後、呼ばれると、咳払いをした。
「うむ。次の私で最後か……。今回、怪談大会ということだが、厳密には『談』でなくても良いのだな? 例えば、降霊術をやりたいのだが……」
降霊術の一言で会場が沸いた!
今までとは趣が違う展開で皆の表情が嬉々とした。
「では、始めよう。全員、話の間はずっと目を閉じていてくれよ?」
会場にいる全員が目を閉じたことを確認すると、ツボミは静かに歩き回り始めた。
やがて語り出す。
「視界を閉じることは、世界との隔絶に通ずる。それゆえ、閉じた目を開けた時、異界に迷い込むことがあるそうだ。その時、全ての者の記憶から己の存在が消えるとも言われている……」
ヒーリングの音楽が流れた。
皆、目を閉じつつ、波の音を聴く。
「目を開けた時に見える風景は同じ。ほとんど変わりはしない。ただ、住まう者だけが、違う」
きぃぃぃ!
ツボミがテーブルを爪で掻いた。
皆、ぶるっとした。
「妙な音が幾重にも聞こえる。音には独特の抑揚があって、会話にも聞こえる。それは近づいて来る……。ベチャ、ベチャと……。それは赤黒く、所々青白くもある……。顔は歪に大きく、体がごちゃごちゃで、手足は多数で長く、動きは鈍い。苦しげにのたくり、うごめく。ただ、異様に大きい目だけが、ボロボロと粘性の赤黒い何かを零しながらもこちらを見ている。やがて手を伸ばす……」
ツボミは用意していた温かい濡れ布を各自の背中に貼って歩き回る。
皆、ぬるっとして、びくん、とする。
「そんな魔性の霊だが、奴らが現世に戻る手段は一つだけあってな。実は、恋人や家族にだけは繋がりが残り、そこから認識することができる。貴様が目を閉じている時、その背に触れるのだ。奴らが触れている間に、貴様が目を開ければ……『交代』できる。だからな、目を閉じたら気を付けろよ! 貴様らは既に誰かと『交代』しているかもしれないぞ!?」
ガタン、とトミコが立ち上がった!
「みんな、大丈夫かい!? 『交代』した人はいないだろうねぇ!?」
真顔になったとトミコが皆に呼びかけ、お互いに確認を急ぐ。
オラクルたちはお互いを確認するが、誰一人「交代」してはいなかった。
「おほほ。とても楽しい怪談大会でしたわね! では皆様、ごきげんよう!」
と、大会を最後に締めたのはヨアヒムであった。
ヨアヒムが「交代」したところで、皆様、お疲れ様!
了
暗闇でロウソクの灯がゆらぎ、蒸気の冷気が妙に心地良い中、怪談大会が始まる。
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)は、厳かに口を開いた。
「さて、本日は怪談大会にお集り頂き誠にありがとうございます! ま、さっそく始めようか! トップバッターは、食堂の怪談おばちゃん、トミコおばちゃんだ!」
暗闇の中、トミコ・マール(CL3000192)は、燃えているロウソクを支える大きめのスタンドの前に立つ。
ゆらりと顔が浮かぶと、神妙な顔つきで怪談を始めた。
「さあてと……。アタシの怪談は、世にも恐ろしい食べ物の恨みの話だ……」
***
むか~しむかし、あるところにそれはなんと裕福な家庭があったそうじゃ。
その夫婦には一人娘がおり、その子は生まれた時から何不自由なく育てられておった。
(演出なので、おばあちゃんのような語り口調で行くよぉ!)
そのせいかのぅ。
その子は少し、いや、かなりわがままな子に育ってしもうた。
「何? あたしが一番可愛くないってどういうこと? もっと洋服買いなさいよ!」
何をやっても自分が一番でないとかんしゃくを起こす子じゃった。
「ふん! こんなおかず、まずくて食べられない! ケーキ持って来なさいよ!」
もちろん食べ物も好きなものしか食べないのじゃ。
ある日、その子が食事をとらなくなった。
心配した両親は有名な料理人の料理を食べさせてみることしたんじゃが。
「おええ! なにこれ、まずい!! ぺっぺ!!」
口にした途端、料理を吐き出して皿ごと捨ててしまったそうな。
そんなことが続いたある日、それは起こったんじゃ!
その日の晩も、女の子は料理を食べず、捨て散らかしおった。
その子は、あまりにもお腹がすいたので、夜、起きてしまったんじゃ。
両親にばれないように何か食べ物はないかと台所へ行くと……。
そこには何かがガサゴソと動く音がするとな!
『ざくり、ざくり。べちょ、べちょ、ぐしゃあああ!!』
なんと、それは!?
***
「と、いうお話なのさ」
声色を使ったトミコの怪談は終わりを告げた。
そこでヨアヒムがコメントする。
「ふぅ。トップバッターに相応しい怖い話だね? あ、でも、その話のオチは!?」
トミコがニヤリと答える。
「ひひひ……。あえて語らないのさ。その後どうなったか、語らない方が怖いだろうねぇ?」
うふふ、と『ぷりけつ。』タマキ・アケチ(CL3000011)が笑い出す。
「いやあ、ゾクゾクしました! 美味しそうなお話、ごちそうさまでした、ふふ!」
え? そういう話だったか!?
皆、焦った。
●カノン「海の怪談」
「続いては……。劇団仕込みのカノンちゃん! お願いするね!」
今度は『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)の怪談だ。彼女は、飲んでいたオレンジジュースをテーブルに置いた。ロウソクの位置をやや離した場所に移動させ、ガサガサと何かする。ん? 仕掛けだろうか?
「カノンの劇団でもホラー系のお芝居は割と人気あるからねー! とっておきの怪談を披露するよー!」
***
今年の夏、とある夫婦がとある島で旅をしてたんだ。
島の末端、断崖絶壁の方で二人は観光してたんだけれど……。
その日、大嵐に遭って、遭難状態になったんだよ。
「ねえ、あなた? 本当にこの道でいいの?」
「うむ。この道を通ると島の大通りに出るはずだ!」
夫に促されて、妻も断崖絶壁の細道を歩くことに……。
海際なので、嵐に加えて大波もすさまじい日だ。
夫婦は、大波にさらわれないように、一定間隔で岩陰に身を潜ませて進まないといけなかったんだよ。
でもね。
幾つめかの岩陰に差し掛かったとき、そこには一人分の大きさしかなかったんだ。
夫婦に迷っている時間はなかった。
大波は、すぐそこまで来てたんだ!
「すまん、おまえ!」
「きゃ!?」
夫の方が、自分が助かるために妻を崖から突き落としたんだよ!
「ふはは。邪魔な奴が消えた。遺産も不倫も思いのままだ!」
そして夫の方はその晩、何とか無事に宿まで帰れたんだけれど……。
ぴちゃり、ぴちゃり……。
***
カノンは、足に巻いた濡れタオルを踏みつけながら、足音の効果音を出す。
怪談仲間たちは、どこからか怪しい水音の足音が聞こえて来て、ぞっとしている。
(お? みんな顔色青いね? 早く来て準備したかいあったね?)
怪談は続く。
***
『ここでもなーい、ここでもなーい!』
その声の主は、次々と客室の扉を開けて行く……。
夫は、聞き覚えがあるその声に真っ青だ!
そう、それは死んだはずの妻の声だからだよ!
やがて、足音が止まり……。
急に扉がバタン、と開いて……。
***
『ここだー!!』
カノンが突然、叫ぶ!
血だらけの顔にメイクしたカノンの顔のアップがロウソクから浮き上がった!
「きゃあああ!!」
真っ先に悲鳴を上げたのはエル・エル(CL3000370)だった。
(はっ!? しまった、術にハマったわ! あたしとしたことが……)
エルは外見こそ少女だが200才を超えている。
なので、ちょっと恥ずかしかった。
「どーかな? 怖かったかなー?」
カノンはニヤニヤとしてエルに声をかける。
「ま、まあ、認めてもいいぐらいの怖さだね……。現にそこのヨアちゃん、腰抜かしているし?」
エルが右手で指さした先には、ヨアヒムが椅子をひっくり返して倒れていた。
●エル「不思議体験」
「いやー、マジこえかったー!? お陰で盛り上がったね? んじゃ、次は魔女っ娘エルちゃん、行ってみようか?」
エルはザクロジュースを飲み干すと、ロウソクを自身に近づけた。
そして、少々迷いながらの口調で話し始める。
「あたしの怪談……。いや、怪談って程でもないわね? ちょっと不思議な体験談なんだけれど、聴いてくれる?」
***
この話は、まだあたしが小さかった頃のこと。
10才ぐらいのときだったかな?
森に住んでいたんだけれどね、迷子になったことがあったの。
ざああああ……。
と、突然の強い霧に強い雨……。
もう家に帰れないと思ったわ、そのときは。
「ああん!? どうしよー? ん? あそこにいるのは!?」
黒い髪のお姉さんがいたのよ。
そうねえ、外見年齢で20才ぐらいだったかしら。
あたしは、恐る恐る、道を尋ねて……。
「あら? あなた迷子なのですか? え? 魔女の住処ですか? そうですね……。あそこに大きな一本杉が見えますよね? それでですね……。ん? わからないですか? では、一緒に行きましょう! ご案内します!」
「(え? なんで知ってるの?)う、うん、おねがい……」
とにかく、そのお姉さんと一緒に言われた通りの道を進んでみたの。
そうしたら、見覚えのある道にやっと出くわして、ほっとしたら……。
「あ! ここだわ! もうわかる!!」
あたしは、うれしくなって全力で集落まで走っちゃって……。
お礼するのも忘れちゃった。
でも変よね。
その森にはあたしたち魔女の一族くらいしか住んでないし。
しかもそのお姉さん、頭に、ソラビトのような羽があったから、てっきり血族の誰かかと思ったんだけれど……。
「え? 誰だ?」
みんなそう言うの!
知らないって!
なんか怖くない?
まあ、あたしはお礼が言えなかったのがちょっと心残りだけれど……。
***
エルが不思議な話を語り終えると、ヨアヒムがうなっていた。
「ううむ……。興味深い話だね……。ホラーというより、ミステリ寄りかな?」
悩んでいるヨアヒムに『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)が助け船を出した。
「そうだな……。これは私の邪推ではあるが……おそらくその女は神使ではないだろうか? 頭に羽がある、普通は知らないことを知っている、親切に導く、でも誰も彼女を知らない……」
エルも当時のことをもう一度、思い出してみる。
「そうかも……!? 口惜しいけれど、うろ覚えなんで何とも……」
いったいそのお姉さんは何者だったのか?
不思議が不思議を呼ぶ話だ。
怪談の夜は深まる……。
●タマキ「怪談というより?」
「序盤戦も終わり、加熱してきたところで、怪人のタマキ君に次をお願いしようか!」
「あはは、もちろんですとも! ヨアヒムさんたちのためなら喜んでお話し致しましょう……! 世にも恐ろしい晩夏の怪談を……」
今度は、優雅にローズティをすすっていたタマキが怪談を始める。
タマキは声を潜め、真剣な表情になる。
声のトーンに抑揚を付けながら、語り出す……。
***
先日、寝苦しい暑さの夜のことでした……。
あまりの暑さで深夜に目覚めました。
「ふわぁ……。暑いですね……実に……寝られません」
暑さでぼんやりしていましたら……。
『うぅう、うぅう……!!』
「おや? どうしたものでしょう!?」
どこかから男性の低いうめき声が聞こえてきたのです!
そして、その瞬間……。
「はうぅ!?」
私の身体が動かなくなったのです!
金縛りという奴でしょうか?
『うぅう、うぅう……!!』
しかもその声は止みません! 止むどころか、むしろ……。
『うぅうー!!』
『うぅー!!』
『うー!!』
どんどん私に近づいて来ます!
一方、私の方は目だけは何とか動かせました。
部屋の様子をざっと目視で確認しました。
でも、誰もいなかったんです!
『うぅぅぅ……!!』
ついにうめき声が私の耳元まで近づいた瞬間……!!
血走った目をした髪の長い男が、私をじぃっと見つめていたのです!
***
『うぎゃあああ!!』
タマキは早着替えのスキルで黒髪ロングウィッグを装着!
その幽霊男の姿を真似て、お化け屋敷そのものの迫力で叫び出した!
「ぎゃあー!」
ここでヨアヒム、再びひっくり返る!
女性陣は無言かつ真剣な目つきで、タマキの変装を凝視していた。
怪談は続く。
***
その後、私はそのままその男に目を塞がれて……。
身体をまさぐられる感覚に陥りました。
「あん♪ あはん♪ いやん♪ うふふ~♪」
やがて私は意識を失いました。
それが眠りだったのか気絶だったのか定かではありませんが。
「ん? スズメに淡い日差し……朝……ですか?」
気付けば、朝になっていました。
昨夜のことは夢だったのでしょうか?
違和感を覚えつつも、洗面台へと向かい……私は驚愕しました!
鏡に、真っ赤な血文字でこう書かれていたのです。
『ネルトキ パンツ ハケ』
そう、寝るときは全裸だったんですよ、私!!
起きたら、いつの間にかピンクのガラパンが装着されていたのでした!!
***
『きゃあああ!!』
女性陣が叫び出した。軽くパニック状態だ。
「うふふ……。大成功です! 皆様、とても怖がっていらっしゃる!」
ヨアヒムがタマキの理解を助ける。
「う、うん? 女性陣は、怪談を怖がっているというよりは……変態を恐れて叫んでいるように見えないだろうか?」
そこで真っ赤な顔になった『イ・ラプセル自由騎士団』シア・ウィルナーグ(CL3000028)が事のてん末を正確な言葉でまとめる。
「キミさ、それ怪談じゃなくて猥談だよっ!!」
女性陣全員がうなずいた。
なんと、タマキは怪談を語るつもりが、いつの間にか猥談になっていたのだ!
いやいや、怖いのでこれも立派な怪談だ。
●シア「孤児院の怪談」
「さあ、クライマックスに差し掛かったね! んじゃ、怪談騎士のシアちゃんに次をお願い!」
司会から呼ばれたシアは、ホットミルクを飲み終えると、きらりと目が光った。
「いよいよボクの番!? 今からお話する怪談、ボクが実際に体験した話だよ……」
***
ボクがお世話になってた孤児院は託児所もやっているんだよ。
いつも真っ赤なボールで遊んでたAちゃんっていう子が託児所にいたんだ。
ある日のこと、彼女は遊んでいる最中にボールをなくしてしまったらしくて……。
「うぇぇぇん! ボールがないよ! 助けてー!」
「だいじょーぶっ! ボクも手伝うっ!!」
ボクらでボールを探したんだけれど……。
暗くなっても、とうとう見つからず……。
また明日、探そうってことになったんだ。
やがて晩ご飯の時間が過ぎ、食後、間もなくのこと……。
『私のボールが見つからないの……。 私のボールはどこ……?』
Aちゃんの声がどこからか聞こえてきたんだけれど……。
「ねえ、先生? 今、Aちゃんの声、聞こえたよねっ?」
「は? それは誰だい、シアちゃん!?」
子どもたちはAちゃんの声だと騒ぐ一方、先生たちは誰も彼女を知らなかったんだ!
どうも耳を澄ますと、倉庫から声が聞こえてくるみたいなので……。
ボクは勇気を出して倉庫へ向かった。
ぼぉぉぉ……。
薄暗い倉庫の中央で女の子が立っていたんだ。
なぜか、首から上が影になっていて顔が見えなかったけれど……。
Aちゃんは尋ねてきた。
「私のボールが見つからないの……。あなたのボールをちょうだい?」
「ボール? 持ってないけれどっ?」
答えたらAちゃんは……。
『じゃあ、あなたの頭をちょうだいっ!』
ボクの頭を欲して、刈り取るかの勢いで、Aちゃんが突っ込んで来たんだ!
ドカッ!!
倉庫の扉が大開きした。
異常事態を察した先生が駆けつけてくれた!
「大丈夫か、シアちゃん!?」
「う、うん、大丈夫……。先生、そこにAちゃんがっ!!」
でも、Aちゃんはもういなかったんだ……。
その後、Aちゃんが現れることもなかった。
しかも、ボク含めて誰一人、Aちゃんの顔を思い出せなかったんだよね……。
***
シアが怪談を語り終えると、会場はシーンと静まった。
怖さで誰一人、口が利けなくなってしまったのだろうか?
唯一、シアだけが口を開いて、場を和ませるかのようににこやかに話し出す。
「あはは、なんてね♪ 怖かったかな? ん? あれ!? 誰だろう? キミの背後に誰かいるみたいだねっ? なんか人数が増えてないっ?」
ヨアヒムの背後には……。
首がなくて赤いボールを抱えているAちゃんがそこにいた!
『私のボールはどこ……?』
「ぎゃあああ!!」
ヨアヒムは今度こそ卒倒した!
パニックなのはヨアヒムだけじゃない!
怪談仲間全員が、わー、きゃー、と大騒ぎだ!
「あはは、ごめん、やり過ぎたっ! そこのAちゃんって本物じゃないんだっ! ボクが『幻想』のスキルで創った『演出』なんだよっ!」
カノンはパニックの中、解答を教えられるとほっとした。
そして、プロの演劇人として心の中でメモを取る。
「なるほどね……。『幻想』ってスキル使うとこんなに怖い演技ができるんだね? よし、カノンも今度、応用して試してみよ♪」
●ツボミ「降霊術」
半ば腰を抜かしつつあるヨアヒムは、これでも司会なのでキリっと持ち直した。
「おっしゃあ! 次でラスト! 悲しいが怪談ナイトもこれでお別れだ! 最後を飾るのは、マッドなドクター・ツボミセンセだ!」
ツボミはアマノホカリのお茶をすすった後、呼ばれると、咳払いをした。
「うむ。次の私で最後か……。今回、怪談大会ということだが、厳密には『談』でなくても良いのだな? 例えば、降霊術をやりたいのだが……」
降霊術の一言で会場が沸いた!
今までとは趣が違う展開で皆の表情が嬉々とした。
「では、始めよう。全員、話の間はずっと目を閉じていてくれよ?」
会場にいる全員が目を閉じたことを確認すると、ツボミは静かに歩き回り始めた。
やがて語り出す。
「視界を閉じることは、世界との隔絶に通ずる。それゆえ、閉じた目を開けた時、異界に迷い込むことがあるそうだ。その時、全ての者の記憶から己の存在が消えるとも言われている……」
ヒーリングの音楽が流れた。
皆、目を閉じつつ、波の音を聴く。
「目を開けた時に見える風景は同じ。ほとんど変わりはしない。ただ、住まう者だけが、違う」
きぃぃぃ!
ツボミがテーブルを爪で掻いた。
皆、ぶるっとした。
「妙な音が幾重にも聞こえる。音には独特の抑揚があって、会話にも聞こえる。それは近づいて来る……。ベチャ、ベチャと……。それは赤黒く、所々青白くもある……。顔は歪に大きく、体がごちゃごちゃで、手足は多数で長く、動きは鈍い。苦しげにのたくり、うごめく。ただ、異様に大きい目だけが、ボロボロと粘性の赤黒い何かを零しながらもこちらを見ている。やがて手を伸ばす……」
ツボミは用意していた温かい濡れ布を各自の背中に貼って歩き回る。
皆、ぬるっとして、びくん、とする。
「そんな魔性の霊だが、奴らが現世に戻る手段は一つだけあってな。実は、恋人や家族にだけは繋がりが残り、そこから認識することができる。貴様が目を閉じている時、その背に触れるのだ。奴らが触れている間に、貴様が目を開ければ……『交代』できる。だからな、目を閉じたら気を付けろよ! 貴様らは既に誰かと『交代』しているかもしれないぞ!?」
ガタン、とトミコが立ち上がった!
「みんな、大丈夫かい!? 『交代』した人はいないだろうねぇ!?」
真顔になったとトミコが皆に呼びかけ、お互いに確認を急ぐ。
オラクルたちはお互いを確認するが、誰一人「交代」してはいなかった。
「おほほ。とても楽しい怪談大会でしたわね! では皆様、ごきげんよう!」
と、大会を最後に締めたのはヨアヒムであった。
ヨアヒムが「交代」したところで、皆様、お疲れ様!
了
†シナリオ結果†
大成功
†詳細†
称号付与
『怪談と猥談の狭間で』
取得者: タマキ・アケチ(CL3000011)
『ホラー・アクトレス』
取得者: カノン・イスルギ(CL3000025)
『怪談騎士』
取得者: シア・ウィルナーグ(CL3000028)
『食堂の怪談おばちゃん』
取得者: トミコ・マール(CL3000192)
『降霊術の語り部』
取得者: 非時香・ツボミ(CL3000086)
『不思議の国のエル』
取得者: エル・エル(CL3000370)
取得者: タマキ・アケチ(CL3000011)
『ホラー・アクトレス』
取得者: カノン・イスルギ(CL3000025)
『怪談騎士』
取得者: シア・ウィルナーグ(CL3000028)
『食堂の怪談おばちゃん』
取得者: トミコ・マール(CL3000192)
『降霊術の語り部』
取得者: 非時香・ツボミ(CL3000086)
『不思議の国のエル』
取得者: エル・エル(CL3000370)
†あとがき†
私の最初のシナリオにご参加くださった皆様、ありがとうございました。
皆様のお陰でとても楽しめました。
皆様も楽しんでくだされば何よりです。
今回、MVPは接戦で悩みました。
まさか怪談大会で猥談を披露し、しかもそれが怪談になっていた方をMVPとしました。
それぞれが個性的で素晴らしいお話をお持ちです。
ささやかですが、怪談にちなんだ称号を配布させて頂きました。
ぜひ今後も怪しいシナリオへ参加する際にはご活用ください!
皆様のお陰でとても楽しめました。
皆様も楽しんでくだされば何よりです。
今回、MVPは接戦で悩みました。
まさか怪談大会で猥談を披露し、しかもそれが怪談になっていた方をMVPとしました。
それぞれが個性的で素晴らしいお話をお持ちです。
ささやかですが、怪談にちなんだ称号を配布させて頂きました。
ぜひ今後も怪しいシナリオへ参加する際にはご活用ください!
FL送付済