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幸運のマネキャット



●探そうぜ、マネキャット
 さて、アデレードの町がしんどいことになってから数日が経過した。
「だから幸運のお守りをアデレードに贈呈してみない?」
 アデレードの復興に関する話し合ということで集められた自由騎士を前に、『あたしにお任せ』バーバラ・キュプカー(nCL3000007)がまずは開口一番そう告げてきた。
 自由騎士たちが顔を見合わせる。
「……復、興?」
「復興よ。ええ、復興を祈って願うことも立派に復興事業のうちよ」
 全く悪びれる様子もないバーバラに、自由騎士たちはヒソヒソと小声で話し合う。
「ほら、バーバラのねーさん、三十路近いって噂だし……」
「ああ、趣味とセンスが老いらくのアレなのか……」
「しっ! せめて『とうが立ってる』くらいの表現にしておけよ……」
 バーバラは何か言うのではなく指の骨を鳴らすことで自由騎士たちを黙らせた。
 自由騎士たちはただちに姿勢を正して背筋を伸ばした。
「話、続けていいかしら?」
「いえすまむ!」
 バーバラはあくまで笑顔だった。話が再開される。
「この辺りにマネキャットっていう幻想種がいるんだけど、知っているかしら?」
 問われて、しかし知っている自由騎士はいなかった。
「まぁ、でしょうね。そんなに有名な種でもないし」
「どんなヤツなんだ?」
 名前を聞く限り猫だろうなと思いながら、自由騎士の一人が尋ねた。
「丸くて――」
 猫だな。
「大きくて――」
 やっぱり猫だな。
「一日中寝てばっかりで――」
 猫で間違いないな。
「夜になるとやっとちょっとだけ活動する――」
 夜行性だから確実に猫だな。
「ウサギよ」
「待て」
「何かしら?」
「その、そこでウサギはダメなんじゃないか」
「どうしてかしら?」
「いや、よく分からないけど、名前とかそういうスピリチュアル的部分な意味でさ」
「何を言っているのかよく分からないけれどとにかくウサギよ」
 ウザギらしい。
「そのマネキャットは探せば結構見つかるの。でもごくまれに全身が金色のものがいるわ」
 金色のマネキャットは、この辺りでは昔から幸運の象徴とされているらしい。
 なるほど、四葉のクローバーみたいなものか。
「でも幻想種なんて捕まえてくるのか。生け捕りオンリーだろ?」
「そうね。でもマネキャットはゴロゴロできるなら割とどこでも暮らせる幻想種なのよ」
 食っちゃ寝できれば何でもいいらしい。引きこもりか。
「ただ、気を付けてほしいのは……」
 と、バーバラが少し神妙な顔をして言い出してくる。
 さすがに相手は幻想種。自由騎士にも危険を及ぼす何かがあってもおかしくはないか。
「マネキャット自体は戦う力はないけど、敵を見つけると瞬間移動で逃げるわ」
「瞬間移動て」
「ほら、ウサギってよく跳ねるでしょ」
 空間まで跳ねるのはやめろよ。
「でもそれだと捕まえても瞬間移動で逃げるんじゃ?」
「捕まったらあきらめてゴロゴロするから大丈夫よ」
「ねぇそれ本当にウサギなの? 別の何かじゃないの?」
 自由騎士の疑問ももっともではあった。バーバラは取り合わないが。
「アデレードの西の森に金色のマネキャットがいるっていう噂もあるから、確かめてきてね」
 何か、そんなことになったのだった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
吾語
■成功条件
1.金色のマネキャットを探して捕まえる。
どーもー、決戦お疲れさまでした。
吾語でございます。

幸運のお守りといえばウサギの足。
ということで、幸運の金色兎を捕まえに行きましょうというお話です。

うん? 招き猫?
ちょっと吾語、何言ってるかわからないですねー。

時間帯はご自由にお選びいただけます。
ただし夜になるとマネキャットは活発になるのでかなり捕まえにくくなります。
地形は結構木が多くて視界がよくない森の中です。

マネキャットは戦う力はありませんが、臆病なのですぐに瞬間移動で逃げます。
どうにかこうにか近づいて捕まえてください。
それでは、のんびりゆったりウサギを追いかけましょう。
状態
完了
報酬マテリア
5個  1個  1個  1個
22モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
10/10
公開日
2018年06月11日

†メイン参加者 10人†



●西の森へ行こう
 マネキャットがいる森まで、歩いて半日もかからない程度の距離だという。
「森はこっちにあるネ」
 先導役は朝のうちに下見を済ませた『有美玉』ルー・シェーファー(CL3000101)。
 彼女を先頭にして十名の自由騎士がアデレードを出発していた。
 ちなみにルーはマネキャット用の罠なども少し準備はしたのだが、
「ゴロゴロしてるばっかりで動こうともしなかったヨ」
 金色こそ見つからなかったものの、普通のマネキャットはすでに見つけた彼女だった。
「日中はゴロゴロしてて寝てばっかり。やはり聞く限り猫にしか思えないんですが……」
 ルーの話を聞いて、『護神の剣』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)が首をかしげる。
 兎、肉は美味いのだろうか。
「なんか変なこと考えてなぁ~い?」
 ふと考えていたカスカへ、『知りたがりのクイニィー』クイニィー・アルジェント(CL3000178)が尋ねた。
「む、な、何のことでしょうか……?」
 カスカが反射的に目をそらす。クイニィーはジ~ッと彼女を覗き込んだ。
「ま、いいかー。金色の兎、いかにもご利益ありそうだよね。楽しみだなぁ~!」
 ウキウキしている彼女に、海・西園寺(CL3000241)もうなずいた。
「ただ、捕まえるのが目的ですからね。警戒心が強いようなので優しい雰囲気でいきましょう」
「そうですね、探すのはしっかり探しましょう。捕まえるのは任せます」
 『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)がいきなり職務放棄を宣言した。
「一緒に遊びますけど捕まえなきゃですからね?」
 『皐月に舞うパステルの華』ピア・フェン・フォーレン(CL3000044)がやんわり釘を刺す。
 今回のキャット捕獲はれっきとした依頼である。
 無論、内容が内容なのでピアもしっかりと遊ぶつもりではあるのだが。
 彼女たちは大体みんなピクニック気分だ。
 それを見ていた『イ・ラプセル自由騎士団』ハルト・スメラギ(CL3000083)が軽く髪を掻く。
「これが本当に復興の役に立つのか……?」
 アデレードの復興事業の一環。
 そのように聞いて参加した依頼だが、ハルトはやや怪訝そうだ。
「憂鬱そうな理由は、本当にそれだけ、かな……?」
 隣を歩く皇 弥悠(CL3000075)が小さく微笑みかけてくる。
 ハルトは視線を彼女からそらそうとした。
「ハルト……?」
 だが弥悠からの視線をものすごく感じてしまう。
「近づくと逃げられるし……」
 なぜか、小動物には逃げられてしまうことが多いハルトが、ついに観念した。
「ハルトは狼さん、だし……、頑張って。齧っちゃ、駄目よ?」
「齧るか!」
 あまりといえばあまりなダメ出しに、ハルトが向きになって叫んだ。
 そんな二人のさらに後方、最後尾には『イ・ラプセル自由騎士団』アリア・セレスティ(CL3000222)の姿があった。
「みんな、元気ね」
「そう言うアリアは元気がないわ、ね!」
 『深窓のガンスリンガー』ヒルダ・アークライト(CL3000279)がいきなり抱きついてきた。
「きゃあ!」
「うーんアリアモフモフ。やらかーい」
「な、な……!?」
 いきなりすぎてびっくりしているアリアを、ヒルダは容赦なくモフモフし倒していく。
「ちょ――!?」
「そろそろ森につくヨー」
 のんびりとしたルーの声が聞こえてくる。
 日中、午前十二時少し前、自由騎士たちは西の森に到着した。

●森の中のマネキャット
 西の森は、日中だというのにそれなりに暗い森だった。
 森の一角でカゴを棒で立てた弥悠が、さらにクッションと餌を置いてハルトを見上げる。
「罠……、これでいいかな……?」
「……いや、ダメじゃないか」
 ハルトは冷静にそう判断すると弥悠が唇を尖らせる。
「むぅ……」
 それでも弥悠はめげることなく罠を設置していった。
「それにしても、見通しが悪いな……」
 弥悠についてはもはや何も言うまいと決めたハルトだが、立ち上がって森を見渡し、呟いた。
 木の数も結構多く、季節が季節だけに葉が生い茂ってかなり邪魔だ。
「こんなところにで兎を探すの――」
「ブミ」
「ん……?」
 足元から何かが聞こえて、下を見てみると、真っ白い大きな毛玉があった。
 毛玉。そう、それはまさに毛玉だった。真っ白い、モフモフの毛でできた大きなボールだ。
 ハルトが見つめて、そっと手を伸ばそうとする。直後、毛玉はフッと消え去った。
 そこにいたはずなのに、もう影も形もない。
「え、今のがまさか……?」
 そのまさか、なのだった。
「――動かないですね」
 カスカが真っ白い毛ボールに向かって猫じゃらしを揺らしている。
 だが白毛ボールは地面から全く動かず、時折垂れているその耳だけがちょこちょこ動いていた。
「耳さえなければただのデブ猫。でも、兎……! 兎……?」
 未だ猫なのでは、という疑問を抱いていたカスカだが、全く動かない毛ボールを見て、
「やはり猫なのでは……?」
 疑問はますます強くなっていくばかりであった。
 だから猫じゃらしなのだが、しかし毛ボールは一向に見向きもしない。
「あ」
 チラリと白毛ボールの瞳がカスカを見た。
「ブモ」
 そして笑われた。
「とっ捕まえます!」
 ここでカスカ、怒りの全力身体加速。
 白毛ボールに向かって全速で手を伸ばすも、だがボールはピュンと掻き消えた。瞬間移動だ。
「むー!」
 周りを探すが緑は深く、白い毛玉はどこにもない。カスカは幾度も地団太を踏んだ。
 これは思いがけない難題だ。
 自由騎士たちがそれを実感したのはまもなくのことだった。
「視界が悪いのがかなりキツいわね。上から下まで、葉が邪魔で仕方がないわ」
 マネキャットの瞬間移動はどれだけの移動距離を持つのか。
 確認するべく観察に努めていたアリアも、これには渋面を作らざるを得ない。
「待てー! 待ってー!」
 それはそれとしてヒルダが白毛ボールに突っ込んで逃げられていた。
 白マネキャットを相手に、右往左往の悪戦苦闘することしばし、海が皆を呼び集めた。
「あそこ、見えます……?」
 集まった自由騎士たちが海の指さす先を見る。
 森の中でも大きな木があり、その根元に何か黄色っぽいものが垣間見えるが、離れすぎていてよく見えない。
 海がそれを見つけられたのは彼女の視力強化の技術によるものだった。
 その海が言う。
「あの木の根元に、金色の毛のボールがあります」
 金色のマネキャットに間違いなかった。
 ゴロゴロしている。圧倒的にゴロゴロしている。
 そんな金色のマネキャットは、ただ接近したのではすぐに逃げられる、尋常ではない強敵だ。
 そして様々な作戦を検討した結果――
「仲良し!」
「ゴロゴロ!」
「さくせーん!」
 上から順に、ピア、エミリオ、クイニィーの順である。
「説明しましょう。仲良しゴロゴロ作戦とは私がゴロゴロして他の二人が捕まえる作戦です」
「働いてください」
「働いて」
 説明するエミリオに、ピアとクイニィーが笑顔なまま冷ややかに言った。
 作戦概要はこうだ。
 ピアとクイニィーが動物に変身してマネキャットに近づき、警戒心を解く。
 エミリオは変身できないのでそのままゴロゴロすることでやはり警戒心を解く。
「つまり私がいかにゴロゴロできるかが最も重要な要素なのでゴロゴロし続けます」
「働いてください」
「働いて」
 もはやテンドンであった。
 全員の胸にしっかりと一抹の不安を残しながら、『仲良しゴロゴロ作戦』は開始された。
 まずはクイニィーがリスの形で想像したホムンクルスと共に、リス化してマネキャットに近づいていく。
 手にしているのは野菜である。
 そのすぐ近くには兎化したピアが続く。彼女はお菓子を持っていた。
 最後尾にはエミリオが和やかな笑みと雰囲気を保ったままお菓子を持って近寄ろうとした。
 金のマネキャットがチラリと二匹と一人の方を見る。
 その瞬間、二匹と一人とボール一個の間に、緊張がほとばしった。
「ブミィ~」
 そしてマネキャットは転移した。
「逃げたー! マネキャットが逃げたよー!」
「何でですかー! プランは完璧だったのにー!」
「これは、やはり私はもっと後ろでやる気なくゴロゴロしているべきでしたね」
 騒ぐクイニィーとピアへ、エミリオはそのように分析する。
 しかし他の面々の思考はほぼ統一されていた。
 ――エミリオがノコノコ姿を見せたからだ。
 森の仲間に変身していたピアとクイニィーの後ろに、朗らかな笑顔の野郎がいるのである。
 その違和感、果たしてどれほどか。
 もちろん、実際の原因は分からない。しかし、それ以外にどんな可能性があるだろう。
 まぁ、原因の究明をしている場合ではないので、
「万策尽きたネ!」
「万策と言いつつ作戦の数がショボいですね!?」
 言い出すルーにカスカが驚く。しかし構わず、ルーは皆に宣言した。
「こうなったらみんな、例のプランBでいくヨ!」
 自由騎士たちの間に激震が走った。
「例の!」
「プラン!」
「B!」
 上から、ヒルダ、アリア、ハルトである。
「……って、どんなの?」
 そして弥悠が最後を締めた。当然、全員初耳だ。
「もちろん、根性で追っかけて頑張って捕まえるネ!」
 体力勝負一丁入りました。

●選ばれたのはマネキャットでした
 金色のマネキャット。
 その姿を想像するならば、ふさふさの金色の毛に包まれたボールが一番近い。
 ボールの上の辺りに、申し訳程度に垂れたうさ耳がある。丸っこく丸々と丸まっている丸い太った兎だ。
 ――あくまで兎だ。
 そんなマネキャット、実はかなりの強敵であった。
「ほらほら、同じ兎のミミーですよー。可愛いでしょう?」
 森の中、見つけた金色のマネキャットに、海が兎のぬいぐるみを持って近づいていく。
 彼女にとってはお守りのようなそれで、マネキャットの警戒を解こうとするが――ピュン。
 マネキャットは消えてしまった。
「ああ!」
 海が辺りを探すが、今度は見つけることも叶わず、
「転移した先で木にぶつかって気絶するとか、ないですよねぇ……」
 軽く物騒なことを考える海であった。
 普通に追うのではまず逃げられてしまう。そこで、ルーはもう一つの罠を使うことにした。
 ここに来るまでに用意しておいた必殺の罠、それは何と紙吹雪!
「これでびっくりさせてみるネ!」
 マネキャットはチキンである。兎だがチキンである。
 驚かせることができれば一瞬なりともその動きを止めることができるかもしれない。
 割と論理的な根拠のもと、ルーは森の中に紙吹雪を撒こうと――ピュン。
 マネキャットは消えてしまった。
 紙吹雪をまずが掴もうとルーが動いた時点で、だ。
「どんだけチキンなのネ!」
 兎だが超チキンである。
「もう、どうして逃げるんですかー!」
 ピアが肉体を加速させてマネキャットと追おうとする。
 瞬間移動といっても、こうして見つけられている以上、移動できる距離に限界はあるはず。
 ならば移動した先へと回り込んで捕まえればいいのだが――ヘブシ!
 マネキャットの方に意識を割きすぎた余り、木の根っこにつまづいて盛大に転んでしまった。
「今度はあっち、あっちにいるみたいですよー」
 蝶のホムンクルスを飛ばし、視覚を共有して探すエミリオがマキナギアで報告してきた。
 本人は、もちろんゴロゴロしている。
「働いてください」
「働いてます」
「……本当だ!?」
 ピアが驚きに声を裏返らせた。先入観とは怖いものである。
「随分と苦戦してるなー……」
 皆の荷物番をしつつ、ハルトが頬杖を突いた。
 小動物に逃げられやすい彼は自らその役割を負っているのだが、なんと――ピュン。
 すぐ足元に、金色のマネキャットが現れた。逃げてきたのだ。
「んぐッ!?」
 思わず出しかけた声を無理やり呑み込んだ。
「ハルト……、そのまま……、そのまま」
 マネキャットを挟んだ向こう側に弥悠がいた。
 どうやら、弥悠はハルトと自分でマネキャットを挟み撃ちにするつもりらしい。
 ちなみに彼女が用意したカゴの罠はあかんでした。
 だがこれはチャンスだ。ハルトも弥悠の思惑を察し、
「よし――」
 意気込んで、彼もそろりそろりとマネキャットに手を伸ばそうとする。
 だがマネキャットと目が合った――ピュン。
 そして消えた。
「あ……」
 弥悠の残念そうな声が、ハルトの耳に届いた。
「待ってろミユ。俺が捕まえてきてやる」
 己の決意を口にして、彼は金色マネキャット追撃戦に参加したのだった。
 マネキャット捕獲まで、あと三分もかからないんですけどね。
 ――場面は、躍起になっているカスカへと移る。
「ここまで来たら、何としてもとっ捕まえたいですね」
 ペキポキと指を鳴らし、カスカは決意を胸に秘める。
 相手は確かにすばしっこい。ここまで来たならば認めざるを得ない。
 敵を認めたからには、自分も前回全速の本気を見せるしかないだろう。速度は自分の領分だ。
「次に姿を見せたときが勝負ですよ……」
 意識を集中させる。
 周囲を俯瞰するようにしながら、微細な変化でも見逃さないようにして、
「来るなら、来なさい――」
 何かがあれば即座に対応。今度こそ間違いなく、あの金色の毛玉を捕まえてみせましょう。
 己の誇りにかけて、敵の捕縛を狙っていると、
「あ、捕まえたー」
 試合終了の笛が聞こえてきたのだった。
「…………え?」
 カスカはそちらを見て、気の抜けた声を出すしかなかった。
 さて、こうして金色のマネキャットは捕まえられたワケだが、一体誰が捕まえたのか。
「わーわー、アリア、この子本当にモフモフしてるよー!」
 ヒルダであった。
 両手に金色のマネキャットを抱えながら、ヒルダは自分の頬を擦り付けた。
 マネキャットはもはや瞬間移動しようともしていない。
 事前に聞いていた通り、音すら超える速度で諦めてしまっているらしい。
「ブミー」
 だみ声で鳴きながら、ポリポリと何かを齧っている。そう、人参だ。
「人参持ってきてよかったー」
「本当に兎だったのね、この子……」
 ヒルダから渡されたマネキャットを抱きながら、アリアがどこか釈然としない様子で呟いた。
 様々な手段を講じてきた自由騎士たちだったが最終的にモノをいったのは、兎には人参、という普遍の常識であった。
「まぁまぁ、いいじゃない。可愛ければ正義よ。この子も、アリアも」
 言ってヒルダがアリアに抱き着く。
「ちょっ……!?」
「ほら、元気出ーして。一人で悩んでても仕方ないでしょ?」
 ヒルダに諭されて、アリアはキュッとマネキャットを抱きしめる。
 未だ復興中のアデレードの街を思うと、自分は騎士としての役割を果たせたのか、どうしても考えてしまうのだ。
「ブミャー」
 金色のマネキャットを抱きしめると、その感触は心地よく、あったかい。
「街が、上手く復興できるといいね」
 クイニィーがカメラを手にして言ってきた。
「うん」
 無事に復興が終わりますように。と、幸運のマネキャットに、アリアが、皆が、そう願って、
「はいはーい、みんな揃った? じゃあ撮るよー!」
 最後に集まった自由騎士たちをクイニィーがカメラで撮影して、無事に幸運のお守り探索は終了したのだった。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

お疲れさまでした。見事にマネキャットを捕獲できました。
何不自由のない生活が約束されたマネキャットは今後もアデレードでゴロゴロし続けるでしょう。

それではまたの機会にお会いしましょう。
吾語でした!
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