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撓る銀刃

●いまいちよくわからない人のために
『蛇剣』
蛇腹剣とも呼ばれる。
剣の刀身がいくつかのパーツに分かれており、スイッチ等何らかの簡単な操作でこれが瞬時に分解する。それぞれの刀身は内蔵されたワイヤーで連結されており、これを振るうことで通常の剣の数倍にも及ぶ射程距離を得ることができる。他に類のない武器のため扱いは難しいとされるが、使いこなせば剣とも鞭ともつかない独特かつ読まれ辛い戦法が可能となる。
また、物語やその書き手によって呼称が一定しないのも特徴である。蛇腹剣というのもこの武器の見た目を端的に表した暫定的呼称でしかない。多節剣、法剣、鞭剣、連結刃、あるいはもう開き直ったのか使用者の名前をそのままつけている場合もある。
ちなみに、今回の物語に登場する『彼女』は−−
●裏街、燃ゆ
夜。アデレード市内リブラ地区、港湾区域。
「うまくいきましたね、隊長」
「ええ。やはりこちらは手薄でしたね。スラム一歩手前の労働者街なんて、優先して守る必要もありませんもの。−−案外感謝されてるかもしれませんね」
夜の闇に、女の声が嗤う。
「まったく、どうして、敵の攻撃が一回で終わりだと思うのでしょう。それで今度はこっちの番だ? 違う。敵の攻撃は永遠に続く。屈服か根絶か、それまではただ地獄が続くだけだというに」
言葉に続くように、夜の港に影が蠢く。一つ、また一つ−−「隊長、この先に『魔女』が?」
「ええ。−−『魔女』を狩ればこの国が私達と敵対する理由は無くなります。やはりあの女が全ての元凶。皆さん、私達の働きいかんによっては、この戦いで戦争は終わります。魔女を討ち、世界に恒久平和を」
影達から静かな同意が伝わってくる。隊長と呼ばれた影は正面に向き直り、呟く。
「−−この平和ボケの国が、エカテリーナを破った? 何かの間違いでしょう。それを私が証明してあげます」
薄明かりに浮かぶ女の唇が、紅い三日月の形に曲がった。
●緊急
「皆さん、緊急です! 魔女狩りの部隊がリブラの裏街から攻め込んできたそうです!」
『イ・ラプセル国防騎士団第八班長』シエル・ヘブンサンデー(nCL3000040) は集まった自由騎士にそう言った。「幸いにというか何というか、敵は裏街の住人とかは無視して真っ直ぐこちらに向かってます! なので侵攻速度は速いです! 直ちに迎え撃ってください!」
「以上です! 説明の時間もあまりありません! 出撃してください!」
『蛇剣』
蛇腹剣とも呼ばれる。
剣の刀身がいくつかのパーツに分かれており、スイッチ等何らかの簡単な操作でこれが瞬時に分解する。それぞれの刀身は内蔵されたワイヤーで連結されており、これを振るうことで通常の剣の数倍にも及ぶ射程距離を得ることができる。他に類のない武器のため扱いは難しいとされるが、使いこなせば剣とも鞭ともつかない独特かつ読まれ辛い戦法が可能となる。
また、物語やその書き手によって呼称が一定しないのも特徴である。蛇腹剣というのもこの武器の見た目を端的に表した暫定的呼称でしかない。多節剣、法剣、鞭剣、連結刃、あるいはもう開き直ったのか使用者の名前をそのままつけている場合もある。
ちなみに、今回の物語に登場する『彼女』は−−
●裏街、燃ゆ
夜。アデレード市内リブラ地区、港湾区域。
「うまくいきましたね、隊長」
「ええ。やはりこちらは手薄でしたね。スラム一歩手前の労働者街なんて、優先して守る必要もありませんもの。−−案外感謝されてるかもしれませんね」
夜の闇に、女の声が嗤う。
「まったく、どうして、敵の攻撃が一回で終わりだと思うのでしょう。それで今度はこっちの番だ? 違う。敵の攻撃は永遠に続く。屈服か根絶か、それまではただ地獄が続くだけだというに」
言葉に続くように、夜の港に影が蠢く。一つ、また一つ−−「隊長、この先に『魔女』が?」
「ええ。−−『魔女』を狩ればこの国が私達と敵対する理由は無くなります。やはりあの女が全ての元凶。皆さん、私達の働きいかんによっては、この戦いで戦争は終わります。魔女を討ち、世界に恒久平和を」
影達から静かな同意が伝わってくる。隊長と呼ばれた影は正面に向き直り、呟く。
「−−この平和ボケの国が、エカテリーナを破った? 何かの間違いでしょう。それを私が証明してあげます」
薄明かりに浮かぶ女の唇が、紅い三日月の形に曲がった。
●緊急
「皆さん、緊急です! 魔女狩りの部隊がリブラの裏街から攻め込んできたそうです!」
『イ・ラプセル国防騎士団第八班長』シエル・ヘブンサンデー(nCL3000040) は集まった自由騎士にそう言った。「幸いにというか何というか、敵は裏街の住人とかは無視して真っ直ぐこちらに向かってます! なので侵攻速度は速いです! 直ちに迎え撃ってください!」
「以上です! 説明の時間もあまりありません! 出撃してください!」
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.敵の全滅
皆様こんにちは。鳥海きりうです。よろしくお願いします。
リブラの裏街から攻め込んだ魔女狩りとの戦闘シナリオです。敵の全滅が成功条件となります。
敵キャラクターのご紹介です。
・蛇剣のリル・ジューダス
魔女狩りの指揮官。伸縮自在の蛇剣《ツェアライセン》を駆使して戦う。杭槍のエカテリーナとは知り合いらしい。
・魔女狩り ×15
リルに従う魔女狩り達。武器は剣、銃、魔法など様々。
だいたいシエルの言った通りです。急いで行って会敵すれば裏街で敵と戦うことができるでしょう。ちなみに遅れたとしても裏街にはそれほど大きな被害は出ません。わざと遅れて街を抜けさせることもできますが、その場合はアデレード市街での戦闘となります。どちらがいいかは皆様で判断してください。……喧嘩しないでね?
えーと……注意点は以上です。うん、以上です。こんなこともあるんだなあ。
ああそうそう、シエルはなんかいろいろあってサボってたので、戦力的に役に立つかは微妙です。特に案がなければ待機させるのが順当でしょう。−−え? 弾除けぐらいにはなる? マジか。
簡単ですが、説明は以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。
リブラの裏街から攻め込んだ魔女狩りとの戦闘シナリオです。敵の全滅が成功条件となります。
敵キャラクターのご紹介です。
・蛇剣のリル・ジューダス
魔女狩りの指揮官。伸縮自在の蛇剣《ツェアライセン》を駆使して戦う。杭槍のエカテリーナとは知り合いらしい。
・魔女狩り ×15
リルに従う魔女狩り達。武器は剣、銃、魔法など様々。
だいたいシエルの言った通りです。急いで行って会敵すれば裏街で敵と戦うことができるでしょう。ちなみに遅れたとしても裏街にはそれほど大きな被害は出ません。わざと遅れて街を抜けさせることもできますが、その場合はアデレード市街での戦闘となります。どちらがいいかは皆様で判断してください。……喧嘩しないでね?
えーと……注意点は以上です。うん、以上です。こんなこともあるんだなあ。
ああそうそう、シエルはなんかいろいろあってサボってたので、戦力的に役に立つかは微妙です。特に案がなければ待機させるのが順当でしょう。−−え? 弾除けぐらいにはなる? マジか。
簡単ですが、説明は以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。

状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2018年11月23日
2018年11月23日
†メイン参加者 8人†
●
依頼を受けた自由騎士達は、リブラの裏街へと急行した。
(裏街は良く跳び回ってるからね……手段を選ばなきゃ、直線距離で移動できる)
『蒼の審問騎士』アリア・セレスティ(CL3000222)は空中二段飛びを使い、屋根伝いに裏街を移動していた。綾織のマフラーをなびかせ、宵の裏街を駆ける。やがて眼下の大通りに、武装して走る集団が見えてきた。(……いた)跳躍。先頭の女剣士に奇襲をかける。真っ正面。女がアリアを見上げ、笑った。抜刀。
女の剣を寸前でガードし、アリアは着地した。「い、今のは……!?」じゃらり。分解した刃が地面に落ちる。「ふむ。少しはやるようですね」
「イ・ラプセル自由騎士団の方とお見受けします。私はシャンバラの魔女狩り、蛇剣のリル・ジューダス。貴国を魔女の脅威から救うために参りました。−−邪魔だからさっさと道を開けなさい」
「イ・ラプセル自由騎士団、アリア・セレスティです。謹んでご辞退申し上げます。−−余計なお世話。帰って」
連結。リルが刃を剣の形に戻し、斬りかかる。ガード。その刃はアリアを狙う軌道から逸れた。
「よくきたわね魔女狩り共。ここから先には通さないわよ」
蛇剣を弾いた『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)はそう言い、反撃の拳をリルに打ち込む。回避。リルは後方へ跳んで避けた。
「アリア、私は他の雑魚を狙うわ。任せたわよ!」
「うん!」
「そこの馬鹿面さらしたドサンピン共! さっさと回れ右して帰らないと夜も眠れないくらい怖い思いをさせちゃうよ!」
すごい罵詈雑言とともに『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)も駆けつけた。「ふっ。下品な」「む! なにおー!」リルは涼しい顔だが、他の魔女狩り達からは明らかに静かな殺意がカノンに向けられた。
「なんだ、シャンバラ遅刻組の登場か? パーティはとっくにお開きだ、さっさとお帰り願うぜ!」
「こっそりと不法入国するとは、褒められた事ではないな」
『ラスボス(HP50)』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)と『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)も追いついてきた。後方に陣取り、援護の態勢を整える。このラスボスとかHP50とかいうのは多少なりと判定に加味するべきなのだろうか。いりませんかいりませんよねわかってますよ言ってみただけです確認やん。
「シャンバラの魔女狩りども! 杭槍のエカテリーナはこの私、『ヘヴィガンナー』ヒルダ・アークライト(CL3000279)が落としたわ! これ以上の侵攻は無駄よ! とっとと帰りなさい!」
ヒルダが名乗りを上げ、リルは肩を竦める。「嘘ですね」「何ですって?」
「エカテリーナが貴方達などに負けるわけがない。それが出来ると言うのなら−−私を倒してみなさい。まあ無理でしょうけど」
「望むところよ! 戦士として、貴女に闘いを申し込む!」
(ほんとはリルの言う通りなんだよね……落としたの、厳密には私と柊さんだし)
バレないように心中で苦笑するアリアをよそに、闘いの幕は切って落とされた。
●
「おまえ達に要求するのはこの3つだー! 真っ先に女子供と年寄り引っ張って魔女狩りの出てる区域からの避難誘導するコト、次いで自分たちも避難するコト、それから表通りに通じる道も簡単なヤツでいいからバリケードで塞いでおくコト! ローラちゃんからのありがたい指令を死ぬ気で達成してね♡」
リブラの裏街・労働者宿舎区域。『裏街の夜の妖精』ローラ・オルグレン(CL3000210)は表の屋台や店で飲んでいた連中を集めてそう話を切り出した。住人達は顔を見合わせる。「やべえのか」
「あーっとストップ! 自分らだけ速攻逃げるとかじゃなくて! それに釣り合うだけの報酬は後でちゃーんとあげるから、ねっ?」
「いいけどよ。こっちは素人だ。時間かかるぜ。お前ら『本職』が止めといてくれるのが前提だな」
「請け合いましょう。敵から遠ざかれる方角とバリケードを築くべき場所も見て参りました。さあ、ぐずぐずしていると本当にここまで敵が攻め込んできますぞ」
『静かなりしもののふ』サブロウ・カイトー(CL3000363)の言葉に、住人達はふむ、と納得した様子だった。事前行動が的確なのもさることながら、サブロウの決して華美ではない、しかしどこか異邦的な佇まいは、彼等の嫌いな類型には当てはまっていなかった。
「では班長殿。後はよろしくお願いします。より安全かつ遠方に避難できる様に、市民を護衛してあげてください」
「わかりました! お二人共、前線はよろしくお願いします!」
『イ・ラプセル国防騎士団第八班長』シエル・ヘブンサンデー(nCL3000040) は、サブロウの言葉にそう答えた。サブロウは少し声を落とし、続ける。「その際にはあまり官憲として居丈高にならない事をお勧めしますよ。オルグレン卿を真似ろとは申しませんが、そうですね……『おねがい♡』位のリップサービスをしても、罰は当たらないかと」
「……おねがい♡、ですか?」
いまいちよくわかっていないシエルはローラを振り返った。「お・ね・が・い♡」「わかったっつーの。それよりお前こそ店に戻って、報酬の仕度をしとけよ。−−たんまりとな」
「ううん、仕度はするけどぉ……その前に、『仕入れ』が先かなあ? ま、期待しててね♡」
ローラの言葉に小首を傾げ、シエルはサブロウに向き直る。「……仕入れって、何なんでしょう?」
「……さあ、何のことでしょうなあ」
朴訥な青年と能天気な少女には、その予測が立とうはずもなかった。
●
敵が動く。まず四人の魔女狩りがエルシーに向かった。(全員で向かってくる……? ヒーラーはどれ……?)考えながらも迎撃する。敵の攻撃を二発は回避し、二発食らった。「この程度ならば……! さあ、降伏か、死か、選びなさい!」反撃の拳が魔女狩り達を打ち抜く。
次に四人の魔女狩りがカノンを取り囲んだ。攻撃。いずれも命中。反撃。これも命中。魔女狩りの剣とカノンの拳が斬り結ぶ。全身に刀傷を負いながらも、カノンは反撃で敵にダメージを与えていく。「怒ってるね! いいよいいよ! カノンが相手してあげる!」カノンのダメージも甚大だが、その表情に恐怖の色は無い。
次に四人の魔女狩りがヒルダに向かった。「それも想定の範囲内よ! カウンター・オーバーブラスト!」ヒルダの放った散弾が魔女狩り達を撃ち抜く。魔女狩り達はいずれも銃創を負うが、そのまま前進してヒルダを攻撃する。一発は避け、三発は食らった。「やるわね! でもまだまだよ!」
残る三人がアリアを狙った。二発は避け、一発は被弾する。(私ならどこから来る? どこから……)反撃。いずれも命中。アリアの剣が舞うように魔女狩り達を斬り裂き、
その向こうから、リルがアリアに斬りかかった。分解。跳躍したリルが剣を振るい、伸びた刃がアリアに向かう。命中。アリアの二の腕から鮮血が飛ぶ。「っ……そうか、伸びるから……!」「色々考えてるようですが……私を相手に、全て出し切れますか?」
「−−だったら、踏み込む!」
影狼。急加速したアリアの剣がリルを襲う。回避。リルはサイドステップで避けた。反撃。リルのターンと共に伸びた刃が円を描き、アリアに斬りかかる。回避。アリアはバックロールで避けた。(ガードはしない……受けるための剣じゃない?)
「上手く囲んだつもりでしょうけど……崩す手はある!」
鉄山靠。エルシーの体当てが魔女狩りの一人を吹き飛ばし、さらにそれがカノンを囲む一人を巻き込んだ。
「チェストォォォォッ!」
さらに駆けつけた人影がヒートアクセルで斬りつけた。一体撃破。「懐島三郎景近、只今推参!」
「みぃんなぁ〜、おまたせぇ〜♡」
さらに合流したローラがハーベストレインで全員の傷を癒す。「おお、よかったローラ嬢、今日は素面だな」「……素面じゃない場合があるのか」
「進路が開いた! 行くよ!」
カノンが包囲を脱し、リルを狙う。「魔女狩りだか何だか知らないけど、人様の国で勝手狼藉は許さないんだよ!」震撃。命中。背後からの攻撃がリルを打ち据えた。「おっと……そちらもですか」連結。反撃。再合体したリルの剣がカノンを襲う。命中。カノンは胴を斬られ、小さくないダメージを負う。「くっ……まだまだ!」
「さて、回復はローラ嬢が間に合ったから……ヒルダ嬢の包囲を崩していくか!」
バレッジファイヤ。ウェルスの放った無数の銃弾が敵全体を撃ち抜く。敵は倒れはしなかったが、いずれも銃弾で蜂の巣にされた。
「どうやら、ヘブンサンデーはうまくやっているな……カノン、油断するなよ」
「まーかせて!」
ロジェはハーベストレインでカノンの傷を癒した。
「ちょっと手間取ってるわね……アリア、リル! 今行くからちょっと待ってなさい!」
さらにヒルダがバレッジファイヤで敵陣を攻撃する。ついに一人が倒れ、ヒルダの進路も開いた。二度の全体攻撃にリルは余裕の態度を崩さないが、魔女狩り達はもう潰れかかっている。
「……神の子等よ。我等天使に見えり。天上を夢見よ。安けく、冷たく、ただ教義のままに」
リルの言葉に、魔女狩り達が頷いた。敵が動く。まず一人が銃でローラを狙った。命中。「っ……いや〜ん、いったぁ〜い」一瞬眉間にものすごい縦ジワを刻んだが、まだまだ余裕である。
次に二人の魔女狩りがそれぞれ銃でウェルスとロジェを狙った。攻撃。いずれも命中。「っと! 大丈夫か、ロジェの旦那!」言いながらもウェルスは反撃する。銃声と共にすでに満身創痍だった魔女狩りが倒れた。三体撃破。
「この程度ならば問題無い。−−しつこい連中だが、命までは取らないでおこう」
エコーズ。投擲された薬瓶が命中し、魔力の爆発を起こす。魔女狩りは蒼い炎に巻かれて倒れた。四体目。
次に二人の魔女狩りがエルシーを狙った。攻撃。エルシーは一発を回避し、一発は食らう。「考えるゆとりはあったはずよ−−!」反撃。いずれも命中。エルシーの拳で二人が沈んだ。六体撃破。
次に二人の魔女狩りがヒルダを狙う。攻撃。いずれも命中。「アリアのところに行くのよ! どきなさい!」傷を負いながらもヒルダはオーバーブラストで反撃する。これも命中。魔女狩り二人は力尽きて倒れた。これで八体。
次に二人の魔女狩りがサブロウを狙った。攻撃。サブロウは一発は避け、一発はくらった。「突破はしませんか。しかし……」反撃のヒートアクセルが二人の魔女狩りを斬り裂き、倒れる。十体撃破。
次に四人の魔女狩りが転進し、カノンとアリアを狙った。攻撃。カノンは二発とも食らい、アリアは一発は避け、一発は被弾する。
「うーん、この動き……?」
リュンケウスの瞳で戦場を広く見ていたカノンに疑問が浮かぶ。魔女狩り達の動きは突破でも包囲でもない。疑問に思いながらも反撃し、二人を沈める。
「命を棄ててくる? それ自体は不思議じゃないけど−−」
呟きながらも、アリアも反撃の剣で二人の魔女狩りを斬り伏せた。ここまでで十四体撃破。
「−−まずい! 皆!」
「バカな−−!? 気をつけろ、これは全体攻撃だ! やつの蛇剣には限界射程など無い!」
「え?」
リルの剣を注視していたエルシーと、エネミースキャンを用いてリルを観察したロジェが叫ぶ。リルの剣が魔力の光を帯び、リルが空高く跳躍する。「さあ、知りなさい。私達こそ、人類を導く救世主なのだと!」
「妖牙銀刃舞≪フェアリィ・ファング・コンセントレーション≫!」
分解。解き放たれた魔法刃が乱舞し、全員を襲った。均等にダメージを与えた後、全体攻撃で消し飛ばす。後は残った一人が刈り取っていけばいい。傷を負っていた自由騎士達は鮮血を噴き上げ、倒れた。
「ま…まだよ……!」
アリアはどうにか立ち上がったが、ある意味体力よりも重要なものを失っていた。ガードした際に二刀のうちの短剣、≪慈悲の祈り≫が破損したのである。「−−ありがとう。後は、自分でやるね!」走り、リルの着地を狙う。命中。連結。反撃。「ふふ……!」血を流しながらも、リルが凶笑を浮かべて剣を振り下ろす。「くっ−−!」食らえば死ぬ。アリアはすんでのところで避けた。
「こ、これが神罰と仰るか−−否! 所詮人の業!」
もともと損害の少なかったサブロウも立ち上がる。ヒートアクセル。サブロウの刀をリルは剣で受け流す。「信心が足りませんね、俗人」「特に救われた経験もありませんでな!」反撃。サブロウはバックステップで避ける。
「貴女もエカテリーナのように無様に這いつくばるといいわ!」
攻撃を予測していたエルシーは直撃は受けなかった。リルに踏み込み、デュアルストライクで攻撃する。命中。エルシーの連蹴りがリルを打ち据える。「……異教徒が」反撃。これも命中。リルの剣がエルシーの胴を裂く。「っ−−! このくらい!」
「ふざけた真似しやがって……! みんなぁ〜、ローラちゃんからのありがたい指令だよぉ〜」
コル・デ・ホーザ。ローラから発したピンク色の甘ったるい風と艶かしい光が味方全員を癒す。「ブッ殺せ!」
「い、イエスマム! −−って思わず言っちまうな。まあそれはさておき」
ロストペイン。痛覚を抑えたウェルスは被弾してもなお冷静だった。銃を構え、狙いを定める。「そういえば、ご挨拶がまだだったな。こいつが俺の挨拶だ!」
「裏街よ、俺は帰ってきた! ってな!」
特製収束魔砲弾。ウェルスの銃から魔弾が放たれ、着弾して魔力の大爆発を起こす。「ふん……!」回避。ローリングでかわしたリルは直撃こそしなかったが、爆風に巻き込まれ幾らかのダメージを負った。
「もらったぁ! アークライト・バレット・スーパーチャージ・オン!」
「何!?」
織女星の弾丸。着地したリルに側面からヒルダが飛び込んだ。命中。リルの身体が地面に落ちて転がり、ヒルダは石畳に火花を走らせ着地する。
「負けるもんか−−! 舞え、大鷲よ!」
テーマソング。荒ぶる鷹のポーズ。勇壮な音楽と共にカノンが両手を鳥が羽ばたくように大きく広げ、左足を軸に右足を上げる。「カノンの拳は鋼の拳。この世に我が拳で砕けぬ物無し!」
「響け、神音!」
カノンのアッパーカットがリルを撃ち抜いた。教会の鐘のような鈍く、しかしどこか荘厳な音が響き、リルの身体が宙へ吹き飛び、落ちる。鐘の音の残響と共に、カノンの身体から余剰エネルギーが白い花びらのように放出された。
●
「え〜? ダメ?」
「ダメです」
戦闘終了後。シエルは倒された魔女狩り達を捕縛し、本部へ移送するために自由騎士達から引き受けた。もちろん首魁であるリルも含めて。「いちおう戦時捕虜ですから、慎重に扱う必要があります。裏街で私刑にするとかはダメです」
「つまんなぁ〜い。折角いい『商材』が入ると思ったのにぃ」
「商材……ですか?」
「まだ分からんのかい」
「まあ、少なくとも班長殿は『商材』にはちと厳しいでしょうなあ」
小首を傾げるシエルにローラがツッコミを入れ、サブロウは苦笑する。「さあ皆さん、あとは捕虜を移送すれば依頼完了です! 出かけましょう!」
「んー、カノンは残って壊れたり散らかった物の後片付をお手伝いするよ! お腹空いたけど携帯食料もあるし!」
「お、カノン嬢、だったら俺も手伝おう。……久し振りに煮物食ってくかな」
「私も残ろう。負傷者がいるかも知れないしな」
「私も手伝うわ。−−煮物って何?」
自由騎士達が夜明けの裏街に消えていく。−−アリアは現場に残り、折れた≪慈悲の祈り≫の破片を回収していた。「リルとエカテリーナ、か」付き合っていたヒルダが呟くように言った。
「変な連中だったわね。ま、人の事は言えないかもだけど」
「裏街に余計な被害を出そうとしてなかった。−−敵国じゃなかったら、友達になれたかもね」
「あいつらとお? −−面倒くさいだけだと思うけど?」
「たぶん、向こうもそう思ってるよ」
アリアが笑い、ヒルダも笑う。「さ、帰ろう」拾い終わったアリアが立ち上がった。「その破片、どうするの?」ヒルダが訊く。
アリアは、答えなかった。ヒルダもそれ以上は訊かず、二人は帰路に着いた。
依頼を受けた自由騎士達は、リブラの裏街へと急行した。
(裏街は良く跳び回ってるからね……手段を選ばなきゃ、直線距離で移動できる)
『蒼の審問騎士』アリア・セレスティ(CL3000222)は空中二段飛びを使い、屋根伝いに裏街を移動していた。綾織のマフラーをなびかせ、宵の裏街を駆ける。やがて眼下の大通りに、武装して走る集団が見えてきた。(……いた)跳躍。先頭の女剣士に奇襲をかける。真っ正面。女がアリアを見上げ、笑った。抜刀。
女の剣を寸前でガードし、アリアは着地した。「い、今のは……!?」じゃらり。分解した刃が地面に落ちる。「ふむ。少しはやるようですね」
「イ・ラプセル自由騎士団の方とお見受けします。私はシャンバラの魔女狩り、蛇剣のリル・ジューダス。貴国を魔女の脅威から救うために参りました。−−邪魔だからさっさと道を開けなさい」
「イ・ラプセル自由騎士団、アリア・セレスティです。謹んでご辞退申し上げます。−−余計なお世話。帰って」
連結。リルが刃を剣の形に戻し、斬りかかる。ガード。その刃はアリアを狙う軌道から逸れた。
「よくきたわね魔女狩り共。ここから先には通さないわよ」
蛇剣を弾いた『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)はそう言い、反撃の拳をリルに打ち込む。回避。リルは後方へ跳んで避けた。
「アリア、私は他の雑魚を狙うわ。任せたわよ!」
「うん!」
「そこの馬鹿面さらしたドサンピン共! さっさと回れ右して帰らないと夜も眠れないくらい怖い思いをさせちゃうよ!」
すごい罵詈雑言とともに『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)も駆けつけた。「ふっ。下品な」「む! なにおー!」リルは涼しい顔だが、他の魔女狩り達からは明らかに静かな殺意がカノンに向けられた。
「なんだ、シャンバラ遅刻組の登場か? パーティはとっくにお開きだ、さっさとお帰り願うぜ!」
「こっそりと不法入国するとは、褒められた事ではないな」
『ラスボス(HP50)』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)と『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)も追いついてきた。後方に陣取り、援護の態勢を整える。このラスボスとかHP50とかいうのは多少なりと判定に加味するべきなのだろうか。いりませんかいりませんよねわかってますよ言ってみただけです確認やん。
「シャンバラの魔女狩りども! 杭槍のエカテリーナはこの私、『ヘヴィガンナー』ヒルダ・アークライト(CL3000279)が落としたわ! これ以上の侵攻は無駄よ! とっとと帰りなさい!」
ヒルダが名乗りを上げ、リルは肩を竦める。「嘘ですね」「何ですって?」
「エカテリーナが貴方達などに負けるわけがない。それが出来ると言うのなら−−私を倒してみなさい。まあ無理でしょうけど」
「望むところよ! 戦士として、貴女に闘いを申し込む!」
(ほんとはリルの言う通りなんだよね……落としたの、厳密には私と柊さんだし)
バレないように心中で苦笑するアリアをよそに、闘いの幕は切って落とされた。
●
「おまえ達に要求するのはこの3つだー! 真っ先に女子供と年寄り引っ張って魔女狩りの出てる区域からの避難誘導するコト、次いで自分たちも避難するコト、それから表通りに通じる道も簡単なヤツでいいからバリケードで塞いでおくコト! ローラちゃんからのありがたい指令を死ぬ気で達成してね♡」
リブラの裏街・労働者宿舎区域。『裏街の夜の妖精』ローラ・オルグレン(CL3000210)は表の屋台や店で飲んでいた連中を集めてそう話を切り出した。住人達は顔を見合わせる。「やべえのか」
「あーっとストップ! 自分らだけ速攻逃げるとかじゃなくて! それに釣り合うだけの報酬は後でちゃーんとあげるから、ねっ?」
「いいけどよ。こっちは素人だ。時間かかるぜ。お前ら『本職』が止めといてくれるのが前提だな」
「請け合いましょう。敵から遠ざかれる方角とバリケードを築くべき場所も見て参りました。さあ、ぐずぐずしていると本当にここまで敵が攻め込んできますぞ」
『静かなりしもののふ』サブロウ・カイトー(CL3000363)の言葉に、住人達はふむ、と納得した様子だった。事前行動が的確なのもさることながら、サブロウの決して華美ではない、しかしどこか異邦的な佇まいは、彼等の嫌いな類型には当てはまっていなかった。
「では班長殿。後はよろしくお願いします。より安全かつ遠方に避難できる様に、市民を護衛してあげてください」
「わかりました! お二人共、前線はよろしくお願いします!」
『イ・ラプセル国防騎士団第八班長』シエル・ヘブンサンデー(nCL3000040) は、サブロウの言葉にそう答えた。サブロウは少し声を落とし、続ける。「その際にはあまり官憲として居丈高にならない事をお勧めしますよ。オルグレン卿を真似ろとは申しませんが、そうですね……『おねがい♡』位のリップサービスをしても、罰は当たらないかと」
「……おねがい♡、ですか?」
いまいちよくわかっていないシエルはローラを振り返った。「お・ね・が・い♡」「わかったっつーの。それよりお前こそ店に戻って、報酬の仕度をしとけよ。−−たんまりとな」
「ううん、仕度はするけどぉ……その前に、『仕入れ』が先かなあ? ま、期待しててね♡」
ローラの言葉に小首を傾げ、シエルはサブロウに向き直る。「……仕入れって、何なんでしょう?」
「……さあ、何のことでしょうなあ」
朴訥な青年と能天気な少女には、その予測が立とうはずもなかった。
●
敵が動く。まず四人の魔女狩りがエルシーに向かった。(全員で向かってくる……? ヒーラーはどれ……?)考えながらも迎撃する。敵の攻撃を二発は回避し、二発食らった。「この程度ならば……! さあ、降伏か、死か、選びなさい!」反撃の拳が魔女狩り達を打ち抜く。
次に四人の魔女狩りがカノンを取り囲んだ。攻撃。いずれも命中。反撃。これも命中。魔女狩りの剣とカノンの拳が斬り結ぶ。全身に刀傷を負いながらも、カノンは反撃で敵にダメージを与えていく。「怒ってるね! いいよいいよ! カノンが相手してあげる!」カノンのダメージも甚大だが、その表情に恐怖の色は無い。
次に四人の魔女狩りがヒルダに向かった。「それも想定の範囲内よ! カウンター・オーバーブラスト!」ヒルダの放った散弾が魔女狩り達を撃ち抜く。魔女狩り達はいずれも銃創を負うが、そのまま前進してヒルダを攻撃する。一発は避け、三発は食らった。「やるわね! でもまだまだよ!」
残る三人がアリアを狙った。二発は避け、一発は被弾する。(私ならどこから来る? どこから……)反撃。いずれも命中。アリアの剣が舞うように魔女狩り達を斬り裂き、
その向こうから、リルがアリアに斬りかかった。分解。跳躍したリルが剣を振るい、伸びた刃がアリアに向かう。命中。アリアの二の腕から鮮血が飛ぶ。「っ……そうか、伸びるから……!」「色々考えてるようですが……私を相手に、全て出し切れますか?」
「−−だったら、踏み込む!」
影狼。急加速したアリアの剣がリルを襲う。回避。リルはサイドステップで避けた。反撃。リルのターンと共に伸びた刃が円を描き、アリアに斬りかかる。回避。アリアはバックロールで避けた。(ガードはしない……受けるための剣じゃない?)
「上手く囲んだつもりでしょうけど……崩す手はある!」
鉄山靠。エルシーの体当てが魔女狩りの一人を吹き飛ばし、さらにそれがカノンを囲む一人を巻き込んだ。
「チェストォォォォッ!」
さらに駆けつけた人影がヒートアクセルで斬りつけた。一体撃破。「懐島三郎景近、只今推参!」
「みぃんなぁ〜、おまたせぇ〜♡」
さらに合流したローラがハーベストレインで全員の傷を癒す。「おお、よかったローラ嬢、今日は素面だな」「……素面じゃない場合があるのか」
「進路が開いた! 行くよ!」
カノンが包囲を脱し、リルを狙う。「魔女狩りだか何だか知らないけど、人様の国で勝手狼藉は許さないんだよ!」震撃。命中。背後からの攻撃がリルを打ち据えた。「おっと……そちらもですか」連結。反撃。再合体したリルの剣がカノンを襲う。命中。カノンは胴を斬られ、小さくないダメージを負う。「くっ……まだまだ!」
「さて、回復はローラ嬢が間に合ったから……ヒルダ嬢の包囲を崩していくか!」
バレッジファイヤ。ウェルスの放った無数の銃弾が敵全体を撃ち抜く。敵は倒れはしなかったが、いずれも銃弾で蜂の巣にされた。
「どうやら、ヘブンサンデーはうまくやっているな……カノン、油断するなよ」
「まーかせて!」
ロジェはハーベストレインでカノンの傷を癒した。
「ちょっと手間取ってるわね……アリア、リル! 今行くからちょっと待ってなさい!」
さらにヒルダがバレッジファイヤで敵陣を攻撃する。ついに一人が倒れ、ヒルダの進路も開いた。二度の全体攻撃にリルは余裕の態度を崩さないが、魔女狩り達はもう潰れかかっている。
「……神の子等よ。我等天使に見えり。天上を夢見よ。安けく、冷たく、ただ教義のままに」
リルの言葉に、魔女狩り達が頷いた。敵が動く。まず一人が銃でローラを狙った。命中。「っ……いや〜ん、いったぁ〜い」一瞬眉間にものすごい縦ジワを刻んだが、まだまだ余裕である。
次に二人の魔女狩りがそれぞれ銃でウェルスとロジェを狙った。攻撃。いずれも命中。「っと! 大丈夫か、ロジェの旦那!」言いながらもウェルスは反撃する。銃声と共にすでに満身創痍だった魔女狩りが倒れた。三体撃破。
「この程度ならば問題無い。−−しつこい連中だが、命までは取らないでおこう」
エコーズ。投擲された薬瓶が命中し、魔力の爆発を起こす。魔女狩りは蒼い炎に巻かれて倒れた。四体目。
次に二人の魔女狩りがエルシーを狙った。攻撃。エルシーは一発を回避し、一発は食らう。「考えるゆとりはあったはずよ−−!」反撃。いずれも命中。エルシーの拳で二人が沈んだ。六体撃破。
次に二人の魔女狩りがヒルダを狙う。攻撃。いずれも命中。「アリアのところに行くのよ! どきなさい!」傷を負いながらもヒルダはオーバーブラストで反撃する。これも命中。魔女狩り二人は力尽きて倒れた。これで八体。
次に二人の魔女狩りがサブロウを狙った。攻撃。サブロウは一発は避け、一発はくらった。「突破はしませんか。しかし……」反撃のヒートアクセルが二人の魔女狩りを斬り裂き、倒れる。十体撃破。
次に四人の魔女狩りが転進し、カノンとアリアを狙った。攻撃。カノンは二発とも食らい、アリアは一発は避け、一発は被弾する。
「うーん、この動き……?」
リュンケウスの瞳で戦場を広く見ていたカノンに疑問が浮かぶ。魔女狩り達の動きは突破でも包囲でもない。疑問に思いながらも反撃し、二人を沈める。
「命を棄ててくる? それ自体は不思議じゃないけど−−」
呟きながらも、アリアも反撃の剣で二人の魔女狩りを斬り伏せた。ここまでで十四体撃破。
「−−まずい! 皆!」
「バカな−−!? 気をつけろ、これは全体攻撃だ! やつの蛇剣には限界射程など無い!」
「え?」
リルの剣を注視していたエルシーと、エネミースキャンを用いてリルを観察したロジェが叫ぶ。リルの剣が魔力の光を帯び、リルが空高く跳躍する。「さあ、知りなさい。私達こそ、人類を導く救世主なのだと!」
「妖牙銀刃舞≪フェアリィ・ファング・コンセントレーション≫!」
分解。解き放たれた魔法刃が乱舞し、全員を襲った。均等にダメージを与えた後、全体攻撃で消し飛ばす。後は残った一人が刈り取っていけばいい。傷を負っていた自由騎士達は鮮血を噴き上げ、倒れた。
「ま…まだよ……!」
アリアはどうにか立ち上がったが、ある意味体力よりも重要なものを失っていた。ガードした際に二刀のうちの短剣、≪慈悲の祈り≫が破損したのである。「−−ありがとう。後は、自分でやるね!」走り、リルの着地を狙う。命中。連結。反撃。「ふふ……!」血を流しながらも、リルが凶笑を浮かべて剣を振り下ろす。「くっ−−!」食らえば死ぬ。アリアはすんでのところで避けた。
「こ、これが神罰と仰るか−−否! 所詮人の業!」
もともと損害の少なかったサブロウも立ち上がる。ヒートアクセル。サブロウの刀をリルは剣で受け流す。「信心が足りませんね、俗人」「特に救われた経験もありませんでな!」反撃。サブロウはバックステップで避ける。
「貴女もエカテリーナのように無様に這いつくばるといいわ!」
攻撃を予測していたエルシーは直撃は受けなかった。リルに踏み込み、デュアルストライクで攻撃する。命中。エルシーの連蹴りがリルを打ち据える。「……異教徒が」反撃。これも命中。リルの剣がエルシーの胴を裂く。「っ−−! このくらい!」
「ふざけた真似しやがって……! みんなぁ〜、ローラちゃんからのありがたい指令だよぉ〜」
コル・デ・ホーザ。ローラから発したピンク色の甘ったるい風と艶かしい光が味方全員を癒す。「ブッ殺せ!」
「い、イエスマム! −−って思わず言っちまうな。まあそれはさておき」
ロストペイン。痛覚を抑えたウェルスは被弾してもなお冷静だった。銃を構え、狙いを定める。「そういえば、ご挨拶がまだだったな。こいつが俺の挨拶だ!」
「裏街よ、俺は帰ってきた! ってな!」
特製収束魔砲弾。ウェルスの銃から魔弾が放たれ、着弾して魔力の大爆発を起こす。「ふん……!」回避。ローリングでかわしたリルは直撃こそしなかったが、爆風に巻き込まれ幾らかのダメージを負った。
「もらったぁ! アークライト・バレット・スーパーチャージ・オン!」
「何!?」
織女星の弾丸。着地したリルに側面からヒルダが飛び込んだ。命中。リルの身体が地面に落ちて転がり、ヒルダは石畳に火花を走らせ着地する。
「負けるもんか−−! 舞え、大鷲よ!」
テーマソング。荒ぶる鷹のポーズ。勇壮な音楽と共にカノンが両手を鳥が羽ばたくように大きく広げ、左足を軸に右足を上げる。「カノンの拳は鋼の拳。この世に我が拳で砕けぬ物無し!」
「響け、神音!」
カノンのアッパーカットがリルを撃ち抜いた。教会の鐘のような鈍く、しかしどこか荘厳な音が響き、リルの身体が宙へ吹き飛び、落ちる。鐘の音の残響と共に、カノンの身体から余剰エネルギーが白い花びらのように放出された。
●
「え〜? ダメ?」
「ダメです」
戦闘終了後。シエルは倒された魔女狩り達を捕縛し、本部へ移送するために自由騎士達から引き受けた。もちろん首魁であるリルも含めて。「いちおう戦時捕虜ですから、慎重に扱う必要があります。裏街で私刑にするとかはダメです」
「つまんなぁ〜い。折角いい『商材』が入ると思ったのにぃ」
「商材……ですか?」
「まだ分からんのかい」
「まあ、少なくとも班長殿は『商材』にはちと厳しいでしょうなあ」
小首を傾げるシエルにローラがツッコミを入れ、サブロウは苦笑する。「さあ皆さん、あとは捕虜を移送すれば依頼完了です! 出かけましょう!」
「んー、カノンは残って壊れたり散らかった物の後片付をお手伝いするよ! お腹空いたけど携帯食料もあるし!」
「お、カノン嬢、だったら俺も手伝おう。……久し振りに煮物食ってくかな」
「私も残ろう。負傷者がいるかも知れないしな」
「私も手伝うわ。−−煮物って何?」
自由騎士達が夜明けの裏街に消えていく。−−アリアは現場に残り、折れた≪慈悲の祈り≫の破片を回収していた。「リルとエカテリーナ、か」付き合っていたヒルダが呟くように言った。
「変な連中だったわね。ま、人の事は言えないかもだけど」
「裏街に余計な被害を出そうとしてなかった。−−敵国じゃなかったら、友達になれたかもね」
「あいつらとお? −−面倒くさいだけだと思うけど?」
「たぶん、向こうもそう思ってるよ」
アリアが笑い、ヒルダも笑う。「さ、帰ろう」拾い終わったアリアが立ち上がった。「その破片、どうするの?」ヒルダが訊く。
アリアは、答えなかった。ヒルダもそれ以上は訊かず、二人は帰路に着いた。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
皆様お疲れ様でした並びにご参加ありがとうございました。
MVPはアリア・セレスティ様。強みを最大限に生かした戦闘と心情RPが魅力的でした。
改めて、皆様お疲れありがとうございました。
MVPはアリア・セレスティ様。強みを最大限に生かした戦闘と心情RPが魅力的でした。
改めて、皆様お疲れありがとうございました。
FL送付済