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紅蓮騎士の墓

●
戦場で幾多の武勲を挙げ、紅蓮騎士の名で知られた彼は、しかしある時叛逆の咎によって誅された。
最後に彼に与えられたのは、その武勲からすればまるで貧相な、小さい陵墓だった。
彼に付き従った兵達は彼の死と共に自決し、彼と同じ墓で眠る事を望んだという。
彼の故郷たるアデレード郊外、ブラックローズ墓地にある紅蓮騎士アグウェルの墓。
語られぬ逸話を抱いたまま、時と共に朽ちるに任されている−−
●
「……♪」
エルル・オーネスト(nCL3000034)は、夜半にブラックローズ墓地を散策していた。何故か。気ままな旅に理由など無い。朝であろうと深夜であろうと、歩きたければ歩き、帰りたければ帰る。まあそれにしてももう少し行き先を選べと言いたくならなくもない。
で、彼女はその墓地の中央に位置する陵墓の前で、謎の人影と行き当たった。古めかしい兜に軽鎧。手にはやはり今ではあまり使われていない曲刀を携えている。
そして−−その目には生気が無く、ただ狂気じみた不気味な光があった。
「……」
「……」
軽鎧の還リビトがエルルを見て小ふ首を傾げ、エルルも彼を見て小首を傾げる。−−やがて、還リビトが刀を振り上げた。攻撃。しかしエルルはぴょん、と後方に跳んでこれをかわした。
「……鬼ごっこ♪」
還リビトが獰猛な唸りを上げる。エルルは微笑み、踵を返して走り出した。
「……あれ」
しかし、すぐに不思議そうな顔をする。−−墓地のあちこちから、まるで湧き出るように複数の還リビトが現れたのだ。
「……降参です」
言って、エルルは両手を上げた。
●
「で、その紅蓮騎士の墓の周囲で、最近還リビトが出るんですって」
『あたしにお任せ』バーバラ・キュプカー(nCL3000007)は、そう言ってふう、とため息をついた。「最近多いわよね。この手の噂」
「何かの前触れじゃなきゃいいんだけど……とにかく、よかったら見て来てちょうだい。説明した通り、色々といわくつきの場所だから、くれぐれも気をつけて、ね」
言って、バーバラはふっと微笑む。
「ゆっくり準備して大丈夫よ。ブラックローズ墓地は人里からは十分離れた場所にあるから。まさかあんな不気味な墓地を、それも夜中にうろついてる一般人なんているわけないし、ね」
……すみません。
戦場で幾多の武勲を挙げ、紅蓮騎士の名で知られた彼は、しかしある時叛逆の咎によって誅された。
最後に彼に与えられたのは、その武勲からすればまるで貧相な、小さい陵墓だった。
彼に付き従った兵達は彼の死と共に自決し、彼と同じ墓で眠る事を望んだという。
彼の故郷たるアデレード郊外、ブラックローズ墓地にある紅蓮騎士アグウェルの墓。
語られぬ逸話を抱いたまま、時と共に朽ちるに任されている−−
●
「……♪」
エルル・オーネスト(nCL3000034)は、夜半にブラックローズ墓地を散策していた。何故か。気ままな旅に理由など無い。朝であろうと深夜であろうと、歩きたければ歩き、帰りたければ帰る。まあそれにしてももう少し行き先を選べと言いたくならなくもない。
で、彼女はその墓地の中央に位置する陵墓の前で、謎の人影と行き当たった。古めかしい兜に軽鎧。手にはやはり今ではあまり使われていない曲刀を携えている。
そして−−その目には生気が無く、ただ狂気じみた不気味な光があった。
「……」
「……」
軽鎧の還リビトがエルルを見て小ふ首を傾げ、エルルも彼を見て小首を傾げる。−−やがて、還リビトが刀を振り上げた。攻撃。しかしエルルはぴょん、と後方に跳んでこれをかわした。
「……鬼ごっこ♪」
還リビトが獰猛な唸りを上げる。エルルは微笑み、踵を返して走り出した。
「……あれ」
しかし、すぐに不思議そうな顔をする。−−墓地のあちこちから、まるで湧き出るように複数の還リビトが現れたのだ。
「……降参です」
言って、エルルは両手を上げた。
●
「で、その紅蓮騎士の墓の周囲で、最近還リビトが出るんですって」
『あたしにお任せ』バーバラ・キュプカー(nCL3000007)は、そう言ってふう、とため息をついた。「最近多いわよね。この手の噂」
「何かの前触れじゃなきゃいいんだけど……とにかく、よかったら見て来てちょうだい。説明した通り、色々といわくつきの場所だから、くれぐれも気をつけて、ね」
言って、バーバラはふっと微笑む。
「ゆっくり準備して大丈夫よ。ブラックローズ墓地は人里からは十分離れた場所にあるから。まさかあんな不気味な墓地を、それも夜中にうろついてる一般人なんているわけないし、ね」
……すみません。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.敵の全滅
皆様こんにちは。鳥海きりうです。よろしくお願いします。
還リビトと化した紅蓮騎士とその従兵との戦闘シナリオです。彼らの全滅が成功条件となります。
敵及びサブキャラクターのご紹介です。
・紅蓮騎士アグウェル
紅の重甲冑に身を包み、大剣を振るう騎士の還リビト。ボス敵らしくそれなりに強い。
・紅蓮騎士の従兵 ×10
紅蓮騎士に付き従う兵士の還リビト。曲刀と小盾、兜に軽鎧で武装している。スピードもあるが、盾と軽鎧で防御もそれなり。
・エルル・オーネスト(nCL3000034)
現場をうろつくおさんぽ少女。ある意味この依頼で最も理不尽な存在。
バーバラの言う通り、しっかり準備してから来て頂いて問題ありません。どうせエルルはすでに捕まっておりますので、やることはあまり変わりません。……え? しっかり準備と睡眠をとって朝になったら出発する?
あー、ちなみに還リビトは夜しか活動しないということはありません。よって夜だろうと朝だろうと、基本的にやることは同じです。
現場のブラックローズ墓地は十分な広さがありますが、背の低い障害物(墓)が林立しています。
中央には紅蓮騎士の陵墓があり、これは小さな入り口から階段を降りたところがホールのような空間になっています。墓地よりは狭く天井も低いですが、戦闘するには十分な広さがあり、障害物もありません。
簡単ですが、説明は以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。
還リビトと化した紅蓮騎士とその従兵との戦闘シナリオです。彼らの全滅が成功条件となります。
敵及びサブキャラクターのご紹介です。
・紅蓮騎士アグウェル
紅の重甲冑に身を包み、大剣を振るう騎士の還リビト。ボス敵らしくそれなりに強い。
・紅蓮騎士の従兵 ×10
紅蓮騎士に付き従う兵士の還リビト。曲刀と小盾、兜に軽鎧で武装している。スピードもあるが、盾と軽鎧で防御もそれなり。
・エルル・オーネスト(nCL3000034)
現場をうろつくおさんぽ少女。ある意味この依頼で最も理不尽な存在。
バーバラの言う通り、しっかり準備してから来て頂いて問題ありません。どうせエルルはすでに捕まっておりますので、やることはあまり変わりません。……え? しっかり準備と睡眠をとって朝になったら出発する?
あー、ちなみに還リビトは夜しか活動しないということはありません。よって夜だろうと朝だろうと、基本的にやることは同じです。
現場のブラックローズ墓地は十分な広さがありますが、背の低い障害物(墓)が林立しています。
中央には紅蓮騎士の陵墓があり、これは小さな入り口から階段を降りたところがホールのような空間になっています。墓地よりは狭く天井も低いですが、戦闘するには十分な広さがあり、障害物もありません。
簡単ですが、説明は以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。

状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2018年07月27日
2018年07月27日
†メイン参加者 8人†
●出陣スル
夜のブラックローズ墓地。依頼を受けた自由騎士達は、早速現地へやって来ていた。
「紅蓮騎士、ね。本当に反逆したのか嵌められたのかは知らないが、還リビトとして出てくるなら相当厄介だろうな」
「そうだね。紅蓮騎士の墓、か……偉大なる先達とはいえもしも還リビトになっているのなら……いや、止そう。相手が何であれ民に被害を齎すのであれば討たねばならない。せめてその魂が安らかに眠れる事を祈ろう」
ザルク・ミステル(CL3000067)と『山吹色の拳騎士』アダム・クランプトン(CL3000185)はそんな言葉を交わす。二人とも片手にカンテラを持ち、光源の確保は万全だった。
「夜回り警邏か。戦場が俺の仕事場なんだが……ま、還リビト相手なら、戦場にもなりうるか」
「戦場で赤を纏うというのは古来より武勇の誉れとされる……というのは何処の国にもよくある逸話みたいですね。嘗てのアマノホカリにも赤備えと呼ばれる、全身真っ赤な鎧兜の軍団が居たそうですよ」
『戦場《アウターヘヴン》の落し子』ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)が独りごちる傍で、『一刃にて天つ国迄斬り往くは』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)がそんな話を語る。−−この戦いが長引き拡大したら、いつか『彼』のことを語る時が来るのだろうか。
「ううむ、無念を残して死んだであろう騎士の陵墓か……まさかおばけ……いやいや! 還りビトならば剣も通じようてな! 血が出るなら神とて殺せるのじゃ!」
「そうとは限らねえぜ。こんな話を知らないか? 赤い洗面器を被った女が」
「うひいいいい!?」
「早えよ!」
いつになく浮き足立っている『ビッグ・ヴィーナス』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)に『星達の記録者』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)が怖い話を振り、見事にクリティカルを叩き出す。
「嗚呼、ブラックローズ墓地……なんとダークで妖しげな! まさにこの私の為に用意されたかのような場所! そして周りには麗しきイケメン&美女の皆様! うっとりですね、ふふ……!」
『ノンストップ・アケチ』タマキ・アケチ(CL3000011)はそんな事を言いながら、カンテラといつもの薔薇を手にくるくる踊っていた。ご機嫌らしい。ちゃんと趣旨を理解しているのかと不安になるが、周りの仲間達は特に驚きも窘めもしなかった。そんな彼にすでに慣れっこですかそうですか。
「……来たぞ」
ルシアスの言葉に全員が緊張を宿す。彼のサーチエネミーが敵の気配を捉えたのだ。
●奮イ立テ、者共
墓地の中央に小高く見える陵墓。その周辺から湧き出るように還リビトの兵士が現れた。その数10体。そして重々しい音を立てて、中央の陵墓の扉が開いた。中から兵士達よりも一回り大きい、真紅の重甲冑に身を包んだ騎士が現れる。
カスカは刀の柄に手をかけ、目だけで周囲を見回した。−−敵は出揃ったが、一般人の姿は無い。
「一般人はいないようだね……にしても、いきなり紅蓮騎士が出て来るとは……」
「丁度良い! 気になることは本人に訊くのが一番じゃろ! アグウェル殿ー! 叛逆されたってホントなんですかー?」
アダムの言葉の直後にシノピリカがそう訊いた。乾いた風のような音がシノピリカの耳に届く。苦笑のような、舌打ちのような。抜刀。構え。突撃。「ぬおお!?」
一瞬で距離を詰めたアグウェルの斬撃を、シノピリカは辛うじて鎧装盾で受け止めた。しかし咄嗟のことで反撃には至らない。アグウェルの突撃に呼応し、後方の兵士たちも鬨の声をあげた。
「無事かシノピリカ嬢! いきなり大将が突撃してきやがるとは……!」
「や、やっぱり地雷じゃったかの……?」
「いや、多分俺達の布陣を見て、部下任せじゃなくて自分で突破口をこじ開けるのを選んだんだ。高く買われたのかもな……!」
「なんでもいーよ! そっちがやる気ならこっちもだー!」
『豪拳猛蹴』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)が持っていたカンテラをその辺の墓の上に置き、両拳を握り構える。そして向かってくる従兵の一団に突撃した。
「俺も従兵の相手をする。そっちはしばらく頼んだぜ」
「ならば私も参りましょう。黒薔薇舞い散る戦場へ……!」
カーミラに続き、ルシアスとタマキも従兵と戦うために前進した。
「ぬおおお!」
身を翻したアグウェルの二太刀目がシノピリカの鎧装腕をかち上げる。二度の斬撃を受け、シノピリカのダメージは少なくない。「くっ……武勇を謳われる古の騎士と打ち物とって勝負する……剣執る者にとっては何よりの誉れじゃ!」
「卿には我が全力のインパクトを叩き込もう!」
SIEGER・IMPACT 改二。シノピリカの剛腕がアグウェルを殴りつける。アグウェルは大剣を構えてガードし、やや蹌踉めきながらもこれを堪えた。
紅蓮騎士の従兵達に対しては、まずカーミラが突出し、その後にルシアスとタマキが続く形となった。従兵のうちまず四体がカーミラを取り囲み、攻撃を加える。一発は回避し、三発は被弾した。ダメージは大きい。「っく−−まけるかー!」
「肘打ち! 裏拳! 正拳! からの−−鉄山靠おーっ!」
反撃。カーミラの震撃と鉄山靠が従兵を薙ぎ倒す。−−しかし、撃破には至らない。
さらに四体がタマキを取り囲み、集中攻撃を加える。
「あぁ、痛さが心地良いですね。それにこの血の匂い、この紅さ……思わずえずいてしまいますよ。ふふ、うっふふふふ……!」
全段命中。従兵の刀がタマキを容赦無く斬り裂く。しかしタマキの眼には狂気の笑みが浮かんだ。「さあ、私の刃で愛して差し上げますよ。ふふははははは!」
反撃。オーバーブラスト4連打。狂ったように放たれるバスタードソードの豪撃が従兵達を襲う。しかし、これも撃破には至らない。あとタマキさんはHPがあと50ちょいです。
残る従兵達の二体は、アグウェルを援護するためかさらに前進した。
(……どう確認しても一般人はいない。まあ当然といえば当然ですが……んん?)
何となく感じた違和感を、しかしカスカは一旦飲み込んだ。布陣を確認する。アグウェルの抑えにはシノピリカとアダムが回るだろう。当初の予定通り手近に寄って来た従兵を狙う。ヒートアクセル。カスカの太刀をその従兵は盾で堪えた。しかしノーダメージとはいかない。嫌な音がして従兵の盾を持つ腕が死ぬ。
「結構やばいか……? だったら、特殊弾といくか!」
ウェルスは銃に特製回復魔導弾・範囲型≪ヒーリングシャワーバレット≫を装填し、放つ。自由騎士達の傷が回復した。戦況は決して優勢ではないが、敵群にもダメージは与えている。ここでどれだけ敵の数を減らし、次の敵の攻勢を凌げるかどうかでこの戦いの趨勢は決まるだろう。「頼むぜ皆! ここが勝負所だ!」
「おーまかせー! ほいっと!」
「タマキ! 援護するぜ!」
カーミラが手近の従兵にとどめを刺し、ザルクがタマキと戦っていた従兵を狙撃し、沈める。二体撃破。
「あと二撃は保つ……! ワシは退かぬぞ! これぞ武門の誉れなりいいいい!」
バッシュ。シノピリカは剣を抜き放ち、アグウェルに斬りかかる。しかしアグウェルは半身を開き回避した。反撃。紅蓮騎士の大剣が振り下ろされる。ガード。
−−しかし、その大剣をガードしたのは、シノピリカの腕ではなかった。
「そろそろ僕の相手もしてもらおうか。紅蓮騎士アグウェル」
金属音を上げ、アダムとアグウェルは一度離れ、構える。「騎士アダム・クランプトン! いざ尋常に参る!」正拳突き。命中。しかしアグウェルはさほど意に介さず、アダムの胴に大剣で刺突を見舞う。「くっ……!」重鎧とキジンの身体が幸いした。脇腹を斬られるが、ダメージはまだ大きくない。
「派手なやつに気を取られすぎたな……!」
「私の愛、受け止めてくださいッ!」
墓に身を隠しながら移動していたルシアスが従兵に不意打ちを仕掛け、タマキがさらにオーバーブラストを放つ。また二体の従兵が血の海に沈んだ。
敵が動く。タマキの近くに残っていた従兵の一体と、カーミラと戦っていた二体がタマキに襲いかかる。「これはこれは! 私としたことが、咲き乱れてしまいそうですよ!」刺し込まれる刀に鮮血が噴き上がるが、タマキはなおも反撃で従兵を斬り伏せる。
しかし、それまで。
「ふははははは! オゥバァァァァァ!」
三体目の斬撃とタマキのオーバーブラストは同時だった。従兵は叩き伏せられて動かなくなるが、タマキもまた仰向けに地面に倒れる。……笑顔で。「エク……セレント……」七体撃破。戦闘不能。
カーミラと戦っていた残る一体が再び彼女を狙う。命中。「おおっと! こんのー!」反撃。踵落としが従兵の頭を地面に沈め、息の根を止める。八体目。「まだまだ! こんなもんじゃ私はへばんないよ!」
「何−−!?」
「なんと!? カーミラ殿、退かれよ!」
「え?」
カーミラはアダム達の声を振り返る。敵が、転進した。カーミラ達を素通りした従兵二体と−−アグウェルが。「ちょ、え、マジで−−!?」慌てて構える。従兵二体の攻撃に反撃するが、撃破には至らない。すでに最大火力の震撃が撃てるほどの余力は無かった。
そして−−アグウェルの大剣が、カーミラの身体を袈裟に斬り裂いた。「あ−−」鮮血を噴き上げ、カーミラは血の海に倒れる。戦闘不能。
「カーミラ! 何てこった−−!」
「カーミラ嬢! 死ぬな!」
ザルクとウェルスが悲痛な叫びを挙げる。その叫びに、カーミラは−−
「まぁけるかぁぁぁぁーっ!!」
あっさり応えた。フラグメンツ。爆発的な覇気がカーミラの身体から立ち昇る。アグウェルが低い吐息を漏らした。たじろぐような、賞賛するような。
「とはいえ−−ツケは払ってもらいますよ、紅蓮騎士。また後で話し合いましょう」
カスカが風と共に踏み込み、カーミラを囲む従兵の一体を斬り捨てる。
「ハーベストレインだ! 皆、タマキの旦那の仇討ちといこうぜ!」
ウェルスがスキルで仲間の傷を癒す。
「そろそろ黙っててもらうぜ!」
「そうだな。兵卒と遊んでいる暇は無い」
ザルクの銃撃が従兵の盾をかち上げ、そこへルシアスの大剣が打ち込まれる。十体目。従兵は全滅した。
「いけぇぇぇぇー! カーミラ・ボルトスクリューッ!」
カーミラの震撃がアグウェルの腹を撃ち抜く。アグウェルは思わず体勢を崩して一歩下がった。技の名前は適当です。
「卿がそういう手に出るなら、こちらも遠慮はせんぞ! 総掛かりじゃ!」
「アグウェエエエエル!」
シノピリカとアダムが追いついてきた。攻撃。シノピリカの剣をアグウェルは大剣で捌くが、アダムの拳がアグウェルの横頬を殴り飛ばす。アグウェルは身を翻し、大剣を大きく天に掲げた。大剣に紅いオーラが収束し、轟音と共に地面に振り下ろされ、
『紅蓮天翔破≪オール・ガンズ・ブレイジング≫!』
「「「「!?」」」」
噴き上がる。無数の紅いオーラの爆発に全員が吹き飛ばされた。「や、やってくれるぜ、アグウェルの旦那……!」「これが卿の本気か……必殺技まで万端備えておるとは!」
「ならば、二の太刀は遠慮しましょう」
発破抜打。カスカがアグウェルに斬りかかる。命中。アグウェルの脇腹が斬り裂かれ、血飛沫と共に鎧のパーツがいくつか飛び散る。反撃。
「させるかよ!」
ザルクの放った銃弾がアグウェルの大剣を弾いた。
「その隙は逃さん!」
そこへルシアスが踏み込む。下段突き。アグウェルはすんでのところで大剣を振り下ろして軌道を逸らす。跳ね上がる剣をルシアスは半身を開いてかわした。
「蒸気鎧装オーバードライブのビート! 打ち砕け、山吹色の掌撃≪サンライト・インパクト≫!」
アダムの掌底がアグウェルの胴に打ち込まれる。破砕。アグウェルの鎧の胸パーツが吹き飛んだ。
「とどめだー! カーミラ・ハンド・スマァァァァッシュ!」
カーミラの震撃がアグウェルの胸を貫いた。抜拳。カーミラは身を翻し、胸の前で拳と掌を合わせる。「せいばーい!」血飛沫を上げてアグウェルが倒れる。技の名前はry
「やれやれ、終わったか……ん?」
ウェルスがため息を吐き、ふと陵墓の方を見た。
その視線の先−−陵墓の入口に、少女が顔を出していた。
●貴君等ノ善戦二期待スル
陵墓から出てきたエルル・オーネスト(nCL3000034)を見つけた一行は、彼女から事情を聞くことにした。
「私は要りません。不審者の尋問より、仲間の命が大事です。タマキさんを連れて先に帰りますね。この中じゃ私が一番速いですし」
カスカはそう言って、タマキの身体をひょい、とかつぎ上げた。普段から大太刀を使う彼女なら男一人ぐらいは造作も無い。タマキの身体がビクビクと震えた。−−危険な兆候というか、喜んでいるだけな気がする。先入観だろうか。
エルルは小首を傾げ、ひらひらと小さく手を振った。カスカはそれを見て、小さく肩を竦め、駆け出した。上でタマキがビクンビクン揺れていた。
「で、お前さんは何者だ?」
ザルクが尋ね、エルルは答える。「エルル・オーネストです」
「なんでこんな人里離れた墓所にいたんだ? 他にも一緒に来てるやつなんかはいるのか?」
「ひとりで、おさんぽです」
「……おさんぽ……?」
「子供の夜中の一人歩きは感心しないぞ」
ルシアスが言い、エルルは頭を下げる。「ごめんなさい」
「……遠くへ行きたい、だったね? でも、何も墓場じゃなくてもいいだろう」
アダムが言い、エルルは少し考え、ふるふると首を横に振った。「……?」
「−−反応ありだ! 皆、来たぜ!」
ウェルスの言葉に、全員がそちらを向いた。交霊術。先程アグウェルが倒れた位置に、再び彼が姿を現わす。「アグウェル殿……!」
『先ニ言ッテオク』
誰かが何か言う前に、アグウェルが口を開いた。『長々昔話ヲスル気ハ無イ。仮初メノ肉体モ最早滅ンダ。我等ハ逝カネバナラヌ』
「……最近、貴方のような還リビトが多いのです。何かご存知ありませんか、先輩」
『ソレモ言エン。ダガ−−王ガ過チヲ犯シタラ、命ヲ棄テテモソレヲ糾スノガ騎士ノ務メダ。覚エテオケ、後輩』
「……あんたもそうだったのか? 紅蓮騎士」
アダムの後にルシアスがそう訊く。アグウェルは自嘲気味に笑った。『ソウダッタラ、誰カガ伝エルサ』
「ならばアグウェル殿とその臣下の武勇、ワシが語り継ぎましょうぞ。安堵してセフィロトの海へ還られい」
シノピリカが言い、アグウェルは笑う。
『力ヲ求メヨ、騎士達ヨ。私如キニ手間取ッテイルヨウデハ、陛下ニハ遠ク及バヌ』
言って、アグウェルは霧のように消えた。ウェルスは口の橋を吊り上げ、呟いた。
「また会おうぜ。アグウェルの旦那」
「……会えると思うか?」
ザルクの問いに、ウェルスは答える。「希望を言ったまでさ。結構面白い旦那だったしな。それに」
「まだ、ちゃんと教えてもらってないからな。紅蓮天翔破」
「それが理由かよ」
「そーだね! 面白かったから、また会いたいね!」
「再調査は必要だろう。……またいつか、な」
いつか、来るだろうか。彼の死の真相を解き明かし、その力を誰かが受け継ぐ日が−−。
夜のブラックローズ墓地。依頼を受けた自由騎士達は、早速現地へやって来ていた。
「紅蓮騎士、ね。本当に反逆したのか嵌められたのかは知らないが、還リビトとして出てくるなら相当厄介だろうな」
「そうだね。紅蓮騎士の墓、か……偉大なる先達とはいえもしも還リビトになっているのなら……いや、止そう。相手が何であれ民に被害を齎すのであれば討たねばならない。せめてその魂が安らかに眠れる事を祈ろう」
ザルク・ミステル(CL3000067)と『山吹色の拳騎士』アダム・クランプトン(CL3000185)はそんな言葉を交わす。二人とも片手にカンテラを持ち、光源の確保は万全だった。
「夜回り警邏か。戦場が俺の仕事場なんだが……ま、還リビト相手なら、戦場にもなりうるか」
「戦場で赤を纏うというのは古来より武勇の誉れとされる……というのは何処の国にもよくある逸話みたいですね。嘗てのアマノホカリにも赤備えと呼ばれる、全身真っ赤な鎧兜の軍団が居たそうですよ」
『戦場《アウターヘヴン》の落し子』ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)が独りごちる傍で、『一刃にて天つ国迄斬り往くは』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)がそんな話を語る。−−この戦いが長引き拡大したら、いつか『彼』のことを語る時が来るのだろうか。
「ううむ、無念を残して死んだであろう騎士の陵墓か……まさかおばけ……いやいや! 還りビトならば剣も通じようてな! 血が出るなら神とて殺せるのじゃ!」
「そうとは限らねえぜ。こんな話を知らないか? 赤い洗面器を被った女が」
「うひいいいい!?」
「早えよ!」
いつになく浮き足立っている『ビッグ・ヴィーナス』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)に『星達の記録者』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)が怖い話を振り、見事にクリティカルを叩き出す。
「嗚呼、ブラックローズ墓地……なんとダークで妖しげな! まさにこの私の為に用意されたかのような場所! そして周りには麗しきイケメン&美女の皆様! うっとりですね、ふふ……!」
『ノンストップ・アケチ』タマキ・アケチ(CL3000011)はそんな事を言いながら、カンテラといつもの薔薇を手にくるくる踊っていた。ご機嫌らしい。ちゃんと趣旨を理解しているのかと不安になるが、周りの仲間達は特に驚きも窘めもしなかった。そんな彼にすでに慣れっこですかそうですか。
「……来たぞ」
ルシアスの言葉に全員が緊張を宿す。彼のサーチエネミーが敵の気配を捉えたのだ。
●奮イ立テ、者共
墓地の中央に小高く見える陵墓。その周辺から湧き出るように還リビトの兵士が現れた。その数10体。そして重々しい音を立てて、中央の陵墓の扉が開いた。中から兵士達よりも一回り大きい、真紅の重甲冑に身を包んだ騎士が現れる。
カスカは刀の柄に手をかけ、目だけで周囲を見回した。−−敵は出揃ったが、一般人の姿は無い。
「一般人はいないようだね……にしても、いきなり紅蓮騎士が出て来るとは……」
「丁度良い! 気になることは本人に訊くのが一番じゃろ! アグウェル殿ー! 叛逆されたってホントなんですかー?」
アダムの言葉の直後にシノピリカがそう訊いた。乾いた風のような音がシノピリカの耳に届く。苦笑のような、舌打ちのような。抜刀。構え。突撃。「ぬおお!?」
一瞬で距離を詰めたアグウェルの斬撃を、シノピリカは辛うじて鎧装盾で受け止めた。しかし咄嗟のことで反撃には至らない。アグウェルの突撃に呼応し、後方の兵士たちも鬨の声をあげた。
「無事かシノピリカ嬢! いきなり大将が突撃してきやがるとは……!」
「や、やっぱり地雷じゃったかの……?」
「いや、多分俺達の布陣を見て、部下任せじゃなくて自分で突破口をこじ開けるのを選んだんだ。高く買われたのかもな……!」
「なんでもいーよ! そっちがやる気ならこっちもだー!」
『豪拳猛蹴』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)が持っていたカンテラをその辺の墓の上に置き、両拳を握り構える。そして向かってくる従兵の一団に突撃した。
「俺も従兵の相手をする。そっちはしばらく頼んだぜ」
「ならば私も参りましょう。黒薔薇舞い散る戦場へ……!」
カーミラに続き、ルシアスとタマキも従兵と戦うために前進した。
「ぬおおお!」
身を翻したアグウェルの二太刀目がシノピリカの鎧装腕をかち上げる。二度の斬撃を受け、シノピリカのダメージは少なくない。「くっ……武勇を謳われる古の騎士と打ち物とって勝負する……剣執る者にとっては何よりの誉れじゃ!」
「卿には我が全力のインパクトを叩き込もう!」
SIEGER・IMPACT 改二。シノピリカの剛腕がアグウェルを殴りつける。アグウェルは大剣を構えてガードし、やや蹌踉めきながらもこれを堪えた。
紅蓮騎士の従兵達に対しては、まずカーミラが突出し、その後にルシアスとタマキが続く形となった。従兵のうちまず四体がカーミラを取り囲み、攻撃を加える。一発は回避し、三発は被弾した。ダメージは大きい。「っく−−まけるかー!」
「肘打ち! 裏拳! 正拳! からの−−鉄山靠おーっ!」
反撃。カーミラの震撃と鉄山靠が従兵を薙ぎ倒す。−−しかし、撃破には至らない。
さらに四体がタマキを取り囲み、集中攻撃を加える。
「あぁ、痛さが心地良いですね。それにこの血の匂い、この紅さ……思わずえずいてしまいますよ。ふふ、うっふふふふ……!」
全段命中。従兵の刀がタマキを容赦無く斬り裂く。しかしタマキの眼には狂気の笑みが浮かんだ。「さあ、私の刃で愛して差し上げますよ。ふふははははは!」
反撃。オーバーブラスト4連打。狂ったように放たれるバスタードソードの豪撃が従兵達を襲う。しかし、これも撃破には至らない。あとタマキさんはHPがあと50ちょいです。
残る従兵達の二体は、アグウェルを援護するためかさらに前進した。
(……どう確認しても一般人はいない。まあ当然といえば当然ですが……んん?)
何となく感じた違和感を、しかしカスカは一旦飲み込んだ。布陣を確認する。アグウェルの抑えにはシノピリカとアダムが回るだろう。当初の予定通り手近に寄って来た従兵を狙う。ヒートアクセル。カスカの太刀をその従兵は盾で堪えた。しかしノーダメージとはいかない。嫌な音がして従兵の盾を持つ腕が死ぬ。
「結構やばいか……? だったら、特殊弾といくか!」
ウェルスは銃に特製回復魔導弾・範囲型≪ヒーリングシャワーバレット≫を装填し、放つ。自由騎士達の傷が回復した。戦況は決して優勢ではないが、敵群にもダメージは与えている。ここでどれだけ敵の数を減らし、次の敵の攻勢を凌げるかどうかでこの戦いの趨勢は決まるだろう。「頼むぜ皆! ここが勝負所だ!」
「おーまかせー! ほいっと!」
「タマキ! 援護するぜ!」
カーミラが手近の従兵にとどめを刺し、ザルクがタマキと戦っていた従兵を狙撃し、沈める。二体撃破。
「あと二撃は保つ……! ワシは退かぬぞ! これぞ武門の誉れなりいいいい!」
バッシュ。シノピリカは剣を抜き放ち、アグウェルに斬りかかる。しかしアグウェルは半身を開き回避した。反撃。紅蓮騎士の大剣が振り下ろされる。ガード。
−−しかし、その大剣をガードしたのは、シノピリカの腕ではなかった。
「そろそろ僕の相手もしてもらおうか。紅蓮騎士アグウェル」
金属音を上げ、アダムとアグウェルは一度離れ、構える。「騎士アダム・クランプトン! いざ尋常に参る!」正拳突き。命中。しかしアグウェルはさほど意に介さず、アダムの胴に大剣で刺突を見舞う。「くっ……!」重鎧とキジンの身体が幸いした。脇腹を斬られるが、ダメージはまだ大きくない。
「派手なやつに気を取られすぎたな……!」
「私の愛、受け止めてくださいッ!」
墓に身を隠しながら移動していたルシアスが従兵に不意打ちを仕掛け、タマキがさらにオーバーブラストを放つ。また二体の従兵が血の海に沈んだ。
敵が動く。タマキの近くに残っていた従兵の一体と、カーミラと戦っていた二体がタマキに襲いかかる。「これはこれは! 私としたことが、咲き乱れてしまいそうですよ!」刺し込まれる刀に鮮血が噴き上がるが、タマキはなおも反撃で従兵を斬り伏せる。
しかし、それまで。
「ふははははは! オゥバァァァァァ!」
三体目の斬撃とタマキのオーバーブラストは同時だった。従兵は叩き伏せられて動かなくなるが、タマキもまた仰向けに地面に倒れる。……笑顔で。「エク……セレント……」七体撃破。戦闘不能。
カーミラと戦っていた残る一体が再び彼女を狙う。命中。「おおっと! こんのー!」反撃。踵落としが従兵の頭を地面に沈め、息の根を止める。八体目。「まだまだ! こんなもんじゃ私はへばんないよ!」
「何−−!?」
「なんと!? カーミラ殿、退かれよ!」
「え?」
カーミラはアダム達の声を振り返る。敵が、転進した。カーミラ達を素通りした従兵二体と−−アグウェルが。「ちょ、え、マジで−−!?」慌てて構える。従兵二体の攻撃に反撃するが、撃破には至らない。すでに最大火力の震撃が撃てるほどの余力は無かった。
そして−−アグウェルの大剣が、カーミラの身体を袈裟に斬り裂いた。「あ−−」鮮血を噴き上げ、カーミラは血の海に倒れる。戦闘不能。
「カーミラ! 何てこった−−!」
「カーミラ嬢! 死ぬな!」
ザルクとウェルスが悲痛な叫びを挙げる。その叫びに、カーミラは−−
「まぁけるかぁぁぁぁーっ!!」
あっさり応えた。フラグメンツ。爆発的な覇気がカーミラの身体から立ち昇る。アグウェルが低い吐息を漏らした。たじろぐような、賞賛するような。
「とはいえ−−ツケは払ってもらいますよ、紅蓮騎士。また後で話し合いましょう」
カスカが風と共に踏み込み、カーミラを囲む従兵の一体を斬り捨てる。
「ハーベストレインだ! 皆、タマキの旦那の仇討ちといこうぜ!」
ウェルスがスキルで仲間の傷を癒す。
「そろそろ黙っててもらうぜ!」
「そうだな。兵卒と遊んでいる暇は無い」
ザルクの銃撃が従兵の盾をかち上げ、そこへルシアスの大剣が打ち込まれる。十体目。従兵は全滅した。
「いけぇぇぇぇー! カーミラ・ボルトスクリューッ!」
カーミラの震撃がアグウェルの腹を撃ち抜く。アグウェルは思わず体勢を崩して一歩下がった。技の名前は適当です。
「卿がそういう手に出るなら、こちらも遠慮はせんぞ! 総掛かりじゃ!」
「アグウェエエエエル!」
シノピリカとアダムが追いついてきた。攻撃。シノピリカの剣をアグウェルは大剣で捌くが、アダムの拳がアグウェルの横頬を殴り飛ばす。アグウェルは身を翻し、大剣を大きく天に掲げた。大剣に紅いオーラが収束し、轟音と共に地面に振り下ろされ、
『紅蓮天翔破≪オール・ガンズ・ブレイジング≫!』
「「「「!?」」」」
噴き上がる。無数の紅いオーラの爆発に全員が吹き飛ばされた。「や、やってくれるぜ、アグウェルの旦那……!」「これが卿の本気か……必殺技まで万端備えておるとは!」
「ならば、二の太刀は遠慮しましょう」
発破抜打。カスカがアグウェルに斬りかかる。命中。アグウェルの脇腹が斬り裂かれ、血飛沫と共に鎧のパーツがいくつか飛び散る。反撃。
「させるかよ!」
ザルクの放った銃弾がアグウェルの大剣を弾いた。
「その隙は逃さん!」
そこへルシアスが踏み込む。下段突き。アグウェルはすんでのところで大剣を振り下ろして軌道を逸らす。跳ね上がる剣をルシアスは半身を開いてかわした。
「蒸気鎧装オーバードライブのビート! 打ち砕け、山吹色の掌撃≪サンライト・インパクト≫!」
アダムの掌底がアグウェルの胴に打ち込まれる。破砕。アグウェルの鎧の胸パーツが吹き飛んだ。
「とどめだー! カーミラ・ハンド・スマァァァァッシュ!」
カーミラの震撃がアグウェルの胸を貫いた。抜拳。カーミラは身を翻し、胸の前で拳と掌を合わせる。「せいばーい!」血飛沫を上げてアグウェルが倒れる。技の名前はry
「やれやれ、終わったか……ん?」
ウェルスがため息を吐き、ふと陵墓の方を見た。
その視線の先−−陵墓の入口に、少女が顔を出していた。
●貴君等ノ善戦二期待スル
陵墓から出てきたエルル・オーネスト(nCL3000034)を見つけた一行は、彼女から事情を聞くことにした。
「私は要りません。不審者の尋問より、仲間の命が大事です。タマキさんを連れて先に帰りますね。この中じゃ私が一番速いですし」
カスカはそう言って、タマキの身体をひょい、とかつぎ上げた。普段から大太刀を使う彼女なら男一人ぐらいは造作も無い。タマキの身体がビクビクと震えた。−−危険な兆候というか、喜んでいるだけな気がする。先入観だろうか。
エルルは小首を傾げ、ひらひらと小さく手を振った。カスカはそれを見て、小さく肩を竦め、駆け出した。上でタマキがビクンビクン揺れていた。
「で、お前さんは何者だ?」
ザルクが尋ね、エルルは答える。「エルル・オーネストです」
「なんでこんな人里離れた墓所にいたんだ? 他にも一緒に来てるやつなんかはいるのか?」
「ひとりで、おさんぽです」
「……おさんぽ……?」
「子供の夜中の一人歩きは感心しないぞ」
ルシアスが言い、エルルは頭を下げる。「ごめんなさい」
「……遠くへ行きたい、だったね? でも、何も墓場じゃなくてもいいだろう」
アダムが言い、エルルは少し考え、ふるふると首を横に振った。「……?」
「−−反応ありだ! 皆、来たぜ!」
ウェルスの言葉に、全員がそちらを向いた。交霊術。先程アグウェルが倒れた位置に、再び彼が姿を現わす。「アグウェル殿……!」
『先ニ言ッテオク』
誰かが何か言う前に、アグウェルが口を開いた。『長々昔話ヲスル気ハ無イ。仮初メノ肉体モ最早滅ンダ。我等ハ逝カネバナラヌ』
「……最近、貴方のような還リビトが多いのです。何かご存知ありませんか、先輩」
『ソレモ言エン。ダガ−−王ガ過チヲ犯シタラ、命ヲ棄テテモソレヲ糾スノガ騎士ノ務メダ。覚エテオケ、後輩』
「……あんたもそうだったのか? 紅蓮騎士」
アダムの後にルシアスがそう訊く。アグウェルは自嘲気味に笑った。『ソウダッタラ、誰カガ伝エルサ』
「ならばアグウェル殿とその臣下の武勇、ワシが語り継ぎましょうぞ。安堵してセフィロトの海へ還られい」
シノピリカが言い、アグウェルは笑う。
『力ヲ求メヨ、騎士達ヨ。私如キニ手間取ッテイルヨウデハ、陛下ニハ遠ク及バヌ』
言って、アグウェルは霧のように消えた。ウェルスは口の橋を吊り上げ、呟いた。
「また会おうぜ。アグウェルの旦那」
「……会えると思うか?」
ザルクの問いに、ウェルスは答える。「希望を言ったまでさ。結構面白い旦那だったしな。それに」
「まだ、ちゃんと教えてもらってないからな。紅蓮天翔破」
「それが理由かよ」
「そーだね! 面白かったから、また会いたいね!」
「再調査は必要だろう。……またいつか、な」
いつか、来るだろうか。彼の死の真相を解き明かし、その力を誰かが受け継ぐ日が−−。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
軽傷
称号付与
『蒼影の銃士』
取得者: ザルク・ミステル(CL3000067)
『血染めの黒』
取得者: タマキ・アケチ(CL3000011)
『全力全開!』
取得者: カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
取得者: ザルク・ミステル(CL3000067)
『血染めの黒』
取得者: タマキ・アケチ(CL3000011)
『全力全開!』
取得者: カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
†あとがき†
皆様お疲れ様でした並びにご参加ありがとうございました。
思えばこのゲームで初めて『純戦』を書いた気がします。すごく楽しかったです。対戦ありがとうございました。
MVPはカーミラ・ローゼンタール様。説明は不要かと存じます。お疲れ様でした。
改めて、皆様お疲れありがとうございました。
思えばこのゲームで初めて『純戦』を書いた気がします。すごく楽しかったです。対戦ありがとうございました。
MVPはカーミラ・ローゼンタール様。説明は不要かと存じます。お疲れ様でした。
改めて、皆様お疲れありがとうございました。
FL送付済