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用法・用量を守って

●
猿酒というのは、猿などがどこかに溜め込んだ果物や木の実が自然に発酵してできる酒のことだ。別名は「ましら酒」。もっとも猿酒に限らず、発酵した果実がアルコールを含む例は珍しくないらしい。美味しいのかは定かではないが、猟師などが探して飲んだとされている以上、多分美味しいのだろう。それとも昼間から酒が飲みたいという、酒飲みなら誰しもが一度は抱いたことのあるであろう欲望に駆られていただけなのかは定かではないが。
ちなみに、酒を飲んで酔っぱらうのは人だけではない。動物が意図せずに発酵した果実を食べ、“酔っぱらい状態”になったという記録はいくつも存在する。ましてや“欲”の影響を受けやすいイブリースとなれば猶更……
●
「今回の依頼は~ちょっと厄介というか、面倒というか……」
早朝に集まったあなた達は『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)のなんとも歯切れの悪い口調に内心首をかしげる。
「演算装置によってヘラジカのイブリースの出現が予測されたの!場所は少し離れてるんだけど、今から向かえばお昼過ぎくらいには街の外側で足止めできて、街への侵入は防げると思うよ。……で、これの何が厄介なのかっていうと……」
どうやらクラウディアの歯切れが悪い原因はこの先にあるらしい。彼女はそのまま話を続ける。
「なんかそのイブリース達、発酵した木の実か何かを食べたらしくて……つまり“酔ってる”らしいの。そもそもヘラジカって森に棲んでて普通はこんな街の方まで来たりする動物じゃないんだけど、予測では街のすぐそこまで来ちゃってるし。なんか、酔っぱらうと普通の判断できないんでしょ?私にはよくわからないけど」
やれやれ。とでも言うかのようにクラウディアは肩をすくめる。まだまだ未成年の彼女には酒に惹かれる気持ちも、酔っぱらった時の気分も分からない。というか知らなくていい。
「そのまま街に入られて暴れられたりなんかしたら本当に危ないから、オラクルのみんなにヘラジカたちを元に戻してほしいの!酔っぱらいが何するか分からないのは人もイブリースも変わらないと思うから、くれぐれも気を付けてね!」
発酵した果実を食べて酔っぱらっているイブリースの群れ、と聞くと何とも気の抜ける話ではある。……とはいえイブリースはイブリース。クラウディアの言う通り何かがあってからでは遅い。あなた達は彼女に送り出され、出現予測のあった街へと向かった。
猿酒というのは、猿などがどこかに溜め込んだ果物や木の実が自然に発酵してできる酒のことだ。別名は「ましら酒」。もっとも猿酒に限らず、発酵した果実がアルコールを含む例は珍しくないらしい。美味しいのかは定かではないが、猟師などが探して飲んだとされている以上、多分美味しいのだろう。それとも昼間から酒が飲みたいという、酒飲みなら誰しもが一度は抱いたことのあるであろう欲望に駆られていただけなのかは定かではないが。
ちなみに、酒を飲んで酔っぱらうのは人だけではない。動物が意図せずに発酵した果実を食べ、“酔っぱらい状態”になったという記録はいくつも存在する。ましてや“欲”の影響を受けやすいイブリースとなれば猶更……
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「今回の依頼は~ちょっと厄介というか、面倒というか……」
早朝に集まったあなた達は『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)のなんとも歯切れの悪い口調に内心首をかしげる。
「演算装置によってヘラジカのイブリースの出現が予測されたの!場所は少し離れてるんだけど、今から向かえばお昼過ぎくらいには街の外側で足止めできて、街への侵入は防げると思うよ。……で、これの何が厄介なのかっていうと……」
どうやらクラウディアの歯切れが悪い原因はこの先にあるらしい。彼女はそのまま話を続ける。
「なんかそのイブリース達、発酵した木の実か何かを食べたらしくて……つまり“酔ってる”らしいの。そもそもヘラジカって森に棲んでて普通はこんな街の方まで来たりする動物じゃないんだけど、予測では街のすぐそこまで来ちゃってるし。なんか、酔っぱらうと普通の判断できないんでしょ?私にはよくわからないけど」
やれやれ。とでも言うかのようにクラウディアは肩をすくめる。まだまだ未成年の彼女には酒に惹かれる気持ちも、酔っぱらった時の気分も分からない。というか知らなくていい。
「そのまま街に入られて暴れられたりなんかしたら本当に危ないから、オラクルのみんなにヘラジカたちを元に戻してほしいの!酔っぱらいが何するか分からないのは人もイブリースも変わらないと思うから、くれぐれも気を付けてね!」
発酵した果実を食べて酔っぱらっているイブリースの群れ、と聞くと何とも気の抜ける話ではある。……とはいえイブリースはイブリース。クラウディアの言う通り何かがあってからでは遅い。あなた達は彼女に送り出され、出現予測のあった街へと向かった。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.酔っぱらいイブリースの撃退
皆様初めまして。リクヲと申します。初シナリオでございます。
早速依頼の情報にいきましょう。
【場所】
街を出てすぐの草原です。木は点々としている程度です。例のヘラジカが棲んでいる森へは走ればそれほどかかりません。天気は晴れです。
【時間】
真っ昼間です。昼間からお酒。さぞ良いご身分なのでしょう。別に羨ましいだなんて思ってません。本当です。
【敵】
イブリース(ヘラジカ) ×4(雄2頭、雌2頭)
皆様酔っておられますがまだ中途半端です。というわけで判断機能が多少鈍っている程度なので歩行走行、及び攻撃はしてきます。悪い酔い方ですね。周りに迷惑をかける酔い方はよくないです。
攻撃方法
角の突進:近接/単体 【ノックバック】 ※角を持っている雄限定
蹴り:近接/単体
蹴りは前足でも後ろ足でも行ってきます。かなり重量のある動物ですので、一撃一撃が重いです。通常のヘラジカは必要な時しか戦わない動物ですが、イブリース化及び酔っぱらい化のせいで狂暴となっている彼らのリーチに入ったら見境なく攻撃されるでしょう。お気をつけて。
【目的とプレイングについて】
成功条件に書いた通り“撃退”です。殺さずに、倒してください。ちなみにもっとアルコールを摂取すると、アルコール分解機能が発達していない彼らはフラフラになりやがて眠ります。というわけで寝かせてから倒してもよし、その場でそのまま戦ってもよし、街へ向かわないよう誘導してから戦ってもよし、です。ちなみに倒して浄化してあげればそのうち酔いは醒めます。
またキャラクターがこの依頼に対して抱いている感情。また、キャラクターがお酒に対してどういった感情を抱いているかも書いていただけると嬉しいです。
皆様のアイデア溢れるプレイングをお待ちしております~
早速依頼の情報にいきましょう。
【場所】
街を出てすぐの草原です。木は点々としている程度です。例のヘラジカが棲んでいる森へは走ればそれほどかかりません。天気は晴れです。
【時間】
真っ昼間です。昼間からお酒。さぞ良いご身分なのでしょう。別に羨ましいだなんて思ってません。本当です。
【敵】
イブリース(ヘラジカ) ×4(雄2頭、雌2頭)
皆様酔っておられますがまだ中途半端です。というわけで判断機能が多少鈍っている程度なので歩行走行、及び攻撃はしてきます。悪い酔い方ですね。周りに迷惑をかける酔い方はよくないです。
攻撃方法
角の突進:近接/単体 【ノックバック】 ※角を持っている雄限定
蹴り:近接/単体
蹴りは前足でも後ろ足でも行ってきます。かなり重量のある動物ですので、一撃一撃が重いです。通常のヘラジカは必要な時しか戦わない動物ですが、イブリース化及び酔っぱらい化のせいで狂暴となっている彼らのリーチに入ったら見境なく攻撃されるでしょう。お気をつけて。
【目的とプレイングについて】
成功条件に書いた通り“撃退”です。殺さずに、倒してください。ちなみにもっとアルコールを摂取すると、アルコール分解機能が発達していない彼らはフラフラになりやがて眠ります。というわけで寝かせてから倒してもよし、その場でそのまま戦ってもよし、街へ向かわないよう誘導してから戦ってもよし、です。ちなみに倒して浄化してあげればそのうち酔いは醒めます。
またキャラクターがこの依頼に対して抱いている感情。また、キャラクターがお酒に対してどういった感情を抱いているかも書いていただけると嬉しいです。
皆様のアイデア溢れるプレイングをお待ちしております~
状態
完了
完了
報酬マテリア
6個
2個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
4/8
4/8
公開日
2020年04月18日
2020年04月18日
†メイン参加者 4人†
●
「それにしても例のヘラジカ共、酒好きとは中々話せる奴等じゃの。余からも一杯、と言わず樽ごと奢ってやろうではないか」
そんなことを言って、集合場所にひょうたんから酒をぐびぐびっと飲みながら、しかも酒樽を担いで現れた氷面鏡 天輝(CL3000665)に一同は度肝を抜かれた。
「天輝様、お酒をたくさん持ってきていただいたのは助かりますが……そんなに飲んでしまって戦えるのですか?」
『常に全力浄化系シスター』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が皆の心配を代弁するかのように声をかける。
「大丈夫じゃ。余は酔拳の使い手じゃからな」
酔拳は別に酒を飲む口実ではないのでは?……とは誰もツッコまなかったが、まぁ本人が大丈夫と言っている以上大丈夫ということにしておこう。という流れで『所信表明』トット・ワーフ(CL3000396)とティラミス・グラスホイップ(CL3000385)も持ち物の確認をする。
「僕は果物とお酒を持ってきたよ。これでヘラジカ達を引き付けられるといいけど……」
「私もトットさんと同じで食べ物とお酒を持ってきました。未成年なのでお酒の種類とかはまだよく分からないんですけど――」
「むむ!貴公らの持ってる酒、それはアマノホカリ産の酒ではないか!?アマノホカリの酒は良いぞ。余のオススメじゃ」
どうやらトットとティラミスの持ってきた酒は天輝の好物だったらしい。既にかなり飲んでる筈の天輝だが、それも少し飲ませてと言わんばかりに2人に視線を送る。
「あら、天輝さんの好きなお酒だったんですね!って、天輝さんにあげるお酒じゃないですからね!もし余ったらあげますけど」
「余ったら、じゃな?よし。ではその酒を余らせられるよう、頑張るとするかのぉ!」
ティラミスの言葉を聞いて、天輝は依頼へのやる気を見せる。なんか目的が変わっている気もするが。
「皆様いろいろ持ってきてくださったのですね。向かう途中でお酒や果物を買っていこうと思っていたのですが、これだけあれば必要なさそうですね」
途中で必要な物を買う算段だったアンジェリカは経費が浮いて内心ホッとしていた。……もっとも、それが発生しても自由騎士団にツケておく気満々ではあったのだが。まぁ発生しないに越したことは無い。それよりも彼女には気になる事があるようで……
「ところで先程から気になっていたのですが、ティラミス様からその……果物の良い匂いがするのですけど……それは、一体?」
「え?それはもう、アレですよ。ア・レ♡」
特にナニとは言わなかったが、彼女のあからさまに色っぽい声と仕草で大体察することができた。あぁ、色仕掛けする気満々だわ。この子。
●
件の街へと到着した騎士一行は道具屋で家畜の飲料水用の器を購入し、辺り一面に草原の広がる出口へと向かっていった。街を出て見渡すと、何やら怪しげな足取りでこちらへ向かってくる動物が確認できた。
「見えた……あれが依頼のヘラジカかな。フラフラしてるし本当に酔ってるみたい。酔っちゃうのは人も動物も、ましてやイブリースでも変わらないんだね。ちょっと親近感覚えちゃうかも……でもまぁ、周りの人に迷惑を掛けちゃうのはよくないね」
酒好きのトットは、自分が酔った時になるふわふわした気分とあのイブリース達の様子を重ねているのだろうか。耳をふにゃりと垂らし少しばかり好意的な表情を見せるが、警戒を改めると同時に耳がぴん、と立つ。
「酔っていてもイブリースはイブリース。油断せずに行きましょう。彼らは少し散らばっていますし……とりあえず一頭誘導してみましょうか。私はこれで――」
アンジェリカはそう言うなり〈変装〉でヘラジカを真似て見せる。しかしこれは……
「アンジェリカさん……それ、ホントに大丈夫かな……?」
トットが不安そうな声を上げるのも無理はない。そもそも人とヘラジカとでは骨格、体格に難があるのだ。
「ちょっと無理がある気はしますが……相手は判断力が落ちた酔っ払いです。多少ガバっても大丈夫でしょう。いけます。ゴリ押しは正義です。では行ってきます」
酔っていてもイブリースはイブリース、と言っていたのはどこの誰だったか。とはいえ本人にここまで言い切られては任せるしかないだろう。仲間達から分けてもらった果物と酒を持って彼女は一頭の雄のヘラジカの方へ向かっていった。
「ではもう片方の雄には私が行きますね!」
アンジェリカが向かう先を確認して次に動いたのはティラミス。アンジェリカが向かわなかった方の雄に正面から颯爽と近づいていく。彼女が雄をターゲットにしたのは勿論……
「大きなヘラジカさん♡ほ~ら、セクシーとフェロモン全開のか弱いうさぎさんですよぉ~♡」
〈動物会話〉で彼女が言っていることは大体こんな感じだろうか。こんなものを真っ昼間の草原でお送りしてしまっていいのか。彼女にはそんなこと関係無いのだろう。イブリースにもそんなことは関係無かったらしい。ティラミスの誘惑に釣られた雄のヘラジカはフェロモンと果実の匂いの元へと近づいていく。
「うわぁ……ティラミスちゃん、中々大胆な事するね……」
惹かれたイブリースに媚びて媚びてお酒、果物、お酒、お酒……と献上していく(明らかに酒の頻度が高い)ティラミスの様子を、トットと天輝はただぽかーんと見ていた。
「……さて、我らも取り掛かるとするかの」
残る2頭の雌ヘラジカは固まって動いている。無理に一人一頭誘導しようとすると返ってうまくいかないかもしれない……ならば
「天輝さん、残り2頭は協力してまとめて誘導した方がよさそうだね」
「そうじゃな。貴公の果物と余の持ってきた酒で誘導して……?」
「油断しているところに僕が持ってきたお酒を口にばしゃーって……」
「中々強引なやり方じゃが、よいぞ。ではそれでやってみようかの」
トットはヘラジカ達に少し近付き、彼らの視界に入るように果物を見せてみる。天輝は途中で調達した器に酒を注ぎ、トットが退いてくる方向に並べておく。その匂いにつられたイブリースらは彼らの思惑通り、更なる酒と果実を求めてトットの方へ少しずつ近づいてきた。
「きたっ」
トットは少しずつ後退し、天輝が配置した器のそばに果実を置きつつ天輝が身を伏せている所まで戻ってくる。あからさまな罠だが、酔っぱらっているイブリースは酒と果実に釣られて少しずつこちらに迫ってくる。彼らにとっては、目の前に追加の酒と果実が急に現れた程度にしか思っていないのだろう。酔っぱらいの思考は至極単純。
「うむ、酒は良い。人生を豊かにしてくれるからの。遠路はるばる街近くの草原まできて喉もかわいておるじゃろ?パーッとやっていくとよい」
酒を飲み果実を食べる。目先にはまた酒が……と、なんだか嬉しそうに飲み歩くヘラジカ達の様子を見て仲間意識を感じたのか我慢できなくなったのか、天輝も自前のひょうたんからぐびぐびっと酒を飲み始める。
「いやなんで天輝さんも飲んでるの……まぁいっか、でもそろそろ……」
「……そうじゃな。ヘラジカ共がかなり近づいてきよった」
ヘラジカは2人のすぐ近くまで迫っていた。用意した最後の器の酒を飲み、片方のヘラジカが果実を食べようと口を開く。
「今だっ!」
トットはその瞬間を見逃さず、片方のヘラジカの口に酒をぶっかける。ここまでで既にかなりの酒を飲んでいたヘラジカは、この一撃に止めを刺され、どさっと地面に倒れる。このまますぐにでも深い眠りに落ちそうだ。しかしもう片方のヘラジカは今の一幕で敵の存在に気付いてしまった。目の前に見えたトットにすかさず近付いて重い前足を使った蹴りをお見舞いしてくる。トットは後方に跳ぶことで蹴りを躱す。
「ふぅ、危なかった」
「仕方ないの。こやつとは戦うしかなさそうじゃ」
仲間が急に警戒を強めたことを本能で感じたか、変装したアンジェリカが誘導していたヘラジカも警戒を強める。アンジェリカもそれを感じたらしい。
(あら……?ちょっと、あなたの目の前にいるのは仲間のヘラジカですよ……?)
果たして目の前に居るのは仲間のヘラジカか、それともそれを装った敵か。……いやいや、なんか体の形とかおかしくね?そう判断したヘラジカは目の前の偽物に向かって角を向け突進を繰り出す。
「きゃあっ!もう、危ないですね」
角を向けられた時点で回避の構えができていたのもあって難なく突進を躱したアンジェリカは、次の突進を回避して天輝、そして〈ラピッドジーン〉で戦闘態勢に入っていたトットと合流する。
「さすがにヘラジカに変装はやや無理がありましたか……バレては仕方ありません。この子達は頑張って浄化しましょう!」
「そうじゃな。ところでティラミスは……」
そう言った天輝は少し離れたところにいるティラミスの様子を窺うが……
「あらぁ♡すごい飲みっぷりですぅ。でもお酒はまだまだありますよ♡(ヘラジカ語を翻訳してお送りしてます)」
「……とりあえず我らで戦おうかの」
さぁ、戦闘開始。
「さあいきますよ!!」
戦闘開始直後、アンジェリカの持つ十字架から黄金の輝きが放たれる。〈吹き荒れる金色の輪舞曲〉の無数の衝撃波が2頭のヘラジカを襲う。衝撃波が止んだところへ超速で放たれるトットの〈ヒートアクセル〉による追撃が繰り出される。
トットが向かわなかった雌のヘラジカは天輝に急接近。強靭な足から放たれる蹴りが天輝を襲うが
「そんなふらふらな蹴り、当たらんのぉ」
いやあなたもふらふらしてるけどね……。とはいえ天輝のそれは酔拳によるものだ。まぁお酒もたくさん飲んでいるのだが。ヘラジカの蹴りをふらりと躱した天輝はそのまま反撃する。すると……
どさっ。トットと天輝に誘導されたくさん酒を飲まされていた雌ヘラジカはあっけなく倒れた。このまま放って眠らせておけばおけば浄化の権能で元のヘラジカに戻るし酔いも覚めるだろう。残すは雄ヘラジカ1頭。
残された雄ヘラジカは最も近くにいたアンジェリカに角を向け突撃する。
「また私の方ですか!?もしかして変装したこと根に持ってます?」
小言を言いながらも、突進を躱す余裕が無いと判断したアンジェリカは〈ピンポイントシュート〉でヘラジカの前足を撃ち抜く。バランスを崩したヘラジカの突進はアンジェリカには届かず、状態を崩してそのまま地面に前膝を付く。その隙を見逃さないトットの〈ヒートアクセル〉、そして天輝の遠隔攻撃〈回天號砲〉が追撃する。そしてもう一撃……
3人の予期せぬ方向から放たれた攻撃は〈バトリングラム〉。攻撃主はティラミス。
「お待たせしました!いやぁもう、太くて大きくて長くて立派な雄のヘラジカさんに媚びてたら遅くなってしまって。あ、もちろんちゃんと眠らせて来ましたよ!」
この子が言うと意味深感がすごいな……。ええいもうツッコむもんか。4対1となっては騎士達には攻撃あるのみ。
●
それからの戦闘は長くは続かなかった。致命的となるような反撃を受けることもなく、総攻撃の果てに雄ヘラジカも撃退。戦闘前に眠らせていた2頭のヘラジカも、中途半端な攻撃で起こすと危険なので1頭ずつ、お眠りの中実に可哀そうではあるが一気に攻撃を仕掛け浄化に成功した。
「ふう、これでなんとかなったかな……?」
そう言うとともに耳を垂らし緊張を解くトット。他の3人もふぅと一息ついた。ヘラジカ達が眠っている間に、彼らが向かってきた方向から森の方向を推定。起きてからはアンジェリカが〈動物会話〉によって彼らを森の方へと誘導し、彼らは元の棲み処の方へと帰っていく。
「昼間から酒を飲んで居眠りとは、まったくいい身分じゃな」
棲み処へ帰っていくヘラジカを見送りながらそう言う天輝。いや、居眠りこそしてないけどあなたも昼間から酒、飲んでるからね?
「さて、一件落着したことだし、余も酒場に繰り出すとするかの」
「僕も一緒に行こうかな……今日はどんなお酒を飲もうかなぁ。あ、果実酒とか良いかも……♪」
「ええの!本当はヘラジカ達が飲んでいた酒を飲んでみたい気もするんじゃが、まぁよい。今日は余も果実酒を楽しもうではないか」
酒好きな天輝とトットはもう飲みに行く気満々らしい。未成年のティラミスとアンジェリカには彼らの気持ちはまだ分からない。
「貴公らも来ないか?なに、酒を飲ましはせん。一緒にご飯だけでもどうじゃ?」
「はい!ランチだけでよければ是非ご一緒します!お酌なら私でもできますよ~。アンジェリカさんも行きます?」
「そうですね。私は未成年である以前に神職なのでお酒は飲めませんが、お食事はご一緒させてもらいましょう」
天輝の誘いで皆でご飯に行くことになった騎士達は街の方へと歩みを進める。
「僕もお酒は好きだけど、今日のヘラジカ達みたいにならないように気を付けないとなぁ……。でも、飲むのはやめられないんだよね……!」
トットがふと口を開いた。いや全く、その通りでございます。
「それにしても例のヘラジカ共、酒好きとは中々話せる奴等じゃの。余からも一杯、と言わず樽ごと奢ってやろうではないか」
そんなことを言って、集合場所にひょうたんから酒をぐびぐびっと飲みながら、しかも酒樽を担いで現れた氷面鏡 天輝(CL3000665)に一同は度肝を抜かれた。
「天輝様、お酒をたくさん持ってきていただいたのは助かりますが……そんなに飲んでしまって戦えるのですか?」
『常に全力浄化系シスター』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が皆の心配を代弁するかのように声をかける。
「大丈夫じゃ。余は酔拳の使い手じゃからな」
酔拳は別に酒を飲む口実ではないのでは?……とは誰もツッコまなかったが、まぁ本人が大丈夫と言っている以上大丈夫ということにしておこう。という流れで『所信表明』トット・ワーフ(CL3000396)とティラミス・グラスホイップ(CL3000385)も持ち物の確認をする。
「僕は果物とお酒を持ってきたよ。これでヘラジカ達を引き付けられるといいけど……」
「私もトットさんと同じで食べ物とお酒を持ってきました。未成年なのでお酒の種類とかはまだよく分からないんですけど――」
「むむ!貴公らの持ってる酒、それはアマノホカリ産の酒ではないか!?アマノホカリの酒は良いぞ。余のオススメじゃ」
どうやらトットとティラミスの持ってきた酒は天輝の好物だったらしい。既にかなり飲んでる筈の天輝だが、それも少し飲ませてと言わんばかりに2人に視線を送る。
「あら、天輝さんの好きなお酒だったんですね!って、天輝さんにあげるお酒じゃないですからね!もし余ったらあげますけど」
「余ったら、じゃな?よし。ではその酒を余らせられるよう、頑張るとするかのぉ!」
ティラミスの言葉を聞いて、天輝は依頼へのやる気を見せる。なんか目的が変わっている気もするが。
「皆様いろいろ持ってきてくださったのですね。向かう途中でお酒や果物を買っていこうと思っていたのですが、これだけあれば必要なさそうですね」
途中で必要な物を買う算段だったアンジェリカは経費が浮いて内心ホッとしていた。……もっとも、それが発生しても自由騎士団にツケておく気満々ではあったのだが。まぁ発生しないに越したことは無い。それよりも彼女には気になる事があるようで……
「ところで先程から気になっていたのですが、ティラミス様からその……果物の良い匂いがするのですけど……それは、一体?」
「え?それはもう、アレですよ。ア・レ♡」
特にナニとは言わなかったが、彼女のあからさまに色っぽい声と仕草で大体察することができた。あぁ、色仕掛けする気満々だわ。この子。
●
件の街へと到着した騎士一行は道具屋で家畜の飲料水用の器を購入し、辺り一面に草原の広がる出口へと向かっていった。街を出て見渡すと、何やら怪しげな足取りでこちらへ向かってくる動物が確認できた。
「見えた……あれが依頼のヘラジカかな。フラフラしてるし本当に酔ってるみたい。酔っちゃうのは人も動物も、ましてやイブリースでも変わらないんだね。ちょっと親近感覚えちゃうかも……でもまぁ、周りの人に迷惑を掛けちゃうのはよくないね」
酒好きのトットは、自分が酔った時になるふわふわした気分とあのイブリース達の様子を重ねているのだろうか。耳をふにゃりと垂らし少しばかり好意的な表情を見せるが、警戒を改めると同時に耳がぴん、と立つ。
「酔っていてもイブリースはイブリース。油断せずに行きましょう。彼らは少し散らばっていますし……とりあえず一頭誘導してみましょうか。私はこれで――」
アンジェリカはそう言うなり〈変装〉でヘラジカを真似て見せる。しかしこれは……
「アンジェリカさん……それ、ホントに大丈夫かな……?」
トットが不安そうな声を上げるのも無理はない。そもそも人とヘラジカとでは骨格、体格に難があるのだ。
「ちょっと無理がある気はしますが……相手は判断力が落ちた酔っ払いです。多少ガバっても大丈夫でしょう。いけます。ゴリ押しは正義です。では行ってきます」
酔っていてもイブリースはイブリース、と言っていたのはどこの誰だったか。とはいえ本人にここまで言い切られては任せるしかないだろう。仲間達から分けてもらった果物と酒を持って彼女は一頭の雄のヘラジカの方へ向かっていった。
「ではもう片方の雄には私が行きますね!」
アンジェリカが向かう先を確認して次に動いたのはティラミス。アンジェリカが向かわなかった方の雄に正面から颯爽と近づいていく。彼女が雄をターゲットにしたのは勿論……
「大きなヘラジカさん♡ほ~ら、セクシーとフェロモン全開のか弱いうさぎさんですよぉ~♡」
〈動物会話〉で彼女が言っていることは大体こんな感じだろうか。こんなものを真っ昼間の草原でお送りしてしまっていいのか。彼女にはそんなこと関係無いのだろう。イブリースにもそんなことは関係無かったらしい。ティラミスの誘惑に釣られた雄のヘラジカはフェロモンと果実の匂いの元へと近づいていく。
「うわぁ……ティラミスちゃん、中々大胆な事するね……」
惹かれたイブリースに媚びて媚びてお酒、果物、お酒、お酒……と献上していく(明らかに酒の頻度が高い)ティラミスの様子を、トットと天輝はただぽかーんと見ていた。
「……さて、我らも取り掛かるとするかの」
残る2頭の雌ヘラジカは固まって動いている。無理に一人一頭誘導しようとすると返ってうまくいかないかもしれない……ならば
「天輝さん、残り2頭は協力してまとめて誘導した方がよさそうだね」
「そうじゃな。貴公の果物と余の持ってきた酒で誘導して……?」
「油断しているところに僕が持ってきたお酒を口にばしゃーって……」
「中々強引なやり方じゃが、よいぞ。ではそれでやってみようかの」
トットはヘラジカ達に少し近付き、彼らの視界に入るように果物を見せてみる。天輝は途中で調達した器に酒を注ぎ、トットが退いてくる方向に並べておく。その匂いにつられたイブリースらは彼らの思惑通り、更なる酒と果実を求めてトットの方へ少しずつ近づいてきた。
「きたっ」
トットは少しずつ後退し、天輝が配置した器のそばに果実を置きつつ天輝が身を伏せている所まで戻ってくる。あからさまな罠だが、酔っぱらっているイブリースは酒と果実に釣られて少しずつこちらに迫ってくる。彼らにとっては、目の前に追加の酒と果実が急に現れた程度にしか思っていないのだろう。酔っぱらいの思考は至極単純。
「うむ、酒は良い。人生を豊かにしてくれるからの。遠路はるばる街近くの草原まできて喉もかわいておるじゃろ?パーッとやっていくとよい」
酒を飲み果実を食べる。目先にはまた酒が……と、なんだか嬉しそうに飲み歩くヘラジカ達の様子を見て仲間意識を感じたのか我慢できなくなったのか、天輝も自前のひょうたんからぐびぐびっと酒を飲み始める。
「いやなんで天輝さんも飲んでるの……まぁいっか、でもそろそろ……」
「……そうじゃな。ヘラジカ共がかなり近づいてきよった」
ヘラジカは2人のすぐ近くまで迫っていた。用意した最後の器の酒を飲み、片方のヘラジカが果実を食べようと口を開く。
「今だっ!」
トットはその瞬間を見逃さず、片方のヘラジカの口に酒をぶっかける。ここまでで既にかなりの酒を飲んでいたヘラジカは、この一撃に止めを刺され、どさっと地面に倒れる。このまますぐにでも深い眠りに落ちそうだ。しかしもう片方のヘラジカは今の一幕で敵の存在に気付いてしまった。目の前に見えたトットにすかさず近付いて重い前足を使った蹴りをお見舞いしてくる。トットは後方に跳ぶことで蹴りを躱す。
「ふぅ、危なかった」
「仕方ないの。こやつとは戦うしかなさそうじゃ」
仲間が急に警戒を強めたことを本能で感じたか、変装したアンジェリカが誘導していたヘラジカも警戒を強める。アンジェリカもそれを感じたらしい。
(あら……?ちょっと、あなたの目の前にいるのは仲間のヘラジカですよ……?)
果たして目の前に居るのは仲間のヘラジカか、それともそれを装った敵か。……いやいや、なんか体の形とかおかしくね?そう判断したヘラジカは目の前の偽物に向かって角を向け突進を繰り出す。
「きゃあっ!もう、危ないですね」
角を向けられた時点で回避の構えができていたのもあって難なく突進を躱したアンジェリカは、次の突進を回避して天輝、そして〈ラピッドジーン〉で戦闘態勢に入っていたトットと合流する。
「さすがにヘラジカに変装はやや無理がありましたか……バレては仕方ありません。この子達は頑張って浄化しましょう!」
「そうじゃな。ところでティラミスは……」
そう言った天輝は少し離れたところにいるティラミスの様子を窺うが……
「あらぁ♡すごい飲みっぷりですぅ。でもお酒はまだまだありますよ♡(ヘラジカ語を翻訳してお送りしてます)」
「……とりあえず我らで戦おうかの」
さぁ、戦闘開始。
「さあいきますよ!!」
戦闘開始直後、アンジェリカの持つ十字架から黄金の輝きが放たれる。〈吹き荒れる金色の輪舞曲〉の無数の衝撃波が2頭のヘラジカを襲う。衝撃波が止んだところへ超速で放たれるトットの〈ヒートアクセル〉による追撃が繰り出される。
トットが向かわなかった雌のヘラジカは天輝に急接近。強靭な足から放たれる蹴りが天輝を襲うが
「そんなふらふらな蹴り、当たらんのぉ」
いやあなたもふらふらしてるけどね……。とはいえ天輝のそれは酔拳によるものだ。まぁお酒もたくさん飲んでいるのだが。ヘラジカの蹴りをふらりと躱した天輝はそのまま反撃する。すると……
どさっ。トットと天輝に誘導されたくさん酒を飲まされていた雌ヘラジカはあっけなく倒れた。このまま放って眠らせておけばおけば浄化の権能で元のヘラジカに戻るし酔いも覚めるだろう。残すは雄ヘラジカ1頭。
残された雄ヘラジカは最も近くにいたアンジェリカに角を向け突撃する。
「また私の方ですか!?もしかして変装したこと根に持ってます?」
小言を言いながらも、突進を躱す余裕が無いと判断したアンジェリカは〈ピンポイントシュート〉でヘラジカの前足を撃ち抜く。バランスを崩したヘラジカの突進はアンジェリカには届かず、状態を崩してそのまま地面に前膝を付く。その隙を見逃さないトットの〈ヒートアクセル〉、そして天輝の遠隔攻撃〈回天號砲〉が追撃する。そしてもう一撃……
3人の予期せぬ方向から放たれた攻撃は〈バトリングラム〉。攻撃主はティラミス。
「お待たせしました!いやぁもう、太くて大きくて長くて立派な雄のヘラジカさんに媚びてたら遅くなってしまって。あ、もちろんちゃんと眠らせて来ましたよ!」
この子が言うと意味深感がすごいな……。ええいもうツッコむもんか。4対1となっては騎士達には攻撃あるのみ。
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それからの戦闘は長くは続かなかった。致命的となるような反撃を受けることもなく、総攻撃の果てに雄ヘラジカも撃退。戦闘前に眠らせていた2頭のヘラジカも、中途半端な攻撃で起こすと危険なので1頭ずつ、お眠りの中実に可哀そうではあるが一気に攻撃を仕掛け浄化に成功した。
「ふう、これでなんとかなったかな……?」
そう言うとともに耳を垂らし緊張を解くトット。他の3人もふぅと一息ついた。ヘラジカ達が眠っている間に、彼らが向かってきた方向から森の方向を推定。起きてからはアンジェリカが〈動物会話〉によって彼らを森の方へと誘導し、彼らは元の棲み処の方へと帰っていく。
「昼間から酒を飲んで居眠りとは、まったくいい身分じゃな」
棲み処へ帰っていくヘラジカを見送りながらそう言う天輝。いや、居眠りこそしてないけどあなたも昼間から酒、飲んでるからね?
「さて、一件落着したことだし、余も酒場に繰り出すとするかの」
「僕も一緒に行こうかな……今日はどんなお酒を飲もうかなぁ。あ、果実酒とか良いかも……♪」
「ええの!本当はヘラジカ達が飲んでいた酒を飲んでみたい気もするんじゃが、まぁよい。今日は余も果実酒を楽しもうではないか」
酒好きな天輝とトットはもう飲みに行く気満々らしい。未成年のティラミスとアンジェリカには彼らの気持ちはまだ分からない。
「貴公らも来ないか?なに、酒を飲ましはせん。一緒にご飯だけでもどうじゃ?」
「はい!ランチだけでよければ是非ご一緒します!お酌なら私でもできますよ~。アンジェリカさんも行きます?」
「そうですね。私は未成年である以前に神職なのでお酒は飲めませんが、お食事はご一緒させてもらいましょう」
天輝の誘いで皆でご飯に行くことになった騎士達は街の方へと歩みを進める。
「僕もお酒は好きだけど、今日のヘラジカ達みたいにならないように気を付けないとなぁ……。でも、飲むのはやめられないんだよね……!」
トットがふと口を開いた。いや全く、その通りでございます。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
『か弱いうさぎさんですよぉ』
取得者: ティラミス・グラスホイップ(CL3000385)
『真っ昼間から酒』
取得者: 氷面鏡 天輝(CL3000665)
『でも、やめられないんだよね』
取得者: トット・ワーフ(CL3000396)
『ゴリ押しは正義』
取得者: アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)
取得者: ティラミス・グラスホイップ(CL3000385)
『真っ昼間から酒』
取得者: 氷面鏡 天輝(CL3000665)
『でも、やめられないんだよね』
取得者: トット・ワーフ(CL3000396)
『ゴリ押しは正義』
取得者: アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)
†あとがき†
初依頼楽しく書かせていただきました。ありがとうございました!
MVPは文字通り体を張ったあなたへ
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FL送付済