MagiaSteam
かつての大書館




「で、紅蓮騎士隊の調査の件だが」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)は、集まった自由騎士達に早速そう切り出した。「すまんが、文献の調査はあまり進んでいない。戦火で失われたものも多くてな。だが、それとは別に面白いことが分かったぞ」
 言って、フレデリックは一枚の布を取り出した。かなり古くボロボロだが、どうやらそれは服に見えた。袖の無い一枚布。頭からすっぽり被るような−−ローブ。
「そう。サウサロン塞で見つかった遺体が着ていたローブだ。当代の技術ではあの白骨が誰かは分からんが、このローブの諸元は分かる。こいつはアカデミックローブ−−それも、今よりもっと古い型のものだ。キッシェ・アカデミーとは違う、もっと古い時代のアカデミックローブなわけだ」
 自由騎士の何人かがざわつく。フレデリックは頷いた。
「お前らの中にも心当たりがあるやつがいるだろう。そう−−要するにこいつは、プリマトーヴァ学長時代のものだ。だから今できる調査としては、その時代のアカデミーを調べるのが一番だろう。王都サンクデイゼールの郊外に、今は打ち棄てられた旧アカデミーの施設がある。かつての学長の名がつけられた、プリマトーヴァ大書館。あの中になら当時の貴重な文献がわんさと残っているはずだ。ちょうど今の季節は読書の秋だな。ちょっと散らかってるとは思うが、たまには図書館で思う存分本読んでこい。必要なものがあったら持ち帰ってきても構わんぞ」
 言って、フレデリックは話を終えた。−−終えたつもりらしい。「質問です」自由騎士の一人が手を挙げた。
「何か」
「そんな貴重な文献が、何故わんさと廃墟の中に残っているんですか? キッシェ・アカデミーに運び出したりしなかったんですか?」
 その質問に、フレデリックは頷いた。
「ある幻想種が棲み着いている。そいつを排除しない限り、内部はおろか館に近づくことも不可能だ。それもお前らに頼みたい」
 自由騎士達はやっぱりね、という顔をした。「どんな幻想種が棲み着いてるんですか?」問われ、フレデリックは答えた。
「グリフィンだ」


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
鳥海きりう
■成功条件
1.アークグリフィンの撃破
2.大書館を調査し、情報を得る
 皆様こんにちは。鳥海きりうです。よろしくお願いします。
 プリマトーヴァ大書館での戦闘及び調査シナリオです。幻想種の撃破と大書館の調査の二つを成功させてください。

 敵キャラクターのご紹介です。
・アークグリフィン
 全長およそ10m。獅子の身体に大鷲の翼を持つ巨大な幻想種。性格は獰猛かつ凶暴で、口から炎を吐く。

 グリフィンは強力な幻想種で、大書館の前庭に棲み着いています。前庭は戦闘するのに十分な広さがありますので、作戦は皆さんの自由です。−−ただし、無理矢理スルーして突破したり故意に大書館に誘い込むのはおすすめしません。本が燃えます。
 強力な幻想種ですが、皆さんが力を合わせれば勝てない相手ではありません。
 そして、言うまでもないとは思いますが、今回の本題はそこではありません。
 大書館に入ったら遠慮無く調査及び読書に耽ってください。目的のものを探すのも勿論ですが、館内には魅力的な古代の文献がわんさと眠っています。武芸書から魔道書から武器カタログから伝記書からモンスター図鑑から料理本まで。グリフィンとかはなるべくさっさと撃破して、一風変わった読書の秋を楽しみましょう。

 簡単ですが、説明は以上です。
 皆様のご参加をお待ちしております。
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
20モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
8/8
公開日
2018年10月01日

†メイン参加者 8人†



●Vestibule
「グリフィン退治と図書館で調査だね! 紅蓮騎士について何か分かるといいなー」
 プリマトーヴァ大書館・前庭。依頼を受けてやってきた『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)はそう意気込んだ。彼女もまた紅蓮騎士アグウェルと拳を交え、その死の真相究明を望んでいた一人である。
「グリフィンってね、知識の」
「グリフィンには黄金を守るっていう伝説があって、それが転じて知識の象徴になってるのよ。つまり先人の知識は黄金にも劣らないほど貴重なモノだってことね。それから、地上と空を代表する獣の王たる獅子と鷲が合わさった姿から、王位の象徴としても……」
『ヘヴィガンナー』ヒルダ・アークライト(CL3000279)がそんな講釈をして、周りの全員が振り返る。「え、なに? その『この娘がそんな頭良さげは話してる』みたいな顔!? 言っておきますけどね! あたしだって仮にも貴族のご令嬢なんですからね! それくらいの教養は常識として身につけてるのよ!」
「ヒルダちゃん、今のはキッシェ・アカデミーの学徒たる私が言いたかったんだけどなー」
「中でもアリアの視線が痛い!?」
『慈愛の剣姫』アリア・セレスティ(CL3000222)は折角用意していた台詞を遮られ、ジト目でヒルダを見る。「いいですよー。どうせ私なんか滅多に学生っぽいところの出ない、おっぱいの大きい軽戦士ぐらいにしか思われてないでしょうしー」「あああアリアそんなことないわよ! いやおっぱいの大きいは思ってるけど!」「つーん」
「まあ、仰る通り、確かに一般常識の範疇だろうな」
「う、肯定されたらされたで、なんかもにょる……」
「だが、そういうことなら撃破ではなく交渉の余地があるかもしれんな。武器は下ろして近づくとしようか」
『やさしいひと』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)はそう言った。称号に違わぬやさしいひとっぷりである。あくまで傲慢を貫くなら明確に自分のビジョンを持ち、それを他人のために曲げない強さが必要だと思います。まあ確かにそれが今回の依頼に必要だったかと言われるとこれ以上は怒られそうなのでやめときますね。
「本、本ですかぁ……なんといいますか、こう、爆発物の作り方とか載ってる本ないですかね……爆薬とか作りたいんですよね……」
『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)はすでに意識を前庭の向こうの大書館へ飛ばしている。……にしても、かなりヤバいことを呟いている。見た目が温和な好青年なだけに余計だろうか。
「プリマトーヴァ前学長時代の書籍など、面白いものがあるに決まっている。あの学長がどういう趣味で本を集めてたのか、実に気になるな」
『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)も、プリマトーヴァの蔵書が気になって依頼を受けていた。狙うはかつての魔道書や錬金術書、そして太古の竜について書かれた書物である。
「僕は、僕が生み出される前の情報を得たいな……200年前以前に起きていた出来事……特に『神』に関する文献や、失われた錬成術の本とかね……」
『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は呟くようにそう言った。−−彼の出自について知るものは多くない。明らかになっている情報も極めて少なく、断片的だ。200歳。 幻想種とノウブルのハーフ。実験体。その過去に何があったのか、滅多に表情を映さないその横顔は何も語らない。
「読書の秋、というわりにグリフィンも倒せとは団長も人が悪いな−−いいさ、この季節は運動の秋ともいうからね。読書に運動と秋を満喫するとしようか」
『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)は、そう言って肩を慣らしながら歩き出した。言葉と裏腹に口調と足取りは軽い。待ち受ける巨大な敵に物怖じした様子は無かった。
 他の自由騎士達も歩き出し、大書館の前庭へと足を踏み入れていった。

 アークグリフィンは前庭の中央、大書館の玄関前に丸くなっていびきをかいていた。翼を丸めて身体を覆い、傍目には巨大な羽毛の塊にも見える。
「おーい! ちょっと本読みたいんだけど、どいてくれないかなー!?」
 カーミラが大声で話しかけた。動物交流・マイナスイオン。羽毛が大きく翻り、中からグリフィンの鋭い眼光が現れる。
「やっほー! どうしてこんなトコで陣取ってるの? この建物の本が読みたいから通してくれない?」
 がふっ、とグリフィンは鼻を鳴らした。「……カーミラ、なんて?」ヒルダが尋ねる。
「眠いから後にしろ、だって」
「あらら。寝起き悪いのね」
「ねー! どーしてもダメ? 絶対誰も入れないの?」
 食い下がるカーミラにグリフィンはいかにも面倒臭そうに顔を上げ、ぐる、と唸った。「……カーミラ、なんて言ったんだ?」ボルカスが尋ねる。
「生徒か、入館証を見せろ、だって!」
「ほう。意外にしっかりした門番だな」
「じゃあ、私、生徒だよ。ほら、学生証もあるし」
 アリアが学生証を取り出して進み出る。グリフィンは首を伸ばしてアリアを見て、がふっ、と鼻を鳴らした。「……カーミラちゃん、なんて?」
「違う」
「ち、違わないよ! ほんとなのに! ほら学生証も!」
 アークグリフィンが立ち上がる。翼を拡げ、筋肉を撓め、獰猛な唸りを上げる。「……あー」カーミラもそんな声を上げた。「……なんて言ったんですか?」エミリオが尋ねる。
「生徒はあの日、皆死んだ。あの子もだ。生き残りがいるはずはない。お前達は嘘をついている」
「……キッシェ・アカデミーの話じゃないみたいだね……」
「……あの子というのは、学長のことか?」
 ロジェの言葉に、グリフィンは吼えた。巨体が跳躍し、両前脚の爪が先頭にいたカーミラを狙う。金属音。
「目的の為とはいえグリフィンの棲家を荒らす事になるのを申し訳なく思う。せめて名乗り上げよう。−−僕の名はアダム・クランプトン! この道を通して欲しい!」
 カーミラをガードしたアダムがそう名乗りを上げた。グリフィンは身を翻して態勢を立て直す。
「やるしかないの……!?」
 言いながらもアリアは攻撃した。エコーズ。双剣から放たれた魔力の刃がグリフィンに突き刺さる。反撃。グリフィンは口から拡がる炎を吐いた。「「「「「「!?」」」」」」全員が炎に巻き込まれ、ダメージを負う。
「いけませんね……まずは気を逸らせましょうか」
 エミリオがスパルトイを放つ。剣を持った土人形が走り、グリフィンに斬りつけた。反撃。グリフィンは跳躍し、爪でエミリオに飛びかかる。命中。「ああ、まずいですねえ……せめて一冊読みたいところですが……」
「炎が連続で来ると危険だな。ここは慎重に行くか……」
 ハーベストレイン。ロジェが全員の傷を癒す。
「がっつり戦えるならチャージの時間もあるけど……違う気がするわね!」
 ダブルシェル。ヒルダの銃撃がグリフィンを撃ち抜く。反撃の炎。ヒルダはバックロールでかわした。「さて、引き過ぎると書館に火が回るけど……!」
「勝負に出てみようか……氷獄よ、縛れ」
 アイスコフィン・改。マグノリアの呼び出した巨大な氷獄がグリフィンを閉じ込める。破砕。グリフィンはダメージを受けつつも自力で脱出した。「……やるね」
「ならば、俺も賭けるとするか……ジャッジメント・エンチャント!」
 罪焼き。ボルカスが槍に裁きの炎を纏わせ、グリフィンを攻撃する。詠唱内容は適当です。
 命中。爆炎に巻かれ、グリフィンは大きくよろめいた。低く唸り、翼を拡げてグリフィンは飛ぶ。低く唸り、身を翻し−−そのまま、飛び去った。「……あれ?」
「逃げてく……?」
「……カーミラ、何か言ってたか?」
「……うるさい。寝直してくる。だって」
「ああ……本当に寝起きが悪いんですねえ」
「いや、納得するところだろうか」
「でも、良かったよ……このまま続けたら、調査どころじゃなかっただろうしね……」
「もしまた会ったら、平和的に解決したいものだね」
「……あれぇ〜?」
 拍子抜けしたアリアの声を最後に、戦闘は終わった。

●Primatorve Library
 アークグリフィンを降した−−降した?−−自由騎士達は、プリマトーヴァ大書館に踏み入った。内部は薄暗い。照明は無いが、日中だったので割れた窓や破損した壁から光が溢れている。
「私はまずは紅蓮騎士について調べるね! 公的な記録とか新聞とかゴシップ誌とか当時を知る人の手記、とか!」
 言って、カーミラは早速駆け出した。「待て」「んが!?」ボルカスがカーミラの襟首を掴む。
「なんだよもー! 早くしないと夜になっちゃうよ!」
「慌てるな。まずは地図を確認しよう」
「んあ? 地図?」
 ボルカスが指し、カーミラは振り返る。壁に大きな案内図が掛かっていた。古いが損傷は少なく、充分判読できる。「俺は武芸書でも探すかな。さて、何処にあるか……」言ってボルカスは歩き出す。
「カーミラさん、行こう。僕は歴史書を中心に探してみるよ」
「おっけー!」
 アダムがカンテラで周囲を照らし、カーミラと共に歩き出した。
「紅蓮騎士の事も気になるけど……」
 アリアは逡巡しながら呟く。その肩に手が置かれた。
「アリアはよくばりね。でも、間違っちゃいないわ」
「……ありがとね、ヒルダちゃん」
 ヒルダは笑い、アリアの背を叩く。二人もまた目的のものを求めて歩き出した。
「じゃ、私も遠慮無く……『化学・錬金学』辺りですかね。二階の左から二番目の棚、と……」
「錬金学か……僕も行くよ。失われた錬成術の知識が必要だ……」
 エミリオとマグノリアも館内図を確認し、二階へ続く階段を登り始めた。
「錬金学も興味深いが……まずは前学長時代の魔導書だな。今は失われてしまった魔導の知識。新しい発見が期待できるだろう」
 ロジェもそう言って二階へ上がる。魔道書の棚も錬金学の棚の近くにあった。

「ふむ……こいつはどうだ」
 ボルカスは一階の武芸書棚で、一冊の本を取り出していた。ぱらぱらとページを捲る。「ふむ……東方の古い騎将の伝記か。ヤリツ・キュウカ……?」
 特殊言語理解。イ・ラプセルではおよそ普及していない言語だったが、ボルカスは何とかその名を読むことができた。耶律休哥。
『赤騎兵を率い、敵を陣ごと斬り裂くように駆けたその将は、たなびくその髪から白き狼と呼ばれ恐れられた。
 しかし、彼は最強の将ではなかった。最後の最後、やはり英雄たる敵将を峡谷へと追い詰めた時−−彼は敗北を悟った。誘い込まれた事に今更気づいた。馬でなければ、歩く途中で気づいたかもしれない。
 −−しかし、彼は勝った。彼の武勇ではなく、敵の不和によって。彼の馬は最後まで裏切らなかったが、敵は馬どころか、味方に見捨てられた。
 この物語の教訓は−−馬は良い。だが、過信する事なかれ。』
「ふむ……とりあえず借りていくか。面白そうだ」
 ボルカスは本を懐に入れ、歩き出した。「しかし、このような宝の山をこれまで放置してしまっていたとは……いやまあ、グリフィンのせいなんだが。もったいない……すっごくもったいない……!」

「戻ってきたら、どうする?」
 ヒルダに尋ねられ、アリアは答える。
「言葉さえ通じれば、話は聞いてくれるんだよね。あと、寝起きはすごく悪いから注意。よく分からないのは引き際が良過ぎるんだよね。死んでもここを守る、わけじゃないのかな……?」
「……さすがね」
「わかったことを羅列しただけだよ。本だけじゃなく、実戦でも学ばないとね」
「−−あ、これなんかどう、アリア?」
 ヒルダが一冊の本を机に置いた。古い幻想種図鑑。二人は席に座り、ページを捲る。
『アークグリフィン:
 グリフィンの亜種。通常のグリフィンとの違いは体長と知能、口から吐く炎。
 グリフィン種は基本的に肉食だが、アークグリフィンは特に脂の乗った獣肉を好む。これは火を吐く体内構造にも関係していると思われる。食物の脂を分離して燃料として蓄積しているのだろう。
 体内に燃料を蓄積していると、着火の際に全て引火してしまうはずだが、アークグリフィンはこれを連発する。解剖所見は存在しないが、体内に複数の火炎袋を持つものと思われる。』
「……お肉、ね」
「……リボルバー式なのね、あれ」
 アークグリフィンの項目を読んで、二人はそれぞれの感想を漏らした。

「さてさて。手っ取り早くフラスコの中で爆薬を作ることが出来ればいいんですがねぇ……
そもそも錬金術師なのに爆薬ひとつ作れないってどうかと思うんですよ。攻撃手段を増やす意味でも、そういうのちょっと調べたいですね」
 言いながら、エミリオは書架を物色していた。「ふむ……これなんか、どうでしょう」一冊取り出し、開く。
『−−完全な手榴弾を作るには、少なくともまず起爆薬が必要だが、その錬金術的製法を書くにはこの余白は狭過ぎる。なので、私のアイデアを述べよう。
 投擲火器を作るのは簡単だ。容器に油か酒を詰め、可燃物で栓をして火を灯し、投げる。いわゆる火炎瓶である。
 これと同じ要領で、酸化プロピレン火炎瓶を作る。その原料となるプロピレンは重油の精製過程で比較的簡単に手に入る。これが爆発すると極めて広い範囲に気体となった燃料が散布される。ここへ前述の火炎瓶を投げ込めば』
 そこまで読んで、エミリオは震えた。こいつは。こいつが言わんとしているのは。
「これは−−あかんやつや−−」

「さて……これはどうかな」
 ロジェは大量の本を机に積み、座って読書に耽っていた。ふと、ページを捲る手が止まる。
『≪降る海神≫
 学長プリマトーヴァが極めた大魔法の一つ。
 雨でなく、海が丸ごと降ってくるような癒しの奔流は、しかし人間にはいささか過分なものだった。
 生徒の一人にそれを指摘され、しかし学長は笑って答えたという。
「当然です。人間用じゃありませんから」』
「……回復魔法も極めていたとは……学長、ご識見を拝借するよ」
 その本を脇に置き、ロジェは要点をメモに書き留めた。次の本を取る。

『−−かつて、世界が生まれ、生命が生まれ、文明が生まれた。
 その中で宗教も生まれた。そして、違う神を信じるもの同士の戦争も起こったようだ。
 我々がよく知っているのはここからだ。天から真の神々が降った。地上に平和と秩序を与えるために』
(……でも、戦争は無くならなかった。やがて神が一人ずつ消えていき、その頃、僕が生まれた……)
 マグノリアは歴史書を読みながら思索に耽っていた。その周囲ではスパルトイ達が本をせっせと外へ運び出している。「いちいちグリフィンの相手をするわけにもいかないからね……」
「彼と絆が作れれば、その心配もないんだろうけど……どうやら、今すぐとはいかなそうだ……」
 呟き、マグノリアはまた本に目を戻した。

「あー! いいのはっけーん!」
 紅蓮騎士の資料を求めて一階奥まで来たカーミラは、しかしぐりっと転進して書架から一冊の本を取り出した。ページを捲る。
『スチームドラゴン:
 超高熱蒸気を息≪ブレス≫とし、それ一つ取っても難攻不落の要塞だった。圧倒的な威力と範囲、さらには敵の視界を奪い、炎と違って消火することが出来ず、逆に敵の炎を鎮火する。弓や魔法で戦えば無敵の龍鱗が、剣で戦えば巨大な爪と牙が立ち塞がる。
 ドミニク・ソクラレスが英雄と呼ばれたのは、龍鱗を砕く剣技を編み出したからではない。−−これら数多の障害を乗り越え、その剣を竜に突き立てた勇気をもって、そう呼ばれるのである』
「……おー! なるほど! 要するに、ビビるな! ってことだね!」
 いやまあそれもちょっと違うんだけど。まあ違わないけど。

「はは……いいのを見つけたようだね。それじゃ、後は僕が引き受けようか」
 アダムは苦笑し、本を読み耽るカーミラを置いて探索を続けた。(拳を交えた限りでは悪い人ではなかった。叛逆の咎がもし冤罪だったりしたら……)思案しながら、書架を物色する。
「……おや」
 呟き、アダムは一冊の本を取り出した。ページを開く。
『サウサロン塞:
 戦略上決して有効な位置に無いこの塞は、まるで森に沈むようにひっそりと建てられた。
 駐留したのは烈火の如き攻勢で名を馳せた紅蓮騎士隊−−賢明なる諸兄はお気づきだろう。塞を素通りする敵を背後から強襲し、有無を言わせず叩き潰す。サウサロンは防衛や警戒ではなく、あくまで攻撃のための塞だったのだ。
 −−だから、私はアグウェル卿の判断は正しかったと思う。あの時彼が出撃しなければ、戦場でもっと多くの兵が、民が犠牲となっただろう。
 問題は、その時塞に一人残り、敵を食い止めて自爆したのが誰だったのか、という事だ−−』

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

特殊成果
『竜の神話』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
『古い怪物図鑑』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ヒルダ・アークライト(CL3000279)
『東の白狼』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)
『古い怪物図鑑』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:アリア・セレスティ(CL3000222)
『狂人の手記』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:エミリオ・ミハイエル(CL3000054)
『癒しの大海』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:リュリュ・ロジェ(CL3000117)
『神代史書』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:マグノリア・ホワイト(CL3000242)
『イ・ラプセル塞名鑑』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:アダム・クランプトン(CL3000185)

†あとがき†

皆様お疲れ様でしたならびにご参加ありがとうございました。

 MVPはマグノリア・ホワイト様。戦闘プレイングも攻防のバランスが取れており、かつ事後のフォローもして頂いているのがよかったです。お疲れ様でした。

 重ねまして、皆様お疲れありがとうございました。
FL送付済